サリュンティル市


 

エリアラ:「では、サリュンティル市の概要について簡単に説明します」

 サリュンティルはペトラーシャの南にある、観光を主体として発展した都市です。ここはユークレイ、カスティルーン、ペトラーシャを結ぶ三国鉄道の南の終着駅もあり、数多くの観光客が訪れます。
 この街の名所といったら、なんといっても「天使の広場」ですよね。サリュンティル市は別名「天使の降りる街」といって、天使の広場では本当に奇跡が起こるんですよ。この広場に吹くつむじ風に包まれると、足の悪い人が立てるようになったり、昔の傷跡がなくなったりという奇跡が起こるんです。街の人はこの風のことを、「癒しの風」とか「天使の口づけ」なんて呼んだりしています。

 その他に有名なのがグラスベリーっていう果物です。街の主要産物の1つで、これなしではサリュンティルを語ることはできないくらい。

 

グラスベリー

 大人の腰丈ぐらいの高さの潅木で、初夏にキイチゴほどの大きさの実をつけます。この実はガラスのように透き通っており、皮を透かして向こう側の景色がはっきりと見えます。このことからグラスベリーという名がつきました。実は少し酸味のあるマスカットのような味がします。水分を多く含むため保存性は悪く、ペトラーシャではこの実をジャムにしたり、果実酒に加工したりしています。


 

 これがとれる季節(ちょうど桜が散った頃ですね)には、グラスベリー祭が開かれて、街をあげての大騒ぎが繰り広げられます。いたるところでグラスベリー酒やグラスベリーパイがふるまわれて、街のかしこで歌をうたったり踊りをおどったりしています。ほんとに楽しいですよ。

 あと、こんな言葉なんかもあります。

 

「僕たちの間には、グラスベリーが咲いてるよ」

 グラスベリーを2人で摘みにいけば、その2人はこれから1年のあいだ、決して別れずにすむという伝説があります。そこから派生して、今では「ずっと一緒にいようね」という意味で使われているようです。


 

 私にもこんなこと言ってくれる人いないかしら? ……ごめんなさい、独り言です。

 (こほん)……さて、続きを。

 サリュンティルは国境のすぐ近くに位置しているので、南のルワール大公国やエリスファリア、お隣のカイテイン帝国なんかからも観光客が訪れます。気候も良くてとても住みやすいことから、他の都市や外国から移住してきた方々も多くいます。あと、みんなのんびりしていて気のいい人が多いせいか、亜人の方が住んでるアパートなんかも街中にあるんですよ。めずらしいですよね。それと、この街は音楽とか絵画とか文化的な方面にも力を入れていて、舞台俳優や画家になることを夢見ている若い人がいっぱいいます。よく街角で似顔絵描きをやっている人とか見かけますよね。

 この街の人はみんなひなたぼっこ好きです。午後にお茶を飲む習慣もあって、ティーハウスのテラスなんかで、太陽の光をいっぱいに浴びながら、ゆっくりとお茶を飲んだりお菓子をつまんだりしています。
 あと、新しいものや珍しいものが大好きで、三国鉄道を敷設する時も、まるっきり反対意見が出なかったくらいです。あ、でも、古いものをすぐに忘れてしまうってわけじゃなくて、昔からの伝統も大事にしています。緋焼き陶器みたいな伝統工芸もちゃんと残っているんです。

 サリュンティル市っていうのは、だいたいこんな感じの街です。どうですか、あなたもこの街に住んでみませんか?
 ……あ、もちろん市役所への手続きは忘れずにね☆


 ☆おまけ

エリアラ:「ついでに、サリュンティルの流行を少々お話しますね」

アンソニー:「僕たちの写真を見てもわかるように、服装なんかはけっこう軽めのものが流行りですよね」

エリアラ:「暖かいですからね。でも、冬になるとけっこう雪も降るし、そこそこ冷え込みますけど」

アンソニー:「今年の冬はレッグウォーマーが流行でした。ゆるめに巻くのがポイントで、毛糸のリボンなどでアクセントをつけるとまた違った印象を与えま〜す。さて、来年はどうでしょうねえ?」

エリアラ:「私も黄色とピンクと、それから空色のやつを買ってしまいました。冷え症なもので、ずっとつけてましたよ」

アンソニー:「空色のやつがよく似合ってましたけど……エリアラさんって、けっこうミーハーですよね」

エリアラ:「うっ……何も言い返せないのが悔しい……」

アンソニー:「まあ、僕も人のことは言えないけど。結局、新しいコート買っちゃったし」

エリアラ:「そんなもんですよ。……さて、次は食べ物なんてどうでしょう?」

アンソニー:「サリュンティルの定番といえばグラスベリーパイですが、最近の流行となるとやっぱり……」

エリアラ・アンソニー:「ノルティ焼きですよね〜♪」

アンソニー:「ノルティ焼きってのは、屋台なんかでよく売ってるお菓子で、焼いた小麦粉に果物の蜂蜜づけをはさんだやつです」

エリアラ:「新発売の三色ノルティがもう絶品で……」

アンソニー:「あと、リムロック風のアップルパイなんかもいいですよね。ジャム入り紅茶なんか飲みながら……」

エリアラ:「シロップ漬けのリンゴやベリーをスポンジに乗せて、それをパイ皮でつつんで卵黄を塗ってオーブンで焼くお菓子なんですけど、これがまたおいしくておいしくて……」

アンソニー:「やめられないとまらない、と」

エリアラ:「だって、ほんとにおいしいんですもの」

アンソニー:「それで最近、いいふとももしてるんですね」

エリアラ:「いつ見たんですか〜? 気にしてるのに〜」

アンソニー:「はっはっは、僕が知らない秘密はないのだ」

エリアラ:「う〜、でも反論できない。明日から少しひかえなきゃ」

アンソニー:「そんな無理しなくても、スタイルいいじゃないですか」

エリアラ:「女の子は見えないところが気になるものなんです。……って、もうこの話題はやめましょうよ。だんだん落ち込んでくるから」

アンソニー:「それじゃ、本とか舞台の話なんかはどうでしょう?」

エリアラ:「本はやっぱり、ラングリット=バイター氏の推理小説が一番ですね。なかなか手に入りませんけど」

アンソニー:「舞台だと、最近は革命ものなんかが多いですよね。うちの国のやつもそうだけど、ルクレイドとか、最近だとエストルークのやつなんか」

エリアラ:「でも、ちょっと殺伐としてますよね、内容が」

アンソニー:「この街、平和すぎますからねえ。みんな、刺激に飢えてるんでしょう。僕がドキュメンタリーを書いた方が、よっぽど街に衝撃を与えそうな気もするけど……」

エリアラ:「あなたのはシャレにならないんですよ。ほんとに何でも知ってるんだから……いったい、どうやって調べてくるんですか?」

アンソニー:「それはもちろん秘密ですよ。もっとも、そこがまたミステリアスでたまらないっていう評判なんですけどね」

エリアラ:「嘘いわないで下さい」

アンソニー:「心外ですねえ。まあ、いいや。僕がどれほど愛されているかについては、街の人々との触れ合いトークでわかってもらえるでしょう。というわけで、そろそろ街の説明でもはじめましょうか?」

エリアラ:「そうですね。それでは皆さん……」

エリアラ・アンソニー:「また後ほど〜♪」


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