基本情報
○全体
B-3地域がメグリカ小州として扱われています。
▼総督
フィリップ=エストロワ辺境伯が植民地総督を務めています。▼州都
ワーズ山脈の西端近くに位置するアル・ベロール市が州都となります。
○人種・民族
住民の大多数を占めるのは、ペルソニア中部域に住んでいたと言われるレグラム人系の黒人です。この他にも、本国から移民としてやって来た白人、ラガン由来の黄人、およびこれらの混血人が住んでいます。また、少数ですが赤人やその混血人も住んでおり、北部にゆくほどその割合が高くなります。
○歴史
▼B-3
以前は熱帯雨林が生い茂っておりましたが、ラガン帝国に侵略から逃れて来た原住民たちの手によって、聖歴250年頃までに西部域は耕地へと変わりました。その後、聖歴280年代になると、ラガン帝国と手を結んだ東メルレイン連邦国(現ルワール)が、この地に出来た自治都市と交易を行うようになり、その影響力が弱まった聖歴330年代にはソファイア王国との交易で栄えます。
その後120年の間、この土地は事実上ソファイアの支配下にありましたが、自治権を維持した状態にありました。聖歴450年代にソファイアがセルセティアの中継港を奪われると、後ろ盾となる国を失うことになりますが、その後70年間はいずれの国にも侵略されず、カーカバートとの貿易などを通じて栄えることになります。
この状況に変化が生じるのは聖歴528年のことで、ラガンの侵略によって遂にこの一帯は植民地となり、鉱山の開発などが行われるようになりました。その後、聖歴660年代になるとラガンの影響力は少しずつ弱まってゆき、聖歴730年代に入るとソファイアがこの地を奪うことになります。聖歴750年代になると、ワーズ山脈西部で砂金が発見されてゴールドラッシュが到来しますが、大規模な金鉱脈は見つからないままブームは終焉を迎えます。しかし、これがきっかけで集まった人々により、周辺地域の農地開墾や植民都市の拡大が進み、かつてほどの勢いはないものの、現在も少しずつ発展を続けています。
▼ゴールド・ラッシュ
ワーズ山脈の西端付近には目立って大きな川はありませんが、山中にある石灰岩を通って濾過された水が、幾つかの場所から沸き出しています。それらは小河川として麓まで流れてくるのですが、聖歴750年頃にそのうちの1つから砂金が見つかり、周辺はゴールド・ラッシュで沸きかえりました。その後、植民地政府の主導で金鉱の探索が行なわれたのですが、大規模な鉱脈は発見することは出来ませんでした。しかし、現在も金の魔力に取り憑かれ、一攫千金を夢見て山脈奥地へと探険に出る者は後を絶ちません。
ソファイアに金をもたらすことはありませんでしたが、ゴールド・ラッシュは植民地に幾つかの恩恵を与えています。探鉱や採掘のために集まった人々の一部は、その後に西部の大規模農場で働くようになり、植民都市の経済状況を向上させました。また、採掘時に出た土砂で埋め立てられた湿地帯は、後に農地として開墾されておりますし、金ではありませんが奥地で新たな鉄の鉱床も発見されています。
その一方で、植民都市に集まってきた不定労働者やゴロツキの存在により、治安は一時的に大きく悪化しました。そのため、植民地政府は居住制限を厳しくするなどしてこれに対応するのですが、発展した経済を支えるための労働力は必要で、結局は奴隷狩りという形で穴埋めされることになるのです。その結果、B-8地域の西部に住んでいた原住民たちの多くが、植民地農場で強制的に働かされることになり、現在も不幸な境遇に置かれたままとなっています。
○産物
ワーズ山脈からは鉄、銅、鉛、亜鉛などの鉱産物が採掘され、本国へと運ばれてゆきます。バナナやカカオなどの栽培も行なわれておりますが、周辺地域ほど大規模な農場ではなく、鉱業ほど利益を生む産業にはなっておりません。
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自然・要所
○地勢・気候
ペルソニア北中部域は亜熱帯から熱帯に属しており、海から吹く風によって湿潤な気候となります。夜間を除いて、気温は1年を通じて20℃を下回ることはなく、平均気温は25度近くになります。
