ペルソニア/事件

全体冒涜の王


 

全体


 以下は聖歴700年代にペルソニアで起こった事件です。


○人喰いイナゴ事件

▼発生
・年数
:聖歴700年
・地域:B-3/B-4/B-6/B-8地域

▼事件
 聖歴700年のことですが、ラガン帝国の植民地だったB-4地域の周辺において、人喰いイナゴと呼ばれる凶暴な変異体が大量発生するという事件が起こりました。この大群は植物のみならず、昆虫、動物、果ては人間までも襲う恐ろしいもので、周辺の多くの生き物に被害をもたらし、進路上にあった大きな村を幾つも壊滅させました。それから、彼らはパゴット平野を西に突き進み、多くの人々が住まう海沿い近くまで到達します。火によって進路を変えることで植民都市は事なきを得ましたが、周辺地域で栽培されていた農作物は根こそぎ食い荒らされ、家畜の大半を失うことになります。
 その後、群れの大半はワーズ山脈へと誘導され、山地の木々を食い荒らしながら東へと向かいました。平野部に残った群れの一部は、火や術法によって駆除が試みられたのですが、その過程でこの変異体の面白い性質が発見されます。それは天然樹脂を燃やした煙によって異常行動を引き起こし、共食いを開始するというもので、これによって事件は一気に解決へと向かいました。
 しかし、その被害は甚大なもので、この地域の植民地経営や人々の生活のみならず、周辺の生態系にも大きな影響を及ぼしました。ワーズ山脈へと向かった群れの大半は駆除できたものの、森の木々は激しく喰い荒らされており、大規模な植林を行なって回復した地域もありますが、現在も岩肌が見えたままの場所も多く残っています。また、B-8地域のサバンナや森林に移動した小集団によって、多くの動植物や原住民が被害にあったようですし、現在も殆ど植物が生えない砂礫地帯が生み出されています。


○ドゥマル=ランデスの壁事件

▼発生
・年数
:聖歴721年
・地域:A-5地域(エリスファリア植民地)

▼事件
 A-5地域は聖歴717年にエリスファリア植民地となりますが、この時に国教会への強制改宗が行なわれ、住民はこれに激しく反発しました。この時、若者たちを束ねて事件を起こしたのがドゥマル=ランデスという現地の画家で、抗議の目的で町中の壁にペルソニアの神話・伝承を題材とした絵を描きます。これに対して植民地政府はより厳しい弾圧を行なったため、ランデスは総督府の敷地内に忍び込み、建物の壁に自画像を残してゆきました。これに激怒した当時の総督は彼を探し出し、拷問の末に獄死させてしまいます。最終的にこの出来事がきっかけで大きな暴動が起こるのですが、やがてこれは武力で鎮圧され、植民地の支配体制はより強固なものとされました。
 しかし、こうして人々の心に刻まれたドゥマル=ランデスの志は、決して忘れられることはありませんでした。エリスファリア本国の干渉が弱まった聖歴730年〜750年の間に、この地では独立運動が起こるのですが、この際にも同じように壁に絵やメッセージを残して、現地民を煽動した一団がおりました。この抵抗運動も聖歴760年代末には沈静化されるのですが、現在も独立を目指して地下活動を続ける人々の中には、ランデスの肖像画を大事に持ち歩く者がいるそうです。


○シュメ坑道爆破事件

▼発生
・年数
:聖歴759年
・地域:B-2地域(ソファイア開発地)

▼事件
 聖歴759年にライヒスデールがソファイア植民地へ侵攻し、領地の東半分(B-1)を奪っています。この戦いの間にワーズ山脈の石炭坑道が崩落し、多くの人命が失われるという事故が起きました。しかし、後のソファイア政府の調査の結果、原因は故意の爆破によるものだと判明します。
 これはライヒスデールによる燃料供給の妨害作戦だとされていますが、偶然に生きのびた目撃者の話によれば、犯行を行なったのは現地の黒人だったようです。爆破作戦を担当したのは、ライヒスデールに協力して反ソファイア勢力を束ねて戦った、アドゥー氏族という部族ではないかと推測されています。なお、彼らは現在、B-1植民地で唯一優遇されている現地部族ですが、仲間たちを裏切ってライヒスデール軍に恭順したことで、他の原住民たちの激しい恨みを買っています。坑道で採掘作業を行なっていた多くの労働者が現地の人々であったことも、一層強く憎まれる原因となっています。


○フェーブル伯爵家暗殺事件

▼発生
・年数
:聖歴778年
・地域:A-5地域(エリスファリア植民地)

▼事件
 聖歴768年にA-4地域をルワールから奪回した功績により、フェーブル家がエーゼル準州を治めることになりました。その10年後、州都の広場で戦勝記念式典が開かれたのですが、式の最中に現地民から登用した儀典兵の手により、領主婦人と息子の2名が凶弾に倒れることになります。すぐに実行犯たちが処刑されてしまったために、その背後関係は明らかにされておりませんが、暗殺計画を主導したのは虐殺された部族の生き残りという噂があります。なお、現在でもまれに政府高官の襲撃事件が起こっており、現地民の復讐はいまだ終わっていないのかもしれません。


