「今週のマレーシア」 2004年10月と11月のトピックス

・ タバコと酒に対する税率引き上げが大衆層の生活に及ぼす影響  ・納税額決定通知書にまつわるお話し
・ 華人人口の多い町や郡部や下町に居着く中国人女性 前編  ・ その後編
・ ハリラヤプアサ前のラマダンバザールは大賑わい  ・数字で見たマレーシア、 その23 (下と順入れ替え)
・ 事故死した象の鼻を切り取るのは惨酷な行為か、それは許されるのか?
・ クアラルンプール内外を走る各種電車はここを改良すればもっと利用し易くなる-前編- ・その後編



タバコと酒に対する税率引き上げが大衆層の生活に及ぼす影響


9月10日にアブドゥラ首相が国会に上程した2005年予算案によって、タバコと酒類の物品税が即引き上げられました。それはタバコ類の物品税を40%引き上げ、酒類のビールについては物品税を26%引き上げる、というものです。

タバコの新小売り価格

タバコの小売り価格は、一般的な20本入りの1箱が RM 1.1 値上りしてRM 6.50 です。そこで9月14日から値上げ実施するとのお知らせを、各ブランドの販売会社がそれぞれ公告をだしました。それを抜書きしますと:
Marlboro King Size / Marlboro Lights King Size / Marlboro Menthol King Size : 20本入り RM 6.50
Marlboro King Size / Marlboro Lights King Size / Marlboro Menthol King Size : 14本入り RM 4.70

L & M King Size / L & M Lights King Size / L & M Menthol King Size : 20本入り RM 5.00
L & M King Size / L & M Lights King Size / L & M Menthol King Size : 10本入り RM 2.80

Dunhill King Size / Dunhill Light King Size :20本入り RM 6.50、  14本入り RM 4.70
Kent Deluxe Lights King Size / Benson & Hedge Speicial King Size : 20本入り RM 6.50、  14本入り RM 4.70

Peter Stuyvesnt King Size : 20本入り RM 6.50、Rothmans International 100s  RM6.70
Pall Mall Filter King Size / Pall Mall Lights King Size : 20本入り RM 5.00, 10本入り  RM 2.80

マレーシアの物価の中で考える必要がある

この価格は一体マレーシアの大衆にとってどれほどの重みがあるのでしょうか? いうまでもなく、このリンギット価格を円との換算率を適用して円換算しても、マレーシアにおけるタバコ価格の持つ意味合いはほとんどわかりません。リンギット価格はリンギット社会の中で考察する必要があります。 尚ここで大衆という意味は、低所得層に属する月収 RM 1000 からRM 2000 程度の層であり、月収 RM 5000以上もの所得がある裕福な中流層ではありません。ビルやショッピングセンターで警備しているような警備員の給与は RM1000程度であり、店員でも同じようなものです。工場の一般工員の中でベテラン工員でも残業を入れてこれぐらいです。修繕とかメンテナンスの技能を持った者、ライン係り長当りでもRM 2000まではとてもいかないでしょう。オフィス勤めにおいて経験有る事務員であれば、資格・能力などによってRM 1000 からRM 2000 の間でしょう。

1日タバコを1箱吸う平均的な喫煙者の費用計算をしてましょう。 RM 6.5 X 30 = RM 195 、これは月収RM 1000の層には極めて大きな負担であることはすぐわかりますね。通常この層の人は、西欧ブランドのタバコでなく1箱RM 4程度の安いブランドのタバコを好んで吸うようです。月収RM 2000 の層でも、月のタバコ代 RM 195 は月収の1割 だから大きな比率ですね。独身・単身ならまだしも子供のいる家庭では相当たいへんです。必需消費物品のほかに、ほとんど全ての世帯では公共料金も納めていますから、それら必須支出を前提にしたうえでタバコを吸わねばなりません。
そもそもマレーシアの公共料金または公共的なものの価格はいかほどでしょうか、下に示します。

公共料金類

種類基本料金 推定月額 
最低でもという額
1回の料金
電話RM 26RM 50
携帯電話プリペードの場合RM 40 - 50
水道20立法メートルまでRM12 RM 10-15
電気RM 0.218/ キロワット時間RM 30−40
バス

RM 0.70 - RM 2.0
電車

RM 1.0 - RM 2.5
タクシー

初乗り RM 2
インターネットダイアルアップの利用料金RM 20
下水道半期でRM 48

レギュラーガソリン

RM 1.38/ リットル
ジーゼル

RM 0.83/ リットル

屋台か大衆食堂で食事すれば、1人当り少なくとも RM 3 はかかります、この額ではつつましやかな食事です。マクドナルドハンバーガーの代表的な品の値段: チーズバーガー RM 2.40、 ビッグマック RM 4.8、0 マックチキンセット(チキンバーガー、飲み物、ポテト) RM 6.90、コーヒー RM 1.60、 オレンジジュース RM 2.80

注:水道料金は住居形体分類によって基本料金などが多少違いますが、ここでごく控えめな仮定値です。電話料金なども当然使用頻度でものすごく違うので、控えめな使用と仮定します。ガソリンとジーゼルは10月1日施行の新価格です。


ビールの小売り価格

マレーシアはイスラム教国家とはいえ多民族国家ですから、法律・規則に従がい許可された条件と約束事を守るという条件下のもとで、酒類の販売と飲酒は相当自由にできます。酒類の中ではビールが圧倒的に多数を占め、大メーカーは国内でライセンス生産をしており、都会であればビール購買はたやすいことです。

アルコール飲料はもちろんタバコも自販機で販売するようなことは一切ありませんし、認められる可能性はゼロです。テレビではビール類の宣伝は許されていませんし、ムスリム向けの媒体、場所でアルコール飲料の宣伝は当然御法度です。夜な夜なにぎわう都会のパブやディスコやクラブとは対照的に、郊外のマレー集合地区の屋台や飲食店ではアルコールの臭いは全くないのです。ここにもマレーシアらさしがあります。

そこで、酒類の中で一番普及しているそのビールの値段を近所のスーパー2軒で調べました。表の値段は10月初め時点でのものです。( )の価格は多分まだ旧価格のままと思われます。
ビール名CarlsbergTigerAnchorHeineken
缶  容量320 mlRM 4.50
RM 5.20
小ビン 325 mlRM 5.30(RM 4.80) RM 5.60RM5.60RM5.60
大ビン 660 mlRM 10.0RM RM12.00(RM 9.50)RM12.00

缶ビールのサイズはほとんど1種類、多くて2種類です。もちろんスーパーによって販売価格にわずかの違いはあります。さらに大衆食堂や屋台センターで注文する場合は、多少高くなるのが普通でしょうし、パブなどで飲む場合の値段は当然ぐっと高くなるのは、日本でもマレーシアでも同じですね。日本製ビールのような輸入ビールは都会の大きなスーパーであれば買えるはずですが、当然地元生産ビールより高くなりますね。

消費者物価指数との比較

ところでこういう酒とタバコの価格上昇は、消費者経済の視点からはどう捉えられているのでしょうか。マレーシアはこの何年もに渡って、消費者物価は数字上では低い上昇率を続けています。それでは消費者物価指数の内訳を表にしてみましょう。上昇率のプラスまたはマイナスの数字は年換算した数字です。物価指数の基準は2000年を100にした場合です。
消費者物価

項目の比重2003年1月−7月2004年1月−7月
比重の合計 / 上昇率1001.1%1.1%
項目の内容


食料品33.81.2%1.7%
飲料、タバコ3.10.1%5.0%
衣料、履物3.4-2.1%-2.0%
賃貸、燃料、電気22.40.8%0.9%
家具、装飾、家庭用品・家庭運営5.3-0.5%0.1%
医療、健康関連1.81.9%1.3%
運輸、コミュニケーション18.82.3%0.4%
レクリエーション、娯楽、教育、文化5.90.6%-0.1%
その他雑品とサービス代5.51.2%1.7%


表でおわかりのように消費者物価指数の数字自体の上昇はわずかですね。今年前半も昨年並の1%ちょっとですから、一見気になるような数字ではありません。しかし物価指数は多分に項目の比重の取り方で変化がでますし、多くの人にとって現実の生活上の物価変動感覚と大きくずれるのが普通ですよね。私のようにエンゲル係数の高い者にとって、昨年から顕著になった大衆食堂と屋台の料理値上げと日常買い物するスーパーでの食品類の値上げは、とても 1.1%なんて低いものではありません。例えば、毎日大衆食堂か屋台で食べる麺類がRM 3 からRM 3.5に上がりましたし、果物は2割ぐらい値上りました。

この物価指数構成では、飲料、タバコの比重は 3.1 です。酒タバコ類を全くたしまない私にはまず影響はありませんが、毎日タバコは1箱を吸ってビールは大瓶1本を飲むという人(大衆層)には、物価指数の項目比重の 3.1 は明らかに少なすぎるでしょう。酒タバコ飲み族には、飲料、タバコの比重は食料品並に高くなりますよね。もちろん酒タバコは基本食品のような必需品ではなく嗜好品ですから、その比重を高くしている原因はその人自身にあることは認識すべきですけど。

国民の平均所得を基にして考える

2003年の国民1人当り所得は約 RM 16,000 です。月に換算すれば RM 1,330 ほどになります。上記で対象にした大衆層の月間所得を RM 1000 からRM 2000 の階層に置いたのが、ちょうどいいところでしたね。全国の1世帯の平均家族人数が約4.5人です。夫婦共稼ぎであれば、月 RM 2500 からRM 3000 前後が平均的所得といえるでしょう。この額であれば楽々とはいえなくても苦しさはなくなるでしょう。しかし稼ぎ手が1人だけだと 家族4.5人ではやはり生活は苦しくなります。

この場合、タバコ代を2日に1箱としても、RM 6.50 X 15 = 約 RM100 、これでもやはり家計に占める比率は高いですね。缶ビールを毎日飲む、よって RM 4.50 X 30 = RM 135 を毎月支出なんてことも家計に負担は高いです。まして毎晩大瓶ビールで晩酌とか酒タバコで毎日 RM10 即ち月 RM 300 を使うという生活を享受するには、家族のいない単身者か、子供のいる家庭ならどうしても共稼ぎの必要がありますね。もちろんこういった前提を計算する際、親の代から続く田舎の自家に住むような世帯・人と、都会で借家、アパート生活する世帯・人の場合では、違いが出てくるのは当然です。

タバコ値上げで止める人はごく少ないという定説

値上げに際していつも言われることに、タバコ値上りで実際にタバコを止める人はごくわずかの比率であるというのがありますよね。一時的に減らす人はいてもそのうちに元の喫煙量に戻るという話も聞きます。マレーシアでも同じようであり、2002年に小幅値上げあった時、全体の消費量は前年比1%だけの減少だったそうです。マレーシアの法律に基づいて設立・運営されている全国タバコ会議はこう明言しています、「国内消費が示していることからいえることは、マレーシアのタバコ市場は安定している。」 

同全国タバコ会議によれば、国内のタバコ葉栽培は半島部北部と東部に集中しており、総面積は14000ヘクタールです、タバコ葉生産は増加傾向にあるとのことです。タバコから政府の得る税金は2002年で、合わせてRM18億にもなりkます。同年のタバコの輸出額はRM 7億でした。タバコ葉栽培から工場での作業員、小売り店など広い意味でのタバコの産業に関わる人数は10万人を超えます。

マクロ経済の面でも税率上昇と小売り価格値上りによるタバコ減少論はあまり説得力を持ちませんね。さらに密輸または税金を払わないタバコの増加が予想されます。

密輸タバコの増加を予想する税関 − 9月14日の新聞の記事から−
タバコの税引き上げによるタバコ価格値上げに関して、税関の長官は語る、「これは密輸タバコの増加につながります。タバコが値上げされたことで、これまで長年起ってきた以上にタバコ密輸活動が急増することを否定はできない。しかし合法タバコには今年8月から認証マークが義務つけてあるので、税関取締り官は違法タバコ取り締まりができます。」

密輸ビールの比率 − 9月29日の新聞の記事から −
Carlsberg ビールはマレーシアでは現地法人企業の形でビール醸造をしています。同社の社長は答える、「合法的などんな競争にも立ち向かいます。マレーシアにおける問題は、密輸ビールの存在です。密輸ビールは市場全体の20%を占めています。」


政府は法改正によって、禁煙場所を増やし罰金規則を強化した

これまでもタバコを止めようキャンペーンや小刻みなタバコ税の値上げを実施してきた政府は、今回のタバコ税の大幅値上げに続いて、9月末のタバコ製品管理法2004年改正によって、これまで以上に規制と禁止を厳しくしました。「18才以上の国民の25%は喫煙者である。360万人の喫煙者は若い世代なので、政府はこの喫煙者数を減らしたい。」 と保健大臣は語る(新聞の記事)。しかし私には、18才以上の男女中4人に1人も喫煙しているとは思えませんが、それは常習喫煙者だけでなく、たまの喫煙者も全て含めてのことなんでしょう。

