基本情報
○ティルノーブリア地方
ティルノーブリア地方はぺトラーシャの南東に位置しており、東はカイテイン帝国、南はルワール大公国と接しています。古くは戦いに巻き込まれることが多かった地域で、南部にはエクセリール王朝時代の砦跡が幾つも残っています。
一帯にはランスオール平原が広がっており、トウモロコシや麦類の栽培が盛んに行なわれています。自然に恵まれた美しい景観を誇る地域で、ペトラーシャの庭園と呼ばれることもあります。
○地勢
サリュンティル市は平野部にあり、全体に北東にある「よもぎ丘」から南西に向かって、なだらかに傾斜しています。
▼北部
北部は緩やかな傾斜地となり、北へ進むと緩やかな丘が幾つもあらわれます。郊外ではブドウやリンゴなどの栽培が盛んに行なわれています。
▼東部
都市の東部を流れる「フルーレ川」から東は、全体に北東に向かってなだらかに傾斜しています。市から少し離れた辺りはゆるやかな丘陵が続く土地で、ハーブ畑が広がっています。
▼西部
南から北に向かって「オルセル川」が流れており、南西の流域には「ミルナの森」が広がっています。川の西側は開けた平野部となっていて、果樹園や小麦畑があります。
▼南部
南部は全体に平野が広がっており、小麦やトウモロコシなどの農作物が栽培されています。
○水域
サリュンティルには「オルセル川」と「フルーレ川」の2つの河川が流れています。
▼源流
オルセル川の源流はヴェルゼン川で、ルーエンス山脈の東端にあるフェノリーナ山から流れています。これは南にあるムーラル市の辺りでラナン湖に注ぎ、そこで北へ向かうオルセル川と南に向かうファルム川に分流します。
▼オルセル川
サリュンティルの西を流れる川で、川幅は100m前後となります。この河川は大きく蛇行しながら北へと進み、ロレイラ湖へと注ぎ込みます。
▼フルーレ川
川幅50m前後の河川で、都市を南北に真直ぐ貫流しています。これはオルセル川から水を引くためにつくられた小運河で、護岸工事がなされています。この川の長さは約12kmほどで、始点はサリュンティルから南に3kmほど進んだ、ディノンの町がある場所となります。
▼合流/分岐
オルセル川とフルーレ川は、サリュンティルから北へ5kmほど進んだ、メイフィアの町がある地点で合流します。河川はここで、このまま街道沿いに北上するオルセル川と、蛇行しながら北東へと進むレティアーナ川の2つに分岐し、街道沿いのサン・アルルの町で再合流を果たします。
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周辺地域
○地域
▼北部
よもぎ丘、ペルグラーノ村、メイフィアの町、ローゼンハイム市、ワールフィリアの町、サン・アルルの町、サナラーラ市▼南部
ルセッテ村、ディノンの町、オーリオ村、フロンドの町、ムーラル市、フェノリーナ山、アルティナートの町▼東部
動物の森、ラベンダーの丘、フォレーゼ村、エディスワールの町▼西部
グラスベリー・フィールド、石鹸の森、虫食い谷、ミルナの森
▼レオリアの丘
都市の北西部の高台は、レオリアの丘と呼ばれる高さ約30mほどの丘陵で、エクセリール王朝時代に砦が置かれていた場所です。その後、エリンブラッフ王国の時代になると、この丘には砦を改修したベルアジュール城が建てられました。
かつてのベルアジュール城塞の敷地は、現在の緑林通り、剣通り、斜陽通り、朽木通り、修道院通りで囲まれる部分となります。しかし、聖歴524年のことですが、地震による斜面の崩落が起こって、この城塞の半分以上が土砂に飲み込まれてしまいました。
その後、崩落をまぬがれた建物は長く閉鎖されていたのですが、ペトラーシャ継承戦争時に残った部分を改修して、都市防備のための砦として用いるようになります。しかし、人民革命以後の平和な時代が訪れると、砦は再び改修されて公園として市民に開放され、現在は観光名所の1つとなっています。
▼花冠の丘
市の東に広がる丘で、坂を登り切る手前辺りには密集した住宅地が広がっています。そこから少し離れた郊外の土地には、畑作や酪農を営む農家が住んでおり、周辺は見渡しのよい草原となっています。これより東に1kmほど進むと、ハーブや鑑賞花の栽培畑が広がる「ラベンダーの丘」に行き当たり、そのすぐ近くにはハーブ村として知られるフォレーゼ村があります。
▼よもぎ丘
街の北東にある小さな丘で、頂上にはエクセリール王朝時代に建てられたサンディール砦が今も置かれています。丘の裏手もなだらかな起伏の丘陵地が続いておりますが、そこから少し進むと小高い山や林があらわれるようになります。
