[経絡秘孔究明会に戻る]
北斗投稿考察

 投稿していただいた北斗の拳に関する考察です。
是非、考察(結論までちゃんと出した)を送ってくださいね。

1.二人のユリア】【2.南斗の将考察

1.二人のユリア
 ラオウ襲撃を知ったシンが、ユリアをラオウから守るためユリアを手放したというのは、五車星の作り話だ。ユリアは実際にシンの城から飛び降りて死んでしまっており、南斗最後の将として登場したユリアは、ユリアに似ている女である。
 シンが涙を流しながら語ったユリアの悲劇。あれを迫真の演技だったとするのは無理がある。シンは真実を語った。あの不器用な漢に演技はできない。「ユリア様は生きておられます」とケンシロウをだましたのは五車星の方だ。

フドウが語ったユリア救出劇が作り話であることの証明。
1.ラオウがシンを殺していない。
 つまりラオウはサザンクロスに現われていない。

 作り話の証拠となるのがシンの台詞「ケンシロウとの決着をつけるには好都合よ!! いずれおれかケンシロウ……どちらかがふたたびユリアの前に…」だ。これはKING編でクラブを殺害したケンシロウを見たシンが「北斗神拳…生きていたのか…」とつぶやく場面と矛盾する。ケンシロウは死んでいると思っていたシンが、ケンシロウとの決着を口にするわけがない。
 他にも矛盾点がある。シンはユリアをケンシロウから奪う際、リュウケンの墓を破壊し「このじじいが死んで、なにも怖いものがなくなった今」と言っている。ラオウも怖くなかったらしい(実際に闘えばラオウが勝つだろうが)。とすると、ラオウ来襲を告げられても「ならばこのシンが守り抜いてみせるわ!!」と言い張り、ユリアを絶対に五車星に渡さなかったはずで、シンがラオウにたじろいでユリアを手放したという話は、やはり嘘。

2.ユリアが飛び降りた時、都合よく五車星が下にいた。
 確率的に不自然。五車星はサザンクロスの城の下でうろうろしていなくてはならない。この段階でサザンクロス警備兵に怪しまれて連行される。
 また、幽閉されていたユリアが五車星に飛び降りる日時を連絡することは不可能。連絡できたとしても、頼りにならない五車星を当てにするだろうか?

--五車星は頼りにならないと断言する理由--
 慈母星ユリアを守護する立場にありながら、全くの役立たず。
 ユリアがシンに連れ去られようとしている。ユリアの危機である。拳の勝負で南斗聖拳伝承者にかなわなくても「シン様、思い止まってくだされ!」と懇願する事はできるはずだ。しかし五車星は止めに出ても来ない。核戦争のどたばたでユリアと逸れてしまっていたらしい。
 「南斗の飾りの慈母星の飾り」だから無能とは言わぬがむちゃくちゃ有能でもない。

KING編のユリアと慈母星編のユリアが別人である証明。
 シンは「強くて美しい」ユリアが好きだと言った。シンの言葉通り、ユリアは強い女性だ。最初ユリアはシンを拒み、最後はケンシロウを救うためにシンに身を寄せる。おろおろと手をこまねくことなく、自身の運命に毅然とした決断を下す。ユリアはシンと暮らすようになってもケンシロウを愛し続け、シンに貰った宝石を床に投げ捨て、シンに蔑みの言葉を送る。ケンシロウとの約束を守るため生き続けてきたユリアだったが、シンの人民への暴政に耐えられなくなり、自分の意思で死を選んだ。自ら考え、行動する強い女性だ。
 それが慈母星編ではどうだろう。「なに事にも抗うことなく天命の流れのままに生きようと思いました」「その南斗の将の宿命のままに!」。まるでアイリのように流される女だ。あと数ヶ月の命となったからといって、こうも変わるものだろうか。
 明らかに別人である。

