国家説明


 


1.カイテイン帝国

 エルモア地方では最大の面積をほこる国家です。前近代的封建制度による専制政治が行なわれており、国の実権を握っているのは『皇帝ハルネス2世』を頂点とする貴族たちです。近代産業のあまり発達していないこの国では、貴族の持つ力はいまだ強く、平民が政治に口をはさむことは殆どできません。
 この国は港らしい港をもっておりません。海に面していないわけではありませんが、北部は年間を通じて流氷に閉ざされており、南部は変異植物帯と山脈によって阻まれているのです。野心的なハルネス2世は、『新大陸エスティリオ』への参入をもくろみ、その足掛かりとなる港を得るためにルワール大公国との交戦を準備中です。


2.アルメア

 70%以上が針葉樹林に覆われている国土を7分割し、それぞれの地域を領主がおさめています。それぞれの領主の下には下位の貴族や騎士が属し、各々が自分の領地を統括します。貴族や騎士は徴税権をもつかわりに、住民を守らなけれぱならない義務を負います。
 この国は聖母教会の意見が強く生活に反映されるため、霊子機関を導入しないまま現在に至っています。水力や旧来の蒸気機関が最新の技術であり、ガス燈や自動車なども非常に珍しがられる存在なのです。このような状況にあるため、近年では領主の中からも霊子機関を導入するべきだとの意見が出てきていますが、宮廷司祭は頑としてこれを受けつけません。一般市民も聖母教会の意見を絶対として旧態依然とした生活を続けているため、もし他国に攻め込まれるような事態に陥れば、たやすくその支配を受けることになるでしょう。


3.カルネア

 政党政治が行なわれています。上下二院が立法を、大統領府が行政を、そして司法府が司法を担う三権分立制がとられています。現在は国家が二分しており、『北部連邦』は他国と対抗するための保護貿易主義と奴隷反対主義、『南部連合』は大農場の利を活かして大量に生産した雪綿を主力とする自由貿易主義と奴隷推進主義です。双方が独自の政体として機能しています。
 南北は聖暦788年8月に起こった『逃亡奴隷虐殺事件』をきっかけに、内戦を繰り広げることとなりました。これが『カルネア奴隷解放戦争』の始まりです。現在までは南部有利の展開で進んでいます。しかし、昨年8月にあった逃亡奴隷虐殺事件に対する怒りから、黒人を中心とした一般志願兵が急増しており、今夏にも北部では南部へ大侵攻を開始する予定でいます。志願兵の40%が逃亡奴隷であることは、南部の奴隷民に対する虐待ぶりが予想されます。


4.ユークレイ

 湖沼の多い国土で、特に北部地域に集中しています。北部には周囲300mを越える湖が4万以上もあり、そのうち『凍湖』と呼ばれる夏でも溶けない氷に覆われた湖が、1万以上も存在します。
 表向きは立憲君主制ですが、司法権以外の諸権限は全て君主に属するという、前近代的な政治制度をとっています。司法組織のみは法教会が司っています。カスティルーン、ペトラーシャと『神聖同盟』を結成して、カイテインの『南方政策』やライヒスデールとフレイディオンの軍事同盟に対抗していますが、それが逆に他国の干渉をまねく結果になっています。現在は霊石鉱田を狙うライヒスデールとの局地戦が本格的になり、激しい戦乱の時代に突入する様子です。


5.カスティルーン

 立憲君主制を敷いており、国王の独裁は許されておりません。それは法教会の介入があるためで、政治は『三団会議』と呼ばれる議会制を採用しています。現在のカスティルーンは王位継承問題で非常に混乱した状態にあります。一昨年に国王が38歳という若さで急逝したため、先王の一人娘である『クリステア』(5歳)を中心に、貴族たちの間で様々な勢力争いが続いています。
 国内もそうなのですが、国外にもまた問題を抱えています。神聖同盟の盟主として、ライヒスデールとユークレイ間の国境紛争には援軍を送っているのですが、それが背後のカイテインに対する不安となっています。こういった状況に置かれているため、国民は宮廷問題には冷ややかな視線を送っているのが現状です。


