術法の位置づけ
術法は神が授けた奇跡ではなく、霊子や幽子に関わる物理法則の1つでしかありません。人間の精神が回路を構築するのが術法であり、機械によってこれを行うのが科学魔道時代の機械なのです。それから、変異現象によってもこれらと同じ効果が起こります。
つまり、データとして示されている術法は、キャラクターが使うためだけに存在するのではなく、変異現象の例であり、そして科学魔道時代の発掘品の機能としても設定できるということです(もっとも、術法よりは遥かに優れた技術ですが)。GMはシナリオのネタとしてこれを利用することができます。そして、そのために設定された術法も決して少なくありません。
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霊子の消費
術法の使用には霊子の消費が伴います。しかし、精神耐久値の消費を霊子物質で代用できるかというと、これは絶対に不可能です。人体そのものが形成した回路は、必ず人体を構成する霊子を消費しなければならないのです。全体と個人の内部空間のあいだには界面が存在するためだと言われておりますが、この謎は科学魔道時代にも解明されることはありませんでした。
しかし、その逆は不可能ではありません。人体を構成する霊子をエネルギーとして変換する装置が、科学魔道時代に実験的に作製されたことはありました。しかし、星界から自由にエネルギーを取り出せる以上、このことにはなんの意味もなく、たった1つの例外を除いて実用化には至っておりません。また、この変換装置は試作品として作製されたもので、この世界の歴史を通じてたったの1基しか存在せず、現在では製作方法も完全に失われています。
なお、精神耐久値1ポイントは約100EP(エネルギーポイント)に換算することができます。生物の精神は膨大なパワーを秘めているわけですが、術法としてこれを利用する際には、その大部分が無駄に放出されています。術法の発動において実際に必要な霊子は、[術のレベル×1]EPでしかないのです。1レベルの術では、実にその99%が無駄に放出されていることになります。しかし、それは効果を引き出すために要求されるエネルギーであって、制御するためにはまた余分にエネルギーが必要なのです。致命的失敗における術の暴発というのは、この制御に失敗した状態です。とはいえ、余剰エネルギーが放出されているという事実には変わりなく、その点もまた技術として科学魔道に劣る部分だと言うことができます。同様に、変異体の特殊能力が精神耐久値の消費無しで行使できるのは、科学魔道時代に構築された回路情報が、変異によって生体の内部に組み込まれてしまったからなのです。
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術法の応用
○裏の術法系統
現在伝えられている術法のデータは、それぞれの系統のタイプA(オール)として設定されています。裏には歴史から消えていった術や、特定の集団で密かに受け継がれているもの、それから派閥によって効果が若干異なるものなど、表向きには知られていない事実もあるのです。
たとえば、錬金系のバリエーションとしてはタイプB(バイオロジー:生物)やタイプC(ケミストリー:化学)などが存在します。GMは術法変化技能と組み合わせて効果を変化させたり、また他の系統を参考にして新しい術や系統を設定しても構いません。このようにして設定された術法の例として、精神操作系から分かれた魅了系や、神舞系から分かれた呪舞系などがあります。特に裏教会はこのような系統を保持していてもおかしくはありません。それから、錬金系のものは科学魔道の技術と深く関わりがあるようで、裏設定が絡むシナリオに利用してみるのも面白いでしょう。
○術法の副次的効果
データとして示されている術の中には、副次的な効果をもたらすものもあります。これもまた科学魔道に関係する話ですが、たとえば霊砂系の「砂雨」や「砂結界」は、科学魔道機器による霊子的な探査を撹乱する効果があります(ある種のジャミング効果です)。それから、霊糸系の術法と同じ原理でつくられた科学魔道時代の装置は、ナノテクノロジー分野におけるマニュピレーターとして利用されておりました。
それから、「呪法解除」や「呪詛払い」も副次効果を持つ術です。呪詛に含まれる術法は通常の魔力解除では解くことができません。仕組みとしては、普通の術法を針金を曲げて何か形を作っているようなものとすれば、解除は強い力を加えて引っ張ることで、真っ直ぐな状態に戻していることになります。しかし、呪法の場合は針金に結び目をつくってしまうので、いかなる力を加えて引っ張ってみたところで、元の状態に戻すことはできません。そこで、特殊な術法を使って結び目を解くといった工程が必要になるわけです。
実は、これは科学魔道時代のプロテクト技術の1つとして用いられていたものです。神聖魔術の浄化系3レベルに「呪詛払い」があるわけですが、これにも意味があります。魔力操作系の「呪法解除」は6レベルということを考えると、聖職者たちは明らかに呪法を解呪する必要が多くあったのです。理由は真実の歴史や裏教会のページを読んでいただければわかるでしょう。もちろん、これによって解けないプロテクトの方が圧倒的多数となります。これらの技術を用いて科学魔道の技術を解明したり、対抗したりすることも不可能ではないでしょう。同時に、精度やバリエーションでは確実に劣りますが、組み合わせ方によっては術法で科学魔道の技術に似た効果を生み出すことも出来るということです。人形系や身体戦闘系と魔力操作系を組み合わせれば、生物兵器を生み出すことが可能となるでしょう。もっとも、これを個人で完成させるのは至難といえるので、組織や集団として設定するのが無難と思われます。
○科学魔道技術との連動
科学魔道技術と術法を連動させることも不可能ではありません。実際、精霊系や霊獣系などは、かつて霊体兵器を制御していたプログラムを応用している術法です。星月系には特にその目的で特別に設計された術が含まれており、術法にカモフラージュして科学魔道の機械を利用しています。たとえば「星落とし」などは、静止軌道上にあるマスドライバーを起動させるための命令なのです。もっとも、術法では科学魔道技術ほど細かい設定ができるわけではないので、その点については注意して下さい。
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