錬金術による生命操作の目的というのは、現存する生物の改変と新生物の創造の大きく2つに分かれます。そのため、生物秘学を学ぶ者を創生技師と呼んだりもします。なお、最近の錬金術師の中には、これらの技術を用いて生物兵器の作製などを行い、それを闇ルートで売買することで研究資金を得たりする者もいます。彼らは取り引き相手からビーストマスター、あるいはライフメーカーなどと呼ばれたりするようです。
○技術
生物秘学が生み出した技術でなし得るのは以下の作業となります。ここにある内容を読むだけでもシナリオに利用することは可能ですが、具体的な手法を知りたい方は、以下にある実験方法の項目にも全て目を通して下さい。
・特殊能力の移植
生物に固有の核型(特殊能力を発現する部位)を取り出し、他の生物に移植することができます。ただし、移植元は生体のみに限られますし、一連の作業のいずれかに失敗した場合は、実験生物を死や発狂という事態に追いやることになります。・能力強化
既存の生物の特殊能力を変化させたり、能力を強化することができます。手段は学派や個人によって異なり、様々な薬品や錬金物質を添加してみたり、核型を薬品などで変化させ、それを同種の生物に埋め込んで確認するなどの手法があります。・生体生産
改造を行った生物を擬似的な子宮で育成する技術です。しかし、継代するごとに歪みを生じるため、この技術によって正しく能力を継続できるのは3代目までとなります。それ以降のものは、肉体はもちろんのこと、精神的にも障害を持って生を受けることになるのです。多くの場合は、成長しきる前に死亡することになるようです。・体外受精
試験管などを用いて体外で受精させる技術です。雌性体の腹から卵子を取り出し、受精後に再び体内に戻すという作業を行わなければなりません。・異種交配
生命図形と呼ばれる生物固有の形質を調べ、適合する可能性のある異種の生物の交配を行う技術です。なお、交配には幾つかの方法があり、学派や個人によっても手法が異なります。しかし、いずれの手段を用いたとしても、合成生物が正しく継代されたことはかつてなく、必ず障害を生じるなどの何らかのイレギュラーな結果を示します。・組織移植
異種の組織を結合したり、自らが作製した組織や器官を融合させるための技術です。ただし、適合性がない種間でこれを行う場合は、組織の壊死や生体そのものの死といった事態を引き起こすことになります。・成長制御
生物の成長速度を調整するための技術です。これにより、誕生させた生物を効率よく利用することが可能となります。ただし、生物の体に大きな負荷をかけることになるため、寿命は本来のものの半分以下に減少してしまいます。
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実験方法
○鋳型抽出
鋳型の抽出というのは、生物に固有の特殊能力を取り出し、移植できる形にする一連の作業のことをいいます。この作業における最大の困難は、標本が生きている状態で行わなければならないということです。死体からも外形は取り出せないわけではありませんが、それは解析の対象としかなりません。
・構造解析
特殊能力を発動する核となる部位を特定する作業です。位置の特定を行うには、数体〜十数体の標本が必要となるのが普通です。一般には、ジフリンスの震針と呼ばれる白金鼠の針を細く加工したものを用い、針を弾いた時の振動と音で位置を大雑把に特定します。そして、その後に疑似器官で特定部位を置き換え、能力を停止させて部位を判別するようです。なお、多くの場合は脳内に核器官が存在します。必要物品:ジフリンスの震針
・核型抽出
核型を抽出して固定を行います。この際、ユーイングの緑縫液と呼ばれる固定用の薬品が必要となりますし、生体器官を破損せずに抽出するためには、難易度10の判定に成功しなければなりません。なお、核型を取り出された生物はその殆どが死に至ります。必要物品:ユーイングの緑縫液
・結晶化
