基本情報
○全体
A-3地域がウェルナー小州として扱われています。
▼総督
現在はセシル=エレーズ辺境伯が植民地政府を統括しています。▼トリバステ市(州都)
リーベル湾に面するトリバステ市に総督府が置かれています。
○人種・民族
バウンシャ系の赤人を起源とする褐色の肌の民や、ラガン系の黄人、およびこれらの混血であるクルゼイア人が多くを占めます。また、西部にはレグラム系の黒人がおりますし、本国から移住して来た白人やドゥーガル系黄人や、現地に同化したエリスファリア系の白人も存在します。
○歴史
▼A-3
かつてはドゥモア王国が支配していた土地ですが、聖歴95年にラガン帝国に征服されます。その後、聖歴714年にエリスファリアの植民地に代わりますが、聖歴720年代になるとエリスファリアは国内問題の処理に忙しくなり、植民地への影響力が弱まります。その隙を狙って、聖歴736年にはルワール大公国がこの地を奪い、現在も植民地として支配しています。
○産物
平野部では綿花やサトウキビといった商品作物が栽培されています。
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自然・要所
○地勢・気候
ペルソニア北東部域は亜熱帯から熱帯に属しています。この地域は海から吹く風によって湿潤な気候となり、気温、雨量ともに安定しています。夜間を除いて、気温は1年を通じて20℃を下回ることはなく、平均気温は25度近くになります。
○都市
▼トリバステ市/州都(A-3)
ウェルナー小州の州都で、波が穏やかで遠浅のリーベル湾に面しています。貿易港として発展した場所で、都市の中を縦横に走る水路を利用して、大量の荷物の運搬を行なっています。軍事都市である西方のボード・ルワール市とは運河で繋がっており、これを通じて物資の補給を行ないます。
アレンの塔と呼ばれる有名な灯台から、海に向かってペイダル橋が伸びていますが、その先にある小島はカーカバート自治区となっています。
◇ガイデル=イズル
カーカバートの自治区として存在している町で、トリバステ市とペイダル橋で繋がっているルフィサ島の上にあります。これはもともと、ラガン帝国が建設した海上要塞を利用して造られたもので、面積の約半分が人工の島となっています。この場所は全国家の干渉を受けない中立地帯となっているため、多くの黄人たちが逃げ込む場となっています。また、外国商船が停泊することもありますし、他国の植民地政府と交渉を行なう際にも利用されています。◇アトキ
トリバステ市に隣接する軍港町ですが、ここはルワールと友好関係にあるロンデニアの海軍が駐留しています。軍事力の面ではさして優れていない上に、カイテインの侵攻が噂される現状では本国からの支援も期待できないため、ロンデニアの協力がなければこの植民地を維持できない可能性があります。そのため、この治外法権の町を受け入れざるを得ない状況ですが、最近は横柄な態度を取るロンデニア軍人が増えてきており、市民の中には反感を抱く者が増えてきています。
▼ボード・ルワール市
エリスファリアとの境界線近くにある軍事都市で、地面に1つだけ突き出た岩山の周囲につくられています。この岩塊は巨大な1枚岩で出来ており、200mほどの高さになります。その周囲には幾つもの泉が湧き出ており、古代からこの周辺に町や村がつくられてきました。ドゥモア王国が治める時代には頂上に王宮がつくられ、壁面には巨大な聖獣の像が彫られていたのですが、ラガン統治下でこれらの建造物は破壊されてしまい、山砦とそれを取り囲む城塞都市へと姿を変えています。
現在の都市は、ラガン時代につくられた城壁や建物をそのまま利用したもので、砦外壁の補強を行なった他は、あまり外見の変化は見られません。しかし、ここは軍事上において重要な拠点となる都市であるため、都市の外部には新たに防塁や掘が設けられており、エリスファリアに対する防衛対策に注意を払っています。
○要所
▼海賊島(A-3/A-4)
