キリマンジャロ山/ケニヤ山(レナナピーク)
豊川山岳会/宮尾、河合、上田
< 記 録 > 上 田 歳 彦
(山行日)1996年12月19日〜1月8日
<記録>
<メンバー> 宮尾、河合、上田 いずれも豊川山岳会員
<旅行社> 道祖神(office : 東京、ナイロビ)
<日程>
12/19,20 出発(ボンベイでトランジット、ナイロビ)
12/21,22 アルーシャ国立公園(タンザニア) ・・キリン、カバ、コロブス、フラミンゴ
12/23-27 キリマンジャロ登山(5895mノーマルルート)
12/28.29 アンボセリ国立公園(ケニヤ)・・・・・・・象、シマウマ、ガゼル
12/30-1/3 ケニヤ山登山(ノーマルルート レナナ峯 4985m)
1/4,5 アバディア国立公園(ケニヤ)・・・・・・・・象、サイ、ジネット
1/8 帰国
<キリマンジャロ山行>
1)日時 1996/12/23~12/27
2)メンバー 宮尾慶司(31) 河合芳尚(29) 上田歳彦(39)
3)山行のス夕イル
ガイド(チーフとアシスタント)2人とポーター7人付の登山。
日本の旅行会社(道祖神)経由で現地の旅行社(我々はタンザニアのモシのShah Tours)がガイド、ポータを
手配。食事,装備の運搬をサポートしてくれた。
キリマンジャロではガイド、ポーター登山のみだが.日本の旅行社経由で手配する他にナイロビ又はアルー
シャ,モシで直接現地旅行社に申し込む方法がある。この時のツアーの基点はアルーシャ(又はモシ)となる。
因みにアルーシャ起点のツアーは5daysで400~600US$である。
4)キリマンジャロ山の概要
ケニヤとタンザニアの国境付近.タンザニア側の南緯3°付近に位置するアフリカ最高峰。南北30Km,東西
50Kmに卵形に広がり西からシラ峰(3940m)、キボ峰(5895m)、マウェンジ峰(5149m)の3つの峰を持つ。キボ峰
とマウェンジ峰は頂上付近に氷河を有し、またキボ峰南西面とマウェンジ峰にはバリエーションルートがある。
5)行程
1日目(12/23) マラングゲート(1800m)まで車 ゲートでガイド、ポーターとジョイント。
マンダラハット(2700m)までの広い道を行く。行程3H。
2日目(12/24)
ホロンボハット(3700m)までの10kmの山腹の良く整備された道。ソニティア,ロベ
リア、キリマンジャイカなどの珍しい植物が眺められる。5H
3日目(12/25) 草木帯を抜け、キボ峰とマウェンジ峰のコル(The sadlle)付近の広大な裸地帯をキボハット
(4700m)まで高度を上げる。5H
4日目(12/26)
キボハットから5Hで外輪山の一角ギルマンズポイントヘ.ここから最高点のウフル
ピークまで2H。登頂の後、一気にホロンボハット(3700m)へ 4~5H。
5日目(12/27) マンダラハット経由でマラングゲートヘ同ルート下山。
以上は5daysのツアーだが6daysもあり登りのホロンボハット(3700m)で連続して2泊する。高度順化がスム
ーズにはかれ登頂の確率が上ると言われている。
6)登山のポイント
体調維持と高度順化に尽きる。高度順化については今更言うまでもありませんが、事前のトレーニングに
加えて登山開始まで、休養をとること。我々はナイロビ,アルーシャ、マラングと1500~1700mの比較的高地で
3日間過ごすことができたのも良かったと思う。高度順化は深い呼吸(腹式呼吸)をしながら、ゆっくりとした
ぺースで歩くこと。目的地についてから幾らか高度を上げて戻るなどすると効果がありそう。
<ケニヤ山山行>
12/30~1/3のケニヤ山(レナナピーク)の山行の概要です。
