課題の選択

課題の類型具体的な目的


 

課題の類型


 さて、以上の前提条件をふまえた上で、シナリオの課題を選択することにしましょう。


○基本

 アンバランスド・ワールドにおけるシナリオとは、誰かが抱えている問題であるといえます。これをうまく解決することが、プレイヤーが果たさなければならないゲームの課題となります。なお、与えられた課題をクリアするということは、必ずしも敵が存在するということではありません。たとえば人命救助や物を探し出すことでも構いませんし、仲直りさせることがシナリオの課題かもしれないのです。設定するのは敵ではなく、取り除かなければならない問題とそれを妨げる障害であるということに注意して下さい。


○一般的な課題のパターン

 シナリオの課題を構成する一般的要素には、だいたい以下のようなパターンが挙げられます。GMはこういった要素を単独、もしくは複数組み合わせて使用することで、シナリオの課題を作成してゆきます。


▼調査
 特定対象の調査・探索(情報収集)が目的となるシナリオです。調査対象と内容、および情報入手の手段などについて詳しく設定する必要があります。

・例:情報の入手、身辺捜査、真実の解明(謎解き)、発見、探検・探索、追跡...etc.


▼防護
 指定された対象を警護したり、自分や仲間の身を守ることが目的となるシナリオです。襲撃者と襲われる理由、防護手段について設定する必要があります。

・例:自分の身を守る、誰かを警護する、特定の場所を防御する...etc.


▼競争
 何者かとの優劣を競うシナリオです。競争を行う理由、対抗する対象、勝負の内容・手段を設定する必要があります。

・例:競技、対決、退治、相手の妨害・排除、反乱...etc.


▼調和
 他者との協調、平和関係の維持・構築を行うシナリオです。このタイプのシナリオでは、協調するための理由(目的、問題)、現在の状況、妨害条件、交渉手段、交渉材料、協力者の存在などについて考えなければなりません。

・例:説得、交渉、誤解の解消、協調関係の構築、交易、平和外交...etc.


▼入手
 特定の対象を手に入れることが目的となります。GMは入手対象、理由、前提条件、妨害要素などを設定しておかなければなりません。多くの場合は事前に情報収集(偵察など)を行う必要があります。

・例:探索、発掘、作製、発見、購入、交換(交渉)、奪還、盗難、災害救助、身柄の確保...etc.


▼到達
 PCの移動、もしくは対象の移送によって、どこかに到達することがシナリオの目的となります。GMは移動の理由(目的)、移動手段、障害となる要素、などについて設定しておく必要があります。

・例:移動(旅行・探索)、脱出・逃亡、突破...etc.


○シナリオタイプ

 もし何も思いつかない場合や、どのような内容のシナリオにするか迷っている人は、「パーティション」のページを参照して下さい。ここには幾つかのシナリオの題材と、それに適した舞台などが記述されています。また、これらのページには扱いやすいキャラクターの職業についても触れておりますので、それも合わせてご覧下さい。


▼傾向
 パーティションの中にも、扱いやすい題材とそうでないものが存在します。ただし、これは一般的な傾向であり、PCの立場やプレイヤーの好みなどにも左右されます。
 
◇扱いやすいシナリオタイプ
 これらの題材は目的、解決手段、達成条件が明確であるものが多いため、比較的シナリオが作りやすいタイプといえます。

・タイプ:事件・犯罪、変異現象、ホラー、機械、怪物、冒険、日常、救助
 
◇扱いにくいシナリオタイプ
 プレイヤー、GMともにシステムや世界観に対して、ある程度の熟練を必要とするのが以下のタイプです。人種・民族といった題材は正解を定められない場合が多くなります。また、軍事や政治が絡む問題はシナリオが大規模になりがちですし、PCの解決能力を超えるような題材も多く含まれるでしょう。

・タイプ:幻想、軍事、政治、人種・民族、術法


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具体的な目的


 どのようなタイプの課題を設定するかが決まったら、今度は具体的な目的の内容を決定しなければなりません。いわゆる、ネタづくり、という作業です。これはGMの好みやセッションの準備状況(舞台の選択やキャラクターが事前に出来ているかどうかなど)によっても異なりますが、一般に以下のような発想方法が挙げられます。


○プレイヤーの嗜好

 事前にプレイヤーの好みなどが分かっていれば、それに沿った形のシナリオを用意することが可能です。


○キャラクター

 あらかじめキャラクターが作成されている場合は、それに見合った課題や導入方法(動機など)を選択することが出来ます。
 
・要素:職業、生活形態、社会的立場、行動規範、人生目標、性格、能力(技能、専門分野の有無)、生活圏・行動圏、収入源、住所、他者との関わり...etc.


