発見
空洞界の存在に地上の人々が気づいた場合、以下のような展開が考えられます。いずれの可能性が実現するにせよ、この発見はエルモア地方全体を大きく揺るがすことになるはずです。そのため、GMはこの設定をゲームに導入する場合は、ゲーム世界に与える将来的な影響についても考慮する必要があるでしょう。
▼居住空間
単に空洞界の一部が発見されるだけでは、それほど大きな騒ぎになることはないでしょう。しかし、その内部に光が降り注ぐ大地があり、山や草原や海で様々な生物たちが生息していることがわかれば、そこを新天地として目指す人々があらわれるのは想像に難くありません。安全な生活圏が確保できるのであれば、奴隷や変異人たちが地下に逃亡することも考えられます。また、耕作地を形成できれば貧民問題を解決できるわけですから、政府主導で開発が行なわれる可能性もあります。
▼遺跡
地底世界の探索が進むことで新たな遺跡が発見され、多くの科学魔道の遺産が発掘されることもあるでしょう。これによって、霊子機関に続く新技術が一般に普及したり、発掘兵器の存在によって軍事バランスが変わることも考えられます。
▼遺跡
ゲートポイントの発見は、後の世界に語り継がれる大きな偉業となるはずです。とはいえ、これは軍事利用が可能となるものですし、ペルソニア大陸や新大陸エスティリオと繋がっているゲートが存在すれば、侵略や開拓がより活発に行なわれ、新たに多くの悲劇が生まれることになるでしょう。
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存在例
空洞界は以下の場所に存在していますが、その存在を知る者はごくわずかな限られた者だけとなります。
○カイテイン
▼奈落の大地
魔界領域(融合領域)の中には、1国に相当する非常に広大な空間を持つ領域が存在します。それはカイテイン帝国のエトワルト海と呼ばれる湖の下にある領域で、かつて大変異現象が起こった時に、この場所にあった大地そのものが地底世界へと引きずり込まれ、融合世界へと変化してしまっています。
ここに暮らしていた大勢の人々も、変異現象に飲み込まれて地底の住人となっています。この融合空間は魔界とゲートが繋がっているようで、人々は魔族たちと戦いを繰り広げながら、現在までの時間を生き延びてきました。かつては科学魔道の技術を利用できたのですが、長い時が過ぎた現在では文明も退化し、エルモア地方の人々よりも劣る技術しか持ち合わせていないようです。
○カルネア
▼地底湖
シュトラム山脈の底部には大空洞があり、ここには直径1kmほどもある大きな地底湖が存在します。洞窟の高さは100m以上もあり、天井にはヒカリゴケがびっしりと生えていて、ぼんやりとした光を放っています。湖は独自の生態系を形成しており、地上には存在しない生物も生息しています。
この空間は始原界へと繋がる入り口であり、ここで生活している生物は地下のさらに奥深くから移動してきたものです。しかし、地底湖の存在を知るのはファバル族という山岳部族だけだけで、聖地として崇められているこの地には、部族の霊媒師しか足を踏み入れることは許されておりません。そのため、奥にある領域に到達した者はこれまで1人もおりませんし、今後も特に何事も起こらなければ、ここは未踏地のまま眠り続けることでしょう。
▼連結洞
現在のカルネアでは南北に分かれて内戦を繰り広げています。この2つの勢力の間にはシュトラム山脈がまたがっているのですが、その地下に幾つかの大洞穴とゲートポイントが存在しています。これは逃亡奴隷たちの逃走路や隠れ場所にもなりえますが、軍に発見された時は兵員・物資の輸送路とされたり、場合によっては地底世界が戦場となる事態も想定されます。
○ユークレイ
▼凍湖
ユークレイの凍湖の底には、必ず何らかの科学魔道機械が眠っています。そもそも凍湖というのは、これらの機械が変異現象の影響を受けて凍気を放つようになって生まれたものです。このような凍結機械群が存在するということは、その周辺に科学魔道時代の都市が存在することの証明であり、凍湖の下には氷で封印されている、まだ利用可能な機械が存在する可能性があります。
通常であれば、これらに到達するためには凍湖の氷を掘り進んでゆく必要があるため、発掘はおろか発見さえ困難な状態にあります。しかし、地下に空洞界が存在していれば、こういった先史文明の遺産でも発掘の可能性が開けます。
しかし、凍湖の下にある空洞界は、その多くが変異現象の影響で氷に閉ざされており、氷の迷宮や氷雪におおわれた大地が広がっています。また、過酷な環境に適応した変異生物も生息しておりますし、場所によっては氷海や雪山が通行を阻んでいる可能性もあります。