 ではどちらが本当のユリアか。(本物のユリア、とは言っていないので注意してください)
 シンの城から飛び降りた方であると断定する。
 もっとも、自殺した方が偽者と考える事もできる。この場合、五車星が助けに来なかったのは本当のユリアではないからという理論が成り立つ。が、この仮説に立ちはだかるのが「ユリアがもてた」という事実である。慈母星編の死んだようなユリアには魅力というものが全くなく、これで異性に人気があるわけがない。しかし、KING編の活動的なユリアなら漢達に求愛されたのもわかる。南斗最後の将として用意された方が影武者だ。
 影武者は日常的に入れ替わっていたわけではない。顔が似ていても性格があれだけ違うのだから、二役一人にケンシロウ達は気付くはずだ。ユリア自身は代理ユリアの存在も知らなかっただろう。影武者はジュウザと遊んだ事がなく、親愛の情を持っていなかったため、「わたしのためにおまえの命がほしい」という冷酷な要求ができたのである。

 二人のユリアは本物と偽者という関係ではないと推測する。二人とも本物だ。
 ユリアのそっくりさんはユリアの姉妹と考えるとおもしろい。一人は慈母星として子供の時からちやほやされ、一人は影の存在。のびのびと育てられたユリアと、意思を持たないように育てられたもう一人のユリア。もう一人のユリアもユリアであり慈母星である。血が繋がっているから。
 生まれつき二人とも感情を失っていたが、一人は感情を取り戻し、もう一人は非人間的な人格のまま成長した。感情を持たないユリアはロボットのようだ。命令されなければ何もしないし、命令されればもう一人のユリアになりきり、ケンシロウを愛する。
 五車星は「慈母星」を守護するのが勤めであり、「全ての慈母星」を守らなくてはならない。上司は選べない。
 フドウを改心させた少女ユリアは美しく成長し、シンの城で命を絶ったが、もう一人のユリアがいる。フドウは「せめてもう一人のユリアには幸せになってもらいたい」という思いから、あの茶番劇に加わった。
 五車星はユリアがシンの城から飛び降りた事を知っている。つまり迎えに行った目の前でユリアに自殺されてしまった。取り返しのつかない失態であり、慙愧の念に駆られた五車星は、命を掛けて二人目のユリアをラオウから守ろうとした。

 ケンシロウやラオウが、このユリアは別の女だと気付かなかったのはなぜか。
 ロボット・ユリアが「私はあなた達が知っているユリアです」と自己暗示をかけたためだ。ユリアを演じるのではない、ユリアになるのだ。暗示にかかった女はユリアとして生き、ユリアとして死ぬ。
 ケンシロウもラオウも妙におしとやかなロボット・ユリアを「病気のため弱くなった」と信じて疑わなかった。なにしろ彼女は本人がそう思い込んでいる以上、間違いなくユリアなのだ。

二人目のユリアを動かした者は誰か。

 慈母星を守護する五車星に南北を動かす力はない。わかりやすく言うと、会長のボディガードに会社を動かす力はないという事だ。
 五車星としては二人目のユリアを最後まで隠し通しておきたかっただろうが、そうもいかなくなり、ユリア生存をちらつかせてケンシロウとラオウを闘わせた。誰かが五車星を操ったのだ。リハク達の背後には黒幕がいる。慈母星に従う五車星を動かす事ができる存在。南斗慈母星の上の存在。
 南斗聖拳そのものである。南斗聖拳の先人達、そして南斗聖拳全ての門徒と言い直す事もできる。

 「かつて南斗六聖拳は皇帝の居城を守る六つの門の衛将と呼ばれ…」
はレイの台詞だが、「皇帝」とは何を意味するのか。南斗六聖拳には一人、門番として役に立たぬ人がいるのだ。実際に番兵として中国の皇帝等を守っていたのではない。抽象的な意味で「皇帝」「守る」という言葉が使われている。象徴としての絶対権力を持つもの…南斗の先人を示している。(1800年続いた宗家の血は拡散しているため、南斗宗家は形骸化している。宗家と無縁であっても南斗六聖拳の伝承者となる事ができ、宗家の血筋は有名無実である。シンも実力で南斗孤鷲拳を伝承した。単純に前伝承者と考える方が自然だろう)。

