犯罪捜査


 


 犯行現場などを調査することで、驚くほどの事実が浮かび上がってくるものです。また、犯罪知識(専門:知+記憶)の技能があれば、犯行の手口についても検証することができるでしょう。


○犯行現場

 現場には犯行の形跡を示す何らかの遺留品が残っている可能性があります。凶器や落とし物から犯人を割り出すこともできます。現場が荒らされていれば物取りの可能性もありますし、証拠や犯行動機をカモフラージュしようという意図も考えられなくはありません。足跡があれば侵入経路と脱出経路がわかります。土やゴミが落ちていれば、それが犯人の住処や職業などを推測する手がかりになるかもしれないのです。
 物が盗まれていた場合は、それを手がかりに捜査を行うことができます。周辺状況から単純な物取りと判断できる場合は、盗品から逆に犯人を辿ることが可能でしょう。そうでない場合は、相手にとって金銭以外の意味がある品だったということです。盗まれた物品の素性や入手経路を調べることで、犯行の動機がわかったり、容疑者を絞り込むことができるでしょう。
 証拠を発見するためには、捜索(一般:心+判断)の判定を行わなければなりません。これらの判定は、虫眼鏡を使えば+2の修正を得ることができます。また、犯罪知識(専門:知+記憶)の判定に成功すれば犯行の手口を推察することもできます。他にも化学(専門:知+記憶)や爆発学(専門:知+記憶)といった知識と照らし合わせて分析を行うことも可能でしょう。
 これらの技能は積極的に捜索を行う場合ですが、直感的に何かに気づくための技能も存在します。観察(一般:知+判断)の判定に成功すれば、なんとなく現場の違和感に気づいたりすることができます。ただし、与える情報はあまり直接的ではない方がよいでしょう。全体に難易度を少し高めに設定しても構いません。
 また、聞き込みを行うことで、犯罪が行われた時刻や犯人の情報が手に入ることがあります。目撃証言だけでなく、ちょっとした物音や違和感といったものが、トリックを解きあかす鍵になる場合もあるのです。
 それから、シナリオがあまりにも進まない場合には、謎解き(一般:知+感応)の技能で判定させてもよいでしょう。ただし、判定に成功しても示唆を与える程度にとどめて下さい。


○盗難

 盗難には幾つかのタイプがあります。いわゆる窃盗と強盗では手に入る情報量が違いますし、気づかれないうちにスリにあった場合も、捜査方法が異なるでしょう。

 強盗であれば、被害者が殺されてさえいなければ犯人を見ているわけですから、比較的捜査はしやすいでしょう。強盗は裏組合からは嫌われる犯行手段であることから、組織に属していないことが多いのです。ですから、警察だけでなく裏組合からも強盗の情報を得られる可能性があります。
 夜盗や金庫破りの仕業であれば、現場を調査するか盗まれた品から犯人を辿るしかないでしょう。しかし、盗賊の多くは裏組合のメンバーであり、組織ぐるみで足どりを隠そうとするので、調査は難航することでしょう。ただし、盗品を取り返すということならば、故買屋を通じて買い戻すことも可能です。必ずしも手元に返ってくるとは限りませんが、幾らかの料金を支払えばその品を現在誰が所有しているのか調べてもらえる場合もあります。なお、故買屋は善意の第三者を装って売買を行っているので、訴えたところで訴訟に費やす時間と金銭の無駄になることがほとんどです。
 スリはその場で気づかない限り、そう簡単には捕まえることができないでしょう。スリに気づくためには触覚(一般:心+感応)の判定に成功する必要があります。しかし、もし気づいたとしても人混みに紛れて逃れたり、チームを組んでスリ取ったものを手渡して撹乱したりということも行います。お金を盗まれたのであれば、相手の顔をしっかり覚えているのでもなければ、戻ってくることはほぼないと考えて下さい。物品であれば故買屋ルートで買い戻すことも不可能ではありません。


○事故現場

 事故といっても、いわゆる交通事故というのはそれほど多いものではありません。また、単なる事故であれば処理は警察の管轄であり、特に調査の必要もないでしょう。シナリオの中で調査しなければならないのは、主に事故に見せかけた犯罪です。不自然なロープの切断痕や崖崩れ、機械の故障といったものは、場合によっては疑ってみる必要があります。これらは捜索(一般:心+判断)や屋外罠(専門:知/技+隠密)、それから機械学(専門:知+記憶)といった技能で判断することができます。


○詐欺

 詐欺を見抜くのは非常に難しいことです。自分の知識と照らし合わせて矛盾を見抜いたり、書類の中から怪しい記述を発見したり、あるいは誰かに判断してもらうしかないでしょう。相手の態度に不審さを感じることもありますが、プロの詐欺師は話術が巧みで、自分の目的を容易には相手に気づかせません。
 詐欺師に騙されないようにするには、判断抵抗で相手の詐術(専門:知+記憶)との対抗判定に勝利しなければなりません。積極的に相手の態度を疑ってかかる場合には、相手の演技(一般:知+判断)と精神判断(一般:知+判断)の対抗判定になります。内容から判断する場合には、一般常識(一般:知+記憶)や経済(専門:知+記憶)などの技能で、相手の詐術(専門:知+記憶)との対抗判定に勝利しなければなりません。
 詐欺と断定するには物的証拠が必要となるでしょう。偽造書類は明確な証拠となりますが、素人に鑑定は不可能です。警察や専門家であれば鑑定(専門:知+記憶)の技能を持っているでしょうが、相手の偽造の達成値が高ければ、鑑定には時間がかかります。精巧につくられた偽札なども同様です。
 いずれにせよ、専門的な知識や技術によって巧妙に仕組まれた詐欺は、高度な専門知識を持っていなければ容易には見抜けないものなのです。素人は相手の顔色や挙動で判断するか、うまい話に簡単に引っかからないように心がけるしかないでしょう。


