ペルソニア/古代史

概要始祖歴史


 

概要


○始原ペルソニア(高度原始文明)

 かつてペルソニア南部では巨石文明が栄え、この地で呪装仮面の技術が誕生しました。この文明を作り上げたのは、現在エルモア地方の北部に住んでいるレプラッド系の赤人で、レグラム系やアデン系の黒人を支配して一大文明圏を築き上げました。これはエルモア地方の歴史区分では、空白期と呼ばれる時代のことです。
 この文明は500年以上の長期に渡って繁栄したようですが、常識で考えるよりも遥かに急激に発展し、そして驚くほど急速に衰退しました。しかし、彼らの文化はペルソニア全土に大きな影響を及ぼしています。


▼呼び名
 ペルソニアの古い文明やその支配時代を指す言葉には、古代ペルソニア文明や旧王朝時代などの幾つかの区分が存在します。これに対して、空白期にペルソニア南部に存在していた巨石文明のことを、『始原ペルソニア(文明)』あるいは『高度始原文明』と呼んで区別します。ペルソニア全土に残る伝承では、その文化圏を支配したという巨大国家を、『プシュケシュ王国』(始原王国、始まりの祖国、始祖の王国の意)という名で伝えています。エルモア地方の研究者もこの共通の呼び名を重く受け止めており、発掘された古代遺跡や文化的遷移の様子からも、ペルソニア文明の起源となる国家が、実際に南部奥地にあったものと考えられています。


○文化遺産

▼言語
 現在のペルソニア語は、プシュケシュ王国を支配していた赤人の言語が起源となります。この古代ペルソニア語(プシュケシュ語)は現在用いられているペルソニア語に近い言語で、赤人語の方はエルモア地方の影響を受けて、オリジナルより大きく変化しています。
 この系統の言語が現在も用いられているのは、王国崩壊後に各地へ散った黒人たちが、それまでと同じ言語を使い続けたことによります。あまり分化せずに継承されていったのは、異なる部族間でも通じる共通語として機能するためです。ただし、移住後に孤立して暮らしてきた部族の場合は、原型からは相当離れたペルソニア語系の言語を話しますし、もともと始原ペルソニアとは無関係の集団は、全く独自の言語を用いています。
 レプラッド系赤人の使う赤人語は、エルモア共通語とペルソニア語の中間的な言語です。これはエルモア北方へ渡った赤人の使う古代ペルソニア語が、エルモア地方の言語の影響を受けて変化したもので、基本的にエルモア地方に住む赤人部族しか用いておりません。


▼信仰
 聖獣信仰も始原ペルソニアから受け継いだもので、この頃から神として聖なる獣が崇められておりました。また、砂漠の民に残る不死信仰もこの文化の影響を受けています。


▼仮面・装飾
 プシュケシュ王国の痕跡を示すものとしては、ペルソニア全土に広がる仮面文化があります。また、これに関連して化粧、刺青といった装飾も、各地に広まってゆきました。


▼仮面文字
 仮面文字はプシュケシュ王国で使用されていた神聖語の一部で、現在と同じく呪装仮面の作製に用いられておりました。ペルソニアの呪術的な印や、仮面系・人形系といった術法で使う紋様も、この言語から派生したものです。


▼巨石文化
 王国崩壊後に周辺地域へと移り住んだ人々の中には、それまで培った建築技術や金属の製錬技術を用いて、新しく国家を建てたり巨石建造物を建築した人々がいます。その多くはレプラッド系の赤人で、高地や山岳地帯にその痕跡が残されています。


▼術法
 呪石系の術法や、そこから派生した宝珠系はこの文明が発祥となります。また、仮面系や化粧系も呪装仮面を起源とする術法技術ですし、獣化系術法の成立にも関係しています。


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始祖


○始祖神

 呪装仮面の技術を開発したのは赤人たちではなく、『始祖神』と呼ばれる者たちです。伝承によれば彼らは大断崖の上からやってきた神であり、半人半獣の姿を持つ巨人でした。呪装仮面のみならず、巨石建造物の建設や鉄器の開発、あるいは治水・水道技術など、プシュケシュ文明を繁栄させた多くの知識や技術は、始祖神が人々に授けたものだと伝えられています。
 この始祖神に謁見できたのは、神託の氏族と呼ばれる王族たちだけで、どのような存在なのかはわかっておりません。ただ、壁画などには牡牛の角を持つ神(大角の始祖)、獅子の鬣をなびかせる神(鬣の始祖)、蛇の牙と鱗を持つ神(鱗の始祖)、そして背中に純白の翼を背負う神(翼の始祖)の、4体の異形の姿が描かれており、その全ての者が純白の仮面を被っています。


