神聖存在/天地信仰

基本情報儀式・聖職


 

基本情報


 太陽、雨、砂、風などの自然物を崇めています。その中でも天空と大地というのが、彼らの信仰する中心対象となります。
 彼らに伝わる民族舞踊や音楽の特徴などを合わせて考えると、マイエル教の影響を受けて発展したものと考えられておりますが、実際のところはよくわかっておりません。この文化を受け継いだ部族では占いも盛んで、太陽や星の位置を観察したり、風や砂紋といった自然物の動きを読んで未来を占います。


○信仰/基本

 砂漠においては、全ての恵みは空から降りて来るものであり、やがてそれらは地に還ってゆきます。生を育む太陽の光や雨は天の贈り物であり、大地はその受け皿となって人々の生活を支えます。それら生死に関わる全てのものに対して感謝を捧げるのが彼らの信仰です。


▼万物流転
 砂漠の民の自然信仰と精霊信仰の違いは、砂漠ならではの死生観によります。彼らの考え方では生と死は万物に宿るものであり、全ての存在に対して誕生と終末は平等に訪れ、無限にそれを繰り返すものと信じられています。たとえば、太陽は朝に生まれて天空に輝き、夕に死して夜に眠ります。水は乾いて天に還り、雨となりて再び生の喜びを歌う、それが砂の民の自然観です。
 また、万物は生と死を内に抱くばかりではなく、それを他に与えることで流転し、世界が動くのだとも考えられています。水は生命を潤して育み、太陽はそれを乾かし死に至らしめる。その一方で、太陽は生き物に光と力を注ぎ、水は肉を腐らせ無に返してしまう。風は命を運び生を散らし、大地もまたこれに同じ。そして、それら自然ものさえ互いを生かし、そして殺し合うというのが砂漠の信仰なのです。


▼霊魂流転
 生命に宿る魂もまた、繰り返し転生すると砂漠の人々は考えます。魂は器に宿ることで生命を生み、器から離れることで死に還らせるのです。
 彼らの思想によれば、魂にもまた生と死が存在し、死んでいる魂は器に宿ることが出来ず、生ある魂となってはじめて生命を誕生させる力を持つのです。そして、彼らにとっての死んだ魂とは砂であり、生ある魂とは星となります。それゆえ、彼らが人の行く末を占う時、砂と星の動きが特に重要な手がかりとされます。
 死んだ魂を生に蘇らせ、生ある魂を肉体という器に宿らせるのは光だと考えられています。昼の太陽は砂となった魂に命を与え、夜の太陽である月は生を待つ星を地に送り出し、器に宿らせることで生命を誕生させるというのが、彼らにとっての魂の流転なのです。このような概念を持っているため、砂漠の民にとって太陽、月、星、砂という存在は、信仰の対象として特に重要なものとされます。


○信仰/不死

 このような万物流転の信仰を抱きながらも、それでも永遠に憧れる者は後を絶ちません。それは砂の中で乾燥した遺体がミイラとなり、いつまでも朽ち果てることなく存在するのを見てか、あるいは砂漠の変わらぬ風景を見続けながら、終わりない旅路を繰り返してきたためなのかは分かりません。いずれにせよ、永遠不滅を夢見る者たちが存在し、彼らは砂漠の自然信仰を下敷きにしながらも、新しい思想を生み出していったのは事実です。
 あらゆるものに生と死の素が含まれているという考え方は変わりませんが、彼らにとって天上は生の世界であり、地底は死の世界だと認識されています。そして、死者の魂は天に還り再び地に降りるのではなく、砂の下にある死者の国で眠りについているのだといいます。そこは天国でも地獄でもない、ただ眠り続けるための死の世界です。しかし、魂が宿る器と彼らを目覚めさせる者が存在すれば、再び生を得て活動できるものと彼らは信じています。
 彼らがいう器とは遺体に他ならず、それを永遠にとどめるということはミイラにして保存することを意味します。この場合のミイラというのは、我々が一般に思い浮かべる包帯に包まれたものではなく、砂の中に埋もれてそのまま乾燥し、干涸びて畏縮した死体のことです。彼らは遺体をそのまま砂漠に埋めたり、砂を敷き詰めた棺に横たえて埋葬します。それがかなわぬ時は副葬品として砂を入れておく習慣があります。
 死者の国にいる魂を目覚めさせ現世に呼び戻すのは、霊媒師の役目となります。彼らの起源はについてはよくわかっておりませんが、おそらくは南の石文化圏で活動していた聖職者か、精霊信仰者に由来するものと考えられています。彼ら霊媒の中には、死者の魂を召還して使役したり、不死者を操る者が存在するといいます。不死を夢見る者たちにとって、このように使役される死者というのは現世で罪を犯した者であり、霊媒師に使われることで罪を償い、清らかな魂に戻るものと信じられています。そのため、彼らにとって霊媒師の行動は善行とさえ受け止められているのですが、エルモア地方の人々はもちろんのこと、一般の砂漠の民にとってもこれは異端と考えられており、忌避される存在となっています。


