基本情報
○全体
B-4地域がセレーヌ小州として扱われています。
▼総督
ヴィオレッタ=アディマルド辺境伯が植民地総督を務めています。▼州都
ローゼンベル市が州都となります。
○人種・民族
住民の大多数を占めるのは、ペルソニア中部域に住んでいたと言われるレグラム人系の黒人です。この他にも、本国から移民としてやって来た白人、ラガン由来の黄人、およびこれらの混血人が住んでいます。
○歴史
▼B-4
かつてはファルザ王国が支配していた土地ですが、ラガン帝国と同盟を結んだ東メルレイン連邦国(現ルワール)に征服され、聖歴292年に植民地となります。その後、東メルレインが衰退すると、聖歴320年にこの地に進出したソファイアの支援を得て、聖歴340年代には再び独立国家へと戻ります。
聖歴400年代には特産の香辛料の取り引きによって、王国はソファイアとともに栄光の時代を迎えます。聖歴450年代に入ると、ソファイアがセルセティアの中継港を失い、その支援を得られなくなりますが、この時期もロンデニアと結んで順調に発展を遂げました。しかし、聖歴520年代に入ってロンデニアが国内問題から海洋での力を失うと、後ろ楯を無くした王国にラガンが侵攻を開始し、聖歴531年には遂にその支配下に置かれることになります。この状況は聖歴720年代まで続きますが、この頃にはラガンの力は衰えており、聖歴734年にソファイアがこの地を奪うことになります。そして、現在もソファイアの植民地として存在しています。
○産物
豊富な水量を誇るアギュール川が流れる、水はけのよい土壌のパゴット平野では、バナナやトウモロコシが盛んに栽培されています。この他にも、アブラヤシやイモ類が収穫されておりますし、地域によってはカカオやコーヒーといった商品作物もつくられています。また、ピルム丘陵の近くでは、昔からペリルロールと呼ばれる香辛料が自生しておりましたが、現在までに栽培植物として品種改良が進み、特産品として高値で取り引きされています。これはクローブの仲間で、殺菌・消毒作用があるため、風味付けだけでなく食料保存のためにも用いられます。
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自然・要所
○地勢・気候
ペルソニア北中部域は亜熱帯から熱帯に属しており、海から吹く風によって湿潤な気候となります。年間の平均気温は25度ほどで、平野部ではバナナやカカオといった熱帯の作物が盛んに栽培されています。
○都市
▼ローゼンベル市/州都(B-4)
ピルム丘陵から流れるフラド川沿いにある都市で、東西の流通を支える隊商路として発展しました。この都市の基礎がつくられたのはラガン帝国時代で、その頃に建設された建物や道路が今もそのまま利用されています。陸上交通の要所であることもありますが、すぐ南にレントという温泉町があることから、現在は観光地としてもよく知られるようになっています。
ピルム丘陵の北西部に特徴的に見られる、濃いピンク色の花崗岩を用いた建築物が多く、バラ色の都として知られています。この都市はタイル焼きでも知られており、美しい花々を意匠化した模様を描いたタイルで、建物の壁や柱が装飾されています。
市の中心部は外壁で覆われていますが、周辺の建物と同様にあまり高さはなく、全体的に開放感あふれる街並みです。幅の広い大通りが放射状に伸びており、それらは全て市の中心にある広場に繋がっています。広場の中央には色鮮やかな花々や熱帯の植物を植えた花壇と、フラド川の水を涼しげに噴き上げる大噴水があり、多くの人々が訪れる憩いの場となっています。
▼レヒテル市(B-4)
フラド川の河口沿いにある港湾都市で、街中に水路網がはり巡らされています。都市の構造は独特で、それぞれ別の城壁で囲まれた方形の重要区画を、さらに大きな市壁で2重に囲む形となっています。そして、その周囲には下層市民の住宅が、壁に寄り添うように密集して建てられており、一見してすぐに城塞都市とは見分けられません。なお、ここは東メルレイン連邦国が建設した城塞都市があった場所で、要塞はラガン時代に改修されたものを、さらに補強して利用しています。
