○自然
エルモア地方の最南端に存在する島国で、アリアナ海の出口となっています。大きくは北のエリンシャ島と南のコルヴィナ島に分かれています。気候は温帯から亜熱帯に含まれます。
コルヴィナ島の中央には大河ヤハトが流れており、この流域には豊かな穀倉地帯がひらけています。人々はこの河を『母なる流れ』と呼び、信仰の対象ともなっています。ヤハト河は春に一度だけ、海から水が逆流する不思議な現象が起こります。この日は祭が開かれ、その年の作物の豊穣が祈願されます。
○変異
『海魔現象』と呼ばれる現象が知られています。海の水が形をもって船を襲うというもので、霊獣の1つと考えられています。かつて海魔が広域で出現し、陸上にまで被害が及んだ時には、1つの都市が壊滅してしまいました。
海、陸に共通する変異としては、『重力変異』があります。その名の通り、重力に異常をきたすというもので、ひどい時には家数軒が宙に浮いたり、コップに押しつぶされて身動きがとれなくなったりということがあります。
○略史
もともとセルセティアの土地には、前聖暦345年に中央地方から移住してきたセル人が住んでいました。しかし、前聖暦202年にセティア人の集団がこの地に移住を開始しました。2つの民族は文化や風習が違っていましたが、この頃は人口も少なく住み分けができていたので、民族間の衝突はほとんどありませんでした。
この2つの民族を結びつけたのは、前聖暦152年にフィアン王国に征服されるという事件があったからです。これによって、セル人とセティア人は急速に接近し、そして聖暦8年には両民族の協力体制によってフィアン軍を追い出すことに成功しました。こうしてセルセティアが誕生することになりました。
後にラガン帝国の侵攻があったのですが、海魔現象によってラガン帝国は多数の死亡者を出したため、大規模な戦いとはなりませんでした。これ以後、セルセティアは他国に踏み込まれることなく、アリアナ海貿易やペルソニア貿易の中継基地として繁栄してゆきます。
しかし、21年前のことです。セル人を主体としているマイエル教のラハト派が改革を唱え、戒律を非常に厳しいものに改定し、民衆の生活にも干渉するようになりました。そして、これに反発したセティア人とラハト派側についたセル人の間に亀裂が生じ、今まで解決されぬまま積み重ねられてきた民族間の問題にまで論争が発展し、ついに全土で両民族の衝突が起きることとなりました。
この内戦は現在もまだ継続中で、多人数のセティア人に対して、セル人が独立戦争を仕掛けている形になっています。
○制度
かつては連邦制でしたが、現在では南北に分裂してそれぞれ独自の政治を行なっています。
◆北島
北島に住むセル人は民族主義的な思想をもち、時代に逆行して政教一致の政体をつくりあげています。ラハト派が三権を掌握している状態です。・貴族:支配階級。ラハト派によって、その力は多少抑えられています。
・騎士:存在しません。
・軍隊:形式上は行政に属していますが、ラハト派の聖職者も登用されています。
・司法:独立した司法組織によって裁判が行われます。
ただし、判決には宗教的見解が強く影響します。
・警察:行政に属する組織です。
◆南島
セティア人は議会と内閣の近代政党政治を行っています。・貴族:名誉階級。主に政治家として活動しています。
・騎士:存在しません。
・軍隊:行政に属する組織です。
・司法:独立した司法組織によって裁判が行われます。
・警察:行政に属する組織です。
○現況
南北間の戦乱が激化しています。民族問題も深刻ですが、何よりも宗教上の問題は特に溝が深く、聖母教会の介入が事態をより混乱させています。北島に陣を張るセル人はセティア人に比べて人口が少ないため、この内戦は早いうちに終結すると思われていたのですが、人々の思惑を外れて今まで長引いています。これはセル人が推すラハト派の巫女に、聖者の再来とも呼ばれる『リュミル=カレルレン』が登場したことによります。彼女はまだ15歳という若さでありながら、セル軍の先頭に立って象徴として戦っています。神の啓示を受けたという彼女の活躍は目をみはるものがあり、幾度も無謀とも呼べる作戦を成功させています。実際に彼女が奇跡を行なったところを見たという人もおり、そのカリスマ性は高まるばかりで、最近では『光の聖女』とも呼ばれているようです。しかし、セル軍の将やセティア軍たちは彼女の活躍を疎み、魔女として疑いの目で見ております。友軍の中でも陰謀を目論む者がおり、その無事が懸念されるところでもあります。
○国家関係
・友好国:ユノス(対ロンデニア)
・敵対国:特になし。ただし、宗教的にはほとんどの国家と相容れない存在です。
○首都
・北島:中心都市ナランツィア
・南島:首都シルキィフ
○民族
・セル人(北島)
黒髪、黒い瞳の黄人です。
黄人の中では肌の色が白い方で、きめ細かな肌をしています。・セティア人(南島)
やや浅黒い肌をもち、瞳や髪は茶系銃の白人です。
目が吊り上がっている者が多いようです。
ユノス人と同じ系統です。
○宗教
セル人は黄人の間で信仰が深いマイエル教を信奉しています。
セティア人は聖母教会を信仰していたのですが、その教義はマイエル教の影響を強く受け、エルモア地方でも非常に特異なものに変化しています。
○要所
・サハンドラの城壁
セル人の防御の要でもあるサハンドラは周囲を頑強な城壁で囲まれており、難攻不落の都市として知られています。・ヤハト川
南島の中央を流れる大河で、飲料水、交易、農業、工業のすべてを支える重要な役割を担っています。母なる流れと呼ばれ、神聖視されています。
○産物
泡米、柑橘類、砂糖(サトウキビ)、オリ一ブ油、サツマイモ、魚、石炭
○文化・生活