これまでの禁煙場所:パブ、ディスコ、ナイトクラブ、カジノを除く娯楽施設、病院・医院、エアコン装備の飲食店と店、公共交通機関、空港、政府施設、子供施設、学校、ショッピングセンター、銀行カウンタ前、などです。この法改正によって禁煙場所が増えました:公共トイレ、インターネットカフェ、図書館、宗教施設、スクールバスなど。

違反行為者には、法律上最高RM 1万を超えない罰金が課せられことになっています。禁煙場所・施設のオーナーも禁煙の表示を掲げないと、RM3千を超えない罰金を課せられることになりました。

しかしマレーシアの状況を知るものとして、こういった規則を法律通り施行できるとはまこと考えづらいですね。上記の場所・施設のほとんどで、喫煙者が素直に規則を守るとはとても思えないし(もちろん守る人もたくさんいるが)、違反者を取り締まる係官など微微たる数ですから、ごく見せしめ的な取締りや罰金賦課の場合を除いて、多くの場合は絵に描いた餅となることでしょう。所詮こういう嗜好品に関する取り締まり・禁止運動は多分に国民意識の有り方に依存すると思います。

ビール値上げは全民族に影響が出るわけではない

タバコと違ってビールの税率上昇と値上げは各民族に共通に影響はもたらしません、もちろんムスリムには(公式的には)全く関係ないことです。非ムスリムの飲酒者に影響は当然あるでしょう、とりわけ低所得層の大衆飲酒者にです。しかし誰でも経験的に知っているように、世の酒飲みが数割程度の酒代上昇で酒をあきらめるとはまず考えられません。非・酒飲みとしてあきれと同情を感じますな(笑)。
酒類の値上げの予想  ビール会社カールスバーグ作成

地元生産
ビール
輸入
ビール
ウイス
キー
ブラン
デー
発泡
ワイン
ワイン
現行の標準的価格 RM4.759.8062.064.646.813.2
値上げ後価格 RM6.0011.0066.066.051.015.0
上昇率26%12%6.5%2.2%9.0%13.6%


酒タバコの税率引き上げ発表の翌日、クアラルンプールのナイトスポットのパブなどのオーナーの意見が載っていました。一様に、特にビジネスに影響あるとは思えない、酒飲む人は所詮飲むのである、との発言です。ビールの値上りで本当に影響を受けるのは、低所得層の酒飲みであり、これまでも苦しい家計の中で酒代に月15%ほども使ってきたところへ、値上げで20%にも当るようになった、というような人たちでしょう。月収RM 3,000 から4,000を稼ぐ中流層の独身貴や子供のいない共稼ぎ族にとってパブの飲み代が1、2割程度上昇はそれほどたいしたことないでしょうからね。

道徳的・宗教的罪悪な税金という描写

ということで、マレーシアのマスコミが英語で " sin tax" と描写している タバコと酒類に対する税金引き上げは、恐らくタバコとビールのそれぞれの全体的消費量そのものに大して影響は与えないのではないでしょうか。政府の" sin tax" 税収は一応増えるので、立法と行政側はまあ満足となる。消費者はといえば、ぶちぶち不満を垂れながらも、吸う者は吸い、飲む者は飲む、それが非合法タバコであれ、非合法ビールであれ、タバコとビールには変わりはないという満足感はある。よって生活のあまり楽ではない大衆層は、苦しさを承知または多少量を減らす程度で相変わらず喫煙し飲酒する、一方豊かな中流層は取るに足らない程度の痛みを感じるだけなので、喫煙飲酒の量は落ちない。こんなシナリオが浮かびます。1年後の結果を待ちましょう。



納税額決定通知書にまつわるお話し


9月中旬も過ぎた頃、国税庁(税務署)から納税額決定兼納税通知書が郵送されて来ました。正式名を Lembaga Hasil Dalam Negri 、訳せば内国税収庁 という役所は、国が違うので日本の国税庁とは多少違いますが、一般訳としては国税庁でいいでしょう。そして税務を扱う役所として”税務署” とここでは便宜的に呼んでおきます。 

納税額決定兼納税通知書は通称 Borang J またはForm J (英語名) と呼びまして、対象者の納税額が規定に沿って計算してあり、あなたはこの額を納めなさい、という公式な通知書です。ですから誰にとっても大切な書類です。いうまでもなく役所のこの種の書類は全てマレーシア語で書記されています。ですから意味をよく知らない単語は辞書を引いて調べることになります。

納税対象者には外国人も含まれる

マレーシアの個人所得税は歴年を基にした前年所得に対して賦課されます。納税予定者または納税しなければならないとみなされた国民及び外国人に、毎年2月頃管轄の税務署から所得申告用紙(Form BE, Form B など数種類ある)が郵送されてきます。それを受けとった人は、記入して遅くとも5月末頃までに、税務署に送付または提出する義務があります。例え所得がなくても、ごく少なくても提出する義務はあります。それを怠ると後で問題となります。

注:個人で納める所得税に関しては当コラムの「2004年1月と2月分」で掲載している 第373回 「マレーシアで個人として税金を納める −前編−」 及び後編で、詳しく説明していますので、関連知識としてまずそちらを先にお読み下さい。


日本人駐在者のような外国人エクスパトリエイトの場合、多くは雇用されている会社、またはその会社の指定する会計事務所などが、一手に受領し且つ記入提出まで一切の税務事務をしているようなので、Form B など知らない、記入したことがないという、日本人の方も多いはずです。自分で記入、提出する必要はないですが、Form の署名だけは必ずFormの宛名人本人(つまり納税予定者または納税しなくてもよいが所得あるなしの報告義務の有る人)がしなければなりません。

国税庁本部への公共交通はお粗末

さて私は10年以上個人で記入し個人で提出してきました。このため何年にも渡って実に回数多く税務署に足を運び、おかげで税務署の所員などの対応や雰囲気を知ることができました。1990年代の終わり近くまでは、クアラルンプールの外れに位置する Jalan Duta にある政府関係建物が集中した合同庁舎の一画に建つ Lembaga Hasil Dalam Negri本庁が窓口でしたので、行くだけでも実に時間がかかりました。住居地からまず合同庁舎行きのバスが発着するバス停までバスと徒歩で行き、さらに1時間から1時間半に1本しか運行されてないIntrakotaバスを使って往復したので、それだけですでに半日仕事です。

こういう市民に必須の公共施設への足がまこと貧弱であり、よって自家用車を持たない低所得層市民は不便なバスを辛抱強く強く待つか、それとも人の足元を見て吹っかけてくるタクシーを利用せざるをえません(合同庁舎付近で客待ちしているタクシーは外国人相手ではなく、役所を訪れる市民相手です)。税務署や諸官庁の入居した合同庁舎と市内中心部を結ぶ足が、1時間から1時間半に1本しかない小型のIntrakotaバスだけというのは、大衆層の市民のために便利なサービスを提供することをほとんど考えてない証拠ですね。合同庁舎前のバス停は大雨が降れば間違いなく濡れるような屋根の不十分なバス停です。つくづく感じるのは、マレーシアの政治機構と官僚組織は、貧しい者が不便を強いられるようなことに気を使う姿勢に欠けるという点です(ないとは言いません)。公共バスの運行はバス会社の責任、官庁の知ったことではない、では救われませんね。

個人についた納税者番号とファイル

Lembaga Hasil Dalam Negri が90年代の終わり近くになって、私の住居地から遠くない場所に税務署支庁を設けてそこに関係業務を移したので、以後私は本庁まで半日かけて往復する苦難はぐっと減りました。なぜなら私の納税者ファイルがこの支庁管轄に移されたので、ほとんどのケースはこの支庁へ行けば用が足りることになったからです。時間的に大助かりです。尚税金収納の業務は今でも本庁の窓口だけが担当していますが、納税者は複数の銀行から銀行振り込み納税もできます。

最初に納税者登録された税務署・支庁が、その納税者のあれこれの問題にずっと対応します。会社を替わったり住所を移した時、自然に納税者の住居近くまたは務める会社住所を管轄する支庁に納税者ファイルを移してくれればいいのですが、ことは簡単にはいかないようです。ペナンからクアラルンプールに転居した人が自分の納税ファイルが未だにペナンの税務署にあって不便極まりない、と不満を述べていた記事を読んだことがあります。尚納税者になった時点で付けられた納税者番号は、転署しても変わりません。

私の場合最初つまり90年代初めに納税者登録された税務署はスランゴール州のシャーラムにあるそれでした、当時務めていた会社がシャーラムにあったからです。まもなく会社を辞め、その後そこに登録された私の納税ファイルをクアラルンプールの本庁に移してもらうまでに実に数年を要しました。なぜそんなに年月がかかったのか不思議ですが、尋ねた税務署員の誰からも納得いく説明は得られませんでした。このため、その当時の所得申告用紙が手元に届かず、1年以上遅れで申告したこともありました。本庁に足を運んで再発行を請求したり、早く納税者ファイルを本庁に移してくれるよう要求したことを数回も繰り返しました。

税務署支庁の設立によって納税者ファイルも移った

90年代中頃前にようやく私の納税ファイルが本庁に移されました。そこで毎年所得申告用紙を届けたり、それ以外にも税に関する質問や納税のために Jalan Duta にある本庁を訪れました。所得申告用紙は記入後、同封の封筒に入れて郵送してもいいのですが、これまた問題発生の原因になりやすいので、私は以前から必ず本庁(その後は支庁)まで足を運んで担当窓口の受領印をもらうことにしています。郵送では税務署の担当窓口に届いたか届かないかの証拠はありませんし、現に郵便不明事故は珍しいことではありません。

これだけ用心深く提出してきたのですが、それでも1度税務署から、おまえの何年度の所得申告用紙は受け取っていないと言われたことがあります。それならと提出した用紙のコピーとそれに押された受領印を見せたら、庁内のどこかにあるかもしれないが探し出せないのでもう1度記入して提出しなさい、と言われました。所詮役所にはかないませんから、仕方なくまた記入して届けに行ったのです。

申告書提出して7ヶ月後に届いた通知書

さて所得申告書Form B は今年もごく早い時期の2月末には税務署に提出しました。通常の提出期限は4月末ぐらいですが、例年1ヶ月ぐらいこの最終提出期限が延ばされます。
そこで今年の私の場合、記入済み所得申告用紙を提出してから実に7ヶ月ほどもたってようやく、納税額決定書が送られてきたわけです。7、8月頃になっても税通知書が手元に届かないので、おかしいなあ、税務署が送ったのがまた届かなかったのかも知れない、税務署へ行って確認しなければならないなあ、と思っていました。それがようやく届いたわけです。紛失しなくてよかったのですが、いくらなんでも7ヶ月近くもかかるのは遅すぎると思いますね。もちろんこれは私だけではなく多くの納税者に共通の遅れでしょう。

戻し税の対象者になる悲喜

納税額決定兼通知書の内容は、課税対象額いくら、納税額いくらと書かれています。所得申告用紙に付属したページで、あらかじめ自分で税金を算出できますから、通知書の決定額は今年2月提出した時に自分で計算した課税対象額と同額でした。通知書の中味を見ていくと、所得や控除を計算して現れた、課税対象額に対して規定の税率をかけて算出した税額の下の欄に、戻し税が加わっています。戻し税とは算出税額が規定以下の少額納税者には税を戻す措置のことで、額は一人一律 RM 350であり、配偶者には一律RM 350 です。つまり私の場合は、算出税額が規定以下なので、戻し税の対象になるのです。戻し税がもらえるのはうれしいようなでも対象になるほどの所得しかないという悲しい事実、悲喜入り混じった気分です。

尚算出税額が RM 350以下だからといって残りの額がもらえるかというと、そうではありません。つまり、算出税額がRM 200だからRM 350をひいた残りのRM 150 が現金でその納税対象者に支払われる、ということにはなりません。その残り額 RM 150 が翌年に繰り越されることもありませんよ。

税金を納めすぎても自動的に払い戻されない

算出税額 - 戻し税RM 350 = 最終的納税額 で計算した結果、今年の場合はいくらか納めることになっています。それはいいのですが、ただ私の場合、去年の納税後時点で私の納税者番号口座 がプラスになったままなのです。なぜかというと2年前に予定納税の形で税金を納めすぎたため、そのプラス分が未だに残っているからです。これに関しては去年税務署支庁へ行った時、口座にプラスの金額が残っていることを示す公式手紙をもらいましたので、確実です。

日本の場合は税金を納めすぎると、年末調整によって税額調整する、または確定申告調整を経て数ヶ月後には自分の銀行口座などに自動的に払い戻しされますよね。しかしマレーシアではそういうことはありません。通常はそのままです。どうしても払い戻して欲しければ、税務長官宛ての形式で払い戻しを要求する手紙を提出しなければなりません。まず面倒だし、さらにその手紙を提出してから実際に返金されるまでにものすごく月日がかるというのが定説ですので、私は払い戻し要求をしませんでした。どうせ翌年になれば税金を払う額が減るだけだからそのままにしておこうと思ったからです。(外国人エクスパトリエイトで自国へ帰国するというようなケースの場合は、比較的払い戻しが早いかもしれません)