▼仮面
 始祖神の仮面が霊的な力を発揮したのは、彼らが最期を迎える瞬間の1度きりで、具体的などのような効果を持っていたのかは伝えられておりません。もちろん、仮面自体も行方不明のままとなっています。


▼正体
 今となっては始祖神の正体を解き明かすことは不可能です。しかし、人間よりも強い力と高い知能を備えた異形の存在として考えられるのは、変異現象で半人半獣の姿を得た人間や、科学魔道時代からの生き残りだったのではないかと推測されます。


○神託の氏族

 プシュケシュ王国の王族である赤人の一族のことを言います。彼らはこの王国を建てる頃から存在した有力部族の末裔で、彼らの祖先は始祖神の力を借りて周辺の変異体を掃討し、この地に平和をもたらしたと伝えられています。
 その後、彼らは政治を司る行政の長であるとともに、始祖神に使える聖職者としての役目を負い、代々支配者として君臨し続けました。そして、神々の導きに従って王国を運営し、一大文明を築き上げるのです。


▼神聖王
 王国の支配者であると同時に、神に仕える聖職者の長でもあります。この地位は一族の長が代々継承し、神の代理人として王国を治めてきました。

▼神妃(姫巫女)
 神の代理人である4人の巫女で、神聖王とともに始祖神からの神託を授かる立場にあります。また、始祖神の妻として身の回りの世話をする係であったとも伝えられています。なお、4名と定められているのは、最初に神に仕えた王の娘が4姉妹であったためです。

▼神託
 始祖神の神託を受けることが出来るのは、この氏族だけに与えられた神聖な職務となります。神と直接会話することが出来たのは、神聖王と神妃たちだけでした。

▼黄金の仮面
 神託の氏族が神事の際に身につける仮面で、純金でつくられています。これは儀式用であり、始祖神に謁見したり民衆に神託を伝える際には、必ずこの仮面を被ります。技術の粋を凝らした過剰な装飾が施されておりますが、呪装仮面としての機能を備えていたのかは定かではありません。

▼天導儀式
 始祖神から天導仮面というものを与えられる場合があります。これは選ばれた者に授けられる特殊なもので、額に透明な結晶石が埋め込まれた純銀製の無貌の仮面です。
 この仮面は神の叡智を伝えるためのもので、選ばれし者にこれを被せることで、呪装仮面や石兵の作製技術などを、誤解なく完璧に習得させることが出来ます。この伝承過程のことを、この文明の人々は天導儀式と呼んでいました。


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歴史


○支配と発展

 大断崖直下にある山地に形成された小さな集落は、始祖神の導きを得てプシュケシュ王国へと発展を遂げます。周辺の地域には大変異現象の影響から逃れ、比較的被害の少ない土地に住み着いていた黒人部族がおりましたが、王国は仮面の技術や術法、あるいは鉄器といったものを駆使して、技術に劣る現地部族を瞬く間に平定します。そして、彼らを奴隷として版図を広げ、最終的にペルソニアの南部一帯を支配するに至りました。


○崩壊

 死ぬまで働く労働者や命なき屈強な石兵士を従えた王国は、長く繁栄を極めました。その期間はおよそ500年ほどのことになりますが、ある時期を境に急に衰退をはじめるのです。


▼魔の影
 崩壊の原因は高位の、おそらく魔将以上のクラスの悪魔の手によるものです。悪魔は始祖神の1柱である翼の始祖を殺して入れ替わった後、鬣の始祖をそそのかして4柱の神を2つの勢力に分裂させました。そして、奴隷たちを主導して反乱を起こして、多くの民衆を率いて王国を離れ、新たな指導者を指名してナヴィル王国を築き上げると、プシュケシュ王国との戦いを開始したのです。
 ナヴィル王国の大半を占めていたのは、奴隷として使役されていたアデン系の黒人たちでした。彼らは始祖神に授けられた仮面の技術を用いて、王国と激しい戦闘を繰り広げます。それまで数百年に渡って支配され続けてきた黒人たちは、激しい恨みと固い結束力を武器に戦い続け、両王国は壊滅的な被害を受けることになります。
 そこまで至ってもなお戦いを止めなかったのは、それぞれの神の意向によるものです。民衆は神の言葉に従い、自分たちこそが選ばれし民だと主張し、熱狂的に戦いにのめり込んでいったのです。しかし、それこそが悪魔の策略でした、悪魔が入れ替わっていたのは離反した翼の始祖だけでなく、プシュケシュを導く2柱の神の中にも、もう1名の裏切り者が紛れ込んでいたのです。


