商店街
商店街とは読んで字のごとく、商品を売る店が立ち並ぶ通りのことです。都市の中心部に特に多く、日々にぎわいを見せる場所です。
商店街には様々な種類の店舗があります。もっとも身近であろう商店は食料品を売る店です。多くは市場に店を構えており、夫人たちが今夜のメニューを考えながら、籠をたずさえて歩いています。市場は活気にあふれており、店の主人は声をはりあげて宣伝をし、夫人たちは少しでも安く品を手に入れようと交渉を繰り広げます。大きな都市では市場のようにテントが立ち並ぶのではなく、きちんとした構えの小売店が商店街を形成している場合もあります。食料を売る店として主なものには、パン屋、肉屋、八百屋、魚屋、酪農品店といったものがあります。ワイン屋やお茶屋といった嗜好品を売る店や、あるいは雑貨屋を兼ねた菓子店なども含まれるでしょう。
食料以外にも、商店では日常生活に必要な様々なものが売られています。金物屋もあれば革細工屋もありますし、薬屋、毛糸屋、楽器屋、本屋といった店もあります。これらのものをまとめて扱う雑貨屋は、店の少ない地域では重要な存在です。また、宝石屋や剥製屋といった貴族や金持ちを相手にする商店も都市には多くあります。
物を売るのではなく技術を売る店として、洋品店、入墨屋、鑑定屋といったものもありますし、占い小屋などは少女たちに非常に人気があります。都市には商品の流通は欠かせません。人が集まれば様々な品物が必要になり、それを扱う商店が必ず存在します。キャラクターたちも頻繁に利用するでしょうし、キャラクター自身が店を経営しているかもしれません。人々が集まる商店街は情報を集めるにもうってつけの場所です。ぜひ、有効に活用してください。
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歓楽街
都市の人々が疲れを癒し、そして嫌なことを忘れて楽しむための場所が歓楽街です。朝そして昼には閑散としており、ほとんど人の姿を見ることはありません。しかし夜ともなれば、都市のどの場所よりもにぎやかで明るい通りに早変わりするのです。
歓楽街には酒場が立ち並び、ほろ酔い加減の男たちが笑いながら通りすぎて行きます。酒場には小さい子供も楽しめるようなパブもあれば、、美しい女性たちが接待するいかがわしい酒場もあります。これらの酒場の中には、旅人のために2階が宿になっているような所もあります。田舎へ行くほどその傾向が強くなるようです。
このような酒場につきものなのがたちの悪い酔っ払いで、そこらで胃の中の物を吐き戻したり、隣の客と殴り合いの喧嘩をする者などもいます。特に冒険者には荒くれものが多く、時には剣や銃を持ち出して惨事に発展することまであります。酒場の次に歓楽街につきものといえる場所は賭博場でしょう。国家によっては禁止していることもありますが、そのような都市でも賭博は酒場の地下などで密かに行なわれているのが普通です。規模も様々で、酒場の隅にあるような質素なものもあれば、裏組合やギャングが経営している大規模なものもあります。ゲームにも様々な種類があり、パブで子供たちも一緒に楽しむネズミレースのようなものから、サイコロやカード、ルーレットなどを使った本格的なものまであります。闘犬や闘鶏を行なっているところもあれば、チェスのようなゲ−ムに金を賭ける人々もいます。賭博場で気をつけるべきことはスリとイカサマです。もちろん被害を防ぐことは必要ですが、それより注意しなければならないのは裏組合の存在です。スリを行なう者の多くは裏組合の許可を得て行なっており、いわば組合に保護されている存在です。彼らは仲間同士で助け合い、盗んだ財布を巧みに隠してしまいます。また、組合の経営するカジノで不用意にイカサマよばわりしようものなら、たとえそれが事実であったとしても無事に帰れるとは思えません。それでなくともカジノは用心棒を雇っていることが多いので、よほど腕に覚えがあるのでなければ、大人しくしているのが賢明といえるでしょう。
歓楽街を支える人々の中で忘れてはならないのは女性の存在です。酒場や食堂の給仕や掃除婦であったり、ホステスであったり、そして娼婦であったりと、歓楽街の女性には様々な役割があります。ホステスの中には酒場の二階で売春をする者もいます。ウエイトレスのような女性はともかく、ホステスや娼婦というものはみな、経済的な問題でその道に進むしかなかったという場合が多いようです。スラムで生まれ育ったとか、借金の肩代わりとして農村や商人の家から売られてきたり、あるいは没落した貴族の妻や娘であったり、職につけずに身を売ることを選んだ自由奴隷であったりします。大抵は娼館や酒場につとめていて、借金や契約書などで束縛されているようです。それに対して個人で行なう街娼という人々もおり、街角で客引きをしている姿をよく見かけます。しかし、娼婦にも縄張りがあるようで、自由に行なうわけにもいかないようです。