納税決定書には反映されない口座のプラス残高

そこで今年の納税額決定通知書を手にした時、私の納税番号口座のプラス額が 納税決定額から差し引かれていると、思っていました。しかしそうではなく、納税通知書は上記の式 ” 算出税額 − 戻し税RM 350 = 最終的納税額 ”で終っています。つまり通知書の文面上では、新にこの額を納税しなければならない、となるのです。これには納得がいきません、去年の時点での口座プラス額は、最終的納税額 より多いのです。つまり  口座プラス額 −最終的納税額 = いくらかの残額 となるはずです。つまり今年は事実上納税しなくていいはずなのですが、通知書にはまったくそんなことが書かれていません。

これをそのままにしておくのはまずいと思ったので、早速税務署支庁に足を運びました。昨年から相談窓口カウンターが増新設されて、利用者には便利になったので、番号札を引いて自分の番号になるまで待つこと5分でカウンターに呼ばれました。税金申告の季節はすごく混雑していますが、今は違います。早速持参した納税通知書と 納税者口座の残高がプラスであることを示す手紙を係りの女性に見せました。税務署は実に女性の多い役所で、通常応対係りの4分の3ぐらいは女性です、もちろんマレー人が9割方を占めます。

その女性係官は私の質問を聞きながら示した書類を見るなり、税金は払わなくてもよい、とあっさり答えました。もちろんそのはずですから、その答えを聞いても私はうれしいことにはなりません。でなぜ通知書にその旨を伝える文言が印刷されていないかと尋ねれば、納税額決定兼納税通知書は単年度の納税額を計算し通知するものである、からとのことです。よって納税者の口座がプラス残高であっても、通知書が作成され送付される時にそれを参照する仕組みになっていない、とのことです。

それでは納税者が自分の納税者番号口座の残高がもしプラスであっても、それを知らないとか気が付かないと、その通知書の最終税額をそのまま納めてしまうのではと思いました。そしてその可能性は多いにありえます。そこで、もし納税者が自口座のプラス残高を知っており、差し引きした結果最終的納税額を納めなかったら、後で問題は起こらないのか、「あなたは今年税金を納めてない」 と後で追徴金が来たら困る、と尋ねれば、係官は、「そうはならない。」と答えました。なぜなら、Lembaga Hasil Dalam Negri のコンピュータ上ではその納税者(口座番号で引く)の納税状況がわかるからです、とカウンター上のコンピュータ画面を見せてくれました。つまり本庁につながったコンピュータでは、最終的納税額と口座の残高を参照できる仕組みになっているようです。だったら納税者に納税通知書送付時に口座残高も一緒に通知するシステムにすべきですよね。

今年も学んだマレーシア税務実務

まあ不満を言ってもらちは開きませんから、「なるほど、じゃ今年は納める必要がないので納めません。でも心配しなくていいのですね。」 と念を押してから相談窓口カウンターを後にしました。しかし相談係りの、「あなたの口座には残高が最終的税額以上あるから納めなくても問題ない」 ということばだけで、それが文書化されるわけではありませんので、これまで税務署に悩まされた経験のある私としては一抹の不安は残ります。気休めに、その係りの名前と発言要旨は彼女の目の前でちゃんとメモしました。

ということで、今年もこうしてまた一つマレーシアの税金賦課と納税の仕組みを学んだのです。



華人人口の多い町や郡部や下町に居着く中国人女性 前編


中国からのマレーシア訪問者がこの数年、すごいという形容がふさわしいほどの勢いで伸びてきました。それを表で示しましょう。
中国人旅行者のマレーシア訪問者数の伸び
1998年1999年2000年2001年2002年2003年2004年8月まで
15万9千人19万人42万5千人45万3千人55万7千人35万人38万8千人

2003年はSARSの影響で、マレーシアが受け入れる外国人訪問者数全体が激減したので、中国人の訪問者数も前年よりぐっと減ったのはこのせいです。そこで今年は当然ながらのように、2002年を少し上回る勢いで増えていますので、このままいけば年間60万人近くになるでしょう。参考までに、日本人の今年の訪問者数は8月までで19万4千人です。
この数字をまずお知りおきください。

中国人のマレーシア訪問者、その大多数は観光目的つまり社会訪問パスをパスポートに押された旅行者であるのは、各種の報道から確実なことです。その観光目的がしばしば別の目的に変化していることで次ぎのような問題を生んでいます。

違法活動・超過滞在の摘発があると中国人がいつも混じっている

増える中国人の滞在期限超過者 −10月6日付け新聞記事から−

今年 この5ヶ月間だけで851人の中国女性を警察は逮捕しました。その理由は不道徳活動に関わっていたというもので、摘発場所は健康スパ、マッサージ店、パブ、カラオケ、ナイトクラブ、ディスコであり、さらに各地の民家も含まれます。多くの逮捕はスランゴール州とクアラルンプールで起っており、その他ペラ州、ジョーホール州、パハン州です。

警察庁本部の統計では、昨年1年間に外国人5,878人が売春行為で逮捕されました。その34%が中国人です。毎月マレーシアに入国する中国人女性の15%が、滞在期限が切れても帰国していないのです。中国大使館筋は、この2年間でマレーシアに滞在期限超過している中国人は18万人に達すると語ったそうです。その数は増加していると消息筋は見ています。そういった中国人は通常の社会訪問パスで入国します。さらに売春シンジケートも中国女性を同じようにしてマレーシアに連れて来ている、と消息筋は語る。

マレーシアが進めている ”高等教育の拠点としてのマレーシア”政策も若い中国人女性のマレーシアへの道を開いています。多くの中国人女性が国内のカレッジに登録して学生パスを取得します、そして娯楽施設で働くのです。1万人の中国人が国内の高等教育機関に登録しています。以上
Intraasia注:
高等教育における 外国人留学生受け入れ数
国別中国インドネシアバングラデシュタイインド
人数10,5777,7442,1821,7541,574


夜の娯楽施設を警察や入管当局(Imigresen)が取締り活動すると、違法労働、違法滞在の女性が続々逮捕されるのは昔からの日常行事であり、全然珍しくもなんともありません。とりわけ華語紙はこの種のニュースを精細に写真付きで毎回報道しています。こういう報道記事の中で、東南アジア各国出身の女性に混じって中国人女性への言及が目立つようになって久しくなります。上記の摘発ニュースはいわば氷山の一角ですね。

違法活動する側の論理

中国人女性とのインタビュー記事を交えた記事が最近英語紙と華語紙の両方に載っていましたので、抜粋します:

これは売春シンジケートにとってたいへん儲かるビジネスです。ある2人の中国人女性は語る:マレーシアへの航空券、パスポート、ビザ代などで、中国で組織にRM 5000から10,000を払った、KLIAに着くとマレーシア側の組織に目的地までの運送などの名目で1人RM 1200を支払った、中国のエージェントは彼女らにマレーシアでは縫製工として月RM 6000は稼げると語っていた、うんぬん。

彼女たち自身がはめられ、見知らぬ国で取り残される形になった。そこで彼女たちは手っ取り早い仕事−つきあいに憧れている男たちに交際を提供する仕事を選んだ。現在もうひとりの彼女はホステスとして働き、時に売春していると言う。「故郷には年老いた両親があり子供が待っている。国へは稼いだ金を送っています。」 などなど。

スランゴール州のクランからちょっと離れた海岸に面した郡部 Jenjarum には、20才から40才くらいまでの中国人女性が集まっている、200人ぐらいいると言われている、彼女たちはコーヒーショップや安中国レストランで土地の中高年華人男性を誘い、男性のおごりで茶を飲んだり食事したりしている。そういった彼女たちのサービスは15分ぐらいで RM 10 から20 だ、さらに”特別室でのサービス”は RM 200 前後要求される。

なんとそういった中国人女性に同居してもらうこともできる、その場合は月 RM 1,000から 3,000払う必要がある。ある60代の年金男性はこうして貯めた金を中国女性につぎ込み、貯金が切れたのを機会に、中国人女性は去り、さらにあいそをつかした妻や子供には家から追い出された、とのこと。ある60代のビジネスマン華人は、2軒の家を売って愛人である中国人女性を囲った。しかしその中国人女性は去り、妻との関係はおかしくなった。

こういった例は決して珍しいことではない、中高年男性がこうした中国人女性(華語では中国女子と書記されている)に夢中になり、家庭不和や、破産した例は数ある。 地元の与党国会議員(女性)は、こうしたケースの増加に心配を表明しています、「こういった社会問題はつぼみのうちに摘まねばならない、」と。
不幸にも、年老いた男には”愛”であるが、シンジケート組織には金になる経済事象である。需要があれば、どんな手段を使おうと供給がそれに見合わされるのである。

以上は10月前半にStar紙 と 星洲日報紙 に載った記事から抜粋。

華語紙は何回もこの問題を報じてきた

このような期限超過滞在・違法活動の中国人女性の暗躍状況を、華語紙各紙はもう1年以上も前から時々記事にしてきました。華語紙に目を通す者であれば、こういったニュースは今更珍しくもなんでもありません。しかし英語紙しか読まない人には上記で抜粋したようなニュースはあまりまたはほとんど知らないニュースかもしれません。尚多分マレーシア語紙でも同じかもしれませんが、私ははっきりと知りませんのでなんとも言えません。

被害者を装うとするこの種の女性の心理

私は思うに、語っている中国人女性がどこまで本当のことを語っているか、怪しいものです、その内容に相当疑いを感じざるを得ません。まず彼女たちが、通常の仕事でそんな高額に稼ぎができると本当に信じて、マレーシアに来たとはとても思えませんね。今時こんなことを信じて斡旋エージェントに高い金を払って外国へ働きに行く中国人女性がたくさんいるとはとても思えません。百も承知の違法活動を棚上げして自らを被害者として位置付ける気持ちを現していることばですね。

いや違う、中国は広い、ど田舎の若い女性などは世の中のことを知らないうぶな女性が多くて、斡旋エージェントのことばについ騙されて、大金を前払いして外国へ(違法に)働きに行くのです、という話しがあります。まあ一部にはそういう女性も確かにいるでしょう。しかしこれまで物売りの中国女性をずっと眺めてきた経験と(これに関しては後編で書きます)、各地のカラオケやクラブで違法ホステスとして働く中国女性の様子を話しに聞けば、その”うぶな”女性が一夜にして、男相手の商売女性に変身したり、物売りで男らと談笑できるとはとても思えません。中国とマレーシアの両方のエージェントに騙されて仕方なくマレーシアで期限超過滞在して水商売している、売春活動している中国人女性はごく少ない割合だと私は確信します。

一攫千金までとはいいませんが、ものすごく割の良い”仕事”を求めて中国から外国に出たい女性は不足しない、斡旋する秘密組織が中国とマレーシアの両方に存在する、マレーシア華人社会の一部にはこれを受け入れる素地がある、こうしてこういうビジネスは盛んになる一方のようです。

華人界の一部から憂慮感は表明されてきた

華人コミュニティーの識者や華人政党や女性団体がこの状況に対して、家庭破壊を起こしている、起こす要因になっていると、何回も憂慮感を表明し批判を重ねていますが、具体的な行動・対策となると、決め手がないようです。なぜなら華人界にはそういう中国人女性を特に拒まないまたはその手に進んで乗るような人たちが少なからずいるからです(たまたまマレーシアを論じているから華人であり、同じようなことは日本を含めて世界のあちこちにありますね)。

マレーシア華人と中国人の違いは諸所の面でもちろん大きいのですが、民族という範疇だけに関して言えば同じです。誤解を恐れずに例えて言えば、合法違法で合わせて100万人を超すインドネシア人がマレー人コミュニティに擬似的に入り込みやすいように、中国人も華人コミュニティーに擬似的に入り込みやすいのです。

加えて、男が金で若い女の気を引くという古今東西を通じて変わらぬある種の”公理”は、この場合にも少なからず当てはまっているようです。もちろんそうでない場合の方が多いに決まっていますが、この”公理”が存在すること自体を完全否定できる人はいないはずです。こう書くと、金で男の気を引く女もいるではないかという反論も出てくるかもしれませんね。もちろんあるでしょうが、それは男が金で若い女の気を引くというケースに比べてはるかに少数であることも、ほとんどの人が認めることだと思います。ここで述べているのは、道徳論ではなく、経験的事実を表明しているのです。

こういった前提状況を下地にして中国人女性の暗躍が増えたきたのは、多分に中国人そのものの訪問者数が増えたからでしょう。中国人旅行者数が年間数万人に満たないような10年ぐらい前は、そういった問題が、起っていたとしてもごくごく少数であり、明るみにでることは皆無に近かったはずですし、私もマスコミで読んだ記憶がない。とにかく中国人が目立つようになったのはこの4、5年ですね。



