錬金新派


 


 統合秘学、集合秘学とも呼ばれる新しい分野で、自らの分野を黄金秘学と呼ぶこともあります。彼らは1つの学派にとらわれることなく、錬金術以外の分野も含めて、あらゆる事柄を自由に組み合わせて、新しい技術の確立を模索しています。
 錬金新派は黄金十字秘協会から分派した集団で、現在は『真実へ至る銀色の鍵』協会という派閥を結成して研究に取り組んでいます。その目的はゼロから完全存在を作り上げることで、現在のところは真人の創造を第一の目標としています。彼らは自律金属の存在をヒントに、機械を真人の媒体として利用することを考えています。そのための第一歩として、人間と機械の融合の研究から着手し、幾つかの成果を挙げています。同時に、精神や霊魂の製造技術にも着手しており、精霊や霊魂といった存在の解析や利用法についての研究を行っています。 


○生物秘学分野

 真人の生体パーツを作製するために利用されます。生物秘学の基本的な技術とは別に、生命金属を仲介した機械パーツとの融合や、自律金属を用いたパーツの作製などが試されています。

・エリティアの銀腕
 自律金属を元にした四肢の製造研究から生まれた義腕です。当初は霊子機関で動かすことを考えておりましたが、一般社会の研究成果と同様に小型化の目途が立たないため、怪物の筋肉組織と生命金属を介して融合するという手法を取ることとなりました。一応の動作実験には成功しており、パワーそのものは人間のそれを上回るのですが、その動きは緩慢すぎて実用のものではありませんし、機能面では一般社会の機械にも劣る程度のお粗末なものです。また、時間が経つとそれぞれの材質が解離してしまうので、まだ何年(あるいは何十年)も研究を重ねる必要があるでしょう。

・黄金血液造成細胞
 錬金系の術法によってつくられる黄金血液の造血組織を作り出そうと試みています。しかし、これは手を着けはじめたばかりの実験であり、まだ殆ど進展しておりません。

・竜族研究
 竜という存在に興味を持つ研究者がおり、その強靱な肉体を真人の製造に利用することを考えています。世間一般では、鱗と内骨格を持ち、翼にあたる骨格と四肢を備えた大型の動物を竜として扱っていますが、錬金術の世界ではこれと違う分類をしています。錬金術師は竜の鱗は外骨格の1種であり、外骨格と内骨格を同時に持つ両骨格動物であると考えているのです。なお、この定義からいえば、一般的に竜族として扱われている中にも、竜とは異なる生物が含まれています。


○生命秘学

 基本的な実験媒体として用いられるのは錬金小人です。錬金小人に対する実験が成功し、1つの技術として確立された上で、人間を用いた本格的な生体実験に移行します。

・不死化金属
 吸血鬼の血液中に存在する自律金属の1種類を単離することに成功しています。これは鉄と非常に性質が似ているようですが、元々の血液サンプルがあまりにも少なく、研究に用いるだけの十分な量が得られていないため、詳しいことは殆どわかっていないようです。

・有機細胞石生物
 細胞石を取り込ませたサカー・ドロップ細胞を生命芽細胞と接触させ、細胞石の形質を読みとろうという試みがなされています。しかし、細胞石の取り込みを行った細胞は細胞膜を硬質化させてしまい、休眠状態のように活動を停止してしまうため、実験は思うように進んでおりません。

・人工臓器
 培養槽中で単体で活動できる人工臓器の製造に取り組んでいます。しかし、培養液の成分研究なども含めて、なかなか進展していないようです。


○元素秘学

 主に真人の機械パーツを作り上げるための研究が行われています。しかし、社会全体の技術レベルがそれほどでもないため、望むような成果はまだ殆ど得られておりません。この他にも、動力機関の小型化や電気についての研究が進められておりますが、実用に結びつくような進展はないというのが現状です。賢者の三角門に興味を持つ錬金術師が多いことも、開発が遅れる原因の1つとなっています。

・電気金属の利用
微弱な電流で反応する電気金属を製造し、それを体の一部に利用することを考えています。しかし、電気そのものの研究も進んでいないため、まずは電流の測定精度を上げる研究を行うのが先となっています。