 南斗聖拳は北斗神拳のために壊滅状態に陥った。シンはもとより、レイ、ユダ、シュウ、サウザー、飾り物のユリアまで南斗六聖拳は直接的または間接的に北斗神拳のために全滅した。次世代が台頭するにしても数年、十数年、数十年はかかる。南斗六聖拳不在の時代が暫く続くのだ。
 伝承をシン達の世代に託し、引退していた南斗のじいさま達の北斗神拳への怒りは想像に難くない。
 また、南斗鳳凰拳のように全流派が師匠の死を乗り越えて伝承するため前任者が存在しない場合でも、弟子達が黙ってはいないだろう。
 元はといえば南北は争ってはならぬという掟を破ったシンがいけないのだが、そのシンをたぶらかしたのがジャギであり、原因の原因は北斗にある。南北が乱れたのは鶏と卵の関係である。北斗神拳が一子相伝を謳っておきながら複数の使い手が存在しているがために陰陽のバランスが崩れた。表裏一体の表が綻びたら裏も綻びる。崩壊した南斗は「複数の暗殺者を擁する、あってはならぬ北斗」を終焉へと導く。
 北斗神拳のために瓦解した南斗聖拳の揺り返し(反撃)が、北斗神拳をあるべき姿に戻したとも言える。
 北斗神拳の使い手は名実共に一人となった。
 そしてユリアではないユリアと共に隠遁生活に入った北斗神拳伝承者ケンシロウ。南斗聖拳の伝承者は一時的に暗殺拳の歴史から消えたが、北斗神拳の伝承者も同じく消えたのである。
 ケンシロウが再び現われた時(帝都編)、南斗聖拳の新たな伝承者も決まったであろう。
Written by かまきりさん→[かまきりさんのサイト]

■感想
 影武者説というのは卓見ですね。「トキと同じ病」というのも不自然でしたしね。少なくとも影武者はどこかで死の灰を浴びていたことになります。ユリア自身は浴びてないので、やはり自殺して果てて、五車星がでっち上げたとするのが自然でしょうね。ただ影武者のラオウを涙させたオーラも只者ではないので、もしかして双子だったのかもしれません。
 南斗の血筋と聞いて「え?」と疑問に思った点については次の考察で、検証されています。

2.南斗の将考察
南斗の改革

 創始初期は南斗も一子相伝だった。しかし時代が下るに連れ、長兄よりも末弟が優秀というケースが出現する。苦肉の策として末弟にも分派の形で伝承を認める。ここから南斗は枝分かれを始め、同時に血筋より実力優先の道を歩み出す。
 分化を繰り返すうち、宗家の血筋でない者が頭角を現してくる。それも何人も何度でも。
 最初のうちは創始者の血を引いていない人間を伝承者争いから退けてきた宗家だったが、時代と共に宗家の意味より暗殺拳の意義を問う声が高まっていく。
 同じ実力なら血筋を重視して伝承者を決める方法もある。だが歴然とした力の差がある場合でも血縁者を優遇するのかという不満が大きくなり、見過ごされる問題ではなくなってきた。

 現実の相撲の世界でも外国人横綱が誕生するまでには紆余曲折があり、是非をめぐっての論争があった。
「日本の国技なのに横綱が外国人なのはおかしい」
「日本人と同じように努力し結果を出した外国人力士が、国籍を理由に横綱になれない方が変だ」
「外国人は横綱になってはいけないというのなら、初めから入門させるべきではない」

 同じような議論が南斗聖拳の世界でも展開された。
 そして画期的な結論が下され、創始者の血縁でない南斗聖拳の伝承者が誕生する。南斗はより強い暗殺拳を後世に伝えるため、宗家以外に伝承を許すという大革命を成し遂げる。
 宗家の血がより拡散してしまう事になるが、新しい血を入れる事を選んだ陽拳の南斗らしい決断である。

 有名無実となった宗家の血だが、その素質は受け継がれていく。宗家の血を引いた人間は生まれついての才覚と努力で南斗聖拳を伝承していく。南斗孤鷲拳だけでなく複数の流派をも習得しているシンがいい例だ。

