<報告者> MSCC/川上
<遭難事故日> 2004年12月30日(木)
MSCCの川上です。
既に、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、
私は、昨年の暮れ(2004・12・30)八ヶ岳南沢大滝で滑落事故を起こしました。
当MLの有持さんには大変お世話になり、おかげさまで今日・しっかりと社会復帰しております。
事故原因そのものは、あまりににもお粗末な内容なのです。
個人的には、あまりにもカッコわるいので、広く言いふらしたくない気持ちもあるのですが・・・・
つまらない理由で命を落としているケースも少なくないのが実情だと思います。
この手の事故としてはかなり詳細に全貌を明らかにしていると思います。
事故の当事者が生きていて、それを形にしたケースが少ないからだと思います。
山岳関係者として、少しでも、この手の事故の回避に繋がれば・・貢献できれば・・と思い投稿しました。
事故発生から、すっかり遅くなってしまいましたが、事故報告書をHPにUPしました。
ご一読のうえ・ 戒めとして、事故の回避に役立てていただければ幸いです。
★ http://homepage2.nifty.com/mscc/minamisawa2004dec/minamisawa041230.htm
川上さん、こんにちは。黒澤と@猫の森です。
いつもお世話になります。報告読ませていただきました…
> 事故原因そのものは、あまりににもお粗末な内容なのです。
> 個人的には、あまりにもカッコわるいので、広く言いふらしたくない気持ちもあるので
> すが・・・・
お気持ちはお察し申し上げますし、勇気を持って投稿されたことについても敬意を表
します。つい先日、二子でロープ外れの事故があったばかりですので、こういった報
告は貴重であると同時に「長くクライミングやってりゃ、誰もが叩けば埃の出る身体
(思い当たる事がある)」のではないかと思います。
かくいう僕も、懸垂下降が終わってエイト環を外そうと思ったら安全環が締まってい
なかった…なんてて言うのは日常茶飯事でした。数年前、湯河原幕岩で登攀準備中に、
親しい方から「ロープ結んでないよ」と指摘された事もあります。
この種の事故は「あってはならない」とか「こうこうこうすれば防げる」とか言われ
ますが…
(事故を起こす)確率は低くできても、完全に無くすことは出来ない
…というのが、現実だと考えています。昔、あるクライマーの記事に「事故の原因は
ボケ、ボケる事は誰にもある、ボケは防げない」という記事がありましたが、名言だ
と思います。つまり、クライミングをやるということは、いつかはボケて死ぬ順番が
回ってくる(かもしれない)…これを承知の上でやる行為なんだ…こう考えています。
> この手の事故としてはかなり詳細に全貌を明らかにしていると思います。
> 事故の当事者が生きていて、それを形にしたケースが少ないからだと思います。
> 山岳関係者として、少しでも、この手の事故の回避に繋がれば・・貢献できれば・・と
> 思い投稿しました。
拝読しましたが、かなり特殊なケースですね^^;
僕は今、子供を教えていますので、この種の簡略化はよくやっています。
自分が置かれている環境で、同様の事故が発生しないか、今一度点検してみようと思
います。情報提供、ありがとうございました。
黒澤と@猫の森さん
ご理解あるレスありがとうございます。
森さんの様に言っていただけると・・少し気が楽になりますし、投稿した甲斐があります。
・・早速で申し訳ないのですが・・文中に間違えがありました。
既に訂正してあります。
訂正箇所は、カラビナの加工方法(材質)についてです。
訂正前は、”ダイカスト”でしたが、”鍛造”が正です。
申し訳けありませんでした。
ACMLメンバーの方でDMでご指摘を送って頂きました。
大変ありがたいことです。ありがとうございました。
他にも誤りや気づいたことがありましたら、DMでご連絡いただけると幸いです。
MSCC 川上
川上さん、みなさんこんにちは。黒澤と@猫の森、です。
大事な事を見落としていました…
>> この手の事故としてはかなり詳細に全貌を明らかにしていると思います。
>> 事故の当事者が生きていて、それを形にしたケースが少ないからだと思います。山岳
>> 関係者として、少しでも、この手の事故の回避に繋がれば・・貢献できれば・・と思
>> い投稿しました。
>> ★ http://homepage2.nifty.com/mscc/minamisawa2004dec/minamisawa041230.htm
よく見たら…これって、そもそも安全環にセットしたときも(ハーネスそのものが)
外れるんじゃないでしょうか?
★ http://homepage2.nifty.com/mscc/minamisawa2004dec/minamisawa041230kawa2.htm
図2の状態になった場合、例えば空中懸垂のときなどに外れたとすれば、思いっきり
逆さになって…最悪の場合はハーネスごと脱落しませんか?