重要区画には中心区画、政府区画、軍事区画の3つの種類があります。中心区画はラガン帝国時代に建設されたもので、一定以上の額を納税している市民や政府官僚などの住居があります。政府区画はそれに隣接する形でつくられており、政治や軍事に関わる各機関の建物が置かれています。軍事区画は海岸沿いにあり、堤防を兼ねた防塁と城壁が一体化しています。外洋からの侵略に備えて、この上には幾つもの砲門が海を向いて並べられています。
これらの重要区画はさらに大きな外壁で囲まれておりますが、これは独立時代に設置された防備用の土塁に、ラガン帝国が石を積み上げて造り上げたものです。この市壁の内側は中層市民のための区画で、中にはフラド川の水を用いた水路がはり巡らされており、人の移動や物流をすみやかなものにしています。都市内部の街路は格子状に組まれた整然としたもので、重要区画や広場も方形の街区として区切られておりますし、市場や住宅区などがはっきりと区分されています。しかし、市壁の外部は混沌としており、迷路のように入り組んだ正反対の空間となっています。
○要所
▼アギュール川(B-4)
パゴット平野の中央を流れる大河川で、この地域の農業生産を支える命の川です。クスクフ高地から流れるクス川と、オゴロ密林の奥地から澄んだ水を運ぶムマ川、そしてピルム丘陵の峡谷を通るコンデル川の3つが集まった支流で、豊富な水量で知られています。
▼フラド川(B-4)
ピルム丘陵から始まりキノ山の北東を通って海に注ぐ河川で、川沿いにはセレーヌ小州(ソファイア植民地)の州都が置かれています。この河川は農耕のみならず、ピルム丘陵から切り出される花崗岩を運ぶためにも利用されています。
▼キノ山(B-4/B-6)
パゴット平野とリンストン平野を分ける標高1200mほどの山地で、平野部に急に突き出た岩山です。ここはソファイア領とカルネア領の境界となりますが、殆ど人が立ち入らないまま放置されています。特に鉱物資源も採掘されず、地形も険しいため利用方法が殆どないというのが主な理由ですが、古くから数々の不吉な伝承が語り継がれている場所でもあるため、古くからこの山に住んでいた山岳民族を除いて、現地の人間にとっては不可侵の山として恐れられています。また、最近では小さな振動や地鳴りが聞こえるという噂もあって、なおさら人の近づかない場所となっています。
▼ピルム丘陵(B-4)
高さ300〜500mほどの岩山からなる丘陵地帯で、石灰岩が堆積して出来たもののようです。コンデル川が流れるレッセル峡谷や奇岩地帯、あるいは雨水に浸食されて生まれた鍾乳洞など、非常に複雑な地形で成り立っています。この中には幾つかの現地部族が住んでおり、特有の自然に合わせた狩猟採取の生活を送っています。
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人物・集団
○組織・集団
▼邪教集団オルストラ
三つ目模様の黒覆面を被るローブ姿の集団で、深夜に墓を荒らしたり郊外で儀式を行なっている姿が目撃されています。最近は領主であるアディマルド家にまつわる奇妙な噂が流れているため、それに関係しているのではないかと言う者もいますが、彼らの正体はまったくわかっておりません。
▼強盗団グレイグ一味
壁山の悪魔とも呼ばれる武装強盗団で、グレイグ兄弟を頭とする20名近い荒くれ者たちです。ソファイア、カルネアの植民地を襲い、金品を強奪したり若い娘をさらうなどの犯行を重ねています。殺人さえ平気で行なう極悪人で、近郊の町村では生死を問わない賞金首として手配書が出回っています。
彼らはピルム丘陵を根城にしており、壁山と呼ばれる迷路のような地形の奥に住処をつくっています。また、現地民とも通じており、略奪品と引き換えに必要な生活物資の一部を得たり、危険を知らせて貰ったりしています。
