・ タバコと酒に対する税率引き上げが大衆層の生活に及ぼす影響 ・納税額決定通知書にまつわるお話し
・ 華人人口の多い町や郡部や下町に居着く中国人女性 前編 ・ その後編
・ ハリラヤプアサ前のラマダンバザールは大賑わい ・数字で見たマレーシア、 その23 (下と順入れ替え)
・ 事故死した象の鼻を切り取るのは惨酷な行為か、それは許されるのか?
・ クアラルンプール内外を走る各種電車はここを改良すればもっと利用し易くなる-前編- ・その後編
9月10日にアブドゥラ首相が国会に上程した2005年予算案によって、タバコと酒類の物品税が即引き上げられました。それはタバコ類の物品税を40%引き上げ、酒類のビールについては物品税を26%引き上げる、というものです。
タバコの小売り価格は、一般的な20本入りの1箱が RM 1.1 値上りしてRM 6.50 です。そこで9月14日から値上げ実施するとのお知らせを、各ブランドの販売会社がそれぞれ公告をだしました。それを抜書きしますと:
Marlboro King Size / Marlboro Lights King Size / Marlboro Menthol King Size : 20本入り RM 6.50
Marlboro King Size / Marlboro Lights King Size / Marlboro Menthol King Size : 14本入り RM 4.70
L & M King Size / L & M Lights King Size / L & M Menthol King Size : 20本入り RM 5.00
L & M King Size / L & M Lights King Size / L & M Menthol King Size : 10本入り RM 2.80
Dunhill King Size / Dunhill Light King Size :20本入り RM 6.50、 14本入り RM 4.70
Kent Deluxe Lights King Size / Benson & Hedge Speicial King Size : 20本入り RM 6.50、 14本入り RM 4.70
Peter Stuyvesnt King Size : 20本入り RM 6.50、Rothmans International 100s RM6.70
Pall Mall Filter King Size / Pall Mall Lights King Size : 20本入り RM 5.00, 10本入り RM 2.80
この価格は一体マレーシアの大衆にとってどれほどの重みがあるのでしょうか? いうまでもなく、このリンギット価格を円との換算率を適用して円換算しても、マレーシアにおけるタバコ価格の持つ意味合いはほとんどわかりません。リンギット価格はリンギット社会の中で考察する必要があります。 尚ここで大衆という意味は、低所得層に属する月収 RM 1000 からRM 2000 程度の層であり、月収 RM 5000以上もの所得がある裕福な中流層ではありません。ビルやショッピングセンターで警備しているような警備員の給与は RM1000程度であり、店員でも同じようなものです。工場の一般工員の中でベテラン工員でも残業を入れてこれぐらいです。修繕とかメンテナンスの技能を持った者、ライン係り長当りでもRM 2000まではとてもいかないでしょう。オフィス勤めにおいて経験有る事務員であれば、資格・能力などによってRM 1000 からRM 2000 の間でしょう。
1日タバコを1箱吸う平均的な喫煙者の費用計算をしてましょう。 RM 6.5 X 30 = RM 195 、これは月収RM 1000の層には極めて大きな負担であることはすぐわかりますね。通常この層の人は、西欧ブランドのタバコでなく1箱RM 4程度の安いブランドのタバコを好んで吸うようです。月収RM 2000 の層でも、月のタバコ代 RM 195 は月収の1割 だから大きな比率ですね。独身・単身ならまだしも子供のいる家庭では相当たいへんです。必需消費物品のほかに、ほとんど全ての世帯では公共料金も納めていますから、それら必須支出を前提にしたうえでタバコを吸わねばなりません。
そもそもマレーシアの公共料金または公共的なものの価格はいかほどでしょうか、下に示します。
種類 | 基本料金 |
推定月額 最低でもという額 | 1回の料金 |
電話 | RM 26 | RM 50 | |
携帯電話 | プリペードの場合 | RM 40 - 50 | |
水道 | 20立法メートルまでRM12 | RM 10-15 | |
電気 | RM 0.218/ キロワット時間 | RM 30−40 | |
バス | RM 0.70 - RM 2.0 | ||
電車 | RM 1.0 - RM 2.5 | ||
タクシー | 初乗り RM 2 | ||
インターネット | ダイアルアップの利用料金 | RM 20 | |
下水道 | 半期でRM 48 | ||
レギュラーガソリン | RM 1.38/ リットル | ||
ジーゼル | RM 0.83/ リットル |
マレーシアはイスラム教国家とはいえ多民族国家ですから、法律・規則に従がい許可された条件と約束事を守るという条件下のもとで、酒類の販売と飲酒は相当自由にできます。酒類の中ではビールが圧倒的に多数を占め、大メーカーは国内でライセンス生産をしており、都会であればビール購買はたやすいことです。
アルコール飲料はもちろんタバコも自販機で販売するようなことは一切ありませんし、認められる可能性はゼロです。テレビではビール類の宣伝は許されていませんし、ムスリム向けの媒体、場所でアルコール飲料の宣伝は当然御法度です。夜な夜なにぎわう都会のパブやディスコやクラブとは対照的に、郊外のマレー集合地区の屋台や飲食店ではアルコールの臭いは全くないのです。ここにもマレーシアらさしがあります。
そこで、酒類の中で一番普及しているそのビールの値段を近所のスーパー2軒で調べました。表の値段は10月初め時点でのものです。( )の価格は多分まだ旧価格のままと思われます。
ビール名 | Carlsberg | Tiger | Anchor | Heineken |
缶 容量320 ml | RM 4.50 | RM 5.20 | ||
小ビン 325 ml | RM 5.30 | (RM 4.80) RM 5.60 | RM5.60 | RM5.60 |
大ビン 660 ml | RM 10.0 | RM RM12.00 | (RM 9.50) | RM12.00 |
ところでこういう酒とタバコの価格上昇は、消費者経済の視点からはどう捉えられているのでしょうか。マレーシアはこの何年もに渡って、消費者物価は数字上では低い上昇率を続けています。それでは消費者物価指数の内訳を表にしてみましょう。上昇率のプラスまたはマイナスの数字は年換算した数字です。物価指数の基準は2000年を100にした場合です。
項目の比重 | 2003年1月−7月 | 2004年1月−7月 | |
比重の合計 / 上昇率 | 100 | 1.1% | 1.1% |
項目の内容 | |||
食料品 | 33.8 | 1.2% | 1.7% |
飲料、タバコ | 3.1 | 0.1% | 5.0% |
衣料、履物 | 3.4 | -2.1% | -2.0% |
賃貸、燃料、電気 | 22.4 | 0.8% | 0.9% |
家具、装飾、家庭用品・家庭運営 | 5.3 | -0.5% | 0.1% |
医療、健康関連 | 1.8 | 1.9% | 1.3% |
運輸、コミュニケーション | 18.8 | 2.3% | 0.4% |
レクリエーション、娯楽、教育、文化 | 5.9 | 0.6% | -0.1% |
その他雑品とサービス代 | 5.5 | 1.2% | 1.7% |
2003年の国民1人当り所得は約 RM 16,000 です。月に換算すれば RM 1,330 ほどになります。上記で対象にした大衆層の月間所得を RM 1000 からRM 2000 の階層に置いたのが、ちょうどいいところでしたね。全国の1世帯の平均家族人数が約4.5人です。夫婦共稼ぎであれば、月 RM 2500 からRM 3000 前後が平均的所得といえるでしょう。この額であれば楽々とはいえなくても苦しさはなくなるでしょう。しかし稼ぎ手が1人だけだと 家族4.5人ではやはり生活は苦しくなります。
この場合、タバコ代を2日に1箱としても、RM 6.50 X 15 = 約 RM100 、これでもやはり家計に占める比率は高いですね。缶ビールを毎日飲む、よって RM 4.50 X 30 = RM 135 を毎月支出なんてことも家計に負担は高いです。まして毎晩大瓶ビールで晩酌とか酒タバコで毎日 RM10 即ち月 RM 300 を使うという生活を享受するには、家族のいない単身者か、子供のいる家庭ならどうしても共稼ぎの必要がありますね。もちろんこういった前提を計算する際、親の代から続く田舎の自家に住むような世帯・人と、都会で借家、アパート生活する世帯・人の場合では、違いが出てくるのは当然です。
値上げに際していつも言われることに、タバコ値上りで実際にタバコを止める人はごくわずかの比率であるというのがありますよね。一時的に減らす人はいてもそのうちに元の喫煙量に戻るという話も聞きます。マレーシアでも同じようであり、2002年に小幅値上げあった時、全体の消費量は前年比1%だけの減少だったそうです。マレーシアの法律に基づいて設立・運営されている全国タバコ会議はこう明言しています、「国内消費が示していることからいえることは、マレーシアのタバコ市場は安定している。」
同全国タバコ会議によれば、国内のタバコ葉栽培は半島部北部と東部に集中しており、総面積は14000ヘクタールです、タバコ葉生産は増加傾向にあるとのことです。タバコから政府の得る税金は2002年で、合わせてRM18億にもなりkます。同年のタバコの輸出額はRM 7億でした。タバコ葉栽培から工場での作業員、小売り店など広い意味でのタバコの産業に関わる人数は10万人を超えます。
マクロ経済の面でも税率上昇と小売り価格値上りによるタバコ減少論はあまり説得力を持ちませんね。さらに密輸または税金を払わないタバコの増加が予想されます。
これまでもタバコを止めようキャンペーンや小刻みなタバコ税の値上げを実施してきた政府は、今回のタバコ税の大幅値上げに続いて、9月末のタバコ製品管理法2004年改正によって、これまで以上に規制と禁止を厳しくしました。「18才以上の国民の25%は喫煙者である。360万人の喫煙者は若い世代なので、政府はこの喫煙者数を減らしたい。」 と保健大臣は語る(新聞の記事)。しかし私には、18才以上の男女中4人に1人も喫煙しているとは思えませんが、それは常習喫煙者だけでなく、たまの喫煙者も全て含めてのことなんでしょう。
