犯罪内容

一般的な犯罪特殊な犯罪子供と犯罪


 

一般的な犯罪


○窃盗

 窃盗などの財産犯罪の場合は、完全に個人で活動している者か、あるいは裏組合に所属している人間のどちらかになります。スリや置き引きといった小犯罪は、個人犯罪者が行うケースも多いのですが、裏組合の縄張りで犯罪を起こす場合は地域の顔役に話を通して、上納金を納めるのが規則となっています。都市浮浪児の場合でもこれは同じことです。
 ただし、強盗だけは多少事情が異なり、各地を転々としながら駅馬車強盗、列車強盗、銀行強盗などを繰り返す犯罪者が多いようです。特に革命や内乱後の不安定な情勢下や街道など目の届きにくい場所では、強盗や殺人事件が多発する傾向にあります。
 直接的に金銭を狙うのはギャングが好む手法であり、こういった荒くれ者を組織に取り込もうとする傾向にあります。また、生活に困窮している個人犯罪者も手段を選んではいられませんから、裏組合の掟にはとらわれずに、路地裏などで強盗や恐喝を行います。こういった犯罪者の場合は、武器の扱いになれていないなどの事情から、誤って殺人を至ってしまうこともあるようです。
 少し変わったところでは、死者の装飾品を狙う墓荒らしや家畜泥棒などがあります。墓荒らしは重罪でありながら、墓地を厳重に警備しているところは少ないので、これに手を出す者は後を断たないようです。家畜泥棒は単に食べるものに困って家畜を襲う場合と、自分の資産にしたり転売を目的とする場合があります。後者の場合は放浪民族の仕業であることが多いようで、そのことが迫害を受ける理由の1つとなっています。


○詐欺

 この時代になって詐欺の手口は多様かつ高度化しています。社会構造は複雑化する一方ですが、人民が必ずしもそれについてゆけているわけではなく、変化が激しい社会に不安を覚え、思わずうまい話に手を出してしまうこともあるようです。それから、法律の整備が犯罪者に対して後手に回ることもありますが、そういった隙に巧みにつけこむのも、詐欺師の得意とするところなのです。
 彼らにはそれぞれ得意分野があります。生まれ持った容姿を利用して世間を知らずの娘を騙す結婚詐欺師や、役に立たない新製品の設計図を企業に持ち込んだり、偽の鉱脈の採掘権を売りつけたりする企業詐欺師など、さまざまなタイプの詐欺師が存在します。


○偽造

▼証明書の偽造
 もともとは裏組合が得意とする分野でありましたが、最近ではギャングもこういった市場に手を伸ばしています。ギャングは自分たちが圧力をかけて潰した裏組合の技術者を身内に取り込んだり、役人と手を組んで書類の偽造を行うなどして手に入れた証明書を、闇の市場で売りさばいているのです。


▼身元証明書
 戸籍証明書があれば、それを身元の保証として使うことが出来ます。これらの偽造は当たり前のように行なわれていますし、既に死んでいる人間の証明書を利用したり、金銭に困っている者から身元証明を買うこともあります。このように不正ではあっても本物の証明書が利用されている場合は、犯罪やトラブルにでも巻き込まれない限りは、その犯罪が明るみに出ることは殆どないでしょう。
 出生証明書の場合は、産婆や孤児院などを通じて手に入れられる場合もあります。子供の引き渡しが頻繁に行われるようになった昨今では、こういった人々が立場を利用して私腹を肥やすのは珍しいことではありません。また、ギャングたちもそれに目をつけ、まるで一般の流通市場のように役割が分担され、身許が売り買いされているのです。


▼紙幣の偽造
 紙幣や貨幣の偽造というのはわりと古くから行われてきた犯罪行為です。これは少人数の犯罪者集団が行うこともありますし、ギャングがこれを手がける場合もあります。
 現在では手間のわりに利益の少ない貨幣より、紙幣の偽造が増加する傾向にありますが、これは他の犯罪ほど頻繁に行われるものではありません。というのは、現代社会ほどではありませんが、やはり紙幣はそれなりに精巧につくられているので、似せるのは簡単な作業ではないからです。しかし、逆に見分ける側の技術というのもあまり進んでおりませんから、一般人では簡単に見分けがつかないような代物が市場に出回ったりもします。また、偽物をつかまされたことに気づいた場合でも、そのまま当局に届けても損をするばかりなので、黙って使ってしまう民衆も少なくはないようです。


