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▼タタラ
鬼の伝説は鉄とともにあります。たとえば東北地方には、フイゴに風を送ったり槌をふり上げて鍛冶を手伝う鬼の絵が残っておりますし、大江山の酒呑童子は鉄の御所と呼ばれる住まいを建立しましたが、これは鉄の塀と門に囲まれた玻璃の宮殿でした。
また、1本足で1つ目の妖怪として知られる一本ダタラも鬼に分類されるものですが、彼らの出没するところには鉱山の跡が幾つも存在します。タタラとは鍛冶師が金属を溶かすときに空気を送り込むのに使うフイゴのことであり、鍛冶師のことをタタラ師と呼ぶ場合もあります。鍛冶師の仕事は重労働で、溶解している鉄を見続けるために片目がつぶれ、フイゴを踏み続けるうちに片足が萎えてくるのだといいます。この姿から一本ダタラという妖怪が生み出されたり、炉の赤い炎に照らされた姿を見て赤鬼と呼んだ可能性は非常に高いでしょう。
▼土蜘蛛
本来、大和朝廷に反抗して滅ぼされた人々の呼び名だと言われており、彼らが征服された顛末についてはさまざまな風土記に記録されています。
土蜘蛛は日本各地の山間部に住んでいた土着の民で、農耕をせずに洞穴に住み着いていた鉱夫や、狩猟生活を続けていた者たちであるという話も残されています。土蜘蛛の姿は手足が長くひょろ長い小人として描かれており、鉱夫としての生活によってこのような姿になったのだと言われることもあります。
土蜘蛛と一本ダタラとの関係も深く、たとえば紀州熊野の妙法銅山のあった場所に一本ダタラが出没すると言われていますが、この付近には土蜘蛛の伝説があり、彼らの住んでいたという洞穴も残っています。また、山の民であった十津川郷の人々も付近に住んでおり、山人である木衆子と関係があることが予想されます。
▼鬼と刀
鬼退治には刀がつきもので、茨木童子の腕を切ったとされる渡辺綱の鬼切丸や、源頼光が土蜘蛛を切った名刀・蜘蛛切丸、そして同じく頼光が酒呑童子を退治した時に使用した太刀・童子切安綱などをはじめとして、名刀と呼ばれる中には鬼と関連が深いものが多く見られます。これは鬼と鉄が深い関連を持つのと同様に、朝廷の側にも製鉄もしくは鬼の性質を知る一族がおり、鬼を切ることが出来る鬼鋼を鍛えていたという事実を示唆するものです。
たとえば、山の民であった十津川郷の人々は、朝廷や幕府と深い関係を持っていたと思われる証拠が幾つか残っています。幕末には十津川出身の者が御所の門の衛士をつとめておりましたし、十津川郷士という集団が小規模ながら京都に存在し、反幕勢力であった長州・土佐、薩摩の浪士たちと伍していたという話があります。彼ら十津川の者は本来百姓身分にあったのですが、全員が名字を持つ上に、帯刀および士装しておりました。また、彼らの住んでいた地域がもともと水田がつくれない土地であったという理由はあるのですが、古くから税を免除されていたということも奇妙な点です。
十津川郷の民が鬼の血を継承する民族かは定かではありませんが、このように朝廷や幕府に味方した一族の存在は決して珍しいものではありません。その経緯はどうあれ、木衆子の中にこのような人々がいても不思議はないでしょう。
▼鬼と巨人
古来より鬼は巨人として描かれています。大江山の酒呑童子は身長3〜6mはあったと言われておりますし、30mの巨人として伝えられる鬼も存在します。特に有名な巨人として知られるダイダラボッチは、大タタラ坊もしくはタータラ坊が語源であるともいわれています。
また、鬼の一種であるとされる山女は身長が4m以上もあったそうですが、彼女たちは人間の血を吸ったり、人里に住んでいる男をさらって婿にしたり、大蜘蛛に変身したという伝承が残っております。このように、これら巨人もまた鉄やそれに関連する一族と関連が深く、その多くが山に住む鬼であったことが見て取れます。
▼奇形
鬼の多くは奇形であり、1つ目や3つ目の鬼や3本指の鬼などがよく知られています。また、角や口がなかったり、牛や馬などの動物と合成したような姿の鬼も民話や伝承に残されています。
