管理者/NPCの管理

準備行動物語の変化ストック


 

準備


 NPCとはノン・プレイヤー・キャラクターの略で、PC以外のキャラクターを示す言葉です。GMはシナリオの展開をコントロールすると同時に、全てのNPCを操る役目も負っています。


○設定と役割

 シナリオ作成の項目でも書いた通り、NPCにはそれぞれ以下のような役割があります。GMはシナリオの内容に応じてこれらの役割を担うNPCを配置し、その行動指針に従って適切に動かす必要があります。
 
・役割:障害、支援者(金品、手段など)、影響(足手まといなど)、情報提供、目的、エキストラ...etc.


○影響

 GMはNPCが世界やPCに対して、どの程度の影響を与えるのかを予め規定しておかなければなりません。支援者といえども、PCに対して無限の援助を行うわけでもありませんし、求められても不可能な事柄もあります。また、シナリオに対してどういった変化をもたらすのかを決めておかなければ、NPCの行動によってシナリオが崩壊してしまう可能性もあります。
 こういったことを防ぐためには、GMはシナリオを準備する段階で、NPCの背景情報や社会的立場といった要素や、持ちうる手段とその影響が及ぶ範囲などを設定しておく必要があります。また、これを行うことによって行動指針が自動的に定まり、咄嗟の事態に対しても慌てることなくNPCを動かすことが可能となります。


○確認

▼シナリオへの影響
 NPCがどのシーンに登場し、どのような役割を果たすのかを確認します。そして、行動による影響の大きさも同時に考え、物語に与える変化の度合いを予測します。

▼情報の確認
 NPCがPCに対してどのような情報をもたらすのかを確かめて下さい。また、その情報の重要度と、どのようなルートから情報が与えられるのかもチェックしておく必要があります。

▼バランスの確認
 NPCが判定を行う必要がある場合は、そのバランスを調整しておかなければなりません。特に、シナリオの展開に影響を及ぼすような判定や、戦闘のように直接生死に関わる問題については注意する必要があります。


先頭へ

 

行動


○印象づけ

 特徴のありすぎるNPCも問題ですが、特徴がなさ過ぎる場合にも簡単に忘れられてしまうというマイナスの影響が考えられます。容疑者を取り違えて覚えてしまったり、尋ねるべき人物の存在を忘れてしまうようであれば、シナリオの展開にも悪い影響を及ぼすでしょう。ですから、重要なNPCについては、最低限の特徴づけを行い、簡単に忘れられないよう工夫する必要があります。


▼見た目の区別
 最も簡単なのは、NPCの見た目で区別させることです。服装や髪型は、職業や身分、あるいは年齢や性格を反映するようなものがよいでしょう。工房の職人であれば油汚れのついたつなぎを着せ、学者であればスーツに眼鏡といった具合です。
 プレイヤーがNPCを簡単に区別するには、イラストがあれば一番よいでしょう。絵がうまく描けないという場合は、文字だけでも構いませんので、名前と特徴を書いたカードなどを準備して、区別しやすい形でNPCの情報を提示するとよいでしょう。


▼名前
 個性的な名前は必要ありませんが、他のNPCと混同したり簡単に忘れてしまうようでは問題です。やってはならないのは、似たような名前を幾つも出さないということです。特に、先頭の文字や語尾が似通っている名前は、意識して外すようにして下さい。また、文字数が同じ名も混乱を招きやすいので、意識的に長い名前を使ってみたりするのもよいでしょう。
 それから、識別するだけではなく同時に役割を覚えてもらうために、職業や特徴に関連づけた名前をつけるという方法もあります。貴族の名前は仰々しく古めかしいものにしたり、可愛らしい少女には花をもじった名をつけるといった具合です。この他に、職業など社会的立場をあらわす語句を、名前と同時に呼ぶというのも効果的です。〜子爵、石工の〜、といった具合に呼び続ければ、名前を忘れたとしても役柄を区別することが可能となります。


▼性格
 極端な性格で印象づけるのも1つの手ですが、出てくるNPCが全て際立った性格ばかりでは、逆に区別しづらくなってしまいます。個性的すぎるキャラクターは少数にとどめておいて、他のNPCは別の手法で個性化した方がよいでしょう。
 性格を個性化といっても、一般的基準から外して考える必要はありません。同じ人物の中に相反する要素を入れるなど、ちょっとしたアクセントをつけることで、互いの要素を引き立てることも出来ます。たとえば、普段は頑固だが孫にだけは甘い、酒飲みでだらしないが仕事だけはきちんとこなす、といった具合です。
 この他にもPCと対照的な人物や、逆によく似た要素を持つNPCを出すことで、互いをセットとして認識して貰える場合もあります。そういったNPCは、当然のことながら特定のPCとよく絡んだり、いちいち反発するといった対応を取ることになります。


