身元証明


 


○公的証明

▼戸籍
 この世界にも戸籍制度は存在するので、公的機関が発行した戸籍証明書があれば身元の保証が得られます。もともとは税金、徴兵といった目的で導入された制度で、いずれの国家でもきちんと税金を納めて生活している者は、必ず戸籍台帳に名前が記載されています。
 しかし、必ずしも全ての人間が戸籍に登録されているとは限りません。誰の領地でもない土地に住む人は、戸籍に記載されていることの方がまれですし、放浪生活をしている者も同様です。国家や都市への出入りについても、通常は細かく身元を確認することはありませんので、身元が証明できない人間が入り込んで、そのまま生活することも容易に出来るのです。これは、大都市の方がむしろ顕著な傾向で、それがそのまま犯罪の増加へと繋がっています。


▼パスポート
 通常の国家では国内移動に許可を必要とはしませんし、エルモア地方にはパスポートのような公文書を提示する制度はまだありませんので、その土地で特別に制限されているのでもなければ、国家間であっても自由に行き来することが可能となります。


○出生証明書

 国家や地域の制度によっては、出生届や死亡届を義務付けられている場合があります。このような場合、手続きを行なえば出生証明書を得ることが出来ますし、それを身分証明書として用いることも可能です。
 医師や孤児院などによる出生証明は、正式な意味での身元保証にはなりません。しかし、教区の教会に届け出て洗礼を受けている場合は、幾らかの手数料を支払えば教区出生証明を文書で発行して貰うことが出来ます。これは公的証明書に等しい信用を得ているものであり、戸籍を持っていない者にとっては、それが殆ど唯一の身元保証書となるでしょう。


○職業

 職業によっては服装や所属する団体のマークなどが、そのまま身元の保証となることもあります。警察の手帳や制服、保安官のバッジ、聖職者や軍隊の制服はもちろんのこと、職業組合のマークなども十分に身元の保証となるものです。


▼職業組合
 合法的な職業組合は地域でもそれなりの発言権を持っており、人々から信頼されています。身元不明者が組合に入会した場合は、組合が身元の保証を行い、その人物の行状に責任を持つのが通常のしきたりです。


▼聖職者
 エルモア地方では聖職者は特に信用のある職業なので、よほどのことがなければ身元を確認することはしません。もっとも、聖職者はどこの教会に所属し、どのような立場にある人物なのかを証明する書類を持ち歩いているので、身元不詳の人物として扱われることには決してならないでしょう。


▼名刺
 先進国家では名刺を使用することもあります。印刷屋に頼めば、名前と肩書き、住所などの連絡先を書いたものを刷ってもらうことができます。しかし、通常は質の悪い紙とインクを使っており、あくまでもメモする手間を省く程度の用途の、非常に粗末なものでしかありません。もちろん、名刺を渡したからといって信用されるわけではありません。


○地域

▼教区記録
 特定の宗教期間で洗礼の儀式を受け、その地域で生活している場合は、教区を担当する教会に住所と名前が登録されています。まったく身元の引受人がいなかったり、住所を証明する手だてがない場合は、教区の教会へと連絡が行くのが普通の対応です。


▼田舎
 田舎では顔見知りかどうかが最大の問題であり、戸籍の有無は後にくる問題です。よそ者には警戒心が強く、身元を証明するものがあったとしても、受け入れられるかどうかはまったく別の話となります。何かあった場合は、まずよそ者から疑われるのが通例です。


○保証人

▼一般
 信用のある人間が身元を保証すれば、戸籍などの公的な身分証明書がなくても周囲に認められる場合があります。とはいえ、それは相当身分が高い人間か、周囲から信頼の篤い人物でなければなりません。身分でいえば貴族や富裕階級、あるいは聖職者といったものに限られますし、地域でいえば名士や斡旋屋といった人々になるでしょう。


▼大家
 アパートの大家や貸家の家主は、店子の身元引受人を兼ねる場合があります。また、斡旋人や不動産屋が身元保証を行なうことも珍しくありません。一般に、斡旋人というのは地域に根付いた職業であり、周囲の人々からは信頼されています。


▼渡航者組合
 各地を回る旅人や巡礼者の身元保証を請け負う組合です。冒険者組合のように比較的緩い形態の組織であり、エルモア中にある宿や酒場の協力で成り立っています。


○偽造

 裏の社会では偽造した身分証明書を売買していることもあります。かつては裏組合が盛んに行っていたのですが、最近はギャングもこのような商売に手を出し始めています。それから販売目的ではなく潜入調査などの情報収集のために、民間の諜報団体が偽造した身分証を用いることがあります。
 身分証の偽造には様々な手段がありますし、偽物をつくるのではなく本物を買い取ることも不可能ではありません。たとえば自治体の職員に手を回して、行方不明者の戸籍を買い取るといった不正も行われています。なお、国家機関の密偵の場合は国ぐるみで身元を偽造しますので、偽物でありながら証明書自体は正規のルートから発行されたものと同じであったり、または発見されても揉み消されてしまうことになります。


○不利益

 身元の保証が出来ない場合は、様々な不利益が生じるでしょう。公職に就いたり何かの会員になる際には身分証明が必要とされますし、何か事件やトラブルが起こった時も、真っ先に疑われるのは身元を保証できない者たちとなります。警察に拘束された場合も簡単には解放されず、意見を黙殺されたまま犯罪者にされてしまうことも珍しくはありません。お金を借りるにしても、銀行やまっとうな金融会社は絶対に相手にしてはくれません。それから、身元の不確かな者が大金を持っていれば、当然のように犯罪との関わりを疑われるでしょう。


▼外国人
 どの国家でも外国人の信用というのは薄いものです。出生証明書や戸籍証明書があれば身元を明らかにすることは出来ますが、たとえ身分証明書があったとしても、何かあった時にまず疑われるのは外国人となるでしょうす。


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