これらのうちで最も奇妙な姿をしているのが、飛騨(岐阜県)に伝わる両面宿儺です。背丈は2m余りと鬼の中では大きくありませんが、頭の前と後ろに顔を持ち、手足が4本ずつあったと言われています。この夜叉のような形相をした両面の鬼神は、4本の手で剣と弓を扱い、その怪力で大和朝廷の兵士をなぎ倒したといいます。
宿儺は怪物まがいの凶賊として語られていますが、美濃・飛騨の土地では英雄視されており、鎧を身につけ、4本の手に鉾、錫杖、鬼、八角の檜杖を持った姿で祀られています。たとえば、高山市の郊外にある丹生川村の千光寺では、両面宿儺を御開山様と伝え崇めており、宿儺を刻んだ仏像も残されています。また、同じく丹生川村にある善久寺も宿儺を開基とし、寺の近くには宿儺が立て籠もった末に首を括って死んだという洞窟も存在しています。他にも当地にある多くの古寺では、両面宿儺を「両面さま」「両面僧都」
などと尊称し、今も開基として祀っています。
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▼伝説
神鬼は神性を持つ山の神であり、性別のない巨人として描かれています。民間の伝承に残る鬼には善い鬼と悪い鬼の2つがおりますが、これは神鬼が二面性を持つ存在であるためであり、その性質が鬼のものとして描かれているのでしょう。
古くから伝えられる神には二面性を持つ者が多くおりますが、山神は実際に双格・双面の神であり、両面宿儺の伝説もこの事実を物語る逸話の1つと考えられます。このような神は海外にも存在し、ローマ神話の双面神ヤヌスやヴェーダ神話に現れるミトラ-ヴァルナといった神が伝えられています。
なお、ミトラ信仰では東北という方位が重要視されており、この神が神鬼である可能性も否定できません。それから、ミトラは仏教に取り入れられた際に弥勒となりますが、仏教と鬼門との関連性は弥勒信仰に由来するものなのかもしれません。
▼鬼降ろし
鬼道の巫女(鬼巫女)は鬼降ろし(もしくは神降ろし)と呼ばれる儀式を行い、一時的に神鬼の魂をその身に宿して、天恵や呪術的な力を得たりすることが出来ます。この儀式を指して、鬼門を開くという言い方をすることもあります。
なお、巫女とはあくまでも総称であり、男性もこの役を担うことが可能です。彼らのような存在を依若(よりわか)、あるいは若神子(わかみこ)などという呼び方をします。飛騨で両面僧都と呼ばれる存在は、これら巫女たちを指す者である可能性があります。
▼神生み
鬼降ろしはあくまでも神鬼を一時的に宿すだけの手法であり、神鬼が本来持つ力を発揮できるものではありません。しかし、神鬼として伝えられる存在の殆どは既に封印されていたり、倒された後に神霊へと変化しているため、人界へと降りてくることは出来ません。また、特定の場所を守護する存在である場合は、神として寺社や祠に留まらなければなりません。そのため、神の力を新たに得るためには、神生みの儀式を試みる必要があるのです。
・人鬼融合
もともと神鬼の血を受け継いだ者が鬼であるわけですが、現在知られている鬼の性質は残虐非道なものであり、神を連想させるものではありません。というのは、彼らには欠けている正反対の性質があるためで、それを補って初めて神性を持つ力を発揮できるのです。
鬼から失われた性質を持つのは人間であり、新たに神鬼を生むためには鬼と人とが融合する必要があります。
・資格
鬼と融合する人間のことを女性であれば姫神、男性であれば若王といいますが、彼らには特別な資格が要求されます。
まず、彼らは鬼質を保持していなければなりませんが、鬼魂を保持している者は不適格となります。それから、彼らは定められた刻限や条件の下に生誕した者でなければなりません。そのため、鬼姥が子をさらうために産婆に扮したり、忌み子として捨てられた彼らを探すために各地を放浪することもあったといいます。
