○自然
ログリア内海に接する国で、国土の約60%が山地です。北部のサイルハッド山脈に加えて、南部にはラスアルネフ山脈が東西に走っています。中央部は平野で、農業地帯を形成しています。中央部を囲んで南北では牧場がひらかれており、角細工で有名な『一角牛』が放牧されています。東部は海に面しており、港には様々な国の特産品が並びます。
夏期は高温乾燥、冬期は温暖湿潤というアリアナ海型気候で、盆地では季節による気温変化が激しくなります。
○変異
『幻影現象』がよく知られている変異です。突然、宙に映像が現われるというもので、それは単なる幻像に過ぎず実害はないのですが、かつてこの現象を利用した幻術士によって、狩猟途中の王子が暗殺されるという事件が起こりました。この事件は継承問題による第三王子の陰謀とわかりましたが、これ以来、王家や貴族たちが、競って優秀な術法師たちを召しかかえるという時代が続きました。
もう1つの変異の結果が、『竜の柱』と呼ばれる石柱群です。南部のラスアルネフ山脈の奥地に立ち並ぶ、高さ100m以上にも及ぶ石柱には、無数の穴が縦横に走っています。洞穴の大きさは数十cmから数十mに及ぶものまであり、『竜の一族』はこれを住処とし生活しています。
○略史
聖暦12年に、旧エクセリール国で傭兵隊を中心に反乱が勃発しました。そして傭兵隊長だった『フェルンデュマ』がカイン人族長の娘『ナディア=ジグラット』と結婚し、ジグラット王国が誕生することとなりました。
この国では、古来より南方の山脈に住む『竜の一族』との戦いが絶えませんでした。竜の一族は『竜使い』として知られる者たちで、その能力を活かして空の魔獣である『フレイムバード』狩りをしていました。しかし、ジグラット国の先祖たちの密猟者によってフレイムバードは乱獲され、もともと数が少なかったため絶滅の危機に瀕してしまいました。それ以来、竜の一族は略奪という方法で生活の糧を得る集団に変わったのです。これが竜の一族が『空賊』と呼ばれるゆえんです。
こうして双方の確執は深まってゆき、そしてそれが頂点に至った時に起こったのが、『九竜戦記』と呼ばれる竜の一族との最大の戦闘です。聖暦645年に始まったこの内乱は、終結を迎えるまでに5年の月日を費やしました。これは竜の一族が絶対的少数派であることを考えると、異常な年数といえるでしょう。
竜の一族がここまで健闘した要因は、真竜と呼ばれる最強の竜の力によるものです。長い間眠りについていたファティスファーンという名の光竜と、その他八匹の竜族を従えた彼らは、その持てる最大の力を結集して戦いに挑みました。しかしそれも長くは続かず、ファティスファーンを失った後は戦局を一気に逆転され、再び山脈の深部へと押しやられることとなりました。徒歩などの手段で竜の柱に到達することは不可能であるため、滅ぼされるまでには至りませんでしたが、この敗北によって竜の一族はその力をほとんど失うことになります。
以来、竜の一族は狩りをしながら少しずつ力を蓄えてきたのですが、近年では竜が滅少したことや強力な銃器の誕生によって、もはやジグラットに戦いを挑むことは不可能事ではないかと思われます。
○制度
前近代的封建制度を敷いており、国王や貴族たちが主権を握っています。軍事力としては騎士団をもち、司法権も領主のもとに置かれています。ただし、現在では貿易で力を増した商人たちの影響も無視できる存在ではなく、金の力で貴族たちを動かし力を蓄えつつあります。
・貴族:支配階級。非常に強い権力を持っています。
・騎士:各貴族に属しており、軍人として活動しています。
・軍隊:各領主貴族が統括しています。
・司法:領主貴族の権限で裁判が行われます。
・警察:領主貴族の管轄下に置かれています。
○現況
天然の要塞のような地形と竜の一族(空賊)の減少によって、対外的には不安の少ない国であり、内部は円熟した文化とあいまって、民衆にとっては平和という印象が強い時代です。しかし、内部では貴族同士の陰謀劇が習慣のように繰り広げられており、権謀術数をめぐらすことが貴族のステータスであるかのようです。これに絡んで、『サレナス国王』は存命中であるにもかかわらず高齢であるために継承問題が浮かび上がり、第一王子を擁する『寵妃サティア』と懐妊中の『正妃フリエラ』の間で、激しい宮廷内闘争が行なわれています。国王はこの状況を把握していますが、優柔不断な彼はいまだ後継者を決めかねているようで、フリエラの出産まで結論を先送りしています。
この貿易の時代にあって、ジグラットでも霊子機関を用いた大型船の建造が計画されるようになりました。しかし聖母教会の反対があって計画は難航しており、いまもって帆船での航海が続けられています。このような事情で、エリスファリアとの制海権問題では一歩遅れをとっており、貴族たちは聖母教会への圧力を強めております。寵姫サティアが主教ランシュタルへ接近しているのは、この問題について何か画策しているのではないかというのが一般的な見解です。
○国家関係
・友好国:なし
・敵対国:エリスファリア(制海権問題)
○首都:サレイア
中央教会である雨の聖ルシータ教会があります。文化の中心地であり、交易の中心としても機能しています。
○民族
・カイン人
小麦色の肌に金髪で、瞳は濃い青かあるいは深い緑色をしています。・竜の一族(空賊)
彫りの深い顔立ちで、浅黒い肌をもちます。
髪の色は日に透かすと藍色に見える黒で、瞳は濃い藍色です。
○宗教
聖母教会を信仰しています。中央教会である『雨の聖ルシータ』教会が首都サレイアにあります。『主教ランシュタル』は王室顧問の地位にあり、宮廷に出向くこともたびたびですが、これは寵妃サティアとの間でよからぬ企みを計画しているためだと噂されています。
○要所
・竜の柱
ラスアルネフ山脈の奥地にある石柱群で、この柱の間を竜が飛び回っています。・マイルズ砦
竜の一族への防備のためにつくられた砦で、現在は機能していません。・直列円石
竜の一族の祭壇で、一族の中でも地位の高いものしかその場所を知りません。・サイルハッド山脈
北部にある山岳地帯で、山々の間には網の目のような水脈が形成されています。・ラスアルネフ山脈
南部の国境になっている山脈で、切り立った崖の多い難所です。別名を灰色山脈といい、灰色の石が多く切り出されます。・竜の墓場
竜が死ぬ直前に赴くといわれている場所で、竜の一族の聖地の1つです。無数の骨が転がっており、確かに竜の骨や鱗がたくさん見つかるようです。・赤波港
フェブロックの東に位置するアキュナスという街の港で、大雨になるとアラム地方から赤土が流れてきて海が赤く染まることから、このように名付けられました。
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