貧民街は下層の市民が住む場所です。もちろん市民として認められていない者も大勢います。貧民街に住んでいるのは経済的弱者、前科者、犯罪者、乞食、ストリートチルドレン(都市浮浪児)、自由奴隷、そして娼婦といった身分の低い者です。いわば社会の裏側で生きる者と言えるでしょう。もちろん彼らはまともな家に住んでいるわけがなく、ボロボロの木造平屋や穴だらけのアパートはまだましな方で、建物の隙間や橋の下で野宿したり、下水道や地下墓地に住み着いている者もいます。
貧民街は公的な権力の及ばない地で、違法行為が当然のように行なわれています。スリや強盗、そして殺人までが日常の出来事のように起こります。ですから、一般市民は絶対に足を踏み入れようとはしません。旅人が迷い込んで帰ってこなかったということも、1度や2度ではないのです。多くの場合、貧民街を統括しているのは裏組合やギャングなどの裏社会の組織で、何の咎めもなく麻薬や盗品の密売をすることができます。それを知っていたとしても、警察が貧民街に入り込むことはまずありません。というのは、貧民街の住人は非常に排他的であり、警察官に対して物を投げつけたり、ひどいときには徒党を組んで襲い掛かることもあるからです。このような貧民街の事情を利用して犯罪者が逃げ込んだり、あるいは反政府組織の拠点となることもあります。
貧民街というとただ住みにくいという印象がありますが、住人たちにとってはそうとはいえないこともあります。確かに生活は貧しくし、国家や自治体の保護もほとんど受けられません。しかし、貧民街の人々は助け合っておりますし、何より誰にも束縛されない自由を持っているともいえます。そして中には、いつかは裕福になろうとして、そして夢をかなえようとして頑張っている人々もいるのです。
全ての都市に貧民街があるわけではありませんが、貧しい人々はどの都市にでもいます、そして、そういう者にしか見えない都市の真実というものもあるのです。貧民街もまた都市の一面だということを忘れないでください。
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