華人人口の多い町や郡部や下町に居着く中国人女性 後編


海路入国するインドネシア人の場合

ところで外国人の期限超過滞在、違法労働、違法活動はいうまでもなく中国人に限りません。その種のことに関わる外国人は、多い少ないはありますがほとんどの国籍の人ににまたがっているはずです、(多分日本人も)。 その多いグループの中で間違いなく中国人以上と見られるのが、インドネシア人です。マレーシアに滞在・住むインドネシア人の数が郡を抜いて多いのは、マレーシアと地理的に近接し、歴史的に深い関係を持ち、言語民族の近似性のせいだと言っても間違いではないでしょう。次ぎはその一端を示す記事です。

金貸しシンジケートが違法外国人を手助けしている− 10月11日の記事から−

2週間の滞在許可証でジョーホール州経由でマレーシアに入国するインドネシア人”旅行者”が、滞在期限が切れても出国せずその後の足取りがわからなくなることに関して、ジョーホール州の観光と環境委員会の議長は驚きを表明しました。消息筋は説明する、これらの”旅行者”は労働者になるのが目的で合法的にマレーシア入国する、その後は町から離れたプランテーションなどで労働に就くのです、中には期限超過滞在した後は違法手段で密出国するインドネシア人もいます、と。

インドネシア人旅行者はジョーホール州の Tanjung Belungkor, Tanjung Pengelih, Stulang, Kukup にそれぞれある波止場に船で着いてマレーシア入国する際、入国審査で所持金として RM 700を持っていることを検査されます。もしその者が金を持っていなければパスポートにスタンプが押されなくなります。消息筋は説明する、この見せ金を彼らに貸し出すシンジケートがあり、1回1人に見せ金を貸すことで、RM 50 からRM100 の料金を課すのです、数多くやって来るインドネシア人はこの見せ金貸し屋がいるせいもある、当局の取り締まりがほとんどないのでシンジケートは影響なくビジネスを続けている、と。

コタティンギなど複数の地域のリーダーは語る、こういったことはずっと前からのことである、当局にこれを訴えつづけてきたがこれまでに対策はほとんど取られていない、と。「もし私の名前が公表されたら、シンジケートはどんなことでもやる、自分の身を守れるか心配である。」 ある住民は語る、地元の人間なら誰がこの種の組織のボスかは知っている、と。

Intraasia注:インドネシア人がマレーシア入国時にImigresenの係官から所持金を見せるように言われている現場はKLIA空港でも何回も目にしています。もちろん全部のインドネシア人に要求しているわけではないですが、係官に与える心象によるはずです。


違法滞在の外国人労働者に対する恩赦もある

このように外国人違法労働者は極めて多いので、政府はごくたまにそういった外国人対象に恩赦を与えており、前回は2002年に行われました。そこで一番最近の恩赦発表からです。−10月22日の新聞から−

ハリラヤプアサを前にして、国籍如何に関わらず外国人違法労働者に対して、2004年10月29日から17日間に渡って恩赦を認めることを政府が発表しました。対象外国人はこの期間中、罰金も罰則も課されることなくマレーシアを離れてそれぞれの自国へ帰国することができます。ただし対象となる外国人は:
違法滞在外国人の拘留センターに収容されている者も、裁判を待っている者以外は帰国を認めると、政府。


華人下町で日常的に見かける中国人

さて中国人の活動に戻ります。
私はクアラルンプールで有数の、華人多数の古い下町に長年住んでいるので、中国人の増加とその活動姿を目の当たりにしてきました。私の住むアパートでは出入りしているだけでなく、多分2桁人数の中国人が常時住んでいます。このクラスの中国人が部屋を買って住むことはありえないので、賃借りしています、つまり彼女らに部屋を貸す人がいるということです。早く言えば、明らかに非合法滞在または非合法滞在になりそうな中国人に部屋を貸す華人が、多くはなくても必ずいるのです。通常というか例外なく中国人は複数人で部屋に入居しており、それが時々入れ替わるようです。つい先ほどKLIA空港に着いたようなスタイルの中国人がスーツケースを持って、アパートに出入りするのを十回以上も目撃しています。

尚アパートには中国人の入居が始まるよりもずっと以前から、インドネシア人、バングラデシュ人、ネパール人、ミャンマー人らが入れ替わり立ち代り賃貸して滞在しています。彼ら彼女らは例外なくそれぞれの民族毎に固まって複数人で住んでおり、多くは外国人労働者としてのはずです。中国人グループもいわばその一群なのです。しかしインドネシア人、バングラデシュ人、ネパール人、ミャンマー人と違って、中国人女性が掃除人や飲食店・スーパーの手伝い人や町工場の単純労働者として働ける法的許可はまだ認められていないので、見かけるその中国人女性が何をしているのか不明です。

なぜ中国人とわかるかです。すぐわかる特徴は、彼女たち、時に男もごく少なく混じっている、の話すことばが、マレーシア華人の話す華語ではなく中国語だからです。エレベータや共同場所で耳にするまたは上階下階から聞えてくる彼女たちの会話の発音ですぐわかります。さらに私の住む下町では華人界の共通語はマレーシア風広東語ですが、中国人はまずこの言語で会話できない(中には、福建語、上海語などといった他の中国諸語ができる者ももちろんいるでしょう)。顔見知りのアパート住人華人が広東語や福建語ではなく、華語で話している時その相手側のことばを何となく聞いていると中国語が時に聞えてきます。その場合は間違いなく中国人ですね。

さらに彼女たちの服装と振る舞いからなんとなく華人と違うという感覚を覚えます。これは私が10年以上地元華人コミュニティーの中に埋没して暮らしているからです(私が日本人と知る人はごく少ない)。

アパートだけでなく中国人の存在を感じるのが我下町での光景です。私は毎週2回ぐらい夜、屋台センターへ食事にいきます。すると行くたび毎に、女性主体の中国人物売りがカバンや大きな手下げ袋を持ってやって来て、各テーブルを回って行きます。彼女たちの販売品は半年ぐらい前までは、中国製の薬、食品、お茶、雑貨でしたが、最近は時々違法コピー版のCD・VCDもカバン袋に詰めており、売ろうとしています。これが示すのは、中国から販売用の物品を送る者とそれを運んで来る運び屋とそしてマレーシア側でそれをさばく者 からなる秘密組織が見事に出来上がっていることがわかります。もちろん現場で物売りをする背後には、表には決して出ない一握りのボスたちが必ずや存在するはずです。違法CD・VCDはマレーシア製でしょうから、これは国内の違法CD・VCD製造販売組織が、中国人女性操りシンジケートとつながりを持つことに成功した例でしょう。

私が行く度に必ず目にする光景なので、彼女たちは毎晩こういった定場をいくつか回っているのでしょう。こういう中国人物売りは夜の屋台センターだけでなく、街の中華大衆食堂にも朝から出没することがあります。華人集中地区である我下町では何回も目にしました。物売り中国人は全部ではないですが、見たところそのほとんどは20代から30代の女性です。

数ヶ月前、私はスランゴール州のはずれにある小さな町Sungai Pelelk を訪れて、そこの屋台センターで昼食を取っていたら、物売りの中国人女性が私のテーブルにやって来て中国語で何やら売ろうとします。すぐ 「不要(要らない)」 と断りました、相手するつもりはさらさらないからです。それまで地方の町でも中国女性が徘徊していることは読み知っていましたが、実際にそういう町で目の当たりにしたのは始めてでした。

あちこちでここまで堂々と物売りしているのが不思議なくらいです。そういったことに関わる少数の中国人男性を含めて彼女たちが労働許可証を取得できる可能性は完全にゼロですから、100%の違法活動・行為です。違法滞在かどうかは外見だけからは判断できないのは当然ですが、もう1年くらい見かける顔があるので、当然滞在期限超過の違法滞在ですね。

注:中国人は確か、社会訪問パスの期限は1ヶ月です。


中国女子を受け入れる素地がある

上で触れた地元の屋台食堂センターへ行き、注文した夕食を待っている、食べていると、中国人女性が回ってきて売り物を見せようとしてます。話しかけてくることばが100%中国語です。私は相手などするつもりは全くないので、完全無視するか 「不要」 と一言いうと、彼女たちはすぐ別のテーブルに向かいます。ここで興味深い光景となります。彼女たちの相手となる人たちが、結構いるのです。そのほとんど全ては華人で、中でも中高年男性が圧倒的に多い。一人から数人組みの中高年男性ですね。ついで中年ぐらいの華人夫婦・カップルでしょう。反対に彼女たちの物売り行為にほとんど反応しないのが、彼女と来ているような若い男女華人カップルです、こども連れの華人家族もほとんど彼女たちを相手にしません。数自体ごく少ないが、女性だけの華人グループもその相手・反応しないグループに加わります。

前編で紹介した新聞記事で、どういう男性が中国人女性(華語の描写では中国女子)の相手となるかに極めて似ていることに気がつきますね。もちろんこの男たちは当然ある程度の華語が話せるから互いに意思疎通会話できることになります。中にはその物売り中国人女性に飲み物をおごったり食事まで頼んであげているのも時々見かけます。中国人女性物売りのビジネスはほとんど毎晩のことでしょうから、すでに互いに顔なじみの関係も当然あるはずです。

一晩に百リンギット以上もかかるちょっとしたカラオケクラブやナイトクラブへ行けば、その種の中国人ホステスがいるのは定説です。しかしこういった屋台センターではそこまで金使えない中年・高年男性がたくさん集まってきます。そういう男性にとって時々彼女たちの勧める物品を買ってあげることで、つまり小遣い銭を多少超える程度でたわいのないおしゃべりして相手してくれる中国女子(20代から30代ぐらい)は、格好の相手かもしれません。まさに前編の新聞記事で紹介した郡部の華人男性(の一部)の心理に共通するものでしょう。だから上記で、「マレーシア華人社会の一部にはこれを受け入れる素地がある」 と私は書きました。そう確かにあるのです。

それがちょっと程度を過ぎると、紹介新聞記事のような不幸に結び付きかねません。同民族性の親近感から 魚心あれば水心 と思い込む男性と、異国の地で何であれ割の良い金稼ぎしたい女性、その意識を利用して候補者など一杯いるであろう中国娘を操ることで金儲けにするシンジケート組織、世の中ここでも根本的仕組みはかわらないようですな。わかっちゃいるけどつい、なんてこともごく低い可能性ながらありえますから、私も気をつけましょ、と(笑)。

尚中国人の名誉からも強調しておきますと、こういった活動にマレーシア訪問の中国人女性がすべて関わっているのではないことは、前編ので引用した 「中国人女性の15%が、滞在期限が切れても帰国していない」 ことからも明らかです、つまり85%はまず関係ないと言えますね。しかし残り15%はいろんな違法活動に携わっているようであり、中国人訪問者数自体が年間60万人近くにもなるので、その15%の実人数が大きな数になるわけです。それではその違法活動例を一つだけ上げてこのコラムを終えます。

10月8日の記事から

スランゴール州ペタリンジャヤにある オールドタウン市場でビジネスを営んでいる業者らが、違法商売人に対するペタリンジャヤ自治体当局の取締り活動が不十分であると抗議しています。 何人かの市場の卸し業者が市場近くの家を利用して商売を始めた、彼等の販売価格が市場内よりも安く、市場の業者に影響を与えていると、訴えています。

さらに市場の業者は訴える、市場内で何人もの中国人が安い野菜や衣類を販売している、中国人がビジネス免許を持っていることはありえない、奇妙なことにペタリンジャヤ当局の取り締まり部隊がいつやって来るかを知っているかのようにやってくる直前にすぐいなくなってしまう、と語り、「ペタリンジャヤ当局にはこれら違法販売人に対処行動をとって欲しい。」




ハリラヤプアサ前のラマダンバザールは大賑わい


新月観測の結果1日ずれない限り、11月14日と15日はハリラヤプアサ (Hari Raya Aidilfitri とも呼ぶ)です。イスラム教においてラマダン(断食月)が終ったことを祝う祭日であり、数あるイスラム教祝祭の中で規模、意味合いの両面で最大最重要の祝祭となり、ムスリム界全体がお祝いします。

首相をはじめとしてオープンハウスを主催する政治指導者

ハリラヤプアサ祝いといえば、毎年首相が官邸でオープンハウスを開き、各州では州首相主催のオープンハウスが公邸などで開かれます。さらにハリラヤプアサの日ではありませんが、この時期には政府が観光省の主催のもとオープンハウスを開きます。UMNOだけでなく野党のマレー政党もそれそれオープンハウスを催し、主だったマレー政治家もそれぞれ個人的にもオープンハウスを開きます。 都市や町や村では、マレー基盤の団体やさらには個人的にもオープンハウスを催すことがあるそうです。こうして ハリラヤプアサの2日間が終っても、その後2週間以上経ってもまだ各地でなんらかのオープンハウスが開かれているのです。2, 3週間経って ハリラヤオープンハウス と称しても別に違和感はないようです。まあ例えていえば、日本でも1月中は 新年会 というようなものでしょう。