○汚職

 汚職・収賄といった犯罪は顕在化する率は低いのですが、少人数でも1度に動く金額は他の犯罪に比べて桁違いとなります。また、こういった犯罪は公共の資金や事業が利用されることが多いものですから、たとえそれに関わる人間が少数でも、決して見逃してはならない社会的問題です。
 エルモア地方では以下のような事柄に関して汚職事件が起こります。これは国家や地域を問わず起こる事柄ですが、特に為政者の権限の強い土地では、たとえそれが公然の事実であっても黙認されているような状態になります。こういった場所で地位の高い人物の不正を暴くというのは、下手をすれば社会全体を敵に回すことにもなりかねません。たとえ自分が刑事や査察官であったとしても、とにかく細心の注意を払って調査を行うべきでしょう。

 公共機関による物資の購入/企業取り引き/鉄道の敷設/国営企業の民間への払い下げ/公共事業の入札・受注/株式の取引/法律の制定/支援物資の搬入出...etc


○密輸/密入出国

 他国からの逃亡者やスパイが密入国することもありますし、麻薬や盗品の密輸が行われることが度々あります。実際、ロンデニアではギャングが密輸した麻薬が市場に広く出回っており、社会問題にまで発展しています。
 もちろん国境や海岸では、国境警備隊や沿岸警備隊が監視の目を光らせています。しかし、この時代にはそれほど優れた観測技術はありませんし、それに割くことができる人員も限られていますから、国境線を完璧に守りきることは不可能事です。
 密輸を主に行うのはギャングたちで、他国の犯罪組織や企業と取り引きを行います。時には領主や政治家などがこれに荷担し、私腹を肥やすこともあるといいます。他にも人身売買組織と手を結んだり、移民の斡旋業者と結託して相手を騙し、密かに奴隷や娼婦として売り飛ばすといった行為も行われています。
 なお、遺跡の財宝や盗品の売買を取り仕切るのは裏組合の分野となるようで、これらの品々は好事家の手に直接渡ったり、闇で開催されるオークションで売買されたりします。こういった闇オークションは貴族や名士などが買い手であることもあり、非常に警備が厳重で、もし開催場所や時間がわかったとしても、招待状なしでは入れない場合もあります。政治中立地帯であるカーカバートでよく行われているようです。


○誘拐

 身代金目当ての営利誘拐よりも、むしろブレインハント的な拉致事件が最近は目立つようになっています。優秀な科学者が他国の軍隊に狙われたりすることは、決して珍しい話ではないのです。
 これとは別に、家の問題で駆け落ちをした場合に、誘拐という形式で警察に訴え出て、捜索を依頼することがあります。成人が当人同士の合意の上で家を出た場合は、それは刑事事件とはなりませんので、行政当局が手出しすることはできないのです。こういった問題には身分制度が少なからず関係しており、それは近代的な政治制度を採っている先進国家でも変わることはありません。


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特殊な犯罪


○国際犯罪

 近年では海外との行き来もなされるようになり、渡り鳥と呼ばれる複数の国家を渡り歩く犯罪者も現れるようになっています。しかし、警察機関の国際協力体制は殆どとられていないのが実状で、他国へ逃亡した犯罪者を捕らえるのは容易ではありません。
 通常は国家警察の国際部門が他国へと出向き、捜査の協力要請や身柄の引き渡しを要求することになります。許可が出れば国内での捜査権を認められたり、逮捕後に犯人を引き渡すことになりますが、他国の警察を快く受け入れる国家はあまり存在しません。捜査を許可したとしても監視として管轄の刑事を捜査に同行させますし、逆に亡命者を積極的に匿うような国家もあるのです。
 もちろん、単なる犯罪者であれば引き渡しに応じても何も問題はありません。しかし、自国の密偵が任務に失敗して逃げ帰ることもありますし、他国の犯罪者でも自国の利益になる場合は、引き渡しに応じる意味はありません。また、軍が他国の科学者を誘拐することもあるので、調査されて余計な事実が明るみになるのを恐れている場合もあります。もし、このような込み入った事情がある場合は、相応の取り引きを行い、なんらかの利益を得るだけの保証を取り付けなければ、引き渡しや捜査協力には一切応じないのが通常の対応です。
 なお、法教会を信奉する3国間ではきちんとした国際協力体制が整っていますが、同盟を結んでいるとはいえ対外的な問題もあるので、こういった任務に出向くのは警務法官として働く聖堂騎士たちとなります。