氷の世界を踏破するのは並大抵の苦労ではありませんが、一部の凍湖が洞穴に繋がっていることは既に知られております。また、通常よりも溶けにくい凍湖の氷は国外への輸出も行なわれ、その出荷量は年々増加しているため、空洞界の存在が知られるのも時間の問題かもしれません。
▼埋葬
ユークレイでは土葬の習慣が続いており、リビングデッドが多く出現することで有名です。墓地や納骨堂が地下に設けられていることも珍しくありませんし、凍湖の下に繋がる洞穴に棺を納める地域もあります。こういった場所の中には、空洞界へと通じているものも幾つか存在します。
○ライヒスデール
聖歴の初め頃のことですが、ある地方で疫病が蔓延した際に、非道な領主が山地の洞窟に病人を移し、入り口を崩落させて埋め立ててしまったことがあります。しかし、彼らは洞穴の奥から始原界へと辿り着き、現在も集落をつくって生活を続けています。
○エリスファリア
▼呪震
エリスファリアで起こる特異的な変異現象ですが、これによって地底世界へ至る道が開かれる可能性があります。しかし、その多くは落盤によって埋められてしまうため、これまで空洞界に足を踏み入れた者は誰もおりませんでした。過去には巨岩の崩落によって大洞穴が発見された例も存在しますが、新たな落盤が予想されるために入り口は埋め立てられ、現在はその区域は立ち入り禁止となっています。
▼海賊伝説
聖歴500年代初頭の短い間ですが、海賊王ラグという人物が活躍した時期があります。彼は各地で海賊行為を行なって資金を蓄えると、配下に加えた海賊やラチェン人を束ねてエリスファリア王国に戦いを挑みます。結局、ラグは戦いに破れて処刑されるのですが、神出鬼没と言われた彼の行動を支えていたのは、ログリア内海の島々に存在する地下空間だったようです。この海には幾つもの小島が点在しておりますが、その中にはゲートで繋がる海蝕洞窟が幾つかあり、これを利用して敵の背後から奇襲をかけたりしていたのです。
ラグの死後、エリスファリアの貴族たちは幾つかの不思議な地図や、奇妙な話が記された航海日誌などを発見しています。その中には財宝の在り処を示すものと思われる内容も書かれていたのですが、誰もその場所に辿り着くことは出来ませんでした。というのは、その海図には存在しない陸地が描かれていたり、潮流の向きが本来のものとは全く違っていたりしたからです。また、ラグの日記には海の上を走る光の道や、見たこともないような海生生物の記述、あるいは水中でも自由に呼吸ができる海など、荒唐無稽としか言い様のないお伽話が幾つも書き連ねられておりました。そのことから、ラグはただの頭のおかしい愚か者に過ぎず、これらの内容も空想の産物でしかないと信じられています。
もちろん、これらの記述内容は真実であり、ラグは空洞界の一部を発見しておりました。しかし、その存在を知るのは一部の側近たちだけだったようで、彼らもラグと同じく既に処刑されてしまっています。そのため、現在もこの幻の大地を探す人々はおりませんが、財宝の伝説に心を踊らせる冒険家は後を絶たず、いつの日かラグが到達した場所に辿り着く者があらわれるかもしれません。
○ジグラット
▼竜の一族
竜の一族が暮らしている土地の下には空洞界が存在しています。彼らは未だその存在を認識しておらず、空洞界に繋がる洞穴の一部を儀式に利用しているだけです。しかし、もしこの一族が奥地に追いやられるようなことになれば、地下の大空間を発見する可能性もあるでしょう。
◇竜の試練
小竜を駆って険しい地下の大洞窟を飛行し、無事に奥地の祭壇まで辿り着ければ、竜使いとして一族に認められます。しかし、地下には怪物も生息しておりますし、小竜がくぐり抜けるにはギリギリの場所もあるため、高い騎竜技術と竜との強い絆が求められます。
○ユノス
▼魔人の計画
政情不安定なユノスでは、過去の民衆蜂起の際に逃亡した陸軍将軍の『クリューニル』が、『魔の夜会教団』と通じて再度の軍事革命を計画しています。彼らは首都サイファの下にある迷賂のような遺跡で、じっと革命の機会をうかがっています。
この遺跡は始原界へと繋がっているもので、『魔の夜会教団』はその事実を掴んでいます。教団は地下に広がる自然空間を新天地と考えており、変異現象の影響で虐げられることになった人々と手を携えて、地底に差別のない楽園世界を築こうと計画しています。そして、『純粋祈願巡礼団』と称する聖母教会の巡礼団に扮して、変異の影響で異形の体になった人々や貧困に苦しむ者たちを集めているのです。
