カスティルーン


 


○自然

 内陸に位置する小国で、カイテイン、ユークレイ、ペトラーシャ、ライヒスデールに周りを囲まれています。北部は低山が連なっており、その付近には炭田があります。海をもたず、北部から続くなだらかな高原での牧畜が主な産業です。ここで飼われているのは、この地方特産の『ミール羊』で、その長く柔らかい羊毛は高額で取り引きされています。
 全体としてゆるやかな坂の多い国で、移動に困難な地形となっています。内陸地であるため乾燥しており、降水量も多くありませんが、年間を通じて一定した水量を確保できます。国を囲むように針葉樹休が取り巻いており、貿易には不都合な条件をつくりだしています。


○変異

 『樹氷の森』と『霧氷の詩』と呼ばれる変異現象が有名です。これはルーンナイトといえども手を出せるものではなく、野放し状態になっています。
 『樹氷の森』は南部の平原地帯にあり、夏でも零下10℃を下回る気温です。ここで見られるダイヤモンド・ダストに触れたものは一瞬にして凍死してしまいます。この森の奥深くには『純白の宮殿』があり、信じられないほどの財宝が眠っているという噂があるのですが、それを確かめた者はいません。というのは、この森には『雪の乙女』と『白の乙女』という双子が住んでおり、人々の侵入をかたく拒んでいるからです。この少女たちの正体はわかりませんが、ダイヤモンド・ダストの影響を受けつけないことだけは確かなようです。
 『霧氷の詩』と呼ばれる現象は、各地に点々と出現する突発的な現象で、霧氷が現れるとともに泣くような歌声が聞こえ、人々を眠りにつかせてしまいます。この眠りは永遠に続くわけではありませんが、普通に起こしても目覚めることはありません。いつ目覚めるのかはまったく不明で、死ぬまで眠り続けた例もあります。


○略史

 前聖暦525年に、法教会を中心としてナヴァール人勢力がカスティルーン国をつくりあげました。この後、ユークレイおよびペトラーシャの独立に力を貸し、法教会を通じてこれらの国と親交を深めることになります。そして聖暦727年にはユークレイ、ペトラーシャとの間で神聖同盟を結び、その盟主としての役割を背負うことになりました。
 この国は周囲を森林に取り囲まれているため、あまり他国から攻められることはありませんでした。過去に一度だけ、ライヒスデールからの移民間題がもとで大きな戦争が起こりました、霧氷の詩現象のおかげでライヒスデール軍を退けることができました。


○制度

 立憲君主制を敷いており、国王の独裁は許されておりません。それは法教会の介入があるためで、政治は『三団会議』と呼ばれる議会制を採用しています。聖職者、貴族、民間の代表100人ずつを選抜して議会を行なうという制度で、それぞれの身分に関係なく1つの団体は1票の権利をもちます。王はそこで決定された法案に対して許認可権を有しており、法案に対しての責任を取ります。軍も国王に属する組織ということになっていますが、その発動には議会の承認が必要となります。なお、司法権だけは法教会に属しています。

・貴族:支配階級。それなりの力を持っています。
・騎士:各貴族に属しており、軍人として活動しています。
・軍隊:国王に属する組織です。近代的な組織構成となっています。
・司法:法教会が統括しています。
・警察:行政に属する組織です。


○現況

 現在のカスティルーンは非常に混乱した状態にあります。というのは、一昨年に国王が38歳という若さで急逝したことが原因です。
 王位の第一継承権を持つのは、先王の一人娘である『クリステア』なのですが、彼女は幼王と呼ばれるにふさわしい5歳というあまりにも若すぎる年齢であり、その将来に関して貴族たちの間で様々な勢力争いが続いています。クリステアはまだ王位を継承していないので、その地位は王女のままです。女王もまたクリステアを出産する際に死亡しているので、成人するまでは先王の弟『ユルファシス』が後見人となって政治を行うことになっていますが、ここで問題となるのが法王の存在です。この国では、法王が王室顧問として政策に対して非常に強い発言力をもっているため、王弟側につくか法王側につくかということで、貴族会は激しく揺れ動いています。
 その他に国内で問題となっているのが、鉄道の敷設についてです。この国は『学問院』の存在によって工業的には先進国であり、ユークレイ、ペトラーシャと共同でつくられた『三国鉄道』は、国内の発展に多いに役だっています。現在、新しい路線を拡張する計画があるのですが、その利権間題に絡んだ争いが激化しています。
 国内もそうなのですが、国外にもまた問題を抱えています。神聖同盟の一員として、ライヒスデールとユークレイ間の国境紛争には援軍を送っているのですが、それが背後のカイテインに対する不安となっています。こういった状況に置かれているため、国民は宮廷問題には冷ややかな視線を送っているのが現状です。


