8.アサムなぜ預言者を殺したの?
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サヴァ国の王アサムは預言者に「このままでは国は三つに割れましょう。残る二つの凶星を消し去るのです」と言われ、何を思ったのか「国王といえど父だーー!!」と預言者を一刀両断してしまう。国王は父としてよりも、国を想うことが第一であるはずなのに、いきなりの凶行に首をかしげた人も多いかと思う。しかし、これには預言者、アサムそれぞれ思惑があったのだ。
まず預言者だが、預言者というよりシャーマンと言ったほうがいいだろう。日本的に言えば、巫者(ふしゃ)だが、神の言葉を伝える立場として信仰を集め、国の実権を握ることも少なくない。日本でも卑弥呼がそのような立場であった。蒙古でもチンギス・ハーンの時代にテブ・テングリというシャーマンが、立場を利用して叛乱まで起こした。
サヴァ国のシャーマンも「アサムよ」と王を呼び捨てにしていることから、かなりの力を持っていたと推測できる。結果としてアサムの3人の子供は見事なまでに分裂し、ケンシロウがいなければ確実に分裂、そして滅亡していただろう。だがそれは結果論でしかない。このシャーマンは立場を利用して好き勝手なことも言える立場である。一代で武によって築いた為、地盤は磐石なものではない。二代目、三代目には武はもとより智も要求される。そこでシャーマンは邪魔な後継者をアサムに始末させ、その後も理由をくっつけては国を乗っ取るつもりだったのではなかろうか。国が割れたほうが乗っ取りやすいようにも思えるが、前述の通り結果論なので、大乗南拳の使い手が3人いる状況はシャーマンにとって好ましくなかった。
アサムの思惑はもうお分かりだろう。アサムはサヴァ国が自分の武力で持っていることを深く自覚していた。後継者が自分と同じような武力、そして国を保っていくための智力があるかと考えると不安だった。シャーマンは事ある度に、アサムの力を削ぐような預言をもっともらしい理由をつけては伝えていた。そこに来て、息子を殺せと言われ「このままではシャーマンの一族に乗っ取られるのではないか…息子達のためだ。やむを得ない。」とシャーマンを始末したのだ。シャーマンを信仰する民衆にも説明がつくような理由でもある。いくらシャーマンに信仰が集まっていたと言っても、この時点ではまだまだ実権は国王にあったので、実行するならこのタイミングしかなかった。そもそもシャーマンそのものが信仰されているのでなく、神が信仰されているのだから、シャーマンは別人でいいわけだ。
結論は国の乗っ取りを謀るシャーマンを始末したかったから
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