職業/その他

移動・運搬ゴミ・清掃商売芸人その他


 

移動・運搬


▼運搬夫
 運搬夫の職場は多岐に渡ります。馬車の荷役夫として働くこともあれば、ホテルで客の荷物を運搬することもあります。それから駅の荷物運びや港での貨物の積みおろし、商店の配達夫などを務めるのも運搬夫の仕事です。


▼メッセンジャー(使者/伝令人)
 郵便は基本的に町の外との通信であり、町中では主にメッセンジャーに伝言を頼むことになります。ちょっとした用事であれば、そこらにいる子供に小遣い程度のお金を与えて、伝言を頼むことができるでしょう。これを商売にする都市浮浪児も存在します。彼らはよく盗みなどを行うことがありますが、こういった伝令をいい加減に行うことはまずありません。自ら信用を失うことをして、ただでさえ少ない仕事をさらに減らす意味はないからです。


▼配達人
 乗り合い馬車の業務の一貫として、特定区間での荷物の運搬を行なっている場合もあります。馬車の発着場から個人に配達を行なうのが配達人の仕事となります。


▼渡し人
 河川の渡し守のことで、人を船や籠に乗せて川を渡ります。増水して危険な場合は、渡川を断ることもあります。


▼運び屋
 主に闇稼業の人間が行なうものですが、金銭に困っている者を雇って、非合法の物品を届けさせる場合もあります。


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ゴミ・清掃


○清掃人

▼路上清掃夫
 特定の店舗や業者、あるいは自治体から雇われて道を清掃する役目となります。清掃だけでなく、ドアボーイやちょっとした運搬夫を兼ねていることも多いようです。


▼煙突掃除夫
 この時代では暖房器具といえば暖炉ですし、料理もかまどを使って行われます。そして煙突に煤がたまって煙が抜けなくなれば、当然のことながら生活に支障をきたします。これを解消するのが煙突掃除夫という職業で、小さな子供たちがなるものと決まっています。狭い煙突が作業場なのですから、小柄で身軽でなければならないのです。普通は農村から売られてくる子供や、都市浮浪児などを拾ってきて煙突掃除夫に仕立てます。子供は徒弟として親方のもとに住み込むので、食事は出ますが給料はありません。
 狭い場所での煤払いは本当に辛い仕事で、火傷や炎症は当たり前ですし、ちょっと気を抜くと煙突から落ちて大怪我をしてしまうこともあります。また、たいていの子供たちは発育不全となりますし、煤のために喘息や肺病になることも多い職業です。


▼煤払い
 工場機械や乗り物の蒸気機関についた煤を掃除する者です。特に狭い場所で働くわけではありませんので、大人でもなることができます。蒸気機関の火夫として石炭をくべたり、その他の掃除夫を兼ねたりもします。なお、蒸気機関の内部を掃除する場合は、機関掃除工という専門の知識を持った人間が行わなければなりません。ただし、機関掃除工の手伝いを行うことはよくあり、その作業を効率的に行うために煤払いが存在するのだともいえます。煙突掃除夫と同様に、肺病を患うことの多い職業です。


▼どぶさらい
 下水道や側溝などの清掃を専門に行う職業で、基本的に大きな街や都市にしか存在しません。下水に住み着く浮浪者と顔見知りであることも多く、そういった筋(乞食組合など)から情報を集めることもできるでしょう。


○収集

▼ゴミ処理人夫
 業者や自治体に雇われてゴミ処理を行う役目で、朝にベルを鳴らしながら街を歩いて、家庭から出るゴミを集めて歩きます。処理場まで運ぶ人夫は男性が多いのですが、石炭殻や灰などの再利用できる資源を分別する役目は、女性や子供たちでも無理なく働くことができ、比較的割のよい賃金をもらうことができます。


