燃焼物
○燃料
現在、家庭用の燃料として主に使われるのは薪や石炭ということになります。一般家庭では竈を使って調理を行いますし、暖を取るにもこれらは欠かせません。しかし、燃焼後に出る灰や石炭殻は大変な量となり、家から出る廃棄物の殆どがこれに当たります。ゴミ処理といえば燃焼後の灰や石炭殻を収集することと思って差し支えありません。
これらは下層労働者を使って荷馬車郊外へと運び出し、処理場で分類を行います。石炭殻の細かいものは農耕用の土に混ぜて用い、その他の部分は粘土と混ぜて煉瓦の材料にすることができるのです。こういった作業には都市浮浪児なども参加しており、安い賃金ながらも安定した収入源として喜ばれているようです。
・石油
石油が存在することはもちろん知られていますが、もともとの埋蔵量が少ないためか、どの地域でもあまり利用されることはありません。明かりとして利用することもありますが、きちんと精製して使っているわけではないので、どうしても匂いが出て嫌がられることが多いようです。
○照明
夜間の照明として用いられるのは主に蝋燭とランプです。上流階級の人間はこれらをふんだんに使って明るい夜を過ごすことができますが、下層労働者たちはそうはゆきません。明かりはできるだけ節約しなければなりませんから、一家で使えるのは蝋燭1本だけで、夜は早々に寝てしまうことが多いようです。
中層の家庭では各部屋にランプを1つずつ用意することができますが、なるべく安い油を使用することが好まれていました。最低のものは魚油や廃油、あるいは質の悪い油を集めたもので、煤も多く出て匂いもひどいことから、いくら経済的だといっても下層身分の者しか使いません。一般の家庭で用いられるのは、菜種油やヒマワリ油などの植物から取られたものが多いようです。なお、北方地域ではアザラシや鯨から取れた油を用いるのが一般的となります。
・石炭ガス
この時代になると、都市の照明には石炭ガスが利用されています。石炭を加熱して乾溜することによって発生するガスを、夜間照明として利用したものですが、これは蝋燭やランプよりも安価であるため、先進国家の工場などで採用され、産業効率を向上させています。このガスを家庭の暖房や調理に利用しようと考える者もいますが、まだ実用化には至っていないようです。なお、これはアルメアなどの後進国ではまだ利用されておらず、大都市でもいまだにランプ照明が主流となっています。
○点火
一昔前は火打石などを用いて点火を行っていましたが、現在ではマッチが普及したために、昔ほど苦労して火をつけることはなくなりました。また、オイルライターも使用されており、金持ちはそれで葉巻に火をつけたりします。
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爆発物
○火薬
エルモア地方全体では火薬の材料となる硝石が不足しているので、銃弾の販売価格はわりと高めになっています。ペトラーシャをはじめとする大陸中央部の国家では、雷石と呼ばれる火薬によく似た性質の石が採掘されますので、硝石がなくてもそれほど困るわけではありません。そういった事情からか、硝石は天然産のものを利用するのが一般的で、その製法はまったく広まらないまま現在に至っております(もっとも変異現象の影響のため、硝石を現在知られている手法で作製しようとしても、滅多に硝石が出来上がることはないのですが……)
しかし、その他の地域ではあまり雷石が採掘されることは少ないので、火薬を作製するためには硝石が大量に採れるルワール大公国から輸入したり、ペルソニア大陸の硝石をあてにすることになります。ロンデニアからルワール大公国への援助が行われているのは、こういった背景があってのことなのです。
○ダイナマイト
聖暦771年に発明されたダイナマイトは、工事現場や鉱山でまたたく間に広まってゆきました。これはニトログリセリンを珪藻土に染みこませたもので、導火線に着火して用いるものです。それ以前にもニトログリセリンは現場で活用されていたのですが、これは液体の状態で硝子管に入れて使用していたので、非常に危険なものでした。持ち運びに安全なダイナマイトが人々に手放しで受け入れられたのも無理はありません。
しかし、これを戦争に利用しようと考えるのは当然のことで、ダイナマイトは現在起きている内戦でも多数の死者を生み出しました。また、これを金庫破りなどの犯罪に利用したり、テロ活動に用いるものも現れ始めており、発案者の意図を大きく外れ、兵器の1つとして認識されるようにもなっているようです。
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