2 高層天気図に現れてくる寒気の様子によっては、低気圧の発達や吹雪の強弱などをいち早く知る
ことができる。冬季には厳しい寒気の接近を3〜4日前から知ることができるので、思いがけない
寒波や吹雪に見舞われることが無くなる。
3 地上天気図と併用し、翌日の天気予測に幅を持たせることができ、山中で行動する時も時間的に
ある程度余裕をもつことができるし、予測内容も充実したものになる。
2 等高度線の袋が膨らんでいる所(高度が高い所)が高気圧で、袋がへこんでいる所(高度が低い
所)が低気圧で、それぞれ地上天気図に対応している。
3 気圧の谷と気圧の尾根
(1) 南に舌状にのびている所を気圧の谷、北にのびている所を気圧の尾根という。
(2) 気圧の谷が上空に来ると、天気が悪くなり、気圧の尾根が来ると天候は良くなる。
(3) 気圧の谷が移動するにつれて、その後から強い寒気が南下してくると、等高度線がシャープに
南方に伸びる様になる。これを発達した気圧の尾根という。
(4) 気圧の谷の全面(気圧の尾根の後面)は南風が吹き、気温は高い。
(5)気圧の谷の後面(気圧の尾根の全面)は北風で気温は低い。
4 暖かい気圧の谷と冷たい気圧の谷
(1) 気圧の谷には「暖かい気圧の谷」と「冷たい気圧の谷」があり、これらの谷が地上天気図上の
低気圧の発生、発達にきわめて重要な役割をはたしている。
(2) 強い寒気が流れ込んでいる谷を「冷たい気圧の谷」、暖かい空気が流れ込んでいる谷を「暖か
い気圧の谷」という。
5 高層天気図と地上天気図との関係
(1) 普通には、高層天気図中の気圧の谷の前面(東側)に、地上天気図に書かれている低気圧や前
線がある。
(2) 気圧の谷の後面(西側)には常に気圧の尾根があり、その下には地上天気図上の高気圧がある。
6 高層天気図読み方
(1) バイカル湖の北側に、気圧の谷が現れたならば2〜3日後には日本に接近し、低気圧を発生さ
せる。その時に強い寒気があれば、低気圧は猛烈に発達する。
(2) 気圧の谷は1日平均、東経で約10度進む。
(3) 西高東低の気圧配置でも、強く吹雪くかどうか、また何日頃から吹雪になるかは、寒冷渦の南
下や接近してくる気圧の谷の顕著さと、その後面の寒気の強さが第一の目安となる。
(4) 気圧の谷の後面の寒気が強ければ強いほど、気圧の谷の発生、発達が急となることが多い。
(5) 現れる気象現象が、厳しいか弱いかを予測する場合、接近してくる寒冷渦の強さや程度、流れ
てくる方向が問題となってくる。
(6) 35N〜45Nの間を通る寒冷渦が、冷たいものであれば厳しい天候になる。そして寒気の吹
き出しが30N辺りまで南下していれば、二つ玉低気圧が発生する可能性が大きい。
(7) 30N辺りを通る寒冷渦は、暖気の影響で変質(暖かくなる)度合いが大きいので心配はいら
ないが、寒冷渦が極端に冷たい(−25度以下)の時は別である。
(8) 猛烈な悪天候をもたらすような、二つ玉低気圧に伴った気圧の谷は、極めて冷たい谷(−20
度以下)であり、もしも、暖かい気圧の谷(−15度以上)である場合は、外見は二つ玉低気圧
であろうとも、これらの低気圧による悪天候は厳しいものでは無い。
(9) 日本列島に書かれた等温度線が、悪天候の目安となる。
・ 等温度線の間隔が広い場合は、冬型でも悪天候にはならない。
・ 等温度線の間隔がだんだん広がっている場合は天候は回復に向かっている。
・ 間隔が狭いほど、寒気の影響を受けて悪天候になる。
・ 間隔が段々と狭くなっていれば、悪天候に向かっており吹雪が続き、間隔が広がってくるま
では回復しない。
(10) 吹雪の強弱は、寒気の強さによって決まる。3000mで−15度以下になれば、猛吹雪に
なる。
(11) 日本海側の風が、前日と比べて強くなるときは吹雪はさらに続き、風が弱くなる時は天候は
回復に向かっている。
(12) 気圧の谷の後面で、北西の風が強く、寒気が流入している間は吹雪かれる。
(13) ピョンヤンの西方に暖気が流入してくれば、天候は回復する。
(14) 低気圧が通過するまでは南風が入り、暖気が流入し気温が上昇して、0度以上の標高では雨
になる。
(15) イルクーツクの3000mの気温が約−30度でも、南下するにしたがって気温が高くなり、
寒冷渦の中心が定かでなくなる時は、多少吹雪くが厳しいものではない。
(16) 輪島の3000mの気温が−20度以下になれば、剣岳では大雪になる。
(17) 高層天気図は前日の午後9時のものであるため、午前9時の予報を出す場合は東経で約5度
西を見て判断しなければならない。