アルメア/概略

基本情報国土変異現象文化・生活人物・集団


 

基本情報


 エルモア地方西部にあるシュトラム半島南部を支配する王国です。後進国家の1つであり、現在も旧態依然とした貴族領主制度を敷いております。先進国家のほぼ中央に位置しながら発展から取り残されているのは、聖母教会の影響によるものです。国民の多くは聖母教会の熱心な信者であり、現在でもその戒律に従った質素な暮らしを続けております。


・国号
 正式名称はアルメア王国となり、国王を頂点とする国家です。

・国旗
 地の部分は緑、白、赤の順に上から横に3分割されており、白地の中央部分には王冠と交差した麦の穂と鎌、およびその周りを囲む蔦を意匠化した紋章が描かれています。

・統治
 現在はブランメルリージュ朝の治世となります。現在の国王はアルカレラ3世(男/65歳)です。

・貴族
 支配階級であり、強い権限を持っています。領主貴族は1つの自治体を統括する存在であり、各管区軍の将としても活動します。無領地貴族には官僚として働くものと、騎士として領主貴族に仕えるものがいます。

・首都
 ブラウニル地方にあるリスカルト市です。国家中央部の平野地帯に位置しており、周囲には畑が広がっています。郊外には国王の居城があります。


○民族

・アル人
 全人口の95%ほどを占める主要民族で、栗色の瞳と髪をもつ白人です。他の白人種よりも小柄で、肌の色もやや黄色人種に近い色をしています。

・フェルメル人
 北部の一部地域に住む白人で、灰色の髪にブルーグレイの瞳を持ちます。全人口の5%程度を占めています。


○宗教

 聖母教会を国教として信奉しています。ノルディーン市には中央教会の 『雪の聖アーシア』教会があります。人民は敬虔な信者で、純朴な国民性もその信仰心からだといえるでしょう。
 他にも、精霊信仰や自然信奉者といったものが辺境地域に存在しますが、数としては絶対少数派です。


○科学・教育

・科学
 エルモア地方でも随一の後進国家で、科学教育の普及は遅れています。これは聖母教会の意見が生活に強く反映されるためであり、当然のことながら霊子機関を導入しないまま現在に至っています。水力や旧来の蒸気機関が最新の技術であり、ガス燈や自動車なども非常に珍しがられる存在なのです。このような状況にあるため、近年では領主の中からも霊子機関を導入するべきだとの意見が出てきていますが、宮廷司祭は頑としてこれを受けつけません。一般市民も聖母教会の意見を絶対として旧態依然とした生活を続けているため、もし他国に攻め込まれるような事態に陥れば、たやすくその支配を受けることになるでしょう。

・教育
 科学の発展は遅れておりますが、教育事情が劣悪というわけではなく、初等学校教育は全国に普及しています。多くの地域では、下級学年(幼年学校)までは授業料無料で初等教育を受けることが可能となっています。これは聖母教会の力によるところが大きく、地方では聖職者が教師を兼ねることが多くなります。


○産物

・農産物
 小麦、大麦、燕麦、ライ麦、カラス麦、ジャガイモ、リンゴ

・鉱産物
 鉄、石炭、銅、鉛、クロム

・その他
 木材、魚介類、海藻、羊毛、タペストリー、木彫りの面、香木(ニセカエデ)


○交易

 ロンデニアやカルネアなど、幾つかの国家と交易が行われています。主な輸出産品は木材と織物であり、平野が少ないため穀物の輸入が多くなっています。


○交通

 主な交通手段は馬車と船であり、自動車や鉄道といった新しい交通手段は殆ど導入されておりません。道路事情も悪く、先代の国王の治世になってようやく、全国的な幹線道路網の整備が行われております。


○亜人

・エルフ(エルフィン)
 細身で小柄な美しい亜人種です。耳の先が尖っており、見た目ですぐ人間と区別がつきます。南部の森の中に集落をつくって生活していますが、滅多に出会うことはありません。


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国土


・地勢
 エルモア地方西部に位置し、シュトラム半島の南端を占める国家です。西部は西海に、東部はブルム内海に面しています。海は全体的に穏やかで、近海での漁業も盛んです。
 北部はシュトラム山脈の南端にかかっており、そこから南部に向かってなだらかな傾斜が続きます。国土の70%ほどが山地と森林に覆われており、平野部は国家中央と沿岸域にわずかに存在します。北部の傾斜地では主に牧羊が行なわれており、それ以南の地域から耕作地が広がるようになります。

