エスティリオの技術


 


 原住民たちの技術レベルは非常に低く、戦いにおいても槍や斧、あるいは弓などによる攻撃が主体となります。もちろん、蒸気機関や銃のような優れた技術は、移民たちがこの大陸に訪れる以前には目にしたこともありません。
 文化レベルにこれほどの差がありながら、未だに彼らが征服を受けずにすんでいるのは、旧科学魔道文明の発掘技術を用いた、非常に特殊な戦闘法を身につけているからです。

 こういった発掘技術の1つに、原住民たちが『魔道蟲』と呼んでいるものがあります。魔道蟲には再生蟲や神経蟲などといった種類があります。これらは培養してある組織塊からつくられ、目的に合わせてプログラムされます。このようにして様々な能力を獲得した蟲は、人体に埋めこまれると組織や器官と同化し、人間に驚異的な戦闘力や他生物の能力などを与えることになります。翼で空を飛んだり、手足を自在に伸縮させたり、あるいは毒の息を吐いたりといった能力が、変異体の脅威や移民たちの武器から人々を守っているのです。
 ただし、これらの蟲を体内に埋め込むときは、考えられないほどの苦痛が伴うため、誰でもが身に付けることができるわけではありません。この試練に耐えたものは『蟲使い』として、人々から最大の尊敬を受けることになります。蟲使いはこの賞賛に応え、自らの力を惜しむことなく使って仲間たちを守ります。

 魔道蟲と並ぶ有用な戦力には、『宝珠』と呼ばれる石の力があります。この宝珠を使うものは『宝珠使い』(ジュエル・マスター)といい、蟲使いと同様に恐れられています。宝珠使いは別名『獣魔使い』とも呼ばれ、魔獣を操る技術を持ちます。使役する獣魔の特徴は、額に第3の瞳をもつことです。
 獣魔使いの能力とは、自分に向けられた感情や術法といった情報を力に転換し、それを利用するものです。この力を第3の瞳に蓄えているのが、獣魔という存在なのです。この獣は精神の具象化であり、受諾した情報によって様々な形態を取ります。
 獣魔の中には非常に特殊な存在のものがいます。使い魔のようにただ1人の宝珠使いに仕えるもので、宝珠使いたちはこの魔獣を『従魔』と呼んで、常に身近に置いています。これは残留思念の結晶体であり、死を迎えた人々の獣魔使いを思う心によって生まれた獣なのです。多くの場合は、これは家族や恋人の願いで構成されています。つまり、従魔とは愛する者から最後に与えられた涙でもあり、そして死んでいった人間そのものでもあります。ですから、宝珠使いたちは従魔を何よりも大事にし、常に自分の側から離さないのです。逆に従魔たちも主からは決して離れようとはせず、死してなお愛する者を守り抜く力として存在し続けるのです。

 新大陸でもいくつかの術法は使われています。特に、不思議な紋章や模様を体にペイントすることによって力を得る化粧系や、獣化系の術法がよく知られています。蠱使いや宝珠使い、そしてこのような変身に関わる術法を多く使用することが、エルモア地方の人々に原住民を化け物だと誤解させる要因となっているようです。


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