住居

概要賃貸住宅


 

概要


 昔は一戸建ての家に家族全員が生活しているのが普通でしたが、人口が増加するにつれてアパートや公営の集合住宅などが多くなってきました。これは城壁で囲われて土地面積が決まっており、建築物が高くつくられるようになった都市で顕著な傾向です。


○構造

▼建築材
 住宅の建築材としてよく使われているのが石材で、近くの石切場から運んできたものを使います。最近では、農地や牧場の開拓とともに森林の伐採が多く行われるようになっており、こうして切られた木材も多く利用されています。特に黄人は木材建築の家を好みます。他にペルソニア大陸のような暑い地域では、日干しレンガが使われるようなことが多いようです。
 新しい建築材として期待されているのは鉄骨で、近年は博覧会などで展示される高層建築物の柱材として利用され初めています。鉄骨で組んだ建物は空間に余裕を持たせて建てることが出来るため、開放的な雰囲気で人気を博しております。また、こういった新しい建物では、以前にはない大きな板ガラスも利用されており、建物内部まで十分に光を届かせることが出来るようになっています。


▼高さ
 普通の都市では3〜5階くらいの高さの建物が普通ですが、大都市の中心部になると6〜7階建ての集合住宅が密集している場合もあります。時間と資金さえ十分にかければ、大教会のような数十mにも及ぶ建築物を建てる技術はありますが、こういった大建築物は完成までに数十年もかかるもので、滅多に存在するものではありません。
 建物の高層化の背景には、科学技術の発達や社会構造の変革によって生活様式が変わり、都市へ人口が集中しているという事情があります。特に工場では人手を欲しており、こういった新しい職を目指して、農家の次男や三男たちが都市に集まるのです。


○都市

▼富裕生活者
 貴族や豪商などは、都市の中心部に大きな屋敷を構えて優雅に生活しています。狭い都市の中で一軒家を構えることは、非常に贅沢なことであり、田舎の広大な土地を持つ貴族よりも、都市の一等地を所有する商人の方がよほど資産を持っている場合もあります。
 しかし、上流階級の一員だからといって、全てが家を所有するとは限らず、貸家や高級な賃貸住宅を借りて住んでいることもあります。また、国家によっては、一般の人々とともに賃貸住宅で生活する貴族も珍しくない場合があるようです。


▼商工業者
 職人としての製造業者や小売業者などは、仕事場の近くに居を構えているのが一般的です。これは、たとえ不況やその他の理由で仕事を失っても、その街にいれば雇用の機会にありつけますし、顔なじみも多く相互扶助が成り立っていたので、街を離れることの方が不利益であったためです。
 こういった人々の住居は、生活空間と仕事場が一緒になったものが殆どです。だいたいの家屋は3階以上の階数を持ち、1階の奥に作業場があり、正面に店舗を構えるようになっています。職人街では家屋が密集しているので、建物の左右の側面には窓がないのが普通です。そのかわりに天窓が設けられており、中央部が吹き抜けとなっているので、採光の面で作業に支障をきたすことはありません。


▼一般労働者
 会社や工場で働く一般労働者は職人とは異なり、自宅と職場が離れていても問題ありません。とはいえ、狭く土地代も高い町中に、一般の労働者が一軒家を構えることも出来ませんので、だいたいは賃貸住宅に1人で住むことが多くなります。家族がいる場合は、ある程度の広さのあるアパートを借りることになりますが、よほど高級なところでなければ部屋数は限られてしまいます。なお、工業化が進んで中心部の環境が悪くなった都市では、中心部を離れて郊外の家屋を借りる人も少なくありません。


○農村

 都心部を離れると一軒家が多くなり、昔ながらの建築がよく見られます。都市と違って建物が独立しているのは、もちろん土地に余裕があることもありますが、火事が起こった時の対策でもあります。これは特に木造家屋が多い農村で顕著な特徴です。なお、あまり大きくない村や中央から遠く離れた集落では、自分の家は自分たちで建てるという風習が一般的で、大工のような職業はあまり存在しません。とはいえ、1人で全ての作業を行うわけではなく、親戚や近隣の人たちと協力して家造りを行うことが多いようです。
 一般に部屋数は3部屋程度ですが、貧しい農民の場合は一部屋だけの小屋のような建物に住んでいることもあります。こういった家庭では一家全員が同じ部屋に住むので、非常に窮屈で住み心地が悪く、また不衛生な環境であることも多いようです。
 ただし、富裕農民の場合は一般の農夫と異なり、非常に広い屋敷で悠々自適の生活を送っています。所有する土地によっては、貴族並みの生活を送っていることもあります。