○政治犯罪

 革命家、思想家などの活動を国家が制限し、思想犯として逮捕することがあります。これはライヒスデールやフレイディオン、あるいはカイテインといった独裁国家でその傾向が強いようです。こういった思想犯を逮捕するのは、主に秘密警察の活動となります。
 政治犯の取り締まりは、たとえば不適切な内容の出版物や、為政者を批判するような内容の言論を規制する言論統制から、テロリストたちを逮捕する命がけの作戦行動、あるいはクーデターの阻止といった大がかりなものまで、様々な内容が含まれます。
 政治犯罪の取り締まりというのは、通常の犯罪の捜査よりも秘匿性が高くなり、また法に抵触するような強引な手法が取られがちです。しかし、こういった行動は公然の秘密となっているか、あるいは全く世間に知らされていないために、一般社会から非難されることは少なくなります。また、仮にそれを糾弾したとしたら、自身が政治犯として逮捕される可能性もあるのです。独裁政治がこのような活動に支えられる一面があることを決して忘れてはなりません。


○環境テロリスト

 珍しいところでは、近年の過剰な森林伐採や河川の工業廃液による汚染などに反対する自然主義者が、環境を保護を訴えて行うテロ活動も見られるようになっています。こういった事件の発生件数は、一般の犯罪に比べると比較にもならないような微々たるものなのですが、鉄道爆破や鉱山の閉鎖など、その結果が社会に対して大きな影響を与えるものが少なからず含まれています。
 しかし、こういったテロ活動が実を結ぶことは少なく、逆に自然信奉者や遊牧民族を弾圧する口実を与えているというの実状です。精霊使いなどの異端術法師がこれに加担していることも、この傾向に拍車をかけています。政府はこういった犯罪者に対して容赦することはなく、特には虐殺事件に発展することもあります。しかし、彼らを弁護するものは皆無といってよい状態にあり、無駄に命を散らせることが殆どなのです。彼らの叫びが理解されるようになるには、もう少し後の時代を待たねばならないのでしょう。


○術法犯罪

 術法が犯罪に利用されることもあります。たとえば、裏組合や暗殺ギルドでは独自に術を継承していますし、協会術法師が術法を用いた犯罪を行うことは皆無ではありません。
 しかし、術法犯罪は様々な組織を敵に回す、非常に危険な行為です。まず犯罪というだけで警察に追われる身となりますし、外部から入り込んだ犯罪者のしでかしたことであれば、裏組合もこれを敵としてとらえます。なにより、そもそも術法というのは神が与えた奇跡として認識されているので、術法犯罪は神に対する冒涜となります。また、術法師の名を汚す行為ともなりますので、術法協会も宗教機関もすすんで警察に協力を申し出ます。術法師というのは普通の人間の手に余るものですから、警察はこの申し出をありがたく受け、彼らに臨時警察官としての権限を与えて、総力を挙げて犯人の検挙につとめることになります。
 特に術法協会では、術法警官(協会調査官)と呼ばれる役職を特別に設置し、術法による違法行為を独自に取り締まっています。彼らは術法協会のみで継承される魔力探査系という系統の術を身につけており、それを駆使して捜査を行います。なお、術法警官の一部は粛正機関として活動しているようですが、それが表沙汰になることはなく、秘密裏に処理されてしまっているようです。


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子供と犯罪


○状況

 孤児や親に早く死なれた子供、あるいは貧困層にありながら子沢山の家庭では、子供はどうにかして自分の生活費を稼がなければなりません。しかし、工場などの賃金はあまりにも安く、最終的には犯罪に行き着くことになるわけです。