○ティッバー族虐殺事件

▼発生
・年数
:聖歴780年
・地域:B-10地域(カルネア開発地)

▼事件
 聖歴775年にカルネア植民省によって調査隊が結成され、アポルト山と周辺地域の探索が開始されます。最初は山地の周辺に広がる密林に探険隊が派遣され、地形や生態に関する調査が行なわれました。次に進められたのがレ・ドゥーア峰の探索で、第2次調査隊によって廃都ナポトが発見されることになります。しかし、もっとも重要な調査報告をもたらしたのは、第3次調査隊による鉄鉱石の発見で、レ・ドゥーア峰に鉱脈が存在することが判明しました。
 その後、カルネア軍は周辺地域に暮らす現地民を武力で制圧すると、山麓の密林を伐採してリーベック開拓村を建設し、本格的な鉱山開発に乗り出します。この時に虐殺されたのが、ティッバー族と呼ばれる山岳民族です。彼らは一帯の原住民をまとめる存在であったため、いわば見せしめに殺されたようなものです。なお、襲撃の際に女性や子供の一部が逃げのびていますが、現在カルネア開発地で妨害活動を行なっている現地民の中に、彼らも混じっているのではないかと言われています。


○野生動物暴走事件

▼発生
・年数
:聖歴785年
・地域:C-7地域(ロンデニア植民地)

▼事件
 ロンデニア植民地では象牙やサイの角などを手に入れるために、多くの野生動物が殺害されてきました。その結果、一部の動物は奥地へ行かなければ見られない状態に陥っています。こういった事態に反発した奥地の現地民の仕業だと思われていますが、狩猟者を襲う一団が度々出現していました。この妨害活動に対して、ハンターたちは彼らをも狩猟の対象とし、死体の皮を剥いで投げ捨てるといった残酷な手段で報復を行ないました。これに逆上した原住民たちが、象などの野生動物を率いて町を襲ったのがこの事件で、多くの死者が出る事態に発展しました。
 植民地政府はこの一件を重く見て、事件に加担した原住民たちを厳しく処罰すると同時に、幾つかの保護区を設置して野生動物の保護を行なうことを決めます。しかし、密猟者は後を断たず、周辺の地理に詳しい原住民を雇って監視させるなどの対策を取っています。


先頭へ

 

冒涜の王


○『冒涜の王』の出現

▼発生
・年数
:聖歴709年
・地域:ラガン帝国植民地

▼事件
 ラムティア山脈の北西部にある奇岩地帯(A-10)では、ラガン帝国による鉱産物の採掘が行なわれておりました。しかし、帝国の繁栄を約束するはずだったこの宝の山で、後にペルソニアの将来までを変えてしまう災厄を目覚めさせてしまうのです。
 聖歴709年のことですが、1つの坑道が巨石でつくられた遺跡に偶然繋がり、1体の巨大な石像が発見されます。後に『冒涜の王』と呼ばれるこの怪物は、蜘蛛の胴体にねじれた人間の上半身をくっつけたようなおぞましい姿をしたもので、邪神の姿を象ったものと思われておりました。しかし、調査隊の1人が体に触れた瞬間、まるで化石のように眠りについていた怪物は隊員を体内に取り込み、その5つの眼を見開いて動き出したのです。
 これ以後のことは、今ではラガン帝国そのものが滅んでしまったため詳しく語ることはできません。しかし、その被害は甚大なもので、たった1体によってペルソニア駐留軍は殆ど壊滅の状態に陥り、帝国は多くの植民地を失うことになります。冒涜の王は最終的には倒されることとなるのですが、それまでに数多くの植民都市を滅ぼし、本国から救援に向かった帝国軍の本隊にも大きな打撃を与えました。最終的に帝国軍はこれを打ち倒すことに成功するのですが、この隙をついてエルモア地方の国々が次々とペルソニアに派兵し、ラガンからペルソニア領土を奪い取ります。こうしてペルソニアは略奪の楽園と呼ばれるようになり、現地の人々は今なお忍従の日々を送っています。


▼冒涜の王/テシュオン
 冒涜の王の肉体は、倒されて活動を停止した後に青白い水晶のような姿になり、まもなく砂に変わって風に散ってしまったと伝えられています。また、直接これに対峙して生き残った者も殆どおらず、事件そのものも80年も前のことであるため、その正体は永遠の謎となっています。
 一般に冒涜の王は魔神の一柱だと考えられておりますが、聖母教会ではこれを魔神とは認定しておりません。しかし、聖獣信仰者の間に伝わる古い伝承の中には、この化け物が悪魔とともに神獣と戦ったという話があります。冒涜の王は現地民の言葉でテシュオンと呼ばれていますが、これは伝説に残された古の怪物の名前であり、多くの者は同一の存在だと考えているようです。