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賃貸住宅


○状況

 現在の都市では、郊外も含めて一軒家に住むものは全体の4分の1ほどとなり、残りは全て賃貸住宅に住んでいます。1世帯平均は3人で、1つの建物につき5〜8世帯ほどが生活しているのが普通のようです。このうち、家賃が5万エラン以下の住居に住む者が全体の7割以上を占め、5〜10万エランほどの物件が残りの殆どとなります。
 都市に多く住む労働者に関していえば、その殆どが賃貸住宅に住み、親や雇い主と一緒に住んでいる者は、全体のわずか1割ほどにしかなりません。なお、召使いや家庭教師として他人の家に住む者は、女性の方が少し割合が高くなります。


○家探し

 通常は不動産屋を通じて部屋を探すことになります。これ以外にも斡旋人に頼んだり、新聞広告や街頭の張り紙を頼りに探し出し、個人的に大家と交渉することもよく行われています。


○種類

 賃貸住宅といっても幅が広く、地域によって程度には差があります。また、貸し手の素性も様々で、食うに困った貴族が屋敷の一部を客に貸すこともありますし、一般の家庭でも部屋を貸し出して、子供の養育費の足しにするような場合もあります。


▼大家
 たいていのアパートでは大家が一緒に住んでおり、建物全体を管理しています。大家は一般に借り手の身元保証人でもありますが、これは貧民街を除いた話です。貧民街の安アパートでは、大家が住んでいないどころか、借り手の顔さえも知らない場合があります。


▼まかない付き
 大家はまかないを兼ねる場合もあり、年老いた夫婦や未亡人が屋敷を借りて、まかないつきのアパートを営むことも珍しくはありません。アパートによって差はありますが、一般には食事代として1〜3万エランほど余分に支払う必要があります。普通のアパートの場合は2万エランも出せば、朝夕に満足ゆくだけの食事をとることが出来ます。まかないだけを頼む人もおり、食堂として使っている部屋に朝晩訪れて、食事をして出て行くこともあります。


○一般アパート

 大半のアパートは2万〜5万エランの範囲で収まるもので、部屋も1部屋というものが殆どです。部屋には暖炉と1つの窓があるのみというのが殆どで、安いアパートでは暖炉すらついてない場合もあります。アパートによっては、ベッドや椅子、タンスやテーブルなどが備え付けられていることもありますが、大半の場所では自分で家具を揃える必要があります。


○高級アパート

 都市の中心部にある高級アパートに住み、屋敷を持つのと変わらないような生活を送る、非常に裕福な人間も存在します。人によっては1つのフロアーを全て借り切って、召使いを何人も雇っていることもあります。貴族の屋敷を改装して使用していることも多く、賃貸とはいえ家賃が数十万エランもする場所もあるようです。


○安アパート

 家賃が3万エラン以下のアパートには、下層労働者や貧乏学生、あるいは大成する前の芸術家などが住み着いています。こういったアパートでは、トイレや洗面所も専用のものがついてないものが多くなります。月極で契約する安ホテルもあり、普通の部屋で1か月につき1万5千エランほど、屋根裏部屋だと5千エラン程度で住むことが可能です。
 屋根裏部屋は一般のアパートでも安く貸し出されていますが、梯子や急な階段で上り下りしなくてはならず、広さも通常の部屋の半分ほどとなります。窓は小さなものが上の方に1つあるだけで、冬は寒く夏は蒸し暑いという劣悪な環境となります。風通しは悪いのですが、冬は隙間から冷たい風が吹き込み、暖炉のない部屋で毛布にくるまって震えていなければなりません。
 それでも個室はまだよい方で、月に3千エランを切るような貧民街のアパートでは、10人以上が一部屋で雑魚寝する場合もあります。日雇労働者などが住むのは主にこういった場所で、1つのベッドに夫婦と子供が寝ていたり、身を縮めて毛布にくるまって寝るだけの空間しかないような状況となります。
 さらに安い場所もありますが、そういったところは住宅とも呼べないあばら屋で、乞食や犯罪者が浮浪罪をまぬがれるために泊まっており、藁をかぶって寝ることが出来れば、それでも快適といった具合となります。


○混合アパート

 田舎では到底考えられないことですが、都市の中心部では貧乏貴族、富裕商人、学生、労働者といった様々な階層のものが、1つの共同住宅に住んでいることがよくあります。というのは、エレベーターなどの施設もなく上下水道の設備も発達していない時代のことですから、上の階ほど生活に不便となり、水圧が低くて上の階まで水が上がらず、蛇口は1階だけしかないような住宅もあるためです。
 混合住宅は住んでいる階が社会階層をちょうど逆にしたような状態となり、1階には管理人が住み、2〜3階には貴族や富裕商人が、4階には職人や労働者、そして最上階や屋根裏部屋には下層労働者や貧乏な学生などが住むことになります。なお、こういったアパートの場合は、高いといっても10万エランを超えることは少ないようです。


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