○人物
▼首盗人
レヒテル市で起こった3件の殺人事件の容疑者として挙げられている男ですが、いずれも不可思議な目撃情報が得られています。1つには大きな傷跡がある顔ですが、縫合の痕を境に白と黒の2色の肌をしていたそうです。また、別の犯行現場で得られた証言では、盛り上がった背中から漆黒と純白の翼が生えていたといいますし、左の手が女性のものだったとの報告もあります。切り落とした被害者の首を持って逃げたその異形の人物は、悪魔とも魔人とも噂されており、人々は恐怖に震える夜を過ごしています。
▼アシュアシュ
予知をすることで近頃噂になっている現地民の黒人女性で、船舶の衝突事故と殺人事件の発生、そして近隣住民の死を当てています。彼女はもともと左目だけが赤く、ずっと包帯を巻いてそのことを隠してきました。しかし、最近になってやたらとその目が疼くようになり、包帯を外して見ると突然映像が浮かんできたのだそうです。
不吉な出来事ばかりしか見えないため、彼女は未来を見ることに恐れをなしており、2度とその目が開かないようきつく布で縛って、左目を隠してしまっています。また、周囲も恐ろしい予言をされるのではと心配して、最近では彼女を敬遠するようになっており、中にはあからさまに避けて通る者もいるようです。
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辺境伯爵家
○領内問題
アディマルド家は4代に渡ってセレーヌ小州を治めてきた一族で、聖歴734年代にこの地を侵攻した際に、ソファイア軍勢を指揮した名家の出自です。現在の植民地総督を務めているのは、弱冠23歳の女領主ヴィオレッタですが、その相続について騒動が沸き起こっています。彼女は家督を相続したばかりですが、経験のなさや年齢ばかりが不安視されているわけではありません。
▼過去
アディマルド一族の問題は、先代ディオロスの相続時からはじまっています。彼の上にはルードヴィクという兄がおりましたが、父親の謀殺を企てた罪により廃嫡され、獄死することになります。その後、家督を引き継いだディオロスは4人の子を設け、昨年の末に病死するのですが、そのわずか3日後に後継者であるジュリオが事故で亡くなったために、謀殺を疑う声が持ち上がります。そして、その噂とともに領内にある怪文書が広まったことで、アディマルド家にまつわる闇に人々の興味が集まるのです。
その文書に記されている内容の1つは、先代の兄ルードヴィクがディオロスによって無実の罪を着せられたというものです。ルードヴィクは母親譲りの美貌で知られる、学識に優れた人物ではありましたが、非常に歪んだ性格の持ち主でもありました。そのため父親を含めた一族の者は、人望や胆力で大きく勝るディオロスこそが後継者に相応しいという認識で、味方は母親のマリアベルしかいない状況にありました。領主殺害を目論んだのはルードヴィクではなく、彼を溺愛していた母親という話もあったようですが、いずれにせよ父領主が飲まされたとされる特殊な毒物を、彼が懇意にしていた男が所持していたことは間違いありません。その友人の名をグレゴール=ザオロといいますが、その男はオカルト趣味に傾倒していたという噂もあり、捜索を行なった住居からは錬金術師だと思われる証拠も発見されたといいます。当局はグレゴールをすぐに手配したのですが、その行方は杳として知れず、事件の首謀者が誰かを特定することは出来ませんでした。それにも拘わらず、証拠不十分のままルードヴィクが拘束されたのは、彼の家督相続を拒む周囲全ての思惑によるものだと噂されています。実際、領内の多くの者が後継者に相応しいのはディオロスだと考えており、色々と噂は飛び交ったものの、誰もが事件の結果を政府発表のまま受け入れました。その後、ルードヴィクは獄中で病死し、抗議の意を示したのか絶望のためなのかはわかりませんが、まもなく母マリアベルも息子の後を追って自害します。その1年後、毒物で体が弱っていた父領主が死に、ディオロスが家督を継いで新領主となったことで、再び領内は落ち着きを取り戻します。
