同業者組合の中には、いくつか珍しいものが存在します。『術法教会』や『乞食組合』あるいは冒険者のための『冒険者組合』がそれで、それぞれ独特の活動をしています。
○術法協会
術法協会は宗教組織とは別に術法に関する技術を司る組織です。術法を用いて困っている人々を助けたり、あるいは教授してもよいと認可されている術を一般の人々に教えることで、金銭を得て活動しています。同時に術法の研究機関でもあり、術法師を保護する役目もあります。ごく普通の術法師たちは、そのほとんどが協会に所属していると考えてよいでしょう。なお、術法協会は登録制であり、最初の登録には10万エラン、月々の登録更新には1万エランの費用がかかります。
術法協会は国家の垣根を超えた組織であり、エルモア全土に広がっています。ただし、術法師は社会全体から見れば稀少な存在なので、組織自体の規模はさほど大きいものではありません。本部はルクレイドに存在し、ここでは特に国家からの援助があります。術法協会が開設したルクレイドの魔術学校は、優秀な術法師を輩出することで非常に有名です。協会は国家や宗教機関に多額の寄進を行ったり、術法師に規律を守らせるなどして、社会に認められるための努力を行っています。特に宗教機関に対しては協力を惜しまず、非常に密接な関係にあります。というのは、宗教機関では神の奇跡以外の術法を(特に否定するわけではないが)肯定しておらず、教会に敵対するものが特殊な術法を使用したりすると、それを異端の邪法として認定するためです。術法を利用して生計を立てている、『魔法屋』と呼ばれる職業に就いている者も各地にいますが、こういった人たちも術法協会に所属することで、異端派呼ばわりされることを免れているのです。
協会に所属する術法師は術法を用いて悪事を働くことはありませんし、もしそのような真似をすれば社会だけでなく、協会からも厳しい処分が下されます。信頼できそうにない人々に術を教えることもしませんし、また協会に属してない術法師でも社会に対して悪影響を及ぼすことがあれば、逮捕に協力したり独自に処罰したりすることもあります。つまり協会は、術法師たちの看視組織という役目を担っているのです。これらのものは法的な強制力は一切ありませんが、国家や自治体は治安のために黙認しているというのが現状です。同様の理由で、協会術法師がマジックアイテムをつくって販売するということもありません。
○乞食組合
乞食組合は乞食の保護が第1の目的です。他にも縄張りの区割りなどをして、場所争いを調停したりもしますが、人々に最も関係する仕事は情報屋としての役割です。街のいたるところにいる乞食ですから、情報の仕入れ先には事欠きません。また、情報伝達のスピードも他の追随を許しません。裏組合の情報も、半ば以上はこの乞食組合からのものです。
○冒険者組合
冒険者組合は最も特殊な形態の同業者組合といえるでしょう。これは正式な組織ではなく、彼ら自身のネットワークという程度のものですが、数は少ないながらもエルモア地方のほぼ全土に行き渡っています。冒険者組合は、冒険者が旅の途中で立ち寄る宿屋や酒場、および職業紹介所などの協力で成り立っています。彼らはそこで情報を仕入れて、仕事を請け負うのです。
○渡航者組合
冒険者組合のように比較的緩い形態の組織であり、宿や酒場の協力で成り立っています。各地を回る旅人の身元の保証などを請け負うもので、大道芸人やサーカス芸人、それから巡礼者や傭兵などが登録していることもあります。組織は身元の保証のほかに、頼めば斡旋屋への紹介なども行ってくれます。また、交通や地理的な情報のほか、それぞれの職業におけるその町でのしきたりといった情報を得ることもできます。ただし、その宿や酒場を利用することが条件となっています。修道院に集中していた巡礼客を獲得するためにつくられたという経緯があります。
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