物語の進行
GMは司会役として、シナリオに合わせて物語を進めてゆかなければなりません。以下にその例を示しておきますが、これはシナリオの形態やGMの個性によって異なる場合もあります。
○シナリオの流れ
1:導入
2:事件(課題)の存在を認識
3:事件に関する調査
4:事件の原因(真相)の発覚
5:原因・解決方法に関する調査
6:解決方法の解明
7:解決のための準備・行動
8:課題の解決
9:結末(エピローグ)
○シナリオの展開
▼進行状況の把握
TRPGのシナリオは複数のシーンから構成されています。GMはシナリオのどの辺りまで物語が進行しているのを把握し、次にどのような展開が生じるのかを予測しながら、セッションを進めてゆくことになります。もし、分岐が生じる可能性があるのならば、進行と同時に次シーンの準備を行う場合もあります。
慣れないGMは、セッションの展開についてメモを取りながら進行してゆくとよいでしょう。渡した情報やキャラクターの取った行動などを整理しておくだけで、混乱せずにすむ可能性が高くなります。なお、メモを取ることで進行が停止するのはよくありませんので、プレイヤー同士で相談している間や、シーンとシーンの合間などに行って下さい。
▼変化と展開
シナリオの展開はPCの行動によって変化します。GMはそれによって生じた状況を描写し、PCに新たなシーンやイベントを提示してゆくことになります。GMは展開に応じて適切にシーンを切り替え、全体の進行をコントロールしていかなければなりません。
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シーンの進行
個々の場面のことをシーンと呼び、1つのシーンの中には幾つかのイベントが含まれます。
○シーンの状況設定
▼状況の特定
通常、1つのシーンは特定の場所および時間帯で区切られることが多くなります。GMは特定のシーンに移行した場合は、PCにわかる範囲で状況を描写しなければなりません。▼登場キャラクターの規定
次にGMは、そのシーンに登場するキャラクターの確認をします。必要があれば、GMは登場するPCを指定することが可能ですし、最初にそのシーンに登場していなくても、途中からPCの参加を促すことも出来ます。▼シーンの目的
PCがそのシーンで何を行うのかを把握し、もし必要があれば課題や目的をプレイヤーに告げることになります。▼イベントの発生
イベントは主に、課題に対する障害という形でPCに提示されます。GMは予定していたイベントを条件に応じて発生させたり、PCの行動によって生じた展開に応じて、新たにイベントを作成したりします。▼シーンの終了条件
どのような条件が成立したら次のシーンへと移行するのかを決めておきます。これは課題の達成状況によって起こったり、時間の経過や場所の移動に応じて行うこともあります。
○シーンの流れ
シーンの流れは以下のようになります。
1:GMによる状況説明
2:プレイヤーの判断と行動選択
3:選択に対するGMの判断・判定の示唆
4:PCの行動・判定
5:結果に対するGMの描写
6:GMによる変化した状況の説明
シーンはこの繰り返しで進行してゆきます。PCの行動によって状況に変化が起これば、それに応じて新たにイベントが発生したり、シーンが移行することになります。
○シーンの終了/移行
PCがそのシーンの目的を達成したり、移動や時間の経過、あるいは状況に大きな変化が生じることによって、1つのシーンは終わりを迎えます。そして、その結果を受けて以降のシーンの内容が定まります。
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導入部の誘導
シナリオの目的を果たすために必須の行動や、たどり着かなければならない場所へ到達させるためには、何らかの誘導を行う必要があります。
○導入
導入部で展開に詰まってシナリオが先に進まないというのは、非常によくある話です。事前に職業を指定したり、目的を理解してもらってからセッションをはじめる場合はよいのですが、PCの立場によっては事件に参加する動機が稀薄であったり、依頼を引き受けたりする方が不自然な状況もあり得ます。
▼引き
導入で躓く主な原因には、報酬が安い、危険すぎる、PCの立場として不適当、依頼人を信頼できない、などがあります。もし動機づけが弱いとプレイヤーが感じているようであれば、引きの要素を大げさにしたり、新たに条件(成功報酬の追加など)を提示して興味を引くよう心がけて下さい。もちろん、事前にこういったことを予測しておき、様々なバリエーションを考えておくことが重要です。
こういったプラス方向への修正とは逆に、プレイヤー側の状態をマイナスにすることで、引きの要素を強めるやり方もあります。たとえば、裕福なPCの場合は最初にちょっとしたイベントを設けて、資金を減らすことで引きの要素を相対的に強めたり、予想される危険を曖昧にしておくといった手段があります。
▼押し
引きでどうにもならない場合は、少々強引でもPCをシナリオに引きずり込んでしまいましょう。たとえば、襲撃をかけて強制的に巻き込んでしまったり、目の前で事件を起こして容疑者あるいは参考人として連行する、といったやり方です。なお、このような導入を用いた場合、後で何らかの報酬が手に入るようにしておけば、期待していなかった分だけ喜びも大きく、不満を和らげることになります。
▼設定の変更
