科学魔道機械
基本的には通常の科学技術によって作製された機械と変わらず、様々な目的・形状のものが存在します。
○基本構造
科学魔道機械は、霊子物質を気体霊子として利用するための変換装置、霊子が通過する霊的回路、そして結果を現出させる反応場で構成されています。
▼霊子物質
小型の機械はカートリッジとして、中型〜大型のものはタンク(燃料槽)として霊子物質を蓄えておきます。タンク式のものは本体に直結しているとは限りませんし、分離可能のものも少なくありません。
▼エーテル変換装置
霊子物質を霊的回路に流す前の処理を行う装置です。結合状態にある霊子物質を気体霊子に変換し、それを整流として霊的回路に渡します。霊的回路や効果や反応規模によって消費量が異なるため、そのサイズは様々なものとなります。
▼霊的回路
気体霊子を通過させ、特定の効果を生み出すための回路です。回路自体は様々な種類の導霊物質で構成された、複雑な立体魔法陣を組み合わせたものです。回路の形状や大きさは効果によってそれぞれ異なりますが、多く見られるのは以下の3つのタイプです。
1つ目は非常に簡素な機構のもので、内部に細いパイプを組み込んだボックス型で、固定用パイプの中に導霊物質の回路が組み込まれています。大型の機械に多く使われているのは、金属線を繋いで作製した回路を、アクリルのような素材でコーティングし、導霊金属の位置を固定するタイプのものです。精密機械に組み込むような場合は、小型のチップに回路を組み込んだものを使用し、これを複数組み合わせて用いる時は、現在のコンピューターのように基盤に取り付けます。
これらをエーテル変換装置に繋ぐ方式にも様々なタイプがあり、直接金属で結合されている場合もあれば、スロット式で交換できるようになっているものもあり、機器の特性によって異なります。
▼反応場
反応場というのは術法でいえば効果範囲を指すものであり、通常は密閉層として設計されています。しかし、これは外的要因による影響を排除したり、生成物を回収しやすくするためのもので、作動に必須のものではありません。たとえば、空間そのものを影響対象としたり、工業製品を直接製造して加工ラインにそのまま流したり、あるいは異空間や人工太陽を生成するのための大掛かりな装置では、反応場を密閉することはありません。
▼制御機器
多くの場合、これらは電子計算機で制御されていますが、現在のエルモア地方で使用されている霊子機関のように、単体で動かすことも可能です。
▼観測機器
観測機器として利用されている魔道機械の場合、その観測結果は電気信号に変換されて情報として出力されるものが多くなります。しかし、機械式のメーターで出力を行うことも可能で、特に空白期の時代に再生された機械の場合は、こういった簡素な機構の品が多いようです。
▼電子機器
一般機械と同様に、科学魔道機械に電子機器が組み込まれていることは珍しくありません。しかし、このような機器に用いる電力は、一緒に組み込まれた発電用の霊子回路から供給されるので、エネルギーとして用いるのは全て霊子物質となります。
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利用
○基本
科学魔道機械は以下のような目的で利用されてきました。その多くは現在我々の世界にある機械の延長上にあるものですが、その効果は非常に幅広いものです。もちろん、通常の科学技術では到達できない領域のものも、数多く存在します。
基本的な機構は術法と同じものですが、術法の場合はその効果が人間の認識に左右されるのに対して、科学魔道の場合は非常に詳細な領域までコントロールすることが出来ます。優れた観測機器や計算機械の補助もあって、タンパク質の設計や遺伝子操作といったものから、粒子の観測や制御なども可能となります。
○通常利用
▼物質生成/制御
特定の物質の構成を変化させたり、設計・生産を行うことが出来ます。
▼エネルギー生成/制御
霊子エンジンによるエネルギー生成や、エネルギーの制御に用いたりします。
▼機械制御/補助
機械を直接制御したり、作動機構の補助として利用することが出来ます。
▼空間制御
物質空間を自由にコントロールしたり、仮想空間の生成や平行世界への移動を行うことが出来ます。
▼環境制御
気象や熱移動も含めた、環境コントロールを自在に行うことが可能です。
▼観測技術
通常の科学技術による観測の補助はもちろん、直接的に空間内の情報を取り込んで解析することも可能です。
▼演算・シミュレーション
超高速演算や高度なシミュレーションを可能とします。また、学術機関などにおいては、平行世界である鏡界(投射世界)を利用して、仮想現実による解析を行っておりました。
▼霊子制御
様々な霊子エネルギーの制御技術を確立しており、エネルギー生成や移送、霊子物質の生成といったことを行うことが出来ます。最終的には霊子核の崩壊までをも可能としましたが、これが原因で大変異現象が発生することになります。
