(D)中東部/全体 

基本情報文化・生活人物・集団 


 

基本情報


○概要

 熱帯雨林と湿原の広がる一帯で、バウンシャ系の赤人部族が多く住んでいます。かつてD地域の北部はラガン帝国の領土でしたが、聖歴700年代に入ってその支配から逃れてから、現地の住民はいずれの国家にも従属せずに暮らしてきました。鬱蒼とした密林と高い山々がそびえるレオール山脈に守られ、彼らは今も独立を保っておりますが、北部の植民地を支配する国々はこの一帯を虎視眈々と狙っています。


○地勢・気候

 この一帯は植民地農場として開拓された北東部(A地域)とは異なり、古くからの自然の姿が残っています。平均気温は30度ほどで、全体としては高温多湿の気候となります。
 メアティク山より東側は熱帯雨林と湿原が広がる地域です。高くそびえ立つレオール山脈の西麓は人間による開発の手を逃れており、川の蛇行に沿って木々が青々と茂る密林が広がっています。その詳細については殆ど知られておらず、探索行に赴いた少数の探険家の報告があるのみです。奥地は川も急で、少し進むと滝に遭遇するので、舟での移動もままなりません。猛獣も多く出現することから、現地の住民でさえ足を踏み入れたことのない土地も多く残っています。
 レオール山脈東部の海岸地域は、海風が山地にぶつかるため湿潤で、時折スコールのような強い雨が降り注ぎます。平野部の大半はラガン帝国が支配する時代に、熱帯雨林を人工的に切り開いてつくられたものです。しかし、山脈の南麓付近はまだ原生林が多く残っており、一部にはマングローブ林も見られます。
 メアティク山より南側は、さらに深い密林と湿地の広がる地域です。この場所で最も目につくのは広大な面積を誇るラナン湖で、周辺地域は野生動物の楽園となっています。そこから少し西に離れた辺りは原住民の生活圏となっており、ラナン湖に水を注ぐダハオ川やメルニケ川の流域では耕作や放牧が、そのすぐ傍にあるミティリア湖では淡水魚の漁が行なわれています。


▼周辺地域
 内陸に位置する西部地域は、それまでの景色とはうって変わって、高温乾燥の砂漠地帯へと姿を変えます。山地に囲まれた一帯にはティトナ砂漠が、サバンナを挟んだ南には大砂海とも呼ばれるカナデ砂漠が広がっており、大陸奥地への侵入を固く阻んでいます。この辺りはほとんど雨が降らず、昼夜の気温変化が激しい、生活するには非常に厳しい土地となります。


○住民

▼バウンシャ人
(赤人)
 古くからこの一帯を支配してきた赤人民族で、褐色あるいは赤銅色の肌と、赤みがかった髪や瞳を持ちます。エルモア北方に住むレプラッド系赤人と同系統の民族だと考えられていますが、華奢なレプラッド人より全体的に体格がよく、肌や髪の色もやや濃いのが特徴です。

▼レグラム人(黒人)
 前聖歴の頃より北中部(B地域)から中部(E地域)の一帯に住んでいた黒人で、密林の奥地や西部の砂漠に近い辺りで暮らしています。また、北部にある植民地から逃れてきた奴隷が、都市や集落に身を寄せている場合もあります。

▼クルゼイア人(混血:赤人+黄人)
 バウンシャ系赤人とラガン由来の黄人の混血で、主にレオール山脈の東部に住んでいます。

▼レバンド人(混血:赤人+黒人)
 バウンシャ系赤人とレグラム系黒人の混血で、多くは西部の平原に住んでいます。

▼黄人
 聖歴に入ってから入植を果たしたラガン帝国由来の黄人です。ラガンがペルソニア植民地から撤退した際に、この地に逃げ落ちた者たちの末裔で、奥地で隠れ里のような集落を形成したり、現地部族の都市に身を寄せて暮らしています。