▼肥料屋
 排泄物を買い上げ、それを肥料として農村に売り歩く仕事です。下水などが整備されていない地区には必ず存在する職業で、貴族の屋敷や宮廷ですら彼らの世話にならないわけにはゆきません。しかし、最近の都市では下水も整備されるようになっており、徐々に少なくなっている職業です。


▼ゴミ問屋
 ゴミ処理人夫から灰、石炭殻、廃材などを買い取って、加工などして販売する職業です。石炭殻は農耕に利用することもありますが、その大部分は粘土と混ぜて煉瓦の材料とします。灰は染め物、洗濯、金属鍛練、絹の光沢出しなどに用いるため、それぞれの業者に売り捌きます。また、集めたゴミも建築材として売却できるために、元手をかけずに儲けを出すことが出来る職業となります。


▼屑鉄商人
 屑鉄を買い集めて、鉄鋼業者などに売る仕事です。都市浮浪児がゴミから釘などを集めてくる場合もあれば、子供たちが小遣い稼ぎにこれを利用することもあります。


○その他

▼ネズミ捕り
 ネズミに代表される非衛生的な小動物を捕獲することを仕事とします。罠を仕掛けたり、薬を散布して駆除を行います。疫病が流行した時などには重宝されますが、それで感謝されるということはありません。


▼洗濯夫
 町中で店を構える洗濯屋ではなく、川で汚れものを洗う職業です。洗濯屋から毎日大量の洗濯物が渡され、決められた時間のうちに洗ってまた洗濯屋に渡さなければなりません。大きな河川のある街では必ずほったて小屋のような形の船を見ることができ、そこでは必ず洗濯夫が仕事をしています。


▼拾い屋
 下水溝に流れてくる物品や貴金属を拾い集める仕事です。浮浪者や下水の清掃夫が行うことが多いようですが、縄張りがあるため余所者が勝手にこれを行おうとすると、袋叩きに合うこともあります。


▼川さらい
 川べりの泥州に埋まっている石炭や金属を拾い集める仕事です。釘やガラス片を踏んで怪我をすることも多く、1日働いて500エランにも満たないことが殆であるため、あまり効率のよくない作業となります。しかし、技術がいらないために幼い子供や老人でも行うことが可能で、大きな都市では比較的よく見かける光景です。


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商売


○通常

▼小店舗
 食料品店、パン屋、肉屋、酒店、雑貨屋、書店、質屋、洋品店、宝飾品店といった一般的なものから、かつら屋、古道具屋、古書店、楽譜屋など様々な店鋪があります。


○移動商売

▼行商人
 食料、水、油、薬、衣類など、さまざまな品を売る者がいます。水売りは昔からよく見かける商売で、大きな都市では数百人ほどが水を売り歩いておりました。しかし、水道も普及している現在では、さすがに都市の中心部では見かけることが少なくなっています。


▼貸本屋
 行商人のように本を背負って個人宅を訪ねて本を貸し、期日が来たら本を回収しに訪れます。貸本屋は自分の責任で本を選んで、それを口のうまさで相手に読む気にさせる商売ですから、口下手ではつとまりません。なお、借り手が少ない本は安く売り捌く場合があります。


▼売り子
 マッチ売りや花売りなど、街を徘徊して物を売って歩く役目です。幼い少女や老婆が行うことが多く、裕福な人間の同情を引いて商売を行います。


▼新聞売り
 特定の新聞社に雇われて路上で新聞を売る職業で、子供が売り子をしている場合も少なくありません。彼らは小脇に新聞の束を抱えて、興味を引くタイトルを大声で叫びながら新聞を売り歩きます。


○路上商売

▼露店商
 食料品、屋台料理、雑貨、花、古道具、本、アクセサリーなど、さまざまな種類の露店商が存在します。


▼靴磨き
 人々の靴を磨いて小銭を稼ぎます。この時代は馬糞や泥で靴が汚れることが多いことや、仕事をはじめるのに元手がほとんどいらないことなどから、靴磨きが大勢あらわれるには十分な条件が揃っています。なにしろ、必要な道具は足台、布切れ、ブラシ、そして煤を油や蝋に混ぜて作った黒い靴墨があればよく、誰でも真似をすることが出来ます。ちょっとした町なら、往来で必ず見かける職業の1つでしょう。なお、密偵などが靴磨きに変装して情報を集めることもあるようです。


