街並み

通り商店街歓楽街高級住宅街貧民街その他


 

通り


○大通り

 都市の入り口から中心へ向かう広い通りは、人々の生活の中心でもあります。官庁等の役所や郵便局、そして警察や裁判所といった行政や司法の施設が立ち並び、中心街では教会がその偉容を示しています。大都市では劇場やスタジアムといった娯楽施設もあり、大きな商店の珍しい商品が並ぶショーウィンドウは人々の目を釘付けにします。このように大通りというのは、都市の表の顔といえる場所なのです。


▼通路
 道路は石畳が敷き詰められていて、その両側には街路樹が植えられたり、進歩的な都市ではガス燈が設置されています。通りの真ん中を馬車が進み、その脇を大勢の人が忙しく歩きます。大都市であれば、ここで流行のファッションを見ることができます。日傘をさした上品な貴婦人もいれば、ステッキをついて歩く紳士もいます。門から入ってきたばかりの旅人が他国の衣装を披露することもあれば、冒険者たちが奇抜な格好を見せびらかすように闊歩していることもあります。


▼家並み
 ほとんどの国家では建物は煉瓦や石造りで、隙間なく密集しているという印象を受けます。というのは、都市の多くは壁で囲まれており、面積が限られているためです。建物は外観を考慮して高さを揃えていることが多いようです。表通りらしく窓はガラスで、防犯用の格子も美しい装飾がなされています。塀も煉瓦や石造りで、鉄柵で囲ってあることもあります。これも模様をあしらっており、街の美観を損ねないようにしてあります。


▼治安
 大通りは身分の高い者や金銭的に恵まれた者が住んでいるため、警察や軍が警備を怠りません。ですから治安は非常によく、安心して歩ける場所でもあります。人通りが多くにぎやかで、ガス燈があるような進んだ都市では、夜間でも人々が活動しています。


○裏通り

 大通りから一歩裏手に入ると、そこは市民たちの生活する空間になります。道路は急に狭くなり、2台の馬車が擦れ違うことはできません。建物は隙間なく立ち並び、高さも揃えられてはいません。大通りの建物とは異なり壁は煙で薄汚れ、石造りや日干しレンガばかりではなく、(もちろん気候によって異なりますが)木造や漆喰の家も見られるようになります。


▼家並み
 一般的な町屋は2〜3階建てで、3〜5人程度の家族で住んでいるのが普通です。居間、寝室、台所、食堂などがあり、納屋や食料を貯蔵する地下室なども備えられていることが多いようです。職人の家では住み込みの弟子が住んでいることもあります。
 裏通りには集合住宅も多く、下宿やアパートには様々な職業の人々が住んでいます。表通りとは異なり、日雇い人夫や学生が住む低家賃の賃貸住宅の割合が高くなります。このような集合住宅には職業組合で経営しているところもあり、組合のメンバーに対して安く貸し出されているようです。


▼井戸
 道路には通常、井戸が設置されています。大きな都市では水道も普及しておりますが、裏通りでは生活用水の大半を井戸水に頼るのが一般的です。子供や夫人たちはここで井戸水を汲み、様々な家事に使用します。夫人たちはこの周囲で洗濯をするため、天気のいい日は井戸のまわりは主婦たちの社交場となります。


▼店舗
 裏通りは町屋が並ぶ都合上、生活に密接に関係する店が存在します。商店街を離れた場所にもパン屋や雑貨屋がありますし、人々が疲れを癒す公衆浴場や酒場、大衆食堂といった店はいつも市民で賑わっています。


 大通りは都市の顔ですが、裏通りは都市の真実ともいえる場所です。本当の街の姿を知りたいのならば、裏通りを歩いて人々の噂に耳を傾けてみるべきでしょう。


先頭へ

 

商店街


 商店街は都市の中心部に特に多く、日々にぎわいを見せる場所です。都市には商品の流通は欠かせません。人が集まれば様々な品物が必要になり、それを扱う商店が必ず存在します。人々が集まる商店街は情報を集めるにもうってつけの場所ですので、ぜひ有効に活用してください。


