この世界の生物学は他分野に比べて大きく遅れをとっています。それは主に変異現象が原因であり、それによって生まれた変異体という存在によって、本来あってもおかしくない学説が存在しなかったり、あるいは現実にはとても考えられないような仮説が信憑性を持っていたりするのです。
○進化について
エルモア地方では、どの国家においても宗教機関の影響が強く、生物は神の創造物であると信じられています。また、変異体のために系統だった分類がまともに行える状態ではなく、進化という概念を唱えるものさえごくわずかしか存在しないのです。こういった理由から、この地方では進化論はまともに相手にされておりません。
進化論が発展しないもうの1つ大きな要因に、化石が殆ど存在しないということがあります。惑星自体が新しいためか、地層そのものもあまり古いものはあらわれず、古代人類の骨などは一度たりとも発見されたことはありません。その一方で、ユークレイで発見された細胞石のような、無機構造物でありながら生命活動に酷似した反応を示すものが発見されたりと、まだまだ分類や進化といったものを扱う学問分野には混迷の時代が続きそうです。
○古代生物学者
化石などの発見が少ないからこそ、それは貴重な資料と成りうるものです。ですから、古代生物学者は化石を求めて奔走し、時にはこれに高額の賞金をかける場合もあります。また、数年前にペルソニア大陸の地層から、ゾウに似た生物の化石が数十体も発見されたことがあり、第二の発見を夢見て大陸へと渡る学者も増えているようです。
○新大陸
新大陸で発見された動植物には、エルモア地方には存在しない種が多数含まれていました。また、トカゲ竜と呼ばれる恐竜に似た生物が発見されたという報告もあり、新大陸への渡航を望む生物学者もあらわれています。また、これらを見せ物にするために捕獲したいと考える業者も存在するようです。
○微生物
光学顕微鏡は既に存在しておりますし、酪農産品や酒類の発酵に微生物が影響していることも既に知られています。また、医師は雑菌の混入を防ぐために消毒を行いますし、感染症にほこりや微生物が影響するという知識もあります。
しかし、染色などによる分類・同定といった手法は発達しておらず、培養技術もまだ未熟であることから、産業の一環として有用微生物を利用することはできません。一般人に至っては、細菌が影響を及ぼすということ自体をよく理解しておらず、場合によっては変異現象や悪魔の仕業と勘違いすることさえあるのです。
また、専門家でさえウイルスに関する知見はまったくなく、もちろん対処法や治療薬は発見されておりません。こういった理由から、一部の病気については悪魔の呪いであるという迷信が未だ深く信じ込まれています。
○保護活動
人間社会の発展にともない、絶滅の危機に瀕している野生の動植物は少なからず存在します。自然主義者と呼ばれる人たちがこれに対抗し、自然の大切さを説いて回ったり、時には過激なテロ活動に走る場合もありますが、生物学者たちの中にもこれを由々しき問題としてとらえ、社会に強く保護を訴えることもあります。
こういった主張が身を結び、一部の地域では保護活動が活発になされたり、保護地域として猟の制限が行われるようになってきました。しかし、これはあくまでもごく限られた場所だけの話であり、殆どの国家では進歩と開発が最優先事項とされているのが現状です。また、人間に害を与える変異体の場合は保護を訴える者もおらず、絶滅させるための狩りが続けられています。
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