経験的に…シットタイプのハーネス(のスワミ部分)が、腰骨より下に来ることはよ
くあります。その状況で逆さになったら、これ抜けますよね…
どうも本件は、ハーネスそのものの「構造上の欠陥」と考えることも出来るように思
えますので、取り敢えず、メーカー責任の有無を検証すべきだと思います。
僕の想像が正しければ、このハーネスを使っている全てのユーザーが、とんでもない
危険にさらされていることになりますよ^^;
川上@MSCCです。
黒澤さん皆さんこんにちは。
黒澤さんの問題定義に僕の考えを記述します。
> どうも本件は、ハーネスそのものの「構造上の欠陥」と考えることも出来るように思
>
> えますので、取り敢えず、メーカー責任の有無を検証すべきだと思います。
の件ですが・・・
先ず、僕の場合、正しい使い方をしていなかったのですから、メーカー責任とはいえないと考えてます。
個人的な意見としては、シット・ハーネスはメイン・ロープかビレイ・ループを直接ハーネスに結んで
使用する構造のものです。基本的にセンターテープの安全環に直接ロープなどを結束して使うことは想
定されていないと解釈しています。
極端な話、シット・ハーネスの場合、ハーネスの全てのバックルからベルトが抜けたとしても、正しい
ロープ結束をしていれば、ほぼ正常にその機能をはたす構造になっています。 そういった意味では、
レッグ・ループタイプのハーネスより安全です。
今回のハーネスは、ICIのものでセンター・テープの長さが調節できるのはいいけど、折り返しが出
来ない構造です。
購入の際にも認識していて、今ひとつ気に入らなかったのですが、まぁ・・マイナーな欠点として購入
しました。
それ以前使っていた、ゼロポイントのライト・ウエイト・シット・ハーネスは、ソーイングされている
ので、安心感がありました。
いずれの場合も、僕はメイン・ロープかビレイ・ループを直接ハーネスに結んで使用していたので大き
な問題として考えていませんでした。 ただ・周囲ではそこの安全環だけでビレイしている人やラッペ
ルしている人が多かったと記憶しています。親しいクライマーには、今一安全じゃないのでやらない様
にと説いていました。実際のところ・・わざわざビレイ・ループを作ってビレイしている人やラッペル
している人は見かけてことがありません。
そういう自分自身でも、たまに、その方法でラッペルとかをすることがありました。やはり、今回の事
故と同様で、余分なスリングがなかったとか、周りもやっていて大丈夫だから、ちょっとぐらいは・・
的な感覚です。
僕、個人の認識としては、シットハーネスの安全環だけでビレイやラッペルをするのは間違った使用法
だと思っています。
僕の場合はその構造や弱点を知っていて事故になりました。
そういう人間が言うのもなんですが、ハーネスの構造ぐらい、仮に取扱説明書が無くても、”よく構造
を見て・よく考えて使えよ”って言うのが本音です。もともと危険なことをしてるわけですから、その
全てのリスクはその個人にあるはずです。ユーザーが気がつくはずの無い、欠陥や不良はモラル的には
メーカー責任といえるといえますが。
そうはいっても、クライミング人口も増えてきたことだし、スタイルも多様化してきた中で、今時・専
門メーカーがクライマーの慣習から、誤った使い方をする恐れがある製品にたいして、危険周知や回避
した構造を取っていない・・というのも事実だと思います。何かしらの形でメーカーにフィード・バッ
クかけるのもよいかと思います。
僕・個人としては、メーカーに責任を問う意思はありません。
つまり、メーカ責任有無の追及は必要なことではないと考えています。
必要なことは、今回のような事例をきっかけに、使い勝手上の実情などをメーカーに理解してもらって、
製品にフィードバックをかけてもらうことだと考えています。 クライミング・ギアの進化は、(より
良い製品・安全性の高い製品)はクライマーとメーカの双方に益なことですから。
いずれにしても、メーカ不在のところで議論を進めるより、早い時期から加わっていただいた方が有益
だと思います。
ACMLのメンバーでメーカー関連の方がいらっしゃいましたら、是非アドバイスが欲しいと思います。
ご意見お聞かせください。
また、HPを持っておられるメンバーも多いかと思います。 個人的には、恥じを更に広めることにな
るので、ちょっと抵抗がある(^^;)のですが、それぞれのHPで、この報告書を紹介していただい
て山の事故の事例として認識していただければと思います。
僕がこの報告書をここに投稿した目的は、””あくまでも、クライマーの危険に対する意識付けによる
