共通語
エルモア地方の言語はすべてアルファベットです。普通に育った人は公用語としての『共通語』と母国語の会話ができますし、初等学校に通った人であれば読み書きができます。
○母国語の派生
共通語が維持されている要因には、宗教機関の存在があります。古い時代に字を読むことができたのは、聖職者と権力者以外には殆どおりませんでした。このうち、民衆に本を読んで聴かせたり、権力者との間に入って陳情書などを提出していたのは聖職者であり、彼らはいわゆる正しい共通語を使い続けています。また、宗教書も共通語で出版されているため、現在でも共通の言葉として維持されているのです。
とはいえ、言語というのは変化するものですから、少しずつ地方の訛りや活用形の変化が生じてきます。こうして生まれたが母国語で、各国家ごとに存在しています。これはそれぞれが方言程度の差しかないので、母国語を用いても基本的な会話にはそれほど苦労はしません。とはいえ、固有名詞や文法には多少の差があるため、一般的には相互の会話は共通語で行なわれます。
○識字率
ほんの50年ほど前までは、人口の7割以上の人間が文字を読むことが出来ませんでした。しかし、学校教育が普及しつつある現在は、かなりの数の人間が字を読むことが出来るようになっています。
ただし、これは白人と黄人の話で、赤人や黒人は根本的に異なる言語を使用しています。エルモア地方で生まれ育った奴隷の場合は、共通語や母国語の会話が可能です。ただし学校教育を受けたわけではないので、読み書きはできません。
○代筆屋
いくら普及したとはいえ、年輩の人間の中には文字の読み書きが出来ない者も多数います。そのため、代筆を職業とする者もまだ存在しています。
このうち、陳情書や法的な書類を作成する役目を負った者は、司法書士と呼ばれる職業となりました。民間で残っているのは手紙屋と呼ばれる職業で、手紙の代筆を行ったり、受け取った手紙を人に読んで聴かせたりしています。なお、現在のような郵便業務が発展したのも、手紙屋が渡航組合や駅馬車などを通じて手紙のやり取りを仲介するようになり、後にこれが制度化して行政制度に組み込まれるようになったためです。それから、恋文屋と呼ばれる特殊な手紙屋もあり、歓楽街の近くに店を構え、高級娼婦などに手紙を届ける役目を負ったりしています。
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その他
共通語の他に言語として知られているのは、新大陸エスティリオの現地人が使う『エスティリオ語』や遙か南東に位置する『アニスカグナ地方』の言葉、それぞれの亜人ごとに存在する各々の言語、裏組合が教える暗号のような『盗賊語』などがあります。また、魔界の魔族たちにも独自の言語がありますし、天使や妖精といった存在も言語が異なります。それから宗教の言語として各々の宗教ごとに『神聖語』(宗教語)がありますし、科学魔道時代の言語も発掘品の研究には欠かせません。
これらの他に、生物の中にも独自の言語体系をもつものがいます。とはいっても、多くの場合は文章として成立してはおらず、単語を並べるだけのようなものが多いようです。
◆言語
言語 説明 共通語(全域) エルモア地方全域で用いられる標準語 母国語 各国の母国語。それぞれ方言程度の違いがある ペルソニア語 ペルソニア大陸の人々が話す言葉で、黒人語と呼ぶ場合もある 赤人語 エルモア北方の赤人が用いる言語 亜人語 各亜人が使う言語。種族や集落ごとに異なる 宗教語 各宗教で用いる聖言。祈りや術法に用いる 盗賊語 裏社会で用いられる暗号。文字の形状に意味があり、書き文字としても手話としても用いることができる。 エスティリオ語 新大陸の現地人が使う言葉 アニスカグナ語 アニスカグナ地方の言葉だが、現在は結界の向こう側にあるため使用されていない 種族語 魔族語、天使語、妖精語など 先史文字 科学魔道文明時代の文字で殆ど解明されていない。翻訳を生業とする中でも、ほんの一握りの者しか知らない言語
すべての言語を習得している者はいないでしょうし、普通に生活している限りにおいては、共通語さえあれば不便はありません。もしも必要になれば、それに応じて習えばよいのですし、また通訳や翻訳を生業としているものもいます。ですから、言語という面でそれほど困った事態に陥ることはないはずです。しかし、余裕があるのならば他の言語を覚えてみるのも一興です。特に多種族の言語を習得することは殆どないはずですから、もし機会に恵まれたら教わってみてはいかがでしょうか。おそらく色々な意味で世界が広がることと思います。
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