これまでの禁煙場所:パブ、ディスコ、ナイトクラブ、カジノを除く娯楽施設、病院・医院、エアコン装備の飲食店と店、公共交通機関、空港、政府施設、子供施設、学校、ショッピングセンター、銀行カウンタ前、などです。この法改正によって禁煙場所が増えました:公共トイレ、インターネットカフェ、図書館、宗教施設、スクールバスなど。
違反行為者には、法律上最高RM 1万を超えない罰金が課せられことになっています。禁煙場所・施設のオーナーも禁煙の表示を掲げないと、RM3千を超えない罰金を課せられることになりました。
しかしマレーシアの状況を知るものとして、こういった規則を法律通り施行できるとはまこと考えづらいですね。上記の場所・施設のほとんどで、喫煙者が素直に規則を守るとはとても思えないし(もちろん守る人もたくさんいるが)、違反者を取り締まる係官など微微たる数ですから、ごく見せしめ的な取締りや罰金賦課の場合を除いて、多くの場合は絵に描いた餅となることでしょう。所詮こういう嗜好品に関する取り締まり・禁止運動は多分に国民意識の有り方に依存すると思います。
タバコと違ってビールの税率上昇と値上げは各民族に共通に影響はもたらしません、もちろんムスリムには(公式的には)全く関係ないことです。非ムスリムの飲酒者に影響は当然あるでしょう、とりわけ低所得層の大衆飲酒者にです。しかし誰でも経験的に知っているように、世の酒飲みが数割程度の酒代上昇で酒をあきらめるとはまず考えられません。非・酒飲みとしてあきれと同情を感じますな(笑)。
地元生産 ビール |
輸入 ビール |
ウイス キー |
ブラン デー |
発泡 ワイン | ワイン | |
現行の標準的価格 RM | 4.75 | 9.80 | 62.0 | 64.6 | 46.8 | 13.2 |
値上げ後価格 RM | 6.00 | 11.00 | 66.0 | 66.0 | 51.0 | 15.0 |
上昇率 | 26% | 12% | 6.5% | 2.2% | 9.0% | 13.6% |
ということで、マレーシアのマスコミが英語で " sin tax" と描写している タバコと酒類に対する税金引き上げは、恐らくタバコとビールのそれぞれの全体的消費量そのものに大して影響は与えないのではないでしょうか。政府の" sin tax" 税収は一応増えるので、立法と行政側はまあ満足となる。消費者はといえば、ぶちぶち不満を垂れながらも、吸う者は吸い、飲む者は飲む、それが非合法タバコであれ、非合法ビールであれ、タバコとビールには変わりはないという満足感はある。よって生活のあまり楽ではない大衆層は、苦しさを承知または多少量を減らす程度で相変わらず喫煙し飲酒する、一方豊かな中流層は取るに足らない程度の痛みを感じるだけなので、喫煙飲酒の量は落ちない。こんなシナリオが浮かびます。1年後の結果を待ちましょう。
9月中旬も過ぎた頃、国税庁(税務署)から納税額決定兼納税通知書が郵送されて来ました。正式名を Lembaga Hasil Dalam Negri 、訳せば内国税収庁 という役所は、国が違うので日本の国税庁とは多少違いますが、一般訳としては国税庁でいいでしょう。そして税務を扱う役所として”税務署” とここでは便宜的に呼んでおきます。
納税額決定兼納税通知書は通称 Borang J またはForm J (英語名) と呼びまして、対象者の納税額が規定に沿って計算してあり、あなたはこの額を納めなさい、という公式な通知書です。ですから誰にとっても大切な書類です。いうまでもなく役所のこの種の書類は全てマレーシア語で書記されています。ですから意味をよく知らない単語は辞書を引いて調べることになります。
マレーシアの個人所得税は歴年を基にした前年所得に対して賦課されます。納税予定者または納税しなければならないとみなされた国民及び外国人に、毎年2月頃管轄の税務署から所得申告用紙(Form BE, Form B など数種類ある)が郵送されてきます。それを受けとった人は、記入して遅くとも5月末頃までに、税務署に送付または提出する義務があります。例え所得がなくても、ごく少なくても提出する義務はあります。それを怠ると後で問題となります。
日本人駐在者のような外国人エクスパトリエイトの場合、多くは雇用されている会社、またはその会社の指定する会計事務所などが、一手に受領し且つ記入提出まで一切の税務事務をしているようなので、Form B など知らない、記入したことがないという、日本人の方も多いはずです。自分で記入、提出する必要はないですが、Form の署名だけは必ずFormの宛名人本人(つまり納税予定者または納税しなくてもよいが所得あるなしの報告義務の有る人)がしなければなりません。
さて私は10年以上個人で記入し個人で提出してきました。このため何年にも渡って実に回数多く税務署に足を運び、おかげで税務署の所員などの対応や雰囲気を知ることができました。1990年代の終わり近くまでは、クアラルンプールの外れに位置する Jalan Duta にある政府関係建物が集中した合同庁舎の一画に建つ Lembaga Hasil Dalam Negri本庁が窓口でしたので、行くだけでも実に時間がかかりました。住居地からまず合同庁舎行きのバスが発着するバス停までバスと徒歩で行き、さらに1時間から1時間半に1本しか運行されてないIntrakotaバスを使って往復したので、それだけですでに半日仕事です。
こういう市民に必須の公共施設への足がまこと貧弱であり、よって自家用車を持たない低所得層市民は不便なバスを辛抱強く強く待つか、それとも人の足元を見て吹っかけてくるタクシーを利用せざるをえません(合同庁舎付近で客待ちしているタクシーは外国人相手ではなく、役所を訪れる市民相手です)。税務署や諸官庁の入居した合同庁舎と市内中心部を結ぶ足が、1時間から1時間半に1本しかない小型のIntrakotaバスだけというのは、大衆層の市民のために便利なサービスを提供することをほとんど考えてない証拠ですね。合同庁舎前のバス停は大雨が降れば間違いなく濡れるような屋根の不十分なバス停です。つくづく感じるのは、マレーシアの政治機構と官僚組織は、貧しい者が不便を強いられるようなことに気を使う姿勢に欠けるという点です(ないとは言いません)。公共バスの運行はバス会社の責任、官庁の知ったことではない、では救われませんね。
Lembaga Hasil Dalam Negri が90年代の終わり近くになって、私の住居地から遠くない場所に税務署支庁を設けてそこに関係業務を移したので、以後私は本庁まで半日かけて往復する苦難はぐっと減りました。なぜなら私の納税者ファイルがこの支庁管轄に移されたので、ほとんどのケースはこの支庁へ行けば用が足りることになったからです。時間的に大助かりです。尚税金収納の業務は今でも本庁の窓口だけが担当していますが、納税者は複数の銀行から銀行振り込み納税もできます。
最初に納税者登録された税務署・支庁が、その納税者のあれこれの問題にずっと対応します。会社を替わったり住所を移した時、自然に納税者の住居近くまたは務める会社住所を管轄する支庁に納税者ファイルを移してくれればいいのですが、ことは簡単にはいかないようです。ペナンからクアラルンプールに転居した人が自分の納税ファイルが未だにペナンの税務署にあって不便極まりない、と不満を述べていた記事を読んだことがあります。尚納税者になった時点で付けられた納税者番号は、転署しても変わりません。
私の場合最初つまり90年代初めに納税者登録された税務署はスランゴール州のシャーラムにあるそれでした、当時務めていた会社がシャーラムにあったからです。まもなく会社を辞め、その後そこに登録された私の納税ファイルをクアラルンプールの本庁に移してもらうまでに実に数年を要しました。なぜそんなに年月がかかったのか不思議ですが、尋ねた税務署員の誰からも納得いく説明は得られませんでした。このため、その当時の所得申告用紙が手元に届かず、1年以上遅れで申告したこともありました。本庁に足を運んで再発行を請求したり、早く納税者ファイルを本庁に移してくれるよう要求したことを数回も繰り返しました。
90年代中頃前にようやく私の納税ファイルが本庁に移されました。そこで毎年所得申告用紙を届けたり、それ以外にも税に関する質問や納税のために Jalan Duta にある本庁を訪れました。所得申告用紙は記入後、同封の封筒に入れて郵送してもいいのですが、これまた問題発生の原因になりやすいので、私は以前から必ず本庁(その後は支庁)まで足を運んで担当窓口の受領印をもらうことにしています。郵送では税務署の担当窓口に届いたか届かないかの証拠はありませんし、現に郵便不明事故は珍しいことではありません。
これだけ用心深く提出してきたのですが、それでも1度税務署から、おまえの何年度の所得申告用紙は受け取っていないと言われたことがあります。それならと提出した用紙のコピーとそれに押された受領印を見せたら、庁内のどこかにあるかもしれないが探し出せないのでもう1度記入して提出しなさい、と言われました。所詮役所にはかないませんから、仕方なくまた記入して届けに行ったのです。
さて所得申告書Form B は今年もごく早い時期の2月末には税務署に提出しました。通常の提出期限は4月末ぐらいですが、例年1ヶ月ぐらいこの最終提出期限が延ばされます。
そこで今年の私の場合、記入済み所得申告用紙を提出してから実に7ヶ月ほどもたってようやく、納税額決定書が送られてきたわけです。7、8月頃になっても税通知書が手元に届かないので、おかしいなあ、税務署が送ったのがまた届かなかったのかも知れない、税務署へ行って確認しなければならないなあ、と思っていました。それがようやく届いたわけです。紛失しなくてよかったのですが、いくらなんでも7ヶ月近くもかかるのは遅すぎると思いますね。もちろんこれは私だけではなく多くの納税者に共通の遅れでしょう。
納税額決定兼通知書の内容は、課税対象額いくら、納税額いくらと書かれています。所得申告用紙に付属したページで、あらかじめ自分で税金を算出できますから、通知書の決定額は今年2月提出した時に自分で計算した課税対象額と同額でした。通知書の中味を見ていくと、所得や控除を計算して現れた、課税対象額に対して規定の税率をかけて算出した税額の下の欄に、戻し税が加わっています。戻し税とは算出税額が規定以下の少額納税者には税を戻す措置のことで、額は一人一律 RM 350であり、配偶者には一律RM 350 です。つまり私の場合は、算出税額が規定以下なので、戻し税の対象になるのです。戻し税がもらえるのはうれしいようなでも対象になるほどの所得しかないという悲しい事実、悲喜入り混じった気分です。
