概説
唯一神と『聖人ルーン』を祀る宗教であり、聖母教会の異端派が土着の宗教と結びついて成立したものです。異端とされて野に下った聖母教団の『主教セルトラーン』が、神託を受けてルーンを神の子と認定しました。このことから、法教会ではルーンこそが真実の神の子であり、唯一の使徒であるとしています。聖人ルーンは我が身を犠牲にして魔神を倒したことで知られており、死後は聖霊として衆生の救済に励んでいると信じられています。
カスティルーン、ユークレイ、ペトラーシャの3国で国教として信奉されており、エルモア地方では聖母教会に次ぐ勢力をもつ宗教機関です。先に述べた3つの国では、国政にも重大な発言力をもっております。
(注:現在の標準歴は聖暦ですが、法教会を信奉する国家ではルーンの死没した年を基準としたルーン歴を使っています。ただし、説明の中ではあくまでも聖暦で表すことにします。なお、聖暦789年はルーン歴1367年になります。)
教義と権威
法教会の教えは秩序の一言で表わされ、変異現象を混沌と称してその平定を掲げています。このことは聖人ルーンの奇跡とともに『聖告書』に伝えられています。
聖印は『正十字(+)』で、その四方向はそれぞれ秩序、法、正義、公正を示しています。元来はこのうちの公正(あるいは公平)という点で結びついた2つの教えなのですが、現在では特に秩序という言葉に重きが置かれています。
聖母教会と同じく、法教会もこの地方の文明の復興に寄与してきました。ただし、聖母教会とは異なり、秩序だったものとして認められるものは全て利用し、旧文明(科学魔道文明)の科学技術の発掘にも力を入れてきました。その研究機関として設置されたのが『学問院』です。元来は、科学技術や一部の科学魔道文明の技術の専門研究所でしたが、現在では我々の世界でいうところの大学と同様の働きをする、この大陸では神大学と並ぶ最高の学問機関です。一般学問から術法、あるいは『科学魔道技術』(初歩的なものや限定分野の一部にすぎない)まで、広い知識を身に付けることができる場所です。これは今ある大学のもととなった組織であり、図書館や博物館といった性格も有しています。
他に、彼らの称するところの混沌(変異)に対抗するための戦力として、『聖堂騎士団』も発足されました。3国での呼称は様々で、カスティルーンでは『ルーンナイト』(法騎士)、ユークレイでは『白銀騎士』、ペトラーシャでは『聖騎士』と呼ばれています。特にカスティルーンのルーンナイトは高名で、文武双方に秀でた存在として国民から尊敬を集めています。
聖職者の階級
聖母教会と法教会は根が同じであるため、各階級における名称は異なりますが、その内容はほとんど同じものです。
『法王』は法教会の頂点に立つ存在で、カスティルーンの『聖セルトラーン教会』にいます。法王を補佐するのが枢機卿で、その下で実務を管理するのが司教です。聖者を奉っている大教会の教会長は枢機卿が務め、分教会の教会長には司教がなります。実務の指揮は神官長が行ない、その実行は神官の役目となっています。神徒は雑務を行なうと同時に、学問院の学生でもあります。法王は枢機卿の中から、枢機卿は司教の中から選挙によって選抜するという方式をとっています。神官長、および神官は司教以上の者が任命します。
法教会での聖職者の階級は以下のようになります。
◆聖職者の階級(法教会)
階級 |
説明 |
法王 |
法教会の頂点にたつ存在であり、カスティルーンの聖セルトラーン教会にいます。 |
枢機卿 |
枢機卿は主要な大教会の教会長をつとめています。聖セルトラーン教会で法王の補佐をする者もおります。 |
司教 |
祭祀を司るものであり、政治的な影響力をもつ地位になります。司教のうち、枢機卿の補佐をする者は教会運営の執務長となります。他の大教会にいるものは、その教会の教会長となります。 |
神官長 |
街の中心となる教会に属する高位の神官であり、大きな宗教行事などを取り仕切ります。司教の補佐を務める者もおり、その場合は様々な執務の指揮をとります。 |
神官 |
教会に正式に認められたものであり、聖職者として実際の仕事をこなします。小さな教会を預かる者がこの階級であり、教区の祭儀などの責任を負います。 |
神徒 |
聖職者として教会に属する者であり、様々な訓練を受けています。修道院などに属する学生や、教会の雑役夫として働く者がこの階級になります。見習いの神官といった立場です。 |
平信者 |
洗礼を受けた民間人です。特に宗教上の階級ではなく、義務などを負うわけではありませんが、自主的に宗教儀式に出席したり、寄進を行なったりします。 |
エリスファリア国教会
法教会から分かれた宗教機関として、『エリスファリア国教会』があります。かつてエリスファリア国王レイシア4世が、その離婚問題より始まった法王との争いで破門され、法教会と絶縁するという事件が起きました。そして国王が独自に設立したのがこの教会です。教義の内容は、聖母教会と法教会の中間色といった具合で、宗教機関というより国王の政略の1つと見た方がよいでしょう。実際、国王が主権者である教皇の座につき、教義はより民衆を統制しやすいように曲解されることもしばしばなされているようです。
聖職者の階級は法教会のそれとほぼ同一であり、法王だけは『教皇』と名を変えられ、代々のエリスファリア国王がその役職を務めています。
その他
法教会はその名の通り法を守る役目を負っています。そのため、法教会は裁判所および警察機構としても機能します。正確には、『神聖法官』と呼ばれる聖職者や聖堂騎士が裁判所や警察組織に出向する形になりますが、彼らには同僚の監視役として役目もあるので、これらの組織は他の国家に比べて遥かに公正な機関であるといえます。これはどの国でも法教会が国家と密接に結びついているからこそ成り立つ制度であり、3国が成立した時点からの風習です。
法教会と聖母教会は互いを異端とし、教義上の争いは絶えません。表立っての戦争はないものの、水面下では様々な抗争が繰り広げられています。エリスファリア国教会はそのどちらとも不和で、その存在は双方から否定されています。
○その他の用語
・法王の目
表だった組織ではなく、法王の私設機関として存在します。法王が下部組織を監視し、その活動を把握するための調査機関であり、粛正機関としても機能しているようです。国政に対する密偵行為も行っているという噂もあります。
・混沌
変異やその影響下にあるものを総称して、法教会では混沌と呼んでおります。
・粛正
混沌を滅ぼすことを粛正と呼び、特に聖堂騎士団が好んでこの言葉を用います。
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