PC間の問題
○PCの分離
▼合流
PCがパーティを組んでくれない時は、合流に手間取ってシナリオ進行が滞ることがあります。事前にパーティを組むことを指定していれば問題はありませんが、シナリオの内容によっては開始時点で必ずしも仲間ではないこともあります。
こういった場合は、多少強引でもイベントを起こして合流できるようにし向けるべきでしょう。時間がない時は合流の経緯を省略してしまって、セッション終了後に理由を考えてもらうなどの手段を取って下さい。
▼単独行動
仲間になることを拒んでわざと単独行動している場合には、対処方法が異なってきます。最初からパーティを組むよう言われているわけでもなく、なおかつ単独行動の方が有利であるのならば、必ずしもPCが仲間になる必要はありません。しかし、時間の都合でどうしても合流して欲しい場合は、1人では打開できない障害を用意する、全員の情報を合わせなければシナリオが解決に向かわない、といった状況に置くなどの工夫をして下さい。また、NPCを通じて間接的に手を組んだり、同じ場所に集まるよう情報を渡して、仲間にならないまでも出会えるようし向けるなどの方法もあります。
○仲間割れ
シナリオの展開上、PCが仲間割れを起こしてしまうこともあります。GMがこのような事態を仕組んだ場合は別ですが、プレイヤーがそれによるデメリットを認識しての判断であれば、パーティを分割したまま継続しても構いません。この時は、その後に生じる可能性のある不利な展開を、さりげなく示唆しておくことが肝心です。
▼続行
セッションが崩壊しないですめば、その方が良いことは間違いありません。しかし、無理にパーティを合流させる必要はなく、分離したままでも話が進められるようであれば、そのまま続けても構わないでしょう。ただし、クライマックスの場面で同じ舞台に立てるよう、時間配分や情報の与え方を工夫するべきです。
▼PCの合流
分離によって大幅にバランスが崩れたり、シナリオの展開を妨げてしまう可能性がある場合には、再び合流させるようイベントを起こしたり、NPCを通じて説得するなどの対策が必要となります。
大抵の内乱は外敵によって収まりますので、協力しなければ解決できない課題を目の前に提示すればよいでしょう。双方がいる前で突発的に事件を起こしたり、どう考えても片方が危機に合うことが予測できる状況であれば、一時的にでも仲直りしてくれるかもしれません。
また、時間に余裕があるようであれば、和解するまでの流れもイベントの1つとしてシナリオに組み込んでみるのもよいでしょう。この時は、相互の行動が把握できるようにNPCの口から情報を伝えたり、推理できるような痕跡を残させるなど、プレイヤー自身も行動調整が行えるような展開を心がけて下さい。
▼敵対
明らかにシナリオの崩壊が予測される場合、開き直って双方が敵対するようなシナリオ展開にする方法も考えられます。ただし、この時はPCとプレイヤーは別物であることを認識させ、双方に遺恨が残らないよう気を配る必要があります。
○裏切り
仲間のPCを出し抜いたり、最後に裏切ったりすることで喜びを得るプレイヤーもまれに存在します。これが課題の解決やセッションの成功に貢献する行為であればよいのですが、それ自体が目的という場合には何らかの対策が必要となります。
▼ペナルティ
こういった行為に対しては、PCを不利な状況に陥れたりするなど、判断のミスに対するペナルティを与えるべきでしょう。他のプレイヤーが全く予期していなかった場合には、裏切った側にのみ被害が及ぶようにし、他のPCを危機に陥れるのは避けるべきです。
▼バランスの崩壊
裏切りによる本当の問題は、そのPCが課題を解決するための手段や情報を独占していたり、離脱によって想定していたゲームバランスが崩れてしまった場合でしょう。
こうならないための対策としては、課題の解決方法や情報ルートを1つに限定せず、複数の手段を取りうる可能性を残しておくことです。こういった手段を取ってもダメだった場合には、素直にそのままシナリオを続けてしまうのが最もよい選択かもしれません。裏切りはプレイヤーの判断であり、GMがその責任を取るものではないからです。
しかし、そのプレイヤーがセッションの崩壊を目論んでいるように思われる場合は、他のプレイヤーに迷惑をかける道理はありません。裏切ったPCがそれ以上ストーリーに関与しないようでしたら、除外してシナリオを続けましょう。この時に限っては、NPCを減らすなどして戦力バランスを調整したり、多少強引な展開でもとりあえず情報を伝えてしまうなど、無理のある修正を行うことはやむを得ません。
先頭へ
社会的制約
セッションの中では、プレイヤーはよく社会的な制約というものを忘れがちです。キャラクターらしさを念頭に置いて行動するのは別に構わないのですが、それにとらわれて世界の基盤となる常識や概念をないがしろにするのは、逆にこの世界で実際に生きてるキャラクターを無視していることになります。
