一般の娯楽
一般的な娯楽としては書物や観劇、音楽といったものがあります。
印刷機械が開発されてから書物は急速に普及し、貸本屋などといったものも現れるようになりました。また、新聞も大量に発行されるようになり、イエローペーパーといわれるゴシップを中心とした通俗紙も販売されています。ロンデニアの新聞王クレスト=フェラードは、こういった通俗新聞の発行で一財産を築き上げました。こういった風潮もあって、最近の若者では小説家や新聞記者を将来の職業として希望するものが増えてきました。
観劇はオペラのような大がかりなものから、大衆劇場のような街の小さな劇団が行う芝居まで、様々な種類のものが楽しめます。また、大通りや公園では大道芸人やサーカスの一座が芸を披露しており、退屈をしばし忘れさせてくれます。
音楽も大きな楽しみの1つで、オーケストラの荘厳な調べもあれば、大衆酒場の歌姫の可憐な歌声や吟遊詩人の古い物語など、様々なものが存在します。歌は楽しみだけでなく、人々の心の支えになったり、歴史を伝える役目なども担ったりもします。奴隷の娘たちが糸紡ぎの時に自らを勇気づける歌もありますし、古い歴史を伝える歌も数多く残っており、特に青年識字率の低い辺境地域では貴重な文化資料となります。
歌といえば、最近では黒人女性歌手『フォルテ』の歌が非常に話題を呼びました。フォルテは奴隷解放戦争の真っ直中にあるカルネア南部に生まれた奴隷であり、その最初の歌は北部への逃亡の途中で戦いに巻き込まれた自分の体験を歌ったものでした。その出だしは「母のかけらを拾った。それは手のひらだった」という衝撃的なもので、彼女の哀しい歌声はカルネア北部の白人たちに改めて奴隷問題について深く考えさせ、黒人たちの戦意を奮い起こしました。その他の楽しみといえば、博物館や美術館、あるいはスポーツ、カードゲームなどが上げられます。少年たちのスポーツに興じる姿は町中でもよく見かけます。対して女の子たちは、誰かの家に集まってパッチワークや刺繍などをしながらお茶やおしゃべりを楽しんだり、占い小屋で恋占いをしてもらい、その結果に一喜一憂するといった感じです。
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大人の遊び
大人たちの娯楽は、やはり酒と賭事、そして女遊びといったあたりでしょうか。いわゆる飲む、打つ、買うというやつです。
酒場には大衆酒場のような安酒を出すような場所から、高級なワインをオーケストラの演奏つきで楽しめるような場所まで、様々なものがあります。一般の人は大衆酒場でビールやワインを飲んで、歌姫の歌や大道芸人の芸を楽しむのが普通です。中にはパブと呼ばれる、家族で訪れる地域の社交場のような酒場も存在し、子供から老人までゲームで楽しむことができます。
博打といえばルーレットやカードなどがありますが、法律で禁じられている国もあるので、旅先では特にこういったことに注意しなければなりません。大きな街では、競馬のような大がかりな賭博も行われており、人々の心を熱くさせてくれます。女遊びがしたい人は、いわゆる歓楽街と呼ばれる場所にゆけばよいでしょう。一般市民が入れないような高級店もありますが、普通はそこそこのお金があれば一晩楽しむことができます。売春宿は一般に娼館といいますが、花屋という隠語で呼ばれることもあります。娼館で働く女性も同様にサクラの少女と呼ばれることがありますが、これは早い時期に散ってしまうという意味の皮肉だと言われています。
娼婦たちの中には、高級娼婦と呼ばれる特別な存在がいます。高級娼婦を囲うことは貴族や政治家たちのステータスシンボルであり、よくパーティや観劇などに同行させたりしています。高級娼婦はかなり自由な立場にありますが、逆に鑑賞奴隷と呼ばれる存在は人としての権利も認められていません。いわば高価な置物のような扱いで、同じような役目を負っていながら高級娼婦とはまったく対照的です。