▼行動パターン
 行動指針や背景情報に関連した独特の行動パターンを追加することで、NPCを印象づけることも出来るでしょう。時計職人であればルーペを取り出して物を眺めたり、上流家庭の子女が高慢な物言いをしたり、立派な大人なのにときどき爪を噛んだりといった具合です。こういった描写は単なる印象づけだけではなく、推理のヒントとしたり伏線として利用することも可能となります。


▼口調
 一人称を効果的に用いることで、どのNPCが話しているのかを明確にすることができます。これらはNPCの育ちの良さなどを示す要素にもなりますし、独特の訛を含むことで出身を特定するヒントとすることも可能です。なお、一人称は統一しなければなりませんが、身分を偽っている人物などの場合は、ときどき敢えて本来の口調を出してみるのもよいでしょう。


▼身振り
 GMが話すときにジェスチャーをまじえることによって、同じような口調の人物でも区別させることが出来ます。性格や服装などの特徴が反映するような仕草が出せれば、より効果的に覚えて貰うことが可能となります。


○行動

▼優先順位
 NPCが出しゃばりすぎたり、自分たちだけで話を進めてしまうようではいけません。常に中心となるのはPCであることを忘れないで下さい。
 具体的な手法としては、NPCの力量では事件を解決することが出来ないように設定する、NPCが積極的に行動できない理由をつくる、障害を無意味にしてしまうほどの権力を持たせない、などが挙げられます。他にも、怪我や病気など、本来の力量を発揮できない状態にしておいたり、噂を集めたり物資の手配をするなど、行動をPCの補助に限定しておくといった手段が考えられます。


▼判定
 NPCの判定結果が、シナリオの展開に重要な影響を及ぼす可能性がある場合は、それをどう処理するか慎重に判断しなければなりません。
 判定の失敗=セッション失敗という判定は、NPCに背負わせるべきではありません。シナリオ作成の段階で、このような判定は可能な限り排除しておく必要があります。どうしてもNPCの判定が必要な時は、GMではなくプレイヤーに判定させることで、ダイス目に対する不満をおさえることが出来ます。


▼助言
 NPCが何らかのヒントを与える役割を担うこともあるでしょうし、一般的な対応を訊かれたら答えるという程度であれば、何も問題はありません。しかし、次の行動をどうすればよいのかといったプレイヤーが判断するべき内容を、NPCに答えさせてはいけません。ゲームにおいて話を進めるのはプレイヤーであり、与えられた課題をクリアするのもプレイヤーです。これを放棄するのであれば、最初からセッションを行う必要はないのです。


○利益

 PCを利用して利益を得ようとしたり、いつもPCに一方的損害を負わせるようなNPCは、プレイヤーがよほどのお人好しでもなければ嫌われるものです。場合によっては、ゲームの中で関わることを拒否されるでしょうし、行き過ぎればGMの自己満足や嫌がらせとして受け止められてしまうこともあります。
 逆に、PCに一方的に利益を与えるだけの存在も、あまり好ましいものとはいえません。1回限りのセッションならばともかく、NPCが無償で何度もPCに利益を与え続けると、それを当たり前と思って努力することを忘れたり、相手を道具扱いするプレイヤーも出てくることでしょう。
 こういったNPCが恒常的に登場すると、プレイヤーとGMの間に無用な緊張や過度の甘えが生じるようになります。これはゲームとしてのTRPGをつまらなくする結果にもなりかねませんし、場合によっては諍いの原因となる可能性もあるものです。ですから、利益に対するNPCの態度については、あまり極端な設定を行うべきではありません。


○注意点

▼演技/描写
 GMは無理にNPCの演技をする必要はありませんし、キャラクターの口調で話す必要もありません。また、重要ではない場面においては、NPCについて過剰な描写を避けるようにしましょう。そうでないと貴重な時間を無駄にすることになります。


▼異性のNPC
 GMとは異なる性のNPCを演じる場合には、無理にその口調を真似しなくても構いません。「彼女は〜と言ったよ」とか「彼は〜と伝えました」など伝聞口調で内容を伝えるだけで十分です。もし、気分が出ないのでどうしても演じるよう頼まれた場合は、ですます調で話すのが最も無難だと思われます。


