この学派の研究によって得られた成果というのは、他の分野に比べると非常にささやかなものです。また、完全な形の生命体を術法以外の手段で生み出せた記録は1つとしてありません。
▼錬金小人(ホムンクルス)
秘教生命とも呼ばれる魔道生物で、錬金系の術法によって生み出されます。これは初期状態では同一の能力しか持たないのですが、人間の血を主成分とする薬液で培養することで、次段階の生物へと変化を遂げることができます。専用の硝子培養槽で育成を行うので、硝子のかけらと呼ばれることもあります。
錬金小人に与えられる変化は能力だけでなく、薬液の成分によって形態の変化や特殊能力の獲得が行われることもあります。しかし、多くの場合は3つ以上の変化が同時に起こることは少なく、殆どの場合は1種類の変化で終わることになります。また、1度変化を加えた錬金小人に、さらに薬液を加えても変化が起こることはないようです。
しかし、ここ3年の間に生み出された、白色小人(アルビノ・ホムンクルス)と呼ばれるアルビノ(白子)の錬金小人は、有機連結金属を内部に取り込むことで、次段階への変化を遂げることが明らかになりました。特に頭脳の明晰さにおいては人間を凌駕するといわれており、超知性体への変化が期待されています。
▼エヴィラモニデスの萌芽筒
生命芽と呼ばれる細胞群を生み出すための装置で、培養作業には約1か月ほどの時間がかかります。電気を用いた多段階の過程を経て、既存生物の細胞と無機成分を反応させ、核のない特殊な細胞を生成します。この細胞群はいかなる細胞性生物とも簡単に親和し、接触した細胞の核の情報を経て分化を行います。これは主に治癒や器官の創造などに用います。なお、無核状態での寿命は非常に短く、せいぜい1日ほどで死滅してしまうことになるので、多くの場合は凍結して不活性状態のまま保存しておくことになります。
▼ウェルトマイズの延命溶液
個体の細胞を抽出して、髑髏血晶と呼ばれる赤水晶の器で1週間ほど培養し、その細胞を再び個体の血液内に戻すことで、その生物の平均余命の約1/10の時間だけ延命することが可能となります。しかし、これは繰り返し投与しても全く効果がなく、個体につき1度だけしか効果を発揮することがありません。また、髑髏血晶そのものも1度の使用で効果を失ってしまいます。
なお、髑髏血晶とは生物の脳をすりつぶして得た抽出液を、細胞結晶剤と呼ばれる結晶剤と混合させることによって作製されるもので、水晶のように透き通った固い物質です。これには生命素が含まれているのだと考えられていますが、実際のところは明らかにされていません。なお、延命対象と髑髏血晶の素材となる生物は、同種のものでなければ効果を発揮しません。
▼ヴィエルアランの仮眠水
生命体を仮死状態にするために用いる液体で、トライホーンという生物の組織液を用いて生成されるものです。これはリュムフェルディエラの心臓石と呼ばれる人工心臓とセットで用いられます。心臓石は生物秘学の技術を用いて改造した腔腸動物で、その外見からこのように呼ばれています。
実際に延命操作を行う場合は、リュムフェルディエラの心臓石を仮死にする対象の血管に連結して、両者を仮眠水を添加した水槽内に入れます。心臓石は外部から取り込んだ仮眠水を連結した生物体内で循環させ、生命維持を行う機能を持ちます。この時、外部ポンプによって生命水に酸素を送り込むと同時に、フィルターで老廃物を除去しなければなりません。また、仮眠水は定期的に新しいものと交換する必要があります。
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