アルメア


 


○自然

 シュトラム半島の南端を占める国で、国土の70%以上が針葉樹林に覆われています。北部はシュトラム山脈の南端にかかっており、そこから南部に向かってなだらかな傾斜が続きます。北部平野では牧羊が行なわれている地域もあります。西海を流れる暖流の影響で、南部と西部の海岸地域は温帯に属しています。海は全体的に穏やかで、近海での漁業も盛んです。
 内陸部は降水量が少なく乾燥しており、雪はあまり降りません。沿岸部は風の強い冬が訪れますが、内陸は周囲の針葉樹林帯が防風林の役目をするため、静かに雪が降り積もる穏やかな冬を過ごすことができます。内陸部では気温もそれほど下がらず、0〜5℃くらいの気温が続きます。北部でも、それほど寒くはならないようです。


○変異

 『ニセカエデの森』の『霊獣』が特に他国にも知られています。この霊獣と呼ばれる存在は正体不明の化け物の総称です。これはエルモア中に存在しますが、アルメア以外の国に出現する霊獣はそれほど種類は多くありません。これに対して、ニセカエデの森にはほとんど全ての霊獣が出現します。これは『霊獣使い』という一族が使役しているのだと言われていますが、霊獣使いと会ったという話はほとんど聞くことはありません。この国では霊獣とエルフという存在のため、人々はあまり森に入ろうとはしません。そのため、木材資源も最低限しか確保せず、貿易時代の現在において国力が低下する原因となっています。
 その他に有名な変異の産物は、『精霊湖』と呼ばれる北部の森に囲まれた湖です。この付近では精霊が数多く出現するため、誰も近寄ろうとはしません。この湖からは、『湖の歌』と呼ばれる美しい歌声が聞こえるといわれています。この歌のあまりの美しさに魅入られた人間は、湖の中に引きずり込まれて溺死してしまうという伝説がありますが、その真偽のほどは定かではありません。この付近には精霊を信仰するものや自然信奉者たちの村があり、自然と寄り添ってひっそりと暮らしているようです。
 もう1つの変異は、変異ではなく奇跡として知られているものです。ファリエラという都市で夏至の日に起こるこの現象は『蛍の夜』と名付けられており、その名の通り蛍のような光がふわふわと空を舞う幻想的な光景を見ることができます。この光はぼんやりとした小さな白い塊で、つかまえると細かいキラキラとした光を放ちながら、空に溶けるように消えてしまいます。蛍の夜は、1年のうちにたった1日だけ起こる現象です。この日はホタル祭という祭が開かれ、各地から人々が訪れて賑わいます。


○略史

 中央地方からエルモア地方に移住したアル人が建国した国です。建国の歴史は古く、前聖暦686年になります。
 聖母教会の教えを忠実に守っている国民は、これまで戦争らしい戦争を経験したことがありません。もとより現カルネア国の南部までの地域を支配していたのですが、前聖暦155年にヴァルネル人(現カルネア国民)がイーフォン皇国の支配を逃れてこの地に来た時も、戦わずに土地を明け渡してしまいました。その後も各国の戦いに巻き込まれることなく、国内紛争もほとんどないまま現在に至っています。エルモア地方で最も平和な歴史を過ごした国といえるでしょう。


○制度

 国土を7分割し、それぞれの地域を領主がおさめています。それぞれの領主の下には下位の貴族や騎士が属し、各々が自分の領地を統括します。貴族や騎士は徴税権をもつかわりに、住民を守らなけれぱならない義務を負います。これには変異体の掃討も含まれるので、その役目は非常に重要です。
 この国では、領主がすべての権限をもっています。国王も領主の1人という、古い形態の封建制度が建国以来ずっと続いているのです。ただし、国全体の政治は貴族たちが開く議会で決定されます。成文化された法律を持ち、なおかつ旧来の封建制度を続けているため、たとえ国王といえども単独で議会の決定をくつがえすことはできないのです。
 なお、この国では聖母教会を国教としており、宮廷司祭という役職についた司祭は、王室顧間として国政に対して発言権を持ちます。このため、政情が悪化するという事態は過去にはほとんどありませんでした。

・貴族:支配貴族。全権限をもっていますが、それほど強引な真似はしません。
・騎士:世襲貴族の1つであり、特定貴族に仕えています。
    小さな荘園の領主でもあり、領内を統治する権利と義務があります。
・軍隊:各領主貴族が統括しています。
司法:領主貴族が司法権を持ちます。
警察:領主貴族が統括しています。


○現況

 この国は聖母教会の意見が強く生活に反映されるため、霊子機関を導入しないまま現在に至っています。水力や旧来の蒸気機関が最新の技術であり、ガス燈や自動車なども非常に珍しがられる存在なのです。このような状況にあるため、近年では領主の中からも霊子機関を導入するべきだとの意見が出てきていますが、宮廷司祭は頑としてこれを受けつけません。一般市民も聖母教会の意見を絶対として旧態依然とした生活を続けているため、もし他国に攻め込まれるような事態に陥れば、たやすくその支配を受けることになるでしょう。


○国家関係

・友好国:ユナスフィール教国
・敵対国:なし


○首都:リスカルト

 数少ない平野に位置しており、周囲には畑が広がっています。郊外には国王の居城があります。


○民族

・アル人
 粟色の瞳と髪をもつ白人です。

・エルフ(エルフィン)
 細身で小柄な美しい亜人種です。
 森の中に集落をつくって生活していますが、滅多に出会うことはありません。


○宗教

 聖母教会を国教として信奉しています。ノルディーンには中央教会の『雪の聖アーシア』教会があります。人民は敬虔な信者で、純朴な国民性もその信仰心からだといえるでしょう。
 他にも、精霊信仰や自然信奉者といったものが辺境地域に存在しますが、数としては絶対少数派です。


○要所

・ニセカエデの森
 ニセカエデが特に密生している森で、霊獣が出現することから人々はあまり近づこうとはしません。

・精霊湖
 北東のカルネアとの国境近くに位置する湖で、周囲には精霊使いや自然信奉者たちが多く住んでいます。


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