・赤色記憶硝子の利用
 記憶保持のためにこれを利用することを考えています。しかし、実際には生物との連動がうまくゆかないため、テロエラの記憶を用いて記憶制御をするという方向で実験が進められています。


○心霊秘学

 人造霊魂と呼ばれる、真人に宿る精神を創り上げる目的で研究が行われています。中立の属性を持つ霊媒物質を製造し、それを転換させた降霊肉媒を真人の脳の一部として利用する計画ですが、第一段階である中立霊媒物質の製造段階で躓いているのが現状です。

・中立霊媒物質
 現在のところは瘴気の属性を持つ霊媒物質しか得られておりませんが、中立もしくは聖気属性の霊媒物質の精製を目論んでいます。そのため、中立属性であるという精霊や霊獣、それから魔道生物の研究などが進められています。これが完成すれば、かつて失敗したという心霊機械による天使召喚も可能になると考えられているようです。

・脳室機関
 心霊秘学分野では有名な錬金術師ソイルソナ=ゼスタの研究の1つで、悪魔の心臓と呼ばれる宝石のような透き通った石を用いる技術です。まず、悪魔の心臓を降霊肉媒で包み込んだものを、黄金血液や生命芽細胞、およびその他の薬液などと一緒に、心霊機械の霊柩と連結した培養槽で培養します。すると、これらの素材は脳のような構造に変化を遂げ、やがて希薄な意識を持つようになります。
 この意識は自動書記機械や心霊オルゴールによって確認されるもので、培養槽にある状態では自由にコンタクトを取ることは出来ません。そのため、つい最近になって生命芽細胞を取り出して錬金小人や人間の脳に移植し、それに意識を宿らせる実験が行われています。

・ラプチュアルの炯眼
 心霊秘学の権威であるラプチュアル=ヴェヒテスが作り出したもので、群青液漿を結晶剤で固めて作った霊眼の1つです。これをメルエトセラの絹糸の用いて、眼球の代わりに人体に連結したところ、人間に霊的感覚を持たせることに成功しました。そして現在では額に第三の目として埋め込み、正常に機能させるところまで発展しています。しかし、これは通常の霊眼と同様にあまり長く保たず、せいぜい1週間ほどでぼろぼろに崩れてしまいます。また、時に存在しないものや記憶にない出来事が脳裏に浮かぶことがわかっており、長く利用すると移植者の精神に何らかの悪影響を与えます。ラプチュアルはこの幻視を制御する技術の開発にも取りかかっていますが、現在のところはうまくいっていないようです。

・霊魂憑依技術
 霊媒物質を人体に組み込むことで、霊魂を選択的に憑依させるための技術です。しかし、現在のところは瘴気属性の霊媒物質しか得ていないため、錬金生命系の術法によって人体の部分瘴気化を施さなければなりませんし、これによって心身ともに何らかの悪影響を及ぼす可能性が高いため、まだ錬金小人を用いた予備実験の段階にあります。


○精神秘学

 神性を持つ精神を生み出す研究を行っています。この分野では、心霊秘学のように全く新しい意識を生み出すのではなく、現在の人間の精神を高次の存在へと引き上げるため実験に取り組んでいます。

・アイゼルバインの生命歯車
 精神秘学の分野で生み出された生命螺子法の派生技術で、頭蓋骨の内外に埋め込んだ生命螺子の位置を心霊歯車で動かすことによって、人造霊魂の精神作用を生体の動きに反映させようというものです。しかし、人造霊魂の製造が進んでいないために、この実験は本来の目的以外のものに利用されようとしています。

・星殉生命
 霊界塗料と霊媒物質との混合物質に宿った精神体で、完全にイレギュラーな産物です。この精神体は霊界塗料を利用しているせいか、活動に星の巡りに制約を受けてしまうようです。そのために星殉生命と呼ばれています。元々は別の実験目的でつくられたものですが、後にこの物質が不規則な電流を発していることに気がつきました。そして、心霊機械や術法などによって精神の存在を確認することとなったのです。これは知性を有するようですが、意志を疎通するための器官を保たないため、霊界塗料と光電金属の連動作用を利用した機器によって、その思考を読みとる研究が行われています。


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