西伊豆/波勝崎/海金剛/新ルート開拓
SURF&SNOW
ARIアルパインクラブ/有持真人、横山剛史、漆谷多二男
< 記 録 > 有 持 真 人
開拓日、開拓者
(下部岩壁) 9月29日(日)ARIアルパインクラブ/有持真人、横山剛史
(上部岩壁)11月23日(土)ARIアルパインクラブ/有持真人、漆谷多二男
開拓場所 西伊豆/波勝崎/海金剛/左壁
ルート名(命名) SURF & SNOW
ルートグレード 5級
ピッチグレード 5.9 AA1
ピッチ数 8P
登攀距離 210m
★ 記録写真 ★ ルート図(クリックしてください)
<概要>
以前に開拓した、右壁の赤道小町を登攀中に左壁を観察していると、上部岩壁にきれいな
クラックが走っているのが目に付いた。
左壁にはルートはまだ1本も開拓されていないし、冬のシーズンになったら開拓に行こう
と相談していた。
左壁は、下部岩壁帯と上部岩壁帯に分かれており、中間部には広いテラスがある。下部岩
壁は、80度から90度の傾斜から暖傾斜のスラブ帯になり、上部岩壁は途中に数カ所のテ
ラスで分かれているものの90度以上の岩壁がそそり立っている。
当初は、上部岩壁の中央をダイレクトに登るつもりであったが、岩が非常に脆く積み木の
ように積み重なっており、今回はそこを避けて左側壁の開拓に変更する事にした。
今回は、日程と時間の関係で2日間に分けて開拓する事になり、結果的に下部を有持、横
山、上部を有持、漆谷のメンバーで開拓した。
横山、漆谷の2名はアメリカンエイドは初めてであり、有持のオールリードで登攀した。
開拓日 (下部岩壁)1996年9月29日(日)
開拓者 ARIアルパインクラブ/有持真人、横山剛史
時間 取り付き(10:00)〜 4P終了点(13:30)
1P 30m III
取り付きは、入り江のテントサイトから真っ直ぐにガレ場を登り、急になってきたらザイ
ルを出し、左壁中央の脆い岩を登ると狭いバンドにでる。
ここには、懸垂下降用の支点として、ペツルハンガーが2本残置されていた。すぐ右側に
数十年前に打たれたと思われる、今にも抜けそうなボロボロのボルトラダーがあった。
このピッチはノーザイルでも登れないことはないが、岩が脆いのでザイルを使った方が無難
だ。
2P 30m 5.9 AA1
ビレーポイントの左に下向きのワイドクラックが走っているが、そこは登らずにフェースを
直上し、少しかぶった右上のクラックを登る。そして、小凹角のリスをネイリングしフリーで
カンテを右に回り込んで、ブッシュの右側のクラックからフェースを登り、いきずまったら右
に回り込んで立木でビレーする。
小凹角のリスのバカブー2枚が回収不能となり仕方なく残置してしまった。
このピッチは、残置支点を作ればオールフリーで登ることができる。
(使用ギア)エイリアン、キャメロット、ロストアロー、バカブー
3P 20m 5.9 AA1
最初は、テラスの右側にあるクラックを登ろうとして取り付いたが、ふと横を見るとすずめ
蜂が巣を作っており、あわててクライムダウンした。あのまま登っていたら確実に蜂の集団に
襲われていただろう。
仕方なく、今度は少し前傾した約8mの左上気味のリスをエイドで登った。乗越した所で小
ハングの基部のクラックを右にトラバースし、その後直上し立木でビレーする。
ここまで来ると傾斜はかなりゆるくなり上部を仰ぎ見ると下部要塞、上部要塞がそびえ立
っているのがよく見える。
(使用ギア)エイリアン、キャメロット、ロストアロー、バカブー、ナイフブレード
4P 45m 5.7
暖傾斜帯のスラブを、立木やブッシュでランニングを取りながら登ると、中間部にある広い
テラスにでる。
今回は、取り付きの時間が遅かったし、横山のトレーニングを兼ねてゆっくり登ったので、
今日はここまでとして同ルートを懸垂下降し、帰路についた。
開拓日 (上部岩壁)1996年11月23日(土)
開拓者 ARIアルパインクラブ/有持真人、漆谷多二男
時間 5P取り付き(09:30)〜 4P終了点(13:30)
9月の下部開拓から約2ヶ月も開いてしまったが、アメリカンエイドをやりたいと、10月