エリスファリア植民地との間には幾つもの小島が浮かんでおり、潮目が複雑になっています。この島々のどこかに海賊のアジトが存在し、付近を航行する商船を狙っています。しかし、エリスファリア軍船が海賊を見逃したという目撃談や、カーカバートの船を襲わないという話があることから、エリスファリアの私掠船だと考えられています。
▼双子海域(A-3/A-4)
海賊島とエリスファリア植民地の間には、2つの大きな渦巻きが発生する海域があります。この渦を発生させる原因となっているのは、塔のように海中から突き出た2本の高い岩で、これは双子岩と呼ばれています。渦巻きがつくり出す流れは複雑にからみ合い、不思議な形の潮流を不規則に発生させるため、船乗りは沖合いを遠回りして航行しなければなりません。これは自然界では発生するはずのない流れだと言われており、周辺地域では変異現象の1種ではないかと考えられています。なお、この付近を半透明の巨大魚が泳いでいる姿を見たという目撃談が、昔から周辺海域の各地に残っており、これが渦を発生させる原因だとする説もあります。
▼海中遺跡群(A-3)
トリバステ市の沖合いには石造建造物が幾つも沈んでおり、少し潜ると円柱や階段などの遺跡が目視できます。これはラガン帝国に征服されたドゥモア王国が造った建物のようで、この地域に伝わる民間伝承やラガン帝国が残した記録から、祭祀場として使われていた施設だと考えられていますが、正確なところはまだわかっておりません。というのは、本来ならば存在するはずの聖獣の巨像や、頂上にあるはずの祭壇が失われているためで、建造途中に島が沈んでしまったという説が有力です。
祭祀場らしき施設の周囲には、窓穴のついた不思議な形の小建築物が幾つも並んでおり、これらは良い魚礁となっています。そのため、周辺ではいつも魚食性の鳥が上空を飛び回り、その下では地元の漁師たちが漁に励んでいます。
▼クテルム湿地(A-3)
ウェルナー小州のちょうど中央辺りにあらわれる湿地で、平原の一部から定期的に水がしみ出し、周辺には幾つもの浅い池が生まれます。この辺りはラシャン川とロナ川の伏流水がちょうどぶつかる地点で、これらの河川が増水した時に揚水現象が起こるものと考えられています。
◇奈落の壷
湿地帯が出来る辺りに時々見られる、小さいものはおよそ直径10cm、大きいもので70〜80cmほどになる縦穴のことです。これはいわゆる底なしの泉になっており、中を覗き込んでも真っ暗で、どこまで先が続いているのかわかりません。増水期には井戸のように水が沸き出し、時には出口から水が噴き上がるほどの勢いとなりますが、それ以外の時期は自然の落とし穴となるため、周辺の住民はなるべく近づかないようにしています。
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植民地統治
○現状
新たに植民地提督となったセシル=エレーズ辺境伯は、5ヶ月ほど前に病死した父から家督を継いだばかりの21歳の青年で、その政治手腕を疑問視する声が挙がっています。植民地内部のみならず本国の貴族の間でも、叔父のスタンリーが実務を担当するべきだと主張する声は少なくありません。
これには幾つか理由があります。1つは隣接する土地に植民地を持つエリスファリアの存在で、植民地の治安状態が悪化すれば、統治能力の欠如を理由に進軍してくる可能性があるためです。そもそもこの土地はエリスファリアから奪ったものであり、彼らには侵攻のための大義名分があるのです。現在、エリスファリアと交戦下にあるわけではありませんが、境界線付近では長く緊張状態が続いています。また、最近になって海賊を装った私掠船と見られる一団に、ルワールやロンデニアの商船が襲われるという事件が頻発していますが、これは新領主のセシルに対して揺さぶりをかけているものと推測されています。
この他に問題となるのは、本国に対してカイテイン帝国が侵攻をかけるという噂が広まっていることで、それが片付かないうちはペルソニアに対する支援を行なうことは出来ません。そのため、ロンデニアの力に頼らざるを得ないのですが、他国の影響力が増すことを懸念する声もあります。新領主が圧力に屈して、ロンデニアの傀儡となる事態も想定されるため、政治経験の浅いセシルの家督相続は不安の種なのです。