尚算出税額が RM 350以下だからといって残りの額がもらえるかというと、そうではありません。つまり、算出税額がRM 200だからRM 350をひいた残りのRM 150 が現金でその納税対象者に支払われる、ということにはなりません。その残り額 RM 150 が翌年に繰り越されることもありませんよ。
算出税額 - 戻し税RM 350 = 最終的納税額 で計算した結果、今年の場合はいくらか納めることになっています。それはいいのですが、ただ私の場合、去年の納税後時点で私の納税者番号口座 がプラスになったままなのです。なぜかというと2年前に予定納税の形で税金を納めすぎたため、そのプラス分が未だに残っているからです。これに関しては去年税務署支庁へ行った時、口座にプラスの金額が残っていることを示す公式手紙をもらいましたので、確実です。
日本の場合は税金を納めすぎると、年末調整によって税額調整する、または確定申告調整を経て数ヶ月後には自分の銀行口座などに自動的に払い戻しされますよね。しかしマレーシアではそういうことはありません。通常はそのままです。どうしても払い戻して欲しければ、税務長官宛ての形式で払い戻しを要求する手紙を提出しなければなりません。まず面倒だし、さらにその手紙を提出してから実際に返金されるまでにものすごく月日がかるというのが定説ですので、私は払い戻し要求をしませんでした。どうせ翌年になれば税金を払う額が減るだけだからそのままにしておこうと思ったからです。(外国人エクスパトリエイトで自国へ帰国するというようなケースの場合は、比較的払い戻しが早いかもしれません)
そこで今年の納税額決定通知書を手にした時、私の納税番号口座のプラス額が 納税決定額から差し引かれていると、思っていました。しかしそうではなく、納税通知書は上記の式 ” 算出税額 − 戻し税RM 350 = 最終的納税額 ”で終っています。つまり通知書の文面上では、新にこの額を納税しなければならない、となるのです。これには納得がいきません、去年の時点での口座プラス額は、最終的納税額 より多いのです。つまり 口座プラス額 −最終的納税額 = いくらかの残額 となるはずです。つまり今年は事実上納税しなくていいはずなのですが、通知書にはまったくそんなことが書かれていません。
これをそのままにしておくのはまずいと思ったので、早速税務署支庁に足を運びました。昨年から相談窓口カウンターが増新設されて、利用者には便利になったので、番号札を引いて自分の番号になるまで待つこと5分でカウンターに呼ばれました。税金申告の季節はすごく混雑していますが、今は違います。早速持参した納税通知書と 納税者口座の残高がプラスであることを示す手紙を係りの女性に見せました。税務署は実に女性の多い役所で、通常応対係りの4分の3ぐらいは女性です、もちろんマレー人が9割方を占めます。
その女性係官は私の質問を聞きながら示した書類を見るなり、税金は払わなくてもよい、とあっさり答えました。もちろんそのはずですから、その答えを聞いても私はうれしいことにはなりません。でなぜ通知書にその旨を伝える文言が印刷されていないかと尋ねれば、納税額決定兼納税通知書は単年度の納税額を計算し通知するものである、からとのことです。よって納税者の口座がプラス残高であっても、通知書が作成され送付される時にそれを参照する仕組みになっていない、とのことです。
それでは納税者が自分の納税者番号口座の残高がもしプラスであっても、それを知らないとか気が付かないと、その通知書の最終税額をそのまま納めてしまうのではと思いました。そしてその可能性は多いにありえます。そこで、もし納税者が自口座のプラス残高を知っており、差し引きした結果最終的納税額を納めなかったら、後で問題は起こらないのか、「あなたは今年税金を納めてない」 と後で追徴金が来たら困る、と尋ねれば、係官は、「そうはならない。」と答えました。なぜなら、Lembaga Hasil Dalam Negri のコンピュータ上ではその納税者(口座番号で引く)の納税状況がわかるからです、とカウンター上のコンピュータ画面を見せてくれました。つまり本庁につながったコンピュータでは、最終的納税額と口座の残高を参照できる仕組みになっているようです。だったら納税者に納税通知書送付時に口座残高も一緒に通知するシステムにすべきですよね。
まあ不満を言ってもらちは開きませんから、「なるほど、じゃ今年は納める必要がないので納めません。でも心配しなくていいのですね。」 と念を押してから相談窓口カウンターを後にしました。しかし相談係りの、「あなたの口座には残高が最終的税額以上あるから納めなくても問題ない」 ということばだけで、それが文書化されるわけではありませんので、これまで税務署に悩まされた経験のある私としては一抹の不安は残ります。気休めに、その係りの名前と発言要旨は彼女の目の前でちゃんとメモしました。
ということで、今年もこうしてまた一つマレーシアの税金賦課と納税の仕組みを学んだのです。
中国からのマレーシア訪問者がこの数年、すごいという形容がふさわしいほどの勢いで伸びてきました。それを表で示しましょう。
1998年 | 1999年 | 2000年 | 2001年 | 2002年 | 2003年 | 2004年8月まで |
15万9千人 | 19万人 | 42万5千人 | 45万3千人 | 55万7千人 | 35万人 | 38万8千人 |
増える中国人の滞在期限超過者 −10月6日付け新聞記事から−
国別 | 中国 | インドネシア | バングラデシュ | タイ | インド |
人数 | 10,577 | 7,744 | 2,182 | 1,754 | 1,574 |
夜の娯楽施設を警察や入管当局(Imigresen)が取締り活動すると、違法労働、違法滞在の女性が続々逮捕されるのは昔からの日常行事であり、全然珍しくもなんともありません。とりわけ華語紙はこの種のニュースを精細に写真付きで毎回報道しています。こういう報道記事の中で、東南アジア各国出身の女性に混じって中国人女性への言及が目立つようになって久しくなります。上記の摘発ニュースはいわば氷山の一角ですね。
中国人女性とのインタビュー記事を交えた記事が最近英語紙と華語紙の両方に載っていましたので、抜粋します:
以上は10月前半にStar紙 と 星洲日報紙 に載った記事から抜粋。
このような期限超過滞在・違法活動の中国人女性の暗躍状況を、華語紙各紙はもう1年以上も前から時々記事にしてきました。華語紙に目を通す者であれば、こういったニュースは今更珍しくもなんでもありません。しかし英語紙しか読まない人には上記で抜粋したようなニュースはあまりまたはほとんど知らないニュースかもしれません。尚多分マレーシア語紙でも同じかもしれませんが、私ははっきりと知りませんのでなんとも言えません。
私は思うに、語っている中国人女性がどこまで本当のことを語っているか、怪しいものです、その内容に相当疑いを感じざるを得ません。まず彼女たちが、通常の仕事でそんな高額に稼ぎができると本当に信じて、マレーシアに来たとはとても思えませんね。今時こんなことを信じて斡旋エージェントに高い金を払って外国へ働きに行く中国人女性がたくさんいるとはとても思えません。百も承知の違法活動を棚上げして自らを被害者として位置付ける気持ちを現していることばですね。
いや違う、中国は広い、ど田舎の若い女性などは世の中のことを知らないうぶな女性が多くて、斡旋エージェントのことばについ騙されて、大金を前払いして外国へ(違法に)働きに行くのです、という話しがあります。まあ一部にはそういう女性も確かにいるでしょう。しかしこれまで物売りの中国女性をずっと眺めてきた経験と(これに関しては後編で書きます)、各地のカラオケやクラブで違法ホステスとして働く中国女性の様子を話しに聞けば、その”うぶな”女性が一夜にして、男相手の商売女性に変身したり、物売りで男らと談笑できるとはとても思えません。中国とマレーシアの両方のエージェントに騙されて仕方なくマレーシアで期限超過滞在して水商売している、売春活動している中国人女性はごく少ない割合だと私は確信します。
一攫千金までとはいいませんが、ものすごく割の良い”仕事”を求めて中国から外国に出たい女性は不足しない、斡旋する秘密組織が中国とマレーシアの両方に存在する、マレーシア華人社会の一部にはこれを受け入れる素地がある、こうしてこういうビジネスは盛んになる一方のようです。
華人コミュニティーの識者や華人政党や女性団体がこの状況に対して、家庭破壊を起こしている、起こす要因になっていると、何回も憂慮感を表明し批判を重ねていますが、具体的な行動・対策となると、決め手がないようです。なぜなら華人界にはそういう中国人女性を特に拒まないまたはその手に進んで乗るような人たちが少なからずいるからです(たまたまマレーシアを論じているから華人であり、同じようなことは日本を含めて世界のあちこちにありますね)。
マレーシア華人と中国人の違いは諸所の面でもちろん大きいのですが、民族という範疇だけに関して言えば同じです。誤解を恐れずに例えて言えば、合法違法で合わせて100万人を超すインドネシア人がマレー人コミュニティに擬似的に入り込みやすいように、中国人も華人コミュニティーに擬似的に入り込みやすいのです。
加えて、男が金で若い女の気を引くという古今東西を通じて変わらぬある種の”公理”は、この場合にも少なからず当てはまっているようです。もちろんそうでない場合の方が多いに決まっていますが、この”公理”が存在すること自体を完全否定できる人はいないはずです。こう書くと、金で男の気を引く女もいるではないかという反論も出てくるかもしれませんね。もちろんあるでしょうが、それは男が金で若い女の気を引くというケースに比べてはるかに少数であることも、ほとんどの人が認めることだと思います。ここで述べているのは、道徳論ではなく、経験的事実を表明しているのです。
こういった前提状況を下地にして中国人女性の暗躍が増えたきたのは、多分に中国人そのものの訪問者数が増えたからでしょう。中国人旅行者数が年間数万人に満たないような10年ぐらい前は、そういった問題が、起っていたとしてもごくごく少数であり、明るみにでることは皆無に近かったはずですし、私もマスコミで読んだ記憶がない。とにかく中国人が目立つようになったのはこの4、5年ですね。