に入会してきた新人の漆谷と一緒にルートを完成させる事になり海金剛へ向かった。
もう日没が早く、日程も今日だけなので時間短縮のため、前回開拓した下部岩壁はエスケープして、右壁にあ
る<ネイビーブルーに抱かれて>の1、2Pを中間テラスまで、約1時間強で登った。
ここから上の上部岩壁は凹状になっており、最初は中間部に入っているリスを使い中央を
ダイレクトに登る予定であったが、岩が積み重なっているだけで、今にも崩壊しそうな所があ
るため、予定を変更し左側壁のクラックを登ることになった。
5P 20m 5.9 AA1
このピッチは、側壁を右上気味にハンドクラックが入っており、途中からリスが直上している。
まず、クラックにキャメロットをセットしてフリーで約5m登り、エイリアン、キャメロット
フレンズ、クワッドカムのネイリングで、途中のリスからバカブー、ナイフブレード、ロスト
アローで狭いバンドまで登る。ここにはビレーポイントに使えるものがなにもなかったため、
ハンマードリルを使いペツルアンカー2本を埋め込んだ。ハンガーは回収したので、再登者は
ハンガー2枚が必要。
今日は、天気が非常に良く暖かい、ここまで来ると富士山や駿河湾をはさんで日本平まで良
く見える。下部の磯では釣り人が大きい魚を釣り上げていた。
ここの岩場は、非常に明るくてネイリングをしていても緊張感と言うものが全く感じられな
い。フォローしてくる漆谷も鼻歌混じりで余裕の表情だ。
(使用ギア)エイリアン、キャメロット、フレンズ、クワッドカム、バカブー、ナイフブレード、ロスト
アロー
6P 20m 5.7 AA1
ビレーポイントからバンドを約5mトラバースし直上しているリスをネイリングする。ハー
ケンの効きも良く快適に登攀できる。広いテラスにでて立木でビレー。
(使用ギア)ナイフブレード、バカブー、ロストアロー、アングル
7P 30m 5.9 AA1
ここは、凹角になっており、中央にワイドクラックから小ハングのリスがある。その右側に
下部から見た感じでは、リスがありそうに見えたので、右のカンテに抜けて直上するつもりだ
ったが、上部はリスが全くなく、ボルトラダーにするのも嫌なので、中央のワイドクラックか
ら登ることにした。
最初は、キャメロットの#3、4などを使い直上し、水平に走っているクラックにスカイフ
ック1〜2ポイントでトラバースする。ここは、シャフトがワイヤーのフレンズ等があればフ
ッキングはしなくても良い。
上部は、浅いコーナーのリスにナイフブレード2枚打ち、抜け口の手前でロストアロー3本
を打ち、フリーでブッシュ帯のテラスまで一気に登る。
登り切った所で、右側に左上しているリスが見えるが、そこは登らず直上すると綺麗なハン
ドクラックが見え、その直下の立木でビレーする。
(使用ギア)キャメロット、フレンズ、ナイフブレード、ロストアロー、スカイフック
8P 20m 5.8 AA1
ハンドクラックをジャミングで立ち上がり、エイリアン、フレキシブルフレンズ、キャメロ
ットを使い快適に登る。
ブッシュを処理しながら右へトラバースして、カンテの手前の立木でビレーする。この上部
にもまだ岩壁がありそうだったのだが、カンテを回り込んで覗いてみると上部要塞がすぐ横に
見え、上部はブッシュ帯であった。
結局8Pで終了となり、フォローで登ってきた漆谷と握手を交わす。上部岩壁の所要時間は
4時間となかなかのスピードだった。
漆谷も、アメリカンエイドは初めてだったが、なかなかセンスが良く、ユマーリング、ピト
ン類の回収方法を説明しただけで取り付いたのだが、手際よくフォローしてくれてストレスな
くルート開拓ができた。
ルート名は、遠くに見える富士山の冠雪とエメラルドグリーンの海を見比べて<SURF
&SNOW>と命名した。
下降は、同ルートを5Pの懸垂下降で入り江に着く。
グレードは、<5級/5.9/AA1/8P/210m>、ルート所要時間<7時間>とな
った。
※ 所要時間はかなりのハイペースで登攀した場合のものです。
★ エリア別山行記録へ戻る ★ INDEXへ戻る