ハリラヤ前は帰省ラッシュとなる

全国的祝祭日はこの2日間だけですが、ハリラヤプアサ時期と一般にいう時、この2日間だけでなくその両日を含めた少なくとも1週間ぐらいは休暇時期というのが、一般的な捉え方です。マレー人を中心に、ハリラヤ直前に帰省し、家族、友人と故郷でハリラヤを迎えるのが、マレー人コミュニティーのありかた・主流です。小中学校は、今年の場合すでに11月11日から年度末休暇に入っており、来年の1月初めまで休みです。こういったことから、この休暇時期を利用して家族旅行も盛んになるのは当然ですね。

オープンハウスとはなんでしょうか? オープンハウスをマレーシア語では" Rumah terbuka " といいまして、字義上同じ意味です。当サイトでも「旅行者のためになるページ」 「今週のマレーシア」 で簡単ながら、オープンハウスの様子を書いたことがあります。オープンハウスはその名のとおり、誰にでも開かれた(オープンな)飲食物を伴ったもてなしを、ある場所(ハウスなどで)で行います。主催する人たちが、やって来る訪問者に料理を振るまって親交を暖める意味合いが、主催者の全く知らない人にまで拡大されて、誰でも歓迎となります。つまり ”誰でも皆一緒にハリラヤプアサを祝いましょう” ということです。ですから、首相、州首相、観光省、政治家、政党主催のオープンハウスは文字通り全く誰でも、民族、信条、国籍、に関係なく訪れることができます。

これはいかにもマレーシアらしい民族融和の一面が醸し出されます。調べたことがありませんから断言はできませんが、こういう意味でのオープンハウスはなんでもマレーシアにしかないそうです。観光省主催のオープンハウスは当然ながら、とりわけ観光客にも参加を呼びかけており、今年は11月20日クアンタンで開催される予定となっています。機会があれば1度は参加されることをお勧めします。

オープンハウスに内在する性格

ところで、個人や民間の団体が行うようなこじんまりとしたオープンハウスは別ですが、かなりの規模で開かれる 首相、州首相、政治家、政党主催のオープンハウスは、極めて政治的意味合いが含まれた性格を内在しています。まず、与党指導者、大臣、州首相などが主催するのであり且つそういった政治家とさらに経済界の要人がずらっと顔見せとして現れるのです。マレーシアの社会・政治風土では与党幹部政治家は極めて極めて力が強く、且つマスコミや市民からの公開批判が表に出づらいので(批判できないということでなくそういった批判をマスコミは伝えないということ)、そういった実力者の顔見せは、その社会的ステータスの顕示でもあります。なぜならこういった人物は単なる一参加者としては参加しないからです。相当なる費用に上るであろう、この種の大規模なオープンハウスはどこからそんな費用が捻出されるのかといった、詮索はもちろんされません。

この種のオープンハウスについて、マレーシアのマスコミはもちろんこういった観点を書きませんが、内実としてこういう性格があるということを、私は説明しているだけです。尚このオープンハウスのあり方はマレーシア社会が受け入れていることであり、良いとか悪いという評価をすべきものではありませんね。

ハリラヤプアサはムスリムの最重要祝祭

このように広い意味でのハリラヤプアサは、ムスリム社会に大きな大きな意味合いを持っています。ですから社会的にたいへん幅広く祝われ、実に多くのムスリムが心待ちしているのです。ラジオのマレー局人気No1である ERA局をこの時期(ラマダン月)に聞いていると、視聴者との電話会話を含めて DJ のお喋りの中に、プアサ、ハリラヤの単語、話題が朝から晩までしょっちゅう聞かれます。ラマダン月後半ともなれば、もうあらゆる機会といっていいほど、ハリララプアサ関連の話題が混じります。それほどマレー人にはハリラヤプアサは重要なのです。

よってラマダンバザールはどこも盛況

そのハリラヤプアサの事前行事といってもいいのが、ラマダン時期の買い物、ハリラヤ大売りだしセールスです。これを一般にラマダンバザール(Bazaar Ramadhan) などとよく呼びます。全国の町規模以上のところであれば、必ず1箇所以上は設けられているはずです。ラマダン月が始まると一斉に、町や街のちょとした広場、小路、空き地、商店街の駐車場の一角、商業ビルの広いホールを借りる、さらにはある通りをほぼ自動車通行止めにして専用化、こういった場所にいわゆる屋台市が立ちます。この集合屋台またはそれの大規模な屋台市は、1週に1、2回という通常の定期市と違って、ラマダン期間中は毎日商売します。

合法的なラマダンバザールは、都会ではその自治体が場所を定め、出店屋台を選択、くじで決めるなどが一般的です。その場所が上記の広場、小路、空き地、商店街の駐車場の一角、などとなるわけです。尚いうまでもないことですが、そういった定められた場所だけなく、歩道や住宅街の一角、商業ビルの前など、ゲリラ的に勝手に店を出す屋台も全然珍しくありません。こういう屋台は固まっていてもせいぜい10屋台を超えない程度ですが、あちこちに出現しますね。もちろん理論的には取締り対象になります。

10月15日の「新聞の記事から」 ラマダンバザール
売るものはKuih-muih , bubur , ikan bakar, ayam bakar などなどいろんな種類の料理・物です。スランゴール州のペタリンジャヤ市だけで、1200の臨時屋台販売免許を発効しました。しかし免許を受けずに商売する屋台人も多いのです。

シャーラム市では、ラマダンバザールの場所で屋台を出すには区画にRM100 かかります、椰子の実ジュース売りはゴミが多いので、RM50追加です。臨時免許を申請し、受領されると健康診断証明が必要です。バザールの区画場所は抽選で決まります。

ペタリンジャヤにおけるラマダンバザールの場所:Sek17/1A, PIS 8, SS66/3, Section 8, Taman Sri Manja, Desa Mwentari, Damansara Damai などです。シャーラムでは27箇所をラマダンバザールの場所にあてます。


バザールの出店場所の競争は激しい

屋台人といっても、この時期だけ屋台を出す人もいます。つまり屋台商売を1年中生業としてない人も参加しますから、競争はより激しいです。ですから人出の集まる場所では場所取りが熾烈になります。こういうことを知れば、屋台出店資格と場所決めにくじ引きが取りいれられるのもわかりますね。今年はヒンヅー教の祭典 デーパーバリが11月11日となる偶然の日程のため、普段はインド人屋台がほぼ圧倒する クアラルンプールのLorong Tuank Abdul Rahman通り界隈の屋台割り当てで、マレー屋台に9割の割り当てがあり、インド人屋台人が強い抗議を出したことがニュースになりました。

10月1日の「新聞の記事から」 ハリラヤとデーパーバリの屋台街の割り当て
今年11月中旬はハリラヤプアサと デーパーバリの休日が連続する日程になります。そこで(ハリラヤ前の)ラマダンバザールとデーパーバリバザールの競合問題が出ています。クアラルンプール市庁は、この例年バザールを開く(市内の一等地である)Lorong Tuank Abdul Rahman とJalan Masjid India における屋台出店の場所の割り当て抽選を行いました。

しかしマレー人商人とインド人商人の割り当て区画数の割合に関してインド人商人から強い不満が出ました。市庁は、マレー人用 556区画、インド人用に66区画としました。インド人商人は同時の祭日商戦なのに、インド人区画が圧倒的に少なく不公平だとの主張です。インド人商人の団体は、クアラルンプール市庁にこの件で数回申し入れしたが返事がないと怒っています。


Jalan Masjid India 界隈のラマダンバザールは規模が大きい

ラマダンバザールはこのように全国至るところで開かれているので、何もクアラルンプールだけを強調する必要はありません。ただクアラルンプールは私の地元なので容易に訪れることができる、人口の面でその規模はやはり国内有数の大きさであるということからここで紹介します。ラマダンバザール兼デーパーバリバザールとしては最大規模と言われる Jalan Masjid India とそれに平行する Lorong Tuank Abdul Rahman(小路) 地区を、10月終りの土曜日の夕方訪れて見ました。人出は相当多いと言えます。特に道幅の狭いLorong Tuank Abdul Rahmanは所によってはすれ違うのもたいへんな混雑ぶりです。土曜日の午後、雨もない という好条件も重なったからでしょう。

この2本の通りは伝統的マレー且つインド商業通りとしてとして非常によく知られた、Tuank Abdul Rahman通りの内側にほぼ平行して走る短い通りであり、ラマダンバザールまたはデーパーバリバザールの会場として例年用いられています。Lorong Tuank Abdul Rahman は毎週土曜日夜に屋台市が立つことでも知られていますね。ことしは2つの祝祭が近接しているので、上記の新聞記事のように、インド人のデーパーバリ屋台もこの通りに混じっています。Tuank Abdul Rahman通りとこの2本の通りは普段からたくさんのマレー人とインド人が買い物に訪れる一等地ですから、屋台商売人は誰しも区画を欲しがることでしょう。何百軒と並ぶ屋台街を歩いて感じたのは、全体の数からいえば圧倒的にマレー屋台が多いです。全体の1割強という数は、インド人商人から見ればいかにも少ないでしょうね。

写真もたくさん掲示しましたので雰囲気をどうぞ

その様子を写真に撮りましたので、別ページで掲載しています。この Ramadhan Bazaar 2004年の風景か をクリックしてくだされば、写真だけを載せたページが開きます。老朽デジカメのピクセル数が低く、夕方なので周囲がすでにちょっと暗くなりかけているため、シャープさに欠けるのが我ながら残念ですが、とにかくラマダンバザールの雰囲気を感じてください。

そこに写っているように、食料品、家庭手料理風のマレー料理、マレー菓子、一般的マレー大衆食、ジーパン・Tシャツなどの日常衣類、アクセサリー、ムスリム用の男女衣類、装飾品、カセット、VCD、布切れ、靴スリッパ類、造花類、室内装飾品、などなどがこのラマダンバザールでは売られています。ここでしか買えないような物、食品は多分まずないと思いますが、それでもこれほど多くの人が集まってくるのは、やはり大きな市すなわち大バザールという雰囲気と有名な市という”ブランド名”にあるのだろうと、私は思います。これぞラマダンバザールなのに、白人や日本人などのすぐ見てわかる外国人旅行者はほとんどというか全く見かけないバザールです。この傾向は毎年同じですね。

何はともあれ、今年はもう機会ない方でも来年こういったラマダンバザールを訪れて、雰囲気や食品を楽しんでみるのもいいと思いますよ。

追記:11月中旬
ここで紹介した Jalan Masjid India 通り界隈のラマダンバザールのことです。デーパーバリが11日、ハリラヤが14日と、もう目前に迫っていますので、界隈の人出はいよいよ高揚し商売繁盛のはずです。ところが、この通りで長年商売する数十の店舗主らが、強い不満をクアラルンプール市庁に訴えているニュースが載っています。
いわく、通りの片側だけでも二重に重なった状態で出店している屋台店が店舗自体を隠すような状況で店の存在が見えない、おかげで店舗の売上は一向に伸びないと不満を語っているそうです。(ごく一部の理由に支持するインド系政党の違いにもよるそうですが、大した理由ではないでしょう)

店舗はテナント料も毎月払い、毎年の戸口税(不動産評価税)も払わねばなりませんし、従業員の給料は固定費です。それなのに期間中の30日間だけ出店する屋台は、単に市庁に納める出店許可料だけで済む(確か数百リンギット)、そして中には1年中商売してないパートタイムの屋台商売人もいる、さらに悪いことに、市庁から出店の許可を得てない違法屋台がたくさんたくさん混じって通りに出店している、市庁の取締り部隊は最初の1週間だけ取り締まったがあとは野放しであると。これでは店舗の商売が伸びるわけはない、とのことです。

確かに Jalan Masjid India 通りを歩くと、店舗の前に隙間なく出店している屋台ばかりが目にはいり、店舗はほとんど目に入りません。通りから目に入るのは店舗ビルの上階だけですね。長年ビジネスをこの地で営む店舗者が不満を漏らすのは、至極当然のことと、同情したくなります。

読者の方は多分状況が頭に浮かばないでしょうから、たとえて見ましょう。東京上野のアメ横通りに、年末の稼ぎ時に店舗を隠すような形で(店舗と無関係の人の)屋台がぎっしりと出ている状況を思い浮かべて下さい。大阪であれば道頓堀の商店街かな。これでは店舗側が怒るのも無理ありません。

マレーシアの当局の弱点は、取締り活動が一定していないことです。ここでも話題になっているのが、許可を得なければ出店できないはずの屋台に混じって堂々とたくさんのたくさんの無許可屋台が出店し、それがいつのまにか野放しになってしまう。これは何もこの時期、この通りだけのできごとでないのは、マレーシアを知る人間なら誰にでもおなじみのことです。クアラルンプールの屋台人の数割は屋台許可証を持たない違法屋台というのが定説です。
商売大繁盛であるはずの、デーパーバリ、ハリラヤ路上商戦の裏にはこんな事情もあるというお話を紹介しておきました。




事故死した象の鼻を切り取るのは惨酷な行為か、それは許されるのか?