<ケニヤ山山行>
1)日時 1996/12/30~1/3
2)メンバー 宮尾慶司(31) 河合芳尚(29) 上田歳彦(39) 以上 豊川山岳会
3)山行のス夕イル
ケニヤ山の各方向からのルートがあるが我々はアプローチが短かく登山基地が便利なNaro Moru ルートを採
った。
ガイド1人とポーター6人付の登山。
日本の旅行会社(道祖神)経由で現地のケニヤ登山を主催しているロッジ(Naro Moru River Lodge)がガイド、
ポータを手配。食事,装備の運搬をサポートしてくれた。
我々はガイド、ポーター登山だったが.日本の旅行社経由で手配する他にNaro Moru River Lodgeに申し込む
方法がある。国立公園の使用料をゲートで払えば全くのガイド、ポーターレスでの登山も可能(ドイツ人の登攀
パ一ティーに多い)。バチアン、ネリオンを中心としたバリエーションルートをやるには以下のパターンが考え
られる。
・ 登山基地のNaroMoruからメッツステーションまでの車だけ頼んで、ガイドレス、ポ一タレスで登攀する。
・ マッキンダーズキャンプ(4200m)またはオ一ストリアンハット(4790m)までー般のガイドとポーターを登りだけ
頼み、登攀.下山は自分達でやる。
・ 上記2つのパターンに加えて登攀の日だけ、登攀専門のガイドを頼むことも可。このガイドはNaro MoruRiverL
odge経由で手配可能と思われるが、人数が少なく、常時スタンバイの状態にないため、日本から直接の予約をし
た方が良さそう。(今回.我々の一般のガイドから登攀のガイドの連絡先を教えてもらった。必要な方は、直接私
までメールを下さい。)
4)ケニヤ山の概要
ケニヤの中央部、赤道直下に位置するアフリカ第2の高峰。4000m地点までは広い裾野が広がり、中央には岩峰の
バチアン(5199m),ネリオンとノーマルルートのレナナ峰(4985m)などのピーク群が広がり、頂上付近に氷河と多くの
氷河湖を有する。
5)行程
我々はピーク群の周囲を巡る5日間のcircular navigationに参加した。
1日目(12/30) 午後.Naro Moru River Lodgeからトラックの荷台に乗り、メッツステーション(3100m)まで。国立
公園のゲート(2400m)からメッツステーションまでの半分の行程で順化のために歩く。行程1H。
メッツステーションの小屋泊。
2日目(12/31)
マッキンダーズキャンプ(4200m)までの約8km、標高差1100m、行程5Hの道のり。雨期や12月いっぱいまでは湿地帯
の斜面。テレキパレーを渡り40分でピーク群の眺めが良いマッキンダーズキャンプ(Naro MoruRiverLodge Teleki)
に着く。ソネシオ,ロベリア・テレキ、などの面白い形の植物が眺められる。
3日目(1/1)
ピーク群を眺めながら時計回りに、マッキンダーズキャンプとは反対側のカミ・ハットまでの3Hのトレッキング。
数々の氷河湖やモレーン、岩壁群の眺めが素晴らしい。カミ・ハット横でテント泊。
4日目(1/2)
バチアン北面のモレーンをトラバースし.レナナ北面の尾根に取り付き頂上へ。2~3H。頂上よりバチアン,ネリオン、
ジョン峰.ルイス氷河などを間近に見ながら.オーストリアン・ハット経由でマッキンダーズキャンプへ下山。2H。
大休止の後、同ルートの湿原帯をメッツステーションヘ下山。メッツステーション小屋泊。
5日目
車でNaro Moroへ下山。
ガイド協会の連絡先
Office of Mt.Kenya Guides &Porters Safari Club.