抽出して固定した核型を結晶剤と呼ばれる薬液に浸し、顕微鏡のプレートのような水晶板の形にします。核型を腐敗や損傷から守り、長期間保存するための技術です。必要物品:結晶剤(アルカンタラの氷硝子)
○能力付加
取り出した核型を他生物へと移植・融合するための技術です。ただし、作業そのものに不備はなくても、融合できるかどうかは生物間の適性が関与しますし、能力によっては核型が複数必要となる場合もあるため、実験の成否は運にも大きく左右されます。
・構造解析
核型を埋め込む場所を決定する作業です。核型は基本的に脳の表層に埋め込むことになります。これに失敗した場合は、以降の作業は全て無駄に終わります。必要物品:ジフリンスの震針
・核型移植
核型を生物に埋め込むための手術です。この手術に失敗すると、周囲の器官に傷をつけてしまいます。通常は頭蓋骨の内部に埋め込むので、失敗の大半は生物の死に繋がります。この作業にはメルエトセラの絹糸と呼ばれるカビのような繊維状微細生物を用います。これは核型の固定および脳と核型の連絡役を果たし、最終的には神経繊維と同等の働きをします。必要物品:メルエトセラの絹糸
・拒絶制御
核型を埋め込んだ生物は、メルエトセラの絹糸の作用によって核型を脳に定着させます。しかし、生体になじむまでには時間がかかり、生体の側でもこれに拒絶反応を示すので、一時的に生物の免疫反応を抑制する必要が生じます。そのためにはポリニウス粉という物質を投与し、1週間ほどの時間をかけてなじませなければなりません。なお、拒絶制御に失敗した場合は、死亡したり激しく暴れ出すこともあります。これは錬金術師の技術ではなく、相手の生命力や免疫反応の程度に依存するものとなります。必要物品:ポリニウス粉
○能力強化
取り出した核型を変化させることで、既存の生物の能力を変化させることができます。核型の構造についての解析はまだ進んでおりませんので、あくまでも経験的に得られた知識の組み合わせでこれを行います。逆に言えば、核型の構造解析のために変化させ、肉体に与えられる形質について研究する手段と言うこともできます。
新しい試みは常に手探りとなり、失敗も非常に多くなります。手段も学派や個人によって異なり、様々な薬品や錬金物質を添加してみたり、抽出後の核型を薬品などで変化させ、それを同種の生物に埋め込んで確認するなどの手法があります。
○生体生産
生体改造を施したところで、その能力が次世代へと引き継がれるわけではありません。術法で複製体を作り出すこともできますが、これは非常に高度な術であり、簡単には習得できない代物です。
生体生産技術は、育成漕を擬似的な子宮として用いることによって、作り上げた生物を複数誕生させることを可能とします。しかし、継代するごとに歪みを生じるため、この技術によって正しく能力を継続できるのは3代目までとなります。それ以降のものは、肉体はもちろんのこと、精神的にも障害を持って生を受けることになるのです。多くの場合は、成長しきる前に死亡することになるようです。・疑似子宮
怪物を培養するために用いる反応漕で、密閉して使用します。中には混合した薬液を用意しますが、この組成は学派や目的によっても異なるようです。反応漕は通常は硝子製で、複雑に絡み合った管が繋がっています。
生体を用いる場合と異なり、造りだした生物の能力は確実に劣化します。主能力値を1、そして耐久値、抵抗値、判定値などの数値を全て3ずつ低下させて下さい。これは継代するごとに劣化を重ねてゆきます。
・生体子宮
生物の子宮を用いて培養を行う技術です。宿主となって生物を生み出す者を培養体と呼ぶこともあります。まず最初に、培養体となる生物を創り出すことから始めるわけですが、これはレティス=モリエルの卵と呼ばれる物質が必要となります。これは子宮内に埋め込まれると、3日ほどの時間をかけて子宮内に粘液を分泌する肉の網を張り巡らせます。
さらに3日ほどの時間をかけて肉の網が子宮壁に定着するのを待ち、その後に造りだした生物の組織の一部と体液を子宮内に入れ、培養を開始します。通常、培養には半月〜1か月ほどの時間がかかります。場合によっては錬金術師が想像もしない能力を持った化け物が生まれることもありますが、これはイレギュラーな事態であり、制御できるわけではありません。