最近の 「新聞の記事から」 で、ジョーホール州で象2頭が列車と接触して死んだニュースを載せましたね。野生動物庁の係官が翼朝現場で調べた際、1頭の象の鼻が完全に、且つ耳の一部が切り取られていました。何者かが死んだ象、または死にかけていた象から文字通り切り取って持ち去ったのです。私は新聞に掲載された写真を見ておもわず、ひどいことするなあ、と思いました。これは私だけでなく、この記事と写真を見たほとんどのマレーシア人が同じ感想を抱いたはずです。

象を傷つけたり殺したりするのはもちろん、象の身体の一部を勝手に所有することは、マレーシアでは法律で禁止された違反行為です。象は保護動物なので、象の身体のどの部分も所持してはいけない、もし見つかれば起訴されて罰金RM3千か3年の懲役などに処されるとのことです。

野生象がマレー鉄道の列車に接触して死んだ事故 (11月3日と4日の新聞の記事から抜粋)
マレー鉄道のクアラルンプールからジョーホールバルへの南下線で、線路を横断しようとしたメス象2頭が列車に跳ねられて死亡しました。起った場所はジョーホール州の Labis あたりであり、死んだのはEndau-Rompin 国立公園内に生息する象と見られており、6頭からなる群れの2頭でした。列車は脱線もせず、乗客に怪我はありませんでした、その後列車は近くのBekok 駅で停車しました。

この事故は列車が19時ごろプランテーション農園に近づいた時、象が急に線路上に飛び出したとのことです。2頭は即死し、他の4頭は逃げました。象は野生動物庁の係りによって、近くに埋められました。(Intraasia注:この記事の一部は誤報だと翌日の記事でわかりました)

(以下は4日の記事)
この象の死におかしな状況が取り巻いています。死んだ1頭の象の鼻が切り取られ、耳も一部が切り取られていました。マレー鉄道幹部が明らかにした列車の運転手の報告に寄れば、事故が起きたのは Labis とBekok の間の線路で19時ごろであり、列車にあたったのは1頭だけでした。列車を止めて検査したところ列車には異常がなかったので、発車させましたが、その時点では象はまだ生きていました。この区間はよく動物が出現するので、もともとスピードは出さないとのことです。

運転手の報告でマレー鉄道のトロリー車で係りが現場に到着した21時ごろ、象は死んでいると発見されました。ジョーホール州の野生動物庁の長官は説明する、象が直接列車にはねられたのではないだろう、線路に近づきすぎて列車に接触したのだろうと。翌朝野生動物庁の係官が現場に付いた時、もう1頭はまだ生きていたが午後に死んだとのことです。「1頭の象の鼻が切り取られていた。我々はこの犯人を捕まえたい。」


民族によって動物虐待の捉え方の意味が違う

以上このコラムの前提になるできごとを知っていただきました。
ここでは法律的な違反面は直接関係ないので触れないとして、死んだ、または死にかけていた象の鼻を切り取る行為は許されるのか、ひどい行為なのかを考えてみましょう。なぜなら、ある動物に対してある人がくわえた行為への評価は、民族と文化と宗教によって大きく違うので、A という民族がある動物に加えられた行為を残虐だと感じて批判しても、B という民族にとってその行為は別に残虐な行為でも、いけない行為でもないという事例は世界に数あります。

よく知られた例でいえば、韓国やベトナムでは犬を料理して食べますよね。両国では慣習的に、伝統的にある種の犬を食用に用いてきました。それを他国、とりわけ西欧国の民が残虐だと一方的に非難しています。ソウルオリンピックの際、韓国政府が犬の食用を他国からの訪問者の人目につかないように強制力をもって対処したことがニュースになりましたね。西欧の”動物愛護運動”では常に犬を食用にすることを弾劾しているそうです。

文化相対主義の完全なる欠如

この事実が示しているのが、上で述べた、「Aという民族がある動物に加えられた行為を残虐だと感じて批判しても、Bという民族にとってその行為は別に残虐な行為でも、いけない行為でもない」 例です。自分たちの文化観を一方的に世界の規範化して、それを文化の違う国の民にも押し付けているのですが、やっかいなことは、そういう批判を投げつけている国の民、とりわけ自称動物愛護主義者は、そのことを全く自覚できないことです。

文化の相対主義という観点が一番必要なのに、まず可哀想、という感情論、次いで残虐だという差別観 で、犬の食用を捉えてしまいます。韓国やベトナムの民が例えば英国へ行って同じ行為すれば、それはその韓国やベトナムの民が訪れた他国の文化を尊重しない、不快感を与える行為だと批判されてしかるべきであり、時には法律違反に問われてもしかたありません。

しかし韓国やベトナムの地で、韓国人やベトナム人が食用の犬を料理して食べてもなんら責めも批判も受けるべきことではありません。食用の犬は種の絶滅に瀕した稀少動物でも、保護動物でもないし、さらに近所の飼い犬を黙って捕まえて食べているわけでもないからです(それは他人の生き物を盗んで殺す犯罪行為です)。

自国、自民族の文化観を押し付けることが世界の規範化と信じ込んでいる西欧流のあり方に強く反対、反論すべきですが、アジアの国の中には政府と民衆の両方に、貿易などのマイナス面を心配して弱腰になる場合が見られます。さらに西欧流の動物愛護主義を金科玉条のごとく考えるアジア人もいますね。

評価すべきは評価し、拒否すべきことは拒否

誤解を避けるために明確にしておきますと、私は西欧流の動物愛護主義がすべて悪いとは決して言いませんし、思いません。西欧流の動物愛護主義が、絶滅に瀕した多くの野生動物への保護の原動力になった、なっている事実は充分評価すべきであるし、それを見習う部分も充分あると思います。アジアやアフリカで絶滅の恐れのある、瀕した動物の保護に関わっている人たちに、西欧でその種の教育を受けた人も多いし、少なからずの西欧の保護運動家が携わっていることは知っています。
必要なことは、評価すべき点は評価して素直に取りいれる、しかし文化相対主義から受け入れられない点は受け入れられないとはっきり表明して拒絶すべきだ、ということです。

もっともわかりやすい捕鯨の例をあげましょう

この問題に関して日本人であれば誰でも知っていることに、捕鯨がありますよね。捕鯨は日本人だけでなく一部のエスキモー(イヌイット)やノルウエー人が昔から行ってきた、いわば民族的、伝統・慣習的狩猟行為です。捕鯨を鯨が可哀想だから禁止するという非難(批判でなく非難、攻撃ですね)は、ここで述べた 自民族の文化観の押しつけと規範化行為である面が極めて多い。多いと書くのは、鯨の種の絶滅を愁る観点からの捕鯨禁止論もあるからです。

もし鯨が本当に種の絶滅に瀕している、またはその恐れがあるのであれば、捕鯨には反対し、捕鯨を禁止すべきであるというのが私の立場です。いくら民族的、伝統・慣習的狩猟行為であろうと、人間に鯨を絶滅に追い込む権利はないからです。鯨肉を食べなくても、日本人は経済的に困りませんしね(鯨肉がなくても困らないけど、私は鯨肉は好きですね。もし安価でふんだんにあれば食べたいと思います)。

どうもよくわからないのは、鯨は本当に種の絶滅に瀕しているのだろうか、ということです。科学者のデータにも相反する結果が出ているようですし、データ自体が世界の鯨保護運動と捕鯨運動の間で翻弄されているような感じを抱きます。とにかくどれが、感情と利害を抜きにした、正確で科学的なデータなのかよくわかりません。

ところで日本は太平洋の極小諸国などに援助を餌に捕鯨賛成投票を勧めているという批判が、捕鯨禁止派からありますね。そういう捕鯨禁止派の多く(全部ではない)は自己文化観の押しつけ主義者であることを自覚してない民と国なので、批判自体に説得力がありません。こういった文化帝国主義的批判に対して援助を餌に投票を買うのは、毒を持って毒を制す、いわば自衛策でしょう。もちろん誉めているのではありませんよ、どちらもどちらだと言いたいのです。

死んだ象でも鼻の切り取りは違法行為

それでは象の事故死による鼻の切り取りに戻りましょう。
新聞報道によれば、象の鼻が切り取られたのが、その象が死んでからなのか死にかけている状態であったかは特定されていません。切り取られて持ち去られたのは事実であり、鼻のなくなった血にまみれたむごい写真も添えられています。

死にかけの状態で鼻を切り取るのはどんな理由であれ残虐な行為なので許せませんし、誰でもその行為に反対されるでしょう。そこで象の鼻が切り取られたのが死んだ後だと仮定します。一番最初に書きましたように、これは法律違反です、その観点からは当然捜査されて罰せられべきものでしょう。

象にごく詳しい知人の解説

で象の鼻は何ゆえ切り取られ持ち去られたのでしょうか? そこが私にはわかりませんでしたので、象に非常に詳しい知人に尋ねました。彼はジャングルトレッキングツアーなどを催行しているその道のプロであり、象扱いもでき、象の保護啓蒙活動に熱心なマレー人です。彼の説明に寄れば、今回切り取った鼻は、恐らく民間伝統薬か民間伝統マッサージに用いられるだろうとのことです。ヒンヅー教では象を神聖視して、その効果をあがめる人がいるので、象の身体への需要があるということです。もちろん彼の解釈ではということであり、ヒンヅー教徒一般への批判ではなく、中にはそういう不届きなインド人もいるということです。切り取ったのは(それを売ることを目的とした)インドネシア人かもしれない、と彼は説明してくれました。尚私の質問に、大昔はともかく現代ではオランアスリは象を狩猟しないと彼は断言しています。

鼻の切り取りを残虐と考えない人もいる可能性

すると一部のこの種の人たちにとっては、(死んだ)象の鼻を切り取ることは残虐な行為でも可哀想な行為でもないことになります。もちろん法律上の違反行為は別にしてですよ。この種の人たちの捉える宗教観と文化観によって、象の身体は病気なり身体を癒してくれるものであると、捉えていることになり、そこで鼻を切り取ったとしてもその人たちの文化的または宗教的価値観では残虐でもいけない行為でもないことになるはずです。もちろんこれはインド人を含めた多くのマレーシア人に共感されない行為であるのは間違いないでしょう、しかしと私は一抹の留保観を持ちます。

最初象の鼻切り取りの記事と写真を見たとき、ひどい行為だなと思いました。今でもそう感じること自体に変わりはありませんが、そういう行為がなされた背景に興味を持ったわけです。マレーシアの法律に違反することなので当然罰せられるべきだと思いますし、象の鼻を切り取った者たちを擁護する気持ちは沸いてきません。しかしたとえ罰せられてもその行為を働いた一部の者には、文化観の違いから納得いかないことでしょう。

今回の場合は盗人行為としか考えられない

宗教観と文化観はまこと変え難いものですが、しかし永久に不変なものでもないはずです。生きる時代と経済的動機の影響を多いに受けます。経済的動機とは、簡単にいえば金儲けにつながるということですね。それでは象の鼻の切り取りは、宗教観と文化観ゆえに許される行為なのでしょうか?

