ソファイア


 


○自然

 イルニスタン半島に存在し、北東のユノスとの国境にはナイキストア山脈があります。
 全土が温帯ですが、気候は大きく2つに分かれます。西海に面する部分では夏に冷涼、冬に温暖な西海型気候です。アリアナ海沿岸は夏に高温乾燥、冬は温暖湿潤となる典型的なアリアナ海型気候となっています。


○変異

 『吸血現象』が有名です。北部地域でよく見られるものですが、この地域に生息する生物はほとんど通常の摂食では栄養を取ることができなくなり、吸血という手段で栄養を取ることになります。北部では今でも『吸血鬼』が徘徊し、そのためにこの近辺には信心深い人が多いようです。聖暦788年、すなわち咋年のことですが、地方のある街が1人の吸血鬼に襲われるという事件がありました。吸血鬼は次々と仲間を増やし、ついには街の住民すベてが吸血鬼になってしまいました。そう、教会ですら彼らを滅ぼすことはできなかったのです。現在この街は廃墟となり、誰も住む者はいません。ですが、吸血鬼たちは人の生血を狙って、どこかに隠れ住んでいるのです。次に狙われるのがあなたのいる街でないとは限りません。
 その他に知られているのが、『蜃気楼都市』と呼ばれるものです。これは南の海岸に突如として都市が現れるという奇妙な現象です。名前の通りに蜃気楼ならば不思議はないのですが、この都市は実際に触れることも可能です。そこでは過去と同様に生活する住民を見ることができますが、入り込んだものが相手にされることはありません。被害は起こっていないのですが、人々は気味悪がってこれに近づこうとはしません。


○略史

 前聖暦825年にフィアン王国として建てられた国で、ユナスフィール教国の次に古い歴史を持ちます。聖暦3年になって、このフィアン王国で内乱が勃発し、聖母教会の力を借りたウェルシャン家の長子がタイレル1世として即位しました。そして国名もソファイアに改められることとなりました。
 フィアン王国の時代からセルセティアを植民地としていたのですが、聖暦8年にセルセティアは独立を果たすこととなりました。この独立が成功したのは、セルセティアをペルソニア大陸侵攻への中継基地にしようと考えた、ベルメック王国(現ロンデニア)の力添えがあったためです。このためソファイアとベルメックの仲は悪化したのですが、ここでこの捻れた関係を最悪にする1つの出来事が起こります。
 セルセティア独立の翌年、ベルメック王国のラートリー朝が断絶することとなりました。そして、ソファイア王『タイレル3世』はその母がラートリー家の出身であることから、継承権を主張しました。これがロンデニアとの『55年戦役』の始まりです。
 結局、ロンデニアにはミュンフ王朝が起こり、この戦乱は終わりを遂げることとなりました。しかし、この長期の戦争によって騎士や諸侯の力は哀え、結局は王権が強化されることになりました。以後、王権は聖母教会の力を借りて中央集権体制を確立し、そのまま現在に至っています。


○制度

 絶対王政であり、中央貴族と教会の力が非常に強い国です。『タイレル4世』が現在の国王ですが、彼は無能な支配者の見本のような人物で、腐敗した社会の象徴とも言えます。世襲制の弊害であり、国民の不満は並大抵のものではありません。

・貴族:支配階級。非常に強い権力を持っています。
・騎士:各貴族に属しており、軍人として活動しています。
・軍隊:各領主貴族が統括しています。
・司法:領主貴族の権限で裁判が行われます。
・警察:国王に属する組織という位置づけです。


○現況

 中央の腐敗が頂点に達しつつある現在は、地方の州権を取り戻そうという動きが各地でみられます。特に宮廷の浪費と富の蓄積は産業改革の妨げとなっており、旧態依然とした工業は衰退の兆しを見せています。
 これに反発して行動を起こしたのが、マイエスルッツ州を中心に活動している『貿易王イリオ=ガトラスゥム』です。彼によって霊子機関が導入されたことで、この州の産業は飛躍的な発展を遂げることとなりました。こうして工業改革の波は徐々に全土に広まってゆき、州権強化の面でもマイエスルッツが要となっています。
 しかしこれら改革派の動きは、王家、教会、それから古くからある同業者組合のすべての方針と逆に位置づけられるものであり、州権強化運動が日増しに激しくなっている現在、いずれ力への闘争へと移行するのは誰の目にも明らかです。その先触れとして、パジェナウア市では組合のメンバーを中心とした集団が工場に押し入り、機械を全て破壊するという事件が起こりました。工場側は傭兵を雇ってこれに対抗する策を取り、死人こそ出てはいませんが、血生臭い事態になるのも時間の問題でしょう。
 こういった一連の事情をややこしくしているのが聖母教会の存在で、霊子機関の導入をよく思わない教会をどのように扱うかで工場主たちは頭を痛めています。


○国家関係

・友好国:なし
・敵対国:ロンデニア


○首都:ソファイア

 郊外には広大な花畑が広がっており、1年を通じて花々が咲き乱れます。中央広場には花で彩られた大時計があり、人々の目を楽しませてくれます。


○民族

・トアルクレア人
 茶系統や赤い髪と瞳の、そばかすの多い白人です。
 エストルークのエストクレア人と同系統の民族です。


○宗教

 国民はみな聖母教会の熱心な信者で、古くから国教とされています。
 首都のソファイアには『霧の聖ソフィア』教会があります。これは聖母アリア教会に次いで大きい教会です。


○要所

・ナイキストア山脈
 北方の山脈で、ユノスとの国境上にあります。ここから掘り出される石炭は、国内産業の基盤となっています。

・死人劇場
 シャンボルトにある取り壊しを待つばかりの昔の芝居小屋です。ここでは毎夜、幽霊たちが劇を行っていますが、選ばれた人しかこれを見ることはできません。

・吸血の街
 吸血鬼によって滅ぼされ廃墟となった街で、シャンボルトの西に位置しています。現在は完全に封鎖されていますが、いまだに吸血鬼たちが隠れ住んでいるという噂もあります。

