霊子物質


 


 霊子はエネルギーであるとともに、情報の受け渡しをする役目もあります。
 この霊子からエネルギーを取り出すためには、『霊子機関』(エーテル・リアクター)というものが必要です。この原理をおおざっぱに説明すると以下のようになります。

 霊子が実空間と内部空間を自由に行き来できるのは、先に述べた通りです。この移動の際に、霊子はそれぞれの空間で存在するための形態に属性を変えてしまいます。そのため、実空間でエネルギーを保持していた霊子は、内部空間に入る時にエネルギーをすべて放出することになります。これが霊子エネルギーと呼ばれるもので、放出するエネルギーがほぼ100%となるので、霊子機関は通常の動力機関に比べて高効率となるのです。
 しかし霊子という存在は、実空間に普通に存在するとはいっても、かなり希薄なものです。ですから、これをまとまった形で集めなければ霊子機関の燃料として使用することはできません。そこで、これを結晶状構造にして集合させたのが『霊子物質』(エーテル・マター)というものです。
 科学魔道時代には、空間に浮遊している素粒子レベルの希薄な霊子(浮遊霊子という)を、霊子物質に転換する技術がありました。この技術を用いて星界の濃密な霊子を霊子物質にし、それをエネルギー源としていたのです。星界からの輸送時には霊子物質を気体状態にし、物理的なパイプラインではなく、空間に霊子物質の流れる方向を設定することで搬送を行ってました。これの名残が『霊風』(エーテル・ウィンド)と呼ばれるものであり、現在でも星界へ繋がる空間のほころびからトリダリスへと流れ出しています。

 しかし、聖暦789年現在のエルモア地方にはこのような技術はなく、『霊石』や『霊水』と呼ばれる霊子物質を使用しています。しかし、この霊石と霊水というものは科学魔道時代につくられたものではなく、大変異現象によってできたものなのです。
 実は異常活性化した霊子が固まってできたのがこれらの霊子物質であり、低いエネルギー段階の異常活性状態(変異の原因となる霊子の活性状態)にあります。このため、霊水や霊石を使用した場合、『霊子蒸気』(エーテル・スチーム)という変異の原因になる煙が発生します。エルモア地方の人々はこのことに気づかないまま、霊子機関を使用し続けているのです。
 これに対して、霊子蒸気を出さない霊子物質も現存します。これは『霊砂』(エーテル・ダスト)と呼ばれるもので、科学魔道時代に転換されていたものと同じ霊子物質です。エルモア地方では『粉末霊石』と呼ばれているのですが、あまり掘り出されない上に霊水や霊石をに比べてエネルギー効率が悪いことから、霊石のかけらとしか思われていません。これは、霊水や霊石が異常活性化したエネルギー状態の高い霊子であることと、学問院が発掘した霊子機関が科学魔道時代の初期のもので非常に効率が悪いため、このような誤解を受けているのです。霊砂を用いていた科学魔道時代の霊子機関は、現在のエルモア地方で使用されているものより、遥かに高い出力を誇ります。ですから、科学魔道時代の標準的な霊子機関で霊水や霊石を用いれば、かつて以上のパワーを出すことができるでしょう。しかし、それに機械が耐えられるかどうかはわかりませんし、何か不可思議な現象が起こらないとは限りません。

 エルモア地方に霊砂がほとんど存在しないのは、霊石や霊水に転換されてしまったためです。これに対して、ペルソニア大陸にはこれがたくさん残っています。もし、効率のいい霊子機関が発掘されたり、あるいは霊子蒸気による変異が人々に知られることとなった場合、この霊砂の取り合いとなるのは必定といえるでしょう。


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