▼最終決戦
 崩壊を迎えるその日、長く続いた大戦に決着をつけるべく、両軍は全ての軍勢を揃えて相見えました。しかし、そこで起こった悲劇は、誰もが予想もし得ないことでした。
 ちょうど戦場の中央、死力を尽くして戦う人々の前に、突如地中から巨大な異形の怪物が出現します。そして、いずれの軍勢に与する者にも分け隔てなく襲いかかり、砂と一緒に大勢の人々を文字通り飲み込んでゆきました。この化け物の正体は詳しくわかっておりませんが、もしかしたら魔神と呼ばれる存在であったのかもしれません。あるいは伝承に語られるその姿や行動から推測すると、冒涜の王と呼ばれる怪物である可能性もあります。
 混乱に陥った両軍は始祖神に助けを求めます。その声に応えて、始祖神は民衆の前に姿をあらわし、異形のものと対峙することになりました。この瞬間が訪れるのを、悪魔たちはどれほど待ちわびていたことでしょう。最後の希望である神の正体が明かされるその時を。人々が絶望のどん底に突き落とされ、双眸に諦めだけが映される瞬間を。その至上の喜びを。
 翼の始祖に化けた悪魔は、この危機に際してプシュケシュの神に対して共闘を呼びかけます。それに2柱の神が応じ、再び神々が力を合わせようとした姿に、民衆は心からの祈りを捧げ、歓喜の声を張り上げたに違いありません。しかし、彼らの望む結末は決して訪れませんでした。次の瞬間、残された鬣の始祖と大角の始祖は、神を装った悪魔たちに背後から襲われ、無惨に引き裂かれてしまいます。そして悪魔はおぞましい異形の姿を人々の前に晒し、彼らの計画の全貌を高らかに知らしめたのです。
 その後に繰り広げられた凄惨な光景については、詳しく語る必要はないでしょう。しかし、悪魔が人間たちの殲滅を目論んだのではないことだけは、記しておく必要があります。というのは、彼らの目的は人々を長く苦しめることであり、死は安らぎを与えることになるからです。
 高位の悪魔の指示に従い、雑魔たちは巨大な異形の怪物に追い立てられた兵たちの前に立ち塞がり、傷ついた人々をさらに酷くいたぶりました。しかし、彼らは人々を殺し尽くすことはしませんでした。目を潰し、手足を切り落とし、耳や鼻をそぎ落とし、頭の皮を剥ぎ、体に爪を突き立てて肉を抉り取っても、それでも殺すことだけはしませんでした。


▼離散〜復興
 悪魔の誤算は、倒したと思っていた始祖神がわずかな力を残しており、異形の怪物と相撃ちとなる形で大きな打撃を与えたことでした。しかし、それもわずかな人々を救うにとどまっただけで、結局悪魔たちの目論みは殆ど達成されてしまったのです。そして戦場には大勢の兵と神の死だけが残り、逃げ延びた人々の心には絶対の恐怖が刻まれました。
 その後に広がる未来は、絶望の影に覆い尽くされていました。腕や足や目や、あるいは正常な心を失った働き盛りの男たちを連れて逃亡し、その果てに広がる荒涼とした未開の大地を前にした時、人々は何を思ったことでしょう。しかし、それでも彼らは足を止めず、生きるための戦いを続けることを選びました。
 2つの王国の人々は各地に分散し、復興の道を歩み始めます。中には略奪によって生活の糧を得る者もおりましたし、神を失った絶望から自ら死を選んだ殉教者も多くいました。しかし、わずかな希望にすがって田畑を耕し続けた人々や、森の恵みにすがりながら密林の奥地で細々と暮らす部族、あるいは砂の中で耐え忍びながら町を興し、互いに支え合って生き延びてきた者たちが、現在ペルソニアで生きる人々の礎となり、その不屈の魂は今も多くの命の中に生き続けています。


○伝承

 始祖神についてや悪魔の奸計に関する伝承は各地に残されています。しかし、長い時を経た現在では事実は正確に伝わっておらず、断片的な情報を元に再構成された物語として語り継がれています。それらは部族の語り部や放浪の詩人によって受け継がれていたり、旧王朝の遺跡に碑文や壁画として残されている場合もあります。


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概要始祖歴史