歓楽街では珍しく昼に開かれているのが芝居小屋です。どちらかといえば、旅回りの役者たちによって行なわれているのが普通ですが、より大衆的な芝居は地元に根付いた役者によって歓楽街で行なわれます。このような芝居小屋では、滑稽芝居や風刺的なものが好まれ、庶民の政府に対するささやかな憂さ晴しとして役だっています。そのため、施政者からは疎まれているようですが、庶民の人気を考えると廃止するわけにはいかず、野放しになっているようです。もちろん、独裁制を敷くライヒスデールのような国では、皇帝を批判するような芝居を行なうものは重罪に処されるため、ほとんど廃止同然の状態です。
歓楽街は決して上品な場所とはいえませんが、市民たちが明日への活力を養う大事な場所です。庶民の娯楽のすべてがここにあるといっても過言ではなく、キャラクターたちも1度は訪れてみて欲しい場所です。
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高級住宅街
貴族や大商人など、金銭的に恵まれた人たちが住むのがこの高級住宅街と呼ばれる場所です。
高級住宅街は城の近くにあったり、あるいは都市の最も守りのかたい場所で閑静な住宅街を形成していたりします。大きく立派な館が立ち並び、一般市民たちの家とは異なり広い庭を構えているのが普通です。都市という限られた空間で土地を贅沢に使用するというのは、貴族や富豪たちのステータスシンボルの1つでもあり、庶民たちにしてみればこのような富と権力の象徴は不満と怒りの対象でしかありません。高級住宅街の屋敷は石造りの2〜3階建てが多く、周囲は泥棒よけの高い塀や鉄柵で覆われています。館は外側にも贅を尽くした飾り付けがなされており、柵や門柱にも様々な趣向が凝らされています。庭にはバラなどの美しい花が咲き乱れ、整然と植えられた木々はきちんとした手入れがなされています。
しかし、そんなことで驚いていてはいけません。一歩建物の中に入れば、外見以上の贅沢ぶりを目のあたりにすることになるでしょう。敷き詰められた絨毯は足が埋まるほど柔らかく、広々としたホールでは有名芸術家の絵画や彫刻が客を出迎えます。廊下にも異国の壺や意匠を凝らされた鎧が飾られていますし、様々な美術品を部屋一杯に所有している者もいます。大広間では晩餐会や舞踏会がひらかれ、庶民の食卓には一生のぼることのないような料理がテーブルを覆い尽くします。応接室の床には動物の毛皮が一面に敷かれており、剥製や芸術品でもある家具が備え付けられています。寝室には天蓋つきのベッドがあり、寝る前には高級な寝酒をあおり、朝になれば心地良い優雅な目覚めを楽しむことができます。高級住宅街は市民にとっては不必要に思われる場所ですが、都市の運営には必須とも言える場所です。ここで施政に関する決定が秘密裏に行なわれていたり、陰湿な陰謀劇が繰り広げられていたりします。華やかな舞踏会の裏側で様々な密約が交わされるのは、何も特別なことではないのです。
市民にとっては一生縁のない場所でしょうが、もしかしたらキャラクターたちは訪れる機会もあるかもしれません。そうなった時には、キャラクターたちは先行きを警戒した方がよいでしょう。高級住宅街で表の顔を信じるのは、悪魔に身を任せるも同然のことなのですから。
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貧民街(スラム)
貧民街は下層の市民が住む場所です。もちろん市民として認められていない者も大勢います。貧民街に住んでいるのは経済的弱者、前科者、犯罪者、乞食、ストリートチルドレン(都市浮浪児)、自由奴隷、そして娼婦といった身分の低い者です。いわば社会の裏側で生きる者と言えるでしょう。もちろん彼らはまともな家に住んでいるわけがなく、ボロボロの木造平屋や穴だらけのアパートはまだましな方で、建物の隙間や橋の下で野宿したり、下水道や地下墓地に住み着いている者もいます。
貧民街は公的な権力の及ばない地で、違法行為が当然のように行なわれています。スリや強盗、そして殺人までが日常の出来事のように起こります。ですから、一般市民は絶対に足を踏み入れようとはしません。旅人が迷い込んで帰ってこなかったということも、1度や2度ではないのです。多くの場合、貧民街を統括しているのは裏組合やギャングなどの裏社会の組織で、何の咎めもなく麻薬や盗品の密売をすることができます。このような貧民街の事情を利用して犯罪者が逃げ込んだり、あるいは反政府組織の拠点となることもあります。
貧民街というとただ住みにくいという印象がありますが、住人たちにとってはそうとはいえないこともあります。確かに生活は貧しくし、国家や自治体の保護もほとんど受けられません。しかし、貧民街の人々は助け合っておりますし、何より誰にも束縛されない自由を持っているともいえます。そして中には、いつかは裕福になろうとして、そして夢をかなえようとして頑張っている人々もいるのです。全ての都市に貧民街があるわけではありませんが、貧しい人々はどの都市にでもいます、そして、そういう者にしか見えない都市の真実というものもあるのです。貧民街もまた都市の一面だということを忘れないでください。
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