○国家関係

・友好国:ユークレイ、ペトラーシャ
・敵対国:カイテイン、ライヒスデール、フレイディオン


○首都:カステリア

 国王と法王の2人の王がいることから、古来より「二重に仕える街」と言われてきました。街の中央には聖セルトラーン教会があり、交易の中心であるとともに、巡礼地としても賑わっています。


○民族

・ナヴァール人
 漆黒の髪と瞳で、白雪色の肌をもちます。

・マイリール人
 金髪で碧眼の白人です。
 ナヴァール人に比べると、肌は少し焼けています。


○宗教

 法教会が国教であり、国政にも深く干渉しています。この国の法教会は特に『純粋法教会』とも呼ばれており、人民に厳格で公正な指導を行なっています。法王は『聖セルトラーン教会』におり、王室顧間もつとめています。聖堂騎士団としては『ルーンナイト』(法騎士)をもち、変異体の掃討に多大な功績をあげています。


○要所

・樹氷の森
 シャウエル市の南に位置する魔の森で、普通の人間は決して近づこうとはしません。真夏でも低い気温に包まれており、生物を凍死させてしまうダイヤモンド・ダストが浮遊しています。

・純白の宮殿
 樹氷の森の奥深くにあり、莫大な財宝が眠っていると噂されていますが、その存在すら定かではありません。

・雪エルフの集落
 樹氷の森付近の雪原にある、雪エルフたちの集落です。その肌の色はまさに純白の雪のようで、そのため藍色の髪と瞳が印象的に際立ちます。いかなる寒さの中でも凍えることはなく、雪をくりぬいて作った家に住んでいます。彼らは狩りを行なって生活していますが、弓などを使うより落とし穴をつくって、そこに獲物を追い込むような狩猟方法を用います。樹氷の森付近は人間が近づかないため、比較的楽に生活できるようです。彼らの性格は気さくで、迷いこんだ旅人がいれば必ず助けてくれるでしょう。その時、街の話などをしてあげれば、あまり人々と接触を持たない彼らは非常に喜びます。

・振り子の洞窟
 振り子石という、正確に1秒間に1回往復する不思議な石がとれる場所で、シャリアネスの西部に岩場にあります。この石は「正しき瞬きの石」とも呼ばれており、時計の振り子などに利用されています。


○産物

 石炭、鉄、羊毛(ミール羊)、小麦、オルゴール、時計、機巧人形、振り子石


○文化・生活

 牧羊の他に有名なのが、機械の街ティアリッツの精密機械です。ここでつくられるオルゴールや時計は、その精度もさることながらデザインの上でも一流であり、芸術の1つとして成立しています。中でも演奏人形と呼ばれる人型の演奏機械は、人と見紛うばかりの動きをします。人形師のほとんどはこの街の出身で、その技術は各国でもてはやされています。こうした技術は他の機械の開発にも活かされており、この街を中心として次々と新しい機械が生み出されています。
 この国には術法師としての人形使いも数多くおり、一流のものは『ドールマスター』(人形匠)としての称号を持ちます。このマスターたちがつくり出す『自動人形』は、人間と全く区別がつきません。


○食事

 ミール羊がよく食べられています。この羊の肉はくせがなく、どんな調理法にも合うといわれています。豆ブドウと一緒に煮込んだり、細切りにしたジャガイモと一緒に炒めたり、サイコロステーキにして食べたりと、多彩な使われ方をします。
 また、他の国ではそれほど見られませんが、南部の方ではタンパク源として昆虫を食べる習慣があります。イナゴやバッタ、あるいはコオロギといった昆虫が好まれるようであり、煮付けたり油で揚げたりして、おやつがわりにしています。
 この国の料理は、なんでも小さく薄くしたがる傾向があります。たとえば主食のパンも薄切りにするのが普通ですし、クラッカーや一口サイズのマフィンもよく食べられています。あるいは小麦粉とミルクを混ぜた生地を薄く広げて焼いたもので、レタスや薄切りの肉をくるんで食べたり、薄焼き卵で野菜炒めを包んだりといった具合です。また、ミール羊の薄切り肉を煮立ったスープにくぐらせて、それをソースにつけて食べる鍋物などがあります。


○組織・集団

・工房「光の翼」
 ルーティック市の郊外にある自動車工房で、発掘エンジンを積んだ車で限界速度を目指しています。社員のそれぞれが軍からスカウトされるほどの技術を持っているのですが、頑としてその誘いを断りつづけています。修理で稼いだ金をすべて新型車の開発につぎ込んでいるため、いつも経営は火の車です。

