秀峰登高会/櫻井、細田
< 記 録 > 櫻 井 裕 二
<山行日> 1997年4月24日(木)〜26日(土)
GWに先だっての滝谷。他パーティーも見あたらずトレースも雪渓に消えかかったのがあるだけで、快晴続き
の3日間、熱く静かに燃えてきました。
<穂高滝谷出合いから滝谷第四尾根、D沢下降>
4月24日
9:30新穂高 〜 13:10滝谷出合小屋
白出沢あたりからは残雪が深い。チビ谷周辺は底雪崩のデブリで歩きつらい。出合いに着くと、小屋に荷を置
きすぐに雄滝の下見に出る。デブリは古く、周囲の斜面も安定した感じを受けた。下見の結果、雄滝は10mほど岩
が出て水流が音をたてて流れていたが、雪と氷がつながっている右から上れそうな印象だった。
4月25日
3:00小屋発 〜 6:00B、D沢合流点 〜 7:00スノーコル 〜 16:30ツルネの頭
ヘッドライトをつけて小屋を出る。零下の気温に雪は締まってアイゼンが良く効く。雄滝は右側の雪渓を上が
れるだけ上がって、シュルントをまたいで氷化したスラブに乗る。その後逆くの字にバンドと雪をたどって落ち
口上に出た。
20m程度のピッチだった。滑滝は完全にデブリの下。息を切らして合流点左上の雪崩から安全な所に上がり小
休止。
テールリッジ状に落ちてきてC沢とD沢を分ける第4尾根が目の前にはっきりとわかる。この付近の地形につ
いては出版されている資料にも間違っているものがあるので多くを当たっておく必要がある。C沢に入り左俣を
分けてからスノーコルに上がる。結局、雄滝以外は岩の露出したところは無かった。
雪稜ありゴチャゴチャのミックスあり、フェースの人工ありの3ピッチを終えてAカンテ基部に着く。目の前
にせり上がるAカンテとその背景のツルネ正面壁、グレポン、ドームなどがすばらしい。やっと朝日も当たり始
め、しばし幸せな気分で休憩する。
すべてのホールドは堅雪や氷に覆われてピッケルのブレードが大活躍する。セカンドで登る時でも、これは必
要だった。あとでわかったのだが、私は左利きで左のホールドを丁寧に掘り出すのだがパートナーは右利きで右
のホールドを確実にしたい。そんなわけでお互いパートナーがトップで掘り出したホールドに満足できなかった
ようだ。計8ピッチでツルネ頭に着く。
前進用、アンカー用にナッツ、フレンズ、ハーケンを多用した。大半は厳しいピッチでトップは毎回1時間近
くを費やした。結局ツルネの頭の雪を削りここにツェルトを張ることにした。
ジフィーズを回し食いする夕飯を終えると、西の空、笠が岳の上に彗星がくっきりと非常に美しかった。
4月26日
7:30懸垂下降開始 〜 11:00Dカンテ上 〜 12:30稜線 〜 13:30D沢下降開始 〜 15:30滝谷出合小屋
残置のすごい束になったのを使って20mのアプザイレンでコル。ここで泊まっても良かったかもしれないが、
雪崩、落石の危険があるのと、なによりあの美しい彗星が見られたのはすばらし経験だったのだから。
雪壁までの残り2ピッチも厳しかった。Dカンテ上部はカンテラインに戻れず右の凹角をアブミで越えた。
稜線までの雪壁は安全を期して、隔時登攀のまま登ったが新雪があったらイヤな斜面だ。岩に手を掛け、
「よっこらしょ」と立ち込むと、前穂北尾根が見えた。そしてはるか下に涸沢ヒュッテがあった。またラスト
ピッチをもらってしまった。気分も最高に「ビレイ解除!」と叫んだ。
D沢はアイゼンをはずしてかかとのキックステップと尻セードで雄滝まで快適に飛ばす。雄滝はフィックス
に導かれて右岸のトラバースから懸垂下降で下る。
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