○共通理解
▼ゲームの目的
このゲームでは、個々人が頭に思い描いたキャラクターを演じることが最優先にされるわけではありません。それを下敷きに設定されたキャタクターを用いて、提示された課題をいかにうまく解決するかが目的となります。GMは何か問題が起こりそうになった場合、まずこのことをプレイヤーに理解してももらうよう努めて下さい。
▼マナーの理解
ゲームの中の世界は仮想ではありますが現実であり、キャラクターに可能な行動は無限に存在します。しかし、物理的にはできても、共通の了解を必要とするゲームとして不可能なことは幾つも存在します。根本的なことを言えば、それを守らずしてTRPGというゲームは成り立ちません。物理的な自由度に関してであれば、依頼人や困っている人を殺してしまうことも可能でしょう。ですが、それはゲームの目的に反する行為であり、ゲームの参加者としてマナー違反をしています。
▼事前の許可
非道な人間など、周囲を不快にする可能性のある役割をやりたいのであれば、最初に他に参加者に了解を得ておくべきです。そして、それを行ってもセッションが成立する条件でのみ、そのような役割を選択することができるのです。
無断で周囲からはみ出した行動を取った場合、判断を間違えば参加者全員から非難されることになります。そして、何度も同じ過ちを繰り返したり、あるいはわざとそのような行為を行うのであれば、次回の参加を断られても仕方がないでしょう。周囲の了解を得るというのは、集団でゲームを行う際に守るべき1つのマナーなのです。常に周りが何を望んでいるのかを考えるようにして下さい。また、GMが許可を出す場合でも、その他の参加者がどう思うかを予測して行わなければなりません。
○社会常識
GMは社会的制約を前提に、PCの行動を制限することが可能です。これもセッションをコントロールする1つの手段となります。
なお、プレイヤーの主張が受け入れられるかどうかの判断は、社会的制約だけでなくゲームの目的にも大きく関係します。GMはこのことを忘れないよう常に注意して下さい。
▼キャラクターの判断基準
エルモア地方で生まれ暮らしてきたキャラクターは、エルモア地方の常識や考え方に従って生きています。これはゲームの中で選択を行う際の判断基準であり、それが存在するからこそ葛藤が生まれるのです。葛藤なくしてゲームは成立しません。ゲームマスターが一本道シナリオを作成してはならないように、プレイヤーもまた世界や周囲を無視した状態でゲームを行うべきではありません。
▼基準の違い
ゲーム世界での常識と現実世界の常識が一致するものとは限りません。たとえば、エルモア地方ではまだ身分制度が存在しますし、差別的な概念が残っていたりもします。これらは世界設定やルールのページに書かれているので、必要がある場合はそちらを参照して下さい。
しかし、1つのシステムの中に社会全体の要素を全て詰め込むことは不可能です。もし不明な点があった場合は、世界設定などから読み取ったり、現実における19世紀ヨーロッパなどの資料を参考にして判断して下さい。ただし、そっくりそのままゲームに導入するのではなく、既存の世界設定に照らし合わせてみて、もっとも自然だと思われる形にする必要があります。
▼常識と判断
ゲーム世界における常識が必ずしも人間として正しいことに直結するとは限りません。ですから、常識に盲目的に従ってキャラクターを動かせばよいというものではありません。ゲームの目的であるところの、人を幸せにするということに合致しない選択は、ゲームの評価としては低いものとなります。エルモア地方で常識的であっても、必ずしも人間的に正しいと言えないことは幾つも存在します。そして、それは変化する可能性のある基盤です。自らそれが正しいかどうかを選択するのも、ゲームで行うべき選択のうちの1つなのです。
▼判定による認識
もしキャラクターに非常識な行動を取らせようとした場合、GMはプレイヤーに常識的な概念を告げても構いませんし、常識判断(一般:判断+一般情報)による判定をさせてもよいでしょう。判定に成功すれば、それが非常識な行動であると気づくことができます。
○社会の対応
PCが社会常識にそぐわない行為を行った場合、GMは何らかの対応を取らなければなりません。その行動がゲームの進行を阻害したり、シナリオを崩壊させるほどひどい場合でなければ、NPCを通じてゲーム世界の中で対処するべきです。基本的には世界の常識に照らし合わせて考え、妥当と思われるペナルティを与えることになります。
たとえば、非常識的な行動や無礼な態度を取ったがために、相手が腹を立てて情報が得られなくなることもあるでしょう。見つからなければ何をしてもよいと考えているようであれば、法律や倫理観などに応じた対応をして下さい。PCは社会の中の1人に過ぎません。法律のある社会では、犯罪を犯した者に対して罪に応じた罰が与えられるのが当たり前なのです。