また、育てるためにも特別な条件を満たさなければならず、乳に鬼質を有する者や鬼の血を混ぜて与える一方、言葉を話せるようになるまでは山の気と清らかな水を浴びさせ、聖と魔の気質に同時に触れさせながら育てる必要があります。それから15歳になるまでは、人界で人と共に生活しなければなりませんが、この間に誰かと交わることをはじめとして、俗世に完全に染まってしまうことは許されません。多くの場合は鬼の系譜に連なる寺社に預けられて、清らかなまま依代として育てられることになります。
・鬼神祭祀
鬼と人との融合を行う儀式のことを鬼神祭祀と呼んでいます。この細かい手順については、キーパーが自由に決定して構いません。姫神や若王となる資格についても同様です。
必ず満たさなければならない条件は以下の点となります。まず、儀式を行う場所は神が祀られている山や洞穴、もしくは霊場に建てられた鬼神を奉じる寺社・祭壇に限られます。また、鬼門の方角が霊的・物理的に開かれていなければならず、その方向に魔を封じる霊山や宗教建築物などが存在してはいけません。
それから、融合する人間と鬼とは必ず逆の性別である必要があり、女性格の鬼と融合するためには若王が、男性格の鬼と融合するには姫神が依代とならなければなりません。なお、神鬼の姿は両面宿儺のような両面4手の巨人ですが、融合後には性別は無くなってしまいます。
このような条件を整えても、必ずしも神鬼が生み出せるとは限りません。というのは、相手となる鬼にも条件が存在するためですが、これについては未だ何者にも知られておらず、どのような記録を調べても記述を発見することは出来ません。なお、神鬼となることが出来なかった鬼と人は、鬼傀儡と呼ばれる魂のない鬼や、なりそこないという奇形鬼へと変化してしまいます。
・霊具
道教では剣、鏡、壷の3つが神聖な霊具とされ、宗教儀式で用いられています。鬼神祭祀も道教の流れをくむものであることから、これら3種の神器が必須とされます。なお、3世紀の九州の古墳から剣が出土したり、4世紀の近畿の古墳から多くの鏡が出土していることは、これらの地域に道教の教えが広まっていたことが原因と考えられています。
・模倣祭
鬼神祭祀を模した儀式が、祭として人界で催されている場合があります。このような祭を行う寺社は全国に存在し、巫女が鬼に捧げられる花嫁役を演じたり、鬼に奉ずる神楽舞を舞ったりするようです。また、鬼が鉄を司っているためか、剣を奉納したり神前で剣の試合が催される場合もあります。
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▼人喰い
鬼は人の生き血をすすり肉を喰らうといいますが、これは鬼の残忍さをあらわす逸話にとどまらず、実際にこのような行為を頻繁に繰り返します。これは欠けた半身を補って神へと至ろうとする本能的な行為であると同時に、力を得るために必要となる行動でもあります。
・肉食み
喰らった相手の能力を自らのものとして利用することが可能となります。
・頭喰らい
食べた脳から、相手の知識や記憶を一時的に得ることが出来ます。
・皮剥
相手の生皮を剥いで身にまとうことにより、姿を借りることが可能です。
・吸血
鬼は何もしなくても無限の時を生きるわけではありません。定期的に血を吸わなければ力を弱めてゆき、やがて不死性をも失うことになります。
▼鬼喰い
鬼は鬼を食べることで、人を食べる場合と同じような効果を得ることが出来ます。しかし、鬼を相手にすることは非常に危険であり、殆どの場合は鬼同士が出会っても戦うことはありません。ただし、非常に巧妙に相手を陥れて、人間に力を弱めさせた後に相手を倒して、自身の力とすることはあるようです。
なお、鬼をその身に取り込んだ鬼は、古い皮を脱いで新しい体を得るといいます。そして寿命を飛躍的に伸ばし、神性を身につけてゆきます。このような鬼は首を切り落とされても死なず、落とされた箇所だけでも動いて超常能力を行使するといいます。また、神鬼となる率も高まると考えられています。
・鬼首