・気候
 西海を流れる暖流の影響で、緯度のわりに暖かい気候となります。全体は温帯に属しており、北部は針葉樹林が多く見られますが、中部以南では広葉樹も見られるようになります。
 海流と風の影響で西部は特に温暖で、空気は全体に湿潤となります。冬季は降雪が多くなり、霧もよく出るようになります。これに対して内陸部は降水量が少なく乾燥しています。しかし、山脈から流れる雪解け水によって常に一定の水量は確保できます。内陸部は周囲の針葉樹林帯が防風林の役目をするため、静かに雪が降り積もる穏やかな冬を過ごすことができます。気温もそれほど下がらず、0〜5℃くらいの気温が続きます。北部でも山地に近くなければ、それほど寒くはならないようです。


○要所

・ニセカエデの森
 香木であるニセカエデが特に密生している森で、霊獣が出現することから人々はあまり近づこうとはしません。

・精霊湖
 北東のカルネアとの国境近くに位置する湖で、周囲には精霊使いや自然信奉者たちが多く住んでいます。


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変異現象


○霊獣

 南部に広がるニセカエデの森の霊獣が特に他国にも知られています。この霊獣と呼ばれる存在は正体不明の化け物の総称で、異端として認識されています。霊獣はエルモア中に存在しますが、アルメア以外の国に出現する霊獣はそれほど種類は多くありません。これに対して、ニセカエデの森にはほとんど全ての霊獣が出現します。これらは霊獣使いという一族が使役しているのだと言われていますが、霊獣使いと会ったという話はほとんど聞くことはありません。この霊獣とエルフという亜人が住むため、人々は決してこの森に入ろうとはしません。良質の香木として知られるニセカエデですが、一般に出荷されているものは林縁部や別の地域で伐採されたものが殆どを占めています。


○精霊湖

 精霊湖はリルマール地方にある森に囲まれた小さな湖です。この一帯は精霊が数多く出現するため、誰も近寄ろうとはしません。付近の森の中には精霊信仰者や自然信奉者たちの村があり、自然と寄り添ってひっそりと暮らしているようです。
 湖からは精霊の歌と呼ばれる美しい歌声が聞こえるといわれています。この歌のあまりの美しさに魅入られた人間は、湖の中に引きずり込まれて溺死してしまうという伝説がありますが、その真偽のほどは定かではありません。また、湖面の至るところで小さな波紋が生まれ続け、永遠に絶えることのない模様を形作っているとも伝えられています。


○蛍の夜

 もう1つの変異は、変異ではなく奇跡として知られているものです。ファリエラという都市で夏至の日に起こるこの現象は蛍の夜と名付けられており、その名の通り蛍のような光がふわふわと空を舞う幻想的な光景を見ることができます。この光はぼんやりとした小さな白い塊で、つかまえると細かいキラキラとした光を放ちながら、空に溶けるように消えてしまいます。蛍の夜は1年のうちにたった1日だけ起こる現象です。この日はホタル祭という祭が開かれ、各地から人々が訪れて賑わいます。


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文化・生活


 国民のほとんどは聖母教会の敬虔な信徒で、その教えをかたくなに守っています。この地を訪れた旅人は、みな親切な人たちだったと口をそろえて彼らを称えます。貴族たちも圧政を敷くことはなく、領主の中には収穫期には領民と一緒になって汗を流して働く者もいます。
 アルメア人は基本的に争いごとが嫌いで、平和のうちに物事を解決しようとします。これは寛容な精神のあらわれとも取れますが、はっきり意見を言うのが苦手という理由もあり、うやむやのうちに問題をごまかしてしまう傾向もあります。また、平等を重んじる反面、出る杭は打たれるという風潮もあるため、リーダーシップを持った人間が出にくい土地柄ともなります。


○生活

 この国では、多くの場合は村や町単位で分業を行っており、収穫物などは全て公平に分け合います。民衆同士の結びつきは強く、たとえば婦人たちが針仕事をする場合には針場と呼ばれる場所に全員が集まり、楽しく談笑しながら裁縫や糸巻きといった作業を行います。
 他の国々が近代化に向かっている中、彼らは旧態依然とした農業中心の生活をしています。輸出もほとんど行わず、わずかに宗教をモチーフにしたタペストリーや羊毛、木彫りの面などが近隣諸国に売られています。なお、収穫祭ではこの木彫り面をつけた宗教劇が行われ、教会を中心にみんなで一生懸命に練習を行います。


