ゲームマスターの独り言♪


 


○『霧雨の宿』について

 最初に考えたことは、「アイリストールらしさ」。そのために、アイリストール特有のモンスターである、霧死人を出してみました。

 次に考えたことは、「アンバランスド・ワールドらしさ」。普通のファンタジーRPGとも、SFRPGとも違った点を出さなければいけません。そこで、解決方法に特徴を出すことにしてみました。1つは、願いと奇跡を使った(スタンダードな)解決方法。もう1つは、霊子機関をはじめとする機械を使った(強引な)解決方法。

 第3に考えたことは、「いかにして殺さないか」。ここにきて、「逃げまどう霧死人」という変な怪物が完成したのでした。


○シナリオの背景

▼逃げまどう霧死人

 霧死人は普通、知能を持ちません。そのため、生者を見れば必ず襲いかかってきます。ダメージを喰らえば逃げることもありますが、はじめから逃げ出すことはありません。では、逃げ出す霧死人を作るにはどうすればよいか?

 ……背景に、逃げ出すような状況、特徴を作ってやればよい。しかし、それはどんな状況?

 子供にしてしまおう。怖い大人が来たら、普通の子供は逃げ出すだろう。ついでに、後ろめたいこともさせてしまおう。後ろめたいことをしている人間は、自然と逃げ隠れするものだし。普通の霧死人では駄目だから、残留思念が残っているか、半亡霊半霧死人にしてしまおう。そうすれば、意思を持っていても不自然ではあるまい(いや、不自然だが(笑))。

 そんなわけで、霧死人と亡霊が混ざった逃げまどう霧死人『サミュエル=グレイグマン』が誕生したのでした。


▼サミュエル=グレイグマン

 父から隠し財宝のことを聞いていた少年は、母親にも内緒で工事中の屋敷に忍び込んでは、1人で調査を続けていました(もちろん、母親は気づいていましたが)。そして12月のある日、偶然、地下室への扉を開く仕掛けを発見します。その日から、学校さえ行かずに、少年は仕掛けを動かすことに没頭します。
 そしてある日、地下室の扉を開くことに成功したのです。喜び勇んで中へ入り、部屋の奥で財宝を発見した少年。いろいろと物色し、戸棚の上に何かを見つけ、それを取ろうとしたとき、悲劇は起こりました。椅子の足が折れ、戸棚が倒れ、少年は床に頭をぶつけてしまったのです。そして、そのまま意識を取り戻すことなく、少年は霧死人へと化したのでした。母親に隠し財宝を見せたい。その意識だけが残った霧死人へと。


▼地下室の入り口

 まあ、想像はつくと思いますが、オーキスが切断した通路の突き当たりの壁に隠し扉が存在します。

オーキス : 「そこで質問。切断を使った時、隠し扉だと気づかなかったの? 回転式だと、真ん中に芯か何か通っている気がするんだけど……」
GM : 「芯は右端にあるので切断しても切れません。といっても、芯らしい芯は存在しないのです。右端の下の端に鉄棒が入っているくらいで、その下に歯車がついて、水流を利用して鎖で巻き上げて開くという仕掛けだったのです。で、オーキスは扉の真ん中をくりぬいたことになってます(笑)」
 
 それから、扉を開く鍵がどこにあるかというと……霧雨亭への改修工事の際にしかれた木の床板、その下にあったんですね(^^;; 床板をはがすと、そこから不自然に組まれた石床があらわれます。組まれた石をある順番で踏んでやることにより、扉が開くという仕掛けになっていました。
 順番は「edge head」、つまり「5475 8514」。これを、キーボードと同様に左下を1、右上を9として踏んでやればよいわけです。この仕組みは、グレイグマン家の紋章の盾に刻まれた石松模様と、それに関する説明をどこかで見つければ解けるはずでした(笑)
 
アベンダル :「紋章の模様のことは質問したけど、3×3ではムリです(^^;  始点と並び順を示す情報がないままでは推理が成立しませ〜ん。間に空白があるのならばせめて偶数〜、願わくば8×8〜(笑)」

(注:セッションをやっているチャットではありませんが、アベンダルのプレイヤーは数字変換を済ませて、紋章の升目が幾つかという質問をしておりました)

GM : 「その辺の仕掛けはちゃんと考えてあったのですが……オーキスが変化系術法を取った時点でどうでも良くなってしまったのです(笑)」
アベンダル :「まあ、それをいっちゃあ、何もかもがおしまいなのですが(笑)」
オーキス : 「ちなみに、地下室に床板が敷いてあるのは変だと思ったけど、切断あるから関係なかった(笑)」


▼もう一人の行方不明者

 実は、サミュエルが行方不明になると同時に、もう一人行方不明になっている人物がいました。改装工事を担当している工房の従業員です。
 もっとも、彼は暗黒街の賭場に多額の借金があったり、行方不明になったのが給料日の次の日だったりしたため、仕事中に夜逃げしたのだろうと思われ、深く追求はなされていませんでした。改修工事を行った工房へ行けば、いなくなったという事実も分かることでしょう。そして、彼がいなくなったその日、サミュエルもいなくなり、霧雨亭地下室の壁が漆喰で塗られたのでした。さて、彼はどこに行ってしまったのでしょう?(笑)


▼なくなった箱

 テーブルの上にあった宝石もなくなってるんですよね・・・その事実に気づきうる人物はオーキスだけなので、これも永遠に謎でしょう(笑)


▼後日談「ロンデニア・タイムズ」

 790年1月初旬、エルザ運河で大量の白骨死体が見つかります。全て身元は不明ですが、その中に行方不明になっていた工房従業員らしき白骨が含まれていたそうです。死体の中には、100年以上前のものと思われる死体も含まれていたとか。
 誰が、何の目的で投げ捨てたのか、誰にも理解できませんでしたが、白骨死体が見つかったという事実だけは新聞の片隅を飾りました。


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