中央地方/ラガン帝国


 


○概説

 かつて中央地方を支配していた国で、エルモア地方やアニスカグナ地方を含めた一帯でも最大の勢力を誇っていました。しかし、27年前に起こった謎の爆発事故が起こった後は結界に閉ざされ、一切の交流がなくなってしまいました。そして現在に至ってもなお、その向こう側で何が起こっているのかは明らかになっておりません。とはいえ、つい最近まで存在しており、エルモア地方にも多大な影響を与えた国ですから、ここではそれ以前のラガン帝国について簡単に解説しておきます。


○略史

 前聖歴765年に、ソロニア人が中心となって建国した複合民族国家で、国民のほとんどが黄人系民族です。建国当初はパルファという国名でしたが、後にマステュス人の反乱があり、前聖歴345年にラガン帝国が成立することとなります。
 聖歴84年には、ラガン帝国はその圧倒的な兵力でペルソニア大陸に侵攻を開始し、北部一帯を植民地とすることに成功しました。この時期のエルモア地方は非常に混乱しており、その隙をついてペルソニアを独占したラガン帝国は、植民地貿易を通じて勢力を増してゆきます。特に植民地産の香辛料を武器にアニスカグナ地方との交易を独占したことは、ラガン帝国を不動の地位にのし上げる最大の要因となりました。
 こうして力をつけたラガン帝国は、聖歴262年には現在の都市国家半島を平定し、エルモア地方へと足を伸ばしてゆきます。しかし、聖歴329年にセルセティア征服に向けて大兵団を送りこみますが、海魔現象と呼ばれる変異現象のために多数の死亡者を出すこととなり、撤退を余儀なくされました。この頃のラガン帝国は、曙帝国と呼ばれるほどの勢力を誇っており、よもやこの侵攻が失敗するとは誰もが思いませんでした。これが原因で国内はしばらく乱れ、さらにはその隙をついてアニスカグナ地方のイルヌ王国が帝国への侵攻を開始したため、ようやくエルモア地方の国々はこの大国の脅威から一息つくことができました。
 その後、帝国は侵攻を退け、聖歴355年には逆にイルヌ王国の征服に成功します。こうして帝国は領土を拡大し、再びアニスカグナ地方との独占貿易体制を確立させ、かつて以上の隆盛を極めることになりました。しかし、聖歴400年代後半になると国内問題が積み重なり、聖歴520年代に起こったソファイアとの戦いなどを経て、少しずつ勢いを失ってゆきます。その後、聖歴553年には再びセルセティアへの侵攻を行いますが、これも失敗に終わったために責任問題で国内が揺れ、王朝の交替劇へと発展することになります。
 この時代になるとかつての権勢は薄れ、他国からは退廃帝国と揶揄されるようになっていました。そして聖歴709年に起こった事件が、この大帝国を一気に衰退させることになります。それが冒涜の王と呼ばれる怪物の出現で、この怪物がペルソニアで大量殺戮を開始したために、植民地の駐留軍はほぼ壊滅状態に陥りました。こうしてラガン帝国は支配地の多くを失い、諸外国にペルソニア植民地への参入を許すこととなります。
 これより以後は国内の乱れが続き、聖歴762年に起こった謎の爆発事故によって、遂に帝国は長い歴史を閉じることになりました。しかしその時、皇帝の末子であったメーティス=サイアル=ラガーナ(当時7歳)は運良くこの地を離れており、唯一の帝位継承者として現在も生存しています。そして帝国の復活を夢見ながら、歴史の影で暗躍を続けているのです。


○領土

 最盛期の帝国は、植民地も含めるとエルモア地方に匹敵するほどの面積を持ち、末期でもカイテイン帝国とほぼ同等の領土を支配していました。この大国の脅威があったため、エルモア地方では本当の意味での大規模な戦乱が起こらなかったといえます。逆にいえば、ラガン帝国が消滅した現在は、かつてなかったほどの戦乱が訪れる可能性があるということです。


○制度

 中央集権的な支配を続けてきた国でしたが、対外的なミスを重ねるにつれ皇帝の権力は弱まり、後期には地方分権に近い状態に移行しておりました。


○民族

▼マステュス人(黄人/混血?)
 黄人系民族ですが、巻き毛の者が多いのが特徴です。全体的に白人の顔立ちに近いため、混血の一族ではないかと考えられています。

▼ソロニア人(黄人)
 もともとはアニスカグナ地方に住んでいた黄人です。琥珀色の瞳と、彫りの深い顔立ちが特徴的です。

▼セル人(黄人)
 黒髪、黒い瞳の黄人です。黄人の中では肌の色が白い方で、きめ細かな肌をしています。

▼クリントル人(黄人)
 茶色がかった髪の毛をした黄人です。瞳の色が薄く、灰色やブルーグレイの者が多いようです。

▼ラチェン人(黄人)
 浅黒い肌を持つ黄人で、やや背が低く体格はがっちりしています。

▼その他
 以上の他にも多数の民族が住んでいましたが、そのほとんどは黄人系です。


○首都

 首都はサルディスカトラ市で、その美しさと黄金で彩られた王宮から、黄金の都と呼ばれておりました。


○宗教

 マイエル教を信奉していました。様々な宗派がありますが、帝国本土ではターバー派と呼ばれる、全ての神を信仰対象とする万神信仰が主流となっておりました。


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