・自由学舎
 ある貴族が出資している私立大学で、生徒たちの提案で自由に教室をつくることが可能という、非常に変わったシステムをもっています。教わる側が講義の内容を決めることができ、そのカリキュラムに見合った教師を学校側がスカウトしてきます。貧乏な学生たちにも広く門戸が開かれており、国内外を問わず入学希望者が殺到します。

・人形戦士団
 国家に所属している人形師たちが作った人形で構成されている部隊です。国民にもその存在を秘匿されている秘密部隊であり、情報収集や戦闘など様々な分野で活躍しています。


○人物

・幼王クリステア   5歳  女
 第一位の王位継承権をもち、15歳を迎えると同時に女王となるはずの少女です。好奇心旺盛な女の子で、いつも何かに興味を示しては世話係を困らせています。凝り性である半面、非常に飽きっぽい性格であり、次々と興味の対象を変えてゆくのが、周囲の人々の悩みの種です。

・ユルファシス=ド=カスティーナ   37歳  男
 先王の弟であり、クリステアの後見人として国政を取り仕切っています。特に野心家というわけではないのですが、法王が政治に干渉することをよく思っておらず、水面下では激しく対立しています。また、クリステアを非常に可愛がっており、彼女のためにも王権の絶対性を確立しようと日夜努力しています。

・法王ストレイン=ライカルト   52歳  男
 法教会の最高位にある人物です。歴代の法王の例にもれず非常に厳格な人物で、貴族たちの圧力に対しても徹底的に戦う心づもりでいます。

・アルフィリル=レールランディ  15歳  男
 変異の影響で多重人格となってしまった少年で、3人の自分を頭の中に宿しています。1人は天才的頭脳を持つ数学者、もう1人は悪戯好きの子供、そして最後の1人は非常に残酷な性質の女の子です。伯爵家の長男として生まれたのですが、このような事情のために家督相続権はすでに弟に譲り渡されています。親しい人々は彼のことをパンジー(三色すみれ)と呼んでいます。

・ルミナ=シルヴァン   32歳  女
 ティアリッツ付近に根城を構える山賊団の女首領で、左頬に大きな刀傷があるのが特徴です。もともとは良家の子女だったのですが、旅の途中で山賊の襲撃を受けて拉致され、長い間慰みものとして過ごしていました。しかし、彼女は黙ってその境遇に甘んじていたわけではなく、その美貌を武器に首領に取り入り、ある程度の地位を確立してから首領を毒殺して、山賊団を乗っ取ることに成功しました。頬の傷はある隊商を襲撃した時に受けたもので、これをきっかけに彼女の屈折した性格は過激さを増し、そのやり口は異常ともいえる残虐さなものに変化してしまいました。最近になって法教会の討伐隊が組織されたことを聞きつけたためか、その活動は少しなりをひそめていますが、ほとぼりが冷めた頃には再び隊商たちを恐怖に陥れることでしょう。

・スノーホワイトの少女   ?歳  女性
 雪の乙女、白の乙女と呼ばれる双子の少女で、樹氷の森に住んでいます。樹氷の森の番人といわれていますが、何を守っているのかということは誰も知りません。ただ、侵入者をかたくなに拒み、術法を駆使して相手を追い出そうとすることだけが知られています。その正体は雪エルフではないかとも言われていますが、彼女たちの髪の毛は純白であることから、その噂には否定的な意見が多いようです。

・オルドス=フォルディアノ   52歳  男
 厳格で知られる法教会の聖職者の中でも、最も堅物と呼ばれる司祭です。裁判官の職務についており、ある地方男爵が民間人に暴行を振るった一件で、その男爵に有罪判決を言い渡したことで非常に有名になりました。しかし、その相手を選ばない公正さは貴族の不興を買ったようで、彼を裁判官の任から解くように教会へ多数の要請書が提出されていますが、教会側は断固としてこれを拒否しています。このような事態にありながら彼自身はいたって平静で、あくまでも教会の決定に従うつもりでいます。

・ルミラン=サイアード   27歳  男
 狂気の発明家として有名な青年で、その常軌を逸脱した行動から学問院を放逐され、現在は首都の郊外で発明品の開発にいそしんでいます。彼が発明を行うとなぜか出火や爆発騒ぎが起こり、かつては学問院の研究棟を一棟炎上させるという事件を起こしています。近所の人は迷惑がっているのですが、本人は周囲の制止もかえりみず、今日も元気に研究に取り組んでいます。

・カーレル=グリフィス   21歳  男
 工房「光の翼」の唯一の実験乗組員で、非常に腕のいいドライバーです。今まで何度も危険な目にあっていますが、いずれも軽傷ですんでいます。社長夫妻の娘リコリーといい雰囲気なのですが、非常に照れ屋なためにその仲は全く進展していないようです。


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