ところで外国人の期限超過滞在、違法労働、違法活動はいうまでもなく中国人に限りません。その種のことに関わる外国人は、多い少ないはありますがほとんどの国籍の人ににまたがっているはずです、(多分日本人も)。 その多いグループの中で間違いなく中国人以上と見られるのが、インドネシア人です。マレーシアに滞在・住むインドネシア人の数が郡を抜いて多いのは、マレーシアと地理的に近接し、歴史的に深い関係を持ち、言語民族の近似性のせいだと言っても間違いではないでしょう。次ぎはその一端を示す記事です。
金貸しシンジケートが違法外国人を手助けしている− 10月11日の記事から−
このように外国人違法労働者は極めて多いので、政府はごくたまにそういった外国人対象に恩赦を与えており、前回は2002年に行われました。そこで一番最近の恩赦発表からです。−10月22日の新聞から−
さて中国人の活動に戻ります。
私はクアラルンプールで有数の、華人多数の古い下町に長年住んでいるので、中国人の増加とその活動姿を目の当たりにしてきました。私の住むアパートでは出入りしているだけでなく、多分2桁人数の中国人が常時住んでいます。このクラスの中国人が部屋を買って住むことはありえないので、賃借りしています、つまり彼女らに部屋を貸す人がいるということです。早く言えば、明らかに非合法滞在または非合法滞在になりそうな中国人に部屋を貸す華人が、多くはなくても必ずいるのです。通常というか例外なく中国人は複数人で部屋に入居しており、それが時々入れ替わるようです。つい先ほどKLIA空港に着いたようなスタイルの中国人がスーツケースを持って、アパートに出入りするのを十回以上も目撃しています。
尚アパートには中国人の入居が始まるよりもずっと以前から、インドネシア人、バングラデシュ人、ネパール人、ミャンマー人らが入れ替わり立ち代り賃貸して滞在しています。彼ら彼女らは例外なくそれぞれの民族毎に固まって複数人で住んでおり、多くは外国人労働者としてのはずです。中国人グループもいわばその一群なのです。しかしインドネシア人、バングラデシュ人、ネパール人、ミャンマー人と違って、中国人女性が掃除人や飲食店・スーパーの手伝い人や町工場の単純労働者として働ける法的許可はまだ認められていないので、見かけるその中国人女性が何をしているのか不明です。
なぜ中国人とわかるかです。すぐわかる特徴は、彼女たち、時に男もごく少なく混じっている、の話すことばが、マレーシア華人の話す華語ではなく中国語だからです。エレベータや共同場所で耳にするまたは上階下階から聞えてくる彼女たちの会話の発音ですぐわかります。さらに私の住む下町では華人界の共通語はマレーシア風広東語ですが、中国人はまずこの言語で会話できない(中には、福建語、上海語などといった他の中国諸語ができる者ももちろんいるでしょう)。顔見知りのアパート住人華人が広東語や福建語ではなく、華語で話している時その相手側のことばを何となく聞いていると中国語が時に聞えてきます。その場合は間違いなく中国人ですね。
さらに彼女たちの服装と振る舞いからなんとなく華人と違うという感覚を覚えます。これは私が10年以上地元華人コミュニティーの中に埋没して暮らしているからです(私が日本人と知る人はごく少ない)。
アパートだけでなく中国人の存在を感じるのが我下町での光景です。私は毎週2回ぐらい夜、屋台センターへ食事にいきます。すると行くたび毎に、女性主体の中国人物売りがカバンや大きな手下げ袋を持ってやって来て、各テーブルを回って行きます。彼女たちの販売品は半年ぐらい前までは、中国製の薬、食品、お茶、雑貨でしたが、最近は時々違法コピー版のCD・VCDもカバン袋に詰めており、売ろうとしています。これが示すのは、中国から販売用の物品を送る者とそれを運んで来る運び屋とそしてマレーシア側でそれをさばく者 からなる秘密組織が見事に出来上がっていることがわかります。もちろん現場で物売りをする背後には、表には決して出ない一握りのボスたちが必ずや存在するはずです。違法CD・VCDはマレーシア製でしょうから、これは国内の違法CD・VCD製造販売組織が、中国人女性操りシンジケートとつながりを持つことに成功した例でしょう。
私が行く度に必ず目にする光景なので、彼女たちは毎晩こういった定場をいくつか回っているのでしょう。こういう中国人物売りは夜の屋台センターだけでなく、街の中華大衆食堂にも朝から出没することがあります。華人集中地区である我下町では何回も目にしました。物売り中国人は全部ではないですが、見たところそのほとんどは20代から30代の女性です。
数ヶ月前、私はスランゴール州のはずれにある小さな町Sungai Pelelk を訪れて、そこの屋台センターで昼食を取っていたら、物売りの中国人女性が私のテーブルにやって来て中国語で何やら売ろうとします。すぐ 「不要(要らない)」 と断りました、相手するつもりはさらさらないからです。それまで地方の町でも中国女性が徘徊していることは読み知っていましたが、実際にそういう町で目の当たりにしたのは始めてでした。
あちこちでここまで堂々と物売りしているのが不思議なくらいです。そういったことに関わる少数の中国人男性を含めて彼女たちが労働許可証を取得できる可能性は完全にゼロですから、100%の違法活動・行為です。違法滞在かどうかは外見だけからは判断できないのは当然ですが、もう1年くらい見かける顔があるので、当然滞在期限超過の違法滞在ですね。
上で触れた地元の屋台食堂センターへ行き、注文した夕食を待っている、食べていると、中国人女性が回ってきて売り物を見せようとしてます。話しかけてくることばが100%中国語です。私は相手などするつもりは全くないので、完全無視するか 「不要」 と一言いうと、彼女たちはすぐ別のテーブルに向かいます。ここで興味深い光景となります。彼女たちの相手となる人たちが、結構いるのです。そのほとんど全ては華人で、中でも中高年男性が圧倒的に多い。一人から数人組みの中高年男性ですね。ついで中年ぐらいの華人夫婦・カップルでしょう。反対に彼女たちの物売り行為にほとんど反応しないのが、彼女と来ているような若い男女華人カップルです、こども連れの華人家族もほとんど彼女たちを相手にしません。数自体ごく少ないが、女性だけの華人グループもその相手・反応しないグループに加わります。
前編で紹介した新聞記事で、どういう男性が中国人女性(華語の描写では中国女子)の相手となるかに極めて似ていることに気がつきますね。もちろんこの男たちは当然ある程度の華語が話せるから互いに意思疎通会話できることになります。中にはその物売り中国人女性に飲み物をおごったり食事まで頼んであげているのも時々見かけます。中国人女性物売りのビジネスはほとんど毎晩のことでしょうから、すでに互いに顔なじみの関係も当然あるはずです。
一晩に百リンギット以上もかかるちょっとしたカラオケクラブやナイトクラブへ行けば、その種の中国人ホステスがいるのは定説です。しかしこういった屋台センターではそこまで金使えない中年・高年男性がたくさん集まってきます。そういう男性にとって時々彼女たちの勧める物品を買ってあげることで、つまり小遣い銭を多少超える程度でたわいのないおしゃべりして相手してくれる中国女子(20代から30代ぐらい)は、格好の相手かもしれません。まさに前編の新聞記事で紹介した郡部の華人男性(の一部)の心理に共通するものでしょう。だから上記で、「マレーシア華人社会の一部にはこれを受け入れる素地がある」 と私は書きました。そう確かにあるのです。
それがちょっと程度を過ぎると、紹介新聞記事のような不幸に結び付きかねません。同民族性の親近感から 魚心あれば水心 と思い込む男性と、異国の地で何であれ割の良い金稼ぎしたい女性、その意識を利用して候補者など一杯いるであろう中国娘を操ることで金儲けにするシンジケート組織、世の中ここでも根本的仕組みはかわらないようですな。わかっちゃいるけどつい、なんてこともごく低い可能性ながらありえますから、私も気をつけましょ、と(笑)。
尚中国人の名誉からも強調しておきますと、こういった活動にマレーシア訪問の中国人女性がすべて関わっているのではないことは、前編ので引用した 「中国人女性の15%が、滞在期限が切れても帰国していない」 ことからも明らかです、つまり85%はまず関係ないと言えますね。しかし残り15%はいろんな違法活動に携わっているようであり、中国人訪問者数自体が年間60万人近くにもなるので、その15%の実人数が大きな数になるわけです。それではその違法活動例を一つだけ上げてこのコラムを終えます。
10月8日の記事から
新月観測の結果1日ずれない限り、11月14日と15日はハリラヤプアサ (Hari Raya Aidilfitri とも呼ぶ)です。イスラム教においてラマダン(断食月)が終ったことを祝う祭日であり、数あるイスラム教祝祭の中で規模、意味合いの両面で最大最重要の祝祭となり、ムスリム界全体がお祝いします。
ハリラヤプアサ祝いといえば、毎年首相が官邸でオープンハウスを開き、各州では州首相主催のオープンハウスが公邸などで開かれます。さらにハリラヤプアサの日ではありませんが、この時期には政府が観光省の主催のもとオープンハウスを開きます。UMNOだけでなく野党のマレー政党もそれそれオープンハウスを催し、主だったマレー政治家もそれぞれ個人的にもオープンハウスを開きます。 都市や町や村では、マレー基盤の団体やさらには個人的にもオープンハウスを催すことがあるそうです。こうして ハリラヤプアサの2日間が終っても、その後2週間以上経ってもまだ各地でなんらかのオープンハウスが開かれているのです。2, 3週間経って ハリラヤオープンハウス と称しても別に違和感はないようです。まあ例えていえば、日本でも1月中は 新年会 というようなものでしょう。
全国的祝祭日はこの2日間だけですが、ハリラヤプアサ時期と一般にいう時、この2日間だけでなくその両日を含めた少なくとも1週間ぐらいは休暇時期というのが、一般的な捉え方です。マレー人を中心に、ハリラヤ直前に帰省し、家族、友人と故郷でハリラヤを迎えるのが、マレー人コミュニティーのありかた・主流です。小中学校は、今年の場合すでに11月11日から年度末休暇に入っており、来年の1月初めまで休みです。こういったことから、この休暇時期を利用して家族旅行も盛んになるのは当然ですね。
オープンハウスとはなんでしょうか? オープンハウスをマレーシア語では" Rumah terbuka " といいまして、字義上同じ意味です。当サイトでも「旅行者のためになるページ」 「今週のマレーシア」 で簡単ながら、オープンハウスの様子を書いたことがあります。オープンハウスはその名のとおり、誰にでも開かれた(オープンな)飲食物を伴ったもてなしを、ある場所(ハウスなどで)で行います。主催する人たちが、やって来る訪問者に料理を振るまって親交を暖める意味合いが、主催者の全く知らない人にまで拡大されて、誰でも歓迎となります。つまり ”誰でも皆一緒にハリラヤプアサを祝いましょう” ということです。ですから、首相、州首相、観光省、政治家、政党主催のオープンハウスは文字通り全く誰でも、民族、信条、国籍、に関係なく訪れることができます。
