心構え
TRPGの展開は、プレイヤーの判断やPCの行動の結果によって変化するため、シナリオ作成時の予測とは大きく異なったものとなる可能性があります。また、情報のやり取りでの齟齬やルール適用のミス、参加者間の認識の違いなどによって、セッションの進行が滞る場合もあるでしょう。
GM1人がシナリオの展開をコントロールしたり、不足の事態が起こった時の責任を取らなければならないわけではありませんが、プレイヤーに頼るわけにはゆかない場面は多々あります。ですから、GMは困った時の対処法や、困らないようにするにはどうすればよいのかを、事前に考えておく必要があります。
○方針・姿勢
▼落ち着き
判断に迷ったり何か問題が起こった時は、何より焦らないことが重要です。慌てた状態ではよい考えは浮かびにくくなりますし、プレイヤーが不安を感じ取って萎縮してしまうこともあります。ですから、実際には焦っていたとしても、顔に出さないように努力して下さい。セッションの展開はPCの行動によって変動するものです。トラブルも楽しむぐらいの気持ちでゆったりと構えていた方が、いざという時にも的確に対処することができるでしょう。
▼迷い
展開の変更や問題の対処に関して判断を下す際には、迷わないことも重要なポイントとなります。どのような手段を取るかを咄嗟に判断するのは難しいものですが、決断を下した後であれこれと迷うのは禁物です。迷いはセッション進行のテンポを悪くしますし、1度決めた基準を後から変更すると、必ずどこかに矛盾が生じたりプレイヤーが不満に思うものです。もし判断を間違えたと思っても、セッションが終わるまでは基準を動かさず、後で間違いを申告して謝罪するようにしましょう。
▼常識
何か判断に困った場合は、常識に照らし合わせて考えるようにして下さい。この時に判断の基準とするのは、主にゲーム世界の常識となります。もしプレイヤーの認識が気になるようであれば、遠回しに尋ねてみて意見の多い方を基準とするのもよいでしょう。
▼妥協
シナリオを無事に進行させるためには妥協が必要な場合もあります。どうしても譲れないシーンがあったとしても、展開によってはカットしなければならないこともあるでしょう。また、プレイヤーとの間に認識の違いがあったとして、参加者の大半が納得していないことに対しては、GMの側で譲歩した方がうまくゆくものです。仮にその場はGMの権限で押し切ることが出来たとしても、セッションを楽しんで貰うためには逆効果となる可能性が高くなります。
▼相談/協力
GM1人ではどうしても解消できない問題が起こった場合は、素直にプレイヤーに相談したり協力を求めるのがベストの手法です。1人で悩みを抱えていても、よい考えはなかなか浮かばないものです。プレイヤーは敵ではなく一緒にゲームを行う仲間なのですから、可能であればセッション成功のために一緒に知恵を絞ってもらったり、シナリオ進行の手助けをして貰うべきです。
○プレイヤーへの対処法
プレイヤーが起こす問題に対しては、基本的に以下のような対処法があります。ただし、なるべくであれば上にある手段から順に適用してゆくべきですし、それはセッションの成立を第一の目的としていなければなりません。
▼話し合い
まずは、何故その行動に問題があるのかの根拠を示し、よく話し合うことです。プレイヤーが世界設定やゲームにおける常識を理解していない場合は、きちんと説明することもGMの役目の1となります。注意もせずに切り捨てる行為は公正な態度ではなく、GMの横暴と受け止められても仕方ありません。
▼NPC/状況による制止
PCの行動が常識から外れていた場合、GMはそれが非常識であるかどうかを説明することはできますが、GMの権限としてPCの行動を直接止めることはできません。ですから、ゲーム世界の行動に対しては、NPCを通じて警告したり、周囲の状況を変化させることで干渉しなければなりません。
GMは世界に起こりうる範囲で、様々な手段を用いてPCの行動を止めることが可能です。破滅の発動もGMに許された手段ですので、必要があれば躊躇せず行使して構いません。ただし、そういった危険が予測できる場合は事前に警告しておくべきですし、一度くらいは引き返すチャンスをあげましょう。
▼放置
こちらの意見を全く聞いてくれず、なおかつその行動がセッションに害を為さない時は、放置するという対処方法もあります。退屈になれば自分からセッションに関わる努力をするかもしれませんし、協調しようという考えも生まれるかもしれません。
ただし、放置は無視とは違いますので、この点には注意して下さい。意味のある行動にはきちんと対処し、そうでない行動は適当に対応して進行に力を注ぐという具合に、判断に応じた結果を返すよう心がけなければなりません。
▼参加を断る
ゲームの目的を果たそうとせず、明らかにセッションの邪魔になっていると判断される場合は、直接プレイヤーに警告を与えることになります。それでも話をきかないようであれば、セッションの参加を断っても構わないでしょう。ただし、なるべくであれば話し合いで方向性を決めるべきですし、その際には他の参加者の意見を聞くことも大切です。
