基本
アンバランスド・ワールドのシステムでは、GMにゲームを管理するための幾つかの権限が与えられます。これらはルール的に保証されるものであり、プレイヤーはGMの指示に従ってキャラクターを作成したり、判定を行わなければなりません。
しかし、GMといえどもゲームの参加者の1人に過ぎず、これらはGMの横暴を保証するものではないということを覚えておいて下さい。GMに与えられる権限は公正なジャッジのために必要なものであり、ゲームを楽しく円滑に進めるために存在するルールなのです。権利には必ず義務がつきまといます。プレイヤーが自分のキャラクターについて責任を取らねばならないように、GMも自分の判断には必ず責任を持たねばならないということを自覚して下さい。
シナリオの進行については、ルール通りに対処すれば大抵のことは問題にはならないでしょう。しかし、その他の部分について何か問題が起こりそうであれば、GMは以下に記されたルールや指針を適用することができます。ただし、これらはあくまでもゲームを円滑に進めるためのものであり、必ず用いなければならないものではないことをご理解下さい。
TRPGとは参加者全員が協力して行う遊びであり、基本的には何事もプレイヤーと相談して決定した方が問題は起こりにくいものです。話し合いや提案という形で話を進めるのが最もよいやり方であることを覚えておいて下さい。
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シナリオ
シナリオの流れや各部の設定は、全てGMに任されます。プレイヤーは提案しても構いませんが、それを取り入れるかどうかの決定はGMの役目となります。
▼テーマ/シナリオタイプの決定
どのような傾向のシナリオにするかはGMが決めることができます。同様に、パーティションルールを取り入れる場合は、シナリオタイプの選択もGMの権限に委ねられます。
▼舞台の決定
国家や都市、またその状況については、GMが自由に設定する権利を持ちます。プレイヤーの提案は考慮されるべきですが、最終的にはGMの決定に従います。
▼キャラクターの関係
ゲームに参加するPCの関係などは、GMがやりやすいように設定することができます。PCがバラバラで全く無関係では、シナリオの展開に支障をきたすこともありますし、何より多くの時間を費やすことになります。また、一部のプレイヤーが行動している時に、一方は何も行動できずに退屈することになりかねません。GMはゲームを円滑に進めるために提案しているわけですから、プレイヤーもそれに配慮してあげなければなりません。
▼NPC
NPCの能力値や設定、PCとの関わり合いなどは、全てGMが自由に設定することができます。敵や怪物なども同様ですが、もちろんPCとのバランスは考慮しなければなりません。
▼プレイの終幕
1つのセッションにどの程度の時間をかけるかは、各参加者の都合を考慮して時間配分を行わなければなりません。これは事前に都合を聞いておくべきであり、GMの独断でなされるべきではありません。
しかし、キャンペーンなどを行っている場合は、何回で終了するのかといった予定については、基本的にGMが決定することができます。ただし、これもプレイヤーたちの都合を考慮して行う必要があります。
▼秘密の設定
ゲームで解くべき謎の設定や秘密機関など、プレイヤーには隠されている領域を設定する権利を持ちます。また、シークレットパートの秘匿情報を閲覧できるのも、GMだけに与えられる権限となります。ただし、秘匿情報は通常のプレイでは必要ありませんので、科学魔道文明などの裏設定に関わるシナリオを行わない場合は、特に閲覧する必要はありません。
▼注意点
GMは世界を創造する役目を負います。つまり、プレイヤーが決定したキャラクター設定以外の部分は、すべてGMが決定する権限があります。
しかし、GMといえども世界設定から逸脱する設定を、独断で決定してよいわけではありません。プレイヤーは期待を持ってゲームに参加しますが、何の予告もなくそれが改変され、まったく望んでいないものを押しつけられる筋合いはないのです。ゲームは楽しむために行うものであり、その楽しみは参加者全員によって作り上げられるものだということを、くれぐれも忘れないようにして下さい。
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ルール
GMはゲームの審判役を担う存在となります。実際にセッションを進める上では、以下のようなルールや指針に従って下さい。
○基本
TRPGのシステムは、キャラクターが行うことが出来る全ての行動を、ルールとしてカバーしているわけではありません。プレイヤーが想定外の行動を取ったり、ルールの解釈に関して迷ったりすることは多々あります。このような事態に遭遇した時、ルールをどのように適用するかの最終的な決定権は、GMが持つことになります。
○事前調整
▼ルールの改変
GMはルールの一部を改変したり、システムでフォローされていない事柄に関して、追加ルールを提示することができます。しかし、これは公平に行う必要がありますし、場面ごとに判断の基準が変わったりしてもいけません。使用できるルールやその基準が明確でなければ、プレイに際して正確な判断を下すことができませんから、これは事前にプレイヤーに説明し、了承を得ておく必要があります。
