都市概説


 


 都市には様々な種類があります。城壁に囲まれた城塞都市や港町、あるいは山岳地帯に囲まれた街など、その形式はさまざまです。国王から委任されて貴族が統治する街もありますし、一部には都市国家として存在するものもあります。また、ユナスフィール教国の首都であるアリア=ステアのように、聖母教会の総本山として大主教が統治する街も存在し、まさに多種多様といってよいでしょう。
 このような都市ですが、共通する点は大勢の人々が生活しているということです。これは単純に機能的な理由からだけではなく、変異の影響から逃れるために人々が集まって生活した名残りでもあり、都市は人々の協力の心を表わす場所でもあるということを覚えておいて下さい。


○規模

 普通の都市では数万人ほどが生活しています。人口20万を超える都市は、首都や港などを持ち貿易の拠点となる都市だけで、それ以下のものがほとんどを占めます。現在のエルモア地方で最大の都市はペトラーシャの首都であるペトルラーンで、人口は100万人にやや満たないくらいです。次に大きい都市はロンデニアの首都アイリストールとなり、こちらは旧市街地を含めて80万人弱となります。
 都市を規模によって大まかに分類すると、人口10万以上を大都市、5万〜10万程度を都市、1万〜5万ほどであれば小都市と呼び、それ以下の場合を町としています。町と村の区別は曖昧で、明確な基準はありません。なお、これらは国家によっても多少基準が変わります。


○成立と環境

 都市と呼ばれるものの多くは、河川の近くにつくられます。これは水資源を確保するために、そして交易手段としても重要な要素です。それから、多くの都市は高い壁で囲まれています。というのは、外壁は人間同士の戦争にも効果を発揮しますが、何よりも変異体などの生物の侵入を妨げてくれるからです。
 都市はその性格上、貿易などの拠点として機能します。都市間を繋ぐ道は街道として整備されており、ある程度の安全が約束されています。しかし、都市に人口が集中する最大の理由は、何よりも仕事があるということでしょう。科学や工業の発達によって人口は飛躍的に増大し、そして様々な新しい職業を生み出しました。鉄道の駅ができればそこで働く人が必要となりますし、工場が建てばたくさんの労働者が街に集中します。しかし、こうして集まった人々の全てが職にありつけるわけではなく、落ちぶれて犯罪に手を染める人も少なからず存在します。こうした人たちは貧民街に住み着くようになり、様々な問題を引き起こして統治する側を困らせています。


○地域社会

 都市の人間関係は少しずつ希薄になりつつあるといわれています。かつては職住が一緒であったものが、工場労働者や会社に勤める者が増えてきたため、地域的な協力体制が薄くなっているためです。
 農村の形態も変化しつつあるのですが、それでも近隣で助け合うのは当然と考えられています。都市に比べれば遙かに結束が強く、ごく自然な形でムラ社会を形成しています。それゆえに噂になるような行動や、地域社会からはみ出すような行動に対しては厳しいといえますが、そこで生活して行く限りにおいては重要な社会体制といえます。
 対して都会では、地域ではなく個人に主体を置いた人間関係が構築され、職業や趣味、あるいは学校などを間に挟んだ繋がりが目につくようになります。とはいえ、地域社会の結束が完全に失われたわけではなく、身分が下がるほど近隣の結束が強くなる傾向にあります。また、職人街のような同業者が集まる地域では、昔からの近所づきあいをことのほか大事にする傾向があります。


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