この周辺では酪農が行なわれており、牛や羊が草を食む牧歌的な風景が広がっています。休日にはピクニックに訪れる人も多く、のんびりと休暇を楽しむ家族連れやカップルの姿が見られます。特に早春から初夏にかけての風景は美しく、ヒナギク、ノアザミ、タンポポなどの花々が咲き乱れ、人々の目を楽しませてくれます。
▼ペルグラーノ村
市の北西にある丘の上の村で、一帯ではブドウの生産が行なわれています。
▼メイフィアの町
オルセル川とフルーレ川の再合流地点にある町で、サリュンティルから北に5kmほどの場所にあります。この辺りは牧歌的な光景が広がる農村地帯で、畑作や酪農が主要な産業となります。
▼ローゼンハイム市
サリュンティルから北に100kmほど離れた場所にある市で、オルセル川を通じて船で行き来することが出来ます。この一帯は塩の町として栄えた場所で、古くはエリンブラッフ王国の首都が置かれておりました。街の北にあるロレイラ湖畔には、現在も王城として使われていたサン・リヴィリオン城があり、周辺地域に残されている幾つもの小城や砦跡とともに、観光資源として利用されています。
▼ワールフィリアの町
サリュンティルとローゼンハイム市の間に位置する町で、北東に50kmほど離れた場所にあります。町の東にはレティアーナ川の水が注いで出来たシェリル湖があり、サリュンティルとは船での通航が可能です。
▼サン・アルルの町
オルセル川とレティアーナ川が合流する地点にある宿場町で、サリュンティルから70kmほど離れた場所にあります。ここは古くに医療の守護聖人アルルが住んでいたところで、町の中心には彼女を祀る聖アルル教会が置かれています。このような経緯から、この町には学問院付属の「サン・アルル医療学校」があり、高度な医療教育を受けることが出来ます。また、ここには有名な薬草園があり、国外のものも含めて様々な薬草の栽培が行なわれています。
▼サナラーラ市
サリュンティルから北西へ150kmほどの距離にある市で、芸術の町として国外にも広く名を知られています。国の内外を問わず集まった芸術家たちは、資本家の保護を受けて活動し、たくさんの有名な作品を残しています。この都市にはエルモア最大の音楽堂があり、高名な音楽家たちが演奏に訪れます。
▼ルセッテ村
サリュンティルの南端に接する農村で、フルーレ川沿いで小麦、トウモロコシ、野菜などの栽培を行なっています。市の南東にある筒抜け通り、朝市通り、粉引き通りといった場所も、かつてはこの村の一部だったのですが、都市が拡大するにつれて市街地に飲み込まれてしまいました。
▼ディノンの町
オルセル川とフルーレ川の分岐点がある町で、周辺では小麦などの農作物が栽培されています。この一帯には、オルセル川からの水が滝のように地下に落ち込む、「陥没河川洞」と呼ばれる洞窟への入り口が幾つも開いています。
▼オーリオ村
サリュンティルの南西2kmほどの場所にある村で、西側には「ミルナの森」が広がっています。この一帯ではアブラナやヒマワリを栽培しており、春〜夏にかけて鮮やかな黄色の花々が、じゅうたんを敷き詰めたように一面に咲き揃います。収穫した種は食用油、灯火、潤滑油、飼料などに利用されており、サリュンティルの食卓を豊かにしたり、工業の発展を大いに助けています。
▼フロンドの町
サリュンティルから南に10kmほど進んだ辺りにある、美しい田園風景が広がる田舎町です。ここには玩具メーカーである「クライド社」の縫製工場が置かれており、ここで働くサリュンティル出身者もいます。
▼ムーラル市
サリュンティルから50kmほど南に進んだ場所にある、人口10万人ほどの都市です。街の北にあるラナン湖には、フェノリーナ山から流れるヴェルゼン川の水が注がれており、ここで北へ向かうオルセル川と南に向かうファルム川に分岐します。
ここは玩具の製造で有名な街で、玩具メーカー、工房、裁縫工場などが集まっています。特にこの地方で見られる、ムーラルラビットという小型のトビウサギのぬいぐるみが人気があり、ブランド品として国外へも出荷されています。
▼フェノリーナ山
ルーエンス山脈の東端に位置する険しい山で、標高2800mに達します。麓には温泉が湧く場所が幾つもあり、保養地としても知られています。
この山の中腹には、ペトラーシャ連合王国の侵攻から逃れて来た人々が隠れ住んだ、古い時代の住居が立ち並んでいます。これらの家々は崖地や岩棚にへばりつくように建っており、外部と連絡する道とはたった1つの吊り橋だけで繋げられていました。現在、建物は遺跡として放置されており、誰もいない町としてひっそりと静かに佇んでいます。
▼アルティナートの町