セルセティアの文化は、エルモア地方の中でも一風変わっています。これは亜熱帯の気候風土やマイエル教の影響によるものです。たとえば、温暖な地方であることから、この国の人々は着物のように前が開いた服を帯で巻いて身につけています。袖にもゆとりがあって、風通しをよくしてあります。暑い夏の昼休みには、木陰でハンモックを吊して寝る習慣があります。
北島と南島では少し文化が異なっており、北島はマイエル教の影響が強く出ています。セル人たちはマイエル教の教義に従っており、日々の生活の様々な場面で自然物に感謝を捧げる習慣があります。たとえば狩りをしていて獲物がとれたら山の神に祈りを捧げ、日照りが続けば天に雨を請うといった具合です。マイエル教では自らを強く鍛えることを奨励しており、北島には『武闘家』と呼ばれる素手で戦う戦士が大勢いて、セル軍の大きな戦力となっています。『闘技祭』と呼ばれる祭もあり、武術大会が催されたり、剣舞が披露されたりします。その他に北島で特徴のある文化といえばお香があります。マイエル教の儀式など(特に舞い)でお香はよく使われるのですが、それが民間にも広まって、今では各家庭に1つは香炉が置いてあります。
対して南島は、大河ヤハトを中心に発展した文化を持ちます。交通の要ともなるこの河にはたくさんの船が浮かんでおり、船を家として生活する人々も大勢います。彼らは何かと「母なる川に感謝を!」という言葉を口にしますが、これは聖母教徒の口癖である「我らが母に感謝を」という言葉からきたものでしょう。なお、夏は蚊が多いので、河岸に住む者は夜は蚊帳をつって寝ます。南島には竹林が多く残っていて、竹で編んだ篭や竹製の筏がよく見られます。南方には竹でつくられた家に住む部族もいます。また、薄く削った竹に絵や模様をくり抜き、下に紙を敷いて色を落としてゆく『型塗り』という芸術もあります。
○食事
食べ物もこの土地独特のものが多く、蒸したご飯や米麺を主食としています。また、ライスペーパーという米を粉にして薄くのばしたものに、エビや挽き肉を包んで揚げるという技法もあります。
米そのものも特徴的で、泡米という中に気泡をいくつも含んだ米が好んで食べられています。これは普通に食べてもおいしいのですが、そのまま焼くとポップコーンのようにはじけて膨らみ、サクサクした歯ごたえのおやつになります。また、この米を蒸したものをお茶に入れて混ぜ合わせると、泡がたくさんでてきて味がまろやかになります。こうして飲むお茶を泡茶といい、特に北島で好まれています。なお、南島では半分発酵させたお茶に漢方薬をまぜて飲む宿場茶というものがよく出されます。これは旅人(托鉢巡礼者)の疲れを癒すために出されていたのが、民間にも広く伝わったものです。
他に、この島ではサツマイモが非常によく食べられています。蒸かしたり、煮物に入れたりといった普通の食べ方の他に、つぶしたサツマイモと小麦粉を混ぜて衣にしたり、カステラにしたり、あるいは細切りにして揚げて砂糖をまぶして食べたりと、様々な調理法があります。サツマイモからつくられたスイートスピリッツという蒸留酒もよく飲まれています。
また、南島には竹林が多いことから、春にはタケノコ料理がよく食べられます。食べ物というわけではないのですが、セルセティアでは細い竹を二つに割って先をまるくした、竹匙というスプーンでご飯を食べることが多いようです。
○組織・集団
・川の民
ヤハト川に船を浮かべて生活している集団で、川渡しをしたり交易品の輸送を行ったり、あるいは漁をして暮らしています。船を家としており、ほとんど陸に上がることはありません。・チェイサーズ
セティア人側に荷担しているセル人の戦士たちで、ラハト派から異端扱いされた人々の集まりです。その恥辱を晴らすために、自らを復讐の戦士と名乗って戦っています。・トルバ村
セルキシュの近くに位置する村なのですが、彼らには所有という意識が皆無で、非常に変わった社会を形成しています。他の家に勝手に入っても咎められることはありませんし、誰の家でご飯を食べても一向にかまいません。陽気な集団で、余所から旅人が来ると輪の宴という祝宴を開き、村をあげて歓迎します。
○人物
・グレン=グラブドゥ 57歳 男
ラハト派の大神官であり、北島の実権のほとんどを握っています。非常に厳格な人物で、戒律を何より大事なものとしています。・リュミル=カレルレン 15歳 女
「光の聖女」と呼ばれており、セル人の英雄として先頭に立って戦っています。まだ年若い少女でありながら非常に聡明で、巫女としても非常に優秀です。神の啓示を受けたと主張していますが、ラハト派の上層部はその点に関しては一言も言及していません。・エクル=ヴェル 24歳 男
「路傍のエメラルド」と称される稀代の用兵家で、リュミル=カレルレンの補佐をしています。もともとはただの農夫だったのですが、リュミルに見出されて前線の指揮をとることになりました。・白き鎧サイファム 27歳 男
常にリュミルの側にいる武人で、彼女に絶対の忠誠を誓っています。その剣技には定評があり、遠くからでも見えるその純白の鎧は、戦場における恐怖の象徴となっています。・ブラッディルージュ 27歳 女
化粧系の術法を使う傭兵戦士です。ラハト派と何か因縁があるらしく、セティア人勢力の側に立って戦っています。かつて彼女には息子がいたのですが、その死とラハト派が何か関係しているようです。・マジャリ=ロイ 36歳 女
女性の地位向上を唱えるセル人女性で、ペントラハルを中心として活動しています。マイエル教は聖母教会とは異なり男女の地位に差があります。そのため、マイエル教と対立することが多く、セル人の中には彼女を敵軍のスパイではないかと勘ぐる者もいます。
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