衣食住
○食事
エルモア地方ではパンが主食です。他に主食となるものにはパスタ類や米、あるいはトウモロコシやジャガイモなどがあり、国によって様々な特色が見られます。主菜としては、昔は野菜を煮込んだシチューなどが多かったのですが、近年になって森林を伐採して牧場を開拓したことから、牛や羊や豚の肉が食卓に出ることが非常に多くなってきました。
最近は大量輸送が可能となったため、他国の食材もかなり手に入りやすくなりました。珍しい材料を使った料理も様々考案され、昔に比べて食卓は随分とにぎやかになっています。特に、南方のペルソニア大陸の植民地でサトウキビの栽培が行われるようになってからは、甘いものが人々の口に入る機会が増えています。
○服装
この地方の人々の服装は各々の職業を表わすような傾向が強く、特に知識人階級や知的労働者と呼ばれる人々はスーツに身をつつむことが多いようです。紳士と呼ばれる人たちや上流階級の人間は、加えてステッキを手に持ちます。これに対して肉体労働者は実用的な服装を好みます。
男性の着衣は主にズボンとシャツといった簡単なもので、都市であればこれにスーツやジャケット、それにネクタイがつきます。女性は肌を隠すような服装が多くなります。夏でも、上は半袖になるのですが、下はロングスカートというのが普通でした。しかし最近の風潮として、若い娘の中には肌の露出する服装を選ぶ者も現われつつあります。髪の毛も肉体労働者以外は長くのばして結いあげているのが普通でしたが、近年では短く切ったりおろしたりする人が増えてきました。
○住居
住居に関しては、昔は一戸建てに家族全員が生活しているのが普通でしたが、人口が増加してくるにつれてアパートや公営の集合住宅などが多くなってきました。これは城壁で囲われて土地面積が決まっており、建築物が高くつくられるようになった都市で顕著な傾向です。これらの背景には、機械化によって新たな産業が生まれ、都市へ人口が集中しているということがあります。
娯楽
一般的な娯楽としては書物や観劇、音楽といったものがあります。
印刷機械が開発されてから書物は急速に普及し、貸本屋などといったものも現れるようになりました。また、新聞も大量に発行されるようになり、イエローペーパーといわれるゴシップを中心とした通俗紙も販売されています。最近の若者では小説家や新聞記者を将来の職業として希望するものが増えてきました。
観劇はオペラのような大がかりなものから、大衆劇場のような街の小さな劇団が行う芝居まで、様々な種類のものが楽しめます。また、大通りや公園では大道芸人やサーカスの一座が芸を披露しており、退屈をしばし忘れさせてくれます。
音楽も大きな楽しみの1つで、オーケストラの荘厳な調べもあれば、大衆酒場の歌姫の可憐な歌声、あるいは吟遊詩人の古い物語など、様々なものが存在します。歌は楽しみだけでなく、人々の心の支えになったり、歴史を伝える役目などを担ったりもします。奴隷の娘たちが糸紡ぎの時に自らを勇気づける歌もありますし、古い歴史を伝える歌も数多く残っており、特に青年識字率の低い辺境地域では貴重な文化資料となります。
その他の楽しみといえば、博物館や美術館、あるいはスポーツ、カードゲームなどが上げられます。少年たちがスポーツに興じる姿は町中でもよく見かけます。対して女の子たちは、誰かの家に集まって刺繍などをしながらお茶やおしゃべりを楽しんだり、占い小屋で恋占いをしてもらい、その結果に一喜一憂するといった感じです。
大人たちの娯楽は、やはり酒と賭事、そして女遊びというあたりでしょうか。酒は大衆酒場のような安酒を出すような場所から、高級なワインをオーケストラの演奏つきで楽しめるような場所まで様々です。一般の人は大衆酒場でビールやワインを飲んで、歌姫の歌や大道芸人の芸を楽しむのが普通です。中にはパブと呼ばれる、子供や女性までが楽しめる地域の社交場のような酒場も存在します。
博打にはルーレットやカードなどがありますが、法律で禁じられている国もあるので、旅先では特にこういったことに注意しなければなりません。また、大きな街では、競馬のような大がかりな賭博なども行われていることがあります。
こういった数々の娯楽のうちで最大のものはやはり祭でしょう。これは老若男女のすべての人が楽しめる一大イベントで、地域単位や宗教単位で催されます。聖母教会の降臨祭や聖誕祭はエルモア地方でも最大級の催し物となります。他にもブドウの収穫祭である紫祭や雪人形祭、あるいは蝋燭祭といった有名な祭には、わざわざ遠くから旅人が訪れてこれに参加します。
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