○科学の概念
現実と同様に、この世界でも原子説などの科学概念は存在します。その一方で、現実にはない元素や変異現象が存在するために、1つの説が主流とはなりにくい状況にあり、科学分野は混迷を極めています。たとえば、霊子物質という未だ解析されないエネルギーや術法、金と真金のような類似金属、あるいは疑似生命体や怪物といったものが数多く存在しますが、これらを合理的に体系化できた者は1人もおりませんでした。このような状況にあるため、幾つかの科学大系が同時に信じられており、今でもどの説が正しいのか激しく議論されています。
しかし、個々の反応を検証し、利用する技術を確立することについては、体系化された説とは無関係ですから、それなりの成果を挙げています。特に機械に関する技術は、電気や化学といった他の分野に比べて進んでいるようです。
○科学への取り組み
科学による生活の向上は、いまや疑う余地のないものとなっています。医療の発展が人々に与えた恩恵、農業技術の発達による飢餓の減少などはもちろんのこと、都市の人間が着ている服も産業の発展がもたらしたものですし、様々な種類の食べ物が食べられるようになったのも、輸送技術の発達があったからなのです。実際、近年の人口増加率は以前の3倍以上にも達しており、かつては城壁の中に収まっていた都市の面積も数倍に膨れ上がり、今なお広がり続けている状態です。
研究への積極的な取り組みは、ほとんどの国家が推奨していることです。広く世間を見ても、この動きに逆行する論を唱えるのは、聖母教会とその影響力が特に強い国家(アルメアなど)、そして工場生産品によって市場を奪われた職人や自然信奉者くらいになっています。また、単に便利であるだけでなく、先端技術はすなわち国力の高さであり、科学分野におけるアドバンテージは他国に対する威圧ともなりうるもののです。ですから、現在は国家が技術開発に援助金を出したり、あるいは優れた発明に対して報奨金を与えたりすることもあります。民間レベルでも発明協会などを結成して、様々な分野のエキスパートを集めて新発明に取り組む団体も見られるようになっています。
現在は新しい機械が考案され、次々と試されている時期となります。試作機が山のように誕生しますが、同時に実用にはとても耐えられないようなレベルのものや、あるいは何に使用するかわからないような奇抜な物品が、次々と生み出されている時代でもあります。
○工業生産
現在のところ、機械の直接的な工作作業は全て人の手で行われています。作業の手間や規模にかかわらず、技師たちが直接ハンマーやレンチを使って作製するのですから、大がかりな機械を建造するためには手間と時間がかかります。
しかし、部品の規格化という発想は既に存在しており、製品の質のばらつきというのは以前よりもずっと少なくなっています。これは近年になって開発されたマイクロメーターや改良型の旋盤などのおかげで、それ以前は互換方式といっても工場毎にしか保証されておりませんでした。
それから、流れ作業が生産性を上げることにも気づいておりますので、大企業となると部品工場と組立工場を分離した分業体制を取っている場合もあります。とはいえ、ベルトコンベアーのような機械によって作業を補助したり、機械そのものに作業をまかせるような技術はありませんから、今しばらくは現在のような手作業中心の作業方式が続くことでしょう。
○鉱業
工業生産の発展はめざましいものですが、鉱業分野の業績はそれに追いついておらず、先進国家は鉱山の開発にも力を入れているところです。今ある鉱山の操業効率を高めるために、蒸気式ウインチの導入や輸送用鉄道建設のために資金を投入したり、植民地に技術者を派遣して新しい鉱脈を発見しようと躍起になっているのが現在の状態です。そのおかげでこれまで不毛の地であった場所にも人口が集まり、田舎にも新たな工業都市が誕生しはじめています。
しかし、こういった急激な変化はトラブルを生み出す種でもあります。地元住民と新規流入者とのトラブルは耐えませんし、警察等の行政設備が整わないことから、それ以前と比べると治安は明らかに悪化しています。残念ながら、現在の自治体の対応はすべてが後手にまわっており、住民自身が様々な問題を解決しなければならないことが多いようです。
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