事故の回避””です。
ですから、いろんな角度からの議論や検討は一向に構いませんし、僕も加わりたいと思います。
しかし、この事故に関して、僕(自分)以外の誰にも責任という言葉は向けたくありません。
報告書:★ http://homepage2.nifty.com/mscc/minamisawa2004dec/minamisawa041230.htm
川上さん、こんにちは。黒澤と@猫の森、です。
>> どうも本件は、ハーネスそのものの「構造上の欠陥」と考えることも出来るように思
>> えますので、取り敢えず、メーカー責任の有無を検証すべきだと思います。
>
> の件ですが・・・
>
> 先ず、僕の場合、正しい使い方をしていなかったのですから、メーカー責任とはいえな
> いと考えてます。
今回の場合、不法行為ではなく民事ですから、有罪か無罪かと言った「ALL OR
NOTHING」の考え方ではなく、双方に「どれだけの過失があったか(過失割合※)」
で判断すべきです。
(※ある案件で100万円の損害が発生した場合、双方の過失が50%対50%の場合、双
方が損害を50%づつ補填する…交通事故などでよくある処理方法ですね^^)
そう、正しい使い方をしなかったのは川上さんの過失ですが、川上さんに錯誤をさせ
たメーカーの責任は「完全にゼロなんだろうか?」というのが僕の視点です。
> 個人的な意見としては、シット・ハーネスはメイン・ロープかビレイ・ループを直接ハ
> ーネスに結んで使用する構造のものです。基本的にセンターテープの安全環に直接ロー
> プなどを結束して使うことは想定されていないと解釈しています。
これには異議があります。懸垂下降では当然のように、センターテープの安全環にメ
インロープがセットされています。主加重がかかること、外れたら致命的なこと、
(空中懸垂などで様々な体勢になる事)などから考えると「外れていけないという点
では同一」とみなせます。
またシットハーネスにはビレイループが付いていないため、セルフビレイ用のスリン
グ等をセンターテープに結束するクライマーをよく見かけます。
勿論、こういった使い方は説明書に記述されているわけではない…しかしながら、説
明書には、ギアスリングなどからセルフビレイを取ることを禁ずる記述があります。
やってはいけないこととの「記述が不足していた」場合、それは過失なしとはできな
いと考えます。
> 極端な話、シット・ハーネスの場合、ハーネスの全てのバックルからベルトが抜けたと
> しても、正しいロープ結束をしていれば、ほぼ正常にその機能をはたす構造になってい
> ます。 そういった意味では、レッグ・ループタイプのハーネスより安全です。
これにも異議があります。これはメインロープだけに特化したお話だと思います。
ハーネスの役割は「上に登るためだけのモノではない」のです。
> 今回のハーネスは、ICIのものでセンター・テープの長さが調節できるのはいいけど
> 、折り返しが出来ない構造です。
ですから、この点が「致命的な欠陥ではないのか?」と申し上げています。
> 僕、個人の認識としては、シットハーネスの安全環だけでビレイやラッペルをするのは
> 間違った使用法だと思っています。
ですからそれは、説明書に記載されていましたか?
> 僕の場合はその構造や弱点を知っていて事故になりました。
> そういう人間が言うのもなんですが、ハーネスの構造ぐらい、仮に取扱説明書が無くて
> も、”よく構造を見て・よく考えて使えよ”って言うのが本音です…
冷静に考えていただきたいのですが、クライミングは遊びです。人類の進歩発展に寄
与する使命もったモノじゃないんです。
そして、その遊びの道具が人命に関わるんです。取り説や、本体には「やってはいけ
ないこと」の注意があって当然だと思います。
> 僕・個人としては、メーカーに責任を問う意思はありません。
> つまり、メーカ責任有無の追及は必要なことではないと考えています。
> 必要なことは、今回のような事例をきっかけに、使い勝手上の実情などをメーカーに理
> 解してもらって、製品にフィードバックをかけてもらうことだと考えています。 クラ
> イミング・ギアの進化は、(より良い製品・安全性の高い製品)はクライマーとメーカ
> の双方に益なことですから。
であれば、HPとして公開する前に、よくメーカーと話し合うべきではありませんで
したか?これにメーカーの側からの検証が加われば、よりより資料となるだろうし、
メーカーの判断でリコールなどの措置を行い、無駄な血を流さずに済むのではありま
せんか?
