ユークレイ


 


○自然

 カイテインとカルネアの間にある国で、北と南の一部が海に面しています。カルネアとの間には『大森林』が広がり、そこにはエルフが生息しています。
 北部は亜寒帯に属し、半年は冬が続くという気候の厳しい地域です。海は流氷に覆われ、それが移動したためしはありません。夏の平均気温も10℃後半というのが例年です。降水量は年間を通してほぼ一定で、年による変化も殆どありません。
 湖沼の多い国土で、特に北部地域に集中しています。北部には周囲300mを越える湖が4万以上もあり、そのうち『凍湖』と呼ばれる夏でも溶けない氷に覆われた湖が、1万以上も存在します。これらの湖には夏季に渡り鳥たちが訪れ、湖面を優雅に泳いでいます。北部に住む狩猟民は、この鳥を狩って食料や生活用品を手に入れます。特に、リュクティア湖という大きな湖には白鳥の大群が訪れ、鳥の楽園と呼ばれています。


○変異

 有名な変異は『凍湖』で、これは緯度によらずに起こる現象です。100mも離れていない2つの湖でも、1つは凍湖で1つは一度も凍りつくことがない、ということがあります。
 凍湖には『黄金魚』と呼ばれる魚が生息していることがあります。これは鱗が金属で構成されている魚で、体内に鉄や銅やその他の希少金属を取り込みます。この魚が発見された付近には鉱床が存在しており、利用できる国土の狭いユークレイを発展に導いています。しかし咋今では乱獲がたたり、その数は減少の一途をたどっています。
 変異現象そのものではないのですが、凍湖地帯の北のはずれに存在する氷山地帯には、大変異現象の際に凍りついた動物たちが閉じ込められていて、氷を砕いて凍結した動物を食料としている生物が集まっています。人々はこれを『氷壁画』と呼んでおり、貴重な生物学の資料となっています。
 他にユークレイではリビングデッドが多く出現することで有名です。これは土葬の習慣が続いていることが原因です。


○略史

 前聖暦493年に、カスティルーンと同盟を結んだスレイラール人の連合が、カイテイン帝国から独立を果たしました。こうして誕生したのがユークレイです。このような経緯があったため、カイテインに対しては特に敵対的な傾向があります。カイテイン側としては不死者の頻出する地域を切り捨てた形になりますが、その鉱物資源とを秤にかけると、大きな損失だったという他ありません。
 この国は、鉱物資源問題でカイテイン帝国やライヒスデールと小競り合いを続けてきました。こうした他国との戦争から国土を守る目的で、聖暦727年に法教会の主導によって、ユークレイ、カスティルーン、ペトラーシャ間で神聖同盟が締結されました(盟主はカスティルーン)。こうして、法教会を楔として3国は足並みを揃え、エルモアでも指折りの勢力を誇ることとなったのです。
 しかしこれに対抗するように、聖暦767年にはフレイディオン、ライヒスデールの軍事同盟が締結され、ユークレイへの侵攻が開始されました。ライヒスデールとの戦いは現在も続いており、いずれ本格化することになるでしょう。


○制度

 表向きは立憲君主制ですが、司法権以外の諸権限は全て君主に属するという、前近代的な政治制度をとっています。司法組織のみは法教会が司っています。
 現在の国主は『スティート女王』で、その美しさに似合わず『鉄の女王』と呼ばれる女傑です。数々の革新的事業を行ない、不死者の掃討作戦を決行したことが広く知られています。とかく噂の絶えない女王でもあり、法教会と個人的な繋がりがあることは、女王になる以前から言われています。なお、女王は国家とは別に独自の兵として『銃士隊』を組織しており、彼らは女王に絶対の忠誠を誓っています。その美しい剣技と流麗な態度は人々の尊敬の的となっています。

・貴族:支配階級。非常に強い権力を持っています。
・騎士:各貴族に属しており、軍人として活動しています。
・軍隊:国王に属する組織です。
・司法:法教会が統括しています。
・警察:行政の管轄下に置かれています。