○ゲーム的ペナルティ
シナリオの目的から考えて明らかに間違った行動を取った場合、当然のことながら経験点の評価は低くなります。このゲームでは、個別のキャラクターごとに評価を与えますが、非道な行為に対して周囲が見てみぬふりをしていた場合は、全員の評価を低くしても構いません。
先頭へ
脱落
○死亡
PCが死亡してしまえば、プレイヤーはゲーム世界に干渉する手だてを失ってしまいます。そもそもこのゲームは、死ぬときは簡単に死ぬようなバランスになっています。
▼回復と代償
GMのデータバランスに問題があったり、ルール解釈のミスによって死亡した場合は別ですが、PCの死は判断・予測の甘さによって起こるものですから、それをなかったことにするなど無理な対策を取る必要はありません。ゲームの目的に他人を幸せにすることが含まれている以上、戦闘というのは知恵を使って避けるのが推奨されるべきであり、無用なトラブルをうまく回避できた方が高い評価を得られるのです。
とはいえ、キャラクターの死亡後に、そのプレイヤーが退屈したり面白くないと思うようであれば、当然のことながら何らかの対策が必要となります。ただし、ミスに対して何らかのペナルティがあるのは当然のことで、回復手段を取る時はそれに見合った代償を要求しなければなりません。
▼代替キャラクター
時間に余裕があるようであれば、キャラクターシートを渡して新しいPCを作成してもらうことも出来ます。その時間がなければ、同行しているNPCのデータを預けて、それをPCのかわりに動かしてもらうとよいでしょう。他にも、誰か別のプレイヤーが受け入れてくれるのであれば、1人のキャラクターを2人のプレイヤーで動かすという手段もあります。
▼術法/奇跡
この世界には術法という手段が存在し、死亡から回復することも不可能ではありません。しかし、蘇生の術法は使い手が殆ど存在しないために、非常に困難なことになります。どちらかといえば、奇跡に期待する方が蘇生できる可能性が高いでしょう。
▼GMの手伝い
プレイヤーとしてゲームに参加するのは諦めてもらって、サブマスターとしてGMの補助をしてもらってもよいでしょう。この時、代わりにサイコロを振ってもらうなど、何らかの楽しみを与えることが必要です。
▼プレイ後の相談
もし、セッションが終わった後に時間があるようであれば、なぜ死んだのかを話し合ってみて下さい。単にダイス目が悪くて死んだのならば問題にはなりませんが、判断ミスで死亡した場合は理由を話してあげれば、プレイヤーも納得してPCの死を受け入れられますし、以降のセッションでその教訓を活かすことが出来ます。
それから、同じキャラクターを連続して使用している場合は、次のセッションに参加するためのPCを作成しなければなりません。余裕があればどんな設定にするのかを相談したり、その場で作成して次回のプレイを速やかに開始するための準備をしておくとよいでしょう。
○退席
周囲を不快にさせるような行動をとり続けて、なおかつ注意しても一向にそれが改まらない場合には、PCを没取して退席してもらうよう指示しましょう。なるべくであれば話し合いで解決した方が望ましいのですが、不可能であると感じた場合はゲームの進行を優先して下さい。
○逮捕/追放
指名手配などによってまともな社会生活が送れない状態になり、PCがゲームに参加するのが困難となってしまうことがあります。状況の回復がシナリオの内容に関係している場合は、アドリブでそのためのイベントを追加すればよいのですが、セッションの進行を妨害するような事態であれば、素直に脱落してもらった方がよいでしょう。
なお、同じキャラクターで連続したセッションを続けている場合は、そのPCを復帰させるためのセッションを組んでみるのも1つの手段です。GMにとっては非常によいシナリオのネタとなりますし、それでもダメであれば本人も納得してくれます。
○引退
経験を経て極端に強くなりすぎたキャラクターは、ゲームのバランスを崩す可能性があります。GMは自身が想定していないバランスでのセッションを行う必要はありません。プレイヤーの頼みを聞いて、そういったキャラクターでプレイを続けていても、シナリオの作成が困難になったり、ゲーム性が薄れて大味な展開になってしまう可能性が高くなります。それはゲームをつまらなくするばかりか、GMのやる気さえ削ぐ結果となりかねません。
なお、別のPCで新たにセッションを行う場合に、引退したキャラクターをコネとして利用したり、ゲストとしてシナリオに関与させるという使い方もあります。かつてのPCがセッションで登場すると、そのPCを知っているプレイヤーは喜ぶものです。単に参加を断るのではなく、そういった点で満足度を高める工夫をすると、不満を和らげることに繋がります。
先頭へ