この場にメーカーの方が出てくるのは…たぶん無理だと思います。冒頭でも申し上げ
たように、本件は民事として扱われる可能性があります。これは川上さんに「その意
志があろうが無かろうが」企業として懸念する部分です。
そして民事とは一般に「個対個(または会社)」ですから、山岳会とか匿名性のある
HPやMLにはメーカーサイドとしては働きかけにくいと思います。
川上さんの事故報告には、連絡先などが記載されていません。
出来れば川上さんご自身がメーカーに出向くか、それが不可能なら、メーカーからの
連絡を受けやすいようにする事がベターだと思います。
こんにちは
UIAAのCE(登山用品規格)でのハーネスの強度について
ハーネスの強度についてUIAAは1998年七月にCE(登山用品規格)を制定しています。
欧州ではその年以降、この規格以下の製品を販売してはならないという強制
的な意味をCEは持っています。
さて、懸垂下降におけるハーネスのUIAA のCE(登山用品規格)ですが、問題部分は
1)懸垂負荷のかかる全てのループは15kNの強度を持っている事。
2)バックルのテープの滑りは最大20mm以下であること。
3)。。。(その他、細々と規格がありますがここでは省略)
という文言です。
川上さんのハーネスが98年以上の欧州製品であって耐用年数以下の使用で欧
州で使っていれば(2)のテープがバックルからすっぽ抜けたことが今回の事
故の最大原因とされるでしょう。
ただし、日本ではまだこの規制はありません。
日本では道具は最近制定された製造物賠償責任法以降の製品での問題でしょう。
98年七月以降の製品でこのUIAA規格以下のものであれば、欧州ではメーカー
の責任となります。まず、事故よりも、製造販売したという時点でメーカーの
責任となります。
最近、古いドンウイランスのタイプのハーネスでテープがすっぽ抜ける折り
込みのないものは欧州製品では見なくなりました。バックルに通された状態の
テープには必ず折り込みがあり、絶対すっぽ抜けない構造になりました。
日本で、バックルからテープがすっぽ抜ける古いウイランスのタイプを売っ
ているのは日本のメーカーだけではないでしょうか?
もはや、川上さんのこんな事故例があるわけですから、たとえ欧州製品は
UIAAが1998年にCE 規格を制定したということは知らなかったとしても、製造
物賠償責任法施行以降の製品なら、日本で販売する場合、「すっぽ抜ける可能
性があります」という表示が今後、必要なんじゃないかと愚考します。
ただし、ドンウイランスのタイプのハーネスの古い製品(例えばトロールな
ど)ならすでに減価償却のすんだものでしょうし、もはや登山者が自己責任で
使っているという年代物を時折見かけます。
昔はメインロープを5重巻きにしてハーネスを作りましたが、メインロープ
の耐用年数とハーネスの耐用年数はほぼ同じぐらいと考えるべきでしょう。
バックルも耐用年数があって当然でしょうし、製品の耐用年数が過ぎれば欧
州の98年以降の製品でもUIAA規格以下になり、テープがバックルで規格以上に
滑り出す危険があることでしょう。だから新製品でも念のため折り込みが必要
になるわけです。
シットハーネスもプラスチックブーツの破損事故の耐用年数と同じように、
10年たっても新品と同じ強度があると考えない方が良いでしょう。だから、過
失割合という考え方も出てくるわけですね。
川上さんから、メーカーへ事故報告して教えてあげることは本当に良い事だ
と思います。
私も今回の報告を読み、確かに新しいハーネスの懸垂ループと間違えてここ
の部分に8環を引っ掛けて懸垂する人は今後もいるだろうと想像します。
危険が想定出来ますから、商品に「危険の注意書」の表示をする必要がある
と思います。
最近は、少しベルトを細くして「沢登り用」などと書かれたものもあり、ま
だまだ販売されていますから正しい利用方法も書いておくべきでしょう。とい
うのも、沢登りなどでクライミング技術の未熟な人でもこうした懸垂用の道具
を使うわけですから。。。
では、お互い安全登山を!
