身許証明

戸籍民間


 

戸籍


 この世界にも戸籍は存在します。もともとは税金、徴兵といった目的で導入された制度で、いずれの国家でもきちんと税金を納めて生活している者は、必ず戸籍台帳に名前が記載されています。しかし、必ずしも全ての人間が戸籍に登録されているとは限りません。誰の領地でもない土地に住む人は、戸籍に記載されていることの方がまれですし、放浪生活をしている者も同様です。都市への出入りについても、いちいち身元を確認していない場所では、身元が証明できない人間が入り込んで、そのまま生活することもできるのです。これは、大都市の方がむしろ顕著な傾向で、それがそのまま犯罪の増加へと繋がっています。
 戸籍がない場合は、さまざまな不利益が生じるでしょう。公職に就くことはもちろんできませんし、何かの会員になる時にも身分証明は必要です。たとえば、術法協会では身元の保証がない人間に術法を教えることはしません。何か事件が起こった時も、真っ先に疑われるのは身元の保証のない者です。警察に拘束された場合も簡単には解放されず、意見を黙殺されたまま犯罪者にされてしまうことも珍しくはありません。金を借りるにしても、銀行やまっとうな金融会社は絶対に相手にしてはくれません。それから、身元の保証のない者が大金を持っていれば、当然のように犯罪との関わりを疑われるでしょう。
 しかし、信用のある人間が身元を保証すれば、戸籍がなくても周囲に認められる場合もあります。とはいえ、それは相当身分が高い人間か、周囲から信頼の篤い人物でなければなりません。身分でいえば貴族や富裕階級、あるいは聖職者といったものに限られますし、地域でいえば名士や斡旋屋といった人々になるでしょう。


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民間


○職業

 職業によっては服装や所属する団体のマークなどが、そのまま身元の保証となることもあります。警察の手帳や制服、保安官のバッジ、聖職者や軍隊の制服はもちろんのこと、職業組合のマークなども十分に身元の保証となるものです。
 
・職業組合
 合法的な職業組合は地域でもそれなりの発言権を持っており、人々から信頼されています。身元不明者が組合に入会した場合は、組合が身元の保証を行い、その人物の行状に責任を持つのが通常のしきたりです。

・聖職者
 エルモア地方では聖職者は特に信用のある職業なので、よほどのことがなければ身元を確認することはしません。もっとも、聖職者はどこの教会に所属し、どのような立場にある人物なのかを証明する書類を持ち歩いているので、身元不詳の人物として扱われることには決してならないでしょう。


○地域

・教区記録
 特定の宗教期間で洗礼の儀式を受け、その地域で生活している場合は、教区を担当する教会に住所と名前が登録されています。まったく身元の引受人がいなかったり、住所を証明する手だてがない場合は、教区の教会へと連絡が行くのが普通の対応です。

・大家
 アパートの大家や貸家の家主は、店子の身元引受人を兼ねる場合があります。斡旋人や不動産屋がこれを兼ねることもあります。一般に、斡旋人というのは地域に根付いた職業であり、周囲の人々からは信頼されています。

・田舎
 田舎では顔見知りかどうかが最大の問題であり、戸籍の有無は後にくる問題です。よそ者には警戒心が強く、身元を証明するものがあったとしても、受け入れられるかどうかはまったく別の話となります。何かあった場合は、まずよそ者から疑われるのが通例です。


○その他

・名刺
 先進国家では名刺を使用することもあります。印刷屋に頼めば、名前と肩書き、住所などの連絡先を書いたものを刷ってもらうことができます。しかし、通常は質の悪い紙とインクを使っており、あくまでもメモする手間を省く程度の用途の、非常に粗末なものでしかありません。もちろん、名刺を渡したからといって信用されるわけではありません。

・海外渡航
 海外渡航には身元を証明する書類が必要です。これは自治体に住民として登録されている場合にのみ発行されるもので、もちろん戸籍が必要です。出入国時の2回チェックされ、書類には国家や自治体の判が押されます。これはそのまま海外での身分証明書となります。これらは正規のルートを通った場合の話で、密出入国も後を絶たないというのが現状です。

・外国人
 どの国家でも外国人の信用というのは薄いものです。たとえ身分証明書があったとしても、何かあった時にまず疑われるのは外国人です。

・偽造
 裏の社会では偽造した身分証明書を売買していることもあります。かつては裏組合が盛んに行っていたのですが、最近はギャングもこのような商売に手を出し始めています。それから販売目的ではなく潜入調査などの情報収集のために、民間の諜報団体が偽造した身分証を用いることがあります。
 身分証の偽造には様々な手段がありますが、偽物をつくるのではなく、本物を買い取ることも不可能ではありません。自治体の職員に手を回して、行方不明者の戸籍を買い取るといった不正も行われています。なお、国家機関の密偵の場合は国ぐるみで身元を偽造しますので、偽物でありながら証明書自体は正規のルートから発行されたものと同じであったり、または発見されてももみ消されてしまうことになります。


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