これはいかにもマレーシアらしい民族融和の一面が醸し出されます。調べたことがありませんから断言はできませんが、こういう意味でのオープンハウスはなんでもマレーシアにしかないそうです。観光省主催のオープンハウスは当然ながら、とりわけ観光客にも参加を呼びかけており、今年は11月20日クアンタンで開催される予定となっています。機会があれば1度は参加されることをお勧めします。
ところで、個人や民間の団体が行うようなこじんまりとしたオープンハウスは別ですが、かなりの規模で開かれる 首相、州首相、政治家、政党主催のオープンハウスは、極めて政治的意味合いが含まれた性格を内在しています。まず、与党指導者、大臣、州首相などが主催するのであり且つそういった政治家とさらに経済界の要人がずらっと顔見せとして現れるのです。マレーシアの社会・政治風土では与党幹部政治家は極めて極めて力が強く、且つマスコミや市民からの公開批判が表に出づらいので(批判できないということでなくそういった批判をマスコミは伝えないということ)、そういった実力者の顔見せは、その社会的ステータスの顕示でもあります。なぜならこういった人物は単なる一参加者としては参加しないからです。相当なる費用に上るであろう、この種の大規模なオープンハウスはどこからそんな費用が捻出されるのかといった、詮索はもちろんされません。
この種のオープンハウスについて、マレーシアのマスコミはもちろんこういった観点を書きませんが、内実としてこういう性格があるということを、私は説明しているだけです。尚このオープンハウスのあり方はマレーシア社会が受け入れていることであり、良いとか悪いという評価をすべきものではありませんね。
このように広い意味でのハリラヤプアサは、ムスリム社会に大きな大きな意味合いを持っています。ですから社会的にたいへん幅広く祝われ、実に多くのムスリムが心待ちしているのです。ラジオのマレー局人気No1である ERA局をこの時期(ラマダン月)に聞いていると、視聴者との電話会話を含めて DJ のお喋りの中に、プアサ、ハリラヤの単語、話題が朝から晩までしょっちゅう聞かれます。ラマダン月後半ともなれば、もうあらゆる機会といっていいほど、ハリララプアサ関連の話題が混じります。それほどマレー人にはハリラヤプアサは重要なのです。
そのハリラヤプアサの事前行事といってもいいのが、ラマダン時期の買い物、ハリラヤ大売りだしセールスです。これを一般にラマダンバザール(Bazaar Ramadhan) などとよく呼びます。全国の町規模以上のところであれば、必ず1箇所以上は設けられているはずです。ラマダン月が始まると一斉に、町や街のちょとした広場、小路、空き地、商店街の駐車場の一角、商業ビルの広いホールを借りる、さらにはある通りをほぼ自動車通行止めにして専用化、こういった場所にいわゆる屋台市が立ちます。この集合屋台またはそれの大規模な屋台市は、1週に1、2回という通常の定期市と違って、ラマダン期間中は毎日商売します。
合法的なラマダンバザールは、都会ではその自治体が場所を定め、出店屋台を選択、くじで決めるなどが一般的です。その場所が上記の広場、小路、空き地、商店街の駐車場の一角、などとなるわけです。尚いうまでもないことですが、そういった定められた場所だけなく、歩道や住宅街の一角、商業ビルの前など、ゲリラ的に勝手に店を出す屋台も全然珍しくありません。こういう屋台は固まっていてもせいぜい10屋台を超えない程度ですが、あちこちに出現しますね。もちろん理論的には取締り対象になります。
屋台人といっても、この時期だけ屋台を出す人もいます。つまり屋台商売を1年中生業としてない人も参加しますから、競争はより激しいです。ですから人出の集まる場所では場所取りが熾烈になります。こういうことを知れば、屋台出店資格と場所決めにくじ引きが取りいれられるのもわかりますね。今年はヒンヅー教の祭典 デーパーバリが11月11日となる偶然の日程のため、普段はインド人屋台がほぼ圧倒する クアラルンプールのLorong Tuank Abdul Rahman通り界隈の屋台割り当てで、マレー屋台に9割の割り当てがあり、インド人屋台人が強い抗議を出したことがニュースになりました。
ラマダンバザールはこのように全国至るところで開かれているので、何もクアラルンプールだけを強調する必要はありません。ただクアラルンプールは私の地元なので容易に訪れることができる、人口の面でその規模はやはり国内有数の大きさであるということからここで紹介します。ラマダンバザール兼デーパーバリバザールとしては最大規模と言われる Jalan Masjid India とそれに平行する Lorong Tuank Abdul Rahman(小路) 地区を、10月終りの土曜日の夕方訪れて見ました。人出は相当多いと言えます。特に道幅の狭いLorong Tuank Abdul Rahmanは所によってはすれ違うのもたいへんな混雑ぶりです。土曜日の午後、雨もない という好条件も重なったからでしょう。
この2本の通りは伝統的マレー且つインド商業通りとしてとして非常によく知られた、Tuank Abdul Rahman通りの内側にほぼ平行して走る短い通りであり、ラマダンバザールまたはデーパーバリバザールの会場として例年用いられています。Lorong Tuank Abdul Rahman は毎週土曜日夜に屋台市が立つことでも知られていますね。ことしは2つの祝祭が近接しているので、上記の新聞記事のように、インド人のデーパーバリ屋台もこの通りに混じっています。Tuank Abdul Rahman通りとこの2本の通りは普段からたくさんのマレー人とインド人が買い物に訪れる一等地ですから、屋台商売人は誰しも区画を欲しがることでしょう。何百軒と並ぶ屋台街を歩いて感じたのは、全体の数からいえば圧倒的にマレー屋台が多いです。全体の1割強という数は、インド人商人から見ればいかにも少ないでしょうね。
その様子を写真に撮りましたので、別ページで掲載しています。この Ramadhan Bazaar 2004年の風景から をクリックしてくだされば、写真だけを載せたページが開きます。老朽デジカメのピクセル数が低く、夕方なので周囲がすでにちょっと暗くなりかけているため、シャープさに欠けるのが我ながら残念ですが、とにかくラマダンバザールの雰囲気を感じてください。
そこに写っているように、食料品、家庭手料理風のマレー料理、マレー菓子、一般的マレー大衆食、ジーパン・Tシャツなどの日常衣類、アクセサリー、ムスリム用の男女衣類、装飾品、カセット、VCD、布切れ、靴スリッパ類、造花類、室内装飾品、などなどがこのラマダンバザールでは売られています。ここでしか買えないような物、食品は多分まずないと思いますが、それでもこれほど多くの人が集まってくるのは、やはり大きな市すなわち大バザールという雰囲気と有名な市という”ブランド名”にあるのだろうと、私は思います。これぞラマダンバザールなのに、白人や日本人などのすぐ見てわかる外国人旅行者はほとんどというか全く見かけないバザールです。この傾向は毎年同じですね。
何はともあれ、今年はもう機会ない方でも来年こういったラマダンバザールを訪れて、雰囲気や食品を楽しんでみるのもいいと思いますよ。
最近の 「新聞の記事から」 で、ジョーホール州で象2頭が列車と接触して死んだニュースを載せましたね。野生動物庁の係官が翼朝現場で調べた際、1頭の象の鼻が完全に、且つ耳の一部が切り取られていました。何者かが死んだ象、または死にかけていた象から文字通り切り取って持ち去ったのです。私は新聞に掲載された写真を見ておもわず、ひどいことするなあ、と思いました。これは私だけでなく、この記事と写真を見たほとんどのマレーシア人が同じ感想を抱いたはずです。
象を傷つけたり殺したりするのはもちろん、象の身体の一部を勝手に所有することは、マレーシアでは法律で禁止された違反行為です。象は保護動物なので、象の身体のどの部分も所持してはいけない、もし見つかれば起訴されて罰金RM3千か3年の懲役などに処されるとのことです。
以上このコラムの前提になるできごとを知っていただきました。
ここでは法律的な違反面は直接関係ないので触れないとして、死んだ、または死にかけていた象の鼻を切り取る行為は許されるのか、ひどい行為なのかを考えてみましょう。なぜなら、ある動物に対してある人がくわえた行為への評価は、民族と文化と宗教によって大きく違うので、A という民族がある動物に加えられた行為を残虐だと感じて批判しても、B という民族にとってその行為は別に残虐な行為でも、いけない行為でもないという事例は世界に数あります。
よく知られた例でいえば、韓国やベトナムでは犬を料理して食べますよね。両国では慣習的に、伝統的にある種の犬を食用に用いてきました。それを他国、とりわけ西欧国の民が残虐だと一方的に非難しています。ソウルオリンピックの際、韓国政府が犬の食用を他国からの訪問者の人目につかないように強制力をもって対処したことがニュースになりましたね。西欧の”動物愛護運動”では常に犬を食用にすることを弾劾しているそうです。
この事実が示しているのが、上で述べた、「Aという民族がある動物に加えられた行為を残虐だと感じて批判しても、Bという民族にとってその行為は別に残虐な行為でも、いけない行為でもない」 例です。自分たちの文化観を一方的に世界の規範化して、それを文化の違う国の民にも押し付けているのですが、やっかいなことは、そういう批判を投げつけている国の民、とりわけ自称動物愛護主義者は、そのことを全く自覚できないことです。
文化の相対主義という観点が一番必要なのに、まず可哀想、という感情論、次いで残虐だという差別観 で、犬の食用を捉えてしまいます。韓国やベトナムの民が例えば英国へ行って同じ行為すれば、それはその韓国やベトナムの民が訪れた他国の文化を尊重しない、不快感を与える行為だと批判されてしかるべきであり、時には法律違反に問われてもしかたありません。
しかし韓国やベトナムの地で、韓国人やベトナム人が食用の犬を料理して食べてもなんら責めも批判も受けるべきことではありません。食用の犬は種の絶滅に瀕した稀少動物でも、保護動物でもないし、さらに近所の飼い犬を黙って捕まえて食べているわけでもないからです(それは他人の生き物を盗んで殺す犯罪行為です)。