▼選択・変更
選択ルールを採用するかといったことについては、GMに決定権があります。また、一部のルールを変更したり、使用しないことを選択することも出来ます。ただし、どのルールを用いるのかや、どういった変更を行ったかについては、ゲームを行う前に予めプレイヤーに説明しておかなければなりません。
選択ルールを採用するのは、それを使用することが想定される場合のみにしておくべきでしょう。使いもしないルールをわざわざ記憶するのは時間の無駄ですし、余分なCPを費やして必要な部分をないがしろにすることになりかねません。
○行動処理
▼可能/不可能な行動
これから試みようとする行動が可能かどうかは、全てGMの判断に任されます。その場合は、ルール(世界設定を含む)と常識の2つに従って決定して下さい。もし、プレイヤーがこの世界の常識を理解していない場合は、常識判断(一般:判断+一般情報)の判定を行わせても構いません。
▼ルールの適用
どの場面で何のルールを適用するかは、GMが状況を考慮して決定します。プレイヤーはそれに対して、他のルールの使用を提案したり、ミスがあればそれを指摘することもできます。しかし、最終的に何を適用するのかはGMに委ねられます。
▼判定
判定を行う場合、必ずGMの指示に従う必要があります。勝手に判定を行って出た結果は、GMの権限で無効とすることも可能です。
また、使用する能力と技能もGMが指定します。難易度や修正値などの判定の要素も、ルールで提示されている基準と状況、それからシナリオの展開から判断してGMが自由に決定することができます。プレイヤーはそれに対して、他のルールの使用を提案することができますが、GMが認めなければ使うことはできません。
▼行動の結果
ルールでは難易度や成功値の目安は示されていますが、全ての行為の結果を逐一並べて記述しておくわけにはゆきません。ですから、プレイヤーが選択した行動の結果を描写するのはGMの役目となりますし、具体的な結果を決めるのはGMの権利の1つとなります。
○ミス
ルールの運用や伝える情報に間違いがあった場合は、セッションの継続に問題が起こる場合があります。また、そのことが原因で論争が起こり、進行が完全に止まってしまうことも考えられます。このような場合、GMは以下のように問題を処理して下さい。
▼その場のミス
ミスに気づいた場合は素直に間違い認めて、可能であれば速やかに訂正を行って下さい。その時点では訂正が間に合わなくても、次の判定から正しいルールを適用するようにしましょう。
もし、ルールの変更にプレイヤーが納得していない場合は、最初に行った方法のままプレイを継続してもよいでしょう。こうすればルールの処理としては過ちであっても、不公平ではなくなります。
▼過去のミス
基本的には、何シーンも前に起こったミスに対しては、再び判定をやり直したりするのは避けるべきです。完全なルール適用のミスである場合は、素直にプレイヤーに過ちを詫びた上で、セッションの進行に協力してもらうよう話して下さい。
▼議論
問題となるのは、ミスやルールの解釈の違いによってプレイヤーが不満を抱いたり、議論になってセッションの進行が止まってしまうことです。これはセッションを停滞させることになるので、なるべく避けるよう努めて下さい。こういった問題が起こった場合、プレイヤーにはセッションの進行が第一であることを理解してもらって、議論はセッション終了後に行うのが理想的です。
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キャラクター作成
キャラクター作成はGMの管理下で行われます。プレイヤーがこれに従わない場合、GMは作成したキャラクターのゲーム参加を断る権利を持ちます。
○基本設定
▼職業の決定
このゲームは用意されている職業が多く、自由に好きなものを選ばせていてはゲームが成立しなくなる可能性もあります。そのため、GMは選択できる職業を制限する権限を持ちます。GMは細かく職業を指定しても構いませんし、必須とされる職業を幾つか用意しておいて、そこから選択させてもよいでしょう。
なお、プレロールド・キャラクターといって、事前にGMがキャラクターを作成しておいて、それをプレイヤーに選ばせるというやり方もあります。キャラクター作成に多くの時間がとれない時や、条件付けがシビアなシナリオなどには、こういった方法が適している場合もあります。その時は、性格や技能といった細部までGMが決めてしまうのではなく、ある程度プレイヤーが決定できる部分を残しておいた方がよいでしょう。また、プレイヤーの人数より何人か余分にキャラクターを作っておいて、その中から選択させるのも1つの手です。
▼技能の習得
ここでいう技能とは専門分野のことを指します。このゲームでは、職業リストに記載されていない専門分野の習得にはGMの許可が必要です。また、習得するにしても、世界設定に応じた説明を提示して、GMを納得させなければなりません。