ロンデニアよりもさらに問題視されているのは、本国でも重要な案件となっている、ドゥーガル系黄人を中心とする黄人の反乱問題です。ドゥーガル人はこの領内にも暮らしておりますが、多くはラガンからペルソニア領土を奪う戦いに傭兵として参戦し、そのまま植民地の市民として暮らすことになった者たちの子孫です。しかし、彼らも含めた殆どの黄人たちは、ラガンの出自ということもあってあまり良い待遇を受けず、これまで多くの不満を抱えておりました。
そして、聖歴784年に本国でドゥーガル人の独立運動が起こると、この領内での黄人差別もさらに激しくなってゆきます。これに反発する黄人勢力に呼応して、他の有色人種の抵抗運動も起きはじめており、軍隊が出動する騒ぎも何度か発生しています。その背後には、植民地内部の分裂を狙うエリスファリアがいると考えられており、領内に潜伏している密偵の調査も積極的に進められています。
こういった幾つもの問題が重なっている状況において、年若い新領主の誕生が祝福されるわけもなく、彼が置かれている状況は非常に厳しいものとなっています。セシルは自らの実力でその立場を守らなければなりませんが、領内の混乱を収められずにいる現状が、そのまま彼の能力を示しているといっていいでしょう。
○人物
▼セシル=エレーズ(白人/男/21歳)
父テオドアの死によって家督を継いだばかりの、母親ゆずりの繊細な容姿を持つ美貌の青年で、現在は植民地総督としての仕事を学んでいます。いつも落ち着いた物腰で大人びた表情を見せる彼ですが、実際は非常に小心かつ後ろ向きな性格で、物事をじっくりと考えているように見える時は、たいがい硬直して思考停止している最中なのです。祖父の代からエレーズ家に仕えている執事のレイトンと、幼い頃から家庭教師をしている世話役のマイエッタ女史、そしてまだ学生ながら兄より洞察力と判断力に優れた弟ルオンの3人で、どうにか彼を守り立ててゆこうとしております。しかし、家督と財産を狙う叔父一家の存在もあり、正直なところ先行きは非常に不安な状況です。
▼スタンリー=エレーズ(白人/男/52歳)
策謀家として知られる人物で、前領主の死についても疑いをもたれている人物です。深い皺を刻んだ眉間の下では、常に鋭い眼光が周囲に向けて発せられており、何者も寄せつけぬ雰囲気を漂わせています。あまり人好きのする性格ではありませんが、その政治手腕は確かなもので、長年兄のテオドアを支えて政務を補佐してきました。しかし、現在は息子のアレクサンドに家督を継がせることを狙っており、知り合いの貴族たちをつてに、本国に対しても様々な根回し工作を行なっています。
その理由としてまことしやかに囁かれているのが、セシルと弟ルオンの亡母フィオナが、軍務補佐のハビエル=トラヴィスと不義密通していたという噂です。確かに、フィオナとハビエルは結婚前から家族ぐるみの付き合いがありましたし、2人の息子にテオドアの面影はあまり見られません。しかし、セシルが正統な継承者ではないという証拠があるならば、家督相続の際にその事実を明かしているはずであり、実際のところ証拠は何も持っていないのでしょう。
▼ハビエル=トラヴィス(白人/男/45歳)
前領主テオドア=エレーズの代から、軍務補佐役として仕えている貴族軍人です。セシルの本当の父親であるという噂が流れておりますが、その真偽については彼しかわかりません。周辺で流れている噂は既に耳に入れており、その職を辞そうか思案している最中ですが、エリスファリアやスタンリーの不穏な動きを警戒しなければならない現状において、軍の要職から離れることもはばかられ、苦悩しながらも職務を勤め上げています。
▼ユマ=ウェイランズ(白人/女/29歳)
エレーズ家に仕える召し使いとして雇われていますが、その正体はエリスファリアから送られてきたスパイで、エレーズ家の内紛を煽り立てようとしています。セシルの従兄弟のアレクサンドに懐柔された振りもしており、双方を煽るとともに情報を手に入れ、食品の仕入れ業者を装った仲間の密偵に連絡しています。
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