風俗関係の店のほとんどは裏組合(盗賊ギルド)やギャングが関わっており、縄張り問題には非常に厳しいようです。娼婦や男娼たちは、普通はどこかの娼館に属しています。街娼と呼ばれる者もいますが、こういった人たちも組合に場所代を払っているのが普通です。モグリの者は処罰され、二度とその界隈で仕事ができなくなります。
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その他の娯楽
数々の娯楽のうちで最大のものは、なんといっても各地で開かれる祭でしょう。祭は老若男女のすべての人が楽しめる一大イベントで、地域単位や宗教単位で催されます。聖母教会の降臨祭や聖誕祭はエルモア地方でも最大級の催し物で、朝から派手な花火が盛大に上がります。他にもブドウの収穫祭である紫祭や雪人形祭、あるいは蝋燭祭といった有名な祭には、わざわざ遠くから旅人が訪れてこれに参加します。特に有名な地方祭が、都市国家半島の南に位置する『水上都市ナニーナ』の『仮面大祭』です。この祭では街中の人々が魚の顔を型どった面を被って、その出来の良さを競います。
娯楽からは外れてしまうかもしれませんが、最近は麻薬に関する問題が各国で取りざたされています。特にロンデニアでは、ギャングの勢力拡大につれて麻薬問題は深刻になっており、つい先だって国会でも討議された課題の1つです。これには植民地の拡大という背景があり、ペルソニア大陸で栽培された新型の麻薬が密輸され、ギャングを通じて各国に出回っているようです。
○その他の用語
・ウォールスマッシュ
手に木製の小さなラケットをつけ、地面に落とさないようにしながら壁を相手にボールを打ち合うゲームです。ボールを落とした者が負けとなります。何人でも遊ぶことができ、壁があればどこでもできることから、町中でよく子供たちが遊んでいるのを見かけます。地域によっては壁打ちボールやハンドスマッシュとも呼ばれることもあります。・フットバスケット
ボールを足で蹴って相手側の陣に運ぶゲームです。キーパーにあたるものは存在せず、ボールを地面に置いたカゴに入れるとゴールとなります。・ブラックカード
コイン大のブラック・カードと呼ばれる小さなカードを使う遊びです。絵や数字を揃えて決まった組み合わせを作り上げ、その組み合わせによって点数を競います。・占い
夢占い、花占い、水晶占い、カード占いなど、地域によって内容は異なりますが、こういった占いはいつの世も少女たちに人気があるものです。・流行歌
「グラスベリーを君に」「星屑夜曲」「蒸気船のかなた」「いつかきっと」「ティーポット・ドリーム」「ラビンツェロ」「自由の口笛」「僕が死んだ後で」「たったひとつの恋だから」など・舞踊
ロンド形式やフォークダンスのような踊りが祭りでは行われます。上流階級では社交ダンスが行われ、紳士淑女のたしなみとされています。・歌劇
歌劇には政治色やその時の風潮のようなものが反映されます。「仮面の夜」:仮面紳士事件をアレンジした怪作です。ロンデニアで上演されています。
「難破船」:ラチェン人が主人公の民族問題をテーマにしたものです。
「踊る炎」:精霊との出会いから別れまでを描いた恋愛劇です。戦争の中での美しい愛を語る、セルセティアの作品です。
「奇妙な系譜」:貴族を中傷するような内容の劇で、ルクレイドで上演されています。・詩吟
ムーンストーン・サガ:吟遊詩人の古い歌で、大変異現象以前の神々の物語です。
完全なる星の物語:遥か遠くの神々の住まう星の歌です。差別や苦しみなどが一切ない、完全なる楽園の物語を歌い上げます。・書物
「たとえば私はかすみ草」:カルネアで発売された奴隷と貴族の恋物語です。
「傾いた鐘楼殺人事件」:名探偵ラングリット=バイター氏による実録の推理もので、ロンデニアの昨年のベストセラーとなりました。
「愛しのアデリーヌ」:農村での恋物語で、ラストは少女の病死で終わる悲劇です。
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