しかし、空洞界への入り口には多くの異形の怪物たちが眠っており、彼らがいつ目を覚ますかわからない状況です。実際、始原界の調査に向かった魔人たちは、目を覚ました1体の魔物と戦う羽目になり、多くの仲間の命を失うことになりました。そのため、彼らはクリューニル派や政府軍を利用して、この怪物たちを一掃しようと考えています。クリューニル派に手を貸しているのも、地底世界への安全な通路を確保するためであり、彼らを囮として政府軍を地下へと誘い込み、目覚めさせた怪物と戦わせることが彼らの本当の目論みです。
◇ゲートポイント
この計画を完遂するためには、いずれの組織にも地底世界の存在を秘匿したままでいなければなりません。これは計画の大前提でもあり、当然のことながら外部に秘密は漏れておりませんが、実は魔人たちにも未だ知られざる事実が隠されているため、この洞穴の秘密は彼らが考えている以上の重要事項となります。
というのは、彼らが目指す始原界には新大陸エスティリオへと繋がるゲートが存在するためで、このことが明るみに出た時は、エルモア地方の軍事情勢が大きく変わってしまう可能性があります。領土拡大を目指す周辺諸国は、こぞってユノスの征服を目指すでしょうし、それによって大きな戦乱が起こることも考えられます。
教団の計画がどのような結末を迎えようとも、おそらく多くの人々の血が流れることになるでしょう。GMが以上の設定を用いる場合には、そのことについてよく考えてシナリオを作製する必要があります。
○大森林
大森林の地下にも空洞界があり、植物の繁茂する始原界が広がっています。しかし、これらが発見されるためには、外部から軍事的な侵攻があるなど、何らかの大きな変化が生じる必要があるでしょう。
○亜人地域
亜人地域には科学魔道時代の研究都市が存在しており、まだ稼働している機器も幾つか存在します。これらの存在が明るみとなった場合には、周辺諸国から侵攻を受けることになるでしょう。その場合、亜人たちは戦力的には全く歯がたたず、一方的に蹂躙されることになるはずです。彼らが逃げ場を求めて地下に潜った時や、征服を行なった国家が遺跡の発掘を進めた場合に、空洞界が発見される可能性があります。
○ペルソニア大陸
ペルソニア大陸の地下にも地底世界が広がっています。空白期の文明の中には、戦乱を避けるために地下へと潜った人々もおりますし、今後も侵略から逃れた現地民たちが、地底に新たな生活の場を求めることもあるかもしれません。また、砂漠の地下には巨大な湖や希少鉱物の鉱床など、利用価値の高い様々な資源が眠っており、それらを巡る新たな戦いが展開される可能性もあります。
▼赤人
ペルソニア大陸に住むバウンシャ系赤人と、エルモア地方で暮らすレプラッド系赤人は同系統の民族で、もともとはペルソニア南部にあった始原ペルソニア文明を築いた人々です。しかし、彼らの王国は滅びて散り散りになり、その一部は地底世界へと逃げのびました。この時に空洞界のゲートを抜けてエルモア地方へと移動したのがレプラッド系の北方民族で、黒人や黄人との混血を繰り返しながら北へ移動していったのが、ペルソニア北東部の主要民族であるバウンシャ人となります。▼砂漠
砂漠の地下には大地下洞が広がっています。ペルソニアでは流砂にのまれた人間が行方不明となってしまうことがありますが、そのような人々が地底世界で暮らしている可能性があります。また、砂漠に沈んだという古の都の伝説もありますし、実際に地下神殿が発見されている場所も存在しますので、そういった遺跡から地底世界へと辿り着くかもしれません。▼生物
サンドワームと呼ばれる生物は砂の下に潜ったり、地下に穴を掘って移動を行ないます。この虫を使役する穴掘り族と呼ばれる部族が、そう遠くない日に地底世界へと足を踏み入れるかもしれません。また、砂アリと呼ばれる砂漠の巨大蟻や山地に住むドウクツアリは、地下の洞窟世界まで巣を広げています。▼水
一部の河川水は地下に浸透して、地底世界へ滝のように流れ込んでいます。こういった場所に出来た地底湖や始原界を流れる河川が発見されれば、乾燥地帯での水不足の解消が期待できます。逆に、このような地下洞が存在するために、乾燥地となったり砂漠化が進んだという地域も存在します。
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幻皇国
幻影界の領域の1つとして、『イーフォン幻皇国』の存在を挙げておきます。
○イーフォン幻皇国