P.O.BOX 128,NARO MORU KENYA
TEL 0176-62015
<山行の感想>
・ キリマンジャロ山、ケニヤ山ともノーマルルートでのガイド登山という形ではあったが、5000m以上の高度を経
験できたことは収穫だった。
・ これまで自分の力不足と休暇をまとめて取るということの面倒で海外登山とは縁がなかったが、会の若い人との
話で盛り上り、一念発起できたのも良かった。
・ 欲を言えばケニヤ山のネリオンかバチアンに登りたかったが.今回は情報不足(専門のガイドなしでも登っていい
ということ、専門のガイドの連絡先が不明だったこと)から、一般ルートになったのはある程度止むをえず、最初
の海外登山としては満足できる内容だった。
・ 山の前後に国立公園でのサファリは山の休養を兼ねてのんびり楽しめた。
<文献>
<ケニヤ山,キリマンジャロ山のバリエーションルート関係>
1)Guide to mount Kenya and Kilimanjaro Edited by Iain Allan
The Mountain Club of Kenya P.O.Box 45741,Nairobi Kenya 1991
2) 1)の1980年版と日本語訳
3) 岩と雪 ケニヤ山・ダイヤモンドクロアール 木本哲
2).3)は手許にあります。
<アフリカの山、海外登山一般>
1)Mt.Kilimanjaro 1:50000 Map and guide / Savage Wilderness Safaris Ltd
2)Mt.Kilimanjaro 1:100000 Map and guide.
3)Mt.Kenya 1:50000 Map and guide / Savage Wilderness Safaris Ltd
4)Mt.Ruwenzori 1:50000 Map and guide
5)Mt.Elegon 1:50000 Map and guide
6)Mt.Kilimanjaro 写真集
7)On God's Mounain The Story of Mt.Kenya 写真集
8)地球の歩き方 東アフリカ編 (登山基地やガイド登山の情報あり)
9)海外登山とトレッキング / ヤマケイ登山学校 敷島悦朗
10)月の山・ゴリラの山 敷島悦朗 (ルウェンゾソ山とケニカ山)
11)怪しい探検隊 アフリカ乱入 椎名誠 (キリマンジャロ山)
12)青春を山に賭けて 植村直巳 (ケニヤ山(レナナ)とキリマンジャロ山
5).10),11)以外は手許にあります。
<その他のアフリカの情報>
1)ゴーゴーアフリカ
2)サバンナの風 / サバンナクラブ
3)アフリカの心 岩波ジュニア新書
4)現代アフリカ入門 岩波新書
3).4)は手許にあります。必要な方はご連絡下さい。
昨日から職場復帰し、ポレポレ(スワヒリ語でゆっくり・ゆっくりの意)ペースからいきなり日本の忙しいペー
スに引き戻されています。
記録自体は旅行中にZAURUSに書きためていたので、詳細の記録はまた別便で送ります。
<< キリマンジャロ山行 詳細記録 >>
1日目(12/23)
マラングホテルにShah Toursの車が来てマラングゲート(1800m)まで送ってくれる。
ゲートでガイドのガスパル(29才)、アシスタントガイドのストラトン(20才)、チーフキッチンのドミンゴ(27才)、
ポーター6人とジョイント。ゲートには受付、売店,電話がある。既に数十人が荷造りと出発の準備をしていた。
受付を済ませ.10:30.ドミンゴの先導で出発。マンダラハット(2700m)までの広い道を行く。途中.バブーンを見る。
ゆっくり歩いて1H余りで昼食のポイント(トイレあり)に着く。しばらく行くと道幅が狭まり樹林帯の登り。本日
の行程の3Hの予定を2Hで13:30.マンダラハット(2727m)着。マンダラハットは樹林の中に受付・売店、食堂.コテー
ジが点在する快適な場所。同宿のインド系イギリス人.シャーさんと将棋(山崩し)を楽しむ。
10:00就寝