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GM側の問題
セッションで起こりうる問題の中には、GMが原因で生じるものも存在します。そういった問題を起こさないためには、以下の事柄に気をつけて下さい。
○GMの横暴
プレイヤーの意見を全く尊重しなかったり、他の参加者が納得していないにもかかわらず、独断で全ての物事を決めてしまうようなGMは、ほぼ確実にプレイヤーに嫌われます。セッションを円滑に進めるためにリーダーシップを発揮することや、自分の意見を主張することは必要でしょう。しかし、これらと強引に物事を押し進めることは別物であり、他人に不快感を与える行為であることを覚えておかなければなりません。このようなやり方はマスタリングに対する反発というより、GMの人間性に対して嫌悪感を抱かせる可能性が高く、いずれプレイヤーたちはセッションに参加すること自体を拒むようになるでしょう。
これを防ぐためには、プレイヤーの意見を汲み取るよう心がけることと、何か問題が起こったら話し合いに応じる姿勢を見せることです。しかし、プレイヤーの言うことを何もかも受け入れていては、暴走によってゲームが成立しなくなる危険性が高くなりますし、プレイヤーの心に甘えを生むことになりかねません。最も大事なのは、セッションは参加者全員で進めるものだという認識であり、常にそのことを忘れないよう心掛けて下さい。
○強制的なシナリオ展開
シナリオに沿ってセッションを進めることも必要ですが、予定通りのストーリー展開しか許さないのは非常に嫌われる行為です。
○ルール/システムの解釈
▼ミス
ルールを頻繁に間違えたり、調べるのに時間がかかって緊張感を削いだり、セッション進行のテンポを遅くしてしまう行為は、なるべく避けなければなりません。これについては、事前によくルールを読む、ルールサマリーや表のコピーを用意しておく、ルールに詳しいプレイヤーに助けてもらう、といった対処法があるでしょう。
▼追加/改変
GMの独断でルールを追加したり、事前に説明もなくルールを勝手に改変してしまうのも問題です。ルールの追加や変更はプレイヤーの判断にも関わる問題ですから、いきなり基準が変えられても予測や判断に狂いが生じてしまいます。また、変更したルールのバランスが取れていなかったり、プレイヤーが数値基準などに納得がいかないような場合は、議論がはじまってセッションが中断してしまうことにもなりかねません。ですから、ルールの変更を行う際には必ずセッション前に説明を行い、プレイヤーの同意を得ておく必要があります。
▼ルールの無視
自分の都合によってルールを無視するようなGMは、審判の役目を果たしているとはいえません。GMは可能な限りルールに従って、PCの行為の結果を判断する必要があります。
▼解釈の違い/曲解
TRPGのシステムには、ありとあらゆる行為の判定基準が書いてあるわけではありません。ですから、GMの判断で基準を定めることも多々ありますが、大多数のプレイヤーと解釈が異なる場合には譲歩することも必要です。
○差別
特定のプレイヤーをえこひいきしたり、妥当な理由もなくキャラクターによって対応やルール適用の基準を変えるのは、絶対にしてはならない行為です。GMはルールを正しく適用するだけでなく、参加者全員を公平に扱わなければなりません。
ただし、初心者や途中からの参加者に配慮したり、ランダムに決まった結果の偏りを補正するというのは別の話です。何もかもを杓子定規に考えるのではなく、ある程度の柔軟さをもって対処して下さい。
○常識の違い
GMとプレイヤーの間で異なった常識を持っている場合もあります。これはゲームの中だけではなく、現実世界でもよく起こりうることです。こういった場合は、まずゲーム世界における常識に照らし合わせて考え、それで結論が出なかったら現実世界の常識を当てはめてゆきます。どうしても基準がかみ合わない場合は、参加者全員の多数決で決定してもよいでしょう。
○演技の強要
ロールプレイングとは、役割を演技するということです。これはキャラクターの立場で物事を考え、そのキャラクターらしく振る舞って状況に対応することを意味します。身振りや声色を使ってキャラクターになりきる演技(キャラクタープレイ)は、役割の演技(ロールプレイ)とは別物であり、TRPGでは必須と呼べる要素ではありません。世の中にはキャラクタープレイを苦手としたり、場合によっては嫌悪を感じる人もいますから、GMはキャラクタープレイを強制してはいけません。
○元ネタ
既存の物語を下地にシナリオ作成するのは、別に悪いことではありません。また、知っているネタが絡む話というのは盛り上がるものですし、それでセッションの雰囲気がよくなることもあるでしょう。しかし、それでセッションの進行を妨げるようでは害悪にしかなりませんし、元ネタを知らない人が話に入れずに、つまらない思いをする可能性もあります。また、何かの話を前提として知っていないと課題を解決できないようなシナリオは、事前に確認を取っているのでもなければ絶対に避けるべきです。
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