なお、子宮を貸した母胎は、ほぼ確実に死に至ることになります。場合によっては、胎児が母胎の体を引き裂いて外部にあらわれることもあります。必要物品:レティス=モリエルの卵、ポリニウス粉
・魔女の体宮
人間の子宮を育成漕として用いる技術です。これは外部から生物を埋め込むのではなく、胎児を化け物にするための技術です。
レティス=モリエルの卵を培養槽で孵化させ、その粘液を生命のエリクシルと呼ばれる液体に溶かしたものを子宮に注射します。その後、3日ほど待って適合性を判別します。妊婦は難易度3の肉体抵抗の判定を行い、抵抗に成功すれば培養体として肉体的変化を遂げることができます。失敗した場合は流産してしまい、また、二度と妊娠することができない体となります。
培養体となった妊婦の子宮に他生物の体液や組織片を注入することで、培養を行うことが可能となります。ただし、ポリニウス粉を同時に注入しなければ、胎児は死亡してしまうことになります。胎児に取り込まれる能力は、注入する組織片によって異なります。たとえば鱗の組織片を注入すれば、鱗が生えた胎児が生まれてくるといった具合になります。しかし、全ての能力が完全に取り込まれるとは限りません。種類によっては全く付与されず、ただの人間の赤子として誕生することもあります。
それから、生命のエリクシルと一緒に組織片を添加すると、別の組織や特殊能力などが付与されることがあります。これは付与する能力などを指定することはできず、完全にランダムに選択されますし、これは受精して1日以内の胎児に限られてしまいます。必要物品:生命のエリクシル、レティス=モリエルの卵
○異種交配/移植
・生命図形の解析
これは生命図形と呼ばれる生物固有の形質を調べる手段ですが、生命図形は顕微鏡などの道具を用いても見ることはできず、複数の生物の機能を利用して、間接的な手段で分析を行います。
まず、エーテル・イーターと呼ばれる生物の核様体部分と、サカー・ドロップの細胞を融合させて作製した融合細胞と、同様に対象生物とサカー・ドロップとを融合させた2種類の細胞を用意します。さらに、ミズガネ(水鉄)と呼ばれる生物金属と生命銀、そしてフリスタスに存在する光輝水と霊水の混合液を満たした硝子容器を準備しなければなりません。
そして、調査対象の融合細胞とエーテルイーター融合細胞をメルエトセラの絹糸で連結し、同じくエーテルイーター融合細胞と生命銀を、生命銀とミズガネをそれぞれ繋ぎます。それからミズガネを硝子容器内の溶液に浸すと、複雑な三次元図形が青く輝いて浮かび上がります。この図形が生命図形と呼ばれるもので、種などによって共通する部分もありますし、個体によって異なる部分も存在します。必要物品:エーテルイーターの核様体、サカー・ドロップの細胞、ミズガネ、生命銀、光輝水、霊水
・適合性の判断
生物同士の適合性を調べ、異種交配が可能かどうかを解析します。この場合は、まず生命図形の記憶を行い、それから適合性を判断することになります。これは光輝水の輝きは永続的に続くものではなく、長くても1日程度で失われることも1つの理由です。
まず、テロエラの記憶と呼ばれる記憶物質を用意します。これは微生物の分泌する赤色顆粒で、これを硝子溶液内に予め添加しておけば、生命図形を記憶してくれます。
適合性の判断は記憶物質に蓄積された情報同士を比較することで行いますが、これには赤銅血液と呼ばれる液体を用います。これは錬金系の術にある黄金血液の前段階の物質と考えられており、調査対象となる一方の生物の血液と幾つかの錬金溶液を混合した液体です。これにもう一方の生命図形を記憶させた記憶物質を添加した際に、適合性があれば液状のままとなりますが、そうでない場合は硬化して、ミスカトゥールの紅瞳と呼ばれる宝石に似た物質を生成します。適合の程度によっては、ドロドロとした蝋状の物質となったりもします。必要物品:テロエラの記憶、赤銅血液
・生物合成