6.ライヒスデール

 皇帝を中心とした独裁攻治です。皇帝は行政、立法、司法、そのほか全てを銃轄する地位にいます。この国では先進的な皇帝のもとで積極的に霊子機関を取り入れ、早い時期に工業革命が成立しました。この技術と強力な騎兵隊である『銀仮面騎士団』を中心戦力として、現在ユークレイと交戦中です。咋年までは国境での小競り合い程度でしたが、南東地域より発掘された旧文明の兵器を今年1月の初めに戦線に投入して以来、連勝しています。この発掘兵器はエネルギー砲の一種なのですが、その熱量に応じた霊子物質を必要とするため多用できるわけではありません。


7.ペトラーシャ

 象徴的王制と三権分立による、この時代では先進的な政冶制度をとっています。『学問都市ペトルラーン』での研究により、試作段階ではありますが様々な機械が開発されています。それに対して各国の密偵などが入り込んで、都市は混沌とした様相を呈しています。この国ではライヒスデール、フレイディオンと並んで軍事技術の最先端をきわめており、飛行船による空軍も存在しています。


8.エリスファリア

 絶対主義的な政治を行っていましたが、現在では地方の力、特に議会を通じて中央集権体制に食い込んできた富裕農民階扱の影響が大きくなり、議会の大多数を占めるようになりました。『国王ラヴィアン1世』と『女王シーリアネス』の名のもとに統治されています。中央の結束はきわめて強固で、今のところはうまく地方の力を抑えています。特に女王が傑出した人物で、早くから霊子機関を搭載した大型船で海上貿易を行ない、昨年には『新大陸エスティリオ』に向けて船を送り出しています。しかし、その利権問題に絡んで、ロンデニアを相手に小競り合い程度ですが戦闘を行なうことが多くなっています。
 この国では法教会が信奉されていましたが、当時の国王との不仲により関係が消失し、『エリスファリア国教会』が設立されることとなりました。王は教主である教皇を兼任しています。


9.ジグラット

 前近代的な封建制度を敷いており、国王や貴族たちが主権を握っています。ただし、現在では貿易で力を増した商人たちの影響も無視できる存在ではなく、金の力で貴族たちを動かし力を蓄えつつあります。天然の要塞のような地形のため対外的には不安の少なく、民衆にとっては平和という印象が強い国ですが、内部では貴族同士の陰謀劇が繰り広げられています。
 この貿易の時代にあって、ジグラットでも霊子機関を用いた大型船の建造が計画されるようになりました。しかし聖母教会の反対があって計画は難航しており、いまもって帆船での航海が続けられています。このような事情で、エリスファリアとの制海権問題では一歩遅れをとっており、貴族たちは聖母教会への圧力を強めております。


10.都市国家半島

 かつて中央地方を支配していた『ラガン帝国』の領地が、公国や独立都市となってこの地方に残ったのが、これら50以上の都市国家群です。都市によって様々な政治形体があります。評議会が政策を決定する都市もあれば、国王の独裁政治という国も存在します。
 現在はマイスブルク、エラン、フェンドレス、ステーシア、アンドレイク、ハプトクレイス、ワイプスギールら、『中央七都市』と呼ばれるかつての有力都市の連合体が勢力を伸ばしています。周囲の都市国家よりも他国の勢力に対抗するために結ばれた同盟であり、軍事のみならず、貿易や技術開発などの面でも協力体制をとっています。


11.ルワール大公国

 貴族会と平民会の『二部会議』によって国政が決定されます。現在は南方民族『ドゥーガル人』(黄人)による独立運動が起こっています。彼らは国の不公平政策に不満を示して5年前に反乱を起こしました。この内乱は南方政策をもくろむカイテインにとっては好都合ともいえる状況です。カイテインの南方政策において重要な位置にあるこの国は、近年では他国から『アリアナ回廊』と呼ばれています。現状に対して不安をつのらせているのは民衆も貴族もかわりなく、貴族会でも対外強硬派と平和外交派の2つに分かれて論議を戦わせています。