2日目(12/24)
6:30起床 朝食7:00 出発8:00。さるおがぜがからんだ樹林を30分行くとキボ峰が望める平原に出る。キボ峰ま
で直線距離にしてまだ15km以上あるので白い雪をかぶった頂ははるかに遠い。朝夕は顔を出すが.9:30頃になると
決まって上昇気流でガスが涌く。
1H位で樹林帯を抜け出し、ホロンボハット(3700m)までの10kmの山腹の良く整備された道。標高3300m位からはソ
ネシオ,ロベリア、キリマンジャリカなどの珍しい植物が眺められる。気温は低くてても日射しは強く、赤道直下
の山であることを実感する。
ホロンボハットに13:20着。ここもマンダラハットと同じく小さなコテージが点在する。今日はクリスマス・イ
ヴ、タ食の後、食堂に入るとフランス人が既に盛り上っていた。我々もガイドとー緒にサファリビールで乾杯。ガ
イドが「キリマンジャロ」、「マライカ」などの歌を唄ってくれる。これが実に良かった。我々も「アルプスー万尺」
などでお返し。するとフランス人の一番元気のいいおじさんが真中で踊ったり、我々のテーブルをこぶしとひじで強
烈にたたいて音頭をとってくれたりで盛り上がる。
この後.ポーター達ともイヴを祝うために.ビールを買い込んで.彼らのキッチン兼、コテージになだれ込む。中はか
まどとべッドがあるがさほど煙くはない。ツーリストとガイド・ポーターという食住を切り分けて山の生活をしてき
たが、このキッチンの中では一緒に歌をうたう。ことばの壁はあっても飲んでうたえば皆同じということか。
3日目(12/25)
朝6時起床.気温-2°C 7時朝食.8時出発。いつものペースでからだが慣れてきた。しばらくは草木帯のトラバース。
水場(ホロンボハットよりも水質は良い。),そしてLastWaterを越えて少しの登りでマウェンジリッジ4150mで休憩。
マウェンジ峰眺めが良い。ここからは裸地帯の雄大な平原を行く。平原のかなたにキボ峰の巨大な台形の全景がよ
うやく姿を現わす。国内の山では得られない雄大な光景に思わず息を飲む。キボ峰とマウェンジ峰のコル(Thesadlle
4350m)で昼食。なおも広大な裸地帯を腹式呼吸をしながらゆっくりと進む。キボ峰の台形の基部、キボハット(4700m)
に1:10に着く。
キボハットは定員60名の石造りの一棟と管理棟,ポーターのためのキッチン棟がある。40分の休憩の後、高度順化
のため3人で少し上まで歩きに行く。砂礫の中を電光型にゆっくりと高度を上げる。40分で250m.4950m位まで上る。岩
陰には少しずつ雪が出てくる。
ここで試みに脈を取る。昨日ホロンボハッい(3700m)に着いた直後、96回/分(安静時68位)あったのが今朝は78で
3700mでは頭痛もなく問題なし。今、4950mで86で軽い頭痛がする程度だった。3人とも軽い頭痛のあるなしはあるもの
の、この高度までは問題なく順化はできているようでー安心である。小屋に戻ると例によってティータイム。ビスケッ
ト、ポップコーンが出る。今夜は真夜中に出発なので夕方.仮眠を取る。目が覚めると少し降雪があったようで所々う
っすらと雪化粧していた。早目のタ食を5時半から6時で済ませさっそくシュラフに潜り込む。昼間(朝食後からタ飯前
まで)水分を多めに(2リットル以上)取ったせいか1時間おきに3回もトイレに行く。
4日目(12/26)
夜中11:40起床。お茶とビスケットを済ませ、同部屋のドイツ人を12:30に見送る。我々も12:50分に出発する。ほと
んど満月で真上から照らす月明りの中、アシスタントガイドのストラトンを先頭にゆっくりと進む。ガイドは2人とも
空身で水筒だけを持っている。さすがに昨日までのジョギングシューズとは違い登山靴をはいている。
20~30人の登山者の列をしだいに追い抜き、2:40、Hans Mayerspoint(約5200m 岩小舎)に着く。-2°C、それほど寒
さは感じない。ゆっくりと進んでいるつもりだがペースは早く、息苦しくなってくる。 4:00 5466mのJohans point