○現況

 カスティルーン、ペトラーシャと『神聖同盟』を結成して、カイテインの『南方政策』やライヒスデールとフレイディオンの軍事同盟に対抗していますが、それが逆に他国の干渉をまねく結果になっています。現在は霊石鉱田を狙うライヒスデールとの局地戦が本格的になり、激しい戦乱の時代に突入する様子です。
 国内では、スティート女王と『宰相カルヴァーン』との間の確執が年を経るごとに激しくなっており、現在は前国王の密書に関して戦いを繰り広げているようです。密書は王位継承権に関わるものであり、これを巡って銃士隊と宰相の親衛隊が激しく争っています。この件に関して銃士隊長が宮殿に伺候することが多く、彼を指して不義密通を働く不貞の輩という国民は少なくありません(というのも、宰相派が噂を流しているためなのですが)。この一件については、当然その内容は国民に一切知らされておらず、何か事件が起こってもいつもの小競り合い程度のことだと思われています。しかし、ライヒスデールの侵攻が始まろうとしている現在、双方とも少なからず国民の反感を買っており、銃士隊長との噂など気にも留めていない女王も、さすがに行動を自重せざるをえなくなっています。


○国家関係

・友好国:カスティルーン、ペトラーシャ
・敵対国:カイテイン、ライヒスデール、フレイディオン


○首都:クレイオール

 シグニア川の上流域に位置する大都市です。良質の水源と肥沃な土壌で、郊外には小麦畑が広がっています。


○民族

・スレイラール人
 プラチナブロンドの髪に碧眼の白人です。

・ギガント(巨人族)
 身長2m以上にもおよぶ巨人で、様々な亜種がいるようです。
 北部の山中に住み、人間と交わろうとはしません。
 ただし、不死者に対しては協力して戦います。


○宗教

 法教会を国教としています。首都クレイオールには『クレイオール正教会』があり、信仰の中心となっています。聖堂騎士としては『白銀騎士』をもち、不死者の掃討には大きな成果をあげており、銃士隊に劣らぬ人気を誇っています。


○要所

・ライラント山脈
 白銀の屋根、銀の天幕とも呼ばれています。雪に包まれるのは早く、そして山頂には夏でも雪が残っています。

・シグニア川
 ライラント山脈に源流を持つ川で、クレイオールの西を流れ、ラフランシアまで続きます。

・ナイセン山岳地帯
 霊石などの鉱物資源が豊富な山地で、周囲には鉱山夫たちの街がたくさんあります。

・ルビー湿地帯
 フルラットの南に広がる湿原で、渡り鳥たちが生活しています。赤羽シギというシギが訪れる時期は一面が真紅に覆われるので、ルビー湿地帯と呼ばれるようになりました。


○産物

 霊石、霊水、鉄、銅、希少鉱物、木材(広葉杉)、小麦


○文化・生活

 ユークレイという国での生活には、何かと湖が関わってきます。各地にある湖のおかげで、この国は水資源に困ることはありません。湖で採れる淡水魚は蛋白源として重要で、ほぼ毎日のように食卓に上ります。冬には氷をくりぬいて小魚を釣ったり、休日は家族でスケートに興じたりします。祭の日にはスケートレースが開かれて、会場を大いに盛り上げます。また、水資源が豊富であることから、この国では至るところで水車を見ることができ、風情のある音で人々の耳を楽しませてくれます。
 この国で何よりも特徴的なのは、凍湖から運ばれる氷です。真夏でも凍湖から掘り出される氷は、食料の保存や涼を取るために大いに利用されています。不思議なことに、凍湖から持ち出すとこの氷は徐々に溶けてしまうのですが、それでも普通の氷よりはずっと長持ちします。ユークレイでは、夏の定番といえばシャーベットであり、あちこちでシャーベット屋の屋台が見かけられます。
 もう1つ、ユークレイといえば『死者の日』と呼ばれるお祭りが知られています。この追悼儀式は土着宗教から伝わる風習なのですが、祭のあいだ人々は骸骨を型どったお面をかぶることになっています。これは自分が連れてゆかれないようにするおまじないであり、不死者の頻出する地域であることからこういった儀式が考え出されたのでしょう。


