宗教組織以外にも術法を使うことができる人々が存在します。必要があって聖職者から教えてもらったり、あるいは長い期間を経て伝承されてきた知識として会得している者たちです。
民間の術法師は大きく2つに分類されます。1つは社会や宗教組織に認められている術法師で、術法を用いて生計を立てています。このような術法師を特別に『職業術法師』といいます。もう1つは『異端術法師』と呼ばれており、一部の特別な地域や団体でのみ継承されている術法を使います。
○職業術法師
職業術法師の多くは、少数ながら自身の団体をつくってその知識を伝承しています。この組織のことを『術法協会』といい、エルモア全土に広がっています。一般に術法協会に所属する術法師を『協会術法師』と呼びます。術法協会は宗教機関と密接な関係を持ち、多額の寄進を行ったりしています。このような努力によって、協会術法師は異端ではない存在として認めて貰っているのです。術法協会の規模は国家によって様々ですが、およそ宗教機関の勢力に比例します。たとえばルクレイドなどの聖母教会の影響の強い国では、術法協会はそれなりの力を持っており、術法師の存在する割合も高くなっています。特にルクレイドでは、国家の援助を受けた術法協会によって『魔術学校』が開かれており、軍隊にも『魔術兵団』と呼ばれる特殊な部隊が存在します。
また、変異に対抗する手段としても術法は有効に利用されており、それを専門とする特別な職業が社会的に認知されています。たとえばルワール大公国の『鏡界師』やルクレイドの『夢使い』のように、人民に多大な尊敬を受けるような場合もあります。また、芸術家として認知されている職業術法師もいます。彼らが使う術法は『呪芸術』と呼ばれており、術法師の中でも非常に特殊な存在です。多くが一流の芸術家として活動しており、貴族など上流階級の人間と親交がある者もいます。
○異端術法師
異端術法師は2つのタイプに分類することができます。
一方は宗教組織から異端として認定されている者たちで、ほとんどが社会と敵対する存在です。国際的に有名な事件を起こしたこともある『錬金術師』や、ジグラットにいる『竜の一族』、あるいは自然信奉者として知られる『精霊使い』などがこれにあたります。これらは皆、異端階級に属する者として忌避されています。
もう一方は、社会的には認められているものの非常に数が少ない存在で、滅多に目にすることはありません。『呪曲師』、『占術師』、『舞師』と呼ばれる存在がこれで、ほとんどが各地を放浪する芸人の一種です。特に問題を起こすことはないのですが、術法協会に登録しているわけでもありません。これ以外にも若干、協会に登録していない術法師もおりますが、一般社会に出てくることは殆どないでしょう。
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