▼ヴィオレッタの継承騒動
2つ目は先代ディオロスとその長子ジュリオの死に関わる話で、彼らを謀殺したのは現領主ヴィオレッタの愛人で、彼女に家督を継がせるために2人を殺害したという内容です。通常であれば、ヴィオレッタ本人が計画を目論んだとされるところですが、彼女の明るい美貌と快活なパーソナリティ、そして庶民にも気軽に声をかけるおよそ貴族らしくない振るまいが受け入れられているのか、そういった噂は今のところ殆ど流れておりません。しかし、彼女の奔放さが領内を含めてややこしい状況を生んでいるのは間違いなく、本国でもその資質を疑問視されているというのが実情です。
そもそも、彼女は家督を継ぐことなど全く考えておらず、ディオロスのもとに嫁いだものの植民地暮らしに馴染めずにいた母フランチェスカとともに、ソファイア本国で自由気ままに生活していたといいます。まるで男の子のように活発に育った彼女は、息苦しい社交界には殆ど顔を出さないばかりか、時には市井に紛れ込んで庶民の実情を見聞したり、頻繁に国外旅行に出かけたりもしていたようです。
◇反王党派
その後、彼女は植民地の父親が帰国した際に厳しく言い付けられ、一時期は地方の別荘で大人しくしておりました。しかし、しばらくぶりに家に戻ってきた時には息子セルジュを連れており、母親を卒倒させたといいます。
この事件の最大の問題は、相手の男性が反王党派とされるユベール家の次男であり、王党派のアディマルド家とは政敵の間柄であったことです。当然のことながらヴィオレッタは勘当を言い渡され、つい半年ほど前まで息子を生んだ別荘地で暮らしておりました。しかし、父と兄が立て続けに亡くなったことから、正式に廃嫡されていなかった彼女が第一継承者として、当主の座に就くことになるのです。彼女の下には2人の弟がおりますが、1人は愛人の子であり継承権はなく、もう1人の弟エミーリオは不義密通の子との噂が流れており、それを裏付けるように母親はヴィオレッタの継承を強く推したといいます。
こういった数々の理由から、本家はもとより王党派の貴族たちの多くが、彼女の家督相続に強く反対したといいます。しかし、領主不在のままでは有事の際に対応できず、国外の勢力に対して隙をつくることになります。その一方で、息子セルジュが将来的に家督を受け継ぐことになれば、反王党派に領地を明け渡すことになりかねず、植民地支配に支障をきたす可能性も考えられるわけです。
これらの問題を解消するために、王党派は息子セルジュの廃嫡を家督相続の条件に提示しました。これまで自由奔放に生きてきたヴィオレッタが、この条件を呑んで家督を相続したのは、我が子の身の安全を確保するためです。実際、本国にいる間は周辺に不穏な出来事が続き、セルジュが原因不明の高熱に見舞われたり、彼女自身も事故に巻き込まれそうになっています。また、反王党派からの接触もあり、自身が政争に利用されることを避けるためにも、植民地行きを受け入れざるを得ないという事情がありました。◇エミーリオ
表向きには明らかにされておりませんが、家督相続に際してヴィオレッタは1つだけ条件を出しています。それは不義密通の子との噂がある弟エミーリオを、本国の宮廷に召し上げるということでした。その真意についてはよくわかっておりませんが、少なくとも彼が植民地に居ることは好ましくないと考えていたことは間違いありません。このことから宮廷では、エミーリオこそが一連の事件の首謀者だと考える者もおり、その動向を警戒しています。また、こういった状況にある中で、植民地政府に対する反抗組織が動いているのは想像通りの事態で、植民地軍も不測の事態に備えて警戒を強くしています。
▼最近の動向
◇新総督の選定
