水運交通機関

船舶潜水機械


 

船舶


○利用状況

 陸上交通の主役として期待されている鉄道は、建設に莫大な費用がかかるという欠点があります。それに比べて動力機関を搭載した船舶というものは、既存の帆船や牽引船で使われていた運河や港湾設備をそのまま利用できるため、経済面において優位な立場にいるといっていいでしょう。また、出力当たりにつき運搬できる貨物量も多いことから、非常に効率のよい輸送手段といえます。
 実際、船は馬に次いでよく利用される交通機関であり、海洋、河川、湖上とあらゆる航路が確立されています。幾つかの国家ではペルソニア大陸との間にも定期便が出ておりますし、最近では霊子機関を搭載した船舶によって、新大陸エスティリオへの渡航も可能となりました。それがまた、海上交通機関への期待をあおる結果となっています。
 船舶について最も進んでいる国家は海の覇者ロンデニアであり、新大陸エスティリオへ最初の渡航を果たしたのもロンデニアの霊子汽船です。その海軍力もまたエルモア随一と言われています。


○種類

 船には人力や畜力を利用するもの、風力を利用するもの、機械動力を利用するものの3つがあります。それぞれに利点と欠点があり、場所や用途によって使い分けられています。


▼人力船
 ボートやカヌーなど、オールで水を掻いて進む小型の舟です。かつてあったガレー船という大型の人力船は効率が悪いことから、すでに帆船や汽船にその座を明け渡しています。


▼牽引船
 牛や馬など家畜の力で船を引っ張って進めるのが牽引船です。河川や運河で利用されるもので、川岸に数頭の家畜を用意して陸上から船を牽引します。あまり速くはありませんが、風がなくても進むことができます。流れが緩やかな場所であれば上流へと進むことも可能です。


▼帆船
 大きな三角帆で風をとらえて進むのが帆船です。帆の角度を調整することによって、進む方向をコントロールすることができます。順風では20キロ以上の速度で移動することができます。ただし、動力は完全に風まかせであり、風がやめばその動きはピタリと止まってしまいます。


▼汽船
 蒸気機関や霊子機関といった機械動力を主要な推進力とする船です。大きさにはさまざまあって、長さ数十m、総トン数で数百トンといった大型船舶もあれば、小型の霊子機関を船外に積んだだけの小舟もあります。その推進方法によって、外輪船やスクリュー船といった分類がされることもあります。
 大型汽船は同時に風力も利用するのが普通で、帆船と同じくマストには大きな帆が張ってあります。風がある時には帆船として、風がやんだら動力船として動かすことができるのです。
 なお、大型汽船は条件が良ければ、時速20kmほどのスピードで運行することができます。波の荒い海洋上でも、大体10〜15kmほどの速度を出すことが可能です。


○船旅

 天候さえ良ければ、船での旅は非常に快適なものになるでしょう。船の速度は時速10数kmと馬車と同程度なのですが、料金は馬車よりも安いので、水上の旅が特に快適な夏の間は、蒸気船と競合する街道では駅馬車が本数を減らすケースもあります。
 海はもちろん、たいていの大河川では定期船が運航されておりますし、ロンデニアやエリスファリアといった海洋国家では、アリアナ海を豪華客船で1周するツアーもあり、貴族や金持ちがのんびりとした船旅を楽しむことができます。


▼客室
 客室には一等から三等の船室があります。一等船室はベッドが2つ並んだ狭い個室で、準一等というベッドが1つの部屋がある場合もあります。二等の船室はソファがいくつか並べられた大部屋で、三等の船室は桟敷席となります。どちらも長距離の船旅では快適とはいえない状況ですが、特に三等船室は通気の悪い船底に大勢が詰め込まれる非常に息苦しいものです。四等船室というものも存在するのですが、これは貨物と一緒の船倉のことで、正式な客室ではありません。また、3段以上のベッドが複数並べられた、寝るだけのためのスペースが設けられている大量輸送船も存在します。
 これらは通常の船舶についてであり、豪華客船の場合は全てがゆったりとした個室となり、中にカジノや図書館まで整備されているものもあります。


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潜水機械


○潜水球

 潜水の目的で最初に作製された機械というのは、潜水球(ダイビング・ベル)と呼ばれる、直径2m未満の釣り鐘型あるいは球形をした鉄の塊でした。空気は手動式のポンプで船や地面から供給される仕組みで、ホースで潜水球と繋がっていました。これは橋の基礎工事の目的から開発されたもので、だいたい5〜6mの深さに潜ることができます。これは後に真珠貝などの採集や海洋調査にも利用されるようになり、現在でも潜水作業の場では広く利用されています。


○潜水服

 後にゴム引きの布で全身を覆う潜水服も考案され、潜水球よりも自由に動くことが可能となりました。空気の供給は潜水球と同じ仕組みで、バケツ型の金属製ヘルメットにホースを連結し、ポンプで潜水服の内部に空気を送るものとなります。しかし、これは簡単に破れてしまうこともあって、潜水球ほどの信頼は得られていないようです。また、水圧に耐えることもできないので、やはり数mの潜水にしか用いることはできません。


○潜水艇

 潜水球も潜水艇の前身ということができるでしょうが、自力で移動できるものではなく、船や地面とケーブルで繋がっていなければ活動することは不可能です。自分の力で動く機械という意味でいえば、聖歴757年にロンデニアで考え出された樽型潜水艇が、エルモア地方で初めての潜水機械ということができるでしょう。これは大型の樽に自転車のペダル機構を取り付け、それをこいでスクリューを動かす仕組みでした。
 これを元にして聖歴762年に開発された潜水艇は、長さ2mほどの流線型のもので、現在の潜水艦に非常に近い形状のものとなります。これも軽量化のために動力機関は積んではおらず、1人が伏せて寝るような形で内部に潜り込み、足こぎでスクリューを動かすものでした。顔の横に窓はついており、ゴムを塗った布でつくった手袋が外部に突き出ていたので、艇外作業が可能となっていました。しかし、潜望鏡が装備されておらず、前方を確認することが出来なかったために、1号機は前方にあった岩に激突して浸水し、操縦者は命からがら逃げ出したというエピソードも残っています。
 聖歴789年の現在では技術も進歩しており、霊子機関を動力とする長さ5mほどの大型潜水艇も開発されていますが、まだ実用のものとはなっておらず、未だ実験が繰り返されているようです。


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