川上@MSCCです。
ACML並びDMで貴重なご意見・助言・ご指摘を頂いています。
皆様ありがとうございます。
1.MSCC HP 事故報告の訂正・修正について
ビナの加工方法については、先のメールの通りHPの方を訂正いたしました。
後の助言としてまだ修正していない以下の5点があります。
修正・追加には少し時間がかかります。申し訳ありませんが、ACML内だけでもご周知の程願います。
@シットハーネスの結び目(こぶ)の位置は、ビナとハーネスの間に位置するのが正しい使い方である。
こぶがビナにかかることで大腿部に荷重が分散して、レッグ・ループタイプのハーネスに近い安全性が得られる。
(MSCC HPでは、逆の記述になっているので修正するつもりです。 初期のtorllの取扱説明書にも、そのように説明があったそうです。 大腿部に荷重が分散し易くなことは物理的にも理解できます。 しかし、ビナに結び目をひっかっけて使用する構造となるので、普通に考えると不自然で、ロープにも部分的にストレスが集中するようにみえます。
現在・念のためメーカー記述の存在を調査しております。 ご存知の方がいらっしゃいましたらお知らせください。)
ご指摘くださった方には電話でお話しているので、ご理解いただけていると思っていますが・・
単にメーカーの設計コンセプトの記述が欲しいのです。他意はありません。・・念のため
Aクライミングにはレッグ・ループタイプを推奨する。
(腰と大腿部に荷重が分散することがシットハーネスより確実なので)
(これは、一般的に広まっていることですが)
Bシットハーネスのビナによる懸垂は厳禁。
MSCC HPでも、推奨はしていない。しかし、”これもありなのかぁ”と思わせる恐れあり・表
現を変えたほうがよい。
Cビナ同士の結束は、こじれたとき、ゲートが開いてしまう恐れがあるので危険。
必ず、スリングなどを介在させること。
D安全環カラビナと日本では呼ばれるている。しかしロック機構があるだけで、”安全”という表
現は本質的ではない。ゲートがロックされているだけで、ピンで止まっているゲートは一般のビナ
とほとんど変わらない。
(参考までに)
2.製品(ハーネス)やその扱いに関わる情報について
Hirotsugu_MURANISHIさん UIAAのCE(登山用品規格)の情報ありがとうございます。
先のメールにも書きましたが、僕が事故当時使っていた、ハーネスはICIのものです。 恥ずかし
ながら年式は不明です。
購入時期を忘れてしまいました。
ICI石井スポーツ関係の方からDMを頂きました。
ご協力・情報提供ありがとうございます。
””新宿西口店では現在はシットハーネスやスワミベルトは危険性がある、それを理解せずに使う
人も多いからというような理由から店頭には置いていませんし、どうしてもという方にのみ接客し
て対面販売ののちに購入していただくようにしております。””
とのことです。
WEBを見ていると・・・シットハーネスのビナはビレイ・ループのごとく扱われているサイトが意
外と多いことに驚きました。
僕のように、よくないことは知っていても、状況次第では、”まぁ・・よかんべ”でそれをやって
しまうものいれば、
ビレイ・ループと同様に使うことを正常な使用方法であると誤認している人もかなり多いようです。
ICIさんが行われている上記サービスが妥当であることが納得できます。
増田@YCCです。
ウィランスタイプのシットハーネスに関するお話です。
ずいぶん昔の記憶を辿っていますので間違っていたら済みません(村西さん、お気付きの事があれ
ば指摘して下さい)そして、とりとめのない長文になってし
まいました、ごめんなさい。
まず、この手のタイプのハーネスの元祖はトロール社のウィランスシットハーネスです。
このハーネスが日本に入ってきた30年ほど前のクライミング形態は現在とはかなり異なっていま
した。
当時ビレイは器具を使わない肩絡み、腰絡みが普通に行われていました。
エイト環(確保器としての)やビレイプレートもようやく使われはじめた頃だったと思います。
他社のものも、上下セパレート式、パラシュート式(フルボディタイプ)等がありましたが、いず
れもロープを結んで初めて形ができる(結ばないと前面が開
いてしまう)形式で、70年代頃にビレイループのあるハーネスをみた記憶がありません。
従って、あのころハーネスにビレイループをつけると言う発想はなかったと思います。
また、トロール社のシットハーネスに付いていた説明書には、大きな墜落の可能性がある場合には
チェストハーネスを併用する事という注意書きがあったと記
憶しています。
当時、クレバスに落ちるなどでチェストハーネスやスワミベルトで長時間宙吊りになると窒息死す
る事が判明し、チェストハーネスの場合はレッグループを併
用する事が奨励されていましたし、トロール社のシットハーネスも本来こう言った場合に荷重を腿
にかけるという目的で開発されたと思います。
そして、クライマーたちがシットハーネスのみでロッククライミングをする事に対し、安全性の面
から批判する書物もありました。
しかし、フルボディハーネスに比べて動きやすく、ロープ直巻きやスワミベルトよりは安全性が高
いと言う理由から、多くのクライマーが使いはじめ、ハーネ
スのスタンダードとなってしまいました。
私も含め、当時は危険性が指摘されている事を承知の上で、自己責任でシットハーネスのみでクラ
イミングをしていた人が多かったと記憶しています。
まあこの辺りはヘルマン フーバーの書いた「現代登攀技術」の初版あたりを参考にして下さい。
