夢魔現象
ルクレイドで起こる特有の変異現象で、その土地で起こった過去の悲劇や生き物の強い思念を夢で見るというものです。恐怖によって引き起こされた夢は、それを見た者の精神を崩壊させる危険性があります。この現象から人々を救うのが夢使いの仕事であり、主に夢系の術法を駆使してこれに対処します。
○思念
夢魔現象の元になる強い思いのことを残留思念といいます。残留思念というのは生物の意識のパターンであり、このうち夢に現れて人に被害を与えるネガティブな恐怖思念を、一般に夢魔と呼んでいます。
夢魔は仮想的な意識であると同時に、夢の世界の物理現象を操る強制力を持ちます。また、夢魔は残留思念のもととなった意識だけではなく、加害者や周囲にいた全ての者の意識や記憶を有しており、一連の事件をほぼ正確に再現することが可能です。
○夢の設定
夢魔現象の基本的な内容として決めておくべきことは、恐怖を与える夢の内容と、それが誰の記憶や感情だったのかということです。被害者に与えられる恐怖は全てこれに沿った内容のものとなり、恐怖シーンとして夢の中で繰り返されることになります。ただし、必ずしも正確な事実が再現されるとは限りません。
○種類
夢魔現象には幾つかの種類があります。以下にその例を示しますが、場合によってはこれ以外の特殊な夢魔現象が生じる可能性もあります。
・恐怖記憶
恐怖を体験した記憶が残留思念となって残っているもので、死者の念もこれに含まれます。このタイプの夢魔現象の中には、複数の存在の意識によって引き起こされるものも存在します。・自己崩壊
自身の恐怖や精神的負荷が夢魔現象に取り込まれる場合があります。この場合、被害者の意識が夢魔を生み出し、自己の精神を攻撃することになります。・共感思念
過去に起こった夢魔の恐怖記憶と、被害者の精神が同調して起こる現象です。被害者の多くは残留思念の恐怖記憶に似た体験をしていたり、同質の感情を抱いていることが多いようです。この場合、被害者の夢が夢魔の記憶に歪曲されたり、2つ以上の恐怖思念が融合して複雑な夢を構成することもあるようです。
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夢魔
○基本設定
・能力
夢魔は意識と記憶を持つ精神存在であり、通常のNPC(怪物)と同じように能力を設定します。しかし、肉体を持つわけではないので、心と知に関する数値だけを決めることになります。・恐怖度
夢魔が恐怖シーン終了時に被害者に与える精神的ダメージです。なお、現実世界と同じように、これ以外の恐怖でも自我は減少する可能性があります。・ダメージ
夢魔が直接姿を現わすことはないため、これにダメージを与えることは出来ません。
○特殊能力
夢魔は幾つかの特殊能力を行使することが出来ます。これは能動行動の1つとして扱われます。
・夢界変幻
夢魔は夢の世界を自由に変幻させ、中に取り込まれた者に対してさまざまな影響を与えることが出来ます。物理的な影響力などに関しては、夢魔の心を基準とした判定を行い、その達成値を難易度として与えることになります。・夢造物
シーン内に新たに物品などを生み出すことが出来ます。・法則改変
夢の中での物理法則を設定することが出来ます。これによって、夢の中の登場人物の移動を制限したりすることが可能です。・夢傀儡の作製
夢界の登場人物として、夢傀儡を作製することが出来ます。・存在配置
分身や夢の中の存在を、自由に移動させたり配置することが可能です。なお、この能力は外から夢の世界へと運び込まれたものには効果をあらわしません。
○夢傀儡
夢の中に登場する生物は、夢魔の操る夢傀儡として扱われます。生み出された傀儡はそれぞれ独立した存在として活動することが可能で、夢魔の能動行動としては扱われません。
・能力
傀儡はNPCとして扱われます。現実世界を扱う場合と同じように設定して下さい。・ダメージ
傀儡にダメージを与えた場合は、現実世界の存在と同じように処理して下さい。なお、これによって夢魔本体が傷つくことはありません。・回復
傀儡のダメージは、夢魔が干渉しなければ現実世界と同じように回復します。ただし、夢魔が意図すれば、1ラウンドごとに心判定の達成値だけ回復させることが可能となります。これは夢魔の能動行動の1種として扱われます。
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夢界
夢魔によって引きずり込まれる夢の世界を夢界といい、ここではいかなる不可思議なことでも現実となって起こり得ます。これは仮想的な世界でありながら、夢界に入り込んでいる者にとっては、全て現実同様の物理世界として影響を与えます。
この場合の夢界の物理法則というのは1体の夢魔によって支配されており、夢魔の意識次第でどのような世界にも変化し得るものです。夢魔は夢界にいる者に様々な恐怖を与えて、自らに同化させようとします。
○出現
1体の夢魔が支配する夢界は、取り憑いた被害者が夢を見ている時にのみ出現します。それ以外の時は漆黒の闇で閉ざされています。