▼迷い
 NPCの行動を決めかねた場合は、設定を思い出すようにしましょう。特に、性格、社会的立場、価値観といったものは、行動指針を決めるために重要な要素となりますので、シナリオに深く関わるNPCの場合は、こういった背景情報まで設定しておいた方がいでしょう。


▼異常な行動
 NPCは世界の常識を伝えるための手段でもありますし、場の雰囲気にも影響を与える存在です。NPCが異常な行動を取ることは、プレイヤーに世界観に対する誤解を植え付けることになりますし、PCの異常な行動を誘発してしまう危険性もあります。NPCの特徴づけを行うことも大事ですが、程度というものを考えて行わなければなりません。


▼陶酔
 GMはNPCの行動に陶酔してはいけません。NPCはシナリオを進めるための駒であり、PCを活躍させるために存在するのです。NPCについて過剰な描写を行ったり、PC以上に活躍させることは絶対にしないよう注意して下さい。
 同時に、GMはNPCを大事にしすぎてもいけません。危険に飛び込もうとしないPCと同様に、セッションを進める上でNPCを危険にさらす必要があれば、GMは迷わずそれを行わなければならないのです。


先頭へ

 

物語の変化


○展開の修正

 NPCはセッションの進行が停滞したり、予想外の方向へとシナリオが動きそうな場合に、PCを誘導する役目を担うこともあります。この時は直接的な援助を行うばかりではなく、脅しや力ずくでPCを追い立てたり、噂程度の情報を流したり、頻繁に催促して圧力をかけるような役割なども考えられます。


▼情報
 PCに与えられる情報が少なかった場合は、NPCを通じて情報を与えることが出来ます。情報が多すぎたり偽情報に惑わされてセッションが停滞している時にも、情報を整理するための情報を与えたり、情報の真贋を見分けるポイントを教えることが可能です。
 逆に、重要な情報を間違って明かしてしまったり、与える情報が多すぎてすぐに正解にたどり着いてしまった場合にも、NPCを通じて偽情報を与えたり、囮となる情報を追加して全体の難易度を調整することが出来るでしょう。


▼助力
 PCの余力(資源、耐久値など)が不足していたり、相手の力量を見誤っている場合などには、NPCを同行させることでバランスを取ることが出来ます。逆に、NPCが強すぎて簡単に課題が解決できそうな場合は、それと拮抗するような実力のNPCを登場させたり、味方NPCに何らかのアクシデントを発生させるなどして、バランスを取る必要があります。


▼時間の調整
 反復する作業に時間を取られたり、PCが必ずしも行わなくてはならない作業がある場合は、NPCがそれを代行することで時間を短縮することが出来ます。


▼誘導
 誘導役や障害役となるNPCを追加することで、PCが間違った方向へ進むのを防いだり、特定の方向へと誘い込むことが出来ます。NPCが何かしている描写で興味を引いたり、噂を伝える程度でもプレイヤーは何らかの反応を示すでしょう。他にも、目的の人物がいる場所が明らかになれば、別の場所へ行こうとするのを防ぐことが出来ますし、敵の関係者を登場させれば尾行を試みるなどするはずですから、ほぼ確実に意図した方向へとPCを誘うことが可能となります。
 他にも、無言の圧力や噂、あるいはPCの個人的目標といった要素をうまく利用して、プレイヤーの判断を狂わせるやり方もあるでしょう。なお、PCを迷わせたい場合は、離れている場所にいる者の安否や資源の不足など、不安に思う要素を突くのが効果的です。


▼障害の追加
 障害が簡単すぎる場合は、敵役となるNPCを追加したり、新たなイベントを設けることでバランス調整を行う必要があります。また、上司の命令や足手まといの同行など、味方となるNPCが行動制限として影響を及ぼす場合も考えられます。


○役割の変化

 NPCの役割というのは、予め定められたものから変化することもあります。これは主に、シナリオの都合とプレイヤーの判断(PCの行動や態度)の2つが原因となって起こります。
 いずれの場合にせよ、NPCの目的と背景情報に基づく行動方針、そして利用できる資源(金品、人員、装備、時間など)が明確になっていれば、行動の選択に迷うことはないでしょう。NPCは自身が把握できる範囲において情報を得て、それを分析して目の前の事態に対応するはずです。
 ただし、その行動がシナリオで規定している影響範囲を逸脱しないよう、注意深く判断する必要があります。これを守らないと、NPCの暴走によってシナリオが破綻したり、当初の目的を果たせないままシナリオが終了するという事態に陥りかねません。プレイヤーの目的は課題の解決である、ということを常に覚えておいて下さい。