このように数々の危険が予測される状況にも拘わらず、ヴィオレッタはなるべく市井の人々と交流することを望み、近しい人々の心配の声を退け、領内の視察などに忙しく出歩いています。このため、王党派は不測の事態を考慮して、王家や本国の有力貴族の子弟からヴィオレッタの婚姻相手を選び、その人物を植民地総督に据えることを内々に定めておりました。しかし、その直後に候補者の1人が事故に遭っており、宮廷では反王党派の動きにさらなる警戒を強め、スパイのあぶり出しに力を入れている最中です。また、なるべく早期のうちにこの問題を決着するために、来月にも婚姻話をまとめる心づもりでいます。◇ルードヴィクの噂
こういった混乱の最中において、予想もしなかった噂が人々の興味を引いています。それは先代領主の兄、つまりヴィオレッタの伯父であるルードヴィクの姿を見たという話が、どこからともなく上がっていることです。また、彼の傍らには美しい白皙の淑女と、素性不明の老人がいたという目撃談も上がっており、錬金術師グレゴールが自害した母親マリアベルとともに蘇らせたのだと、年輩の者たちの間で話題になっています。こういった噂が上がるのは、領内で不審死の報告や失踪事件が多発しているためですが、それを主導しているのがかの錬金術師だという者もおりますし、吸血鬼や悪魔の仕業という話も流布しています。
○勢力
▼反王党派貴族
王家を中心とする中央政府に何らか不満を持つ貴族たちの派閥です。絶対王政のソファイアにおいて、反王党派の貴族というのは圧倒的な少数勢力となります。しかし、腐敗した中央政府に反発し、地方の権力を取り戻そうという動きが本国の各地でみられる現在、それらの勢力をまとめ上げることが出来れば、革命を成し遂げることが可能となるかもしれません。そのため反王党派の貴族たちは、企業経営者や有力農民、あるいは投資家や金融業者など、様々な業種の人々と話し合いの場を設けたり、支援を行なったりしています。
しかし、彼らは政治体制の改革を目的としていますが、それが貴族制度の解体に繋がることを危惧しています。もちろん、時代の趨勢からそれを受け入れる心づもりでいる貴族もおりますが、そうではない者が大半を占めます。そのことによって別の改革勢力との間に亀裂が生まれ、今後の活動の妨げとなる可能性もあります。
▼革新派貴族
現在の旧態依然とした国家体制では、近代工業を基盤とする他国の発展に置いてゆかれ、いずれ衰退するものと考えている一派です。この集団の多くは、海外への留学経験などを持つ若い貴族の子弟や、家督を継承する権利を持たない長子以外の者です。殆どのメンバーは貴族制度の解体もやむを得ないものと考えているため、貴族の中では異端の少数存在となります。
現領主のヴィオレッタ、および彼女と恋仲であるバーニス=ユベールもこの派閥の一員です。彼らは王党派、反王党派のいずれにとっても厄介な存在であると同時に、利用できる駒としても考えることが出来るため、両派は2人を自勢力に取り込もうとしています。現在、バーニスは本国の宮廷に召し上げられ、王党派がしきりに懐柔しようと策を弄しています。このことは反王党派だけでなく、ヴィオレッタに対して人質をとった形ともなっています。
▼植民地政府
これまで保守的なアディマルド家によって運営されてきた植民地政府は、領主が代わっても従来の方針に沿って運営を続けています。革新派である現領主の思想には強く反発しており、非協力的な姿勢を取っています。
○アディマルド家
アディマルド家は4代に渡ってセレーヌ小州を治めてきた一族で、聖歴734年代にこの地を侵攻した際に、ソファイア軍勢を指揮した名家の出自です。保守的な王党派の一員であり、古くから王家と親しい間柄にあります。
▼ヴィオレッタ=アディマルド辺境伯(白人/女/23歳)
父親と第一継承者であった兄の死により、半年ほど前に新領主の座についたばかりの女性です。思想信条の違いにより様々な方面から反発を受けていますが、若い頃から剣術や乗馬を嗜むなど、男の子のように自由奔放に育ってきた彼女は、立場に束縛されることなく思うままに活動を行なっています。
