西伊豆/波勝崎/海金剛/VAGABOND

<西伊豆/波勝崎/海金剛/VAGABOND>


ARIアルパインクラブ/有持真人・河角敏樹




(記録)有持真人

1 ルート  西伊豆/波勝崎/海金剛/VAGABOND

2 グレード 5.9/AA2(245m)11P

3 メンバー ARIアルパインクラブ(有持真人、河角敏樹)
 
4 内容  海金剛はアメリカンエイドのルートとして、2年ほど前に開拓されたエリアで現在5本のエイドル
     ートが開拓されています。今回登ったルートは一番最初に開拓されたルートです。登ってみて、最初
     に付けられたグレードよりかなり簡単に感じられたので、初登のグレードと今回のグレードを表記し
     ます。

5 登攀時間  約3時間30分(8Pまで)

6 ルート(右の括弧のグレードは今回のグレード)

 1P AA1/35m (5.9)
     所々、木の生えているクラックをフレンズを使い登る。AA1になっていたが、フリーで十分に登ること     ができる。ジャミングがしっかり決まるので快適。

 2P 5.7/15m(X−)
     木のビレーポイントから、右上ぎみにフェースを登るか、トラバースしてカンテを使って登り、ブッシ
    ュの中でビレー。残置はなく15mのランナウト。

 3P U/15m
     ブッシュ帯を右上しブッシュの右端でビレー。

 4P 5.9/AA1/20m
     小カンテを越えて、ナイフブレード1本、フリーでスラブを右上しクラックをキャメロット、フレン
    ズ、エイリアンで登り、ロストアローのタイオフ4本で立木のビレーポイントへ。

 5P AA2/20m(X−)
     トポには脆いリスをナイフブレードでトラバースと書いてあったが、少し度胸があればX−のフリーで
    行くことができる。ただし、残置ピトンはないので15mのトラバースのランナウトになる。墜落距離か
    らいえばAA2かもしれない。

 6P V/40m
     ブッシュを直上し、小凹角から右上し右へトラバース。

 7P AA1/15m(5.9/A1)
     クラックをエイリアン、キャメロットを使いフリーで直上し、今にも抜けそうな残置リングボルト2ポ
    インでビレーポイントへ。

 8P AA1/15m
 フリーで3m登り、小凹角をナイフブレード、バカブー計6枚で上部城塞の大テラスへ。

 後、簡単な3Pが残っていたが、雨が降り出したために、ここで終了とし、懸垂下降をする。
このルートは、究極の難しさはないが、アメリカンエイドの入門ルートとしてそれなりに楽しむ事ができます。

 このエリアは、入山者がほとんどいないようで、アプローチもヤブのルートファィンデングがしっかりできるパ
ーティでなければ迷ってしまいます。半日ぐらいはかかったという事も聞きます。今回は中間部で少しルートをは
ずしてしまいましたが、約1時間で海金剛につきました。次回のために、ポイントにテーピングをしてきました。

 海金剛を観察すると、まだルート開拓の余地があり、AA2〜AA3のルートができそうなクラックがあったので、ち
かじか開拓に行くつもりです。ルートができたら公開します。

 ここでは、水は一切とれないので、夏はかなりの量の水を担いで行かなければなりません。クライミング適季は、
秋から冬です。



(記録)河角俊樹

1996年6月30日(日)
                     
 当初、谷川岳に変形チムニーへ行く予定であったが、北の方は天気が今一ということで、暑いのを覚悟で西伊豆
の海金剛へ行って来た。

 29日の夜10時位に有持氏宅を出発。午前1時には、トポに書いてある青い小屋前着。車中で仮眠をとり、午
前4時30分起床。5時より歩き始めるが、どうしても入り込むところが分からない。20分ほど藪の中に入って
は戻りと繰り返して、やっとの事でそれらしき踏み跡を発見する。途中、かつての農作業小屋のあたりで、踏み跡
が消えて分かりづらくなるが、藪の中を15分から20分位進むと、再びハッキリした踏み跡にでる。ここよりこ
の踏み跡を30分位進み、海金剛の右下の入り江に出る。

   天気は、曇りがちであるが、西伊豆ということもあって、海は大きく綺麗である。岩の方に目をやると、高さ
はあるが思っていたより傾斜がないような感じがする。

 入り江より、取り付きらしき場所に進んでみるが、どうもハッキリしない。他のルートのトポなどを見ると、フ
ィックスが1ピッチ付いていて、その左隣がルートらしいので、とりあえず有持氏リードで登ってみる。初登攀は
AA1というグレードをつけているが、どう考えても5.9以下というのが正しい様な気がする。

 2ピッチ目は河角リードで傾斜の緩いスラブを右へトラバース、その後カンテを直上。難しくはないが、プロテ
クションがとれず、少し怖い感じがした。

 3ピッチ目、ブッシュの中のバンドを右上する。

 4ピッチ目、グレードでは、5.9のスラブと書かれているが、登った中では一番悪い感じであった。出だしは、2
ピッチ目と同じ様なスラブを右上後、フィンガークラックをネイリングとフレンズ等を使って登る。クラックの右
手の部分が浮き気味で、ハーケンの効きが多少悪い様な感じがした。ビレー点から4〜5m位の所で左のリスに移
り、ロストアロー、アングルなどのタイオフでビレー点へ。

 5ピッチ目がAA2で核心のはずだが、どう考えてもその様には見えない。有持氏はフリーで越える。AA2という事
で、期待していた核心なのに、あてが外れてしまった様である。

 6ピッチ目、ブッシュの中を登る。

 7ピッチ目、ボルトラダーと言う事であるが、古いボルトなのか、それとも海に近いため錆やすいのか、出だし
でボルトに乗った所、抜けそうになる。あわてて降りて、ボルトに平行して直上しているクラックにフレンズ、を
かませて登る。ボルトよりもフレンズの方が安心できるから不思議である。クラックより左2mほどの所にビレー
点があるので、錆びて腐ったボルト2ポイントでビレー点へ。このあたりで雨が降ってきたが、さらに1ピッチ延
ばし、雨の中、有持氏リードで大テラスへ。後簡単な3ピッチがあるが、雨も降ってきたのでここより下降する。

 登ってみての感想は、ピッチスケールがすごくいい加減で、初登者の感覚を疑いたくなる。どう考えても、書い
てある長さの半分か、6割位の長さしかない。特に、7、8ピッチ目を懸垂した所、併せて40mのはずが、50
mザイル1本でできてしまう。これはいったいどう言う事か?

 又、AA2などと言う困難なピッチをフリーでリード、フォローできてしまうと言うのでは話にならない。しかし、
東京近郊であれだけのスケールの岩場がほとんど手つかずと言うのは、他には無いと思う。その様な中、この様な
岩場を発見し、ルートを作った初登者の熱意には敬意を表したいと思う。
 又、今後もいくつかのルートを作れる余地が大いにあるので、この冬などにルートを開拓してはどうだろうか。




★ エリア別山行記録へ戻る

★ INDEXへ戻る