発明

社会と発明特許


 

社会と発明


○科学者

 現在の社会を支える新しい科学技術を生み出すのが科学者という存在です。かつては学問を身につけるより、生きるために必要な技術を身につける方が重要だというのが、ごく一般的な認識でした。また、仮に学問で身を立てるにしても、役人や法律家といった分野を選ぶのが当たり前だったのです。しかし、現在では数学や物理といった、それ以前は貴族など資金のある者の道楽でしかなかった学問分野が、脚光を浴びるようになっているのです。


○公開試技会

 科学者の多くは大学や研究機関などに所属して、科学の発展のために日夜研究に励んでいます。しかし、公的な席は限られていますから、市井の科学者や発明家といった存在も決して少なくはありません。こういった人々が自らの技術力を認めてもらうには、学会での公開実験や展覧会、あるいは懸賞レースなどに参加して、優れた成果を見せつけなければなりません。こういった場で成功を収めることができれば、スカウトや企業からの買い取り要請が殺到することになります。
 こういった公開試技会は、国家や自治体が主催することもありますし、企業や協会などが率先して行うこともあります。公開試技会は優れた技術者を世に送り出すというだけでなく、地域を活性化させるためにも役に立つものです。新しい技術というのは、古い考えを持つ人間にとっては必要以上に危険視される傾向がありますから、人々の理解を得るためにも発表の場は重要でした。
 しかし、こういった場を利用して学者たちをペテンにかけて、自らを高く売り込もうとしたり、名声を得るために虚偽の事実を捏造したりする不貞の輩も存在するので注意が必要です。特に発展が遅れている分野でこういった傾向が見られるようです。また、優れた科学者であるために他国の軍隊などに狙われ、誘拐されるといった事件も影では起こっています。有用性が社会に認められるのは喜ばしいことですが、それを利用しようとする人間はいつの時代も存在するもので、現在の状況を手放しで喜ぶわけにもゆかないようです。


○レース

 自動車競技会などのレースは特に華やかで、観光客が多数訪れて出店が並ぶなど、一種のお祭りとして人々に受け入れられています。観光収入目当てで複数の都市を結んだ長距離レースなどが企画されることもあり、年々派手な催し物が世に現れるようになっています。
 殆どのレースには懸賞金がかけられており、市井の発明家が発明資金を調達するためにエントリーしたり、工場や企業が総力を挙げて参加する場合もあります。特に企業が自社製品の優位性を示すために新製品をひっさげて参加する場合は、熾烈な競争が行われることになります。
 しかし、レースの中で白熱するだけならばよいのですが、華やかな舞台の裏で妨害工作をしたり、不正を働いて勝利を得ようとする者も少なからず存在します。裏で賭事が行われたりするのも日常茶飯事で、イカサマのために妨害を受けることもしばしば起こるため、参加者はレース以外のことにも気を配る必要がありそうです。


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特許


○現状

 特許法は国内産業における発明に関する利益を守るために整備された法律であり、それぞれの国内だけで適用されるものとなります。他国では発明や著作物などに対する権利は保護されないため、広く自分の発明の権利を守るためには、他国でも個別に特許を出願しなければなりません。しかし、特許法というのは国家によってまちまちであり、経過年数によって著作権料が徐々に低下する段階方式もあれば、発明者の死によってはじめて権利が消滅する方式など様々なものが存在します。出願方式も当然のごとくバラバラですし、ライヒスデールなどは同盟国外からの登録を一切受け付けておりません。
 出版物の形で技術を入手できるようになった現在では、こういった方式の違いは産業の発展にとって由々しき問題となっています。多大な時間と多額の費用を費やして開発された技術が他国に簡単に知られたり、発明家に対して何の保証もされないというのであれば、技術振興のための社会的報奨制度という一面もある特許法自体の意味が失われてしまうのです。かといって、特許の出願にも費用と時間がかかりますから、よほど余裕のある発明家でもなければ、全国家での登録を行うなど不可能なことです。
 こういった理由から国際法の制定を訴える発明家もおりますが、国家権力が弱いところでは組合の反発などもあって、国内ですら足並みが揃っていない状態にあります。また、産業技術の推移や社会制度の移り変わりの激しい昨今では、まだまだ国際法の制定というのは困難であり、国家は個別に対応するしかありませんでした。そのため、多くの国家では国内で技術を秘匿し、その技術によって生み出された製品の輸出のみを行ったり、情報が漏れる心配がある国外に工場を置かないなどの方策を採ってきました。しかし。産業の発展というのは外国からの技術流入も含まれるために、こういった対応もまた全体的な利潤を考えれば産業の発展に対するブレーキとなるものです。
 これらを解決するために強国は植民地の開発に力を注いだり、独占法として特許を認め、通商上の条約を結んで技術に対する相互保証を行ったり、関税をかけるなどの政策を前面に押し出すこととなりました。しかし、独占権を認める形での特許法は内外において不評でした。また、これによって産業スパイや科学者の誘拐などが横行することになったり、国外からの引き抜きが頻繁に行われるようにもなり、国家はまた新たな対策を取る必要に迫られています。しかし、現在の時点では国際的な統一には至っておらず、条約という形で同盟国同士で権利保証を行う程度がせいぜいといったところです。社会そのものの変容に落ち着きが見えないうちは、現在の混沌とした情勢がしばらく続くことでしょう。


○システム

 最終的に現在の特許法は、『権利者の同意なく製品の製造、使用、他者への提供等を行うことを禁止する』という、個人主体の権利保証制度という姿に落ち着きはじめています。しかし、国家によって特許の概念は異なり、技術は広く公共に還元されるべきだという国家も存在しますし、独占権の有無や出願料の高低もこういった概念に関連するものです。また、技術レベルで優位に立つ国家は自由競争を望むのが普通であり、逆の国家では自国産業の保護を行うための政策を採ることになります。ですから、国家の状態によって、権利の程度には大きな差があるということを覚えておいて下さい。
 それから、そもそも無形財産としての技術は、権利を与える側に権力があって初めて保護されるものであり、領地での権限しかもたない領主から与えられる権利は、他の領地では国外同様に保証されない場合も十分にあり得ます。このように前近代的な国家では、国家制度そのものが特許法の制定を遅らせる原因となるわけです。
 しかしいずれの地域でも、特許権を得るためには発明の新規性と有用性が認められなければなりませんし、国家機関による審査と50万エラン程度の手数料を求めらるのが普通です。通常の国家では審査期間を含めず、10年前後の特許権が与えられます。しかし、殖産政策を採る国家では発明を奨励するために、出願料を安く押さえたり権利の保持期間を15年以上にしている場合もあります。

 なお、同盟を結んでいる国家の場合は、それぞれが全く平等に扱われるのが普通です。他国で特許を出願しても受理されますし、保証も同等になされます。ただし、出願の手数料などは多少割高になります。


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