○歴史

 この地域には多数の赤人小部族がおり、わずかにあった平野部や密林内部に村落を形成し、原始的な狩猟採取の生活を送っておりました。しかし、聖歴100年代の後半から、ラガン帝国による未開地への進出が始まり、少しずつ密林が農地として切り開かれるようになります。
 当初、各部族はこれに個別に対抗しようとし、大国の侵略に飲み込まれるままでしたが、後に同盟を結んで外敵に立ち向かうことを考えます。そして、地の利を活かした戦い方で、密林に不馴れなラガン軍を大いに苦しめました。しかし、聖歴250年頃のことですが、同盟の中核を為すバンデミア王国から裏切り者があらわれ、瞬く間に一帯を制圧されてしまい、各部族は散り散りに南部の奥地へと逃れることになります。
 現在も密林の中でひっそりと暮らしている原住民の中には、こういった部族の末裔も少なくありません。彼らをラガンの侵攻から守ったのは、天然の砦である密林と猛獣、そして皮肉にも後の侵略者となるエルモア地方の国家でした。しかし、開発は既にD-2地域の中頃まで進んでおり、これまで通りの自然と寄り添う生活を続けてゆくのは、もはや不可能なことなのかもしれません。


○産物

▼農産物
 麻、タバコ、トウモロコシ、茶葉、香辛料など

▼鉱産物
 鉄、銅、石炭など

▼その他
 魚介類、塩、酪農(牛、豚など)、香木など


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文化・生活


○概要

 かつてラガン帝国に支配されていた土地が多く、現在も黄人が混ざって暮らしている都市もあるため、方々で彼らの文化的影響が見受けられます。しかし、ラガンの植民地支配から逃れた現在は、多くの地域で旧来の文化を取り戻しつつあり、ペルソニア独自の信仰も次々と復活しています。これは周辺部族や逃亡奴隷たちを受け入れている都市で特に顕著な傾向です。また、奥地の密林地帯や砂漠周辺には、固有の文化を築き上げて来た部族たちが住んでおり、精霊信仰や古くからの言い伝えを守り続けています。


○系統

▼海岸部
 人々は漁労や斜面での牧畜を生業としています。また、ラガン帝国による開発が行なわれた地域では、大規模農業や港湾都市での交易も発達しています。

▼熱帯雨林
 奥地の密林で暮らす人々は、狩猟採取を中心とした原始的な生活を送っています。

▼湿地
 湖沼周辺の湿地帯では、漁業や狩猟を生業とする者が暮らしています。これらの地域の一部には水上に小屋を建てて暮らしたり、船の上で生活を送る者も存在します。

▼内陸部
 草原が広がる地域や砂漠の周辺では、牧畜や遊牧が主要産業となります。乾燥地では日干し煉瓦や煉り土を使った家々が多く見られ、山地では石積みの建物や石窟住宅などが建築されています。


○遺跡

▼ラガン帝国
 過去に植民都市が置かれていた土地には、現在もラガン帝国時代の遺跡が残されています。しかし、自力で独立を勝ち取った地域の場合は、ラガン色を払拭するために過去の建造物を破壊したり、基礎だけを残して新しい建物として再利用していることもあります。


▼巨石文明
 レオール山脈(D-1)の南部には、石組みの宮殿や祭祀場などの遺跡群が点在しています。この地域は、文化圏としては河川で繋がる北東部(A地域)と同じ系統になりますが、建築様式や出土品の加工法、あるいは使われている文字や紋様などに、南部(G・H地域)で発見された遺跡との類似性が見られます。また、墓所から発掘された遺体から、これらを建築したのは赤人部族であることが判明しているため、彼らの出自がペルソニア南部由来だという説を裏付ける証拠の1つに挙げられています。
 
◇地下都市
 遺跡群が発見された山中のどこかに、ラガンの侵略から逃れるために建設された地下都市が存在したといいます。これは赤人の間で語り継がれている話で、旧バンデミア王国と並ぶ大集団であったらしいのですが、いつしか記録から消え失せてしまったそうです。現在もその都市は痕跡さえ発見されておらず、手がかりは各地に残る伝承のみとなります。

