停滞
GMが司会進行役も務めることになりますので、セッションが滞りなく進むよう気を配る必要があります。セッションの進行が停滞するのには幾つかの原因が考えられますが、ほとんどの場合は新たに情報を与えるか話し合いによって解決できるものです。
○知識と情報
▼情報の不足
セッション停滞の主な原因として考えられるのは、プレイヤーが何をしてよいのかわからない状態に陥ることです。これは情報が十分に与えられない場合や、ヒントに気づいていない時に起こることが多いので、別のルートから情報を伝えることで解決されます。プレイヤーに直接ヒントを与えるのを嫌うのであれば、判定を行うことでPCの知識として伝える方法が考えられます。
あまりにも行き詰まっている場合は、プレイを中断してプレイヤーに状況を整理させ、何をすべきかを相談させた方がよいでしょう。そして、必要があればGMも情報の整理に手を貸してあげて下さい。ただし、プレイヤーの判断ミスによって得られなかった情報を、何の代償もなしに出してやる必要はありません。それはゲームとしてはペナルティとなる部分ですから、それによって不利になる状況、あるいは判断がしにくくなるというのが正しいセッションコントロールとなります。
▼プレイヤーとキャラクター
TRPGでは、ゲームの参加者が知っている情報をキャラクターが知っているとは限りません。この点もTRPGの面白い要素の1つなのですが、GMがこれを忘れたままシナリオを作ってしまうと、まれに展開を妨げる結果となる場合があります。
たとえば、ゲームの舞台における常識については、PCが知っていてもプレイヤーは初めから知らなかったり、忘れている場合もあります。逆にプレイヤーの知識をそのままPCの知識として適用できないために、わかっていてもPCを行動させることが出来ない、といった自体に陥ることもあるのです。
こういった問題を解決するためには、とにかく情報を与えるしかありません。基本的には、知識に関する判定などを行わせて、PCの知識としてプレイヤーにその情報を伝えればよいでしょう。それでダメな場合は、NPCや書物を通じて情報を与えても構いませんし、明かな常識であれば直接プレイヤーに伝えてしまっても問題ありません。情報の提示はあからさまなぐらいで丁度よいのです。
最も問題となるのは、明らかにPCが知るはずのない情報を用いなければ、課題を解決することが出来ない場合です。これはもう完全にGMのミスですので、新たに解決方法を設定したり、別の展開へと移行するなどの処置しか取れないでしょう。こういったミスを防ぐためには、とにかく多様な視点からシナリオを見直して、問題を事前に潰してしまうほかありません。
○苦手な作業/展開
戦闘が嫌いな人、推理が苦手な人、会話が不得意な人などが、自分が好まない場面で無口になってしまうのはよくあることです。これとは逆に、特定の作業にしか興味がないという人間も存在します。これは予めプレイヤーに好みについて尋ねておき、シナリオから排除しておくことで回避することが出来ます。また、シナリオが先にある場合は、苦手とするシーンでは登場人物から外してしまうか、誰かの作業の補助にまわって貰うなどの措置が考えられます。
なお、敢えて好みから外れる要素を織り交ぜて、新たな楽しみを感じることに積極的に挑戦してもらうという手もありますが、一般にうまくゆかないことが多いようです。場合によっては逆効果となる可能性もあるので、なるべく避けた方が無難でしょう。
○会話の拒否
会話そのものが苦手という人物もまれに存在します。これについては、最低限の行動宣言からはじめて貰って、徐々にならしてゆくしかないでしょう。
これよりも問題になるのが、その場にいるだけで楽しい、見ているだけで楽しいといった手合いです。こういった人物は、リプレイを見ている気分で参加しているため、自ら行動する楽しみというものに気づいていないことが多いものです。ですから、自分の判断によってシナリオの展開が変わるなど、具体的な状況の変化を提示して、自分がゲームに参加していることを実感してもらうしかないでしょう。
○参加のきっかけ
シーンにどのように登場してよいかわからない、登場してもすることがないなど、参加のきかっけがつかめないこともあります。この問題は、シナリオ作成の際に各自が参加できる機会を多く用意したり、GMが積極的に話を振って参加を促すことで解決されます。たとえば何かを尋ねる際にも、相談後に全体の意見を提示させるだけでなく、たまには個別に意見を聞いてみるといった具合に気を配れば、意思表示をすることが可能となるでしょう。