に着く。
このころ河合が胃の調子が悪くゆっくりと休み休み進む。昨日ほとんど眠れなかったとのこと。
長い苦しい登りの末.5:00 外輪山の一峰.ギルマンズポイント 5620mに着く。
気温は-6°C.ほとんど風はない。
ガイドのガスパルが3人の調子をチェックする。河合もちょっとましになった様子で最高点ウフルピークに向けて出
発する。歩き始めるとこれまでにはなかった息苦しさと、多少、足許のふらつきを感じる。
所々現われるやさしい岩稜と雪に外輪山の内側に落ちないように注意しながらポレポレで進む。中間点で少し休む
が、ガイドも苦しそうだ。外輪山の北面(右後方)や南面(すぐ左側)の幻想的な氷河を眺めながら、最後の力をふりし
ぼってウフルピーク(5895m)に立つ。6:20 ちょうど登った太陽も我々祝福してくれているようだ。ガスパル、ストラ
トンと握手を交わし、抱き合い、5人で登頂喜び合う。国内の山の登頂の時とは違った喜びがここにあった。
写真を撮り終えると下山にかかる。長らく停まること自体がダメ-ジを強めようで、早く5000m以下へ、少しでも下
へ、という気持ちが働く。滑落の危険のある所はスラトンが気遣ってくれる。でも自分でもその判断とからだの動き
は、まともなまま維持できていたように思う。
ギルマンズポイントからは砂礫の中を時には直線的に、時にはジグザグにハイスピードで下る。Hans Mayers poin
tでー休みしてキボハットに8:30着。小屋の前でポーター達が出迎えてくれ、ジュースをくれる。ハットで休んでいる
とスープとパンを運んでくれるが、さすがにパンは誰も手をつけられなかった。大休止後、10:00、ホロンボハットに
向けて出発。強い日射しの中ひたすら歩き、ホロンボハットに12:15着。
途中.アルパインツァーによる日本人数人に出合い言葉を交す。到着後.作ってくれた昼食もそこそこに昼寝。
たっぷり寝たおかげで5時半からのタ食はおいしく食べることができた。
5日目(12/27)
マンダラハット経由でマンダラゲートヘ同ルート下山。
6:15起床 6:30朝食で7:40ホロンボハット出発。昨日とはうって変わってキボ峰はガスの中。今日登る人はなかなか
厳しそうだ。3230mに9:00、マンダラハットには10:00j到着。 最終日のいつもの昼、サンドイッチ、オレンジ、ゆ
で卵、バナナをお腹に入れ出発。ガイド、ポーター等と一団になりながら歩いてマラングゲートに11:50着。
12名全員が揃ってビールで乾杯!! ガイドのガスパル、アシスタントガイドのストラトン、チーフキッチンのドミ
ンゴ、ポーターの6人の人達、それぞれありがとう。お陰で国内では味わえない楽しい登山をすることができました。
ゲートにはモシのツア一会社、SHAH Toursの車が来ていて、モシ経由でアルーシャのインパラホテルモで送ってく
れた。アルーシャではシャワー、洗濯、町のぶらつきと忙しいタ方だった。
<< ケニヤ山山行 詳細記録 >>
我々はピーク群の周囲を巡る5日間のcircular navigationに参加した。
1日目(12/30)
7:20起床 昨日聞いたように、10:00 NaroMoru River Lodge内の登山事務所(Receptionの横)へ出向く。一人一人受
付を済ませ、ロッジにデポする荷物を預け出発を待つ。他に昨夜のタ食にも見かけたドイツ人の40代位の夫妻と男性1
人の3人パーティーも待っていた。彼らはポータ一に預ける荷物をロッジから借りたザックに入れて荷作りをしていた。
我々は出発までの間の時間、本を読んだり、庭の珍しい観葉植物の写真を撮ったり、ロッジのゲートまで出ていってケ
ニヤ山の方向を眺めたり。山は完全にガスの中、キリマンジャロよりは天気が悪く、wetな感じである。アフリカに来
て10日、ポレポレのペースには大分慣れたものの、ゆったりした時間を楽しむというより、暇を持てあまして何かをし
て時間を埋めようというのは.日本人の悲しい性(さが)か?