鬼の首は首だけでも生き続けますが、歴史上の人間でもこのような伝承を持つ者がいます。たとえば、蘇我入鹿の首は討ち取られて体から離されても、首だけで飛んでゆき鎌足を襲ったといいますし、平将門も同様の逸話を持つ人物です。彼らが鬼であったという証拠はありませんが、何らかの関連があったことは確かでしょう。
・鬼呪
まれに、喰われた鬼が相手と融合を果たして生き延びようとすることがあります。この能力のことを鬼呪といいますが、これは神性を持つ鬼しか使用することが出来ないようです。
鬼呪によって融合を果たした鬼たちは自身の意識を保つことは出来ず、祟鬼や狂鬼と呼ばれる存在へと変化してしまいます。祟鬼は人型をしていない場合が多く、黒い闇から触手が生えたような姿や、肉塊のような状態へと変化してしまうようです。彼らは怨嗟の念にとらわれた意思なき存在であり、強大な霊力を発揮して周囲の者に無差別に攻撃をしかけます。
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人として正気を保ちながら鬼の力を得る方法があります。しかし、これを為すことが出来る者は限られており、鬼童(おにわら)と呼ばれる存在として生を受けなければなりません。
▼鬼童
死んだ母から生まれた子は、魂を持たず依代としての生を受けます。同様に、死に瀕している胎児もまた、生死の境界線上に立つ魂なき存在となります。
彼らは魂が宿らなければ、どのような処置を施してもやがて死に至るか、植物人間のような状態で生き続けなければなりません。しかし、このような存在に外から魂が入り込み、通常の人間として生を受けることもあります。
・人鬼生誕
魂なき体に鬼火が宿ったのが鬼童と呼ばれる者で、生まれながら人鬼として存在することになります。そのため、この体に新たな鬼魂が宿ることはなく、幽鬼に取り憑かれることもありません。
・呼び名
鬼童とは総称であり、男児の鬼童は鬼童子、女児の場合は鬼童女と呼ばれることもあります。
・性質
鬼童として生を受けた鬼魂は例外なく、普通の赤子と同じ無垢な魂として覚醒することになります。また、肉体能力も人間と変わることはありませんし、人の間で育てられれば人としての人格を形作るため、自身が鬼であることに気づかずに死んでゆくことも多いようです。
・鬼質
鬼童の体に鬼魂が宿ることが出来るのは、彼らが死から生まれた魂のない存在であるためです。彼らは生ある屍鬼とでも言うべき存在で、鬼質を有しているかどうかとは関係なく生み出されます。
・能力
このような性質を持つため、鬼童として生まれたPCを作成する場合でも、通常の手順と何ら変わるところはありません。その心も周りの人間と同じものですから、正気度判定も行わなければなりません。
・超常能力
鬼童は霊力も人並みでしかありませんが、超常能力を行使できる可能性があります。ただし、そのためには鬼として覚醒を果たす必要があります。
▼覚醒
・資格
覚醒を果たした鬼童は鬼の持つ超常能力を使えるようになります。しかし、そのためにはまず鬼質を獲得しなければなりません。
・鬼魂の開眼
鬼質を得た鬼童が鬼哭判定を行い、その後に正気度ダメージが封印された場合は、鬼の魂が目覚める可能性があります。この時に行う判定を開眼判定といいますが、これは封じた正気度ダメージの値を基準として行います。開眼判定を行うかどうかは封印判定の直後に選択しなければならず、後からこれを試みることは出来ません。
開眼判定に成功すれば鬼童は鬼の能力に目覚め、超常能力を1つ使用できるようになります。開眼判定は繰り返し行うことが出来ますが、鬼童に宿った鬼の魂がもともと保持していた能力しか使用することは出来ません。どの能力を使用できるのかは、キーパーが任意に決定して構いません。なお、特殊能力のうちでも基本能力を獲得することは出来ませんので、その点には注意して下さい。
▼火魂
通常、封印された正気度ダメージは鬼魂として保持されることになります。しかし、鬼童の場合は通常の鬼魂として保持されることはなく、火魂(ほだま)という特殊な魂が封印されることになります。