・時間の流れ
夢界での時間の流れは、現実のものと同じとなります。しかし、昼夜などの時間帯が同調するわけではなく、現実の昼に夢界の夜が訪れることもあります。これは夢魔の意識によって自在に調節されます。
○ダメージの影響
現実世界から入り込んだ者は、夢の中では仮想的な肉体を持って行動することになります。しかし、意識は現実世界と共有されており、夢の中で遭遇した恐怖によってダメージを受けることがあります。
・肉体的ダメージ
夢界の中での物理現象ダメージは仮想的なダメージとして処理され、目覚めて夢界から出れば消えてしまうことになります。・精神的ダメージ
精神耐久値の減少は現実でも夢の世界でも全く同じで、すべて実際のダメージとして処理します。夢の世界の恐怖で自我にダメージを受けた場合は、目覚めてもそのままダメージとして残っています。・死亡
夢の中で死亡してしまった場合は、精神的影響として肉体の持ち主に作用します。夢界でのダメージに限り、生命は0までしか減少することはありませんが、それ以上のダメージは全て自我へのダメージとなります。
夢の世界での死者は、現実世界と同様に目覚めることなく、その場に倒れて動かないままとなります。ただし、現実世界で声をかけられるなどの刺激を受けた場合は、普通に目を覚ますことができます。肉体の傷は仮想的なダメージですから、目を覚ませば夢の世界に入る前の状態に戻ります。・ダメージの回復
夢界にいて活動している間は、睡眠をとっていることにはなりません。しかし、夢界で眠りについた場合には、肉体・精神にかかわらず通常と同じように回復します。なお、夢界で睡眠をとっても夢を見ることはありません。
○術法
夢の世界そのものに影響を与えない術であれば、何の障害もなく行使することができます。しかし、夢界そのものに影響を与えようとした場合は、夢魔の精神抵抗との対抗判定に勝利しなければなりません。
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進行
○恐怖シーン
夢の世界では、夢魔の恐怖を再現するシーンが繰り返されます。シーンの長さは夢魔によって異なり、一連の出来事の最初から再現する夢魔もいれば、最後の部分だけを繰り返し見せる夢魔も存在するようです。
○被害者
夢魔現象の被害者は、夢魔に取り憑かれている状態となります。被害者が眠りについた時は夢界へと取り込まれ、夢魔の標的となって恐怖記憶を体験します。
・精神抵抗
被害者が眠気に抵抗しようとする場合は、夢魔の心判定と被害者の精神抵抗との対抗判定に勝利しなければなりません。この判定は1時間に1度行って下さい。・抵抗
被害者は夢の世界で逃げたり戦ったりして、恐怖に立ち向かうことが可能です。判断抵抗の判定も、通常と同じように行うことが出来ます。・投射
夢の世界の被害者は、本来とは異なる存在として現れることもあります。殆どの場合は姿形ばかりではなく、記憶まで他人のものへとすり替わっています。これは被害者とは別の存在が夢魔を生み出した場合に多く見られるもので、残留思念の恐怖を追体験する役目となります。
被害者が扮する夢の登場人物を傷つけることは、被害者の精神を傷つけることであり、場合によっては精神を崩壊させてしまう可能性があります。・記憶
被害者は夢の中での出来事を覚えておりませんが、目覚めた時に何か嫌な夢を見たような印象を受けます。被害者が夢の記憶を思い出そうとした場合は、夢魔の心判定と被害者の精神抵抗との対抗判定を行って下さい。判定に成功すれば断片的な記憶を取り戻すことが出来ますが、詳しい内容を知ることは不可能で、わずかな視覚記憶やイメージだけにとどまります。
○外来者
夢界に入り込んだ夢使いは、最初は全くの外来者として扱われます。夢魔も外来者が何者かを把握していないので、新しく訪れた者として対応します。恐怖シーンの達成を阻害する動きを見せなければ、夢魔の方からは殆ど外来者に干渉することはなく、なるべく外来者を遠ざけながら恐怖シーンを完了させようと試みます。
夢使いは現実世界のように自由に動き、シーンが達成されるのを阻止することが可能です。しかし、邪魔するような動きを見せた場合、夢魔は様々な障害を仕掛けて被害者から夢使いを遠ざけようとします。
○一時的解決
一時的に夢魔の与える恐怖から逃れることも可能です。ただし、これに成功して目覚めさせることが出来ても、被害者が再び眠りについた時は、目覚めた直前の状態からシーンが続行されます。
・一時的退避
恐怖シーンを1度乗り切れば、被害者は普通に目覚めることが出来ます。なお、段階的に恐怖を与えようとする夢魔を扱う場合、GMは任意にシーンを区切ってセッションを行っても構いません。この場合は、恐怖シーンが完全に終わる(最終的な恐怖体験が訪れる)前に目覚める場合もあります。・強制覚醒
被害者を夢から目覚めさせれば、シーンの進行を中断させることが出来ます。しかし、普通に起こすことは不可能で、術法などの霊的な手段を用いる必要があります。この場合は、夢界そのものに影響を与えようとしているため、夢魔の精神抵抗との対抗判定に勝利しなければなりません。
