○自然
周囲3つの山脈の合間に存在する南北に長い国です。山脈に接する部分には海抜千m級の山もありますが、国土の殆どは平野が広がっています。気候は南北で大きく異なり、北はペトラーシャ中部と緯度を同じくするため気温などの条件は同一で、南はジグラットの気候と同じくアリアナ海型気候になります。
○変異
『鏡の檻』と呼ばれる現象が、人々に非常に恐れられています。その名の通り、鏡や水など姿がうつるものの中に閉じこめられるという現象で、いつどこで起こるのかは全くわかりません。このため、この国では行方不明者が数多く出ます。これを解決するため、『鏡界士』と呼ばれる魔鏡系の術法師が存在します。国は鏡界士に対して生活を保障しており、どんな小さな村にも必ず1人は派遺されます。もちろん国民から非常に尊敬されています。
鏡の檻現象は鏡に最も近い物体に起こるということがわかって以来、この国でつくられる鏡には何らかの模様が施されたり、額縁がつけられることになりました。この習慣は実用とともに芸術となって発展し、この国の細工鏡は各国で有名になり、非常に高価な値で取り引きされています。貴族は最高級の細工鏡を集め、鏡の間と呼ばれる大きな細工鏡で囲まれた部屋を持つことがステータスとなっています。
この他に知られている変異といえば、『嘆きの野火』と呼ばれる現象があります。これは別名『自然発火現象』とも呼ばれるもので、何もないところでいきなり物が燃えだしたり、まれに生物でさえ発火することがあります。あまり頻繁に起こる現象ではないため、鏡の檻現象ほどには恐れられてはおりませんが、それでも充分な驚異といえるでしょう。
○略史
かつてエルモア南部に存在していた『メルレイン国』(現在のルワール、メルリィナ、ルクレイド)が、聖暦32年に起こった『継承戦争』によって3分割されたうちの1国です。時の大公が主権者となったことから、以来この国では大公が最高位となっています。
この後もメルリィナ、ルクレイドとは敵対関係が続き、国境付近や海上での小競り合いは常に起こっていました。しかし聖暦622年に、戦乱と呼べるものが再び訪れることとなります。それが『メルリィナ継承戦争』です。国家成立の経緯からもわかるように、大公の一族はメルリィナ王族とは姻戚関係にあります。また、紛争解決の手段として人質のような意味でメルリィナやルクレイドに嫁いだり、あるいはその逆に王女を貰い受けるなどの関係が続いていたため、大公は継承権をもつ1人でした。同様に、ルクレイドの王族も同じ立場にありました。そこで空位となったメルリィナ王位の相続権をかけて、メルリィナの貴族やルクレイドとの間で戦争が勃発することとなったのです。3国間での激しい戦いは12年間続き、結局はカーカバートの調停によって、メルリィナの貴族であるヴァレンシア家が王位を継ぐことで決着を得ました。
現在のルクレイド南部地域はこの継承戦争で得た土地で、ここに限って民族を異にします。黄人である彼らドゥーガル人は、自由都市カーカバートの人民と同じ出身の民族です。この黄人たちは軽い差別待遇にあり、奴隷扱いされているわけではありませんが、公職の人数規定などで制限は多く、非常に不自由な立場に置かれています。
○制度
貴族会と平民会の『二部会議』によって国政が決定されます。法案の提案は双方で行なうことができますが、貴族会は平民会の決定に拒否権をもつのに対して、その逆はありません。最終的にそれぞれの部会が一票ずつの投票権をもつわけですが、大公も二部会議の決定に対して拒否権をもつため、貴族は二重の拒否権をもつことになります。つまり、貴族に不利な法案は決して通らないことになります。
・貴族:支配階級。非常に強い権力を持っています。
・騎士:各貴族に属しており、軍人として活動しています。
・軍隊:各領主貴族が統括しています。
・司法:領主貴族の権限で裁判が行われます。
・警察:領主貴族の管轄下に置かれています。
○現況
現在は南方民族『ドゥーガル人』による独立運動が起こっています。ドゥーガル人は国の不公平政策に不満を示し、5年前に反乱を起こしました。この反乱は今でも続いていますが、比較的少数であるドゥーガル人がなぜこれほど勢力を維持していられるかといえば、裏で法教会の援助があるからです。法教会の公平を旨とする教えは民族の教えと合致し、今では反乱軍の大半は法教会の信者です。
この内乱は南方政策をもくろむカイテインにとっては好都合ともいえる状況です。こういった法教会およびカイテインの計画は他国にとっては具合が悪く、他の聖母教会を信奉する国々の干渉を招く結果となっています。なお、カイテインの南方政策において重要な位置にあるこの国は、近年では他国から『アリアナ回廊』と呼ばれています。
現状に対して不安をつのらせているのは民衆も貴族もかわりなく、貴族会でも対外強硬派と平和外交派の2つに分かれて論議を戦わせています。中でも、平和派の有力貴族カーン家は国外に対しても何らかの根回し工作を行っているようであり、国際的に今後の動向が注目されています。
○国家関係
・友好国:カイテインに敵対的な国(ロンデニアの援助が特に大きい)
・敵対国:カイテイン、メルリィナ、ルクレイド
○首都:ルディナ
約100年ほど前に遷都された比較的新しい都で、通りが垂直に交わる整然とした街並みに設計されています。
○民族
・カリスト人
白人ですが、赤い巻毛に鳶色の瞳をもちます。
幼い頃はそばかすが多いのも、この人種の特徴です。・ドゥーガル人(南方の一部)
黄人で、髪や瞳は茶色あるいは黒色です。
○宗教
国教は聖母教会であり、北部の都市アルマーナには中央教会の『氷の聖アルマ』教会があります。ただし、ドゥーガル人は法教会の教えを受けています。
○要所
・サスティナ砦
南方政策への備えのために建設された城塞で、カイテインとの国境近くにあります。・ガラスの小庭
丸くなった小石ぐらいの大きさのガラスが落ちている場所で、シザリオンの郊外にあります。付近ではこれを磨いて産物としています。・ロブラン
メイアの北に位置する地方で、ジグラットとの間に起きた戦争で一部がルワールに割譲されました。ここの住民は民族系統が違っており、ひそかに黄人の反乱運動に荷担しています。
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