生命という存在についての探求を行う学派で、主に生命の誕生と不死に関する研究を起こっています。しかし、錬金術では最も遅れている分野で、手を出す者も少ないというのが現状です。なお、これを学ぶ錬金術師のことを天上医師と呼ぶこともあるように、医学分野の知識とも関連が深い分野です。
○生命の原泉
生物と非生物との違いは、霊魂と生命素の有無であるといいます。そして、生命秘学の分野は生命素の探求を行うことを目的とします。生命素については未だに一致した解釈を持たず、生命体を構成する要素に含まれる見えない粒子であるという者もいれば、霊魂のように非物質的な存在であると定義する派閥もあります。また、物質と非物質の双方の性質を持つ存在だという中間説も古くから述べられてきました。
いずれにせよ、生命体はこの生命素の存在によって生命であることが出来るもので、生命体として存在している状態では、生命場という場を個の内に持つのだといいます。この生命場のことを生体宇宙という場合もあり、この内部に霊魂や自我を内包しているのだと考えられています。そして、死によってこの生命場を維持することができなくなると、生命から霊魂が離れてゆくという現象が起こり、霊魂の解離が生命素の拡散を引き起こすのだといいます。
なお、不死者と呼ばれる存在は生命素を持たないのではなく、負の生命素を有しているものと考えられています。ですから、死骸の腐敗は生命素の欠如であり、負の生命素を持つゆえに不死者は腐敗を免れることになります。また、食物を食べるということは生命素の補給でもあり、これが生命場の維持には欠かせない行為であるといいます。不死者が生者の肉を求めるのは、正の生命素を体内に取り込み、それを負の生命素に転換する作業であるという説が古くから言われています。
しかし、ここ数十年の研究によって、ミズガネや細胞石といった無機生物が発見されるようになり、新たな生命素の定義も次々と提唱されるようになっています。このように生命秘学の分野はまだまだ未知の要素が多く、一定の見解に落ち着くのもまだまだ先のことになりそうです。
○その他
・属性
生命素の要素の1つに属性というものがあり、生命体は必ず正負どちらかの状態を持つとされています。瘴気と呼ばれる存在は負の生命素のことではないかと考えられ、古くから生命秘学の研究対象とされてきました。しかし、いかなる要素から性質が規定されるのかは全く判明しておりません。・不死者
この分野では不死の法から生命の源泉を探るため、不死者の研究についても古くから行われてきました。しかし、それが実を結んだ例は皆無といっていいでしょう。唯一の収穫といってよいのは、吸血鬼の血液の一部から未知の金属が採取され、それが生命金属の一種であるということが判明したことです。そのため、生命金属と不死の関連について言及されるようになりましたが、あまりにもサンプルが少なすぎるため、この研究はほぼ頓挫しているといってよい状態にあります。・無機生物
ここ数十年の間に、ミズガネと呼ばれる生命金属や細胞石など、無機質の構成要素を持つ生命様活動体の存在が知られるようになっています。術法によっても生命様活動体を作製することができますが、これらはあくまでも制御機構を持つ人形のような存在であり、構成物質そのものが生命体のような機構を示すわけではありません。しかし、これらは明らかに生命と同等の要素を持つもので、その研究に取り組むものもいます。
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