○店舗

 商店街には様々な種類の店舗があります。もっとも身近であろう商店は食料品を売る店で、パン屋、肉屋、八百屋、魚屋、酪農産品店といったものがあります。ワイン屋やお茶屋といった嗜好品を売る店や、あるいは雑貨屋を兼ねた菓子店などもこれに含まれるでしょう。
 食料以外にも、商店では日常生活に必要な様々なものが売られています。金物屋もあれば、薬屋、毛糸屋、楽器屋、本屋といった店もあります。これらのものをまとめて扱う雑貨屋は、店の少ない地域では重要な存在です。また、宝石屋や剥製屋といった貴族や金持ちを相手にする商店も都市には多くあります。
 物を売るのではなく技術を売る店として、洋品店、入墨屋、鑑定屋といったものもありますし、占い小屋などは少女たちに非常に人気があります。


○形態の変遷

 時代が進むにつれて小売店はだんだん専門家してゆき、都市には輸入品や優良商品を専門に取り扱うような店も出現しています。逆に百貨店やショッピングセンターのように、一カ所で様々な品を購入できるような店舗も誕生し、都市の新たな名所として人々の興味を引いています。
 商店街というのは、そもそもこういった総合店舗的な性格を持つものですが、ショッピングセンターは娯楽産業と一体化したり、高級感を演出することで人々を楽しませる工夫を凝らしたものです。特に大きな板ガラスを使ったショーウィンドウの登場は、歩いているだけでも人々の目を楽しませてくれるもので、散歩コースの1つとしても人気を集めています。
 同じように板ガラスの利用によって、先進国の商店街ではアーケードが設置されはじめており、新たな観光名所の1つとして機能しています。こういった場所では、夜も店舗内の明かりで外部が美しく照らされ、街灯の明かりと相まって幻想的な光景を醸し出しています。そのため夜でも人通りが多い、華やかな街として人々の注目を集めています。


先頭へ

 

歓楽街


 都市の人々が疲れを癒し、そして嫌なことを忘れて楽しむための場所が歓楽街です。朝や昼には閑散としており、ほとんど人の姿を見ることはありません。しかし夜ともなれば、都市のどの場所よりもにぎやかで明るい通りに早変わりするのです。歓楽街の店は夜遅くまで開いており、明るいランプを吊るした店舗が軒を連ねています。大きな都市では街灯が設置されていることもあり、街は深夜でも安全に歩くことが出来ます。


○酒場

 歓楽街には酒場が立ち並び、ほろ酔い加減の男たちが笑いながら通りすぎて行きます。酒場には大衆酒場のような安酒を出すような場所から、高級なワインをオーケストラの演奏つきで楽しめるような場所まで、様々なものがあります。一般の人は大衆酒場でビールやワインを飲んで、歌姫の歌や大道芸人の芸を楽しむのが普通です。中にはパブと呼ばれる、家族で訪れる地域の社交場のような酒場も存在し、子供から老人までゲームで楽しむことができます。このような酒場につきものなのがたちの悪い酔っ払いで、そこらで胃の中の物を吐き戻したり、隣の客と殴り合いの喧嘩をする者などもいます。


○ショーホール

 喫茶店とダンスホール、あるいは賭博場や芝居小屋をかねたような施設で、大衆に人気のある店の1つです。芝居小屋が観劇を主要な見せ物としているのに対して、ショーホールはその時々によって出し物が異なり、音楽や大道芸など多様な見せ物を楽しむことが出来ます。
 これは特に先進国の歓楽街に多く見られる店舗で、インシアターと呼ばれるものが変化して成立した店です。古くは宿の中庭を舞台として、旅芸人たちが音楽や大道芸を披露していたのですが、都市ではこれが屋寝付きの店舗にかわり、一般市民や下層階級の主要な楽しみの場となっています。


○女性

 歓楽街を支える人々の中で忘れてはならないのは女性の存在です。酒場や食堂の給仕や掃除婦であったり、ホステスであったり、そして娼婦であったりと、歓楽街の女性には様々な役割があります。
 ホステスの中には、宿つきの酒場で売春行為を営む者も少なくありません。ウエイトレスのような女性はともかく、ホステスや娼婦というものはみな、経済的な問題でその道に進むしかなかったという場合が多いようです。スラムで生まれ育って気づいた時には体を売っていたという者もいれば、借金の肩代わりとして農村や商人の家から売られてきたり、あるいは没落した貴族の妻や娘が娼婦として働いている場合もあります。