性格や過去の経験から、特定の事件に関わりづらいというPCも存在します。もし、それがはじめて参加するPCであれば、性格や設定を変更して貰うのも1つの手です。また、プレイヤーにPCが参加できそうな条件を提示してもらい、それをそのまま利用するのもよいでしょう。
▼動機の後付け
参加理由を考えるのはセッション終了後でもよいということにしておけば、PCの立場にかかわらずシナリオを開始することが出来ます。シナリオの途中で何か動機になりそうなものが登場すれば、それを理由として事件に積極的に関与できるわけですし、最終的に何も考えつかなかったとしても、シナリオは既に終了しているわけですから何も問題はありません。PCとプレイヤーは別の人間であることを利用して、「プレイヤーにもわからないがPCにも何か思惑があったのだろう」「何か過去の出来事が関与しているのかもしれない」などとしておいて、動機を明かさないまま終了するのもよいでしょう。同じキャラクターを用いてセッションを行うのであれば、次回のセッションまでに設定を決めておいて、それを題材にシナリオを組んでみるのも面白いかもしれません。
▼不満
導入に納得がゆかず、不満を抱くプレイヤーも出るかもしれません。しかし、何よりゲームに参加しないことには、プレイヤーも楽しむことが出来ませんし、導入部に無駄に時間をかけていては、以降のシーンにかける時間が圧迫されることになります。PCの設定にこだわって不平をこぼしたり、強引な押しに対して文句を言うようであれば、きちんとゲームの目的と構造を説明して理解して貰って下さい。
また、ゲームに参加できるかどうかというのも、プレイヤーの実力のうちに入ります。ゲームに参加しづらい設定があっても、なおかつシナリオに参加できるようPCをハンドリングするのが、本当にうまいプレイといえるでしょう。PCの設定に対して責任を取らなければならないのは、設定を行ったプレイヤー自身なのです。ですから、あまりにも文句が多くてゲームの邪魔になるようであれば、全員が参加していないままシナリオを進めてしまっても構いません。ただし、序盤のうちに参加できるタイミングを見計らって、未参加のプレイヤーに声をかけてあげる必要があります。
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展開の調整
シナリオはPCの行動の結果によって変動するものであり、そういった変化に対して軌道の修正を行う必要はありません。しかし、セッションの展開がシナリオの目的を達成することからずれていたり、明らかに行き詰まっている場合には、GMによる何らかの調整作業が必要となります。
○目的の認識
▼確認
シナリオの目的を正しく認識できていなければ、セッションの展開が予想外の方向へ向かったとしても、何ら不思議ではありません。このような事態を防ぐには、シナリオ作成時に明確な目的を設定しておくか、セッションの途中で達成する事柄の優先順位の確認を行うといった手段があります。
▼忘却
2つ以上の目的を設定された場合、セッションを進めているうちにいずれかを失念してしまったり、1つ手前の目的を達してシナリオクリアと勘違いするようなことがあります。
しかし、シナリオの終わりの方で新たな目的が判明した時というのは、消耗品を使い切るなど利用できる資源が心許ない状態になっていることが多いものです。この場合は想定していたゲームバランスに大きな狂いが生じているわけですから、無理をせずにその課題を無視して、あっさりとシナリオを終わらせてしまうのが一番よい方法でしょう。もし、プレイヤーに知らせてしまった後でも、それはシナリオの本筋の目的ではないと明言して、後日談として流してしまえば問題ありません。
○誘導
GMの思惑と大きく違った状況となった場合、混乱やシナリオの崩壊を未然に防ぐために、プレイヤーの誘導を行う必要があります。
▼情報
特定の情報を与えたり、プレイヤーの思い違いを訂正することで、展開を修正することが出来ます。▼障害/リスク
PCの思惑を妨げるような障害を提示したり、特定の行動に対するリスクを高めることで、物語が望まない展開へ進むのを防ぐことが出来ます。▼目的
目的となる人物の居場所を明かしたり、一時的な目標を提示することで、プレイヤーを誘導することが出来ます。
○プレイヤーの意見
シナリオの展開をどうするか迷った時は、プレイヤーの考えを採用するという手段もあります。ただし、直接プレイヤーに相談するとは限らず、悩んでいる部分を曖昧にしておいて、プレイヤーの予測から以降のシーンを構築するという方法を取ることも出来ます。
この時はプレイヤーの予測そのままではなく、意外な展開になるよう少しひねってみたり、その予測を利用して罠を張るという手段を取ってみるのも面白いかもしれません。しかし、それによってセッションが崩壊するようでは本末転倒ですから、付け足しの部分は余裕がある時だけ考えるようにして下さい。
○混乱
▼問題の把握
PCの行動によって事態が混乱してしまい、シナリオをどう進めてよいのかわからなくなることもあるでしょう。しかし、何も難しく考えることはありません。セッションの第一の目的は起こっている問題を解決することですから、課題を明確にすることが解決への一番の近道となります。
▼NPCによる立て直し
自然や偶然が相手というのでもなければ、セッションにおける問題は何者かの意図や行動によって生じているはずです。ですから、NPCや状況が事態に対してどのような判断を下すのかを考えてみれば、自ずと次の展開が見えてくるはずです。
