宗教と術法


 


 エルモア地方では、大変異以来の混乱を術法によっておさめることに成功しました。その中心となったのが聖母教会であり、それから分派した法教会、さらにそれから分派したエリスファリア国教会、そして中央地方から伝わったマイエル教では、現在でも術法を行使して人々を救ったり変異体を掃討したりしています。
 どの宗教組織でも、術法は神あるいはその使徒から賜った奇跡の力として定義されています。ですから、宗教機関で術法を学ぶことができるのは、聖職者として教会のために働くものだけです。中でも特に素質を認められ、教会内での評価が高いものだけが習得することができる技術であり、精神的に未熟な者に教えることは決してありません。これは術法がいかに強力であるかということの証でもあります。

 聖職者ではない一般の人々は、寄進という形でお金を払い、治療などのために術法をかけてもらうことは可能です。寄進の額は一応は規定されていますが、聖母教会では個々の神官の判断に任されているのが実情です。一方、法教会では規則を重んじるため、一部の例外を除いては規定料金を払わなければなりません。これはエリスファリア国教会やマイエル教でも同様です。ただし疫病などが流行した時には、ほとんどは無料で治療してもらうことができます。

 なお、各宗教機関における術法の占める位置づけというのは、それぞれの教義が密接に関係しています。知識の貯えとしては聖母教会が最も多く、それから法教会、国教会と分派した順に少なくなってゆきます。科学を肯定する法教会では学問的な研究も盛んであるため、術法の重要性は聖母教会よりもおさえられています。エリスファリア国教会は国王の権威を助長するための機関としての色合いが強く、術法の知識はあまり深くありません。マイエル教は系統が全く異なる組織であり、独自の術法系統が幾つか存在します。


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