この他にも、仮に会話に加われないにしても、判定を行う機会があるだけでも退屈させずに済みますし、パーティを役割分担に応じて分離することで、1人ずつの活躍の機会を増やすことが出来ます。これでプレイヤー1人あたりに費やす時間が増えるわけではありませんが、1人の判断や行動結果の重要性が高まりますし、他のプレイヤーの干渉を防ぐことにもなります。なお、この時は他のPCを退屈させないよう、場面の転換を頻繁に行うよう気を配りましょう。
○実像とのギャップ
敵の力を過大に表現しすぎると、プレイヤーが相手を恐れて動くに動けなくなってしまう場合があります。特に為政者や警察といった権力に敵対するシナリオは、十分に注意して作成しなければなりません。こういった時は、相手の実際の力について正しく情報を伝えたり、ある程度の権力を持った支援者や脱出ルートを確保してくれるNPCを出すなど、何らかの対策を用意して事件に挑ませるよう工夫しましょう。
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展開への不満
プレイヤーがシナリオの展開に大きな不満を抱くようだと、物語が最後まで無事に進んだとしても、セッションが成功したとはいえません。好みの違いを解消するのは難しいでしょうが、それ以外はGMが気をつけることで回避することが可能となります。
○テーマ/課題への興味
シナリオのテーマや課題に興味を持てなければ、セッションは延々と退屈するだけの時間となってしまいます。
▼事前の確認
これに対して事前に行うことが出来る対策は、シナリオ作成前にプレイヤーの好みを聞いておくことです。全ての人を満足させるシナリオを作成するのは不可能かもしれませんが、これによって少しでも問題が生じる可能性を低くすることが出来ます。▼一般的要素の選択
事前に確認を取る時間がない場合には、多くの人々に好まれるような題材を選んでおくことでしょう。同時に、嫌悪感を示す可能性のある題材をなるべく避けることも必要となります。▼活躍の場面
ストーリーに興味が持てないとしても、PCが活躍できさえすればそれなりに楽しく思えるものです。ですから、事前に好みの確認をできない場合には、イベントの解決に幅広い手段を用意して、なるべく数多く判定を行えるようにしたり、シナリオに別のゲーム要素を盛り込むなどの対処法があるでしょう。▼問題の確認
途中でプレイヤーの不満に気づいた時は、セッションを中断してなぜつまらないのかを尋ねてみてもよいでしょう。問題を明らかにしなければ対策をとることはできませんし、改善されなければそれ以上続けていても、楽しくない時間を押しつけるだけになってしまいます。
○突飛な展開
明らかに非常識な見解に基づいた展開や、与えられた情報から全く予測不能な結末を用意されても、プレイヤーが納得して受け入れるわけがありません。予想外の展開というのは、納得できてこそ初めて受け入れられるものなのです。意外な結末を用意している時は、それを納得させるだけの伏線を張っておくなど、周到な準備が必要となります。
○冗長な展開
▼美しいストーリー
GMが描写に対して過剰に力を入れたり、美しいストーリーに陶酔するのは避けなければなりません。こういった行為はGMの好みを他人に押しつけているだけに過ぎません。▼結末が見えない
いつまでも結末が見えないようなシナリオも、不満を持たれやすい展開の1つです。情報や準備が多すぎて、なかなか実際の行動に移れないようなシナリオや、同じ作業の繰り返しで先が見えないような状況は、なるべく避けるようにしましょう。シナリオを作成する際には、まず不要な場面や作業をなるべく省いた必要最小限の構成を用意しておき、それに少しずつ肉付けする形でセッションを進行させるように心がけて下さい。
○NPCの活躍
PCの出番がなく観戦しているだけだったり、最後にNPCがPCの活躍の場を奪ってゆくようなセッションは論外であり、GMが絶対にやってはいけないことの1つです。NPCに愛着を持つGMも多くいますが、それらはゲームを成立させるための駒として割り切るべきです。