火魂は自身の意識であり、これが幽鬼として目覚めることはありません。しかし、これが荒ぶる魂の1種であることは間違いなく、火魂に魂を焼き尽くされた鬼童は、人の心を一切失ってしまうことになります。
・火魂の覚醒
火魂として封じられた封印ダメージが宿主の自我を上回った場合、もしくは正気度が0になって発狂状態に陥ってしまった場合には、火魂は宿主の魂を焼き尽くしてしまうことになります。この時、鬼童は人としての心を失い、鬼として完全覚醒を果たすことになります。
この時に目覚めた鬼のことを修羅鬼あるいは羅刹鬼と呼びます。これらはきわめて凶暴な性質を持つ鬼として知られており、周囲の何者に対しても容赦なく攻撃をしかけ、そして生きたまま相手を喰らって自らに取り込んでしまうと言われています。
▼封鬼
人としての心を持つ鬼童にのみ宿る超常能力が存在します。その力のことを封鬼といい、文字通り鬼を封じるための能力です。
・封印と浄化
封鬼に成功した場合、鬼童は自らの体に鬼魂を閉じこめ、時間をかけて浄化することが出来ます。これは鬼魂の象徴である鬼角を飲み込むことで施される霊的な封印であり、身につけているだけでは効果を発揮することは出来ません。
この場合は、一時的に自身の魂とは別の鬼魂を獲得することになりますが、霊能力によって鬼童の心が体を離れたり死亡するまでは、この魂が鬼童の体に宿ることはありません。ただし、幽鬼のように話しかけたりすることはあるようです。
・封印法
浄化を行うためには、2つ以上の鬼魂が1人に宿った場合とほぼ同様の方式で判定します。判定の基準となるのは鬼童の自我と鬼魂の値であり、およそ1ヶ月に1度の割合で対抗判定を行うことになります。
鬼童が勝利した場合は、封鬼した鬼魂が1ポイント低下することになります。ただし、鬼魂同士の戦いとは異なり、これによって鬼童の自我が上昇することはありません。逆に、相手が勝利した場合でも自我が減少することはありませんが、この時は自動的に火魂が1ポイント上昇してしまいます。そして同時に、鬼童の心が一時的に悪意に支配されることになります。
・飢餓状態
鬼には飢えるという感覚がありますが、封印に失敗して火魂が上昇した時は、この願望を止めることが出来なくなります。そして、愛が憎しみへとすり替えられ、親しい者や愛する者を食べようとしてしまうのです。このような事態に陥った場合、周囲に知り合いがいればその相手から攻撃しますが、誰もいなければシナリオアクションの保持対象に含まれている相手を優先して襲うことになります。
・鬼童の覚醒判定
鬼童は肉体に受けたダメージや、シナリオアクションの保持対象を鍵として、飢餓状態からの覚醒判定を行うことが出来ます。覚醒判定は自我の値が判定の基準値となりますが、それがシナリオアクションの保持対象に関係する刺激だった場合は、そのレベルを修正値として判定に加えることが出来ます。
覚醒判定に成功した場合、鬼童は元通りに正気を取り戻すことが出来ます。ただし、その時の状態や本人の認識次第では、再び正気度判定を行わなければならないでしょう。
▼鬼喰い
鬼童もまた鬼の一種であるため、鬼の体を食べ血を飲み干すことで力を蓄えることが出来ます。通常の状態でこれを行うことはまずあり得ませんが、飢餓状態に陥った時に周囲に鬼しかいなければ、鬼を食べてしまうことも考えられます。
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▼鬼姫
鬼姥もまた女性であり、人間や鬼との間に子供(必ず娘となる)を宿すことがあります。しかし、彼女たちは自らの子供を育てることはなく、捨て子としてどこかに預けたり人間の子供とすり替えるなどの方法を選択します。鬼姥たちは成人前の娘のことを鬼姫と呼んでいますが、いずれ時が来れば鬼姫を自らの仲間として迎え入れます。
鬼姥は鬼姫が少女のうちに接触することもありますし、成長しきってから迎えにゆくこともあるようです。いずれにせよ、その子供はやはり鬼姥となり、殆どは仲間のもとへと戻って来ます。早くに自らの正体を知った鬼姫は、両親や友人たちを破滅させ、その魂を手みやげに帰郷することもあります。