改訂新版すらかなり前に絶版になっているので入手は非常に困難ですが。
あと、ダグ スコットの「ビッグウォールクライミング」あたりも(これも絶版、もはや稀覯本か)。
長くなりましたが、要するにこのタイプのハーネスは氷河歩きや雪山、せいぜい沢登りレベルで使
用されるべきもので、現在のようなクライミング形態に対応
できる物ではありません。
本家トロール社でもとうにこのハーネスの生産を中止して、ビレイループ付きのハーネスに変更し
ています。
ブラックダイアモンド社のボッドハーネスのようなタイプです。
今やシットハーネスといったらこちらのタイプで、やはり雪山用簡易ハーネスという位置づけのよ
うです。
ウィランスタイプのシットハーネスがその限界も知られず漫然と登攀用として使用され続けている
日本の状況に危惧を感じています。
さて、本家ウィランスハーネスのウェスト部分のバックルはちゃんと折り返しするようになってい
ましたし、股のウェスト部分に通すループの部分にはバック
ルがありません。
この部分のバックルは日本の某社が発売した類似品のオリジナル部分です。
川上さんのケースは写真から見ると、ご本人も自覚されている通り、誤ってウェストベルトにとお
したループに荷重してしまったのが原因のように思われます
ので、想定外の使用法によるものでしょう。
通常の使用方法である限り、どういう体勢になってもこのバックルに荷重がかかる事は無いように
思われますから。
しかし、今日びの社会状勢ではメーカー側にも説明書に注意書きを追加してもらった方が良いでし
ょうね。
ただし、この股の部分のカラビナに直にエイト環を取り付けて懸垂下降する場合は(川上さんの解
説の例4)問題があると思います。
例えば、荷物を背負った状態で空中懸垂になった場合ですが、このハーネスは反転して頭が下にな
りやすいです。
このときは、この折り返しのできないバックルに全体重+ザックの重さが集中し、あまり望ましく
ありません。
この使い方は説明書ではどう扱われているのでしょうか。
この部分にバックルを使っていない製品では問題ないでしょうが、逆さ吊りというのはいい気持ち
はしませんね。
足が壁に着かない場合はやはり例3の方法プラス反転しないようチェストハーネスを併用すべきで
しょう。
もちろん登攀時には正規の結び方をしていれば問題ありません。
でも、ウィランスタイプのハーネスがどういうものかは理解していただきたいです。
個人的には、もう登山用具史のなかに去って欲しいと思っています。
今日のビレイループ付きのタイプを使っていれば上に指摘したような事は起き得ないのですから。
川上さん、皆さん今日は、大阪の菅です。
クライミング用具に対するみなさんの真摯な取り組みに頭が
下がります。
私からも少しだけ補足を・・・。
> @シットハーネスの結び目(こぶ)の位置は、ビナとハーネスの間に位置するのが
正しい使い方である。
> こぶがビナにかかることで大腿部に荷重が分散して、レッグ・ループタイプのハー
ネスに近い安全性が得られる。
随分と以前に岳人にも書いた事があるのですが、ウィランス・
シットハーネス型のタイプにかぎって、繋索は8の字結びより
従来のブーリン(ボウライン?)結びの方が安全(落ちた時に
逆さ吊りになりにくい)です。
これは8の字結びだと、ビナとハーネスの間がどうしても長くなる
為です。
どうしてもブーリンは嫌となれば、せめて末端処理は所謂「目に
手を入れる」方法にして、少しでも結び目の長さを押さえる様に
した方が良いと思います(←それでも私だと嫌です)。
菅さん、みなさん、こんにちは。黒澤と@猫の森、です。
> これは8の字結びだと、ビナとハーネスの間がどうしても長くなる為です。
結び目の長さだけを測定してみました。使い古しの10mmロープで実験したところ、ブー
リンが63mm、8の字結びが71mmでその差は僅かに8mmです。
> どうしてもブーリンは嫌となれば、せめて末端処理は所謂「目に手を入れる」方法にし
> て、少しでも結び目の長さを押さえる様にした方が良いと思います(←それでも私だと
> 嫌です)。
僕の認識では「8の字結びに末端処理は不要」というのが通説だと思いますが如何で
しょうか?>菅さん& ALL
さて、菅さんが個人的に嫌だと感じられるのは自由ですし、今なおブーリンの愛用者
は多いようですが、ご発言を拝読した限りでは、どうも、菅さんの8の字結びの認識
には誤解があるように思います。
ps.ALL> 個人的に…ブーリン結び&シットハーネスは、山の教科書から消えたモノ
(おぼえる必要のない結び方&使ってはいけない道具)だとばかり思っていましたが
…そうでもないんですかね^^;
ACMLのみなさん
野村です、こんにちは。
ハーネスと、今度はエイトノットかブーリンかという話になってきましたね。
ブーリンについては随分と前に議論になったことがありますが
ハーネスにメインロープを結ぶとなると確かに間違えやすい、
また輪の中にビナを通してビレーを取る等するとほどけ易いものなので
十分に注意を要します。
だからと言ってブーリンは不要な技術とは言えないというのが
現在の私の立場です。
私はハーネスへの連結にはエイトノットを用いますが、
レスキューで使うフリクションノットの中にはブーリンが必要なものがあります。
こうした技術は一般の方も(特に会のリーダークラスは)
きちんと理解しておいて頂いた方がいいかと思います。
問題のシットハーネスを使われているはどうも沢登りをされる方に多いのでは?