○食べ物

 食事は質素なものが多く、普段は野菜や穀物を中心としたものを食べています。主食はパンですが、地域によっては野菜麺という、野菜を細く長く削りだして乾燥させた麺を食べているところもあります。また、寒干し大根や、細切りの赤カブとレタスを薄く焼いた小麦に包んで食べるスー・ローズという食べ物など、独自の野菜料理がいくつもあります。おやつにもオニオンチップスやふかしたジャガイモなどが好まれます。肉を食べることはあまりありませんが、秋の感謝祭では肉を使った料理がふんだんに振る舞われます。


○その他

・住居
 急勾配の屋根を持つ、木組みの家がよく目につきます。古い家の中には鉄釘を一切使わずに立てられたものが多く、基本的な部分はほぞの組み合わせで繋がれており、木釘や縄で縛るなどして要所を補強しています。こういった古い家は、現在でも実際に利用されています。

・織物
 特に毛織物が有名で、ショールのような小さなものから、カーペットのような大きなものまで幅広く作られています。メダリオン柄のものが伝統的につくられており、国外での人気も特に高いようです。このような織物の柄は古くから歌として記憶されており、糸の交差のさせ方を歌詞にして代々受け継いでいます。その家独特の歌も存在するようです。

・燃料
 木材が豊富な国家であるため、燃料には薪や炭がよく利用されています。特に北部では炭が好んで用いられます。

・精霊祭
 自然信奉者たちが行う祭で、蛍の夜に行われているといいます。しかし、詳しい内容は一般には全く知られておらず、精霊湖で催されるという話も噂でしかありません。


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人物・集団


○集団

・森林警備隊
 森林の治安を守るレンジャーで、国家に所属する組織です。密猟を摘発したり、自然信奉者たちと問題が起こった場合に調停を行ったりします。

・森林音楽教室
 ジョアニルという老人が森で行っている、子供たち相手の音楽教室です。もちろんちゃんとした楽器はないため、クワや蹄鉄、バケツなどの身近な品を使っていますが、子供たちは本当に楽しそうな顔で演奏しています。

・霊獣使い
 狂気の獣とも呼ばれる霊獣を使役する一族で、滅多に人前に姿をあらわすことはありません。

・自然信奉者
 自然と調和した生活を推奨する人々で、その多くは森の中でひっそりと暮らしています。他国から追い出されてこの地にたどり着いた者もいます。


○人物

・アルカレラ3世(男/65歳)
 現アルメア国王。非常に穏やかな性格で、優王とも呼ばれるほどです。国王が怒った姿を見た人はいないとの話もあります。

・魔女リュルエリア(女/?歳)
 年齢不詳の老婆で、ニセカエデの森の近くに1人で住んでいます。有名な薬師であり、同時に優秀な呪医としても知られています。

・アルム=ゼナン(女/43歳)     
 聖母教会の司祭で、ファリエラ市の郊外で孤児院を開いています。恵まれない子供たちの世話を一手に引き受けていることから、ファリエラの聖女とも呼ばれています。

・ファイアベル(男/21歳)
 神官戦士の1人で、かつては街の乱暴者として知られていましたが、後にアルムの人格に傾倒し、これに仕えることとなりました。今では孤児たちのいい兄貴分として働いています。胸にアルムから貰った薔薇をドライフラワーにして胸にさしているため、薔薇の騎士とも呼ばれています。

・エリザ=キャリバール(女/16歳)
 ノエル地方の領土を治めるキャリバール公爵の1人娘です。彼女は噂に聞いた隠密視察というものに憧れ、ひそかに城を抜け出しては城下の様子を盗み見ているのですが、実は領民は皆このことを知っています。そのため領民たちは彼女のことを隠密姫と呼び、苦笑しながらその遊びにつき合ってあげています。領内の不正をあばく格好いい役に憧れているのですが、誰も不正をしないため少し面白くないようで、ひそかに遠出を計画しています。

・アルタム=トランスバール(男/27歳)
 エリザ姫に仕える武官で、彼女の言動にいつも振り回されている苦労人です。よく愚痴をこぼしていますが、口でいうほど嫌ではないようです。

・レグヴェルド=セルディン(男/46歳)
 リルウェイ市の執政官の1人ですが、密輸を指導して私腹をこやしています。非常に慎重な性格で、もしその悪事が明るみに出たとしても、自分の立場を守るための手段は幾つも用意してあります。

・ジョアニル(男/67歳)
 かつては最高のピアニストとして知られていたのですが、引退後の現在はノルディーン郊外で子供たちに音楽を教えながら、ひっそりと暮らしています。


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