自国、自民族の文化観を押し付けることが世界の規範化と信じ込んでいる西欧流のあり方に強く反対、反論すべきですが、アジアの国の中には政府と民衆の両方に、貿易などのマイナス面を心配して弱腰になる場合が見られます。さらに西欧流の動物愛護主義を金科玉条のごとく考えるアジア人もいますね。
誤解を避けるために明確にしておきますと、私は西欧流の動物愛護主義がすべて悪いとは決して言いませんし、思いません。西欧流の動物愛護主義が、絶滅に瀕した多くの野生動物への保護の原動力になった、なっている事実は充分評価すべきであるし、それを見習う部分も充分あると思います。アジアやアフリカで絶滅の恐れのある、瀕した動物の保護に関わっている人たちに、西欧でその種の教育を受けた人も多いし、少なからずの西欧の保護運動家が携わっていることは知っています。
必要なことは、評価すべき点は評価して素直に取りいれる、しかし文化相対主義から受け入れられない点は受け入れられないとはっきり表明して拒絶すべきだ、ということです。
この問題に関して日本人であれば誰でも知っていることに、捕鯨がありますよね。捕鯨は日本人だけでなく一部のエスキモー(イヌイット)やノルウエー人が昔から行ってきた、いわば民族的、伝統・慣習的狩猟行為です。捕鯨を鯨が可哀想だから禁止するという非難(批判でなく非難、攻撃ですね)は、ここで述べた 自民族の文化観の押しつけと規範化行為である面が極めて多い。多いと書くのは、鯨の種の絶滅を愁る観点からの捕鯨禁止論もあるからです。
もし鯨が本当に種の絶滅に瀕している、またはその恐れがあるのであれば、捕鯨には反対し、捕鯨を禁止すべきであるというのが私の立場です。いくら民族的、伝統・慣習的狩猟行為であろうと、人間に鯨を絶滅に追い込む権利はないからです。鯨肉を食べなくても、日本人は経済的に困りませんしね(鯨肉がなくても困らないけど、私は鯨肉は好きですね。もし安価でふんだんにあれば食べたいと思います)。
どうもよくわからないのは、鯨は本当に種の絶滅に瀕しているのだろうか、ということです。科学者のデータにも相反する結果が出ているようですし、データ自体が世界の鯨保護運動と捕鯨運動の間で翻弄されているような感じを抱きます。とにかくどれが、感情と利害を抜きにした、正確で科学的なデータなのかよくわかりません。
ところで日本は太平洋の極小諸国などに援助を餌に捕鯨賛成投票を勧めているという批判が、捕鯨禁止派からありますね。そういう捕鯨禁止派の多く(全部ではない)は自己文化観の押しつけ主義者であることを自覚してない民と国なので、批判自体に説得力がありません。こういった文化帝国主義的批判に対して援助を餌に投票を買うのは、毒を持って毒を制す、いわば自衛策でしょう。もちろん誉めているのではありませんよ、どちらもどちらだと言いたいのです。
それでは象の事故死による鼻の切り取りに戻りましょう。
新聞報道によれば、象の鼻が切り取られたのが、その象が死んでからなのか死にかけている状態であったかは特定されていません。切り取られて持ち去られたのは事実であり、鼻のなくなった血にまみれたむごい写真も添えられています。
死にかけの状態で鼻を切り取るのはどんな理由であれ残虐な行為なので許せませんし、誰でもその行為に反対されるでしょう。そこで象の鼻が切り取られたのが死んだ後だと仮定します。一番最初に書きましたように、これは法律違反です、その観点からは当然捜査されて罰せられべきものでしょう。
で象の鼻は何ゆえ切り取られ持ち去られたのでしょうか? そこが私にはわかりませんでしたので、象に非常に詳しい知人に尋ねました。彼はジャングルトレッキングツアーなどを催行しているその道のプロであり、象扱いもでき、象の保護啓蒙活動に熱心なマレー人です。彼の説明に寄れば、今回切り取った鼻は、恐らく民間伝統薬か民間伝統マッサージに用いられるだろうとのことです。ヒンヅー教では象を神聖視して、その効果をあがめる人がいるので、象の身体への需要があるということです。もちろん彼の解釈ではということであり、ヒンヅー教徒一般への批判ではなく、中にはそういう不届きなインド人もいるということです。切り取ったのは(それを売ることを目的とした)インドネシア人かもしれない、と彼は説明してくれました。尚私の質問に、大昔はともかく現代ではオランアスリは象を狩猟しないと彼は断言しています。
すると一部のこの種の人たちにとっては、(死んだ)象の鼻を切り取ることは残虐な行為でも可哀想な行為でもないことになります。もちろん法律上の違反行為は別にしてですよ。この種の人たちの捉える宗教観と文化観によって、象の身体は病気なり身体を癒してくれるものであると、捉えていることになり、そこで鼻を切り取ったとしてもその人たちの文化的または宗教的価値観では残虐でもいけない行為でもないことになるはずです。もちろんこれはインド人を含めた多くのマレーシア人に共感されない行為であるのは間違いないでしょう、しかしと私は一抹の留保観を持ちます。
最初象の鼻切り取りの記事と写真を見たとき、ひどい行為だなと思いました。今でもそう感じること自体に変わりはありませんが、そういう行為がなされた背景に興味を持ったわけです。マレーシアの法律に違反することなので当然罰せられるべきだと思いますし、象の鼻を切り取った者たちを擁護する気持ちは沸いてきません。しかしたとえ罰せられてもその行為を働いた一部の者には、文化観の違いから納得いかないことでしょう。
宗教観と文化観はまこと変え難いものですが、しかし永久に不変なものでもないはずです。生きる時代と経済的動機の影響を多いに受けます。経済的動機とは、簡単にいえば金儲けにつながるということですね。それでは象の鼻の切り取りは、宗教観と文化観ゆえに許される行為なのでしょうか?
かつて昔は宗教的動機に基づいて象の鼻を切り取っても許された時代があったかも知れません、しかし現代では圧倒的多数のマレーシアのヒンヅー教徒がそういう行為を許すとは考えられません。つまり生きる時代が変わったということです。鼻切り取り行為が経済的動機の面から許されないのは、当然でしょう。生息数が極めて少ない保護動物である象は、とりわけこの種の経済的狩猟から守る目的もあって法律で保護されていますからね。
唯一象の鼻の切り取りを正当化する道は、宗教観と文化観を表に出して皆に訴えて、堂々と(死んだ)象から切り取る場合だけでしょう。しかし象が保護動物であるだけにこれは極めて共感を得にくいことですね。食用の犬を堂々と料理したり、世界公知のもとで絶滅に瀕していない種の鯨の捕鯨をするのとはいささか違います。ところが今回の象の鼻の切り取り事件は、こっそりとまさに盗人的に行った行為ですので、擁護する点など全くありませんし、擁護論が起きるとは考えられません。
尚(死んだ象を対象にしたと仮定する限り) 残虐だ、可哀想だとの感情論だけの批判も多少的外れであるとの、私の主張もわかっていただけたことと思います。
これまで断続的に掲載してきた数字で見たシリーズです。マレーシアに関する様々な統計数字を掲載しています。ここでは、数字を視点にしてマレーシアの諸面を知ってください。
まずビジネス・産業界に関する数字です。
大きく3分類すれば、
証券委員会が11月1日から払い込み資本の額を緩和すると発表しました。
総合証券会社 の場合は RM 1億、 非総合証券会社の場合は RM 2000万 となる。
1990年から2003年までを期間にした場合、投資対象別の平均年利益率(上昇率)
投資対象 |
参考: 消費者物価 |
KL株式市場の 上場企業の株 |
3ヶ月の 定期預金 |
住居購買 の値上り |
被雇用者 福祉基金配当 |
年利益率 | 3.10% | 3.53% | 5.84% | 6.20% | 6.70% |
マレーシアの石油埋蔵量は世界第27位に番付られており、その量は48億バーレルです。現在の日当り生産量を適用すれば、この埋蔵量は18年続く計算です。マレーシアの石油探索している総面積は49万平方キロに及びます。その内大陸棚部分が33万平方キロを占めます。現在の日平均石油生産量は60万バーレル、天然ガスが 58億スタンダード立法フィートです。
今年1年間全国で使われる広告費の総額は前年比18%の伸びが期待されています。総額でRM45億ほどですと、調査会社Nielsen Media Research が発表しました。
媒体 | テレビ | 新聞 | 雑誌 | ラジオ | 映画 | その他 | 合計 |
金額 | 5億9千万 | 12億8千万 | 7000万 | 7700万 | 600万 | 4200万 | RM 20億 |
比率 | 28.6% | 61.9% | 3.4% | 3.8% | 0.3% | 2.1% | 100% |
年比較 伸び率 | 39.7% | 20.3% | 4.4% | 12.6% | 33.2% | -2.6% |
23.8% (期の伸び率) |
マレーシア雇用者連合会が全国247社を調査した2003年賃金調査報告です(10月中旬)。その内113企業が製造業で、134企業が非製造業です。対象はその企業に雇用されている幹部社員を除く被雇用者の賃金。
年 | 1997年 | 1998年 | 1999年 | 2000年 | 2001年 | 2002年 | 2003年 | 2004年予測 |
平均賃上げ率 | 8.58% | 6.22% | 6.00% | 6.90% | 6.68% | 5.89% | 5.66% | 5.68% |
世界的原油価格の急上昇に対応するため、ガソリン類の値上げを即実施すると、国内取引と消費者省が発表しました。それぞれ1リットル当り5セントの値上げです。下の表は東方日報の記事を引用。
レギュラーガソリン | 高オクタンガソリン | ジーゼル | プロパンガス | |
半島部 | RM 1.38 | RM 1.42 | RM 0.831 | RM 1.40/Kg |
サバ州・サラワク州 | RM 1.38 | RM 1.40/ 1.41 | RM 0.834/ 0.828 | RM 1.48/Kg |
国 | タイ | シンガポール | インドネシア |
レギュラーガソリン | RM 2.12 | RM 3.37 | RM 1.23 |
ジーゼル | RM 1.42 | RM 2.02 | RM 0.719 |
マレーシアコミュニケーションとマルチメディア会議の調査によれば、国内のインタ−ネットダイアルアップ接続者数は、今年第2四半期 で311万人です。この数は意外にも第1四半期の314万人よりも減ったのです。インターネットしたい者はすでにほとんどが接続しており、これからの新規接続者は初めてのPCユーザーになっていると、識者は論じています。ブロードバンド接続の登録者は、今年第2四半期やや増加して17万人ほどです。
国内のテレコミュニケーション会社の収入割合を分類すると
音のサービス収入 81%:パブリックスイッチ電話、通常電話