▼娼婦
 歓楽街には娼館と呼ばれる売春宿がたくさんあります。娼館の中には一般市民が入れないような高級店もありますが、普通はそこそこのお金があれば一晩楽しむことができます。こういった店は裏組合やギャングが関わっている場合があり、縄張り問題には非常に厳しいようです。娼婦の中には街娼と呼ばれる個人商売を行う者もいますが、こういった人たちも組合に場所代を払ったりして、何らかの折り合いをつけているのが普通です。モグリの者は処罰され、二度とその界隈で仕事ができなくなります。


○賭博場

 歓楽街には賭博を行っている店も存在します。賭博が法的に禁じられている国家の場合は、摘発を逃れるために店の地下や隠し部屋に施設を隠して、会員として登録されている人間を対象として商売を起こっています。こういった店で遊ぶためには、会員に紹介してもらうか、経営者側から信用を得る必要があります。


○裏社会

 多くの都市の歓楽街は、裏組合やギャングといった裏社会の組織が幅を利かせています。組織が店舗の経営に携わっていることもありますし、用心棒代や場所代と称して多くの店や露天商から金銭を受け取り、それらを活動資金としていることは、どの国家でも見られることなのです。
 歓楽街ではこういった組織に逆らうことはタブーとされており、組織の規模が大きい場合は警察でも手に負えない場合があります。特に店舗を経営している場合は、なるべく大人しくしていた方が賢明といえるでしょう。


先頭へ

 

高級住宅街


 貴族や大商人など、金銭的に恵まれた人たちが住むのがこの高級住宅街と呼ばれる場所です。高級住宅街は城の近くにあったり、あるいは都市の最も守りのかたい場所で閑静な住宅街を形成していたりします。大きく立派な館が立ち並び、一般市民たちの家とは異なり広い庭を構えているのが普通です。都市という限られた空間で土地を贅沢に使用するというのは、貴族や富豪たちのステータスシンボルの1つでもあり、庶民たちにしてみればこのような富と権力の象徴は不満と怒りの対象でしかありません。


▼屋敷
 高級住宅街の屋敷は石造りの2〜3階建てが多く、周囲は泥棒よけの高い塀や鉄柵で覆われています。館は外側にも贅を尽くした飾り付けがなされており、柵や門柱にも様々な趣向が凝らされています。庭にはバラなどの美しい花が咲き乱れ、整然と植えられた木々はきちんとした手入れがなされています。
 しかし、そんなことで驚いていてはいけません。一歩建物の中に入れば、外見以上の贅沢ぶりを目のあたりにすることになるでしょう。敷き詰められた絨毯は足が埋まるほど柔らかく、広々としたホールでは有名芸術家の絵画や彫刻が客を出迎えます。廊下にも異国の壺や意匠を凝らされた鎧が飾られていますし、様々な美術品を部屋一杯に所有している者もいます。大広間では晩餐会や舞踏会がひらかれ、庶民の食卓には一生のぼることのないような料理がテーブルを覆い尽くします。応接室の床には動物の毛皮が一面に敷かれており、剥製や芸術品でもある家具が備え付けられています。寝室には天蓋つきのベッドがあり、寝る前には高級な寝酒をあおり、朝になれば心地良い優雅な目覚めを楽しむことができます。


▼取り引き
 高級住宅街は市民にとっては不必要に思われる場所ですが、都市の運営には必須とも言える場所です。ここで施政に関する決定が秘密裏に行なわれていたり、陰湿な陰謀劇が繰り広げられていたりします。華やかな舞踏会の裏側で様々な密約が交わされるのは、何も特別なことではないのです。


先頭へ

 

貧民街


▼住民
 貧民街は下層の市民が住む場所です。もちろん市民として認められていない者も大勢います。貧民街に住んでいるのは経済的弱者、前科者、犯罪者、乞食、ストリートチルドレン(都市浮浪児)、自由奴隷、そして娼婦といった身分の低い者です。いわば社会の裏側で生きる者と言えるでしょう。


▼住居
 もちろん彼らはまともな家に住んでいるわけがなく、ボロボロの木造平屋や穴だらけのアパートはまだましな方で、建物の隙間や橋の下で野宿したり、下水道や地下墓地に住み着いている者もいます。


