(4)筆を途中で持ち上げない ‥‥筆を紙面から離すと、そこが他より濃くなり、離すたびにムラができる(図10)。 筆には水をたっぷり含ませて、同じ色に塗ろうとする範囲全体を、紙面から筆を離さずに一度に塗り広げる。 最後に筆を離したところの濃い絵の具は水をぬぐった筆を触れて吸い取る。 |
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広い面積を濃い色でムラ無く塗り上げるには、複数回重ね塗りするのが良いようです。 |
彩色の実例
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下地塗り (最も明るい部分に合わせて) 8.新芽、葉柄、葉脈の色に合わせた黄緑色をグリーン1+イエローオーカーで作り、茶色の 枝以外全てに塗る。むら無く塗るために、筆にたっぷりの色水を含ませて、紙面から持ち上げずに、 何度もこすらない。 9.枝には、バーントアンバー+バーントシエナ。 |
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重ね塗り (最も暗い部分に合わせて) 10.目を細めて葉の暗い部分を見つけ、そこに濃い緑色グリーン2+バーントシエナ+プ ルシャンブルーを重ね塗りする。 |
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重ね塗り 11.葉の明るい部分の色に合わせて(注2) グリー ン1+イエローオーカー+コンポーズブルー+バーントシエナをさらに重ね塗る。 新芽と葉柄の陰影(暗い部分)にも上塗りする。立体感が出る。 |
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仕上げ 12.枝の陰影にバーントアンバーを重ね塗りする。 13.葉脈をあらわすため、水だけをつけた細筆で線状に繰り返しこすり、チリ紙を押し付 けて色を抜く。 14.葉脈のすぐ脇に10の濃い筋を入れ、そこから遠ざかるにつれて薄くなるようにぼか す。 15.10の濃い緑と他の部分の境、11の緑と8の地塗りの色との境、枝も9と12の境 を水だけをつけた筆で軽くこすり、ぼかす。 16.鋸歯先端に小さくバーントアンバーを入れる。 |
(注2) 植物の緑色は絵具の緑色そのままでは、鮮やかすぎて人工的に見えてしまう。 一般には ・まず薄い色から‥‥各部分の一番薄い(明るい)色をパレットに溶き、たっぷり水を含ま せた筆でその部分全体をむらなく塗る。 ・他の部分に移る前に筆の絵の具を洗い落とす。 ・同様の方法で、次々と違う部分を一様の薄い色付けをすませる。このようにすると全体の バランスをとりながら塗り進めることができる。 ・この際、隣合わせた部分をすぐに塗らない。さもないと濡れた絵の具同士が混ざり、思わ ぬ色になる。 ・急ぐときはドライヤーで乾かす。 |
(5)濃く塗り過ぎない‥‥透明水彩らしく、鉛筆などの下絵がすき透して見える
ように描く。あまり濃く塗りすぎてはいけない。
(6)色は混ぜすぎると濁る‥‥反対色が混ざると彩度が下がり、濁ったあるいは、 渋い色になる。 (7)黒と白の絵の具は原則として使わない‥‥黒はたとえば茶+紺で、または緑 +橙でつくる。一見黒くみえる部分もよく見ると、茶色っぽい黒、青っぽい黒など多様、 それにあわせて表現したい。 白=白色の絵の具は使わない。塗り残して紙の白で表現する。なぜなら、白色の絵の具 は不透明絵の具であり、混ると絵の透明感が失われる。 例外的に使うのは、塗残しの困難な、例えばうぶ毛を描くようなごく狭い面積の場合。 ◆前に戻る ▲植物画の目次に戻る ●Home 1.植物画を描くためのポイント/ 2.鉛筆で描く/ 3.水彩で色を塗る/ 【参考】用具について/ 【参考文献】/ 講習用レジュメ |
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(8)パレットの色配置図‥‥パレットの上に出した絵の具は、黒ずんで見えるた め、どれが何色か分かりにくい。 画用紙に配置図を作り、色を塗っておくとよい(図11)。 |
(10)不必要な塗り残し部分をなくす ‥‥塗るべきところを塗り損じて残し、紙の白が見えていると、その部分が光って いるように見える。それが散在していると落ちつかない絵になる。 (11)失敗への対処策 a.濃すぎた部分の薄めかた(その部分が濡れているとき) ‥‥布巾で水分を拭った筆を、その部分にあて、毛細管現象を利用して絵の具を吸い取る。 量が多いときは、ちり紙のほうがよい。 b.乾いているときの修正 ‥‥水をたっぷり含ませた筆でその部分をこすり、色を溶かす、水分を拭った筆あるいはち り紙で吸い取る。 c.絵の具がはみだしたとき ‥‥はみ出した部分に対してa.b.と同様の方法で絵の具を洗いとる。 d.にじんで他の部分に侵入し汚したとき ‥‥乾いた布巾の先、または筆先で絵の具を吸い取る。乾くのを待ってもう一度絵の具をつ けなおす。 e.パレットにきれいな所が無くなってきたら、布巾で拭き取ってきれいな面を出してつか う。 しまうときには全面をきれいにしておく、すると次のときにすぐに希望の色を作り始めら れる。パレット掃除には使い古して先の曲がった水筆ペンが便利。 |
(12)色環 絵の具の3原色赤、黄、青を等量ずつ混ぜて橙、緑、紫ができる。 混ぜる割合を変えて環状に配置したものが、図13の色環。 色環の対角線にある色同士は補色の関係にある。 補色の近辺にある色を反対色という。 補色同士を等量ずつ混ぜると灰色ができる。反対色同士を混ぜると濁る(彩度が低くなる)。 |
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(13)自然な色をつくる 葉の緑は、絵の具の緑のままでは人工的な感じになるので、反対色を少し混ぜて自然の色 に近づける。(図14) 枝は茶色っぽく見えても、茶色の絵の具のままでは人工的すぎるので、青や紫などを少し 混ぜて、自然の色に近づける。(図15) |
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g.筆洗、布巾(水筒)
h.ドライヤー i.筆巻き:筆をおろしたあとは、保護用についてくる透明サックは捨てる。これ に挿しこもうとするときに毛を逆立ててしまうから。筆の保管にはすだれ状の筆巻きがよ い。(図16) |
【参考文献】 ★「水彩画・花と実の混色手帖」若松倫夫著 日貿出版社 \1800 ‥‥混色の実例集を中心にしながら、 著者の独特のノウハウを含む植物画の描き方をていねいに説明。一冊買うならこの本がお奨め。 A5版 160ページ 2007年7月20日発行 ISBN978-4-8170-3581-3 ★「入門 植物画の描き方」西村俊雄著 主婦と生活社 \3000 ‥‥ボタニカルアートの伝統的な技法書。 |