データサービス収入 19%:リース線、ISDN、IP-VPN, ATM、X.25 など
になるそうです。これは市場調査会社IDCの発表です。
華語紙 | 英語紙 | マレーシア語紙 | ||||||
新聞名 | 星洲日報 | 南洋商報 | 中国報 | 光明日報 | The Star |
New Straits Times |
Berita Harian |
Utusan Malaysia |
販売数 | 319,000 | 147,000 | 122,000 | 104,000 | 307,000 | 135,000 | 228,000 | 246,000 |
珍しい統計数字です。マレーシアの地震に関して、数字的な知識として知っておきましょう。ただ現実になんらかの被害がでるのは、極めて極めてまれですね。スマトラ島で地震があった影響で、ペナン島の高いビルで揺れを感じたなんていうニュースがごくたまに載ります。
州 |
クアラルンプール スランゴール州 | ジョーホール州 | ペナン州 | N.スンビラン州 | |
回数 | 27 | 16 | 21 | 2 | |
Mercalli等級 | 六 | 六 | 六 | ニ | |
州 | マラッカ州 | ケダー州 | パハン州 | トレンガヌ州 | クランタン州 |
回数 | 3 | 6 | 3 | 0 | 2 |
Mercalli等級 | 四 | 五 | 二 | 三 | |
州 | ペルリス州 | ペラ州 | サバ州 | サラワク州 | |
回数 | 1 | 11 | 19 | 3 | |
Mercalli等級 | 一 | 四 | 七 | 四 |
回数:サバ州とサラワク州のみ統計年が1923年−2003年で、半島部は全て1909年から2003年です。
Mercalli 等級:修正Mercalli 等級を用いて観測された最高値を示す。
震度というのは日本の基準ですよね、Mercalli 等級 というのがどういう等級か、私は知りませんが、地震の規模を計るいわゆるマグニチュードとは違います。100年近い間に、クアラルンプールとスランゴール州で27回の有感というのは、確かに珍しいぐらい少ないですね。
教育省が実施毎年学年末近くに実施する、生徒の進路に大きな影響を持つ、全国一斉の統一試験があります:小学校段階でUPSR, 中学校段階でPMR, SPM, STPM です。
受験生徒数の 公立と私立の割合に注目して下さい。
今年のUPSR試験の受験者数は約 50万人で、私立学校の生徒は1.2%でした。
PMR (中学校3年生対象)
2004年のPMR試験は9月末から5日間の日程で行われました。これは全国の中学3年生が学年後半に一斉に受ける統一試験です。
今年は422152人が受験します。受験生徒の内訳は、92%が政府系中学校、4.6%が州立または団体立の中学校、3%が私立中学校、残りが学校終えた個人資格の生徒です。
SPM (中学校5年生対象)
中学校5年の終りに受ける全国統一試験 SPM の今年の受験生徒数は、416,741人です。この試験は10月末から11月9日までの日程で行われ、続いて11月22日から12月初めまで再開されます。
総受験生徒数 | 教育省管轄下の中学校 | 州立または州団体翼下の中学校 | 私立中学校 | 個人受験 |
416,741人 | 359,725人 | 16,673人 | 13,232人 | 27,111人 |
割合 | 86% | 4% | 3% |
総受験生徒数 | 教育省管轄下の中学校 | 私立中学校 | 個人受験 |
71,142人 | 58,455人 | 5,822人 | 6,865人 |
年齢 | 2歳未満 | 2−12 | 13-19 | 20-29 | 30-39 | 40-49 |
50才 以上 | 不明 | 合計 | 総人数 |
HIV | 0.2 | 0.6 | 1.5 | 36.8 | 42.8 | 14.2 | 2.7 | 1.2 | 100% | 56,677 |
AIDS | 0.4 | 1.2 | 2.3 | 20.9 | 44.8 | 22.6 | 7.3 | 0.4 | 100% | 8,027 |
感染 分類 |
麻薬 使用者 |
薬服用 による |
臓器 受領 |
同性 愛者 |
ヘテロ セクシャル |
母親から 感染 | 不明 | 合計 | 総人数 | |
HIV | 75.4 | 微少 | 微少 | 1.0 | 12.7 | 0.7 | 10.2 | 100% | 56,677 | |
AIDS | 60.7 | 0.2 | 微少 | 2.0 | 25.6 | 1.2 | 10.2 | 100% | 8,027 |
新規の常習 麻薬使用者 |
麻薬常習行為 に戻った者 |
麻薬常習 者の総数 |
|
2003年1月から7月 | 10832 | 9369 | 20201人 |
2004年1月から7月 | 13321 | 13418 | 26739人 |
変化率 | 23% | 43% | 32% |
2003年12月の時点で、福祉庁に登録してある身体障害者の数は、132,458人です、と女性・家族・コミュニティー発展省の政務次官が国会で明らかにしました。登録していない人もいますから、実数はもっと多いということです。
身体障害者の数は、132,458人の内、視力に支障がある人は14,153人、聴覚に支障がある人は22,749人、身体が不自由な人は45,140人、精神に支障がある人が49,336人、その他1080人 という内訳です。
総事故件数 | 死亡者数 |
その内訳 (運転手) |
バイク及び 相乗り者 |
自動車と 同乗者 | 歩行者 | 自転車 |
トラックと 同乗者 |
240,753件 | 4,639人 | 2,634人 | 864人 | 491人 | 222人 | 186人 |
各州のスルタンとスルタンのいない州はガバナーが授与する称号は、毎年何百と与えられています。これと別に連邦レベルで国王が授与する称号もあります。称号名はほぼ同じです。
連邦授与の称号の数は合計数が決められているとのことで、 上から Tun が50人、Tan Sri が195人、Datuk が270人となります。この数はある1年の授与数ではなく、累積授与数です。
クアラルンプールを中心としてその周辺・近郊を結んで運行されている電車網には4種類あります。
現在ではStarline と Putraline の両方とも政府持ち株会社SPNB の翼下にはいりました。Komuter はマレー鉄道が運行し、KL Monorail は独立した民間企業が運行しています。
クアラルンプールの公共交通網は、モノレールを除くこれらの電車網が完成して軌道に乗った2000年ごろからぐっと良くなりました。90年代中頃まではバスしかなかったのですから当然といえば当然ですが、東南アジアの首都として、ジャカルタやハノイはいうまでもなくバンコクよりも早く且つ路線数多く建設し運行している先見性は賞賛すべきですね(都市イコール国家であるシンガポールは除外します)。大多数の利用者は、電車網にいくつかの不満はあってもまず利便さと快適さを評価していることと思います。
そこでこの4種の電車に関して、開通以来毎年それぞれに何十回も乗り続けている一人の乗客として、良い面と優れた面を評価した上で、こうしたらもっと利用しやすくなるのにという提案と意見です。
Komuter を除いて、電車・モノレールの時刻表は掲示板であれ配布式紙製であれ、全く存在しません、つまりある駅を何時何分発という運行は約束していません。
電車網の中で唯一 Komuter は細かな時刻表を作成しています。KL Sentra駅のような大きな駅だと紙製両面カラー印刷のKomuter 時刻表が案内所に置いてあるので入手は可能ですが、多くの駅では配布用には揃えていませんので、それほど簡単に入手できるわけではない。通常の Komuter駅だとこの紙製時刻表が駅の壁などに1枚か2枚程度貼ってあります。 別の紙に大書したり、時刻表用の掲示板があるわけではありません。プラットフォームには全く時刻表はありませんが、上下線のプラットフォームにそれぞれ備えてある電光掲示板で、次ぎの電車の発車時刻が表示されます。しかし電車の運行が遅れたり乱れても、電光掲示板に表示される次ぎの電車の時刻は変化しません、つまりプログラムされた時刻を表示しているだけです。時刻表が公知されているからといってその通りにきちんと運行されているわけではありませんが、時刻表はないよりもあった方がよいに決まっていますね。
多くの駅においては、改札を通る前の構内に運行路線図と料金表を示した大きな独立した掲示板があり(一部駅は改札後の一画にも立ててある) 、その中で運行頻度として次ぎのように表記されている、「平日:7時半から9時半 及び16時半から19時半は4分から8分毎、 その他時間帯は7分から10分毎、 日曜と祭日:1日中 10分から15分毎」
プラットフォームにはこの種の表示または掲示は全くなく、次ぎの電車がどの方面行き電車かを知らせる電光掲示板がある。しかし発着時刻は表示されません。
駅施設の入り口あたりか切符売り場あたりか、どこかに表示してある "Putraline のお知らせ" の中で、運行時間を小さく示している駅もある一方、それすら示していない駅もある、それも Masjid Jamek 駅、Pasar Seni 駅のような大きな駅ですらない。何分毎に1本といった電車の運行頻度は決まっているだろうが、駅利用者には全く公知していない。プラットフォームに電光掲示板があるが、電車の到着を知らせる機能はない。よってプラットフォームに電車がごく近づいたことで、乗客は電車の到着を知る。ダイヤが乱れてもそれを知るすべはない。相当なる乱れの時は駅員が口頭で知らせることはしている。
駅の内外、プラットフォームを通じてどこにも運行頻度を知らせる表示または掲示はない。プラットフォームにテレビが吊り下げてあるが、これは広告用テレビであり、電車の運行とは関係ない。まさにいつ来るともわからぬ電車を待つだけです。まるで市内・郊外乗り合いバスみたいで、待っておればそのうち来るさというところです。
尚、マレーシアの電車に時刻表など要らないという論議は、Komuter を見れば間違いですね。路線の一番長いKomuter が時刻表を、ちょっと不十分とはいえ、公知しているのですから、より短い路線である他の電車は時刻表を作成して、駅内に掲げることはやってやれないことではない、と思われます。時刻表が必須であるとは言いませんが、”10歩譲って”、せめて運行間隔は掲示・表示して利用者の便に供するべきですね。頻繁な利用者であれば、電車の運行間隔がしばしば不規則になることに気がつきます。そこで電車運行に責任を持つ会社として運行間隔を利用者に公知し、それを守る意味を含めて規則的な運行により努力すべきでしょう。