◇石人形
 南部で発見された遺跡から、数百体にも及ぶ人間大の石人形が発見されたことがあります。これらは1体ずつ違う体格、異なる顔を持っており、まるで生きた人間を石に変えたようだといいます。
 石は永遠を象徴するものであることから、不死を願ってつくられた彫像だという説が有力です。しかし、ペルソニアの一部には、石人形は封じられた咎人で、善行のために神に使役されることによって罪を清められるという伝承も残っています。なお、これらは装飾もない粗末な部屋に無造作に置かれており、そこへ通じる扉が厳重に封じられていたこともあって、後者の言い伝えに由来するものだという研究者も少なからず存在します。


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人物・集団


○組織・集団

▼略奪の民
 メアティク山周辺(D-2)にあらわれる黄人の無法者集団で、ロゴン=ロゴナ(D-2)を裏切ってカルネアに与したラガンの末裔です。しかし、思惑が外れたカルネアに見捨てられ、今さら自治区に戻ることも出来ず、略奪生活を続けながら各地を放浪しているようです。

▼ロゴナ・レンジャー
 ロゴン=ロゴナ(D-2)に属する警備隊で、都市周辺の治安を維持するためにパトロールをしています。彼らは軍の一部隊であり、町中では制服を着て活動しています。しかし、外域を調査する際には、一見そうとは分からない格好をしていることもあります。

▼クルラッケン探検隊
 カーカバートの大商人の1人が支援している探検隊であり、死者の谷と呼ばれる場所の探索を行っています。ここには遺跡の街が眠っているという噂で、メアティク山(D-2/D-5)のどこかにあると考えられておりますが、探険の成果は全く思わしくありません。なお、この場所には大量の不死者が徘徊するという伝承もあるため、隊には術法師も雇われて参加しています。

▼ブラック・フロリアンズ
 エリスファリアに所属する黒人の密偵集団で、この地域の情報を収集しています。彼らは部族集団であり、一族の成人は体のどこかに花の刺青が彫られているそうです。なお、この名はエリスファリアで呼ばれているコードネームであり、本当はベルメア族といいます。


○人物

▼テテ=ログリュー(赤人/男/58歳)
 マルクトハーム共和国(D-1)の農場経営者で、タバコ畑と製造工場を持つ富豪です。もともとはロンデニア植民地の農場で働く労働者でしたが、共和国の独立戦争時に植民地を飛び出し、義勇軍の一員として戦いに参加しました。共和国の独立後は、植民地で身につけた知識を活かして財産を築き上げ、現在は議員の1人としても活動しています。
 晩年を迎えて順風満帆な彼ですが、最近1つ気にかけていることがあります。それは数か月前に農場や工場で働いていた若者がまとまって退職し、住居を引き払って姿を消したことです。彼はこのことが、ロンデニアギャングが周辺地域で行なっていると噂されている、麻薬栽培と関連しているのではないかと推測しています。もし自分の予想が当たっているのであれば、若者たちを悪の道から救い出したいと考えており、現在ロンデニアの植民地政府と協力して調査を進めさせています。


▼ルデロ=ハウアー(白人/男/43歳)
 石皮病と呼ばれる奇病にかかった彫刻家で、ティトナ砂漠の南の入り口にあるポルトナという街で暮らしています。ルデロはペルソニアの彫刻芸術に魅せられ、単身ロンデニアから渡って来たのですが、日々進行する病に将来を断たれようとしています。しかし、術法をもってしても治癒不能とされるこの病でも、燃え盛る情熱の炎を消し止めることは出来ませんでした。彼はノミとハンマーを握った形で指を固定し、ヒビ割れたその手で彫刻を続けているのです。
 現地で結ばれた妻アデラは、どうにかして彼を苦しみから救い出そうと、情報を集めるために八方手を尽くしました。そして、つい先日のことですが、砂漠の民から治療薬に関する興味深い伝承を耳にしたのです。しかし、手がかりはあっても人を雇う金銭を持ち合わせていないため、彼女は自ら旅に出て薬を手に入れようと考えています。


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基本情報文化・生活人物・集団