外壁
都市の多くが壁で囲まれているのは以前にも書いた通りです。これは外敵の侵入を防ぐもので、レンガや石などが高く積まれています。外壁には見張り塔があり、その上は兵士たちが歩けるように通路になっています。壁の上部には凹凸があり、隙間から除いたり銃を撃つことが可能です。もっとも、現在では都市を攻略するためには大砲を使うのが当たり前となっており、防御する側も外壁の上に砲門を構えているのが普通です。
入口となる門は最も重要な守りの場であり、都市の窓口でもあります。かつては衛兵が守りについていたのですが、現在は人口も増えて出入りする全ての人をチェックするわけにもゆかなくなり、通常はフリーパスとなっています。しかし、戦争やその他の有事に備えて、近くには衛兵の詰め所が設けていることが多く、何か起こった場合にはすぐに駆けつけられるようになっています。近代都市ではこれは警察の役目です。
しかし、戦時中ともなれば門の警戒は厳重で、出入りには身分を証明するものが必要なこともあります。それから、逃亡奴隷や犯罪者が忍び込むこともあり、手配書がまわっている場合は変装して都市へ潜り込むこともあるようです。このように危険をおかしてまで都市へ入り込もうとするのは、やはり都市が安全であることと、大勢の人に紛れることができるためでしょう。何らかの理由で都市が閉鎖されていても、非合法に入り込む方法は幾つかあります。しかし、余計な騒ぎに巻き込まれたくなければ、正当な手段で中に入るべきでしょう。それが不可能な場合は、裏組合の力を借りたり、地下墓地や下水道を利用して潜り込まなければなりませんが、危険を覚悟しなければならないのは言うまでもありません。
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城と宮殿
都市の中には、城を中心としてつくられたものが多くあります。城は王や貴族が住む権力の象徴であるという点では宮殿と同じですが、実際の戦争に備えた要塞でもあります。城は城壁や堀で囲まれており、外敵の侵入を拒みます。橋を通らねば入れない場合も多く、籠城する時は橋を落としたり跳ね橋を上げて相手の侵攻を防ぐことができます。城壁には見張り塔がついており、敵をいち早く発見できます。また壁には銃眼があり、そこから敵を銃や弓で撃ったり、岩を落としたりして壁を登ってくる敵を防ぐことも可能です。美しい中庭も工夫が凝らされていて、キャット・ウォークと呼ばれる細い通路をあしらった生垣は、侵入した敵を迷わせるためのものです。
このように城というのは政治的な中心であるとともに、軍事的な拠点でもあります。ですから、居住空間というよりも軍事や行政に重きを置いて設計されています。武器庫や訓練場、衛兵の詰め所などが設けられており、常に衛兵が城内はもちろん城外も警備しています。
政治に必要な施設としては会議室や執務室、または客を迎える応接間や謁見の間などがあります。それから、宴や儀式を開くための広間も重要です。もっとも、近年では議会政治へと政治形態が移行しており、政治的にはまるで意味をもたない城も増えてきました。そういった場合でも、砦として機能しているものも多くありますし、中には観光地として公開されている場所もあります。なお、多くの城には秘密の空間があります。もしもの時のために秘密通路が設置されているのは当たり前のことであり、これは公然の秘密とされています。秘密通路は下水道などに通じていますが、正確なことを知っているのは城主とその家族、および側近のみです。以前に革命が起こった際に、秘密通路から逃げ出した貴族が捕まり、処刑されるということがありました。これは城を設計した建築家が秘密通路の所在を明らかにしたためです。
城の地下というのも非公開の場所で、地下牢として使われていることがあります。ここは普通の犯罪者ではなく、政治犯や密偵などを入れておく場所で、もちろん拷問部屋も用意されています。とはいえ、これも三権分立の近代政治に移行した国家では、意味を持たない空間へと変わってしまっています。城は国境に近いものほど砦としての機能が強まり、国の内部へゆくほど宮殿としての面が表に出されます。実際、宮殿と呼ばれるものは軍事面を除いた城なのです。華美で優雅な建築は権力の象徴であり、国内の安全を示すものでもあります。毎夜のように繰り広げられる宴も、その国の豊かさを表わしているのです。宮殿として建築されたものには、別荘であったり、側室を囲うための後宮として利用されたりしています。非常に優雅なのですが、民衆から見ればそれは税の無駄遣いであり、ともすれば憎しみの対象ともなります。
繰り返すようですが、城というものはあくまでも封建的社会のものであり、近代政治の場としては過去のものとなっています。ただし、貴族の居城として現在も生活の場となっていますし、前線の城塞は今も戦争に利用されているのです。
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