この時はまず落ち着いて、NPCの勢力ごとにその意図と状況を整理してみて下さい。そして、NPCが把握している状況から、どのように行動すれば最も自然なのかを考えてみます。GMはNPCや世界をプレイしているプレイヤーであると考えればわかりやすいでしょう。
NPCが動けば状況が変化し、シーンの課題がまた新たに生み出されるはずです。これによって混乱した状況を収束、もしくは破棄できる可能性が高くなります。最も重要なのは、NPCの行動指針がきちんと定まっているかどうかです。ですから、このような事態で困らないようにするためには、事前の準備を怠らないよう気をつけて下さい。
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アドリブ
セッションにおけるアドリブとは、予測していなかった状況に即興で対応したり、即席でデータや次の展開(シーンやイベント)を作成することをいいます。TRPGのシナリオは展開が決まっておらず、必ずどこかに空白が存在するものです。ですから、GMはいずれかのシーンで、必ずアドリブによる対処を行うことになるでしょう。
○必要な状況
▼PCの誘導
PCがシナリオから外れた行動を選択した場合、アドリブによって予定していた展開へと戻すことがあります。▼空白
シナリオを作成している際に全く予測がつかなかった部分は、それまでの展開に応じてアドリブで話を進めてゆかなければなりません。▼矛盾の修正
設定に矛盾が生じた場合に、それを修正するためのアドリブが必要となる場合もあります。▼予想外の行動
PCがまったく予想外の行動をとった場合にも、咄嗟の対応が必要となります。▼連結
シーンとシーンの間に空白が出来たり、プレイヤーから見ると状況や情報の間に繋がりが全く見えなかったりすることもあります。この場合は、うまくそれらを繋げる情報やイベントを挿入して、シナリオを進めてやる必要があります。▼シナリオの転換
プレイヤーがGMの予想していた結末を望んでいない場合、あるいはプレイヤーの意図する展開の方が面白そうだと感じた場合に、アドリブで新たな物語を構築してゆくことになります。▼準備不足
あまりよいことではありませんが、準備不足のままシナリオを開始することもあるでしょう。また、突発的にセッションを開始した場合には、フルアドリブでシナリオを構成することになります。
○準備・心構え
▼余裕
アドリブを行う場合には、余計な判断の誤りを生まないよう、焦らずに対処することが大事です。▼自然な展開
アドリブを行うためには柔軟な思考が必要です。うまくやるには慣れが必要となりますが、GMが何かの設定を忘れていたり、PCがよほど突飛な行動を取ったりしない限りは、状況から考えて自然と思われる展開へと進んでゆけば、大きな問題が起こることはないでしょう。▼固執/範囲の規定
アドリブでシナリオを進める必要が生じた場合、自分が用意したシナリオに無理に固執するのは避けなければなりませんが、不意の変更によってセッションが破綻するようでもいけません。シナリオで用意された目的を果たすためには、崩してはならない設定や通らなければならないルートが存在するはずです。こういった要素を確認し、予定していたシナリオからどこまで外れてもよいのかを、アドリブで物語を展開する前に把握しておく必要があります。▼意見の確認
次にプレイヤーがどのような行動をとるかを尋ねることで、アドリブを行うことによる新たな状況の混乱を未然に防ぐことが出来ます。▼パターンの蓄積
初めからアドリブをうまく行うことは難しいものです。迷った時は、これまでに似たような状況がなかったか、既存の作品に参考になるようなものはないかを、意識して思い出してみるとよいでしょう。
日頃から多くの物語に触れていれば、シーンやイベントを何らかのパターンとして蓄積しておき、それを利用して適切な展開へと繋げることが出来ます。また、その他の趣味や実生活の経験も役に立つ場合があります。アドリブでも自然にセッションを進行できる熟練したGMは、これを無意識のうちに行ったり、意図的に記憶の中にある展開を再構成して利用しているものです。
○対策
▼状況の整理
先の展開に困った場合は、現在の状況、PCの目的と意図、利用できそうな道具・状況といったものを、紙などにメモして整理してみるとよいでしょう。そして、それらの組み合わせによって、最も自然に生じる展開へと物語を進めるのがベストの選択です。▼NPC/状況の設定
シナリオに深く関わっているNPCや状況の設定を詰めてゆくことで、より自然な展開が見えてくるようになります。特にNPCの目的(意図)や行動方針を確認するのは重要です。そのNPCがどのように行動すれば目的を果たせるのか、NPCの立場にたって順番に考えることで、アドリブによるシナリオの破綻を防ぐことが出来るでしょう。▼プレイヤーの思考
プレイ時間に余裕がある時は、わざと先の展開を曖昧にしておいて、プレイヤーの考えを引き出すやり方もあります。プレイヤーの予測や発言をもとに展開を組み立て直すことで、大きな破綻やプレイヤーから不満が出るのを防ぐことが出来ます。▼時間の余裕
慌てている時はよい考えが浮かびませんし、重要な要素を見落としてしまう可能性もあります。もし何も考えつかない場合は休憩を入れたり、プレイヤーに相談させている間に状況を整理するようにしましょう。▼次回への引き
次回があればそこでシナリオを区切って、次のセッションまでに新しい展開を考えるという方法もあるでしょう。
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