▼能力
 その正体がどのようなものであったとしても、冒涜の王と呼ばれる存在が強大な力を持った怪異であったことは間違いなく、その脅威の爪痕は現在も各地に残されています。
 
◇不死者の創造
 冒涜の王は生き物を喰い殺し、咀嚼してバラバラとなった体を継ぎ合わせて、肉だまりや屍肉塊といった不死者を生み出す能力を持っていたようです。こうして生み出された怪物は、新たな犠牲者を求めて周囲に拡散し、多くの人命を奪ってゆきました。なお、冒涜の王はその肉体の至るところに口を生み出すことが可能で、鋭い牙で手当たり次第に周囲のものを噛み砕いていったそうです。

◇砂の肉体
 冒涜の王は通常の生物のように見えますが、傷口からは血液ではなく砂のような粒子が零れ落ちていたといいます。また、体内に取り込んだ物質を分解して砂に還す能力も持っていたようで、それを傷を癒すために用いることも出来たと伝えられています。攻撃されるほどその食欲は増してゆき、撃ち込んだ砲弾を口で受け止めたり、大木や家屋を易々と噛み砕いて飲み込む様が記録に残されています。この化け物を倒すのには長い時間を要しましたが、それまでの間に町や村が幾つも砂に変えられてしまったそうです。

◇落とし子の創造
 この怪物は落とし子と呼ばれる眷属を生み出し、それを使役しておりました。落とし子の姿は冒涜の王とよく似ていたようでしたが、その肉体は腐った死肉の塊です。これは肉だまりと屍肉塊の両方の特殊能力を合わせ持った怪物のようで、喰い殺した生き物を不死者に変えるだけでなく、死体を体内に取り込んで回復したり、吸収して巨大な姿に成長することも出来ました。しかし、これらは不死者というわけではなく、日の光を浴びても普通に活動できたようです。
 何体の落とし子が生み出されたのかは定かではなく、その全てを倒しきったのかも確認されておりません。そのため、この怪物は今もペルソニアのどこかで活動している可能性があります。実際、現在でも肉だまりや屍肉塊が多数出現する地域があり、その近辺で奇怪な姿をした怪物の目撃報告もあるようです。


▼ダートストーン/魔岩地帯(A-10)
 ラムティア山地の北西部にある奇岩地帯のことで、冒涜の王の出現によって出来たものです。当時、この辺りには幾つものラガン帝国の鉱山があり、新たな鉱脈も発見されていたのですが、現在は誰も近寄らない土地となっています。
 
◇魔穴回廊
 冒涜の王が発見された遺跡に繋がる鉱窟のことで、ダートストーンの奥地にあります。もともとアリの巣のように複雑に入り組んだ大坑道があった場所ですが、さらに冒涜の王が掘り崩した穴と積み重なった瓦礫によって、巨大な迷宮が形成されています。坑道の一部は自然の洞穴にも繋がっており、ドウクツアリと呼ばれる巨大アリの群れによって、北部や西部の斜面にも抜け穴が出来ていると言われています。

◇降魔石窟
 冒涜の王が眠っていた遺跡で、採鉱によって魔穴回廊から偶然に繋がったものです。発見者や調査に訪れた者が尽く怪物の餌食になってしまった上に、この巨大な怪物が外に出る際に坑道が崩され、現在では完全に埋まってしまっています。平らな壁面で囲われた空洞の中に、巨石建造物が存在したことは間違いないようですが、詳細な調査が行なわれる前に怪物が活動を開始したため、素性も含めて一切が闇の中となっています。

◇腐肉の巣
 岩山の間を通って流れる川が干上がり、自然に出来た迷路のような道を進むと、浅いすり鉢状になっている地形に出くわします。これはかつて湖があった場所だと言われておりますが、この斜面には冒涜の王によって穿たれた無数の穴が残っており、中には肉だまりや屍肉塊といった不死者が隠れています。それだけでも十分に危険な場所なのですが、付近の森では無惨に引き裂かれた動物の死体が見つかることがあり、不死者以外の大型の獣が住んでいることは間違いないようです。麓に住む者の間では、不死者を喰らって永遠の命を得た獣が住んでいるという、不確かな噂が流れています。

◇悪魔の食卓
 北西の斜面に大きく張り出している、テーブル状の巨大な一枚岩のことで、多くのラガン兵が冒涜の王に喰われた忌わしい場所です。血を吸った岩の上には奇怪な植物が根を張り巡らせ、大きく捻れ曲がった幹を持つ木が互いに絡み合いながら枝を伸ばし、奇妙な迷路を形成しています。
 付近には多くの洞窟が存在しており、中には赤や紫の霧を吹き出すものも存在するようです。この霧には幻覚作用があるという噂や、生物の体に変異を引き起こすという話も伝わっていますが、真偽のほどはわかっておりません。しかし、この一帯には奇怪な姿をした動植物が生息しており、他の地域では見られない固有種も多数含まれていることから、それらの噂は真実として人々に受け止められています。


先頭へ

 


全体冒涜の王