・特殊能力
鬼姫は鬼の力を自在に使いこなすことは出来ず、自らの能力に振り回されることがあります。
・吸血
鬼姥は子を産むために、人間の血を飲むという話が残っています。これは鬼姫に強い鬼の素養を与えるためで、鬼質の持ち主の血を選んで吸うようです。
▼鬼女伝説
・鬼女面
鬼姥の中には、鬼女面と呼ばれる鬼の面を持っている者がいます。鬼姥は鬼女面を顔につけることで、一時的に鬼へと変身することが出来ると言われています。
鬼女面は霊能者によって封じられた女性の鬼の面から作られたものだとも、鬼女(鬼姥)の死面をはぎ取ったものだとも言われていますが、詳しいことはあまり知られておりません。地方によっては、流産した鬼姫の体に鬼の面を被せて葬ると、いずれその魂が鬼の面に宿り、母に鬼の力の一部を授けるのだという言い伝えもあります。
・鬼女塚
民話の中には鬼女が埋められたという塚の話が残されていますが、そこには未だ滅びぬ鬼姥が眠っているとも言われています。鬼女は木乃伊(ミイラ)となって生を永らえ、鬼の魂を持つものの血液によって再び蘇るという伝承もあるようです。
・鬼女桜
鬼姥の死体が埋められた塚の上には、いつしか桜の木が生えるのだといいます。この桜もまた鬼質を宿しており、人々を狂気に酔わせる作用を持つようです。このような桜の下では自殺や血なまぐさい事件が後を絶たず、いつしか人々が寄りつかなくなってしまうのだと言われています。
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▼土蜘蛛兵
伝承における土蜘蛛の姿は蜘蛛の化け物として描かれており、大きな頭と影のように黒い身を持ち、繰り出した糸を自在に操るといわれています。
・土蜘蛛化
朝廷に反逆した者たちを指した土蜘蛛が、このような鬼に転じたのには理由があります。それは、彼らが実際にこのような姿で朝廷と戦ったためであり、自身が変化した身を土蜘蛛兵と呼んでいたからです。
土蜘蛛兵をつくるためには、神鬼降臨の際に神になれずに終わった「なりそこない」の血が必要となります。これを飲んだ者が一時的に変身する姿こそが土蜘蛛と呼ばれる存在であり、鬼の持つ力を自在に行使できたようです。
・影響
なりそこないの血には人の要素が半分まざっているため、一定期間であれば鬼魂の影響を殆ど受けずに活動することが可能となります。しかし、鬼の姿に変じている間は自身を制御することは出来ず、記憶も残っていないようです。そのため味方に危害を加えたり、人を食べてしまうこともあるようで、それを理由に自ら命を断った土蜘蛛たちも少なくありません。
▼鬼面
鬼の面には霊力が宿るといわれています。しかし、鬼の面といってもただ彫った面が霊性を持つわけではなく、執念を込めて作製した面に鬼の皮を張り付けたり、鬼角を埋め込んだ面でなければ、このような能力を持つには至りません。また、これとは別に鬼傀儡や石鬼、それから鬼火に魂を連れ去られた人間や鬼姥の体から切り取った顔もまた、鬼面としての力を宿しているといわれています。
・感覚
鬼面を被った者は、面の感覚を借りて周囲を知覚することが出来ます。たとえ視力を失った者でも目が見えるようになりますし、夜間でもはっきりと周りを見通すことが可能です。もちろん、鬼魂などの霊的なを感知する力も宿しております。
・超常能力
鬼が持っていた超常能力を利用できるようになります。ただし、かつての能力の全てを使えるわけではないようです。
・鬼降ろし
鬼降ろしを行う際に鬼面を身につければ、より確実に儀式を達成できるようになると言われています。実際、幾つかの寺社には本物の鬼面が残されており、儀式の際にこれを被ることがあるようです。
・鬼質と鬼魂
鬼面も気質を有する存在であるため、面をつけている間は後天的な気質を獲得することになります。また、鬼角を埋め込むなど覚醒している鬼魂を宿している場合は、いずれ幽鬼として目覚めることになるでしょう。