○制限利用
法律あるいは倫理的に制限されている項目もあれば、技術的に制御が難しいために、科学技術を補完をする役割を担う場合もあります。
▼生体制御
科学魔道が特に苦手としていたのが、意識を持つ生命体(肉体)に直接的に影響を及ぼすことや、不死に関する技術です。そのため、他の物質制御の分野に比べて、生命科学の分野においての発展は遅く、遺伝子工学や細胞工学を補助する役目が主要な利用法でした。
後にこの分野は、科学技術と科学魔道の双方を組み込んだ、『魔道生命工学』(サイオニック・バイオテクノロジー:略称サイオテクノロジー)として発展し、食料生産や医療の分野を飛躍的に発展させることになります。しかし、大変異現象が訪れる直前に至っても、生命体の直接改変や意識を持つ生体の不死化に成功することはありませんでした。
▼精神制御
精神制御を行うことは、生体の直接改変に次いで難しい技術だったようです。そのため、我々の世界における薬品を用いた精神治療や、物質的な作用を介して精神へと影響を与える技術が主となり、科学魔道はそのための物質や機器を作成するために利用されておりました。
しかし、後に『カーバンクル』と呼ばれる、真砂(霊子を伝導する性質を持つケイ素)を主体とした霊的回路を脳内に組み込んで、間接的に対象を制御する手段が確立されることになります。これは主に生物兵器の制御のために利用された技術で、通常の人間にこれを施すことはありません。
▼意識生成
何もない場所に意識を生み出すことは、科学魔道技術をもってしても不可能となります。しかし、後に霊子を圧縮して霊子場を形成することで、人々は意識を持つ存在を誕生させることに成功します。圧縮霊子を物質でコーティングしたものを『ライフ・クリスタル』呼びますが、これを核として生み出した疑似生命体は、特に医療の分野で数多く利用されました。また、最終的には霊子場に意識を憑依させる形で、霊子生命体と呼ばれる特殊な存在を生み出しています。これは戦闘兵器として用いられ、様々な種類のものが設計されました。
▼術法の再現
科学魔道技術は術法と同じ機構のものですから、その殆どの現象については再現可能となります。しかし、生命体の直接改変のように、技術として確立されなかったものもありますし、完全な不死化など最初から不可能な技術も存在します。また、有用な技術として認識されなかったものは、まったく研究が為されていないことも珍しくはありません。たとえば、生命の不死化研究の過程で誕生した不死者など、実用のものではない研究対象については、殆ど手がつけられていない状態です。
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発掘品の再生
遺跡などから発掘された科学魔道機械の多くは、変異現象などの影響によって殆どが使い物にならない状態にあります。各国の研究者たちは、これをどうにか修復しようと日夜努力していますが、科学技術のレベルや変異現象の問題から、これを行なうのは至難といえます。
○霊子物質
▼エネルギー状態
現在ある霊石や霊水といった霊子物質は、科学魔道時代につくられたものではなく、大変異現象によってできたものです。そもそも、これらは変異現象を引き起こす原因となりますし、科学魔道時代に利用されていた結晶霊子よりも高いエネルギー状態にあるものです。これらを科学魔道時代の機器にそのまま利用した場合、通常よりも大きな変異現象を引き起こす可能性が高く、地域を巻き込む大きな問題に発展する恐れもあります。
▼カートリッジ式
現在のエルモア地方の人々は、小型機械に利用されているカートリッジに霊子物質を充填する方法を知りません。また、霊子物質が変異現象を引き起こすわけですから、交換用のカートリッジも基本的に大変異現象の影響を受けたことになります。このため、このタイプの発掘品を利用するためには、霊子エネルギーの供給方法を新たに確立する必要があります。
▼修復
これらの問題を解決するためには、現在ある霊子機関の燃料槽を取り付けるための改造を施す必要があります。しかし、そのまま繋いでも正しく動作するとは限りませんし、小型の発掘品の場合は確実に大型化してしまいます。
○電子機器
電子機器が組み込まれている機器を復活させるのは、非常に困難な作業となります。というのは、エルモア地方では変異現象の影響で電気的な働きが乱され、まともに機能しない可能性が高いからです。このため、電子機器で制御されている機械は、そもそも使用できなかったり誤作動を起こす可能性が高くなります。その他の付随的な機能として組み込まれている場合でも、動作に何らかの支障をきたすことでしょう。
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