結局、1:20に出発。
ドイツ人の3人パーティーと我々3名の計、6名がロッジのトラックの荷台に乗り込む。トラックは年代物の軍用トラッ
クのようなもので、荷台の中に座席とザック置場が設けてある。受付をしてくれたジョンさんが我々のガイドで他の
ポーターらしき人も乗り込む。
ロッジのゲートを出るとすぐナロモロの小さな町。雑多なマーケットがたくさん並んでいて活気がある。ポーター
(らしき人)が野菜か何かを買い出し。
車はケニヤ山方面へ広い裾野の未舗装路を走る。ケニヤでは大きな町の中と幹線道路以外は全て未舗装である。
途中、ケニヤ山のガイド&ポーター協会(畑の中の一軒家、白い看板あり)やポーターの家の前に止り、スタッフと荷物
をピックアップ。お決まりのパターンなのだろうが、皆が時計を持っているわけではないのによくうまく全員が集まり、
荷物の抜けが無いものだと感心してしまう。
2400mの国立公園のゲードで受付を済ませる。これよりメッツステーション 2950m(meteorologicalstation 気象観
測所があるとのこと)まで6~7kmの行程で、余程ぬかるんでいない限り4WDなどの足回りのいい車だと上れるが、登山者
は順応のため途中から歩く。
ドイツ人と我々6人が降りて、自己紹介しながらゆっくり歩く。彼らは写真を撮ったりのゆっくりぺースで先に行く。
橋の工事現場を過ぎた所で先頭を歩いていた河合が声を発する。ひょうの後半身を見たとの由。エー、猫じゃないの
か?そんな大きい猫おらんとか言って大騒ぎになる。雨が降り始めるころ、ぬかるみの道をメッツステーションに着く。
行程1H。10人ずつの小屋が3棟あり、ロベリア,ソネシオ,ハゲニアなどと名前が付いている。(べッド、マットあり)
ドイツ人パーティーも少し濡れて到着し、相部屋となる。
2日目(12/31)
マッキンダーズキャンプ(4200m)までの約8km、標高差1100m、行程5Hの道のり。
6:10起床、7:00朝食。お決まりのコンチネンタル(オムレツ、ソーセージ、ベーコン、食パン、トマトに煮豆)。
晴れているが、雲が結構出ている。やはりキリマンジャロより天気が悪そう。
7:50発でジョンを先頭に4人で歩き出す。かなり早いピッチで1時間で400m近く高度を上げる。(3380m
8:50) これよりジャイアント・ヘザーなどの低木帯となり、また湿地帯が始まる。雨期や12月いっぱいまで
は湿地帯の斜面となっている。事情が良く判っていて休みも取りやすいヨーロッパの山屋さんは1月の乾期に来ると
のこと。
3500m付近で、高校生位の男女7〜8人のグループに追い付く。3500m付近では若干霧も晴れ、バチアン
などのピーク群が姿を現す。少年少女グループがやけにペースが早いなと思っていたら、案の定、休憩後15分程歩
いたところで女の子1人が苦しそうにダウンしていた。急に高度を上げてきたための高山症か?
やはりそのまま下山したとのこと。アプローチが短いだけに、ケニヤ山にいきなり入山する場合はよほど気を付け
た方が良い。
所々小さな岩峰が出るが難なくていく巻いていく。ソネシオ,ロベリア・テレキ、などの面白い形の植物が眺めら
れる。特にロベリア・テレキはここの固有種なのか、ケニヤ山の開拓期の登山家、Telekiの名がついた面白い形をし
た植物で高さが大きいもので2〜3m、日本の虎の尾のように軸を中心に細い葉が放射状に細かく密に出ており、ち
ょうど昔アニメで見たムーミンのニョロニョロ(の手の無いやつ)みたいで妙に面白く、帽子でもかぶせて写真を
撮ってしまった。
なだらかな尾根を少しずつ離れ、左側から上がってきたTeleki Valleyに下り立ち、小川を渡る。非常に開けた明
るい谷で気分が良い。
古い資料には載っているTeleki Hutは解体されており今は無い。 のんびりと歩くこと40分程でマッキンダー
ズキャンプ(Naro Moru River Lodge Teleki)に着く。Naro Moru RiverLodgeが管理する宿泊棟がある。1:20着。
着いたら、すぐに雨が降り出した。我々はラッキーだがドイツ人3人パーティーは今日もしっかり濡れたようだ。
ロッジではドイツ語をよく聞いた。小屋泊り以外にもテント泊でガイド・ポータレスらしきパーティーも見受けら
れる。既にここに数日留まり、明日からはピーク群のクライミングをするというドイツ人の2人パーティーも見かけ
た。
夕方からは再び陽がさして、氷河を抱いた双耳峰のバチアンとネリオンが間近に望まれた。双耳峰の間を落ちる有
名なダイヤモンド・クロアールには細いがしっかりと氷が着いていた。下部はかなり傾斜が強そうだ。みんなそれぞ
れ、夕日に輝く写真を何枚も撮っていた。神々しいばかりの景観だった。
大きなランプの灯火の下で宮尾と先日の将棋の続きを指す。みんな、ベッドに入って我々とガイド1人だけになる。
静かな小屋での夜は更け、9時前に床に着く。
3日目(1/1)
今日はピーク群を眺めながら時計回りに、マッキンダーズキャンプと反対側のカミ・ハットまでの3Hのトレッキ
ング。
6時半起床で、7時半朝食。朝食にはキリマンジャロでも出たウジ(とうもろこしの粉のおかゆ)が出た。味付けさ
れてないので、塩かしょうゆで食べる。河合はウジが苦手のよう。わけのわからない味ということか?
