政治/基本要素

概要舞台シナリオその他


 

概要


 革命などに代表される大規模なものから、政治の裏舞台で引き起こされている様々な事件をもとにしたシナリオです。


○目的

 政治シナリオの目的は幅広く、一括りにして述べることは出来ません。実際の政治を擬似的に体験するシナリオもあれば、不正を暴いたり特定の政治活動を妨害するだけのシナリオというものも考えられます。ただ、そもそも政治というのは特定集団の活動を円滑に行い、集団に所属する者の生活を守るために行うものですから、シナリオの課題を解決することは、最終的に地域の住人や自分が守るべき人々の幸せに繋がらなければなりません。
 しかし、政治は複雑な要素に成り立っているものですから、シナリオの達成条件が他者に感謝されることに直接結びついている必要はありません。また、政治の倫理によって為される活動が、必ずしも社会的道徳に沿ったものとは限りません。たとえば、スパイ活動を行うことは誰かを騙すことになりますし、暗殺によって将来的に起こりうる戦争が回避されるかもしれません。政治の世界では、少数を犠牲にしてより多数の人間を救うことを求められることもあるのです。
 このような条件を考えると、政治シナリオにおける目的の設定は非常に難しく、課題目標を達成しても後味の悪い結末に終わる可能性も高いものです。政治シナリオを遊ぶ場合は、GMに柔軟な解釈と高度な判断力が求められるでしょう。そして、プレイヤーもこのような条件を理解した上で、セッションに参加しなければなりません。
 何より重要なのはプレイヤーがゲームの目的を達成することであり、それはPCの果たすべき任務より上位にあることを忘れないで下さい。経験点の評価はプレイヤーの判断に対して行うべきものであることを念頭に入れておけば、システムが提示する理想的な結末にたどり着ける可能性が高くなるはずです。


○楽しみ

 政治シナリオで提供される独特の楽しみというのは、一般的なものと比べて特殊な要素が多く含まれます。これらはプレイヤーの好みによるところが大きいため、事前に理解を得られるかどうかが重要となってきます。地道な調査活動や推理、それから交渉や複雑な人間関係の整理といった作業を好まないプレイヤーも数多くいることを忘れないで下さい。


▼駆け引き
 PCが政治家やそれに準ずる立場である場合、高度な政治的判断に基づいた交渉や会議、あるいは人脈を利用した根回しなど、様々な駆け引きを楽しむことが出来るでしょう。

▼会話
 交渉におけるやり取りや民衆の前での演説など、会話そのものや言葉を駆使して自身の意図を他者に伝える喜びを味わうことが出来ます。ただし、台詞に凝りすぎてもシナリオの進行が滞ることになるので、キャラクターを演じながらの会話は重要な部分だけに限定し、通常の会話は要点を押さえた簡潔な内容にとどめておくべきでしょう。

▼葛藤
 このタイプのシナリオでは、小さな幸せと大きな幸せ、人間的感情と集団の論理など、いずれを取るかの決断を迫られることも多々あるでしょう。こういった人間として重い判断を下す際には、よほど冷血な人間でもなければ必ず葛藤が生じるはずです。キャラクターの立場で物事を考えるのもTRPGでは重要な要素ですが、PCとプレイヤーは別物と割り切って状況を楽しむのも、ゲームが提供する娯楽性の1つです。

▼策略/陰謀
 策略を張り巡らせて敵方との知恵比べをしたり、計画の立案や作戦実行を主導して企画・実行能力を試すのも、政治シナリオで得られる独特の楽しみとなります。

▼長期的展望
 国家の行く末や国際情勢の大局を左右する決断を行うことや、そのことによる葛藤を楽しむことが出来ます。このことは同時に、その後の歴史をつくる楽しみも提供してくれます。


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舞台


○全体

 政治問題はどの国家でも少なからず抱えており、その支配下にある植民地でも同様です。各国家および地域別の諸問題は、国家のパートを参照して下さい。


○地域社会

 政治が絡むシナリオは、ある程度人が集まる場所であれば、どこでも舞台とすることが可能です。国際情勢に絡む大きな問題を取り扱うよりも、小さな題材から手をつけた方がシナリオをつくりやすいかもしれません。そういった意味では、普通のシナリオではあまり細かく設定されない小さな村や、領地といった舞台を中心にセッションを運営してみるのも面白いでしょう。