この地域の西部にはワーズ山脈がそびえており、山地やその麓の斜面が殆どの面積を占めます。海沿いに広がる平野部は、大昔には熱帯雨林で覆われていたのですが、南部から来た黒人たちによって開墾され、現在はバナナやカカオなどの栽培地となっています。
○都市
▼アル・ベロール市/州都(B-3)
ワーズ山脈西端の北西10kmほどに位置する都市で、キノコ傘(日傘島)と呼ばれる丘陵地が3つ集まった場所にあります。都市の中心となるのはベロールの丘と呼ばれる高さ50mほどの丘陵で、緩やかな斜面の上には石造りの城塞が見えます。城はラガン帝国の支配時代に建てられた砦を改装したもので、その横に領主の館と植民地政府の建物が繋がっています。丘陵地はソファイア人が暮らす山の手の街になっており、周囲は石積みの壁と掘で囲まれています。城壁には円形の塔が5つ設けられており、物見の兵が周囲を警戒しています。
丘の麓には下町が広がっており、その中に埋もれるように少し低めのキノコ傘が2つあります。このうちの1つは白人市民の住宅地となっており、細い路地や急勾配の階段が交錯する地域で、密集した家屋群の周辺は低い外壁で覆われています。もう1つは軍の駐留地となっており、頂上部には高い外壁に覆われた砦があります。この砦の外壁とベロールの丘を囲む城壁は、水道橋の役目も兼ねた高いアーチ橋で繋がっており、その下には城の掘と繋がる大きな蓮池がつくられています。池の前には石畳で美しく整備された広場が設けられていて、その周囲は日射しを遮る街路樹と美しい花壇で飾られています。
▼シャイル=ロー市(B-3)
アル・ベロール市の西にあるシェルヴァ海岸に面する街で、遠浅の美しい海にはブレストン環島群が見えます。市街地はハロル川の南西側に広がっており、河口付近には埠頭とマーケットが設けられています。その反対側は軍の駐留地となり、河岸から繋がる入り江は軍港として用いられています。川を挟んで浜辺と岩礁地帯がはっきりと分かれており、白砂の浜辺から繋がる白壁の建物が並んだ市街地は白真珠、軍の黒船が停泊する入り江側は黒真珠と呼ばれています。
河口の先端部には2つの塔が建てられており、それぞれ違う機能を果たしています。市街地側は白真珠の塔と呼ばれ、灯台として港の安全を守っています。塔の中ほどの高さには、ソファイア王女をイメージした美しい女性のレリーフが彫刻されており、毎日多くの船乗りたちを微笑みで見送っています。もう1つの黒真珠の塔は軍港を守る要塞の一部で、防塁と繋がっている物見の塔となります。こちらには王冠を被った威厳あふれる男性の顔が彫られており、厳しい目で外海を睨み付けています。
○要所
▼ブレストン環島群(B-3)
シェルヴァ海岸の沖合いにある12の群島で、環礁のような独特の形状をしていることで有名です。これらの島々は天使の輪とも呼ばれており、幅10〜50mほどの緩やかに彎曲した地面が綺麗な円を描いています。中央には青く澄んだ海の水がたたえられており、引き潮の時には取り残された魚が中を泳ぎ回ります。
この周辺は海底までが浅く、大きな船で島に渡ることは出来ません。そのため、もともとは原住民が小さな集落をつくり、小舟で漁に出る生活を送っておりました。しかし、聖歴520年代にラガンの侵攻が行なわれた際に、原住民の殆どは植民都市に連れてゆかれ、どうにか逃げのびた人々も別の土地に移り住むことになりました。現在もこの地に住み着いている者はおりませんが、植民地総督や貴族たちの別荘が幾つか置かれており、リゾートのために一時的に利用されています。
▼キノコ傘/日傘島(B-3)
ワーズ山脈とパゴット平野の間で見られる独特の地形で、高さ20〜50mほどの円錐形の丘が200以上も点在しています。上空から見ると美しい円を描いており、人工物ではないかと考える者もいますが、この周辺はもともと熱帯雨林だった場所であり、地面を掘ってみても単なる土の山でしかありません。多くの丘陵の上には熱帯雨林や草が生えており、開拓されてしまった平野の中に取り残された姿は、まるで陸に浮かぶ島のように見えます。昔は精霊を信仰する部族が暮らしていたようで、この丘を祭祀場や墓地として利用していた痕跡があり、出土品や人骨が出て来る場合があります。