▼都市浮浪児
 この顕著な例が都市浮浪児という存在で、彼らはスリやかっぱらい、あるいは強盗といった手段で日銭を稼いだりします。もちろん、犯罪行為のみで生活しているわけでなく、ちょっとした雑用などをこなして賃金を得たりもしますが、それはごくわずかな額でしかありません。
 しかし、子供とはいえ裏組合やギャングの縄張りを荒らして無事で済むわけではなく、ちゃんと稼ぎの一部を支払い、許可を得て犯罪を行っているのです。こういった繋がりから犯罪組織の一員となる子供は相当数にのぼります。
 子供たちは数名から十数名ほどのグループをつくり、協力して生活をするのが一般的です。犯罪組織とは別に、こういったグループにも縄張りが存在し、壁に落書きをしたりマークを刻むなどして、グループの存在や影響力を誇示します。ギャングの抗争ほどではありませんが、グループ同士の縄張り争いが起こることもあり、単なる喧嘩にとどまらず刃傷沙汰に発展したり、私刑を受けて死亡するという事件も起こっています。


○子供の売買

 人身売買は多くの農村で恒常的に行われており、社会的問題であると認識されながらも放置されている状態です。特に不作の年には数多くの子供が売りに出され、国外にもたくさんの子供が出て行くことになります。大きな都市では外国の子供が100名以上も働かされていることもあります。


▼労働
 売られた子供たちは、鉱山労働、煙突掃除、奉公人、工場労働者といった肉体労働職や、大道芸人や娼婦として働かせるために売り飛ばされます。こういった労働は子供には過酷なものが多く、1日にだいたい10〜14時間ほどきつい作業を行わなければなりません。そのため体を壊す者も多いのですが、もちろん高い金を出して医者を呼んでもらえるはずもなく、使い物にならなければ路上に捨てられることになります。大道芸人などは同情をひいてお金を稼ぐために、特に幼い子供が選ばれて買われてゆきます。しかし、年齢を重ねて同情や哀れみをひかなくなると路上に放り出されることになり、すぐに男の子は犯罪に走り、女の子は娼婦として働くようになるのです。


▼人買い
 こういった仕事を専門に行う人買いも存在し、広い地域を歩き回って農村などから数万エラン程度で子供を買って、馬車や船で余所の土地へと運搬します。現在では悪徳な斡旋人やギャングが結託して、組織的犯罪としてこれを行うことが多く、孤児院や産婆などを引き込んで子供を買い集めたり、政治家や地方の役人に賄賂を渡して密入国を見逃してもらうなど、大勢の人間が子供の売買で資産を増やしているようです。
 子供たちは人身売買組織の中継点となる家を通じて輸送され、これを欲しがる人々に売られてゆきます。子供たちはその間、市場で捨てられたクズ野菜などを食べて生き延びます。売買は個人的に交渉を行うことが多いのですが、まれに子供市場と呼ばれるオークション形式での市場が開かれ、子供たちを壇上に引っぱり出して値段をつけるということも行われます。
 なお、古来より貴族たちは、養子として子供を買ったり、愛人や密偵としての役目を担う側仕えを求めることがあります。こういった目的に応じた調教師を数多く抱え、闇で買い集めた子供たちに高度教育や訓練を施して、依頼者の望む通りの人材を育成する人身売買組織も存在します。


○犯罪親方

 子供たちを預かって働かせ、その収益で生活する犯罪親方という存在もいます。犯罪親方は犯罪組織に上納金を支払って活動しているため、裏社会から咎められることはありません。
 親方は所有している粗末な小屋や貧民街の狭い賃貸住居に、十人以上の子供を押し込めて生活させます。与えられる食事は市場で捨てられた野菜屑やパン、あるいは薄いスープがせいぜいです。シーツや服はほとんど洗濯しないままで、ノミやシラミがわいた非常に不衛生な環境で過ごします。
 親方は利益を得るための手段には注文をつけませんが、1日のノルマをこなすことができなければ、食事を抜いたり折檻を与えます。しかし、路上に放り出されて逮捕されたり、寒さで凍死してしまうよりは遙かにマシなので、子供たちはなんとしても親方の保護を受けようと頑張ります。花売りや運搬人として働く子供もいますが、そういった仕事による収入は非常に些細なもので、犯罪行為で楽に稼ごうと思うのも無理はありません。なお、親方は警察に賄賂を支払い、仮に子供たちがへまをして逮捕された場合でも、自分は全くの無関係を装います。


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一般的な犯罪特殊な犯罪子供と犯罪