○中心舞台

 表向きの政治が行われる舞台というのは、前近代的な国家であれば宮廷や城であり、近代国家であれば議会の会議場となります。しかし、政治活動が行われるのは、常にこのような場所に限られるわけではありません。各省庁の建物では様々な政策が立案されますし、国家の機密文書も作成されています。また、町や村などの小規模な議会の運営や、あるいは公園や大通りでの思想家の演説でさえも、立派な政治活動の1つなのです。
 それから、決して表からは見えない政治の裏舞台というものも存在します。貴族街と呼ばれる場所では、日々さまざまな裏取引が行われており、庶民のあずかり知らぬところで、権力者にとって都合のいい法案などが決定されてゆくのです。そういった不正を暴くことを目的とするシナリオも考えることができます。


○宗教

 エルモア地方では宗教機関が非常に強い力をもっており、どのような国家でも宗教と無縁でいることはできません。聖母教会、法教会、マイエル教の3大宗教は政治的な権力をも有する組織であり、一国の将来を左右しかねない存在です。政治家や貴族たちからすれば駆け引きの相手であり、時によっては非常に厄介な政敵といえます。
 特にこの傾向が強いのは法教会を国教とするユークレイ、カスティルーン、ペトラーシャの3国と、それからマイエル教を信奉しているセルセティアです。聖母教会に関しては、ジグラット、メルリィナ、ソファイアといった国々で強い発言力をもっており、いずれも宮廷陰謀劇を絡めたシナリオの舞台とすることができるでしょう。


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シナリオ


○タイプ 

▼政策
 法律の制定や会議を成立させるなど、特定の政策を推進させることを目的としたり、逆にその邪魔をすることがシナリオの課題として扱われます。ただし、あまり細部にこだわったシナリオにすると、参加者に専門的な知識が必要となりますので、構造自体は単純なものにしておくとよいでしょう。

▼選挙
 1つの陣営に加担して支持する候補者を選挙に当選させたり、選挙に絡んだ不正や事件などを扱うシナリオです。治安の悪い地域であれば、暗殺などの事件が絡んでくることもあるでしょう。

▼外交
 外交官などの立場にたって対外政策を進めたり、条約や和平を結ぶことが目的となります。あるいは外交使節として派遣され、現地で何らかの事件に巻き込まれたり、逆に賓客の身を守るようなシナリオも考えられるでしょう。

▼政治運動/革命
 独裁政治に対する武力蜂起や地下活動など、市民主体の政治運動を扱うシナリオです。政治活動の妨害といった小規模なものから国家規模のクーデターまで、さまざまな状況が考えられます。これらは新しい秩序をうち立てたり苦しむ人々を救うなど、明快な喜びを得られやすい題材となります。特に為政者が悪政を敷いている場合は、何も躊躇することなく正義を掲げることが出来るので、プレイヤーとしても迷いなくセッションに臨むことが出来るでしょう。

▼テロ
 圧政に対してテロ活動を行ったり、逆に過激派の妨害活動を未然に防ぐようなシナリオとなります。人種や民族といった問題がこれに関与することもあるでしょう。

▼醜聞
 政治家にとってスキャンダルというのは致命的です。自分が支持する者の評判を守ったり、逆に対抗勢力の悪事を暴いて失脚させるシナリオなどが考えられます。

▼裏舞台/不正
 政治家同士の裏取り引き、不正献金、密偵の活動などを扱うシナリオで、潜入捜査や尾行・捜索といった行動がメインとなるでしょう。不正に関する問題を扱うシナリオでは、帳簿の偽装、脅迫、内部告発、身替わりといったネタを利用することが出来ます。他にも、愛人関係や過去に犯した事件などを調査対象としてもよいでしょう。

▼血脈
 世継ぎ問題や結婚問題などを扱うシナリオで、主に貴族国家を舞台として展開されます。このようなシナリオを作る場合、血統を明らかにする物品や遺言状のサイン、家系図といった小道具を利用することが出来ます。なお、家系図を考える場合、一般に男性側の血筋に目が行きがちですが、女性側の家系から見た血脈を考えてみることもお薦めします。