12.メルリィナ

 貴族の力が非常に強い国家で、中でも現在の王妃を出した『マルトシュタック公爵家』が勢力を伸ばし、一流貴族の連合である『名士会』を牛耳っています。これに対抗する勢力として『宰相派』がおり、王女の婿間題で対立を深めています。腐敗した宮廷政治に対して教会権力が介入を試みていますが、名士会の勢力は今もって強大で、宰相派に力を貸すのか、それとも異なる勢力となるのかで今後の政局が大きく変わってゆくことでしょう。


13.カーカバート

 人の住む地域に変異らしい変異が見られない、エルモア地方でも非常に貴重な土地です。地形的要因などから他国から攻め入られたことがなく、政治的な中立地帯となっています。都市の有力者が選挙で選出され、『13人委員会』と呼ばれる評議会をつくって政治を行ないます。商業都市の特色で、評議員には主に有力商人が選ばれることが多いようです。
 スパイの活躍する都市、亜人が自由に徘徊できる都市、若き芸術家たちの夢をかなえる都市など、カーカバートはひとりひとりに対してその顔を変えます。文化の交流地であり様々な人種が入り乱れる様は、通りにたたずんでいるだけでも退屈を忘れさせてくれます。しかし、そうしている間にも影では様々な密約が交わされ、種々の陰謀が繰り広げられているのです。ここ数年、政治的陰謀から影を潜めていた暗殺者ギルドの動きも見られるようになって、各国のスパイは忙しい状況を強いられています。


14.ルクレイド

 他国の人権革命の影響を受けた『5月革命』により、王制は打倒されることとなりました。その後、三権分立体制による近代的な政治が行われています。革命が起こって32年たった現在ですが、まだまだ国内が安定しているとはいいがたい状況です。しかし革命政権は慎重派が多く、ゆっくりと政治形態を模索しながら体制を徐々に強固にしています。こういった現政権に対して、旧王権派の残党がテロ活動をしたり、過激な改革派が独立州を確立しようとして活動したりと、まだまだ国内には問題が山積しています。
 それから、最近になってフレイディオンの『軍人皇帝アルザフ』が台頭してきたため、『魔術兵団』と呼ばれる術法師たちで構成されている部隊を強化するようになりました。また、徴兵制を導入したことで、現政権に対する国民の不満が少しずつ高まってきています。


15.ユナスフィール教国

 聖母教会が興った土地で、最も古い歴史をもつ国です。聖母教会の力により変異はほぼ完全に掃討されています。多くの国が聖母教会を国教としているため、他国から攻め入られたことは一切ありません。現在では人口5万程度の都市と、その周辺に位置する町や村を合わせて、ユナスフィール教国として存在しています。
 『大主教』が国王を兼ねており、立法、行政、司法の全権を掌握しております。軍隊も神官戦士と彼らが束ねる志願兵で構成されています。都市の収入は国内からの税と、各国の教会に集められた寄進の2つの財源があります。こういった財産は各国の貧しい人々の救済などに使われるので、都市の人々で寄進を躊躇する者はおりません。


16.フレイディオン

 『軍人皇帝アルザフ』によって『総統政府』が樹立され、自ら『総統』に就任して独裁権を握りました。立法、司法、行政の全権が総統1人に掌握されています。現在はライヒスデールと軍事同盟を組み、ユークレイとの交戦を支援しています。この軍事同盟は各国の反感を買い、近いうちにこれに対する大同盟が結成される動きもあります。それに対抗するかのように、アルザフはカイテインとの同盟を結ばうとしており、『三国軍事同盟』による新大陸進出をもくろんでいます。アルザフの政治は独裁政権とはいえ私欲を追求するものではなく、あくまでも国益を念頭に置いているため、これまで国内の批判はそれほどでもありませんでした。しかし、国際的に批判の多いカイテインを支援する動きに対しては反対意見も現れつつあります。