○その他

▼隕石
 砂漠に隕石が落ちることがありますが、これも砂漠の民にとって信仰の対象となります。部族によって異なりますが、隕石は太陽の欠片と考えられていたり、落ちた星、すなわち生ある魂と信じられているようです。先に逝った大事な人の魂が還ってきたのだと信じる者も多く、それを肌身離さず持っていれば、やがて生まれ変わって自分のもとに帰ってくると考えられています。

▼暦・行事
 天体の動きを読む占い師の中には、暦をつくるための知識を貯えている者もおり、古の王国では重要な役職にいたこともあります。また、砂や水の流れを読む者たちが、やがて気候や農業に関する詳しい知識を身に付けてゆき、種蒔きの時期や耕作する作物の種類などについて助言を与えることも珍しくありません。


先頭へ

 

儀式・聖職


○儀式場

 基本的に天地信仰においては、教会や神殿といったものが建てられることはありません。というのは、砂の民の多くは移動生活を行なっておりますし、砂地にそれらの施設を建てたとしても、定期的に手入れしなければ砂に埋もれてしまうからです。
 彼らが祈りを捧げる場合は、太陽、星、川といった対象を直接崇めます。基本的に偶像崇拝は行なわないため、それらの代わりに用いられるものもありません。ただし、個別の自然物も信仰の対象となるため、奇岩や川といった対象を祀ったり、その場所を集会場とする部族もいます。また、砂漠を離れる時などにひと掴みの砂を取り、持ち歩くといった習慣も一般的に行なわれています。


○聖職者

 一般的に砂漠の民の信仰において、特別な宗教組織というものは存在しません。ただ、自然を司る者として地水火風などの系統を操る術法師は敬われておりますし、特に砂系の術を行使する者は生活を送る上でも非常に役立つため、部族の中で高い地位に就くことは珍しくありません。
 また、死者の魂を慰めたり、その害から人々を守る霊媒師たちも、特別な尊敬を集める立場にいます。なお、砂漠の民に限ってのことですが、こういった表の霊媒師のことを鎮魂師と呼び、死者の霊を蘇らせようとする者は死霊使いと呼んで区別しています。
 この他、自然物の動きを見て占いを行なう者たちや、マイエル教の巫女だけが知るという舞いを身につけた鎮魂師、あるいは呪歌系の術を操る呪曲師といった存在も、神秘の存在として一目置かれています。


▼楽師
 満天の星を眺めながら詩を吟じ、月光とともに眠る砂に命を与える。あるいは、植物の恵みを祈る声を天に届け、安らかな眠りに誘う子守唄を死に至る者のために奏でる。それが砂漠を渡り歩く放浪の楽師の、聖職者としての活動となります。力ある音や言葉は霊歌あるいは霊言と呼ばれており、これを紡ぎ奏でる作業は神聖な儀式としてとらえられています。
 彼らは各地の伝承を知る者でもあり、文化の守り手としての役割も負っています。また、ささやかながら各地の文化的な交流を手助けしたり、部族間の連絡役を担ったり、あるいは生活の知恵を共有するための渡し役としても感謝されています。

▼占い師
 太陽、月、星、砂といった自然の流れを読み、予言や示唆を与える役目です。占いの手法には様々あり、カードや天秤といった道具を使う者や、砂のつくる紋様を呼んで判断する者などがいます。また、ただ予兆を感じ取るだけでなく、風が刻んだ砂の紋様に手を加えて未来を変えたり、化粧を施して不吉を回避するといったまじないを行なうこともあります。

▼舞い師
 特別な舞い踊ることによって、霊的な力を呼び起こす者たちです。ゴーストダンスと呼ばれる降霊の踊りで死者の霊を呼び寄せたり、作物の順調な育成を祈願したりします。これにも紋様文化が影響を与えている場合があり、足跡の軌跡で神託を行なったり魔除けの結界を張るといった手法も存在します。


○術法

▼自然の秘法
 自然を操るための術で、砂系、地系、風系、水系などが主となります。

▼霊媒系
 霊媒師が霊と交信するために用いる術で、エルモア地方では異端の技とされています。リビングデッドや霊体など、不浄の者を払うこともできます。

▼呪舞系
 マイエル教の巫女の舞いから派生した系統で、踊りによって霊的な効果を生み出します。おそらくは黄人の使い手から伝わったものが、長い時間をかけて独自の形式に変化したのでしょう。

▼呪歌系
 歌や音楽に魔力をのせて、周囲にいる者の精神に影響を与えます。術者の多くは各地を放浪し、古い伝承歌などを伝え歩いています。

▼予知系
 未来の状況を占うための術で、砂読みや星読みなどと呼ばれる占い師が用いています。

▼霊砂系
 ペルソニアの一部の部族にのみ伝わる技で、霊砂(エーテルダスト)を利用することによって様々な術を使うことができます。この系統についてはペルソニアでもほとんど知られておらず、実際の内容はまったくわからない状態にあります。なお、この使い手にとっての霊砂は、地上に降りてきた星、あるいは月の光が結晶化したものであり、命の素を宿していると考えています。


先頭へ

 


基本情報儀式・聖職