○資格
宗教機関以外で術法を管理している組織に、術法協会というものがあります。術法協会が経営する学校や、この協会に属する術法師が個々に開いている魔法屋でも術法を習得できますが、必ず術法協会の会員とならなければなりません。
一般の協会術法師は、協会に登録しさえすればなることができます。ただし、身元が明らかである必要があり、地域によっては信用ある人間からの紹介がいる場合もあります。また、社会的な制約から15歳以上でなければ術を教えてはいけないことになっています。唯一の例外は術法協会が経営する魔術学校で、中等部の学生(12歳以上)には術を教えてもよいという許可が出ています。ただし、術を使用していいのは学内のみで、しかも決められた時間以外には発動を禁じられています。
なお、術法協会は特定国家に深く肩入れするということは殆どありません。国家機関からの要請があれば、適正な料金と引き替えに依頼を受け、その内容に見合った協会術法師を派遣することはあります。しかし、すでに公務についている者に術を教授することはありませんし、協会術法師は将来的にも公務に就くことは許されません。これは、術法協会の利益を守るための規則の1つです。協会への初回登録料は10万エランで、それから月に1万エランの更新料が必要となります。これは協会術法師の居場所をチェックする意味もあるので、特別な理由がなければまとめて支払うことは許されません。1年間連続で更新手続きが行われなかった場合は登録が抹消され、改めて登録しなければ協会術法師として活動できなくなります。協会に登録してさえいれば、組織の保護を受けて活動することができます。存在する国家を制限されることはありませんし、料金を払い直す必要もありません。
○術の習得
基本的な条件は、術法協会の支部でも魔法屋でも変わりはありません。
術を習得するには、登録費とは別に謝礼を支払う必要があります。通常は最低でも術のレベル×3万エランの料金がかかります。これは土地や物価、あるいは術の有用性によって多少変動します。都市などの物価の高い場所では、レベル×5万エランほどの料金が必要である場合もあります。なお、将来的に術法協会の職員として働くという契約を交わした場合は、無料で術を教授して貰える可能性もあります。ただし、それは才能がある場合に限られますし、協会の信頼を得ていなけれなりません。
術法協会は非常に多数の系統を所持している組織です。しかし、1つの支部が全ての術を保持しているわけではありませんし、土地によっては支部が存在しない場合もあるでしょう。また、魔法屋は個人が経営していることが多いので、選択できる術は教授する側の実力次第となります。
○術の教授
術法協会の会員が誰かに術を教えるためには、術法の教授資格免許を得なければなりません。特に教育課程に制約はありませんが、最低でも何らかの術法と魔術学を習得している必要があります。資格は試験を受けて取得するもので、適性(倫理観や性格など)を問う内容も含まれています。免許の交付には50万エランが必要です。また、これは毎年更新しなければならず、これには20万エランの費用がかかります。ただし、協会の職員として働いている場合は、これらの費用は免除されます。
術を教授した者は、誰に何の術を教えたのかを協会に報告する義務があります。また、教えた術が犯罪に利用された場合は、教えた側にも責任が及びます。特に情報や治癒に関わる術は教授を制限されていますが、それ以外にも教え手が自主規制として術の教授を制限することがあります。
○行使制限
術法が神から授かった奇跡であるということは、社会的な常識となっています。術法協会でもその認識にはかわりなく、術法を習得する時にまず最初に教えられることでもあります。
術法協会は宗教機関から認められることで、正統な存在として活動しています。宗教機関には実質的な許認可の権限はないのですが、彼らが否定すれば社会的に非常に困難な立場に立たされることでしょう。そのため、術法協会は宗教機関寄りの組織として存在しており、特に聖母教会との関係には注意を払っています。
ですから、術法協会では術を使用する第一の目的を社会への貢献としており、社会的倫理・道徳に触れるような使用法は厳しく禁じています。使用する場面は術者の判断に任されますが、それが正当とみなされない場合は、法のみならず協会の権限で処罰されることもあります。
○罰則
術法協会で厳しく制限されるのは、術の行使および教授の正当性と身元の証明です。この2つに反しない限りは、協会は会員をさまざまな場面で優遇してくれます。
しかし、組織を裏切る行為に対しては、会員であっても容赦はしません。もちろん、やむを得ない状況にあった場合は、それをきちんと考慮してくれますし、場合によっては法的な処罰に対しても弁護を申し出ることもあります。術法協会はあくまでも術法師の互助会であり、味方となってくれる存在なのです。とはいえ、悪意をもって術法を犯罪に利用した者や、規則違反と知っていながら故意にそれを隠匿しようとした場合には、何らかの罰が下されます。それが犯罪である場合は、法的な手続きに則って処罰を行います。逮捕、あるいは罰金・禁錮などの刑罰を行使できるのは、もちろんその権限を持った執行機関となります。しかし、術法協会に会則に従った処罰も当然行われます。これは除名であったり、術の使用の禁止であったりと、違反の程度によって様々です。術法によって強制的に術の行使を停止することもあるようです。また、まれに見せしめ的に処罰を行うこともあります。これらの処遇に対して、協会術法師が意義を挟むことは許されません。また、登録を抹消された会員にも、これらの規則が適用される場合があります。なぜなら、これらの規則に合意しなければ、術法協会に登録することはできないからです。
なお、術法を駆使して警察や術法協会の追跡を逃れようとする者も存在します。しかし、そのような犯罪者を相手にする職員も協会には存在し、一般に術法警官と呼ばれています。彼らは法的に捜査権や逮捕権を与えられているわけではありませんが、社会的には黙認されています。これは術法師が非常に強力な存在であり、一般的な警察機構では対応できないことも多々あるためです。逆に、警察組織が積極的に術法協会の助けを求めることもあり、術法警官が保安官として捜査活動を行うこともあるのです。
それから、協会術法師があまりに大きな事件を起こした場合、術法協会が極秘裏にこれを処罰することがあります。これが完全に非合法であり、警察や司法機関にも内密の活動となります。また、逮捕された者に処遇も協会の独断で行われます。しかし、このような活動が報じられたことはないため、実際にどのような処罰が行われているのかは不明のままです。もう1つの大きな規則は身元の証明です。登録の際にもそうですが、登録を更新する際にも住居などの居場所は明確にしておく必要があります。申請する場所は特定の支部に限られるわけではなく、どの町の支部で行っても構いません。これらの情報は術法やその他の伝達手段を用いて、国家をまとめている支部やルクレイドにある協会本部に届けられることになっているのです。なお、身元に関して虚偽の申告をした場合も、犯罪と同じように処罰されます。
これは単なる制限としてだけではなく、術法師の保護という観点からも意味のある規則とされています。というのは、協会術法師の中には、獣狩りなどの危険な職業に就いている者も存在するため、登録の有無や住居への出入りによって、無事が確認されるためです。危険な仕事に就いている術法師たちは、協会に対して事前に捜索の依頼を頼むことも可能です。特定の期日までに支部に連絡が入らなければ、術法警官をはじめとする術法師たちが協力して、行方不明者の居場所を探し当てます。料金は動員した人数などによっても変動しますが、日当で3〜5万エラン前後となります。すぐに支払えない場合は分割払いにしても構いませんし、協会への奉仕で肩代わりをすることもあります。
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