衣食住

服装食事住居


 

服装


 エルモア地方では服装によって各々の身分や職業を大雑把に見分けることができます。知識人階級や知的労働者と呼ばれる人々はスーツに身をつつむことが多いようです。紳士と呼ばれる人たちや上流階級の人間は、それに加えてステッキを手に持って歩きます。まだまだ物騒な時代ですから、この中に剣や改造拳銃を隠したりする場合もあります。
 これに対して肉体労働者は実用的な服装を好みます。肉体労働者は服装ではっきりと職業がわかるように、それぞれの職業団体のマークやバッジを服の胸ポケットや袖につけている場合がほとんどです。服装というわけではないのですが、水夫や鉱夫といった者たちは死んだ時でも身元がわかりやすいように、刺青をしている者が多いようです。こういった習慣は実用的な意味あいから、痛みに耐える忍耐力(=強さ)を誇示するために変わりつつあります。

 男性の着衣は主にズボンとシャツといった簡単なもので、都市であればこれにスーツやジャケット、それにネクタイがつきます。最近では都市の若者を中心に、麻のジャケットにニットタイというファッションが流行りつつありますが、こういったスタイルはまだまだ軽薄に見られがちです。髪は特に決まった型はありませんが、あまり長くしているとだらしなく見られます(特に農村)。最近、髪を短く刈り込む若者を見かけるようになりましたが、これは流行りではなく軍でそのように規定していることが多いためです。
 女性は肌を隠すような服装が多くなります。夏でも上は半袖になるのですが、下はロングスカートというのが普通でした。しかし最近の風潮として、若い娘の中には肌の露出する服装を選ぶ者も現われつつあります。髪の毛も肉体労働者以外は長くのばして結いあげているのが普通でしたが、近年では短く切ったりおろしたりする人が増えてきました。また、昔はペチコートというスカートをふくらませる下着が用いられていましたが、これも動きにくいという理由によって、近年では貴族だけの習慣になってしまいました。

 これらの(特に女性の)ファッションの変化は、冒険者と呼ばれる流れ者たちの影響を受けてのことです。最近では、主に冒険者を中心としてゆったりとした格好が流行するようになりました。人々はこれを『ルーズ・ファッション』と呼んでいますが、これには賛否両論さまざまな意見があります。こういった服装は、そのだらしなさと飾りがやたらと多いことから、『バタフライ・ファッション』とも呼ばれています。年輩の人たちはこういった服装を非難がましい目で見ますが、新しいもの好きの若者は積極的にこれを真似しています。また、女性でも襟ぐりの広い服や袖なしの服を着るような者もいることから、世のおじさんたちの中にもこれを歓迎する人が増えてきています。

 冒険者たちは他人の真似をしないところに価値観を見いだすようで、非常識といえるほど奇抜なファッションをしている者も見かけます。これには客の目を引きつけるという効果もあるようです。しかし、こういった服装は休みの時だけのことで、仕事の際にはきちんとした動きやすい服装に着替えます。


○その他の用語

・クラレンスカール
 悲劇の主人公クラレンスの芝居が流行したことがきっかけで、最近見られるようになった女性の髪型です。ウェーブぎみのゆるい縦ロールをリボンでまとめあげるもので、何種類かのバリエーションがあります。

・エプロンドレス
 小さな女の子が着る服で、初等学校を出た頃から段々着ないようになります。逆に、エプロンドレスを着ているということは子供の証明であり、大人びた子供たちはこれを嫌がる傾向にあります。

・ベレー帽
 山高帽などが主流でしたが、近頃はベレー帽をかぶる人たちをよく見かけるようになりました。これは男女兼用で、女性が更に社会に進出して男女の差がなくなってきた証明でもあります。

・バタフライドレス
 袖の内側に飾り布を縫いつけたドレスを総称していいます。最近の流行で、袖口をしぼって上をふくらませている普段着などもあります。特にライラックカラーのものが人気のようです。


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食事


 エルモア地方ではパンが主食の国が多く、それぞれの地方で収穫される麦の種類によって様々なものが存在します。ごく普通の形をしたパンもあれば、薄く焼いた小麦で他の食材を包んで食べるような料理もあります。他に主食となるものにはパスタ類や米、あるいはトウモロコシやジャガイモなどがあり、地域によって特色が見られます。
 昔は野菜を煮込んだシチューが副食として多かったのですが、近年になって森林を伐採して牧場を開拓したことから、牛や羊や豚の肉が食卓に出ることが非常に多くなってきました。昔は肉といえば野鳥や猪、あるいは鹿や熊の肉がほとんどでしたが、現在ではすっかり様変わりしています。とはいえ、都市を離れればこういった風潮はまだまだ健在で、中にはその地方独特の動物の肉を使った料理を見ることもあります。
 最近は大量輸送が可能となったため、他国の食材もかなり手に入りやすくなってきました。珍しい材料を使った料理も様々考案され、昔に比べて食卓は随分とにぎやかになっています。特に、ペルソニア大陸の植民地でサトウキビの栽培が行われるようになってから、甘いものが人々の口に入る機会が増えています。町中を歩いていても、砂糖をふんだんに使ったお菓子を売る屋台などが目につくようになりました。


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住居


 昔は一戸建ての家に家族全員が生活しているのが普通でしたが、人口が増加してくるにつれてアパートや公営の集合住宅などが多くなってきました。これは城壁で囲われて土地面積が決まっており、建築物が高くつくられるようになった都市で顕著な傾向です。現在は3〜5階くらいの高さの建物が普通ですが、時間と資金さえ十分にかければ、大教会のような数十mにも及ぶ建築物を建てる技術はあります。
 建物の高層化の背景には、科学技術の発達や社会構造の変革によって生活様式が変わり、都市へ人口が集中しているという事情があります。特に工場では人手を欲しており、こういった新しい職を目指して、農家の次男や三男たちが都市に集まるのです。

 都心部を離れると一軒家が多くなり、昔ながらの建築がよく見られます。あまり大きくない町や中央から離れた集落では、自分の家は自分で建てるという風習が一般的で、大工のような職業はあまり存在しません。
 住宅の建築材としてよく使われているのが石で、近くの石切場から運んできたものを使います。最近では、農地や牧場の開拓とともに森林の伐採が多く行われるようになっており、こうして伐られた木材も多く利用されています。特に黄人は木材建築の家を好みます。他にペルソニア大陸のような暑い地域では、日干しレンガが使われるようなことが多いようです。


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