何に使用するかわからない技能を、何の脈絡もなく習得している人は滅多に存在しないものです。また、プレイヤーがそれらしい理由だと思い込んでいたとしても、それがまともかどうかは世界設定を基準にGMが判断しなければなりません。
▼財産レベルの制限
あまりに潤沢な資金を持つキャラクターは、時としてゲームの進行を阻害する場合があります。そのため、GMは財産レベルを制限することも可能です。
▼術法
GMは術法の習得には慎重に対処するべきでしょう。ルールで制限されている事項も幾つか存在しますが、それ以外にもGMの権限で習得を制限して構いません。たとえば、術法協会や宗教機関といえども、リストに含まれている術法が全ての地域で継承されているわけではありません。他にもキャラクターの経歴や社会的信用度なども考慮の対象となります。
○立場
▼地位・権限
職業における地位や社会的信用などの影響度については、すべてGMの判断に従う必要があります。これらは、時としてプレイの展開を大きく左右するものです。あまりに権力を大きくして、それによって課題を簡単にクリアされてはゲームになりません。また、大きな権限を許した場合は、GMは立場に付随するそれなりの責任を与え、PCの行動を制限するべきでしょう。
▼経歴
キャラクターの過去の経歴はプレイヤーが設定するものですが、あまりにも非常識なものやシナリオ進行において都合の悪い設定があった場合、GMはそれを却下して構いません。
▼設定の空白
家族などの設定されていない項目は、GMが決めるべき世界設定に含まれます。もちろん、プレイヤーが提案したものでもシナリオや世界にそぐわない場合は、GMの権限で却下することが可能です。
○その他
▼異常な設定の却下
あまりにもふざけすぎた名前、異常な性格、周りのキャラクターと協調できないような設定などについては、世界設定から考えてあり得ないと判断できる場合、GMはそれを却下しても構いません。
▼例外
その他の例外的事項は、プレイヤーは提案することだけはできます。しかし、周囲を納得させるだけの説明やGMの許可が得られない場合は、それを潔く取り下げなければなりません。
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プレイ
○設定
▼状況設定
プレイにおける状況の提示や描写は、すべてGMの仕事となります。事件などのイベントの管理もこれに含まれます。
▼場面の管理
プレイ内での場面(シーン)の管理はGMに任されます。場所の移動や時間管理などは、すべてGMが仕切ることになります。しかし当然のことですが、これはキャラクターが知りうる限りにおいて、プレイヤーには明かされていなければなりません。
時間や状況の変化というのは、プレイヤーが次の行動を考える上での重要な要素であり、適当に決めてよいものではないのです。ですから、時間や場所をダイスなどでランダムに決める場合でも、事前の行動やどの程度の幅で決定されるのかを明示しておく必要があります。
▼NPC
NPCの行動や予定もGMが行うべき仕事の1つです。しかし、忙しくて手が回らないようであれば、サブマスターにこれを扱わせたり、プレイヤーに判定を委ねても構いません。
▼常識の提示
プレイにおける常識の提示を行うのもGMの仕事の1つです。ルールや世界設定に書かれていない部分は、GMの独断で決めても構わないでしょう。ただし、あくまでも世界設定を考慮して行わなければなりません。
○シナリオ展開
▼展開と結末
プレイヤーの選択と行動の結果に従って、ストーリーの展開と結末を考えます。この場合、GMは展開を決定して提示する権利を持ちますが、あくまでもプレイヤーのとった行動を考慮したものでなければなりません。これがなければ、プレイヤーは何も行動していないも同然となり、GMが書いたシナリオをただ眺めているだけのプレイで終わってしまいます。プレイヤーの行動を全く無視するような話づくりというのは、プレイヤーが気づいているかどうかに拘わらず、GMとしてやってはいけない行為の1つです。
▼報酬
ゲーム終了後に与えられる経験点や金銭などの報酬は、ルールや世界設定を考慮してGMが決定します。これはプレイヤーごとに個別に評価を行います。また、これはキャラクターに対して与えられるものではなく、あくまでもプレイヤーの選択と意図を評価して行うものであることに注意して下さい。評価されるのはゲームの目的に応じて行った判断とその内容であり、キャラクターの行為やダイス目の良さではありません。偶然うまくいったとか、周囲のNPCが事を穏便に済ませたとしても、ゲームとしての評価はなされないのです。
○その他
▼ゲームからのリタイヤ
判定値が突出して周囲とのバランスが取れなくなったキャラクターや、犯罪者や変異体になるなど、ゲームに参加しにくくなったキャラクターは、GMの判断で引退させることができます。
また、許可された設定を悪用して、どんな迷惑なことをしても責任を取らずに済ませようとするプレイヤーに対しては、次回からそのキャラクターを用いた参加を断ることもできます。キャラクターを変えても繰り返し行うプレイヤーは、プレイヤー自身の参加をきっぱりと断っても構いません。もちろん、これらは事前によく話し合った上で行うべき事柄です。
