都市国家半島


 


○自然

 多数の都市国家が、『アリアナ海』(アリアの海)に突出するプルトニカ半島に存在します。この半島は北部をラスアルネフ山脈が走り、中央部は火山帯にまたがっています。たとえば、ワイプスギールという都市は火山のつくった天然の要害に守られています。
 気候は南北で大きく異なりますが、全体として温帯に属します。南部はアリアナ海型気候で、夏期はほとんど雨は降らず、冬期は温暖で降水量は多くなります。北部では夏期に降雨があり、山脈で寒波が防がれるため冬期は温暖になります。


○変異

 この地で起こる『水晶化現象』は、非常に民衆に恐れられている現象です。春の初めに海上に無数の真紅の炎が漂い、それに触れた者は水晶の像となってしまうのです。陸にまで現われることはほとんどないのですが、一度だけ大規模な水晶化現象が起こり、1つの都市が滅亡することになりました。ベリラーナの北にあったこの山間の都市は、現在では『水晶峡』と呼ばれています。この事件があってから、人々はあまり海辺に街をつくりたがらなくなりました。貿易時代に穏やかな内海に面した最高の立地条件にありながら、なお小規模の都市国家のままでいなければならないのは、人口の少なさだけではなく、この現象が大きな要因を占めます。
 また、この現象のため船乗りたちの祝日は古来より春と決まっており、この時期には都市単位で大きな祭が開かれます。特に有名な祭が『水上都市ナニーナ』の『仮面大祭』であり、この日は街中の人々が魚の顔を型どった面を被って祭を盛り上げます。


○略史

 かつて中央地方を支配していた『ラガン帝国』の領地が、公国や独立都市となってこの地方に残ったのが、これら50以上の都市国家群です。このうちの大半は民族性の違いなどから、勢力はありながら帝国から疎んじられた存在で、有力貴族の領地として存在していました。この有力貴族というのが現在の『中央七都市』と呼ばれる都市であり、これらが周囲の小都市国家を支配していたのです。
 しかし、今より27年前に中央地方で謎の爆発事故が起こり、ラガン帝国は結界の向こう側へと閉ざされてしまいました。こうして後ろ盾を失った7つの有力都市に対して小都市国家は次々と反旗を翻し、大半は独立を勝ち取ることに成功しました。この後、各都市はそれぞれ独自の政体を模索しながら現在に至っています。
 こういった経緯があるため、都市の在り方はそれぞれで全く異なります。独立後も領地間題などで小競り合い程度の争いはいくらかありましたが、もともと大きい都市でも数万という規模のため、大きな戦乱とはなりえませんでした。


○制度

 都市によって様々な政治形体があります。評議会が政策を決定する都市もあれば、国王の独裁政治という国も存在します。小都市には直接民主制で国政を行なう国もあります。


○現況

 現在はマイスブルク、エラン、フェンドレス、ステーシア、アンドレイク、ハプトクレイス、ワイプスギールら、『中央七都市』と呼ばれるかつての有力都市の連合体が勢力を伸ばしています。周囲の都市国家よりも他国の勢力に対抗するために結ばれた同盟であり、軍事のみならず、貿易や技術開発などの面でも協力体制をとっています(もちろん、独自の秘密はもちますが)。
 この連合体制の実現を可能にしたのは『メディル=ヴァストーン』と名乗る青年で、本名を『メーティス=サイアル=ラガーナ』といいます。この名前から想像がつくかもしれませんが、彼は崩壌したラガン帝国の『最後の後継者』なのです。この七都市は協力体制をとり、メーティスを擁立して国家を再建しようとしているのです。もちろん、それぞれの目論見はあるのですが、メーティスの人格に傾倒しているのも事実です。


○民族

・マステュス人
 黄人系民族ですが、巻き毛の者が多いのが特徴です。
 全体的に白人の顔立ちに近いため、混血の一族ではないかと考えられています。

・ソロン人
 もともとはアニスカグナ地方に住んでいた黄人です。
 琥珀色の瞳と、彫りの深い顔立ちが特徴的です。

・その他
 様々な黄人民族が混在しています。


○宗教

 多くはマイエル教を信奉していますが、中には法教会の教えを受け入れている都市もあります。
 変わった宗教を信仰しているのが、『ベリラーナ』という都市です。ベルモア人という単一民族の国家であり、彼らは民族独自の神『シュラバナ』を崇めています。彼らはこの神の加護として、全ての人が魔術を使いこなします。


○要所

・パナケア山
 半島のほぼ中央に位置する火山で、現在は活動を休止しています。

・地下道都市ラクシェル
 ソロニア北部の山中にある非常に変わった都市で、断崖を縦横に走る地下道そのものが都市として機能しています。かつてラガン帝国を追われた人々が逃げ込んだ場所で、入り口はそれほど広くありませんが、少し奧に入ると数千人が暮らせるほどの大きな空間が広がっています。中には川も流れており、上下水道も整備されています。垂直に上に掘った穴からは太陽光が入るように設計されており、農作物の栽培もされています。

・灰の街
 聖暦433年にパナケア山の噴火があり、エルモア全域で冷害が続き、多数の餓死者が発生するということがありました。この時に灰の中に沈んでしまったのがこの街で、かつての貴族の財宝が埋まっているといわれています。

・シダ林
 ワイプスギールの南に広がる、大型のシダ植物が生えている不思議な湿地帯です。


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