歴史

大変異現象\聖母アリア\聖人ルーン\聖暦


 

大変異現象


 エルモア地方を説明する上でまず語らなければならないのが、『大変異現象』と呼ばれる災厄と宗教についてです。学者たちの研究によれば、この大変異現象が起こったのは約2千年ほど前ではないかと言われていますが、その原因や内容といったものについては、未だ詳しく知られることはありません。
 神話によると、大変異現象は魔神の呪いによって引き起こされたものと伝えられています。この魔神の名は『アヌカリヲ』といい、かつては神につかえていた天使の1人でした。しかし、神をそそのかした罪により翼をもがれ、ついには滅ぼされることになりました。アヌカリヲはこの仕打ちを恨み、世界に呪いをかけました。その結果こそが『変異現象』と呼ばれるものです。
 変異とは万物を歪ませる全てのもの、現象のことをいいます。たとえば、腕が背中から生えたり、死んだ者が生き返ったり、あるいは生き物が突然狂ったように暴れ出したりと、その内容は数えあげればきりがありません。人々は魔神の呪いによって、長く変異現象に取り囲まれて生活することになりました。この災厄の時代を、『歪んだ冬』の時代といいます。


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聖母アリア


 人々は変異現象の悪夢に怯えながら、しばらく死と隣り合わせの生活を続けました。しかし、聖暦789年の現在からおよそ1800年ほど遡った頃、神の使いという少女が現れます。この少女の名は『アリア』といい、数多くの奇跡によって人々を救いました。過酷な状況に身をさらされていた人々は、少女の力をもちろん手放しで歓迎しました。神の啓示を受けたという彼女の言葉を受け入れ、奇跡の少女、神の娘と讃えて祀りあげたのです。それから彼女は、人々に魔術(術法)という不可思議な力を教え、神の信じる心と愛を説きながら人民をまとめあげました。
 アリアは13人の子を生みましたが、その誰もが父親をもつことはありませんでした。それが彼女を『聖母』と呼ぶゆえんです。アリアの娘たちは、その優れた人格と能力から人々に『使徒』と呼ばれ、聖母アリアとともに多大なる尊敬を受けました。後にアリアは上の12人の娘を連れて魔を封じる旅に出ました。残された最後の娘『ユナス』は母と姉たちの教えを守り、『聖母アリアと十二人の使徒教会』(聖母教会)という宗教機関を設立しました。


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聖人ルーン


 『ユナス』の没後も教会は魔術の行使による人々の救済を続け、大きな地位と権力を手に入れることになります。やがて教会の教えは人々の間に広まり、国政にまで発言力を持つようになりました。
 しかし、1つの教えが全ての人間に受け入れられるはずもありません。そのうちに、聖母教会内部にも異端派が出現します。そういった中の1人であった『主教セルトラーン』は、信仰についての意見の相違から聖母教会を出奔します。そして、人々を救済する旅の途中で『ルーン』という青年に出会いました。ルーンは聖書に伝えられるところのアリアやその娘と同じ力を持ち、人々に愛や公正さを説き、戦乱で廃れてゆく衆生の心を救済していました。セルトラーンは神の啓示を受け、この青年が神の子の一人であることを知ります。そして、この啓示を人々に広く知らせました。後にルーンは自らの身を犠牲にして魔神を倒し、神の使徒の一人として祀られることとなります。こうしてできたのが『法教会』という宗教機関です。
 法教会の教義はいわゆる秩序を第一の拠所としており、それを掲げて変異の影響を受けた生物や環境に立ち向かいました。法教会は後に『聖堂騎士団』を発足し、近隣の国々に対しても強力な軍事力を手に入れることとなります。


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聖暦


 聖母教会と法教会は互いに相手を異端として、長い年月を過ごしてきました。しかし、ここで新たな変化が起こります。それが『ユナスの降臨』です。
 現在のユノス国のシェアという地方で、空一面に浮かぶユナスの姿が浮かびました。ユナスは涙を流したまま天に祈りを捧げ、人々に何かを語りかけました。ですが、その声は人々の耳に届かぬまま、やがて静かに消えていきました。この時、ただ1人だけユナスの言葉を聞くことができたものがいたのです。それが『シェアの老女』と呼ばれる女性です。
 老女の語るところによれば、ユナスはエルモア地方最強と言われていたイーフォン皇国の皇帝の死を予言し、そして長き戦乱時代が訪れることを嘆いていたというのです。そして、この戦乱期を早く終わらせるためには、神に心からの祈りを捧げ、愛を忘れずに生きることを説いて、ユナスは消えていったということです。
 同年、ユナスの予言通りにイーフォン皇帝は死亡し、エルモア地方は長い戦乱期に突入することになります。教会はこの年を新たなる時代の始まりとし、現在の標準歴である『聖暦』が生まれました。ユナスの予言が実際のものとなったことから聖母教会への信頼は強まり、戦争に明け暮れる時代に巻き込まれる中で、人々は再び神の恩恵にすがるようになります。聖暦789年の現在では、エルモア地方の人口の70%が聖母教会の信者であり、国政にも未だ強い影響を与えています。


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