聖暦712年に、『霊子物質』(エーテル・マター)をエネルギーとして変換する『霊子機関』(エーテル・リアリター)が、旧科学魔道文明の遺跡から発掘されました。発掘を主導したのは法教会の付属機関である『学問院』です。この動力機関は現在ある蒸気機関と比べると数多くの利点を持っています。たとえば、燃料の重量当たりの出力は蒸気機関よりもはるかに上ですし、『霊子蒸気』(エーテル・スチーム)と呼ばれる蒸気を出すものの、石炭を燃やす時とは違って煤煙(すす)が出ないことなどがあります。なお、この2つのエンジンが出す煙の色の違いから、霊子機関のことを『ホワイト・エンジン』、蒸気機関のことを『ブラック・エンジン』と呼ぶこともあります。 蒸気機関と霊子機関の登場によって、人々の生活のあり方は一変しました。従来まで手作業だったものの多くが機械仕掛けになり、大量生産が可能となりました。輸送手段の改革は文化の交流を促し、工業生産を支えます。786年には霊子機関を積んだ大型鉄船も完成し、変異現象による海流異変が原因で超えることのできなかった西海を渡り、『新大陸エスティリオ』への到達を可能としました。各国は競って新大陸の開発を試みようとしており、熾烈な争いを繰り広げています。また、輸送船の発達により、エルモア地方の真南に位置する『ペルソニア大陸』からの奴隷の輸送も大規模化しました。 しかし、すべてがよい方向へと働いているわけではありません。人口増加に伴う耕地や牧草地の拡大によって森林は伐採され、そこで暮らしていた人が立ち退きをせまられたりしています。また、植民地農場での労働力として、たくさんの奴隷たちが犠牲になっています。新大陸への進出においては、原住民との激しい衝突を生み出しました。それから工場ができたことで産業は効率化されましたが、それによって昔ながらの職人たちが被害を被ることもあります。 先頭へ |