・サトゥルメル劇場
 首都ソファイアにある大劇場で、吸血鬼事件を題材にしたオペラを上演し、非常に人気を博しています。


○産物

 小麦、豚、山羊、木材、石炭、ビール、香水、蜂蜜、柑橘類、鶏卵


○文化・生活

 この国では穏やかな気候のため草花の生育が良く、宮廷を発祥とする香水文化が生まれました。この国には調香師と呼ばれる技術者がたくさんおり、様々な製品が開発されています。 特に『アロマベリー』という木の実を原料とする品は女性にもっとも人気のある香水の1つで、各国に輸出されています。
 こうした文化が発展しているため、ソファイアでの生活には花が密接に関係しています。花の栽培を主力産業とする地域も多く、春の畑は香りに溺れてしまうかと思うほどです。街を歩けば花売りの少女が必ず目につきますし、どの家にも自家製のポプリが置かれています。少し贅沢ができるような立場にあるものは、花を浮かべた風呂に入ったり、お茶やケーキに花をちらして、その鮮やかさを楽しんだりします。
 ソファイア最大の行事も花に関するものです。4月24日に行われる『花祭り』は建国を祝して全国で一斉に催されるもので、広場に花びらを並べて絵を描いたり、家々の軒先に花輪を飾ったりすることからその名がつきました。華やかという形容に最も似つかわしい祭で、本当の花吹雪が町中に舞い広がります。なお、花祭りは恋祭りとも呼ばれており、男性が女性に花束を送り、公然と告白できる日でもあります。


○食事

 花の栽培の発展に伴って、ソファイアはお菓子作りに関しても洗練された文化を誇ることとなりました。これは蜂蜜が重要な産業の1つとなっているためです。蜂蜜が安く手に入ることから、この国では砂糖の代わりに様々な料理に蜜が使われるようになりました。酸化したワインに入れて風味をごまかしたり、隠し味として料理に入れられたりもしますが、何より出番が多いのはお菓子づくりにおいてです。蜂蜜漬けのライムはこの国で最も一般的なおやつの1つですし、たっぷりと蜂蜜を乗せたホットケーキは軽食としてよく食べられています。また、花の色素を混ぜた蜂蜜でスポンジケーキの上に巧みに絵を描いたり、刻んだフルーツの皮や花を閉じ込めたまま蜜を凍らせて、それを削って彫刻のようにしたりと、お菓子職人は様々な工夫を凝らした蜜菓子をつくります。
 少し変わったところで、花粉クッキーというものがあります。蜜蜂が集めた花粉を小麦粉と一緒に練り合わせてつくるクッキーで、ハーブや花びらを刻んでまぜたりします。口当たりがよく、お茶に添えられることが多いようです。また、薔薇色のリキュールに薔薇の花びらを浮かべたラヴィアンローズというお酒や、羽根タンポポのおひたしなどもあります。
 花以外で特徴的なのは、豚肉料理の多さです。豚は足や顔まで余すところなく利用され、ユノス特有の豚肉料理もたくさんあります。屋台などでもよく見かけます。


○組織・集団

・労働連合
 職人組合の組合員や聖母教会の過激な信者によって結成された、古い時代の労働者連合です。工場の機械の打ち壊し運動など、最近では非常に暴力的な行動が目立っています。

・賢女会
 厳格な禁止主義者たちの集まりで、宮廷の浪費や生活の堕落への不満を唱えています。表向きは婦人会のようなものなのですが、敬虔な信仰者たちの集団です。

・ソファイア統一派
 国王のもとに権力を集中しようという騎士や貴族の連合体で、産業資本家の台頭に危惧を抱いています。

・1月の花嫁
 地方豪族を中心とする国内政治の改革派で、主にセルジュ地方を中心として活動しています。


○人物

・国王タイレル4世   53歳  男
 無能を体現したような人物で、政治を放り出して享楽にふけっています。女遊びにも目がなく、国外から赤人奴隷を買い集めています。

・パルティエット   16歳  女
 吸血の姫君と呼ばれる、吸血村の事件を引き起こした少女です。現在の行方は知られておらず、人々は自分の街に彼女の魔手が伸びることを恐れています。

・混沌聖者クレイブン   31歳  男
 混沌の側についた聖職者で、異端として破門されています。変異体として処分しなければなかった赤子をどうしても殺すことができず、今までの信仰に疑問を抱くこととなりました。以来、その子を連れて各地を放浪しながら、虐げられる者に救いの道を与えています。

・コーター   12歳  女
 混沌として認定された変異体で処刑が決定していたのですが、クレイブンに救われて命を長らえることとなりました。背中に漆黒の翼を背負った少女で、風を自由に操ることができます。クレイブンを父親として慕っており、いつもその服の裾を握っています。

・ウィンタネス   ?歳  性別不明
 美貌の青年に見えますが、実は魔族として生を受けたものです。彼は魔族の中の異端と呼べる存在で、裏切りの魔王と呼ばれています。何が目的なのかはわかりませんが悪魔狩りを行っており、魔族の中では指名手配されているのです。魔族の死体から何かを探しているようですが、それはまだ見つかっていないようで、刺客を振り切りながら流浪の旅を続けています。

・フォリス=メア   64歳  男
 首都の郊外に住む有名な老人で、様々な花の品種を開発してきました。花のことで知らないことはないと言われており、国中から弟子入りを志願する若者が訪れます。現在は黒い蓮の品種改良に生活の全てを捧げています。


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