各駅での始発と終電の時刻が表示されていません。始発と終発の時刻は利用者にとって大事な情報のはずなのにです。
時刻表が発表されているので、ある何々駅での始発時刻と終発時刻は調べられます。ただその駅の始発時刻と終発時刻を目立つように表示・掲示している駅はありません。
駅構内に運行路線図と料金表を示した大きな独立掲示板があり、その中で運行時間として表記されている、「始発: Sentul Timur 駅、Ampang 駅、Sri Petaling 駅 のどれも6時、 終発: Sentul Timur 駅 23時、 Ampang 駅 23時半、 Sri Petaling 駅 23時半」
しかしこの情報はその後一部だけですが変更されているはずで、日曜日の終発は30分早いと聞いています。こういった情報の変更は反映されておらず、どの駅の掲示板も以前からの掲示板のままです。それよりもわかりづらいのは、ある駅においてその駅の始発時刻と終発時刻という表示ではないことです。どの駅の掲示板も、「当駅の始発は何時何分で終発は何時何分」 という表示にすべきですね。
いくつかの駅の窓口で尋ねれば、まず決り文句的に始発6時、終発23時半という答えが返ってきます。しかしそれはそれぞれの起点駅を6時に出発する、または23時半に出発するということなので、その利用者が乗る駅まで走行してくる時間を加えなければならない。だから詳しい時間を尋ねても23時50分ぐらいでしょうという大まかな返事になる。
ただ現実には何時何分ぐらいという大まかな計算の方がいいでしょう。なぜなら6時ぴったりに一番電車が出ているという保証はないし、23時半の終発が1分の遅れもなく発車したと仮定しない方がいいので、計算上の到着時刻は大体の目安と考え幾分早めに終電を駅で待った方がいいとはいえます。
駅構内に掲げた掲示の中で運行時間帯が示されている駅では 「何時から何時まで運行」と書かれている。しかしそれはPutraline全体の運行時間という意味にしか取れない、ある駅におけるその駅の始発と終電の時刻ではありません。いくつかの駅で駅員に始発と終電の時刻を尋ねると、駅員の返事は6時始発で終発は11時半頃 という大雑把なものがほとんどでした。Starline の場合もそうですが、一般に駅員は終発電車の時刻にあまり細かくありません。
そこで駅員にさらに突っ込んで尋ねたり、SPNBの案内係りに電話で尋ねれば、始発は各駅共通に 6時ちょっと過ぎ、つまりすべての駅に電車が到着しており、始発とともにその駅から電車が出るとのこと、そして終発はPutralineの両端駅を23時半に出るので、KLSentral駅で23時45分ぐらい(Gombak方面行き)、MasijidJamekでは24時近く(KelanaJaya方面行き)、になるとのことでした、尚日祭日は終発だけ15分早くなるとのことです。
それだったら各駅にそういう表示をすべきです。その駅で始発または終発によく乗る人を除いて、その何々駅の利用者には始発と終発の時刻がまこと不明瞭です。
モノレールはどの駅でも切符窓口に 「運行時間 6時から24時」 と書かれている。さらに 「始発6時、終発24時」 とも書かれている。しかし路線の両端である起点駅以外の、ある何々駅での始発と終発は両方の起点駅からの所要時間をみておく必要があることになります。ところが奇妙なことに 駅の窓口も電話サービス係りも口を揃えて、「駅窓口は深夜12時で閉まってしまいます」 という返事です。終電に乗るには24時前に切符を買ってホームで待っていなさい、ということのようです。
全部で11駅しかない短いモノレール路線なのですから、駅毎の始発と終発時刻の表示は簡単だと思いますけどね。
前編からお読みください。尚このページで触れる各電車の写真・情報は旅行者ページの 「クアラルンプールの交通機間案内と交通事情」 で以前から掲載しています。
しばらく前、多分1年くらい前かな、ゲストブックで何かの文を書いた際、日本では電車にシルバーシートがあるうんぬんと書いたら、「とっくにそういう名称は消えており、現在では優先席といいます!」 といった指摘を受けました。 ある表現において使われている単語とか文句は時とともに変わることがありますので、変化自体は不思議ではありませんし、変なカタカナことばよりも”優先席”という表現の方がずっと優れていると思いました。まあ、ゴールドもシルバーもプラチナも私は縁がありませんので、シルバーが消えても私には特に関係ありませんな(負け惜しみ)。
最近ふとそれを思い出して、クアラルンプールを走行する各種の電車内で”優先席”を示すことば使いをメモしました。尚文中の単語が大文字になっているのは、注意を強調するためからであり、通常のマレーシア語文章では一々大文字化はしません。
Putralein の場合:
Tempat Duduk Ini Khas Untuk Warga Tua, Warga Hamil, Golongan Kurang Upaya.
語義に忠実に訳せば、
この座席は年取った方、妊娠した方、能力の劣るグループのために特別となっています、といった意味です。
Komuter の場合:
Keutamakan Tempat Duduk.
語義に忠実に訳せば、
座席に優先権を与える、優先権を与えた座席 といった意味です。
Komuter の表現は日本の”優先席”と同じ言い回しだと考えていいでしょう。Komuter は短いベンチ式とボックス式の2タイプの座席から構成されていますが、この注意書きが掲示されているのは、短いベンチ式座席だけです。
Putraline の場合は、具体的に対象者名を書き出しているので、文章が長くなっていますね。Tempat Duduk Ini Khas という表現は簡単にいえば”特別席”ということでしょう、Ini は「この」という指示詞。Golongan Kurang Upaya というのは直訳すれば upaya 能力が kurang 足らない golongan グループ となるので 、この表現は以前から私はどうも直接的過ぎる表現に感じます。もちろん私の語感ではということからであり,良いとか悪いということではありません。
Starline の場合:
以前は全くなかったがごく最近、恐らく2004年7月か8月ごろになって、車中にこの種の表示が現れた。電車の席(全てベンチ式です)背後の窓に青いシールが張られており、それには次ぎのように書かれています:
Sila beri tempat duduk anda kepada mereka yang lebih memerlukannya
語義に忠実に訳せば、
あなたの座席をより必要とされる方々にお譲り下さい、 といった意味です。
この表現は、窓シールの貼ってあるあたりの座席だけに限定しているのではなく、座席に座る人ほぼ全部に訴えている、ととれます。つまりこの席は”優先席”とか”特別席”ですよという表現ではなく、座席に座っている人は座る必要がよりある人が乗車してきたら席を譲りましょう、という表現ですね。この件に関しては、電車路線の中で一番優れた表現といえます。
KL Monorail には表現に関わらず”優先席”は全く設けてありません。(2004年10月時点)
それでは、Tempat Duduk Khas またはKeutamakan Tempat Duduk に座っているマレーシア人乗客は対象者が車内に入ってきたとき、その席を素早く譲るのであろうか? これまでの数多くの観察から言えることは、譲らない場合の方がずっと多いといえます。もちろん譲る人もいますから、あくまでも傾向としてですよ。小さな子供連れなどの夫婦や母親はまず譲りませんね。混んできても子供をどうどうと座席に座らせており、自分の膝上に載せるような人は少数派です。これはあらゆる路線に数多くの回数乗って来た私の観察からです。
ところでよく見かけることに、小さな子供が靴を履いたまま座席に立ちあがったり、座席上を歩いています。この時親はまったくそのことを気にしません。大衆食堂や屋台センターでも同じで、小さな子供が靴履きでイスの座席上に立ちあがってもまったく気にしません。これはマレーシア人どの民族にも共通して言えますね。尚一人で歩けないような赤ん坊は靴など履いていないので、ここでは関係ないです。
えっ、私ですか? 車内がガラガラでない限り、優先席または特別席には最初から座りません。Tempat Duduk Ini Khas またはKeutamakan Tempat Duduk には、まああと20年ぐらいたったら座ることにしましょう(笑)。
座った座席の隣や近辺で延々と大声で話されたら辟易しますが、これがまた頻繁に起るのです。そのほとんどを占めるのが携帯電話による会話です。しょせん他人の出す音に対する捉え方が違うので、マレーシアで携帯電話の会話騒音がなくなることはありえませんが、それにしても、なぜ人にわざわざ充分よく聞こえ過ぎるほどの声で話し続ける必要があるのだろうか。
中長距離バス・列車や他州で運行されているバス便を除いて、クアラルンプール内外のバスや電車の様々な区間・路線に毎年どんなに少なくても 300回は乗る筆者は、しばしば携帯電話騒音にさらされます。(この1、2年回数が減ったがそれ以前はもっと数多く乗っていた)
所詮ほとんど守られっこないであろう、同意を全く得られないであろう、車中の携帯電話禁止を主張しているのではありませんよ。車中、プラットフォームには飲食禁止、タバコ禁止、などといった利用者への注意マーク・イラストが掲げてあるので、”モラルとしての携帯電話の小声化推進” ぐらいは電車会社が提案するまたは利用客の間に発想として生まれてほしいものです。
Starline と Putraline の両方とも政府持ち株会社SPNBの翼下に入ったおかげで、今年の中頃からStarline の全駅でも プリペード式のTouch'n Go カードが使えるようになりました。Starline は独自のプリペードカードも引き続き販売しているので2種類併用です。Touch'n Go カードは首都圏のハイウエーの料金支払い方法としてかなり使われていることもあって、比較的普及しているので、これは歓迎すべき点ですね。さらにKomuter にもTouch'n Go カードが使えるようになる予定のようです。
このようにゆっくりながらも利用者サービスが向上していますので、これからも期待しましょう。
注:2004年11月26日の新聞報道によれば、下記のような計画が進行中です。どのような形で切符共通化が実現するのか現時点ではわかりませんが、歓迎すべきことですね。