○産物
木材、雪綿、綿織物、岩塩、楽器、ジャガイモ
○文化・生活
カルネアの代表的な文化といえば、何よりも音楽があげられるでしょう。この国独特の楽器は多く、カルナホルンと呼ばれる角笛や、蹄鉄から生まれた口弾き琴(マウスハープ)と呼ばれるものなどがあります。また、酒場には必ず歌姫がおりますし、古来の伝承などもそのほとんどが歌で伝えられてきた国なのです。吟遊詩人たちは未だに国中を旅し、昔ながらの歌を披露しています。国内にはたくさんの歌劇団があり、特に『北方歌劇団』はエルモア中でもトップレベルの実力を誇ります。
この歌文化は、思わぬところで歴史に関わっています。聖暦655年には人権革命が起こり、王制が打倒されることとなったのですが、この革命側の連絡事項は密かに歌に織り込まれて伝えられていたのです。こういった史実があるため、南部の奴隷所有者たちは奴隷たちに歌を禁じています。
現在の北部では、南部から逃亡を果たして自由黒人となった『フォルテ』という女性歌手が、非常に人気を博しています。その歌の多くは南部の奴隷たちの悲劇や自由への願いをテーマにしたもので、黒人志願兵たちの士気を高めています。また、南部の奴隷たちの間でも禁じられているはずの歌がひそかに歌われており、特に『街風ロンド』という歌は反奴隷主義の象徴ともなっています。
○食事
岩塩の産地であることから、塩気の多い食事をとります。その反動で高血圧の人が多く、他国に比べて平均寿命がいくらか短いようです。
南部では鳥肉がよく食べられており、鳥肉に油と塩を練りこみ、それをオーブンで焼いて、レバーや野菜をワインで煮込んだソースで食べるという家庭料理が、よく食卓に出されます。また、主要作物であるジャガイモも家庭料理にはふんだんに使われ、鳥のイモ詰め焼きや、酢漬けのジャガイモなどが好まれます。北部に特徴的な食材は、イワエビという岩場で釣れる大型のエビで、イワエビとカブの薄煮やエビ入りキッシュパイなどの料理があります。
○組織・集団
・地下鉄道
南部から奴隷の逃亡を支援する地下組織で、係留点と呼ばれる教会や家などがあります。・黄昏の傭兵団
エルモア中を旅して回るプロの傭兵たちで、現在は北軍に手を貸しています。術法を使った集団戦闘を得意としており、南部は彼らのことを死神と呼んで恐れています。ダークヘッド、サンセットヒル、スティンガーなど、その多くのメンバーは本名や過去を隠しています。・黒豹隊
黒人志願兵で構成された部隊で、南部侵攻の尖兵として組織されました。
○人物
・ウェイリンク 62歳 男
カルネア国民党に所属する国会議員で、奴隷解放推進派の筆頭ともいえる人物です。彼が大統領に選出されたことが、南部と北部を二分させるきっかけとなりました。・フォルテ 31歳 女
自由黒人の1人であり、エルモア中に名を知られている歌手です。逃亡時の体験からつくられた歌は、北部の人々に非常に影響を与えました。現在は軍を慰問したり、政治集会でデモンストレーションを行ったりと、非常に忙しい毎日を過ごしています。・ユリアン=シルファモーネ=コーネリアス 17歳 男
逃亡奴隷虐殺事件で生き残った白人の青年で、現在は北部で生活しています。貴族の跡継ぎだったのですが、奴隷反対主義に傾倒して赤人の少女ステラと駆け落ちを試みました。父親が貴族であるだけでなく、母方の祖父が南軍の将軍であることから、非常に注目される立場にあります。・ステラ=ノースポーリア 15歳 女
赤人の少女で、ユリアンとともに虐殺事件に巻き込まれました。顔の右半分には火箸で殴られた火傷の痕があり、右目は潰れてしまっていてものを見ることはできません。現在は母親としての仕事におわれているようです。・メリーアン=マ−スリー 0歳 女
逃亡奴隷虐殺事件で生き残った赤子で、南部の追撃隊の砲火の中で生まれた赤人の子供です。母親は銃弾を受け死亡してしまったため、現在はユリアンとステラの子供として育てられています。・イライアス=ハルト 56歳 男
カルネア国民党の党首。ウェイリンクのような奴隷制反対主義というより、その目的は民主共和党の打倒にあるようで、彼にとって奴隷制度の撤廃は南部打倒の口実に過ぎません。祖父が南部の小作農家の出であり、その苦労を目にしていたことが、彼の思想に多大な影響を与えたようです。・リッツェ 31歳 男
昼コウモリと呼ばれている情報屋で、普段は薬屋の主人として生活しています。術法師としての力を使って、北部の動向を南軍に知らせています。・メイリン 39歳 女
地下鉄道組織のうちの1人で、黒人女性です。逃亡奴隷の逃がし屋として最も有名な人物で、南部では指名手配になっています。・レイシーズ 44歳 男
地下鉄道組織のうちの1人で、主にサイフォス川の川渡しをしています。白人ですが、積極的に奴隷廃止運動に参加しています。・ポッツニール
『解放者宣言』という名の新聞の記者で、黒人たちの思想的なリーダーです。逃亡奴隷の1人であり、現在は自由黒人として活動しています。・オリベイア
カルネア交響曲の父として知られる有名な作曲家です。その曲の素晴らしさもそうなのですが、片腕の音楽家ということが彼の名を広めるきっかけとなりました。
○奴隷解放戦争
昨年の夏に南部からの逃亡奴隷が軍隊に虐殺されるという事件が起こりました。かつてから奴隷の逃亡を助けていた『地下鉄道』と呼ばれる組織の導きで、約千人の奴隷がホールレラント砦への逃亡を企てようとしたのですが、計画が事前に何者かの手によって南部軍に知らされ、砦の手前の町レイクスノアでほぼ全員が虐殺されるということが起こったのです。かつての人権革命の英雄の孫であり、地下鉄道の中枢で働いていたカルシェという青年もこの事件で死亡し、辛うじて逃げ延びることができたのは白人の少年と赤人奴隷の少女、そして生まれたばかりの赤人の赤ん坊だけでした。この少年というのが南部のアイアソール州の知事の息子であることと、そして事件のあまりの残酷さに北部の人々は驚くとともに、南部への怒りを新たにしました。今夏の南部大侵攻は、これまで以上に激しい戦いとなることでしょう。
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