このせいではないが、私も昨夜位から胃腸の調子が悪く、何か力が入らない。動けない程ではないので、予定通り
9時に出発する。ピーク群はガスがかかり今日の天気はあまりよくない。
午前3時に出発したレナナ峰登頂組がちらほらと小屋に戻ってくる中、谷の左側の斜面を右上に上がって行く。
4500mの台地に上がると紺碧の高山湖 Two Tarn(Tarnは山の小さな湖)とTwo Tarn Hutが見え、僅かの下りで岸に
降り立つ。9:55着。ピーク群付近の無人小屋のほとんどはケニヤ山岳会(MCK:Mountain Club of Kenya)の所有物だ
が開放されている。しばらく景色を楽しんで、出発。
峠、Arthurs Seat 4666mを越えていくルートも地図にはあるが、トラバースしていく。左にNanyuki Tarn ,その奥、
少し下にEmerald Tarnを見、右側にはArthurs Seat下の岩壁を見上げながら、Eastern Terminalをトラバースしてい
く。回り込んだ峠で一休み。正面下には底が平らなカール状の地形で、Oblong TarnとHausbergTarnである。箱庭の
ように美しい。
一気に100m余り下って、ゆっくりと登り返し。ポーター達と前後しながら、Hausberg Col 4591mめがけて、砂礫の
道を電光型に刻んで高度を上げる。
私は相変わらず、胃腸の調子が悪く不調。力が入らずゆっくりと登る。
11:45、コルに登り着くと若い白人の男性2人が一段下のShipton Campから登ってきて、我々とは逆に反時計回
りに、マッキンダーズキャンプから今日中にメッツステーションまで下るとのこと。170mの下りでCami Hut横のテン
ト場に着く。12:00着、標高4425m。
一段下にはキッチン小屋とトイレがあるが、我々はポーターが担いでくれた4人用の家型テント。ガイドと一緒に
設営し、潜り込む。
私は体調が悪いので、出してくれた昼食も食べずひたすら4時ごろまで眠る。良く寝たお蔭で体調が戻り、夕飯は
おいしく頂けた。
河合、宮尾は今年の山岳会(豊川、東三遭対協、愛知岳連)を展望して新春座談会や新春対局にいそしんでいた。
夕食後、ガイドのJohnから、ケニヤ山のバリエーションルートと登攀ガイドについて情報を得ることができた。
4日目(1/2)
レナナ峰登頂の日。
5:10起床、軽く朝食を取り、夜明け前の6:05出発。テントはそのままで、ポーターさん達に撤収はおまかせ。
薄明の中、バチアン北面のモレーンをトラバースする。太陽が登り、バチアンとネリオンの東面に日がさす。褐色の
岩肌がしばし黄金色に染まる。折しも巨大な岩峰にガスがまとわりつき見事なアクセントを与える。レナナ北面の尾
根に取り付き、積雪が見え隠れするリッジに出る。7:10着。
Chogoria Routeとの合流点付近。主峰群をカメラに納め、頂上をめざす。ふと左を見るとこんな高い所にも湖。
4730m付近である。雪面をトラバースし、ゴーロ帯を巻き頂上に着く。8:00。ここで丁度、例のドイツ人3人と
行合う。話によると、昨日は高山症のため停滞。
今日、未明3時にマッキンダーズを発ち、7時に頂上に着いたとのこと。お互いの登頂を喜び合い別れる。
4985mのレナナ峰の頂上よりバチアン,ネリオン、ジョン峰.ルイス河などを間近に見る。情報さえしっかりあれば登