サリュンティルから南西に50kmほど離れた場所に位置する、フェノリーナ山の麓にある小さな町です。ここは温泉保養地の1つとして知られており、長期滞在する客もいます。
▼動物の森
よもぎ丘と花冠の丘の間にある朝日坂をしばらく東に進むと、幾つかの農家が集まった小さな集落に行き当たり、その周囲には木々の生い茂る林が点在しています。それらの中にはタヌキ林や小リスの森など、特定の動物が集まって暮らしている林があり、全体を動物の森と呼んでいます。
▼ラベンダーの丘
市の東にある花冠の丘を越えると少し緩やかな下り道となり、耕作地や草原が広がるのどかな風景が見えて来ます。そこからさらに進んで市の端から1kmほど離れると、起伏の小さな丘に差し掛かります。
この一帯ではラベンダー、ジャスミン、タイム、セージ、バジル、ミント、ローズマリーなど、様々な種類のハーブを栽培しており、さわやかな香りが辺り一面に漂っています。特に初夏のラベンダー畑は美しく、遥か向こうまで紫色の可憐な花がいっぱいに咲き乱れ、まるで妖精の国に訪れたようかのな、何ともいえない不思議な気持ちにさせてくれます。
▼フォレーゼ村
ラベンダーの丘のすぐ近くにある農家の村で、ハーブ村として知られています。ハーブを使った郷土料理のレシピが豊富で、この村でしか食べられない料理もあるそうです。
▼エディスワールの町
市の東端から3kmほど進んだ辺りにある小さな町です。この辺りは美しい田園風景が広がる静かな土地で、画家カルモーナや劇作家ワイリーなどが住み、様々な名作を誕生させたことで知られています。特に、町の近くにあるアマージャの丘からは、一服の絵画のような景色を臨むことができ、近くの別荘で休暇を過ごす者も多くいます。
▼グラスベリー・フィールド
オルセル川の西に広がる平野で、果樹園や小麦畑がある農地です。ここは聖人ルイーズ=アシェリアが、初めてグラスベリーの苗木を植えたとされる土地でもあり、グラスベリー園が広がっています。この周辺は小さな起伏しかありませんが、その西に広がる石鹸の森を越えると、虫食い谷と呼ばれる複雑な地形の土地になります。
▼石鹸の森
石鹸の実をつける「ソープ・ツリー」が生える森で、グラスベリー・フィールドの西に広がっています。石鹸の実というのは、その名の通り石鹸成分を含む実で、これをつぶしてこすり合わせると泡が出てきます。市の周辺では昔から、この実を乾燥させた粉末を石鹸として利用しておりました。また、木の枝にも同じ成分が含まれており、現在でも子供たちはこの枝を水に入れてかき混ぜ、シャボン玉をつくって遊んでいます。
▼虫食い谷
グラスベリー・フィールドから西に進んだ辺りには、石灰岩が侵食して出来た陥没孔や、そこから繋がる鍾乳洞が存在しています。また、きれいに分かれた地層の見える岩山や、急にせり上がって塔のように地面から生えている石柱群などもあり、不思議な動植物も多く住んでいます。この周辺には伏流水の一部が見える急勾配の谷や、いきなり縦穴があらわれる危険な場所もあるため、地理に不案内な者は注意して歩かなければなりません。
▼ミルナの森
市の南西に広がる静かな森で、オルセル川の東岸を被っています。ここにはブナ、オーク、カバノキ、シナノキ、クリ、カエデ、トネリコ、ナナカマドなど、様々な種類の落葉樹が集まっており、秋には美しい紅葉で彩られます。また、この森にはシカ、ウサギ、キツネ、アライグマ、イタチ、リスといった多くの動物たちが住んでおり、市の郊外に姿をあらわすこともあります。
この森には「ミルナ」という魔女の伝説が残されているのですが、その逸話には様々な内容のものがあり、一貫したイメージで描かれているわけではないようです。たとえば、街を疫病から救った薬師として伝えられる場合もあれば、異端の魔術を使う黒魔女として忌み嫌われていたり、はたまた精霊を使役して悪さをする者をこらしめたという伝承や、森で迷った子供たちに宝物と引き換えに帰り道を教えるといった、童話めいた昔話として語られているものもあります。その容姿も醜い老婆から絶世の美女、あるいは女性に変身した悪魔や、妖精やカラスが姿を変えたものなど、まったく共通点が見られません。
ただ、1つだけ言えるのは、ここは木々が深く生い茂った迷いやすい森であり、用のない者はうかつに足を踏み入れるべきではない、ということです。そのため、魔女ミルナの一連の伝説も、子供たちが森に迷い込まないよう、ばらばらに創作された昔話群だと考える研究者が多いようです。
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