▼呼び子
 特定の店舗やサーカスなどの興行の客引きを行う役目で、都市浮浪児などがよく行うものです。人目を引くためにプラカードを持ったり、笛や鐘で音を鳴らして街を歩く姿をよく見かけます。


▼路上理髪/マッサージ
 大都市ではあまり見かけませんが、道ばたで髪を切ったりマッサージを行なう者もいます。少しかわったところでは、犬の毛刈りや馬の手入れなどを引き受ける者も存在するようです。


▼修理屋
 刃物を研いだり鍋などの修理などを行なって、小銭を得て生活している者です。この他、服をつくろったりマットレスを打ち直すなどの商売もあります。


▼露天動物商
 コオロギや小鳥などの観賞用動物を路上で売る職業です。


▼絵画売り
 広場や大きな通りには、似顔絵書きや自分の書いた絵を売る画家の卵などもいます。


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芸人


▼音楽売り
 バイオリン弾きやアコーディオン弾き、あるいはギター弾きといったものが一般的です。少し珍しいものでは、ストリートオルガンという手回し式の演奏機械があり、音楽に合わせて人形劇を見せたりすることで、子供たちに人気を集めています。ストリートオルガンと同様の仕組みの小型のものは音小箱(サウンドボックス)と呼ばれていますが、これを回して音楽を奏でながら店の宣伝などを行なう者もいます。


▼路上劇
 劇といっても人間が行うのではなく、人形芝居や紙芝居、あるいは影絵芝居といったものが一般的となります。


▼大道芸
 通りや広場で芸を披露して小銭を貰います。ジャグリングや手品、腹話術といったものから、馬の曲芸のような大がかりなものもあります。


▼鳴き声売り
 カナリヤ売りやコオロギ売りなど、小さなカゴにいれた動物を売り歩いている者です。


▼占い
 夢占い、花占い、水晶占い、カード占いなど、地域によって内容は異なりますが、占いはいつの世も少女たちに人気があるものです。占い小屋を構えている場合もありますし、毎日路上に出て仕事をしている占い師も多くいます。安いものではだいたい1回100エランくらいから楽しむことができます。


▼大道詩人
 街頭で流行歌や風刺歌を歌いながら、その歌詞や挿し絵入りの歌謡本を売り歩く者です。子供向けの童謡売りもおり、子供たちに本を読んで聴かせて小銭を稼ぐこともあります。また、その日の出来事を歌にして売り出すという、一種の新聞のような役割を持つ通俗詩商人も人気があります。


▼見せ物賭け屋
 道端でちょっとした賭けを行って小銭を稼ぐもので、賭博師というよりは手品師や芸人といった色合いの強い連中です。伏せてあるどちらのカードの数字が大きいかを当てたり、どちらのネズミが早くゴールに着くかといった、ちょっとしたゲームを取り仕切ります。もちろん全てにタネが仕込んであり、何らかの仕掛けや巧みな手技でカードをすり替えたりするのです。観客の中にサクラやいかさまの相棒が潜んでいることもあります。


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その他


○会社員

 新聞社や商社など、特定の会社に雇われて働く者です。事務、販売、広報、施工、企画・設計など、様々な仕事内容があります。

・種類:製造業、物流業、輸送業、販売業、貿易業、情報業、建設業、保険業、人材派遣業など


○工場労働者

 工場に雇われている低賃金労働者で、仕事の内容は多岐に渡ります。しかし、これまでの職人のような特殊な技術を必要とするわけではありませんし、流れ作業を行っている場所が多いため、退屈な単純作業を延々繰り返すだけで済みます。
 
・種類:鉄鋼業、機械製造、製粉、製紙、繊維、縫製、刺繍、レース装飾、缶詰製造、タバコ、レンガ、造花、薬品製造、ガス精製...etc.