▼暗殺
 暗殺者から貴族や政治家を守るようなシナリオが一般的ですが、逆に相手を暗殺することが目的である場合もあります。また、単に暗殺を未然に防ぐだけでなく、影武者や変装といったネタを含めたり、逃走中の暗殺者を捕らえて背後関係を明らかにしたり、暗殺事件に含められた謎を解くといったシナリオも考えられるでしょう。

▼亡命
 亡命者の身柄を確保して護送したり、敵国から連れ出すといったネタを扱うシナリオです。亡命希望者が優秀な科学者や内部情報を知っている人物であれば、相手側の妨害も激しくなるでしょうし、下手な対応をすれば第三国をも巻き込む大きな問題に発展する可能性もあります。このようなシナリオでは、亡命者の身柄だけでなく、書類などの物品や亡命者の親族など、確保すべき対象を増やすことでシナリオを複雑にすることが可能となります。

▼領内統治
 小規模な地域を舞台とするシナリオで、為政者となって自領地の平和統治を目標として活動を行うものです。他のタイプのシナリオに比べると、比較的小さな問題を扱うことになるでしょう。貴族がお忍びで領内へと出かけたり、密偵を使って部下の不正を暴くといったイベントが考えられます。


○参加者の理解

▼範囲
 政治に関わるシナリオを行う場合は、GMのみならずプレイヤーの理解も必要となります。特に、どこまでの範囲を実際にシナリオで扱うのかについては、セッションを行う前に伝えておかなければなりません。存在しない可能性を巡って、長々と論議を繰り返しても時間の無駄にしかなりません。
 また、GMは自身がわからない範囲に及ぶシナリオを作成しても、質問に答えられなかったり、シナリオの展開を制御できなくなってしまいます。あまり知識に自信がない場合は、高度な判断が要求される複雑なシナリオに手を出さず、局面の打開を目的としたわかりやすいシナリオを作成するとよいでしょう。


▼背景の理解
 政治シナリオを行うからといって、プレイヤーが政治について特に詳しい必要はありませんし、専門用語を覚えておく必要もありません。プレイヤーとPCの知識は別物ですから、PCの能力の範囲で状況を判断でき、行動の選択によってどのような結果が生じるかが把握できていれば、何も問題なくシナリオに参加することが出来ます。逆にいえば、GMはプレイヤーに高度な知識を求めるシナリオを作成してはいけないということになります。
 ただし、新聞や教科書に載っている程度の常識までは、部分的に忘れているにせよ理解している必要があるでしょう。とはいえ、わかりやすい用語で説明し、あまり複雑な構造のシナリオを組まなければ、さほど問題が起こるとは思えません。


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その他


○判定

 領主や政治家といった為政者の場合は、政治に関係する専門知識は習得しておかなければなりません。同時に、交渉関係の技術が必須となりますので、《駆け引き》の技能レベルや【判断】の能力値を高くしておくとよいでしょう。
 為政者に仕えて任務をこなす役割や、為政者と敵対する側に回る場合は、必ずしも政治について知っている必要はありません。むしろ、潜入技術や情報収集といった技能にポイントを多く割り振っておいた方が、活躍できる可能性が高まります。


○コネクション

 政治の世界では何より、幅広い人脈が非常に重要視されます。支援者の数がそのまま力となる面もありますし、会議の席上でいかに弁舌を駆使しても効果がなく、実際には裏で役人や政治家を通さなければ、意見が全く届かないことも珍しいことではありません。不正問題の捜査を行うにしても人間関係を洗い出し、金の流れを探るようなシナリオ展開となるでしょう。


○物品

 政治シナリオに必須の物品はありませんが、何らかの書類を頻繁に利用するパターンが多くなると思われます。帳簿や預金記録を調査の対象としたり、サインや押印が入った密書といったものを重要な証拠として扱うことがあるでしょう。
 なお、物品といえるかどうかはわかりませんが、地位が高くなるほどより多くの活動資金が必要となることが考えられますので、シナリオの内容によっては《財産》レベルは高めにしておいた方がよいかもしれません。


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概要舞台シナリオその他