れただろうと思うと悔しいが、今回はのんびり山行だ。今日は昨日と打って変わって私も元気を取り戻す。高度順化
も全員問題ない。コースタイム3Hを余裕で2H弱で登ってきた。ひょっとして見えるかもと期待したキリマンジャ
ロの遠望は雲海で望めなかった。
振り返ると東面からの登路、Chogoria Route側の懸崖、来し方、Cami Tarn 側のTerere 4714とSebdeo 4704の双耳
峰が美しい。思う存分景色をカメラに納めた後、ルイス氷河の淵を少し横切りながらオーストリアン・ハットに向け
下る。雪面は、降雪直後でない限り、アイゼン・ピッケルは不要。オーストリアン・ハットで一休みする。2〜3パ
ーティーがテントを張っている。オーストリアン・ハットは無人で、ちょっと汚いが十分泊まれる。
ルイス氷河、ルイス・ターン 4590mを見ながら、ネリオンの南稜、Pt.John 4883mを回り込む。下るほどに圧倒的な迫
力でのしかかってくる。更に回り込むとバチアンとネリオンの間のダイヤモンドクロアールやTyndall Tarn ,American
Campも見えてくる。Teleki Valleyを横断し、斜面をトラバースし、9:50、マッキンダーズ・キャンプに帰り着
く。最高の天気の中、小屋の前で休んでいると昼食を持ってきてくれる。ソーセージ、サラミ、パン、オムレツといつ
ものパターンであるが腹いっぱいいただく。周りでハイラックスが餌を求めてたむろする。毛並みはそんなにきれいで
はないが、ころころと憎めない奴だ。近くに来たのを背中を触ったらキャッと鳴いて飛び逃げた。
小屋にはこの後、キリマンジャロをめざすという日本人パーティー(添乗員付)を見かける。
時間が早いので下に降りることにする。ここでガイドのJohnとはお別れ。別の客の調子が悪いのと、後、用事もある
ので3〜4日ここに留まるとのこと。この後はコックのJacksonにスイッチした。
大休止の後、11:00メッツステーションに向け出発。下りは、登りの時とは違ってTeleki Valleyno更に下流
まで右岸を下降し、谷を渡る。尾根に上がると登りで使ったルートとの合流点 3920m位で小休止。12:00。ポー
ター達も休んでおり、持ってきた日本のタバコを分けて吸ってもらう。
ここから下は例によって湿地帯で滑らないように私は1本ストックの補助で降りる。最後は雨に降られ、2:05、
メッツステーションに到着。歩きは4日目で終わってしまった。雨の最中ドイツ人3人パーティーも降りてきて、同
宿となる。
夕方になるとまた日がさす。外に出ると近くに住んでいる猿(Green Monkey ?)の他に、バッファローも近くに現れる。
夜はドイツ人チームと話し込む。彼らが持ってきた花火に始まり、双方の休暇の取得事情、残業について、この間行
った旅行などいろんな話題に及ぶ。双方の環境の違いに驚き、自分達の足元を確かめるのに良い刺激となった。
5日目
迎えの車(日本のぼろぼろになったアウトドア車)でNaro Moroへ下山。 ぬかるみと激しい轍。こんな所でこそ、
この種の車が生きるというもの。
河合は今回持ってきた、使い尽くした登山靴を彼のポーターのパシリュに、ダウンジャケットをコックのジャクソ
ンに譲って身軽になる。この国でお役目を全うすることだろう。
ロッジに戻り、洗濯、読書などをして過ごす。
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