 その南斗の頂点に立つ南斗の将は慈母星。不自然な名である。慈星でなく慈母星なのは女性が継承するからだ。なぜ女性なのか。

南斗の将の誕生

 ユリアが南斗宗家の大事なお姫様ならば、宗家ゆかりの者がユリアを守るのが普通ではないだろうか。
 しかしユリアを警護しているのは南斗とは無縁の五車星。そしてユリアの兄リュウガもジュウザも南斗聖拳を学んでいない。シンを除いてユリアの周囲には南斗聖拳と無関係な拳士ばかりいる。
 では南斗の将とは何か。
 南斗宗家が作り上げた虚無の存在、伝承の代用品である。
 その昔、宗家の血を引いていないという理由で伝承者になれなかった人間に与えられた称号なのだ。
 うがった推測だが、宗家を脅かすほどの資質を持っていたために、今後その氏族は南斗聖拳を使ってはならぬとされた。その代わり南斗の将として(形式的に)君臨できる、と。

 妻子を人質にでも取られていれば、この条件を飲まぬわけにはいかぬだろう。
 血がそれほど大事なのかという鬱積した怒りと恨みと諦めが、時代の波に飲まれ伝承者争いに敗れた男を初代南斗の将の位に就かせた。
 形の上だけにしろ南斗六聖拳の上に立つ事ができる。
 時勢に敗れた男の精一杯の抗議であったろう。
 南斗の将は南斗宗家に最も近い地位に置かれたため、傍目には南斗聖拳の総本山のように見えながら実は宗家の監視の下にある。
 南斗聖拳を使う事ができない南斗の将。女が将の地位につくようになるのも自然な事であった。
 やがて時は流れ、血筋に関係なく伝承者が選ばれる時代が来る。しかしその時すでに南斗の将は女が継承するだけの形のない存在に過ぎず、一族の男達は南斗聖拳を学ばなくなっていた。

宗家の逆説

 ケンシロウとユリアの婚約の事実が、ユリアは宗家ではない事を証明している。
 直系の北斗宗家と直系の南斗宗家の男女が結ばれるはずがない。生まれた子供にどちらを習得させるかという大問題が起こってくる。
 ユリアが宗家であればケンシロウとの交際も禁じられている。南斗宗家の女が産まなくてはならないのは南斗聖拳の伝承者であり、北斗神拳の伝承者ではないからだ。

 南斗の将一族は南斗宗家への積年の恨みを晴らすため、北斗宗家に接近した。
 ユリアの一族にとって北斗宗家と結ばれる事は悲願であったろう。祖先は南斗聖拳の伝承者となる事ができなかったが、男児が生まれれば北斗神拳の伝承者である。一子相伝、自動的。これで南斗宗家へ意趣返しができる。
 しかしユリアはシン(南斗宗家)に連れ去られてしまう。
 シンは自分の意思で動いているのだが、結果的に南斗の将一族の野望成就を阻止している。ユリア一族から見ればまたしても南斗宗家の横槍!と憤懣やるかたなく、二人目のユリアもまた、北斗神拳の使い手を一人に減らすまで南斗に利用されるのである。

 そしてユリアは一族からも宗家からも見捨てられ、病気なのにケンシロウの放浪癖に付き合わされる事になる。ユリアの一族は離散したと考えてよい。ユリアを最後に南斗の将は歴史から消えた。
 リハクも職を失ってしまい、リンとバット率いる北斗の軍に天下りするのである。
Written by かまきりさん→[かまきりさんのサイト]

■感想
 ユリアが南斗の正統な血筋というのはたしかに矛盾する点が多いですね。表裏とは交わらぬものですから。ユリアの最後の扱いや墓があの程度の規模だったことを考えると、既に宗家そのものが疎んじられていたか、宗家でなかったかのいずれかになるでしょうね。ラオウとの戦いに勝利した時点で、リハクやハーン兄弟のような南斗の残党が、豊かな「最後の将の街」で祀りあげてなければおかしいですから。それが手をこまねいて、帝都の専横を許し、レジスタンスへと身を投じていったことを考えると、疑わざるを得ません。それとも先の感想のように、南斗最後の将は双子で、ラオウが用意したのが影武者だったのかもしれません。なにせユリアが病気だったというのも、ラオウの情報に過ぎませんから。

もうこのページから落ちたい(爆)