○誘拐

 誘拐は目撃者の有無によって捜査方法が大きく異なります。目撃者がいればその情報を主体に捜査を進めることができますが、そうでない場合は現場に残された状況から判断しなければなりません。暴れた形跡があれば力ずくで連れ去られたと考えられますが、そうでなければ知り合いの犯行や薬物を使った可能性も考慮に入れる必要があります。また、手際がよいプロや集団による犯行ということも考えられます。
 誘拐した後は何らかの移動手段で運び出す必要がありますので、それも犯人の足跡を辿る重要な手がかりとなるでしょう。この世界ではまだ自動車は珍しい乗り物ですし、鉄道や乗合馬車を使ったのならば目撃者がいる可能性もあります。それから地面がぬかるんでいたり雪道であれば、馬車の轍の跡や足跡を辿ることができるかもしれません。犯人が被害者を背負っていれば足跡が深くなりますし、どの方向から侵入したのかも特定できます。靴跡から体格も推測できるでしょうし、特徴的であれば店をあたってみるのもよいでしょう。逆に外がぬかるんでいるのに足跡が発見できないのならば、内部の者の犯行を疑ってみる必要も出てきます。それから誘拐されたと思っても、実はまだ近くにいる場合もあります。目撃者も外に出た形跡もまったくないのならば、まだ敷地内に捕らわれている可能性を考えてみてもよいでしょう。


○殺害状況

 外傷があれば外科医学(専門:知+記憶)の判定によって死因を判断することができます。傷跡から凶器が特定できますし、凶器がわかればその入手ルートから犯人を追い詰められる可能性があります。現場にもみ合った形跡があるのならば、どの方向から潜入したのかなどの犯行状況が推測できるでしょう。逆に全く暴れた形跡がない場合は、まったくの予期せぬ攻撃であったり、あるいは知り合いの犯行ということも考えられます。
 見た目で死因がわからない場合は、内科医学(専門:知+記憶)や薬物知識(専門:知+記憶)の判定を行う必要があるでしょう。滅多に存在しない毒物などが使われている場合は、死体を持ち帰って科学的な分析を行わなければなりません。これには専門の薬品や器具が必要となりますし、結果が出るまでにはそれなりの時間がかかります。また必ずしも正しい結果が出るとは限りません。
 また、死後どれくらい経っているのかということも大事な情報です。これがわからなければ、いくらアリバイ(現場不在証明)を調べたところで情況証拠にもならないのです。これらは専門的な医学知識だけでなく、犯罪知識(専門:知+記憶)の技能で代替しても構いません。
 それから、自殺に見せかけた殺人も存在します。これは動機と周辺状況を合わせて考える必要があるでしょう。動機がなければ自殺をするはずがありませんし、自殺者は死んだ後のことまでは考えて行動しないものです。他にも、首つり死体と絞殺死体では圧迫される部位が違うので区別することができますし、ためらい傷の有無などちょっとした違和感も立派な手がかりとなるものです。

 もちろん、これらの技能があれば詳しい考察を行うことができるということであり、見ただけでわかるような外傷などは、技能がない人間でも見て取ることができます。


○術法

 明らかに術法とわかるものもありますが、まったく判別できないものもあります。もし術法だと見当をつけることができたのであれば、さらに魔術学(専門:知+記憶)でどの術が使われたのかを判断することが可能となります。
 相手が術法師だとわかっている場合は別ですが、犯行手段を術法と特定するのは非常に難しいものです。GMはなるべくであれば術法を使用した推理シナリオをつくるべきではないでしょう。まったく逆の言い方をするならば、他に痕跡が見つからない時は、術法の可能性があるということです。なお、術法が使用されたと考えられる事件の場合、術法警官と呼ばれる術法協会の調査員が捜査に協力することもあります。


○事件資料

 警察の記録は基本的には刑事や警察官、裁判官や弁護士などの法律家が閲覧することができます。上からの要請があればという制限つきで、軍人や専門調査官にも許可が与えられる場合があります。新聞記者や私立探偵でも、警察にコネがあればこっそりと情報を教えてもらえる可能性もあるでしょう。しかし、見返りとして何らかの交換情報が必要です。
 刑事事件に関する裁判記録は、裁判所に手続きさえとれば誰でも閲覧することができます。これは近代的な三権分立体制をとっている国家の話であり、封建国家などではまったく非公開ということもあるでしょう。なお、閲覧できたとしても原告や被告のプライベート情報は完全に伏せられたり、一切の複写を拒否される可能性もあります。
 新聞や雑誌にも過去の報道記録が残されています。これらは各新聞社や雑誌社で保管しており、申請すればいくらかの料金を払って閲覧することができます。だいたい、1時間につき5銀貨(500エラン)以下で済みます。それから、図書館でも雑誌を保管していることがあります。
 それから、過去に事件を担当した刑事や記者、それから被害者やその家族といった人々からも、詳しい話を聞くことができるかもしれません。しかし、事件の内容によっては話題にしたくない場合もあるでしょうから、慎重に交渉するよう心がけた方がよいでしょう。


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