イーフォン皇国は前聖歴412年から聖歴6年に渡ってエルモア地方の中部に君臨した大国です。この国では幾度も皇帝位の継承に関する騒動が勃発しており、戦いに破れて処刑された皇族も数多く存在します。この融合世界は、その中の1人であるルーシェス=パウラディウム=イーフォン皇子をコア・ハートとする幻影領域です。皇子と彼に付き従う者たちは、領土拡大と永遠の繁栄を夢見る戦士であり、領域外への侵攻を目論んでいます。
▼変化
非常に厄介なのは、イーフォン皇国にまつわる不可思議な伝承や、少し大袈裟に表現された戦記物などの創作物が数多く存在し、それらが幻皇国の創世に大きな影響を与えていることです。もっとも、そういった情報によって生み出された敵国や怪物などが、彼らが外域へ出るのをこれまで阻んでいたわけで、必ずしも地上世界にとって悪いことばかりとも言えないようです。
○基本設定
▼時代
前聖歴412年から聖歴6年の適当な時代であれば、ルーシェス皇子がどの年代に活動した人物かは自由に決めて構いません。
▼場所
ゲートポイントがイーフォンの遺跡に繋がっているのは間違いありませんが、その詳細な場所はシナリオに応じて好きな場所に設定して構いません。
◇支配地域
イーフォン建国初期はライヒスデール、フレイディオン、ルワール南部、メルリィナ、ルクレイド、エストルーク、ペトラーシャ南部を支配しておりましたが、後に内乱が原因で多くの領土を失っています。詳細については各国の歴史のページを参照して下さい。◇遺跡
イーフォン遺跡は現在でも支配地のあちこちに存在しますが、都が置かれていたフレイディオンやその隣国ライヒスデールなどに、特に多くその痕跡が残されています。遺跡には都市の遺構や崩れかけた砦、あるいは水道橋や貯水槽といったものがあります。また、ライヒスデールの山地につくられた、数千人の骨が納められている地下墓地も有名です。◇都
フレイディオンのネグリス地方はイーフォン皇国の中心として栄えた地域で、全域に当時の建築物や遺跡が残されています。都が置かれていたのはシューデル市のある場所で、現在でも都市の地下から遺跡や遺構が発見されることがあります。市の郊外では当時の大貴族の墳墓とされる小丘陵が見つかっていますが、これはイーフォン皇帝の墓ではないかという話もあります。
▼紋章
イーフォン皇国の紋章は、紅蓮の炎をまとう孔雀を意匠化したものです。幻皇国の軍団もこの紋章がついた旗を掲げています。
○伝承・創作
イーフォン皇国に関しては、以下のような伝承などが残されています。幻皇国をゲームで用いる時は、GMは好きな設定を組み込んで構いません。
▼怪物
彼らは四手鬼と呼ばれる怪物を使役したり、竜に騎乗して戦っていたと伝えられています。▼兵士
飛竜を駆るインペリアル・ナイツや、たった1人でトラを倒した剣闘士の話などが存在します。▼聖母教会
イーフォン皇国は聖母教会から法教会へと改宗しており、その確執で聖母教会には強い怨みを抱いているとも伝えられています。▼イーフォン教導騎士団
顔まで隠れる白い三角帽と孔雀の羽根をあしらった白衣を纏う、皇帝直属の兵士たちです。支配地の教化を行なう特別な騎士団であったとされ、聖職者としての役割も担っていたようです。▼魔道
イーフォン皇国にまつわる不穏な伝承も数多く残っており、それが原因で聖母教会と不仲となったという説もあるほどです。彼らは魔道の力で異界の存在に接触していたといい、生命の霊薬を生み出す聖杯を受け取った第3代皇帝は、156歳まで生きたと伝えられています。また、物語の中に登場するものでは、竜の瞳を持つ英雄騎士や、土塊の人形を操る妖術師、あるいは悪魔の月へと至る魔術塔を建てた魔道賢者といった、荒唐無稽な話が数多く登場します。▼血族婚
イーフォン皇家では血族婚を繰り返していたために、多くの奇形児が誕生したとも言われています。こういった存在は変異現象の影響を受けたものと考えられるのが一般的で、人里離れた場所でひっそりと生涯を終えたり、生まれてまもなく殺されたという話です。伝えられるところでは両性具有の皇帝や、瞳なき皇女、牛の角を持つ皇子などがいたそうです。なお、ルーシェス皇子もそういった1人だったという話もありますが、その真偽のほどは判っておりません。
このような血統であるためか、皇家では穢れを祓うために敢えて幼名に不吉な名をつけておりました。イーフォンにまつわる伝承の中には、この穢名から連想して生み出されたものも多くあり、剣で首を斬られても死なない不死戦姫や氷の心臓で動く女皇帝など、史実とは全く異なる存在に変えられてしまっている者もいます。
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