かつて昔は宗教的動機に基づいて象の鼻を切り取っても許された時代があったかも知れません、しかし現代では圧倒的多数のマレーシアのヒンヅー教徒がそういう行為を許すとは考えられません。つまり生きる時代が変わったということです。鼻切り取り行為が経済的動機の面から許されないのは、当然でしょう。生息数が極めて少ない保護動物である象は、とりわけこの種の経済的狩猟から守る目的もあって法律で保護されていますからね。

唯一象の鼻の切り取りを正当化する道は、宗教観と文化観を表に出して皆に訴えて、堂々と(死んだ)象から切り取る場合だけでしょう。しかし象が保護動物であるだけにこれは極めて共感を得にくいことですね。食用の犬を堂々と料理したり、世界公知のもとで絶滅に瀕していない種の鯨の捕鯨をするのとはいささか違います。ところが今回の象の鼻の切り取り事件は、こっそりとまさに盗人的に行った行為ですので、擁護する点など全くありませんし、擁護論が起きるとは考えられません。
尚(死んだ象を対象にしたと仮定する限り) 残虐だ、可哀想だとの感情論だけの批判も多少的外れであるとの、私の主張もわかっていただけたことと思います。



数字で見たマレーシア、 その23


これまで断続的に掲載してきた数字で見たシリーズです。マレーシアに関する様々な統計数字を掲載しています。ここでは、数字を視点にしてマレーシアの諸面を知ってください。

まずビジネス・産業界に関する数字です。

証券会社

大きく3分類すれば、

証券委員会が11月1日から払い込み資本の額を緩和すると発表しました。
総合証券会社 の場合は RM 1億、 非総合証券会社の場合は RM 2000万 となる。

資本投資の比較

1990年から2003年までを期間にした場合、投資対象別の平均年利益率(上昇率)
投資対象 参考:
消費者物価
KL株式市場の
上場企業の株
3ヶ月の
定期預金
住居購買
の値上り
被雇用者
福祉基金配当
年利益率3.10%3.53%5.84%6.20%6.70%

AMResearch 会社が調査した数字です。

マレーシアの石油開発

マレーシアの石油埋蔵量は世界第27位に番付られており、その量は48億バーレルです。現在の日当り生産量を適用すれば、この埋蔵量は18年続く計算です。マレーシアの石油探索している総面積は49万平方キロに及びます。その内大陸棚部分が33万平方キロを占めます。現在の日平均石油生産量は60万バーレル、天然ガスが 58億スタンダード立法フィートです。

広告費の増加

今年1年間全国で使われる広告費の総額は前年比18%の伸びが期待されています。総額でRM45億ほどですと、調査会社Nielsen Media Research が発表しました。
2004年上半期の広告費
媒体テレビ新聞雑誌ラジオ映画その他合計
金額5億9千万12億8千万7000万7700万600万4200万RM 20億
比率28.6%61.9%3.4%3.8%0.3%2.1%100%
年比較
伸び率
39.7%20.3%4.4%12.6%33.2%-2.6% 23.8%
(期の伸び率)

国内に3社ある携帯電話網会社が最大の広告主で、Maxis Comunications RM8500億、DiGi Telecomunications RM4200億、Celcom Malaysia RM4000億です。

消費面での経済指標

賃金上昇率

マレーシア雇用者連合会が全国247社を調査した2003年賃金調査報告です(10月中旬)。その内113企業が製造業で、134企業が非製造業です。対象はその企業に雇用されている幹部社員を除く被雇用者の賃金。
1997年1998年1999年2000年2001年2002年2003年2004年予測
平均賃上げ率8.58%6.22%6.00%6.90%6.68%5.89%5.66%5.68%


石油価格の比較

世界的原油価格の急上昇に対応するため、ガソリン類の値上げを即実施すると、国内取引と消費者省が発表しました。それぞれ1リットル当り5セントの値上げです。下の表は東方日報の記事を引用。
1リットル当りの新価格

レギュラーガソリン高オクタンガソリンジーゼルプロパンガス
半島部RM 1.38RM 1.42RM 0.831RM 1.40/Kg
サバ州・サラワク州RM 1.38RM 1.40/ 1.41RM 0.834/ 0.828RM 1.48/Kg

10月初めの東南アジア諸国での価格をリンギットに換算した表
タイシンガポールインドネシア
レギュラーガソリンRM 2.12RM 3.37RM 1.23
ジーゼルRM 1.42RM 2.02RM 0.719

これを見ると、近隣諸国よりもマレーシアでの価格は確かに安いです。タイへのジーゼル密輸出が起るわけですね。

マスコミ・通信関係

インターネット利用者

マレーシアコミュニケーションとマルチメディア会議の調査によれば、国内のインタ−ネットダイアルアップ接続者数は、今年第2四半期 で311万人です。この数は意外にも第1四半期の314万人よりも減ったのです。インターネットしたい者はすでにほとんどが接続しており、これからの新規接続者は初めてのPCユーザーになっていると、識者は論じています。ブロードバンド接続の登録者は、今年第2四半期やや増加して17万人ほどです。

国内のテレコミュニケーション会社の収入割合を分類すると
音のサービス収入 81%:パブリックスイッチ電話、通常電話
データサービス収入 19%:リース線、ISDN、IP-VPN, ATM、X.25 など
になるそうです。これは市場調査会社IDCの発表です。

各新聞の販売部数

日平均の販売部数

華語紙
英語紙
マレーシア語紙
新聞名星洲日報南洋商報中国報光明日報The Star New Straits
Times
Berita
Harian
Utusan
Malaysia
販売数319,000147,000122,000104,000307,000135,000228,000246,000

新聞発行数の調査会社ABC が調査発表したもの。中国報の夜版は含まず、東方日報は調査に含まれていない。

華語紙はもう2種類あります、この調査に含まれていない東方日報と光華日報です。この2紙を入れなくても華語紙全体の販売部数はマレーシア語紙2紙の合計よりはるかに上回ります。

マレーシアで感じる地震

珍しい統計数字です。マレーシアの地震に関して、数字的な知識として知っておきましょう。ただ現実になんらかの被害がでるのは、極めて極めてまれですね。スマトラ島で地震があった影響で、ペナン島の高いビルで揺れを感じたなんていうニュースがごくたまに載ります。

体感地震の州別統計  −マレーシア気象庁発表−
クアラルンプール
スランゴール州
ジョーホール州ペナン州N.スンビラン州
回数2716212
Mercalli等級
マラッカ州ケダー州パハン州トレンガヌ州クランタン州
回数36302
Mercalli等級
ペルリス州ペラ州サバ州サラワク州
回数11119 3
Mercalli等級

回数:サバ州とサラワク州のみ統計年が1923年−2003年で、半島部は全て1909年から2003年です。
Mercalli 等級:修正Mercalli 等級を用いて観測された最高値を示す。

震度というのは日本の基準ですよね、Mercalli 等級 というのがどういう等級か、私は知りませんが、地震の規模を計るいわゆるマグニチュードとは違います。100年近い間に、クアラルンプールとスランゴール州で27回の有感というのは、確かに珍しいぐらい少ないですね。

中学生対象の全国統一試験

教育省が実施毎年学年末近くに実施する、生徒の進路に大きな影響を持つ、全国一斉の統一試験があります:小学校段階でUPSR, 中学校段階でPMR, SPM, STPM です。
受験生徒数の 公立と私立の割合に注目して下さい。

今年のUPSR試験の受験者数は約 50万人で、私立学校の生徒は1.2%でした。

PMR (中学校3年生対象)
2004年のPMR試験は9月末から5日間の日程で行われました。これは全国の中学3年生が学年後半に一斉に受ける統一試験です。
今年は422152人が受験します。受験生徒の内訳は、92%が政府系中学校、4.6%が州立または団体立の中学校、3%が私立中学校、残りが学校終えた個人資格の生徒です。

SPM (中学校5年生対象)
中学校5年の終りに受ける全国統一試験 SPM の今年の受験生徒数は、416,741人です。この試験は10月末から11月9日までの日程で行われ、続いて11月22日から12月初めまで再開されます。
総受験生徒数教育省管轄下の中学校州立または州団体翼下の中学校私立中学校個人受験
416,741人359,725人16,673人13,232人27,111人
割合86%4%3%


STPM (中学校6年後期課程の生徒対象)
STPM試験は11月2日から9日まで、及び22日から12月2日まで行われます。
総受験生徒数教育省管轄下の中学校私立中学校個人受験
71,142人58,455人5,822人6,865人


保健・病気・身障者

HIV感染者及び AIDS患者の統計 

保健省の統計 期間:1986年から2003年9月末まで
年齢2歳未満2−1213-1920-2930-3940-49 50才
以上
不明合計総人数
HIV0.20.61.536.842.814.22.71.2100%56,677
AIDS0.41.22.320.944.822.67.30.4100%8,027
感染
分類
麻薬
使用者
薬服用
による
臓器
受領
同性
愛者
ヘテロ
セクシャル
母親から
感染
不明
合計総人数
HIV75.4微少微少1.012.70.710.2
100%56,677
AIDS60.70.2微少2.025.61.210.2
100%8,027

AIDS による死者は6199人です。

麻薬患者数


新規の常習
麻薬使用者
麻薬常習行為
に戻った者
麻薬常習
者の総数
2003年1月から7月10832936920201人
2004年1月から7月133211341826739人
変化率23%43%32%

麻薬常習者で、麻薬不使用に失敗してまた元の常習行為に戻る率は約7割だと、保健大臣が明らかにしています。

身体障害者数

2003年12月の時点で、福祉庁に登録してある身体障害者の数は、132,458人です、と女性・家族・コミュニティー発展省の政務次官が国会で明らかにしました。登録していない人もいますから、実数はもっと多いということです。

身体障害者の数は、132,458人の内、視力に支障がある人は14,153人、聴覚に支障がある人は22,749人、身体が不自由な人は45,140人、精神に支障がある人が49,336人、その他1080人 という内訳です。

交通事故

今年9月末までの交通事故統計 10月後半警察庁発表
総事故件数死亡者数 その内訳
(運転手)
バイク及び
相乗り者
自動車と
同乗者
歩行者自転車 トラックと
同乗者
240,753件4,639人
2,634人864人491人222人186人

2003年中に起きた交通事故死者数は、6282人でした、内57%がバイクに因る死者です。

称号

各州のスルタンとスルタンのいない州はガバナーが授与する称号は、毎年何百と与えられています。これと別に連邦レベルで国王が授与する称号もあります。称号名はほぼ同じです。
連邦授与の称号の数は合計数が決められているとのことで、 上から Tun が50人、Tan Sri が195人、Datuk が270人となります。この数はある1年の授与数ではなく、累積授与数です。



クアラルンプール内外を走る各種電車はここを改良すればもっと利用し易くなる ‐前編-


クアラルンプールを中心としてその周辺・近郊を結んで運行されている電車網には4種類あります。

現在ではStarline と Putraline の両方とも政府持ち株会社SPNB の翼下にはいりました。Komuter はマレー鉄道が運行し、KL Monorail は独立した民間企業が運行しています。

クアラルンプールの公共交通網は、モノレールを除くこれらの電車網が完成して軌道に乗った2000年ごろからぐっと良くなりました。90年代中頃まではバスしかなかったのですから当然といえば当然ですが、東南アジアの首都として、ジャカルタやハノイはいうまでもなくバンコクよりも早く且つ路線数多く建設し運行している先見性は賞賛すべきですね(都市イコール国家であるシンガポールは除外します)。大多数の利用者は、電車網にいくつかの不満はあってもまず利便さと快適さを評価していることと思います。

そこでこの4種の電車に関して、開通以来毎年それぞれに何十回も乗り続けている一人の乗客として、良い面と優れた面を評価した上で、こうしたらもっと利用しやすくなるのにという提案と意見です。

時刻表はなくてもいいが、せめて運行頻度は公知すべきだ

Komuter を除いて、電車・モノレールの時刻表は掲示板であれ配布式紙製であれ、全く存在しません、つまりある駅を何時何分発という運行は約束していません。

注:このコラムではわかりやすい24時間表示法を使いますが、Komuter以外の電車網では、午前または午後何時という表示だけです。一般にマレーシアでは飛行便などの例外を別にして、24時間表示法はほとんど使われません。


Komuter

電車網の中で唯一 Komuter は細かな時刻表を作成しています。KL Sentra駅のような大きな駅だと紙製両面カラー印刷のKomuter 時刻表が案内所に置いてあるので入手は可能ですが、多くの駅では配布用には揃えていませんので、それほど簡単に入手できるわけではない。通常の Komuter駅だとこの紙製時刻表が駅の壁などに1枚か2枚程度貼ってあります。 別の紙に大書したり、時刻表用の掲示板があるわけではありません。プラットフォームには全く時刻表はありませんが、上下線のプラットフォームにそれぞれ備えてある電光掲示板で、次ぎの電車の発車時刻が表示されます。しかし電車の運行が遅れたり乱れても、電光掲示板に表示される次ぎの電車の時刻は変化しません、つまりプログラムされた時刻を表示しているだけです。時刻表が公知されているからといってその通りにきちんと運行されているわけではありませんが、時刻表はないよりもあった方がよいに決まっていますね。

Starline

多くの駅においては、改札を通る前の構内に運行路線図と料金表を示した大きな独立した掲示板があり(一部駅は改札後の一画にも立ててある) 、その中で運行頻度として次ぎのように表記されている、「平日:7時半から9時半 及び16時半から19時半は4分から8分毎、 その他時間帯は7分から10分毎、 日曜と祭日:1日中 10分から15分毎」
プラットフォームにはこの種の表示または掲示は全くなく、次ぎの電車がどの方面行き電車かを知らせる電光掲示板がある。しかし発着時刻は表示されません。

Putraline

駅施設の入り口あたりか切符売り場あたりか、どこかに表示してある "Putraline のお知らせ" の中で、運行時間を小さく示している駅もある一方、それすら示していない駅もある、それも Masjid Jamek 駅、Pasar Seni 駅のような大きな駅ですらない。何分毎に1本といった電車の運行頻度は決まっているだろうが、駅利用者には全く公知していない。プラットフォームに電光掲示板があるが、電車の到着を知らせる機能はない。よってプラットフォームに電車がごく近づいたことで、乗客は電車の到着を知る。ダイヤが乱れてもそれを知るすべはない。相当なる乱れの時は駅員が口頭で知らせることはしている。

KL Monorail

駅の内外、プラットフォームを通じてどこにも運行頻度を知らせる表示または掲示はない。プラットフォームにテレビが吊り下げてあるが、これは広告用テレビであり、電車の運行とは関係ない。まさにいつ来るともわからぬ電車を待つだけです。まるで市内・郊外乗り合いバスみたいで、待っておればそのうち来るさというところです。

