エルモア地方概説

全体歴史気候と環境


 

全体


 『カナン大陸』の最西端に位置する『エルモア地方』は、全体として我々の世界のヨーロッパに似た雰囲気の世界となります。『大変異現象』の惨劇から術法(魔法)の力によって復興を遂げた地域で、聖暦789年の現在の科学技術は、現実世界における産業革命期(1800年代)とほぼ同等です。旧文明の繁栄には比べるべくもありませんが、それでも銃や飛行船などが発明されるところまで文明は復興しており、一部には飛行機の開発にいそしむ者さえいます。

・科学魔道文明
 かつてこの世界では高度な文明が発展しており、星々まで人の手が届いたとも言われています。この進んだ技術を持った旧文明を『科学魔道文明』といい、その頃の発掘品がときどき発見されたりもしているのですが、現在の住人たちはそれを理解するほどの技術力は持ち合わせていません。この科学魔道文明の遺産のうちで、唯一この地方の人々に利用できたのが『霊子機関』と呼ばれる動力炉だけでした。しかし、それでも霊子機関の発見はエルモア地方の発展に大きく寄与し、先史文明の発掘品に期待する人も少なくはありません。

・宗教機関
 エルモア地方で大きな力を持っているのは、『聖母教会』と『法教会』です。人類の復興に寄与したのもこの2つの宗教機関であり、国家によっては強い発言力を持っています。これらの宗教機関は術法とよばれる魔法を行使して、変異現象の影響や恐ろしい怪物たちから人々を守っています。


 今という時は、科学と術法、宗教と王権がせめぎあう激動の時代とも呼べるでしょう。この地方に生きるものはみな、日々移り変わる現実の中を懸命に過ごしているのです。それはいかなる存在といえども例外ではありません。

(註:世界設定については、聖暦789年の春を基準として書かれております。)


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歴史


○変異現象

 発展を遂げていた科学魔道文明が、突如として崩壊することになったのは、『大変異現象』という災厄に見舞われたためだと言われています。変異とは万物を歪ませる全てのもの、およびその現象のことをいいます。これはその名が表しているように、系統だった変化ではありません。変異はその対象となるものを選ばず、無差別に影響を及ぼします。環境、生物、物体、空間、時間、そして夢や人々の心にさえも変異は起こります。
 『大変異現象』というものが起こった正確な原因は、科学時代に突入した聖暦789年の現在でも未だに明らかにされていません。そのため科学の発展期を迎えた今でも、魔神の呪いによるものだと信じられています。
 しかし、本当の問題はその原因の真相ではなく、今でも大変異現象の爪痕は残り、そして変異と呼ばれる現象が各地で頻繁に起こっているということなのです。現在起こっている変異は、伝説に伝えられる大変異現象ほどの影響を及ぼさないため、『小変異』あるいは単に『変異現象』と呼ばれています。ですが、小さいとはいってもそれは無視できるものではなく、人々は今でも悪魔の呪いによって苦しめられているのです。


○宗教と復興

 大変異現象によって崩壊した世界の中で、生き残った者たちは狂ってしまった生物や環境に翻弄されながら、長く苦しい時を過ごすこととなりました。しかし、後に神の使いを名乗る少女アリアが現われ、たくさんの奇跡によって人々を救いました。そして魔術(術法)という不可思議な力を教え、愛を説きながら少しずつ社会を整えていったのです。
 後にアリアはたった1人で13人の娘を生み、上の12人を連れて魔を封じる旅に出ました。残された最後の娘ユナスは母や姉たちの教えを守り、『聖母教会』という宗教機関を設立します。この教会の教えはやがて人々の間に広まり、国政にまで発言力を持つようになりました。しかし、後にこの組織にも異端派が現れ、主教の中にも異なる考えをもつ者が存在するようになったのです。
 その主教の名をセルトラーンといいますが、彼は考え方の違いから聖母教会を出奔することになります。そして人々を救済する旅を続ける中で、ルーンという1人の青年に出会いました。ルーンは聖書に伝えられるところのアリアやその娘と同じ力を持ち、人々に愛や公正さを説いて、戦乱で廃れてゆく衆生の心を救済しておりました。セルトラーンは神の啓示を受け、この青年が神の子の1人であることを知ります。そしてルーンとともに救済の旅を続けながら、この啓示を人々に広めてゆきました。後にルーンは自らの身を犠牲にして魔神を倒し、神の使徒の1人として祀られることとなります。こうしてできたのが法教会という宗教機関です。
 聖母教会と法教会は互いに相手を異端として、長い年月を過ごしてきました。ここで新たな変化が起こります。ユナスが降臨し、人々に予言を残したのです。この予言はみごとに的中し、聖母教会は少しずつ失いかけていた権威を再び取り戻すことになります。そしてユナスが降臨した年は聖暦元年と定められ、現在の標準暦ができました。聖暦789年の現在では、エルモア地方の人口の70%が聖母教会の信者であり、国政にも未だ強い影響を与えています。


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気候と環境


 エルモア地方の気候的は、我々の世界における欧州地方より少々温暖となります。大雑把にに見ると現実世界の自然環境とよく似ていますが、大変異現象のためにできた交通の難所や異常気象がかしこで見られます。


○気候

 気候はいくつかのパターンに分けられ、亜寒帯、冷帯、大陸型、西海型、アリアナ海型、亜熱帯のいずれかに含まれます。亜寒帯、冷帯、亜熱帯に関しては現実の世界と同様のものです。大陸型というのは内陸部の気候をいい、冬は寒さが厳しく夏は暑いというものです。内陸部は全体に乾燥しており、麦類の生産がよく行われています。西海型の気候は、夏に冷涼で冬に温暖となります。年間を通じて気温はそれほど高くならないのが特徴ですが、西海に流れる暖流の影響で、冬でもそれほど寒くはなりません。アリアナ海型というのは、夏に高温乾燥、冬は温暖で湿潤という非常に過ごしやすい気候です。


○動植物

 植物相や動物相は現実の世界のものとは少し異なっており、エルモア地方独自のものがそこかしこに見られます。特に変異現象の影響によって生まれた怪物は、自然生態系に大きな影響を及ぼしています。しかし、針葉樹や落葉樹の森が広がっているのは同様であり、森林の形成の仕方など基本的な部分は現実世界と変わりありません。
 現在のエルモア地方では開発によって少しずつ森林が減少し、牧草地や畑の面積が拡大しつつあります。いずれは変異体さえ生きてゆけなくなる世界になってしまうのかもしれませんし、逆に都市に怪物が現れるようになるのかもしれません。


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