もし、NPCに頼むことでシナリオが終わってしまう状態にあるのだとすれば、NPCを探すまでをシナリオのメインストーリーとして、課題を達成した時点でエピローグへと移行してしまって下さい。PCの行動による成果を最も大きいものとしてクローズアップしなければ、プレイヤーの達成感が大きく削がれることになります。ですから、NPCの活躍をわざわざ詳細に伝える必要はなく、それ以降の描写は極力控えるよう心掛けなければなりません。
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脱線
セッションで脱線が生じる場合というのは、以下のような原因が考えられるでしょう。
○セッションへの興味
脱線が起こる殆どの状況は、セッションに対しての興味が薄れていることが原因となります。
▼判断材料の不足
これが原因で退屈している場合は、NPCを通じて情報を渡したり、新たにイベントを起こして興味を引くといった手法を取ることになるでしょう。
▼冗長なストーリー
これについての対策は、なるべくシナリオ作成の段階で考えておくべきです。セッションの途中でこの問題に気づいた場合は、なるべく過剰な描写を控えたり、余分な要素を極力カットする方向でセッションを進めます。
▼活躍の機会
NPCがPCの活躍の場を奪ったり、単純な作業ばかりでシナリオが進行するようでは、セッションに興味が持てなくて当たり前です。シナリオ作成段階でゲームを楽しませる工夫を怠ってはいけませんし、セッション中は各PCに活躍の機会をなるべく均等に与えて、参加者全員に満足してもらうよう心がける必要があります。
▼行動不能の状態
いつまでもPCが登場できなかったり、別のPCの行動する場面が延々と続くようでは、プレイヤーがいずれ退屈してしまう可能性もあります。また、死亡や怪我によって行動できなくなっている場合も、同様のことがいえるでしょう。
前者の場合は、場面の切り替えを頻繁に行ったり、暇な時間に情報を整理させるなどの対策を取ることが出来ますが、後者の場合は登場すること自体が不可能ですので、後はただセッションを観覧するだけになってしまいます。この場合は、NPCを担当させたりGMの作業を手伝ってもらうなどして、なんとかセッションに関わってもらうようにしましょう。
○雑談
適度な雑談はセッションの雰囲気をよくしたり、緊張を緩和させて集中力を取り戻すのに役立ちます。しかし、あまりに雑談が長引くようだと、それはセッションに害悪しか与えません。
▼妨害
特に、他のPCが活動している間の雑談は、GMの発言を聞こえにくくするのはもちろんのこと、全体の集中力や緊張感を削いでしまうことになります。また、他のPCの行動を見ずに話を続けているようだと、集合した時に改めて展開や情報を伝えなければならなくなり、無駄な時間を失うことになります。
GMの話や他のプレイヤーのプレイを無視して、雑談を続けるようなプレイヤーがいた場合、毅然とした姿勢で注意を行い、まずはきちんとゲームに参加してもらうようにしましょう。
▼再開
GMはあまり雑談に加わらずに、流れを見てセッションを再開させる必要があります。雑談を切り上げるためには、自身の方へと注意を引くことが肝心です。たとえば手を叩いて参加を呼びかけたり、マスタースクリーンの裏でダイスを空振りしたり、判定を指示するといった手段が有効となります。また、淡々とした口調でゲームを進めるのも、効果的な場合があります。
▼休憩
一度セッションから興味が外れてしまった場合、やる気を取り戻すのが難しくなります。この場合は、休憩時間をとってから再開するなど、意識を切り替えさせる必要があります。この時、無制限に時間を与えるのではなく、きちんと再開する時間を予告しておかなければなりません。
○プレイヤー間の仲間割れ
プレイヤー同士の諍いについては、基本的に当事者の間で決着してもらうのが一番です。この時、GMは仲介役とならなければなりませんが、特定のプレイヤーが明らかに悪い時でもなければ、どちらかに加担するのは避けるべきです。
ただし、これによってセッションが中断し、他の参加者が迷惑している場合には、もっと積極的に話を進める努力をしなければなりません。最悪の場合は、当事者を外してセッションを続けなければならないこともあるでしょう。GMとしても非常に言い出しにくいことですが、話しても納得してもらえない場合は仕方のないことだと割り切って、毅然とした態度で退席を命じて下さい。