▼非協力的なプレイの禁止
キャラクターが必ず仲間でなければならないわけではありませんし、それぞれ目的が異なる場合もあるでしょう。しかし最低限、プレイヤー同士は協力する必要があります。もし、一部のプレイヤーがあまりにも周囲に迷惑をかけたり、まともにゲームに参加する気がないようであれば、GMはそれに対して警告しなければなりません。
キャラクター設定は自身が決めたものであり、それに対して責任を取るべきなのはプレイヤー自身なのです。ですから、キャラクターの設定がどうであろうと、非協力的なプレイに対して何の言い訳にもなりません。好きにやりたいだけならば、個人でゲーム機を相手にして遊んだり、小説でも書いていれば満足できるでしょう。TRPGでは、常に周囲に自分以外の人がいるということを忘れてはなりません。
注意しても態度が一向に改まらないようであれば、GMはキャラクターを没取、あるいはプレイヤーを退席させる権限を持ちます。これは、参加者全員でよく相談した上でなされるべきであり、なるべくGMの独断で発動するべきではないでしょう。
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共用舞台
他のGMと舞台を共用する場合は、GMの権限は個別の舞台で遊ぶ時と少し変化します。というのは、平行世界として扱い、互いに干渉しないで遊ぶ場合は問題はありませんが、互いの設定が影響し合う場合には、自分の決定が他のGMの邪魔をしてしまうこともあるからです。特にキャラクターをも共有している時は問題が大きくなりますので、注意が必要となります。
スポーツなどの競技に置き換えて考えるとわかりやすいのですが、GMごとに設定やルールが変わるというのは、1つの大会の中で審判によってジャッジやルールが変更されるのと同じようなものです。これではプレイヤーは何を指針にしてよいのかわかりませんし、公平にゲームをすることは不可能となるでしょう。
以下のルールは一切相談がなされない場合に有効となるものであり、グループ内で相談した上でプレイしているのであれば、特に問題が起こることはないでしょう。仮に何か問題が起こった場合だけ、この項目を上位のルールとして適用して下さい。
▼ルールの改変
共有舞台を用いている場合は、GM自作によるルールの追加や大きな改変は許されません。というのは、ルールというのはプレイヤーがキャラクターを動かすための判断基準であり、これが勝手に変更されてしまっては、シナリオの進行そのものに大きな影響を及ぼしかねません。ミスは仕方ありませんが、意図的な改変は控えるようにしなければなりません。仮に変更を行う場合でも、予め他の参加者に了解を取ったり、他のGMのセッションでは適用されないということを宣言しておく必要がありません。
▼キャラクターの共有
同じキャラクターを複数のGMのセッションで用いる場合、個別のGMで許容する範囲が異なります。GMは他のGMが認めたキャラクターでも、自分のセッションに用いるのを拒否する権利を持ちます。
▼世界設定の変更
舞台を共有する場合、既存の記述に反するものを勝手に持ち出すべきではありません。小さな店やNPCなどをつくるのに逐一許可を取る必要がありませんが、舞台そのものに大きな影響を与えそうな施設や組織の作成、あるいは国王や首相といった権力者の設定は、なるべく他のGMと相談して決定して下さい。
▼情勢の変更
共有舞台に大きな影響を与えそうな物品を持ち出したり、将来を左右するような事態を勝手に動かすのは、個別のGMはなるべく避けるべきです。ただし、それが量産できないような物品や、そのシナリオ内で完全に収拾のつく事態であれば、大した問題とならないことが多いでしょう。
▼共有舞台の崩壊
共有舞台を1人のGMの独断で破壊してしまうことは許されません。たとえ一部地域であっても、広範囲を勝手に使用できない状態にしてしまうのは、なるべく避けるべきです。しかし、個別のGMが設定した会社や家で火災を起こしたり、あるいはすぐに復旧できるような問題に対しては、それほど細かく気にする必要はないでしょう。
▼シークレットパートの公開
プレイに応じて、エルモア地方の秘密に関わる部分を公開することもあるでしょう。しかし、舞台を共有している場合は、他のGMの同意がなければシークレットパートを自由に公開することはできません。
限定情報に書かれている部分までは、個別のGMが自由に使用しても構いません。ただし、秘匿情報に書かれている記述は、エルモア地方に大きな影響を与えかねないものであり、時には社会に対する認識さえ全て変えてしまう可能性が高いものです。ですから、これを扱う場合は必ず他のGMの許可を取る必要がありますし、なるべく参加者にも同意を求めるべきでしょう。
なお、秘匿情報を流用したり参考にすることは構いませんが、それでも実際に使用する場合は翻訳作業を行わなければなりません。いかなる場合でも、秘匿情報の取り扱いは慎重に行って下さい。
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