変異体


 


○生物と変異

 『変異体』とは大変異現象やその他の変異現象(オカルト効果)によって、元の種とは違った性質をもつことになった生物の総称です。これは用語として使われているだけで、学術的な分類とは無関係のものです。他にも変異種、変異生物などという呼び方があります。
 現在のエルモア地方では、変異体と既存の生物種との区別はまったくされておりません。人間が明らかに異常だと思うもの、常識を遥かに超える特異な能力を持ったもの、あるいは教会に呪われた存在だと認定されたものを、大ざっぱに変異体としてくくっているのです。ですから、実際には変異体であっても、生活の中に当たり前に組み込まれてしまっているものもたくさん存在します。毎日食べているものが変異体であっても、何もおかしいことはないのです。
 変異体として顕著なものには、融合生物と呼ばれるものがあります。これらの中で最も有名なのは、ペトラーシャの北部に住む『竜人』(ドラゴニアン)たちでしょう。彼らはその名の通り、竜と人との中間の形態しており、竜のもつ様々な能力を行使することができます。他にも多足馬と呼ばれる8本足の馬や、植物と動物が融合してできた食肉植物といった存在があります。これらの多くは想像もつかない容貌をしているものが多く、明らかに変異体だと区別できるでしょう。
 他にもわかりやすい変異体といえば、数々の異能力を使う怪物たちでしょう。これらは人為超能力者と同じように、脳や体の一部が魔道回路となってしまったために、術法のような特異能力を身につけることとなったのです。このような能力を持った生物は数えればきりがないほど存在しており、町中で見かけるような身近なものもいます。


○不死者

 容貌で見分けがつく変異体はたくさんいます。足が3本だったり、翼を4枚もっていたり、異常に体が大きかったりと様々です。これらは見かけ通りの異能を持っており、人類にとっては非常に凶悪な存在ですが、最も恐ろしいのは『不死者』と呼ばれるものたちなのです。
 不死者と呼ばれるものにも幾つかの系統があります。大きくは不死族と呼ばれるものと、リビングデッド(生ける屍)と呼ばれる怪物、そして心霊体の3つに分けられます。不死族というのは、強力な再生能力をもつ変異体なのですが、日光が弱点となることがリビングデッドと共通しているため、それらと同様の存在として考えられています。
 リビングデッドは不死族よりも更に奇妙な存在で、死んだ後に霊魂が肉体から遊離せず、擬似的な生命体として活動しているものです。これらは大変異現象以前には存在しなかったもので、その誕生の経緯に霊子核の崩壊が関係していることは明らかなのですが、原理についてはいまだに解明されておりません。このリビングデッドが擬人と異なるのは、ライフ・クリスタルを持たないということです。これは、変異を受けた死体そのものがライフ・クリスタルとして機能するためで、肉体が滅べば霊魂は分離することになります。
 リビングデッドや不死族の大半に共通することは、彼らが瘴気としての属性、すなわち負霊荷に属する霊子をもっていることです。そのため、彼らは通常の癒しの術法を受けつけることはなく、それが教会から不浄のものと認定される原因となっています。


○霊子生命体

 物質の属性を体内に取り込んでしまった生物も存在します。こういった生物は、物質としての属性をもつことから、取り込んだ属性に肉体を変化させることができます。たとえば、土の属性を取り込んだものは、土や石に姿を変え、その中を自由に移動できるといった具合です。このような能力を『同化』と呼んでいます。アーステイル(大地の竜)やエアウイング(風竜)と呼ばれる存在がまさにこれで、前者は大地と繋がっているために肉体を滅ぼすことができず、また、後者は空気に溶け込んでいるかのような透き通った肉体をもっています。
 生物と呼べるかどうかはわかりませんが、霊子生命体の中にも、このように何らかの属性を内に取り込んだものがいます。これが精霊や霊獣と呼ばれるものです。もともと、こういった霊子生命体の素体は、様々な能力を付加するために外部からの影響を受けやすくなっています。また、これらは『仮想空間』と呼ばれる疑似空間に格納されていたのですが、大変異現象の際に空間ごとまとめて変異の影響を受けてしまったため、変異体として出現する割合が非常に高くなってしまいました。なお、この霊子生命体兵器の格納庫となっていた空間を、現在のエルモア地方の人々は精霊界と呼んでいます。


○空想

 変異の産物としてもう1つ述べておかなければならないのが、人間の想像によって生まれた生物たちです。これらは人間の記憶情報として蓄積されていたものですが、大変異現象によって物質化し、生物として活動するに至りました。


▼妖精
 主に妖精界と呼ばれる空間に存在しています。ここには人間の空想がつくりだした幻想的な生き物がたくさん生活しており、まるで夢を見ているかのような光景が広がっています。妖精やケット・シー、あるいは昔の童話にあるコロココ(ウサギとネズミを足したような外見)などという生物が実在し、家の形をした樹が当たり前のようにそこにあるのです。
 彼らは人間の世界にも出没しており、聖歴789年の現在には、妖精の女王の1人が人間の世界で行方不明になっています。そして、妖精界の住人がこちら側にたくさん訪れて、若き女王を捜索しているという事件が起こっています。


▼擬人兵器
 空想による産物ではありませんが、現在いる天使や悪魔といった存在も、人間の想像によって性質や構造を変化させています。かつては擬人兵器と呼ばれていたこれらの生物は、本来はもっと強力な存在でしたが、変異の影響によって以前よりもはるかに弱体化することとなりました。これは人間にとって好都合な結果に思えるかもしれませんが、もともとは人間の命令がなければ戦わないものであり、厄介な敵を増やしただけと言うこともできるでしょう。


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