17.エストルーク連邦国家

 ユノスの領土でしたが、自治権を奪い取ろうとした本国に、自治州はエストルーク同盟を結びんで対抗しました。そして、聖暦787年にユノスで起こった軍事革命の混乱をついて、独立を勝ち取ることに成功しました。全8州からなる連邦制がとられており、全体としては三権分立と選挙による近代的政治制度が整備されています。州は自治権をもつ地方政体として機能しており、たとえば法律などでも、全体としての憲法の他に各州独自の州法をもつことができます。
 北部を中心に発展しており、特に『港湾都市アスフィリス』は商業、金融においてカーカバートに並ぶ都市に成長しつつあります。また、見識ある経済学者の意見を取り入れて、革命以前からも大規模な干拓を行ったりと、貿易だけではなく国内産業の発展にも力を注いでいます。


18.ユノス

 この国では3年前に軍部によるクーデターが起こり、一時的に軍事政権による政治が行われました。しかしクーデター後の混乱と領土エストルークの独立によって国民の信用を失い、後に民衆の蜂起をまねいて、この軍事政権は例を見ないほどの短期間で崩壊することになりました。現在は穏健派による近代的な政党政治が行なわれています。
 聖暦789年の現在は、動乱期にある国際状況に対して国民の意識が再び軍事に傾き、軍事推進主義の急進派が支持を増やしています。こうした中、過去の民衆蜂起の際に逃亡した将校たちが、再び軍事クーデターを企てているとの噂があります。首都の郊外にある『クラリール監獄』には多くの将校たちが投獄されていますが、もしこれが解放されて、地方に強い影響力をもつ旧将校たちが短時間で組織をまとめることができたとしたら、革命の成功は時間の問題となるでしょう。


19.ソファイア

 絶対王政であり、中央貴族と教会の力が非常に強い国です。『タイレル4世』が現在の国王ですが、彼は無能な支配者の見本のような人物で、腐敗した社会の象徴とも言えます。宮廷の浪費と富の蓄積は産業改革の妨げとなっており、旧態依然とした工業は衰退の兆しを見せています。これに反発して行動を起こしたのが、マイエスルッツ州を中心に活動している『貿易王イリオ=ガトラスゥム』です。彼によって霊子機関が導入されたことで、この州の産業は飛躍的な発展を遂げることとなりました。しかし、この改革運動は王家、教会、そして古くからある同業者組合のすべての方針と逆に位置づけられるものであり、いずれ力への闘争へと移行するのは誰の目にも明らかです。


20.ロンデニア

 大陸の西にあり、西海に面している島国です。立憲君主国であり、上下院による『二院制』の政党政治が行なわれています。非常に犯罪が多く、特に麻薬対策に政府は頭を痛めています。
 この国は古くから海へと目を向けけており、海軍の実力はエルモア最強とまで評されています。霊子機関の導入も早い時期に行われ、聖暦786年には西海の横断に成功し、『新大陸エスティリオ』を発見することとなりました。そして昨年には、入植を目的として5隻の船をエスティリオへ送り出し、現在は国中が新大陸ブームでわきかえっています。しかし、同じく入植を開始したエリスファリアとの間で、小規模ですが海戦が行われるようになっています。さらに、周囲の国際状況はロンデニアにとって不都合に働いており、ライヒスデールとフレイディオンの軍事同盟、カイテインの南方政策と衝突するだろうことは明らかです。いずれ植民地間題に絡んだ大規棋な戦争になるのではないかと、はやくも懸念されております。


21.セルセティア

 エルモア地方の最南端に存在する島国で、セル人(黄人)とセティア人(白人)が住んでいます。かつては連邦制でしたが、現在では国土を南北に分裂する争っています。これは21年前にセル人を主体としているマイエル教のラハト派が改革を唱え、民衆の生活や政治にも干渉するようになったことが原因です。内戦は現在もまだ継続中で、多人数のセティア人に対して、北島に住むセル人が独立戦争を仕掛けている形になっています。


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