○設定

 世界設定やデータとして記述されている要素から使えそうな題材を探し、それらを組み合わせることでシナリオを作成します。この時、エルモア地方らしさというものを念頭に置いておけば、よりシステムに合致した楽しみを得られるでしょう。
 
・世界設定
 事件、歴史、人物、国家情勢、怪物、科学、産物、自然条件(気候、地理)、地図、変異現象...etc.

・社会状況
 文明の進歩、意識改革、階級社会、自由への意識、奴隷(差別問題)、権力闘争、民族、宗教...etc.

・科学の進歩
 科学の発展、機械、新発明・珍発明、発掘品(先史文明)...etc.

・特殊な状況
 変異、怪物、開拓、冒険、特異な環境(地形、変異の影響)...etc.


○ルール/データ

 データとして設定されている内容から、具体的な障害を設定することが出来ます。また、特定のルールを使ってみたいなどの欲求から、シナリオ作成のヒントが得られることもあります。
 
・データ:怪物、植物、毒物、装備品、術法、錬金術...etc.


○NPC

 NPCの設定を構築してからシナリオを考えたり、あらかじめシステムで用意されているNPCからシナリオの内容を膨らませてゆくことも出来ます。
 
・設定
 職業、能力、社会的立場、目的、境遇、趣味・嗜好、性格...etc.

・役割
 当事者、依頼者、目的対象、障害、味方...etc.


○場面・状況

 特定の場面、状況を想定してシナリオを構築するやり方です。絵になるシーンやプレイヤーが好みそうなパターン、映画や小説などで見たことのあるシーン、特定の台詞、美しいラストシーンなどを思い描きながらシナリオを構成します。
 ただし、ここで想定するシーンは絶対的なものではないということを、常に心にとどめておいて下さい。GMの自己満足のために、プレイヤーの意思や選択(判断)を無視して、強引に狙った状況に誘導するべきではありません。あくまでも、予想として起こりうる状況という程度にとどめておくべきであり、適用できれば幸運ぐらいに思っておいて下さい。


○現実世界

 現実世界で起こった事件や歴史を参考にするやり方もあります。新聞、雑誌、教科書といった身近な資料や様々な事柄に広く目を向け、シナリオの題材を探してみて下さい。
 ただし、特殊な例や複雑な人間関係など、プレイヤーの理解を超える事例をそのままシナリオに用いるべきではありません。また、こういった事柄はプレイヤーも知っている可能性が高いものですから、何らかのアレンジが必要となるでしょう。なお、参考対象が有名な事件や出来事であれば、逆にプレイヤーがそれを知っているということを利用して、シナリオに謎を仕掛けたり誘導を行うことも可能となります。


○キーワード

 キーワードを羅列してゆき、それを組み合わせることでシナリオを構築してゆく方法もあります。落語の三題噺のようなものと思っていただければわかりやすいでしょう。


○参考/模倣

 映画、小説、漫画などの既存の作品をもとにシナリオを作成するやり方です。そもそも、完全にオリジナルの作品を新たに生み出すのは困難なことであり、殆ど不可能といっても差し支えありません。ですから、既存の物語を下敷きにしてシナリオを作るのは恥ずべきことではないのです。むしろ、どんどん積極的に利用して下さい。
 ただし、当然のことながらストーリーをそのまま流用するだけではいけません。シナリオとして利用できる形にするためには、換骨奪胎の作業が必要となります。課題やイベント、あるいは登場人物や舞台の設定だけを利用しても構いませんし、複数の作品に含まれる諸要素を組み合わせて、新たな課題や状況を設定するような方法もあります。
 この際に注意することは、ベースとなる物語の展開にとらわれてはいけないということです。参考作品はあくまでもアイディアを出すための土台に過ぎません。ストーリーはPCの行動に応じて変化するものなのです。


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