先頭へ

 

ストック


○テンプレート

 GMは1回のシナリオで、複数のNPCを操らなければなりません。しかし、慣れない人物を演じるのは大変ですし、シナリオ毎にNPCを使い捨てにしていては、いずれ性格パターンなども尽きてしまうことでしょう。ですから、シナリオを進める上で重要ではないNPCは、類型化した人物をストックしておき、それを使い回すことで対処するのが普通です。たとえば、世話焼きで口うるさい少女というテンプレート(雛型)を1つ用意しておけば、それはPCの幼なじみとして登場させることも出来ますし、酒場の給仕の娘にも利用できます。


▼利点
 類型化を行うことにより、即興でつくるキャラクターよりも、存在感のある人物を演じることが可能となります。また、テンプレートとしてストックしておいたNPCは、新たなシナリオを行う際にも利用することができます。これらを重要なNPCを設定する時の下敷きとして、そこから設定を膨らませてゆくというやり方もあります。


▼キーワード
 類型化を行う際には、何らかのキーワードと一緒に役割を分類しておきます。この時は、同時にあまりに多くの設定を詰め込みすぎないことが重要となります。


○能力の類型化

 ここでいう能力とは、そのNPCが出来る事柄を意味しています。つまり、能力や技能を設定して置いたNPCを予めパターンとして用意しておけば、咄嗟に準備することで時間を無駄に使わずに済ませたり、データバランスが大幅に崩れるのを防ぐことが出来ます。なお、「NPCデータ」のページにキャラクターデータのサンプルが用意してありますので、これを利用しても構いません。


○役割の類型化

 定番となる役割をテンプレートとするのは、非常によく行われる行為です。気さくな酒場のマスター、口うるさい上司やお目付役、物知りな学者といった存在は、広く利用されているテンプレートでしょう。通常これらは意識して用意することはありませんが、援助者としてだけではなくマイナスの影響も同時に設定しておけば、意外なところで役に立つこともあります。
 たとえば、上司であれば部下となるPCが無茶をしないよう制限できますし、定期的に報告を義務づけておけば行動範囲を狭めることも可能です。また、日頃から世話になっている人間の頼みは断りにくいものですし、お目付役が足を引っ張ることもあるでしょう。これらはシナリオの展開をコントロールする際に効果を発揮します。


○特徴の類型化

 性格や態度についてもテンプレート化しておけば、NPCの特徴づけを行う際に役立つでしょう。この時は、背景情報と特徴をセットで設定しておくことをお奨めします。これによって、いかなる理由があってそのような態度をとるようになったのかが明らかとなるため、行動指針を意識してNPCを動かせるようになります。また、類型化された特徴から、プレイヤーにNPCの役割や立場を理解させることもできるでしょう。


○行動パターンの類型化

 行動パターンをテンプレートとしてストックしておけば、シナリオの展開に応じたNPCを迷わず選び出し、シナリオの軌道修正などに利用することが出来るでしょう。
 たとえば、ドジなNPCはPCの足を引っ張ることが予測されますし、場を混乱させることを期待できます。こういった存在は、用意した障害が簡単すぎた場合のバランス調整や、時間を稼ぐために利用することが可能です。他にも、人の話を聞かないNPCが仕事の斡旋役だったりすれば、導入の際に何かしらの理由をつけて、無理にPCに仕事を押しつけることも考えられるでしょう。
 これが定番のNPCとなれば、彼らはシナリオの展開を規定する役割も担うことになります。しかし、ワンパターンになって飽きられるようではいけませんし、これらの役割が必ず発揮されることを前提にするのも問題です。NPCはGMの駒ではありますが、強引に特定の展開にもってゆくための道具としてはいけませんし、GMの免罪符となってもいけないのです。


 これらのテンプレートを準備した後も、そのままストックしておくだけでは有効に利用できない可能性もあります。そのNPCがどういった場面で使えるのかを考え、出現シーンや展開のパターンなどと組み合わせてメモしておくことで、咄嗟の時にも利用しやすいキャラクターとなります。余裕があればそれらをカード化して、さらに使いやすい形にしておくのもよいでしょう。


先頭へ

 


準備行動物語の変化ストック