○プレイヤーとの意見の相違
プレイヤーとGMの間で主義主張に食い違いが生じた場合にも、セッションの進行は止まってしまうことになります。
▼ミス
説明を読み忘れていたり、ルールの解釈にミスがあった場合は、素直に間違いを認めてセッションを進行させればよいでしょう。それを訂正することでセッションが崩壊しそうな場合は、そのことを話して理解して貰うのが一番よい方法です。
▼NPCとして対処
この時は、GMは中立の立場を守るのが原則です。GMが世界の中で動かすのはNPCと状況であって、GM自身がゲーム世界で活動しているわけではありません。ですから、GMとしてプレイヤーと議論するのはなるべく避け、NPCの立場でPCと意見を交わすのが、セッションを中断させない手法として有効です。
この時はプレイヤーを興奮させないために、「〜とNPCは言っているけど、どう対処しますか?」という具合に、あくまでもNPCの言動であることを強調しておくとよいでしょう。NPCの口で即答するのは、場をヒートアップさせることになりかねません。同様に、意見を確認したら「では、あなたのPCは〜という主張をするわけですね?」という具合に、少し間をおいてから返答するのもよいやり方です。これによって、プレイヤーに冷静さを取り戻させる時間を与えることになります。
それでも納得しない場合は、セッションの終了後になぜNPCがそのような意見を持つに至ったのかを、世界観や背景情報も含めて話してあげればよいでしょう。
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シナリオの崩壊
シナリオの崩壊とは、そのセッションを維持することが出来なくなった状態です。このような事態は滅多に起こるものではなく、本当に最悪の事態といえます。こうなった時はセッションを最初からやり直すか、プレイヤーに話してシナリオの修正を認めてもらうぐらいしか、回復する手だてはないでしょう。
結果としてシナリオが失敗してしまっても、そう落胆する必要はありません。ゲームに失敗はつきものですし、それによって学ぶことも少なからずあるでしょう。重要なのは、また同じ失敗を繰り返さないことです。ですから、このような事態が起こった場合は、後でその原因について参加者で話し合い、その教訓を以降のセッションに活かせるよう努めましょう。
○崩壊への対策
シナリオの崩壊が起こらないようにするには、なるべく早く綻びや矛盾点を察知して、その都度修正してゆくしかありません。しかし、それでもどうにもならない場合は、以下のような手段を取ることになるでしょう。
▼予備の展開
シナリオが予定とは全く違う展開へと向かった場合でも、予備の展開があればそちらに切り替えるのも1つの手段です。
▼アドリブ
事前の予測の範囲では収まらない事態が起こっている時は、アドリブで対処するしかないでしょう。きちんと練ったシナリオに比べると単純な展開になりがちですが、完全にセッションが崩壊してしまうよりはマシだと割り切るべきでしょう。
▼プレイヤーの失敗
崩壊した原因がプレイヤーにある場合は、ペナルティを与えて途中で打ち切るという方法もあります。その後、時間に余裕があればセッションをやり直してもよいでしょうし、そこで生じた状況を利用して次のシナリオに作成するという手もあるでしょう。
○フルアドリブ
TRPGのセッションは、シナリオで定められた予定調和のうちに終わるものではありませんから、GMによる何らかのアドリブが入るのは当然のことです。しかし、シナリオを準備せずにフルアドリブでセッションを進行させようとするのは問題です。
シナリオを作成した上でのアドリブであれば、破綻する可能性を低くおさえることが出来ますが、フルアドリブの場合は展開に一貫性がなかったり、データバランスの上で問題があったりすることが多く、それによってシナリオが崩壊する可能性は、通常のセッションよりもはるかに高くなります。
仮に展開の破綻がなかったとしても、障害を設定する上で全体のバランス構成を考慮していないことによって、ゲーム性を著しく損なう結果になりかねません。やはり、よほど突発的にセッションを行う場合でなければ、シナリオは予め準備しておき、可能な限りバランスをとっておくのが当然といえるでしょう。
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