○新大陸の発見
聖暦786年に、霊子機関を搭載したロンデニアの大型船が、これまで航行不可能といわれていた西海を越えて、新大陸の東海岸に到着しました。この大陸は探索隊の隊長であるエスティリオーネの名にちなんで、エスティリオと名付けられました。
エスティリオは大変異現象の影響を強く受けた地域の1つであり、変異した生物もエルモア地方のものと同様に強力で、精神的にも歪みを生じているものが多く存在します。また、トカゲ竜と呼ばれるドラゴンの亜種が多く生息しており、人々の生活する場を更に狭いものにしています。
○黄金郷伝説
無事に帰還を果たしたエスティリオーネの報告によって、ロンデニアは新大陸の噂で持ちきりになりました。そして、エスティリオーネたちが金塊をいくつか見つけたことから、黄金郷エデンの存在が囁かれるようになったのです。
そして、この金塊がただの金ではなかったことが、再び新大陸ブームに火をつけることになりました。この金は真金(真実の金)と呼ばれる金属で、霊子機関をつくる上で非常に重要な鉱物です。そのため、新大陸は土地と真金の二重の意味で、エルモア中の注目を集めることになったのです。
○移民船団
この大陸に残された人々は、旧文明の恩恵にしがみつきながら生物や変異現象から身を守り、懸命に生き延びる努力を繰り返してきました。しかし、ここにエルモア地方の人々が進出したことによって、彼らの生活は大きな転換を余儀なくされます。
各国は競って新大陸への進出を目指すこととなり、まずロンデニアの移民船団がその口火を切りました。聖暦788年には奴隷、囚人、都市浮浪児などを乗せた5隻のロンデニア軍船が新大陸の東海岸にたどり着き、海岸近くにサンディルバーニという名の開拓村をつくりました。気候や植物相などが本国とはあまりにも違うために当初は苦労しましたが、彼らは懸命に森を切り開き、動物たちと戦い、着々と新大陸の開発を進めてゆきました。
しかし、開拓を始めてから半年も経たないうちに、不幸な出会いが起こりました。狩りに出かけた軍人の1人が、野生動物と間違えて現地人を撃ち殺してしまったのです。言葉が通じないことから、この事件の後も互いの誤解は積み重なってゆき、現地人との交渉はついに閉ざされ、回避することのできない戦争へと発展することとなりました。
それからしばらく後にはエリスファリアの移民船団も入植を開始し、彼らもまた現地人との間で様々なもめ事を起こしています。そして、争いにまでは達しておりませんが、ロンデニアとエリスファリアの両国の移民たちの関係もまた、縄張り問題から悪化の一途をたどっています。新大陸の現地人はその狭間にあって、悲惨な生活を強いられてるのが現状です。
○原住民
・文化
新大陸の原住民の文化レベルは、エルモア地方のものに比べると遥かに低く、原始的な農耕と狩猟によって成り立っています。ようやく鉄器が使われるようになりましたが、鋼を加工する技術はまだなく、武器も剣や槍、あるいは弓矢といった簡単なものしか使われていません。
食事はスナモロコシやムラサキハルイモというサツマイモの仲間、あるいはレッドポテトといった温暖な気候に適応したジャガイモなどを主としています。この地方には独特の植物が多く、チーズ・ナッツという油脂分の多い木の実や、ヒノコツルクサという香辛料などが生えています。しかし、なんといってもユラムという植物を忘れることはできません。これは高さ2mほどになるイネのような形をした栽培植物なのですが、万能植物として多用途に活用されています。茎は甘く、葉も食用とすることができ、根からは石鹸が取れ、秋には小さな甘い実をつけます。この植物はロンデニアの移民たちも栽培を始めており、いずれは彼らの間でも主要な食物となることでしょう。・戦士
現地人は銃のような優れた武器は持っていませんが、非常に特殊な能力をもつ戦士がいて、移民たちを苦しめています。
現地人の中には、非常に奇妙な姿や能力を備えている者たちがいます。亜人の一種ではないかと考えられていますが、彼らは背中に翼を生やしていたり、瞳が3つあったりと、常識では考えられない姿をしています。彼らは異形の亜人ということから、縮めて異人と呼ばれて恐れられています。
異人とともに恐れられているのが、魔玉使いと呼ばれる戦士たちです。彼らは魔玉と呼ばれる石の力から獣を呼び出し、それを使役して戦うのです。そのため、魔玉使いは獣魔使いとも呼ばれています。使役する魔獣の特徴は、額に第3の瞳をもつことです。詳しいことは知られていませんが、魔玉使いは様々な方法で魔獣の能力を引き出し、エルモアの移民たちと戦うのです。魔獣の中には、使い魔のようにただ1人の魔玉使いに仕えるものがいます。魔玉使いがつくりだすのか、あるいは術法によって従属することを義務づけられているのかはわかりませんが、かなりの経験を積んだ魔玉使いだけがこれを使役することができます。彼らはこの魔獣を従魔と呼び、常に身近に置いているようです。
○機神
ロンデニアの移民の1人に、バーニッシュ=ビーという青年軍人がおりました。彼は原住民との戦いの中で死亡したものと思われていましたが、バーニッシュは無事生存しており、しかも大きな手みやげをもって帰還したのです。
バーニッシュが開拓村に持ち帰ったのは、全長8mを越える巨大な人型の機械でした。彼は帰還した早々、仲間たちがトカゲ竜の群れに襲われている光景に出くわすことになります。そして、バーニッシュはこの人型機械を用いてトカゲ竜を倒し、これを追い払うことに成功しました。
こうして、はじめはこれを恐れていた移民たちも、破損していながらも何体ものトカゲ竜を倒したこの機械に羨望の眼差しを向けるようになったのです。人々はこの人型機械を機神と呼び、その秘密をどうにかして解明しようとしました。しかし、最後の戦いで機神自体がバラバラに破壊されてしまったこと、本国から遠く離れていて技術者がいないこと、そして何よりバーニッシュが戦いで死んでしまったことから、機神の秘密についての情報はほとんど得られていません。しかし、たった1機でさえ戦局を大きく変える力を持つだろう機神という存在は、この大陸に進出する上で最大の魅力となったのです。
現時点ではこの最初の1機以外の機神は全く目撃されておりませんし、まだロンデニアの移民たちしか機神の存在を知る者はおりません。ですが、これから植民活動が拡大するにつれ、いずれバーニッシュのように機神を発見する可能性も少なくありません。これが変異体の掃討に利用されると同時に、数多くの人々を殺すことになるのも想像に難くないはずです。
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