そんな彼女の唯一の弱点は、今年で3歳になる息子のセルジュです。そもそも家督を継承したのも、あえて廃嫡とすることを選んだのも、すべては彼の安全を守るためです。現在も厳重な警護をつけて、あえて自分の近くから離して生活していますが、政務に忙しくなかなか顔を合わせることが出来ないことがストレスとなっています。
▼バーニス=ユベール(白人/男/27歳)
革新派に属するユベール家の次男で、現領主のヴィオレッタとの間に子供をもうけています。しかし、正式に婚姻を結んだわけではありませんし、様々な事情から子供の安全を考えて、自身が息子セルジュの父親であるということも認めておりません。
もともとユベール家が反王党派貴族の一員であることから、派閥争いに利用されることには警戒してきました。しかし、現在は宮廷に召し上げられ、ヴィオレッタに対する人質のような立場に置かれることになっており、非常に歯がゆい思いをしています。
▼セルジュ=アディマルド(白人/男/3歳)
ヴィオレッタとバーニスとの間に生まれた子供ですが、父親は不詳のままとされています。そのこともあって生まれながら廃嫡とされていますが、政争に巻き込まれる心配が少なくなるため、両親は都合のよいことだと考えています。
▼エミーリオ=アディマルド(白人/男/19歳)
ヴィオレッタの弟であり、現在は本国で宮廷官僚として働いています。先代ディオロスの正妻であるフランチェスカは、植民地暮らしに馴染めず後に本国に戻ることになるのですが、彼は帰国後に産み落とされています。そのこともあって、愛人の子として疑いの目で見られており、父領主にも疎まれていた不遇の子です。ヴィオレッタではなく彼を後継者に推挙する者もおりましたが、母フランチェスカが強くヴィオレッタを推したことで、その出自に対する疑念はさらに強まったといいます。
このような不名誉な噂があるにもかかわらず、彼自身はポーカーフェイスのままで職務に励んでおり、内心の動揺を表に見せることは一切ありません。そういった態度を評価する声も多く、周囲には真面目で芯がしっかりした青年だと見られています。しかし、その一方で親しい友人はあまりおらず、個人的な付き合いがある人物はごく一部に限られます。その一番の理由が、何を考えているかわからない無気味な存在だと敬遠されるためで、父や兄を謀殺した主犯だと疑う根拠の1つにもなっています。
▼ルードヴィク=アディマルド(白人/男/享年27歳)
28年前に父親を毒殺した罪で投獄され、そのまま獄死した先代領主ディオロスの兄です。もともと病弱であったために母親に甘やかされ、我が儘で傲慢な性格に育ったのですが、厳しい父親の前では立派な息子を演じていたようです。それがルードヴィクに二面性を持たせることになったようで、社交界においては物腰柔らかな美貌の貴公子と評される一方、自分より立場の弱い者の前では残虐な暴君へと変貌し、怪我を負わされた領内の一般市民や、傷物にされた市井の娘なども少なくないようです。やがて、彼の悪行は広く知られるようになり、父領主もそのような異常性を持つ彼を疎むようになり、家督を次男のディオロスに継がせようと考えはじめます。そのことが暗殺の引き金となったのかもしれませんが、ルードヴィクが死亡した今となっては、事件の真相も含めてすべて闇の中です。
しかし、この忘れ去られたアディマルド家の汚点が、今になって人々の噂に上がるようになっています。それは毒殺事件に関して記した怪文書が領内にばらまかれていることと、既に亡くなったはずのルードヴィクの姿を見たという噂が流れているためです。彼の傍らには美しい白皙の淑女と、素性不明の老人がいたという目撃談も上がっており、錬金術師グレゴールが自害した母親マリアベルとともに蘇らせたのだと、年輩の者たちの間で話題になっています。
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