沢であれ何であれ、リスクを孕む道具・技術はまず避けるのが一番でしょう。
避けることができなければ正しく習熟するのが欠かせません。
これは今回の事故には直接関係ないことですが、
道具の問題は多少金をかければ解決する話です。
また技術にしても、自腹を切ってきちんとした講習を受けるなりすれば済む話です。
どちらもその後自分で十分に理解できるまで反芻する必要はありますが。
どうもこうしたことはケチられるようで、集団で堂々と間違ったことを公言したり
行っていて、危なっかしくて仕方ないことがよくあります。
後半は余談となりましたが、クライミングは決して安全なものではありません。
十分に気を付けて楽しみたいものですね。
それでは
黒澤さん、みなさんこんにちは。大阪の菅です。
えっと、それでは順番に私見を述べさせて頂きます。
> > これは8の字結びだと、ビナとハーネスの間がどうしても長くなる為です。
>
> 結び目の長さだけを測定してみました。使い古しの10mmロープで実験したところ、
ブー
> リンが63mm、8の字結びが71mmでその差は僅かに8mmです。
私の会の者が同じ事で測ってくれたのですが、それでは2cmだった
そうです。
まあこれは測りかたによってどうとでもなる物なので、どちらが正確
とかの話は置いておきます。
8の字結びの場合、通常の末端処理をすると更に長くなります。
ブーリンの場合は、己が作るリングの中に末端処理部の結び目
を取り込むので、長さには影響しません(最もこのリング自身が大
きすぎるとこれまた問題ですが)。
この両者を足したものの長さの差が、微妙なバランスで釣合ってる
ウィランス・シットハーネスの場合問題になる訳です。
そしてその所がこのハーネスの最大の欠点でもあると思われます。
> > どうしてもブーリンは嫌となれば、せめて末端処理は所謂「目に手を入れる」方
法にし
> > て、少しでも結び目の長さを押さえる様にした方が良いと思います(←それでも
私だと
> > 嫌です)。
>
> 僕の認識では「8の字結びに末端処理は不要」というのが通説だと思いますが如何
で
> しょうか?>菅さん& ALL
その通りですね。
ただクライミングの現場では、「安全性の確保」との意味ではなく、
単に「末端部が邪魔」との事で、末端処理を施す方が殆どだと思い
ます(少なくとも関西ではそうです)。
> さて、菅さんが個人的に嫌だと感じられるのは自由ですし、今なおブーリンの愛用
者
> は多いようですが、ご発言を拝読した限りでは、どうも、菅さんの8の字結びの認
識
> には誤解があるように思います。
私の「8の字結びに対する認識の誤解」とはどのように誤解している
のか、私本人には分かりかねるのですが、反対に誤解して頂きたく
ないのは、私は「8の字よりもブーリンが良い」と主張しているのではなく、
「ウィランス・シットハーネスにはブーリン結びの方が相性が良い」と
申している事です。
実際、私はフリーや本チャンにはペッツルのフリー用の物(名前忘れ
ました)、沢にはBDの「アルパインポッド」、簡単な雪稜等にはこの
「ウィランス・シットハーネス」を使ってますが(実際はもっと細かく使い
分けてますが)、前者2つには8の字結びを施しております。
この場で経験則を持ち出すのは良くないかも知れませんが、実際に
このハーネスを8の字で結んで、仰け反って逆さ吊りになる事が(幸い
事故までには至りませんでしたが)過去に多くありました。
時期的には20年以上前になると思いますが、まずこのシットハーネス
がクライマー一般に浸透した後(繋索は常にブーリン)、「安全な
結び方」として8の字が紹介されました(もともと有ったのでしょうが
少なくとも一般的には使われていなかった)。
我々も飛びついたのですが、その結果上記の様な事が相次ぎ、その
原因となる「結び目による長さの差」に思い至ったのです。
他の方や他の会の方は、その当時その事をどのように思っておら
れたかは知りませんが、実際に8の字結びがハーネス繋索の主流になる
のは、ハーネスが現在のタイプになるまで待たねば成らなかった事を
思いますと、「シットハーネスと8の字の相性の悪さ」を皆さんが感じて
おられたのだとおもいます(この辺の所は私同様の古いクライマーに
一度聞いてみたいですね)。
今のタイプはカラビナの帯の上部に調節機能が付いおり(正に今回の