▼衛生環境
 貧民街の衛生環境は劣悪で、肺病をはじめとした疾患で死ぬ者が多数出ております。特に工場付近の街区は空気や水が汚れており、人が住むには最悪の状態にあります。洗濯をすることも少なく、衣服は鍋を使ってごくたまに洗う程度、ベッドにはノミやシラミが当たり前のようにわいているような状態です。体を洗うにも料理と同じ鍋を使い、湯浴みは年に数回がせいぜいといった具合となります。


▼無法地帯
 貧民街は公的な権力の及ばない地で、違法行為が当然のように行なわれています。スリや強盗、そして殺人までが日常の出来事のように起こります。ですから、一般市民は絶対に足を踏み入れようとはしません。旅人が迷い込んで帰ってこなかったということも、1度や2度ではないのです。貧民街の住人は法を守るという意識が希薄で、何の咎めもなく麻薬や盗品の密売をすることができます。このような貧民街の事情を利用して犯罪者が逃げ込んだり、あるいは反政府組織の拠点となることもあります。


 貧民街というとただ住みにくいという印象がありますが、住人たちにとってはそうとはいえないこともあります。確かに生活は貧しく、国家や自治体の保護もほとんど受けられません。しかし、貧民街の人々は助け合っておりますし、何より誰にも束縛されない自由を持っているともいえます。そして中には、いつかは裕福になろうとして、そして夢をかなえようとして頑張っている人々もいるのです。
 全ての都市に貧民街があるわけではありませんが、貧しい人々はどの都市にでもいます、そして、そういう者にしか見えない都市の真実というものもあるのです。貧民街もまた都市の一面だということを忘れないでください。


先頭へ

 

その他の街区


○金融街

 銀行や保険会社、それから株式取引所や大企業の事務所が建ち並ぶ区画で、駅近くの繁華街などに位置しています。こういった場所の近くには行政の中心となる建物も多く存在しており、都市の心臓とも呼べる重要な街区となります。


○職人街

 古くは仕事場の近くに居を構えるのが一般的であり、同業者や関連業者が1つの地区にまとまっていることも珍しくはありませんでした。こういった形態が維持されているのが職人街もしくは工房街と呼ばれる街で、相互に助け合いながら生活を営んでいます。また、こういった場所には組合の建物があり、後継者を育成するための専門学校を開いている場合もあります。


○工場街

 新しい産業形態である工場が建ち並ぶ街区です。職人街とは異なり、工場の労働者は他の地区から通ってくることが多く、近くても1つや2つは離れた街区に住んでいるのが一般的です。土地によっては郊外から鉄道や馬車を使って通うこともあります。
 大型の蒸気機関や炉を使用する工場には高い煙突が立っており、遠くからでも見分けることが出来ます。こういった地域では公害が発生しており、汚れた大気によって家の壁が汚れていたり、工場排水の流れ込む川が近くに見えたりするので、全体に薄汚れた雰囲気が漂っています。通いの労働者も下層身分に属する者が大半ですので、近代的な大きな建物が建ち並んでいても、どこか寂しいような印象を与えます。


○市場

 市場にはたくさんの店が建ち並び、非常に活気に溢れています。小売り市場では夫人たちが今夜のメニューを考えながら、籠をたずさえて歩いています。店の主人は声をはりあげて宣伝をし、夫人たちは少しでも安く品を手に入れようと交渉を繰り広げます。


▼種類
 市場にも様々な形態があり、それぞれ異なる機能を持っています。
 もっとも古い形態の市場は露店市場と呼ばれるもので、近郊の農家や狩人が自分の商品を露店に並べて、競り売りではなく直接対面で売り買いするというものです。
 露店市場とは異なり、競り売りで小売店と商売を行うのが卸市場で、都市には必ず存在しています。こういった市場の場合は棟を持ち、敷地は各商品ごとのセクションに大まかに分かれているのが普通です。商売は朝の6時ぐらいにはじまり、9時ぐらいには品を売り尽くして引き上げます。この時間帯の市場付近の道は、荷車を引く運搬夫や荷馬車でごった返しており、非常に混沌とした状態になります。


▼屋台
 市場の近くには屋台が多く、業者の人々はそこで軽い食事を済ませます。これらの屋台では、市場から新鮮な食材を安く仕入れているので、非常に安くボリュームがある料理を食べることが出来ます。魚のフライやふかしたジャガイモ、それからお茶やスープなどの簡単な品がよく出されています。


先頭へ

 


通り商店街歓楽街高級住宅街貧民街その他