潜水機械


 


○潜水球

 潜水の目的で最初に作製された機械というのは、潜水球(ダイビング・ベル)と呼ばれる、直径1.5mほどの釣り鐘型あるいは球形をした鉄の塊でした。空気は手ポンプで船や地面から供給される仕組みで、ホースで潜水球と繋がっていました。これは橋の基礎工事の目的から開発されたもので、5〜6mの深さに潜ることができました。これは後に真珠貝などの採集や海洋調査にも利用されるようになり、現在でも潜水作業の場では広く利用されています。


○潜水服

 後にゴム引きの布で全身を覆う潜水服も考案され、潜水球よりも自由に動くことが可能となりました。空気の供給は潜水球と同じ仕組みで、バケツ型の金属製ヘルメットにホースを連結し、ポンプで潜水服の内部に空気を送るものとなります。しかし、これは簡単に破れてしまうこともあって、潜水球ほどの信頼は得られていないようです。また、水圧に耐えることもできないので、やはり数mの潜水にしか用いることはできません。


○潜水艇

 ダイビング・ベルも潜水艇の前身ということができるでしょうが、自力で移動できるものではなく、船や地面とケーブルで繋がっていなければ活動することは不可能です。自分の力で動く機械という意味でいえば、聖歴757年にロンデニアで考え出された樽型潜水艇が、エルモア地方で初めての潜水機械ということができるでしょう。これは大型の樽に自転車のペダル機構を取り付け、それでスクリューをこいで動かす仕組みでした。 これを元にして聖歴762年に開発された潜水艇は、長さ2mほどの流線型のもので、現在の潜水艦に非常に近い形状のものとなります。これも軽量化のために動力機関は積んではおらず、1人が伏せて寝るような形で内部に潜り込み、手こぎや足こぎでスクリューを動かすものでした。顔の横に窓はついており、ゴムを塗った布でつくった手袋が外部に突き出ていたので、艇外作業が可能となっていました。しかし、潜望鏡は装備されておりませんので、前方を確認することはできません。そのため、一号機は前方にあった岩に激突して浸水し、操縦者は命からがら逃げ出したというエピソードも残っています。
 聖歴789年の現在では技術も進歩しており、霊子機関を動力とする長さ5mほどの大型潜水艇も開発されていますが、まだ実用のものとはなっておらず、未だ実験が繰り返されているようです。


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