変異への対策
変異もまた、霊子や幽子に関わる物理法則の1つでしかありません。科学魔道の技術や術法と異なるのは、これが全くの無作為に起こるという点と、事実上これを防ぐ術はないということです。時代が進んだ今、変異現象の進行を遅らせる技術が開発され、中央地方の結界として実際に使用されています。しかし霊子核崩壊の伝播を防ぐ術がない以上、その鎮静化は時間に任せるしかありません。結界はあくまでも一時逃れでしかなく、それ自身でさえ徐々に変異の影響に侵されつつあるのです。もう1つ、変異を解消する手段として期待されているのが虚粒子ですが、これはまだ研究途上のものでしかありません。
しかし、現在の段階で変異として起こる現象は、術法レベルの変化でしかありません。ですから、変異現象の結果は術法によって元に戻すことも可能なのです。とはいえ、一般的な認識として変異体は穢れた存在でしかなく、それを治癒できる教会からも異端として認定されています。その上、肉体そのものが変化してしまった場合、それを治すために必要な術法は高レベルのものばかりで、使い手も減少傾向にあります。ですから、現状では他人の助けはあまり期待できないでしょう。
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霊子蒸気
エルモア地方においては、聖母アリアたちが封印している変異源や絶対変異地帯に接近した場合を除けば、霊子核の崩壊まで起こるわけではありません。ただし、『霊子蒸気』(エーテルスチーム)による変異は別です。比較的低いエネルギー状態とはいえ、それが異常活性レベルであることには間違いないのです。
霊子物質による変異は消費したエネルギーポイントで計算します。これは獲得特性のの変異度として扱うことになります。1000EPを消費する度に、汚染ポイントが1点上昇するものとして下さい。霊石であれば4000銀貨、霊水であれば2000銀貨で購入できる霊子物質となります。
これらは霊子核の崩壊を伴うものですから、緩やかであるとはいえ周囲に伝播します。霊子機関を使用している周囲でも変異現象がよく起こるということを、とりあえず覚えておいて下さい。町中に出没する怪物の中には、これが原因で誕生したものも存在します。
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想像との連動
変異現象の結果として起こる変化は、幽子が蓄積している情報から引き出されます。言ってみれば、この世で起こりうる全ての現象が実現する可能性があるのです。また、人間の精神活動もまた、幽子情報として記録されているものの1つです。そのため、変異現象として起こる内容には、人間の想像力が生み出したものも少なくありません。
結果だけを見れば、これは術法によく似た物理現象ということができます。変異現象が必ずしも悪い方向に働くとは限らないという1つの例でもありますが、人間が制御できるものではありません。そして、騒動を起こすことの方が圧倒的に多いのです。以下にその例を幾つか挙げます。これは、シナリオのネタとしても利用できるものです。
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構造変化
かつての科学魔道時代には、擬人兵器と呼ばれるものが存在していました。これらは変異のせいで人間の想像上の存在(天使や悪魔)と結びつき、現在はその力が非常に限定されています。霊子生命体兵器というのも同様で、現在では精霊のイメージと結びつき、超自然的存在の1つとして知られています。
変異源に近づいたキャラクターにも、これと同じ変化が起こり得ます。これはキャラクターの行動パターンとして蓄積された情報が、変異現象によって物理的に顕在化するというものです。たとえば、悪魔のような行動を繰り返していれば、そのまま悪魔になってしまう可能性があります。同じく、強さだけを求めるキャラクターは化け物になってしまうかもしれませんし、精神が冒されてしまう可能性もあるのです。霊体の中にも、このようにして生まれてきた者も存在します。このような変化を存在のシフトといい、ルール上ではワールドリレーションの1つとして取り扱われます。これは変異現象ですから、変異源と接触してからでなければ起こらない変化です。しかし、現在はエーテルスチームという変異源がありますから、町中にいたとしても十分に変化しうる可能性があります。
○魔族化(Road to Demon)
悪意のある行動を好んで繰り返した場合、キャラクターは魔族に変わってしまう可能性があります。ただし、これは作為的に他人を傷つけたりした結果によるものであり、結果的に仕方なく人を不幸に陥れた場合は変化しません。変化はゲームの終了時に限らず、悪意ある行動を繰り返す度に行っても構いません。
変化の目安としては、容姿、能力、属性、特殊能力、そして完全な変化と徐々に進めてゆけばよいでしょう。もちろん、精神的にも変化を遂げてゆき、少しずつ邪悪な行動を起こすようになります。GMはプレイヤーの行動に従って、適当な効果を決めて下さい。変化を止めるためには、改心してそれまでのような悪意ある行動を止めるしかありません。
このルールは、ある種のプレイヤーへの対処法として利用することができます。たとえゲームの中とはいえ、表向き見つからなかったらどんな非道なことをしても許されるというわけではないのです。
○獣化(Road to Beast)
強さばかりを求めるキャラクターにも、存在のシフトが起こる可能性があります。
他に穏便な解決法があるにも関わらずその努力を怠り、わざと戦闘を仕掛けたと判断される場合には、少しずつ獣へと姿が変化してゆきます。
変化の目安は魔族化の場合と同じで、容姿、能力、属性、特殊能力、そして完全な変化と徐々に進めてゆけばよいでしょう。精神的な変化は知能の退行として現れ、少しずつ行動の基準が本能的なものに移行してゆきます。GMはプレイヤーの行動に従って、適当な効果を決めて下さい。変化を止めるためには、人間として理性的に行動するしかありません。
以上の変化によって社会生活に支障をきたしたり、まともなプレイが不可能と思われる段階まで到達した場合は、GMの判断でそのキャラクターをNPCとして接収することができます。改善の兆しが見える場合には、元に戻るためのシナリオを組んであげてもよいでしょう。
これらのルールを適用してよいのは、そのプレイヤーの行状があまりにも目に余り、他のプレイヤーを不快にしていると判断される場合だけです。ポイントが加算されるのも、プレイヤーの行動に悪意が感じられる時のみとなります。もっとも、このような制裁措置を取る前に警告するのがフェアなやり方ですので、ポイントを与える前に真意を問いただしたり、なるべく話し合いで解決するようにしましょう。
ただし、これらの現象はアンバランスド・ワールドで実際に起こりうる物理現象の1つであり、ルールとして規定されているものです。いざ適用する際には、何もためらう理由はありません。また、元に戻るためのシナリオに、他のプレイヤーを付き合わせる必要もありません。
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