▼ハロル川(B-3)
ワーズ山脈の西端からパゴット平野に注ぐ小河川で、下流域にはシャイル=ロー市があります。
▼ゴールド・リバー(B-3)
ワーズ山脈の西を流れる小河川のことで、聖歴750年頃に砂金が見つかったことから、このように呼ばれています。現在でもわずかに砂金が取れるため、懸命に金を探す者たちの姿を見かけることもあります。
▼ベルソナヴァル遺跡/仮面遺跡(B-3)
ワーズ山脈の南西の麓で発見された、おそらくシュパイト=ダハグ氏族同盟によってつくられた石室です。ここは仮面遺跡とも呼ばれているように、3000枚以上の仮面が発見された非常に珍しい場所です。材質や細工は非常に多様で、現在では民芸品として売られているような木製の仮面や、全体に文字が彫り込まれた石仮面もあれば、呪装仮面と思われるものも大量に飾られておりました。また、金属製の品も多数出土しており、青銅、鉄、銀、黄金などの精緻な彫刻が施された仮面なども存在したようです。
しかし、探索を行なったのがラガン帝国の植民地軍であったため、このうちの一部は本国に送られてしまい、残りの殆どはエルモア地方の国家による侵略の際に行方不明となっています。また、わずかに残った品のうち、半数はソファイア王に献上されているため、現在この植民地に存在するのはわずか十数枚しかありません。
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人物・組織
○組織・集団
▼メグリカ楽友協会
辺境伯によって設立された組織で、本国から招聘された音楽家も一員となっています。彼らの中には現地の音楽に深く興味を示す者がおり、余暇の活動として植民地内を回って民族音楽を譜面に記したり、その曲に関連する伝承などを記録に残しています。民俗学の研究者たちはそれらの内容には興味を示しており、個人的に資金を提供している者もいるようです。
▼火布組
近年、シャイル=ロー市の下町に現われるようになった、現地白人のチンピラ集団です。彼らは裕福な商人の子弟たちで、赤を基調とした派手な服装に身を包み、周囲に迷惑をかけるような悪さばかりしています。特に現地民に対する行為は目に余るほどで、非道な振る舞いを続ける彼らには、白人たちでさえ眉をひそめています。
▼牛角族
ウシをトーテム(守護聖獣)として崇めている部族で、男性は髪を伸ばしてウシの角のように太くまとめる風習があります。
○人物
▼フィリップ=エストロワ辺境伯(白人/男/32歳)
よく日焼けした鍛えられた肉体を持ち、初夏の風のように爽やかで紳士的な振る舞いをする、好青年という形容が相応しい男性です。民衆の間でも非常に人気が高く、社交界の娘たちは彼の心を掴もうと躍起になっています。しかし、近しい者にしか知られていないことですが、彼は学問・政治といった分野には特に秀でておらず、かといって愚かというほどでもない実に凡百な領主に過ぎません。実際に主な政務を担当していたのは、側近であったエルマン=レンフォードなのですが、彼はつい1年ほど前に不慮の事故で死亡しています。そのため、現在は領主自ら政務を取り仕切っており、とりあえずは問題なく統治が行なわれておりますが、側近たちは有事の判断を不安視しており、しばらくは何事も起こらないよう心の中で強く願っています。
▼ジュディス=レンフォード(白人/女/32歳)
辺境伯との恋仲が噂されている未亡人で、領主であるフィリップ=エストロワ辺境伯の側近であった、エルマン=レンフォードの妻だった女性です。3人は高校時代の学友でもあり、その頃にもフィリップと恋仲であるとの噂があったようです。以前は表情豊かな明るい女性だったのですが、夫の死後はずっと塞ぎ込んでしまい、仮面をつけたように無表情のままです。わずかでも笑顔を見せるのは、友人であるフィリップが訪ねてきた時ばかりで、普段は喪服のまま部屋に閉じこもっています。
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