身分-下層


 

概説


 下層の身分に含まれるのは『労働者階級』と『浮浪階級』の2つになります。ともに中層以上の人々からは蔑まれたり、あるいは哀れみの目を向けられることが多い階級です。

 労働者階級はいわゆる肉体労働者や芸人、あるいは娼婦などといった職業になります。農夫や漁師たちも含まれますので、人口の圧倒的多数はこの階級に属しているといっていいでしょう。
 彼らの多くは特別な知識や技術を身につけていないため、とにかく体を使って働くしかありません。農夫は富裕農民の土地を耕してわずかばかりの収入を得、工場労働者は劣悪な条件の下で資本家に酷使されるのです。しかし、どんなに苦しくてもそれをやめてしまうわけにはゆきません。彼らの代わりはたくさんいるのです。誰かがやめてしまっても、すぐに次の人間を雇えば済むことなのです。
 このような境遇にいるため、彼らは上の階級の人間をうらやましく思い、時には憎しみさえ抱くこともあります。しかし、大部分につきまとうのは諦めという感情です。とはいえ、彼らも何もせずにいるわけではありません。近年では労働者が団結して工場経営者と争うという事件も、ソファイアなど一部の国家で起こっています。それに、懸命な努力と優れた発想によって下層階級から企業家へと成り上がった人間も皆無ではないのです。

 浮浪階級には不定居住者や放浪民族、それから都市浮浪児や乞食などが含まれます。多くは職や決まった住居を持っておらず、素性の知れない者として怪しまれたり毛嫌いされたりするのが普通です。中には犯罪に手を出す者もおり、ますます彼らの立場を不利なものにしています。しかし、そうしなければ生活できないのですから、彼ら自身は決して悪びれることはありません。


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生活


 下層身分の人間は、狭苦しい住居と粗末な食事を得るのが精一杯で、中層身分の人々のように社交界を夢見ることさえありません。黒パンやオートミール、それに具の少ない(時には入っていない)スープがつくぐらいのもので、健康的な生活とはほど遠い毎日を過ごしているのです。休みもあまりとれず、もちろん遊ぶお金もありません。成り上がるといっても、せいぜい美しさを売り物にして、高級娼婦として貴族に買われるくらいのものでしょう。もっとも、そんな妄想に時間を費やすよりは、とにかく働いてお金を稼ぐことに考えを巡らせなければなりません。
 都市部において、こういった人々が集まってできたのが、貧民街と呼ばれる地区です。劣悪な環境に生まれた人々の中には、身を持ち崩す人も少なくありません。ですから、貧民街はどの都市でも危険な場所であることは間違いなく、一般市民は決して近づこうとはしないのです。
 彼らにとってせめてもの救いは、施しは美徳であるという観念が宗教的な影響からまだ残っているということでしょう。道端の乞食に小銭を恵んでやることは善行として受けとめられていますし、聖職者たちがときどき見回りにきては、食事や衣服を置いていったりもします。しかし、それらは決して根本的な解決手段にはなり得ないのです。


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