○完全解決
・解決方法
夢魔現象の解決方法は、恐怖の原因となる問題を根本的に取り除くことです。被害者を見つけて一時的に夢の世界から逃げ出したとしても、再び眠りについた瞬間から恐怖シーンが開始することとなります。
夢使いの目的は夢魔を倒すこととは限りません。相手を説得することであったり、その状況が再び起こらないように状況を変えることだったりする場合もあります。いずれにせよ、原因となる全ての問題を解決する必要があり、1つでも取りこぼしがあった場合は、被害者は再び恐怖の夢に悩まされることになります。・被害者の解放
完全解決に成功すれば夢魔は消え、被害者は夢の中で恐怖に悩まされることはなくなります。また、それ以前に夢魔に取り込まれた者(捕縛者)の意識も一緒に解放されます。・失敗
被害者が扮する役割が死亡するなど、恐怖シーンが達成されてしまった場合、被害者は恐怖度を目標とした判断抵抗を行う必要があり、失敗すれば自我にダメージを受けることになります。
そして、ダメージの有無にかかわらず捕縛者となり、シーンをクリアするまで昏睡状態となってしまいます。恐怖シーンの達成は、夢魔自身が手を下さずに行われても構いません。夢使いが対処を誤り、自ら被害者に同種の恐怖を与えてしまった場合でも、シーンクリアに失敗したことになります。
○捕縛
・捕縛者
夢魔は夢の中で、被害者に対して何らかの危害を加え続けます。この影響から逃げのびているうちは意識を保つことが出来ますが、恐怖シーンが達成されてしまった時は昏睡状態へと陥ってしまいます。このような状態にある被害者を捕縛者といい、夢魔現象を解決しない限りは目覚めることはありません。現実世界で水や食事を与えられないまま放置されると、いずれは死亡してしまうことになります。
捕縛前の被害者は自分の意志で動くことが出来ますが、捕縛者は自分の意志で動くことが出来なくなり、夢魔が与える役割を演じるだけの人形と化してしまいます。時には助けに来た夢使いを襲うこともあるかもしれません。ただし、判断抵抗は通常と同じように行うことが可能です。・捕縛
被害者が捕縛状態にある時は、恐怖シーンは中断されることなく続行されます。術法で夢界から被害者を助け出そうとしても、自動的に無効化されてしまいます。・捕縛者の記憶
捕縛者は前に見たシーンの光景や自身のことを殆ど忘れていますが、意識の奥底に断片が残っています。思い出そうとした場合は、夢魔の心判定と捕縛者の精神抵抗との対抗判定を行わなければなりません。抵抗判定に成功すれば、記憶の断片を思い出すことが可能です。・捕縛者の能力
能力値などは本来の数値を使用して下さい。ただし、これはあくまでも与えられた役割の範囲内でのみ許されるもので、設定外の判定を行うことは出来ません。
○シーンの再生
シーンのクリアに失敗した場合は、次にまた同じ恐怖シーンが展開されます。これは被害者の精神が崩壊するか、恐怖の原因が完全に取り除かれるまで続行されます。
ただし、あくまでも最終目的が同じというだけで、その過程がまったく同様に再現されるとは限りません。夢魔は状況に応じて手段や状況、あるいは登場者の配置を変更し、恐怖シーンが無事達成されるように傀儡や世界を操作します。
・捕縛者の解放
1度捕縛されてしまっても、次の恐怖シーンの達成を阻止すれば捕縛状態は解かれます。そうなれば昏睡状態から脱することができますが、夢魔現象の完全解決に成功しなければ、再び同じ夢を見ることになります。・目覚め
一時的にでも恐怖シーンをクリアすれば、昏睡状態にあった場合でも、ちょっとした刺激を与えれば目を覚ますでしょう。ただし、それまでに受けた自我のダメージが回復するわけではありませんので、程度によっては専門的な精神治療を行わなければなりません。
○例外
過去に起こった夢魔現象の中には、幾つか例外的なものが存在します。以下に示すものはその一例であり、これ以外の現象が生じうる可能性もあります。これらの原因が夢魔の力によるものか、それとも変異現象などに他の要因よるものかについては、未だに解明されておりません。
・共通夢界
同じ夢魔に複数の人間が同時に取り込まれた例があります。・夢魔の支配
夢魔と被害者の思念が同調する場合がありますが、これは被害者の精神が夢魔にうち勝って、逆に夢魔を支配してしまったというものです。この時は被害者が無意識のうちに夢魔を操り、自身に恐怖を与えた者に対して復讐を行っておりました。・現実の侵食
夢魔の操る夢が現実世界を侵食し、夢と現実が混じり合う不思議な空間が形成されたことがあります。・転移
夢魔が複数の人間の間を転移して歩き、それぞれの恐怖体験を吸い取って肥大化した例があります。最終的には何人もの恐怖を再現する複雑な夢が出来上がりましたが、夢使いの活躍によって解決されています。
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