○建築業

 建築に携わる職業には、土木技師、建築家(設計技師)、測量士、建築作業員などがいます。このうち、技師は社会的に恵まれた職業となりますが、機械を扱わない土木作業員は下層労働者として扱われます。


○印刷

 印刷工や植字工のほかに、活字拾いのアルバイトなどがあります。


○デザイナー

 服飾デザイナーや宝飾デザイナーなどがいます。デザイナーと呼ばれるのは、一流の店鋪でデザインを行なったりショーを開くなど出来る立場にある者だけです。街の小さな仕立て屋で働いている者が、このように扱われることはありませんが、自ら気取ってデザイナーを名乗る場合もあります。


○保険業

 大きな都市では各種の保険を取り扱う保険会社が存在しますが、生命保険などの個人向けのものはあまり普及しておりません。そもそも保険という概念を生み出したのは貿易商人であり、遠方への輸送品や船舶などにかける損害保険が主となります。

・種類:事務員、外交員、調査員...etc.


○鉄道関係

 鉄道員(駅員、乗務員など)、機関士、機関助手、整備士、鉄道工夫、客員世話係(売り子など)などがいます。鉄道員や技師は経済的に恵まれている職業ですが、鉄道工夫や売り子の収入は少なく、身分的にも低いものとなります。


○監視員

 警備員、墓守り、森林番人、狩猟番人、公園管理人、港湾巡視員、街道巡視員などの種類があります。


○スポーツ選手

 この時代はプロスポーツ自体が少なく、広く行なわれているものでいえばテニス選手、競馬の騎手、ボクサー(拳闘士)などが、スポーツ選手として成立している職業でしょう。また、一部ではフットボールやラグビーの興行試合が行なわれておりますし、自動車会社に雇われているレースドライバーも、広い意味で言えばこれに含まれるかもしれません。


○学問・医療

▼学芸員
 博物館の資料収集や、保管・展示に携わる仕事です。美術品などの修復を手掛けたり、鑑定を依頼されることもあります。

▼薬草売り
 都会ではあまり見かけることはありませんが、地方では薬草や香草を売り歩く者が存在します。こういった者たちは、ハーブティーなどの販売も手掛けていることが多いようです。

▼獣医
 獣医師も古くから職業として存在していますが、我々の世界の獣医とは異なり、ペットではなく家畜の病気を治療したり出産を助ける仕事が主となります。専門の職業としてこれに従事する者はあまり多くはありません。というのは、獣医として活躍していた多くは放浪の遊牧民であり、基本的に身分が低い職業として考えられてきたからです。

▼採集家(プラントハンター/昆虫ハンターなど)
 探険家の一種ですが、有用な植物や珍しい動植物を辺境で採取して、企業、研究家、好事家などに売り歩く職業です。


○その他

▼点灯夫
 街路のガス灯やランプに火をつけて歩く職業です。

▼床屋/理容店
 髪を切ったりヒゲを剃るだけでなく、医師のかわりをすることもあります。彼らは縫合などの外科的な治療法を身につけており、ちょっとした傷であれば医者ではなく床屋に行くというのが普通の考え方となります。

▼風呂屋
 多くの家庭には浴槽はなく、体が汚れたらお湯をわかしてタオルで拭く程度です。しかし、ある程度の規模の町にもなると、中流以上の家庭では定期的に公衆浴場へ通って体を洗う習慣があります。一般的に公衆浴場として利用されるのはサウナとなります。サウナの2階はソファが並べられていたり、飲食店が営まれているのが普通で、ここは住民の社交場として機能しています。


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移動・運搬ゴミ・清掃商売芸人その他