事故の原因部分)、調節が利くので昔のタイプより安全にはなりました
が、この部分を余り延ばしすぎると腰を痛める事となります。
まあ少し本題から外れますが、何に限らず物事はうつろい易いもの
です。
あれだけ全盛を誇り「安全」と言われた懸垂下降時の8の字結び
(ダブルストランド・フィギュアエイトノット)も今や「危険」と忌み嫌われる様
になり、代わって持て囃されているのは見た目恐ろしげな巴結び
(ダブルストランド・オーバーハンドノット)。
またブーリンの復権もあるかも・・・(ないか)。
登山がいろいろな顔を持ち、且つ常に変化する自然を相手にするもの
でである以上、その用具や技術も常に相対的にあるべきであり「絶対
な用具や絶対な技術は無い」と私は常々思っております。
いたずらに過去の慣習に囚われるのもいけませんが、新しい技術が
絶対として、それに固執する事にも問題が有るのではないでしょうか。
だんだん取り留めが無くなって参りました。
論理的思考がなく議論はは苦手な方ですので、これでご勘弁を。
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同人 ルーデンス
菅 修三
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PS
私の手元には無いのですが上記の件、古い岳人に書いた事があります。
やはり8の字結びの特集の頃です。
御興味が有ってお暇(失礼)な方は、捜して見て下さい。
菅さん、みんさん、こんにちは。黒澤と@猫の森、です。
あくまでデータの話ですので参考までにお読み下さい…
>> 結び目の長さだけを測定してみました。使い古しの10mmロープで実験したところ、ブ
>> ーリンが63mm、8の字結びが71mmでその差は僅かに8mmです。
>
> 私の会の者が同じ事で測ってくれたのですが、それでは2cmだった
> そうです。
> まあこれは測りかたによってどうとでもなる物なので、どちらが正確
> とかの話は置いておきます。
ブーリンは手順による差異は殆ど無いので、そのデータは、菅さん側(のお知り合い
の方)の実験において「8の字結びの方法が(僕と)異なっていた」のではないかな
と推定されます。理想的な結び方をすれば、8の字結びでもかなりコンパクトに結ぶ
ことが出来ますよ。
>> 僕の認識では「8の字結びに末端処理は不要」というのが通説だと思いますが如何でし
>> ょうか?>菅さん& ALL
>
> その通りですね。
> ただクライミングの現場では、「安全性の確保」との意味ではなく、
> 単に「末端部が邪魔」との事で、末端処理を施す方が殆どだと思い
> ます(少なくとも関西ではそうです)。
末端を(適当な長さまでに)短くするように練習すれば済む話ではありませんか?
8の字結びの場合「末端処理をしなければならないほどの末端(の長さ)は必要ない」
はずです。
> …私は「8の字よりもブーリンが良い」と主張しているのではなく、
> 「ウィランス・シットハーネスにはブーリン結びの方が相性が良い」と
> 申している事です。
でしたら、シットハーネスをレッグループに代え、ブーリンを8の字に代えれば、よ
り安全だと考えます。少なくとも関東ではそう…だと思いますけど^^;
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さてここからは余談ですが…正直に言えば、僕もシットハーネスやブーリン結びを使
うことがあります。野村さんの先のご発言もさることながら、ロープ結びは何もクラ
イミングに限ったことではないからです。
ですが、クライミングに於いて、この両者の欠点が解明されてきた経緯から、これを
使う事を公の場で発言するを良しとしない…これが僕の立場です。
また、教育の場では「方便」が必要です。特に、クライミング初心者に教える場合は、
教える「項目をなるべく少なくして上げる努力」が(教える側に)必要だと感じてい
ます。その意味でブーリンは「教科書」からは削除してよい項目がだと思っています。
勿論、教科書から離れた実戦の現場に出る人は、ブーリンどころか他に勉強すべき事
が沢山あるのは承知しております。教わった事だけでクライミングやってたら、命が
幾つあっても足りませんから…^^;
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