月人がつくり出した結界には、ペルソニア大陸の赤道結界、中央地方の移動結界、そしてカイテインと東方の交通を阻む水晶鏡などがあります。こういった結界はトリダリス星の全域につくられています。
これらを監視するために機能しているのが、トリダリスの上空8000〜10000mを飛行する『浮遊大陸』(天上都市)です。ここにはクローン体たちが住んでおり、各地の上空を一定周期で巡回しています。彼らは地上に情報収集のための人員を派遣しており、それによってトリダリスの状況を把握しています。エルモア地方でこの役割を担っているのが、『聖月教団』と呼ばれる宗教団体です。彼らは自らを『ムーン・チャイルド』と名乗り、月の導きを信じる異端信仰者を演じています。彼らは『星月系』という独自の術法を操りますが、その中には月や浮遊大陸に設置された機械を起動させる内容もの術もあります。
しかし百年ほど前になって、浮遊大陸のクローン体たちの中に、月人の方策に対して異なる見解を抱く者が現れるようになりました。彼らの意見には、不死人に使役される定命の者の苛立ちや不満が色濃くあらわれており、自分たちの存在を被験体となっているトリダリスの人々の姿と重ね合わせているようです。
こうした不満分子の一部に、ひそかに自分のクローンをつくって身代わりとし、自らは地上に降りて行った者たちがいました。そして、変異や戦乱に苦しむ者たちを助けるために、科学魔道の技術を伝えたり、あるいは聖月教団への妨害活動を行うようになったのです。こういったクローン体がつくり出した組織の1つが、エルモア地方で『外なる星のかけら派』と呼ばれている存在です。
実は彼らの存在がなければ、現在のエルモア地方の発展はあり得ませんでした。なぜなら、学問院で霊子機関の発掘を行った『コルフト=カートランド』もクローン体のうちの1人で、彼なくしては霊子機関が実用化されることはなかったからです。後に『霊子機関の父』と呼ばれるようになった彼は、霊子機関をより簡単な構造にレベルを落とし、この地方の技術でもどうにか複製できるように改良しました。こうして霊子機関がエルモア中に広まることとなったのですが、彼自身は聖月教団の手にかかって暗殺されることになりました。一般には敵国の暗殺者の仕業だと思われているこの事件には、実はこのような裏の背景があったのです。
しかし、コルフトも何もせずに殺されたわけではありません。彼は死ぬ前に霊子機関の設計図とともに、法王への密書を送っています。この手紙は内容だけでなく、それを送ったという事実さえ門外秘とされていますが、それが今後のエルモア地方にとって重要な意味を持つことだけは間違いないでしょう。それとは別に、死の直前にコルフトの手元から消えたとされている研究ノートの謎があります。『コルフト・ノート』と呼ばれる数冊のノートは、暗殺者に持ち出されたのだという噂もありますが、実はそうではありません。なぜならば、聖月教団が回収したのであれば、すぐに処分されてしまっているはずなのです。しかし実際には、霊子機関は法教会を信奉する国家だけでなく、その他の先進国家にも製造法が広まっているのです。彼のノートを持ち出した人物の仕業なのか、あるいはコルフト自身による工作なのかはわかりませんが、これに関する情報は月人でさえ一切手に入れておりません。エルモア地方でも最大級の謎とされています。
○その他の用語
・名もなき導師
歴史にときおりあらわれる人物で、強力な術法師としての伝説だけが残っています。主に変異体の掃討に力を貸しており、地域によっては聖人の1人として崇められていることもあります。彼は聖月教団のクローン体であり、最高評議会の1人の映し身です。ミュウという弟子をつれていることが知られています。
・狭間の守人
エルモア地方で唯一の狭間への入り口を守る集団です。彼らは聖月教団の一員で、強力な戦闘集団として訓練されています。
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