○食事

 この国では氷が豊富であることから、内陸の方でも生の海産物を食べることができます。しかし、なんといっても淡水産の魚の方が漁獲高が多く、イワナのコロッケやマスのソテーなどがよく食べられています。
 また、他国ではあまりみられない、氷をふんだんに使ったデザートが特徴的で、夏でもアイスクリームやシャーベットを食べることができます。アイスクリームにはシナモンやグレープソースなどが入るものや、ウエハースで包んで食べるものもあります。また、アイス・ワインと呼ばれるシャーベット状にしたワインを食後に楽しむことができますし、しずり雪という凍湖の氷を上に散らしたカクテルなど、珍しいものが多く見られます。


○組織・集団

・ロックガーディアン
 ライラント山脈に住む巨人の一族です。最高峰エスランディオを聖地と崇め、それを守ることを使命としています。

・シューベルニー自由騎兵団
 多塔戦車などを駆る近代戦術のプロで、ある地方の貴族が出資しています。まったく正体不明の集団ですが、その実力は国外からも一目置かれています。様々な新兵器を繰り出してくるので、軍の秘密部隊ではないかと噂されていたこともありますが、あまりに目立ち過ぎるためにその意見は早々に消えていきました。

・銃士隊
 女王直属の銃剣士隊であり、女王の護衛のみならず密偵のような仕事も行っています。

・親衛隊
 宰相の私設護衛隊。銃士隊とは何かと対立が多いようです。

・闇つらら隊
 宰相の私設密偵組織で、国内外で活動を行っています。


○人物

・スティート女王   37歳  女
 鉄の女王とも呼ばれる女傑。年齢のわりには若く見られ、20代後半ぐらいからそれほど見かけは変わっていません。

・宰相カルヴァーン   46歳  男
 良心の策士と呼ばれる人で、そのやり口は辛辣ですが、常に国民のことを思って行動しています。政策の上で女王と対立することが多く、水面下では様々な策謀を働かせているようです。

・デュア=トレルオ   52歳  男
 銃士隊長。かつては国王付きの武官長であった男で、そのまま銃士隊の隊長の職につきました。謹厳実直で生真面目な性格ですが、融通もきくので部下からの信頼も厚いようです。

・姫将軍フェリシティ=カーリディン   23歳  女
 ラフランシア公の末娘で、前線で指揮をとる将軍でもあります。常勝の女神とも呼ばれており、その用兵の巧みさは国内でも随一と讃えられます。

・ラナ=リプソン   17歳  女
 美少女仮面を名乗る正義の味方。国家的な陰謀が絡んだ事件にはなぜか登場し、現場を混乱させて去ってゆく謎の存在です。目のまわりを隠すための蝶の仮面と、肩に乗せた白ネズミが外見的特徴なのですが、このネズミだと思われているのが実は白夜リスで、彼女の使う術法をサポートしています(そのために被害が拡大するわけですが……)

・アベラル   27歳  男
 ソムレリア候リエルの双子の兄なのですが、瞳の色が父親とも母親とも違うことから、その存在を隠されてしまいました。本当は使用人との間にできた子供で、跡継ぎとなるはずの権利を奪われたことから母親を恨み、復讐を企んでいます。

・アルフィーエ=ティナシュ   25歳  男
 シューベルニー自由騎兵団の活動資金を出資している貴族で、ラフランシアの北部を治めています。正義の味方を目指しているらしく、見返りを期待しての行為ではないようです。しかし、なぜ自分の存在を秘密にしているのかと部下が尋ねると、「いやあ、正体を知られていないほうが格好いいじゃないですか」と答えたことから、単に貴族の若の道楽ではないかという可能性も拭いきれません。

・ラルティア=リモアルナ   32歳  男
 酒飲み神官、酔いどれ神官などと、ろくな呼ばれ方をしていないようですが、神官長の地位にいる人物です。治癒術にかけては近隣では並ぶ者のないほどの腕前で、エルモア地方でも数少ない蘇生術の使い手でもあります。


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