異次元
現実の空間とは次元の異なる空間を、エルモア地方の人々は『異次元』と呼んでいます。現実世界と同様に3次元の空間なのですが、現実世界とはもう1つの軸が平行であり、同じ空間にありながら決して交わることはありません。これは旧科学魔道文明の時代に発見された平行世界と同じ概念の空間なのですが、異次元と呼ばれるものには人工的につくられた空間も含まれます。
平行世界として発見されたのは、『星界』(スター・ワールド)と『狭間』(虚空界)と呼ばれる2つの世界でした。このうち、狭間と呼ばれる空間は『虚粒子』と呼ばれるマイナスの存在で満ちており、物質が消滅するという現象が起こるために、これを利用することはできませんでした。この2つ以外の平行世界は、実はほとんどが人間の手によってつくられたものです。このような空間を、旧科学魔道文明の人々は『仮想空間』と呼んでいました。
仮想空間としてつくられたものには、現在でいう精霊界、魔界、天界などといった空間があります。これらの異次元は、もともと兵器の格納庫として設計されたものです。そのため、実は1つだと思われているこれらの空間は、企業ごとに異なる位相に設置されています。召還術に含まれる術法というのは、これらの空間を開閉するためのパスワードのようなものです。精霊使いが精霊を召還する時、精霊の種類ごとに呪文や身振りを変えるのは、伝承されてきたパスワードが違うため、つまりそれぞれ別の企業で開発された霊子生命体兵器を召還しているためです。
なお、これらの仮想空間は、大変異現象の際に空間ごと変異の影響を受けてしまいました。ですから、これらの空間に格納されていた擬人兵器や霊子生命体兵器は、現在はプログラムが解除されたり暴走状態に置かれているため、過去の使命を忘れて人間に敵対することもあるのです。
変異現象は既存の空間に影響を与えるだけでなく、仮想空間をつくってしまうこともあります。有名なのが『妖精界』と呼ばれる空間で、これは人間の想像がつくりだした、まさにおとぎの国ということができるでしょう。この他にも、鏡の中に平行世界が存在したり、あるいは小さな石の中に一国に匹敵するような空間が広がっていたりすることもありますが、これらは変異の影響でできたものがほとんどです。エルモア地方ではありませんが、雲に周囲を覆われた仮想空間に人間が閉じ込められてしまい、そこで独特の文化を形成して暮らしているような場所もあります。内部の人々はその世界のことを『雲界』と呼んでいます。
ある種の術法を使用すれば、仮想空間と行き来することができるようになります。しかし、こういった術法を使いこなすには高度な技術を必要とし、また使用できる者も現在ではあまり残っておりません。
キャラクターたちが異次元と遭遇するとすれば、変異によってできた『ゲートポイント』という場所を通じて接触することになるでしょう。ゲートポイントとは、簡単にいえば異次元に繋がっている門のことです。神隠しと呼ばれる現象は、この門を通じて異次元に入り込んでしまったことをいいます。
こういったゲートポイントのうちでも有名なのは、エストルーク連邦国家の水原に存在する『暗き沼』と呼ばれるものです。この門につかまるとどこに飛ばされるかわからないといわれますが、実はこの一帯に多数のゲートポイントが集中しているだけです。1つのゲートは1つの平行世界にしか通じていません。
なお、平行世界のうちでも謎が多い狭間(虚空界)ですが、エルモア地方にはこれに通じるゲートは1つしかありません。この狭間への入り口は聖月教団によって守られており、代々のクローン体が守護の任を受け継いでいるようです。この守護者のことを特に『守人』と呼んでいます。