・肉付き
鬼面は伝説に残っている肉付き面ともなり得るもので、長いあいだ身につけていると顔に張り付き、肉と融合して取れなくなってしまいます。この際、面から出た触手のようなものが顔の肉にもぐり込んでいると同時に、霊的にも融合してしまっているため、外科的な手法でこれを取り除くことは不可能となります。霊能力によって処置を施さなければならないでしょう。
▼鬼火
・怨念
鬼火には意識は存在しませんが、憎しみの念だけは失ってはおりません。まれに墓場などにあらわれて、恨みにまかせて人を焼き殺すことがあります。鬼火は普通、熱を持たない蒼白い炎の姿で宙をさまよっていますが、人を殺す時には真紅に燃え上がり、相手を灼熱の炎で焼き尽くすのだといいます。また、餓鬼と一緒に出現して、周囲の者を隠世に引き込もうとすることもあるそうです。
・憑鬼
鬼火は死に属する魂なき存在へと憑依することが出来ます。しかし、ごくまれに壊死した生体組織や、死体の一部に宿ることもあるといいます。
たとえば、寄生鬼と呼ばれる鬼は人面疽としても知られており、体の一部に憑依して宿主を不幸に陥れたりします。このような鬼は、伝承では人面鬼や小袖鬼とも呼ばれているようですが、必ずしも顔だけの存在ではないようで、人体の一部から上半身だけを出した姿で描かれていたり、体内に自由に出入りすることもあると伝えられています。
死体の一部に宿る鬼としては、血鬼や髑髏鬼などと呼ばれる種類があります。これらは文字通り、血や骨などに宿る屍鬼の一種のですが、このような鬼は総じて不死性が高く、通常の手段では殺せない場合が多いようです。
▼魍魎鬼
・蛇と鉄
鬼は霊であり、古の記憶を受け継ぐ祖霊としても崇められておりました。そして蛇もまた、古くには祖霊として祀られていたという記録があります。
蛇も土蜘蛛たちと同様に、鉄と関連があると言われている存在です。たとえば、ヤマタノオロチ(八岐大蛇、八俣遠呂智)はスサノオに倒されていますが、退治した後に尾の1つを切り裂いてみると、そこにはクサナギのツルギ(草薙の剣)が隠されていたと伝えられています。また、オロチが住んでいたとされる斐伊川流域は日本有数の鉄の山地ですし、オロチの腹からは常に血がしたたっていたという話は、川が錆びた砂鉄で赤く染まっていた様をあらわしているという説もあります。
それから、土蜘蛛同様に征服されていった人々として、国栖(くず)、夜刀神(やとのかみ)、佐伯(さはく)などの名が残されていますが、このうち夜刀神は後に蛇の妖怪として語られることになります。この夜刀神という名に刀が含まれているのは、決して偶然ではないでしょう。
同様の例として百足の伝承が残っており、百足を祀った場所や出現したといわれる場所には鉱山があり、金や銅の鉱脈が存在していました。中国では百足は鉱脈を探し出す能力を持っているといわれていたそうで、このことが百足の伝承と関係しているのかもしれません。なお、百足は蛇の天敵であるとも伝えられており、日本でも赤城山に住む百足神と日光の男体山に住む蛇神が争ったという言い伝えが残されています。この間には足尾銅山が存在し、勝利した側の一族が鉱脈を手に入れたという史実をあらわしている可能性も考えられます。
・魍魎鬼の利用
これらの存在を鬼と同様に扱い、蛇鬼や百足鬼としてゲームに登場させても構わないでしょう。実際、伝承に残る鬼には様々な種類があり、このような存在がいても決しておかしいことはありません。有名なところでは牛鬼という存在がおりますし、天狗を鬼の一種として分類することもあるようです。
▼獣鬼
ごくまれにですが、獣に宿る鬼も過去には存在したようです。魍魎鬼として考えられている鬼の中にも、獣鬼であったものが存在したのかもしれません。
とはいえ、鬼の血を引く動物がいるとは思えないので、獣鬼が自然に生まれる可能性は殆ど考えられず、鬼角に触れて鬼質を宿すなどの特別な条件が必要となるでしょう。
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