生物の合成には幾つかの方法があり、学派や個人によっても手法が異なります。生命子(精子や卵子)の結合によって受精を行う場合もありますし、融合細胞技術による合成を好む者もいます。他にも、同化能力を持つ生物に複数の生物の細胞を取り込ませ、その細胞をさらに分別してそこから生物を成長させるといった手段も存在します。しかし、合成生物が正しく継代されたことはかつてなく、次世代は必ず障害を生じるなどの何らかのイレギュラーな結果を示します。
・生命子結合
硝子管内で受精を行わせる手順です。これは疑似子宮とほぼ同様の手順を踏んで行われますが、薬液の組成が少し異なり、母胎の分泌物などが必要となります。もちろん、雌性体の腹から卵子を取り出し、受精後に再び体内に戻すという作業も行わなければなりません。
○組織移植
・疑似器官創造
疑似器官は器官や組織を取り出した後に付加して、延命措置を施すために用いられます。改造元となる生物の組織片を取り出して培養を行い、これを用いて疑似器官を作製するわけですが、そのためには元の生命図形に疑似器官を形成するための図形を付加しなければなりません。
疑似器官の製造には多塔式培養球と呼ばれる特殊培養槽が必要で、これに対象生物の細胞、エヴィラモニデスの生命芽細胞、テロエラの記憶、およびその他の薬液などを加えて循環し、一週間ほどの時間をかけて段階的に培養を行わなければなりません。通常は霊子機関を用いたポンプを連結して、安定した環境で培養を行います。疑似器官を正しく移植できれば、本来死亡するはずの生物を一週間ほど延命することが可能となります。必要物品:エヴィラモニデスの生命芽細胞、テロエラの記憶、多塔式培養球
・仲介移植
移植する細胞と移植対象生物の間にサカー・ドロップの細胞を挟み込み、半ば強引に融合親和させてしまう移植方法です。しかし、これは適合性のない間では移植が成功することはなく、適合性があっても1〜2週間ほどで周辺細胞が壊死してしまい、使い物にならなくなってしまいます。必要物品:サカー・ドロップの細胞、メルエトセラの絹糸、ポリニウス粉
・媒介細胞の培養/融合移植
移植細胞と移植対象生物の細胞を親和させるために、通常は単純な仲介移植ではなく、両者の中間に媒介細胞と呼ばれる細胞を挟み込んで移植を行います。これはサカー・ドロップの細胞を用いて、両者の細胞と生命芽細胞を融合させた2種の細胞を作製した後に、さらにその2種を融合させて仲介移植に用いるというやり方です。これを他段階融合といい、各細胞の増殖の時間も含めて約1か月ほどの時間を必要とします。
適合性がある間柄ではほぼ確実に移植が成功しますが、そうでない場合は何らかの生物の機能変化が観察されます。多くは免疫異常や精神異常といった程度になりますが、最悪の場合は死を迎えることになります。必要物品:サカー・ドロップの細胞、エヴィラモニデスの生命芽細胞、メルエトセラの絹糸、ポリニウス粉、多塔式培養球
○成長制御
生物の成長速度を調整するための技術です。これにより、誕生させた生物を効率よく利用することが可能となります。ただし、どちらも生物の体に大きな負荷をかけることになるため、寿命は本来のものの半分以下に減少してしまいます。生命のエリクシルの添加量が少ない場合には、本来の1/100の時間も生きられないことがあります。なお、制御にはセルアシャという花の抽出液を用いますが、これは添加量によって成長促進・停止の双方の作用を示します。多量に添加した場合は成長を停止させる効果を持つようです。
・成長促進
成長を促進し、短時間で成体まで育てあげる技術です。これは受精直後に操作を行わなければならず、後から変化を加えることはできません。必要物品:生命のエリクシル、セルアシャの抽出液
・成長停止
成長を停止し、特定の成長段階の姿を保つことができます。しかし、ある時点で急速に生命力が低下し、老衰と同じような状態で死を迎えます。必要物品:生命のエリクシル、セルアシャの抽出液
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