尚、マレーシアの電車に時刻表など要らないという論議は、Komuter を見れば間違いですね。路線の一番長いKomuter が時刻表を、ちょっと不十分とはいえ、公知しているのですから、より短い路線である他の電車は時刻表を作成して、駅内に掲げることはやってやれないことではない、と思われます。時刻表が必須であるとは言いませんが、”10歩譲って”、せめて運行間隔は掲示・表示して利用者の便に供するべきですね。頻繁な利用者であれば、電車の運行間隔がしばしば不規則になることに気がつきます。そこで電車運行に責任を持つ会社として運行間隔を利用者に公知し、それを守る意味を含めて規則的な運行により努力すべきでしょう。

各駅での始発電車と終発電車の時刻をはっきりと表示・掲示すべきである

各駅での始発と終電の時刻が表示されていません。始発と終発の時刻は利用者にとって大事な情報のはずなのにです。

Komuter

時刻表が発表されているので、ある何々駅での始発時刻と終発時刻は調べられます。ただその駅の始発時刻と終発時刻を目立つように表示・掲示している駅はありません。

Starline 

駅構内に運行路線図と料金表を示した大きな独立掲示板があり、その中で運行時間として表記されている、「始発: Sentul Timur 駅、Ampang 駅、Sri Petaling 駅 のどれも6時、  終発: Sentul Timur 駅 23時、 Ampang 駅 23時半、 Sri Petaling 駅 23時半」

注:Starline は Y字型の路線を持っているので、Sentul Timur駅、  Ampang駅、 Sri Petaling 駅がそれぞれの区間の始発兼終点駅です。

しかしこの情報はその後一部だけですが変更されているはずで、日曜日の終発は30分早いと聞いています。こういった情報の変更は反映されておらず、どの駅の掲示板も以前からの掲示板のままです。それよりもわかりづらいのは、ある駅においてその駅の始発時刻と終発時刻という表示ではないことです。どの駅の掲示板も、「当駅の始発は何時何分で終発は何時何分」 という表示にすべきですね。

いくつかの駅の窓口で尋ねれば、まず決り文句的に始発6時、終発23時半という答えが返ってきます。しかしそれはそれぞれの起点駅を6時に出発する、または23時半に出発するということなので、その利用者が乗る駅まで走行してくる時間を加えなければならない。だから詳しい時間を尋ねても23時50分ぐらいでしょうという大まかな返事になる。

ただ現実には何時何分ぐらいという大まかな計算の方がいいでしょう。なぜなら6時ぴったりに一番電車が出ているという保証はないし、23時半の終発が1分の遅れもなく発車したと仮定しない方がいいので、計算上の到着時刻は大体の目安と考え幾分早めに終電を駅で待った方がいいとはいえます。

Putraline

駅構内に掲げた掲示の中で運行時間帯が示されている駅では 「何時から何時まで運行」と書かれている。しかしそれはPutraline全体の運行時間という意味にしか取れない、ある駅におけるその駅の始発と終電の時刻ではありません。いくつかの駅で駅員に始発と終電の時刻を尋ねると、駅員の返事は6時始発で終発は11時半頃 という大雑把なものがほとんどでした。Starline の場合もそうですが、一般に駅員は終発電車の時刻にあまり細かくありません。

そこで駅員にさらに突っ込んで尋ねたり、SPNBの案内係りに電話で尋ねれば、始発は各駅共通に 6時ちょっと過ぎ、つまりすべての駅に電車が到着しており、始発とともにその駅から電車が出るとのこと、そして終発はPutralineの両端駅を23時半に出るので、KLSentral駅で23時45分ぐらい(Gombak方面行き)、MasijidJamekでは24時近く(KelanaJaya方面行き)、になるとのことでした、尚日祭日は終発だけ15分早くなるとのことです。

注:尚全駅でつまり24の駅で、早朝一番電車が到着しており6時から運行するという説明は、半分本当で半分うそでしょう。なぜならPutralineの保有する電車は24組もないからです。あれこれ質問しているとこういった正確度を欠いた返答を時々聞きます、しかし私はそれ以上は追及しないことにしています。公式的な説明・返答はもちろん参考になります、しかし情報発信する者は全てを鵜呑みしてはいけません。得た説明・返答をもう1度吟味できるだけの知識と経験が必要なのです。

それだったら各駅にそういう表示をすべきです。その駅で始発または終発によく乗る人を除いて、その何々駅の利用者には始発と終発の時刻がまこと不明瞭です。

KLMonorail

モノレールはどの駅でも切符窓口に 「運行時間 6時から24時」 と書かれている。さらに 「始発6時、終発24時」 とも書かれている。しかし路線の両端である起点駅以外の、ある何々駅での始発と終発は両方の起点駅からの所要時間をみておく必要があることになります。ところが奇妙なことに 駅の窓口も電話サービス係りも口を揃えて、「駅窓口は深夜12時で閉まってしまいます」 という返事です。終電に乗るには24時前に切符を買ってホームで待っていなさい、ということのようです。
全部で11駅しかない短いモノレール路線なのですから、駅毎の始発と終発時刻の表示は簡単だと思いますけどね。



クアラルンプール内外を走る各種電車はここを改良すればもっと利用し易くなる−後編−


前編からお読みください。尚このページで触れる各電車の写真・情報は旅行者ページの 「クアラルンプールの交通機間案内と交通事情」 で以前から掲載しています。

”優先席”はどう表現されているか

しばらく前、多分1年くらい前かな、ゲストブックで何かの文を書いた際、日本では電車にシルバーシートがあるうんぬんと書いたら、「とっくにそういう名称は消えており、現在では優先席といいます!」 といった指摘を受けました。 ある表現において使われている単語とか文句は時とともに変わることがありますので、変化自体は不思議ではありませんし、変なカタカナことばよりも”優先席”という表現の方がずっと優れていると思いました。まあ、ゴールドもシルバーもプラチナも私は縁がありませんので、シルバーが消えても私には特に関係ありませんな(負け惜しみ)。

最近ふとそれを思い出して、クアラルンプールを走行する各種の電車内で”優先席”を示すことば使いをメモしました。尚文中の単語が大文字になっているのは、注意を強調するためからであり、通常のマレーシア語文章では一々大文字化はしません。

Putralein の場合:
Tempat Duduk Ini Khas Untuk Warga Tua, Warga Hamil, Golongan Kurang Upaya.
語義に忠実に訳せば、
この座席は年取った方、妊娠した方、能力の劣るグループのために特別となっています、といった意味です。

Komuter の場合:
Keutamakan Tempat Duduk.
語義に忠実に訳せば、
座席に優先権を与える、優先権を与えた座席 といった意味です。

Komuter の表現は日本の”優先席”と同じ言い回しだと考えていいでしょう。Komuter は短いベンチ式とボックス式の2タイプの座席から構成されていますが、この注意書きが掲示されているのは、短いベンチ式座席だけです。

Putraline の場合は、具体的に対象者名を書き出しているので、文章が長くなっていますね。Tempat Duduk Ini Khas という表現は簡単にいえば”特別席”ということでしょう、Ini は「この」という指示詞。Golongan Kurang Upaya というのは直訳すれば upaya 能力が kurang 足らない golongan グループ となるので 、この表現は以前から私はどうも直接的過ぎる表現に感じます。もちろん私の語感ではということからであり,良いとか悪いということではありません。

注:ちなみに身体障害者を中文(中国語)では”残障人”と表記します。

Starline の場合:
以前は全くなかったがごく最近、恐らく2004年7月か8月ごろになって、車中にこの種の表示が現れた。電車の席(全てベンチ式です)背後の窓に青いシールが張られており、それには次ぎのように書かれています:
Sila beri tempat duduk anda kepada mereka yang lebih memerlukannya
語義に忠実に訳せば、
あなたの座席をより必要とされる方々にお譲り下さい、 といった意味です。

この表現は、窓シールの貼ってあるあたりの座席だけに限定しているのではなく、座席に座る人ほぼ全部に訴えている、ととれます。つまりこの席は”優先席”とか”特別席”ですよという表現ではなく、座席に座っている人は座る必要がよりある人が乗車してきたら席を譲りましょう、という表現ですね。この件に関しては、電車路線の中で一番優れた表現といえます。

KL Monorail には表現に関わらず”優先席”は全く設けてありません。(2004年10月時点)

幼児を連れた親の態度

それでは、Tempat Duduk Khas またはKeutamakan Tempat Duduk  に座っているマレーシア人乗客は対象者が車内に入ってきたとき、その席を素早く譲るのであろうか? これまでの数多くの観察から言えることは、譲らない場合の方がずっと多いといえます。もちろん譲る人もいますから、あくまでも傾向としてですよ。小さな子供連れなどの夫婦や母親はまず譲りませんね。混んできても子供をどうどうと座席に座らせており、自分の膝上に載せるような人は少数派です。これはあらゆる路線に数多くの回数乗って来た私の観察からです。

ところでよく見かけることに、小さな子供が靴を履いたまま座席に立ちあがったり、座席上を歩いています。この時親はまったくそのことを気にしません。大衆食堂や屋台センターでも同じで、小さな子供が靴履きでイスの座席上に立ちあがってもまったく気にしません。これはマレーシア人どの民族にも共通して言えますね。尚一人で歩けないような赤ん坊は靴など履いていないので、ここでは関係ないです。

えっ、私ですか? 車内がガラガラでない限り、優先席または特別席には最初から座りません。Tempat Duduk Ini Khas またはKeutamakan Tempat Duduk  には、まああと20年ぐらいたったら座ることにしましょう(笑)。

携帯電話の話し声騒音を減らして欲しい

座った座席の隣や近辺で延々と大声で話されたら辟易しますが、これがまた頻繁に起るのです。そのほとんどを占めるのが携帯電話による会話です。しょせん他人の出す音に対する捉え方が違うので、マレーシアで携帯電話の会話騒音がなくなることはありえませんが、それにしても、なぜ人にわざわざ充分よく聞こえ過ぎるほどの声で話し続ける必要があるのだろうか。

注:携帯電話をある一定の場所では使わないようにしようという運動は全く共感を得られず且つほとんどの人は守らない。銀行内の一般客用の場所、各役所・官庁の一般訪問者用の場所、病院・医院の待合室、上映中のシネマ内など。よって乗り物内で携帯電話を自粛する発想は全く生まれてこない。携帯電話はいつでもどこでも使うためにある、それを禁止するのは納得できない、という一般の捉え方ですね。

中長距離バス・列車や他州で運行されているバス便を除いて、クアラルンプール内外のバスや電車の様々な区間・路線に毎年どんなに少なくても 300回は乗る筆者は、しばしば携帯電話騒音にさらされます。(この1、2年回数が減ったがそれ以前はもっと数多く乗っていた)

所詮ほとんど守られっこないであろう、同意を全く得られないであろう、車中の携帯電話禁止を主張しているのではありませんよ。車中、プラットフォームには飲食禁止、タバコ禁止、などといった利用者への注意マーク・イラストが掲げてあるので、”モラルとしての携帯電話の小声化推進” ぐらいは電車会社が提案するまたは利用客の間に発想として生まれてほしいものです。

終りに

Starline と Putraline の両方とも政府持ち株会社SPNBの翼下に入ったおかげで、今年の中頃からStarline の全駅でも プリペード式のTouch'n Go カードが使えるようになりました。Starline は独自のプリペードカードも引き続き販売しているので2種類併用です。Touch'n Go カードは首都圏のハイウエーの料金支払い方法としてかなり使われていることもあって、比較的普及しているので、これは歓迎すべき点ですね。さらにKomuter にもTouch'n Go カードが使えるようになる予定のようです。

このようにゆっくりながらも利用者サービスが向上していますので、これからも期待しましょう。

注:2004年11月26日の新聞報道によれば、下記のような計画が進行中です。どのような形で切符共通化が実現するのか現時点ではわかりませんが、歓迎すべきことですね。

KLの公共交通機間を運営することになる Rapid KL
(新しく設立した)政府の企業体である Rapid KL が近い将来首都圏の公共交通機関の運行をつかさどることになる、と第2経済大臣が発表しました。これは首都圏の公共交通網を統合化し構造改革して、人の公共交通利用を高めようという政府の狙いからです。Rapid KL が運営を引き継ぐのは、現在政府の持ち株会社である SPNB が保有する 4つの交通機間: 高架電車 Starline と Putraline、及び2大乗り合いバス Intrakota と Cityliner です。 この4つで首都圏の公共交通網の3分の2を占めます。

統合化の中で、共通切符制も取り入れられることになり、統合化の結果運賃値上げになることはないとのことです。 Rapid KLが利益を生むようになるために、効率的な運営でなければならない、と大臣。「今後1年半の間に利用者は良い方向への変化を見ることになり、これが利用者の増加に結び付きます。」




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