1996年8月15日〜18日
遅ればせながら夏の報告をします.穂高屏風岩をめざしました
みなさんの報告にあったように台風に泣いた夏休みでした。
8/15 上高地入山 ちょうど台風が通過中で, 路線が不通になる
泣きながら小梨平まで歩きテントを張る.全てビショヌレ
8/16 横尾まで入る.大快晴だが,どうせ壁は濡れているので今日は乾くのを
待つ.東壁の継続登攀はあきらめて,右岩壁の1本にかける
PM4時ごろビバークのため,右岩壁の取りつきへ向かう。
8/17 ルンゼ状スラブ登攀
8/18 朝,ゆっくり起き,下山
結局,夏休みは1本に終わりましたが,私にとっては中身のある1本でした。
以下,長いですが,山行記録です。
リターンマッチを果たすべく, 右岸壁取りつきのハング下で前夜ビバーク.ラクを受けないように一番に取り つくためである.壁は乾いておらず,ツエルトにも雫がたれ,渡渉で靴が ビショビショに濡れたこともあり,寒くてあまり眠れなかった.
しかし天気は良い.朝日が当たるまで登攀はがまん,それまでガチャの準備. 迷ったが話し合いの結果フレンズ1セットを持参することにする.
6時になり常念岳から日が昇り壁に朝日があたった.すばらしい天気. いざスタート
(以下舘田:T,児矢野:K)
1P Tリード(V,40m)
2P Kリード(V,40m)
昨年とおりのオーダで快調に緩い白く光るカコウ岩のスラブを登る.
やはり台風の後の1日では壁は乾いていなかった.すでにロープはビショビショ
となる.この2ピッチはほとんどプロテクションはない.
3P Tリード(W+,40m)
4P Tリード(X,A0,35m)
左の凹角沿いに小ハングを越す.レッジへあがったあと,さらに凹角を直上.
濡れているので悪く,残置ピトンに助けられ小レッジへ,ここから右にトラバー
スし,右凹角の急峻なフェースへ. ルートファインディングが要求されるピッチ.
もろい凹角を登りテラスへあがる.
後続1パーティがとりつきにむかっているのを確認.
5P Kリード(W+,A0,15m)
この右のテラスからスラブをはさんだ左のレッジに向けてトラバース.ボルト
と残置シュリンゲに助けられてながらA0でスラブの真ん中へ.
濡れていてフリクションが不安だが,途中からフリーにうつり左のテラスに
トラバースまでが本当に緊張する.
6P Tリード(X,A0,45m)
スラブを右の凹状をめざして登る.このあたりからスラブはもろくなり,後続
もいること
から神経を使う(このビレイポイントでラクを受けたのだ).
凹角はステミングで,テラスへの抜け口がフリーではきびしい.ワンポイント AOがはいる.(ルート中,唯一この凹角の数メートルが岩の固い快適な フリーであった)
横断バンドを左にトラバースするとビレイ点はスラブのど真ん中にある. しかしほんとうにもろいのには閉口する.とうとう小さな落石をおとしてしま うが,後続には当たらなかった.よかった...
7P Kリード(W,30m)
濡れまくったスラブを今度は上部ハング帯の下を左上する.
傾斜が徐々にきつくなってきたことがわかる.W級だがピンがない.
おまけに岩のもろさと途中に現れる草付きの 悪さは一級品だ.昨年のラク石はここで先行パーティがだしたんだと おもったが,いたしかたあるまい(妙に納得). でも我々は絶対におこしてはならない.後続がいるのだから....
20m伸ばす間,1個キャメロットをセットし2本ピトンを打ち足す. 残置ピンが1本あり,ルートをはずしていないことがわかってホットする. ここから上部は悪い草付き帯となる.そろそろピンが欲しい と思ったらふと草の中に二重リングボルトが埋まっており夢中で素手で 掘り出す.とりあえず効いているので,ピッチを切る.
8P Tリード(X,AI,20m)
草付き壁を右にいくか左にいくか試したが,結局左にいく,ここも濡れていて
悪く,いやになるくらい岩がもろい.濡れたブヨブヨ草付きがことのほかわるい.
7P目本来のビレイ点が途中にあった.途中からボルトとピトンのラダーが 現れA1になりホットする.しかし抜け口は悪かったようで1本打ちたした.
9P Kリード(V,10m)
草付きからカンテにでると日の当たる壁へ飛びだした.大きなテラスがあり
ここが外傾テラスで,鵬翔ルートとの合流点.りっぱなビレイ点がある.
10P Tリード(W,A1,30m)
外傾テラスから上部の傾斜のあるスラブ帯はすっきりして乾いている.
右往左往したが,弱点はスラブの左からマントル気味に乗越し,
細いクラックを人工で右上する.ピンのないポイントは2箇所打ちたし,
サイズの小さいフレンズを使う.
フリー化されているピッチでY-だが 人工でも打ち込んだピンが抜けそうでこわい. すらぶから小さなブッシュ帯 へあがるところは草付きで悪い. ビレイ点はブッシュ帯の中の壁. ピトンがぬけず2本残置してしまった. ここも非常に神経をすり減らすピッチだった.
ゴールのシュリンゲが見える.あと3ピッチでカモシカ尾根のブッシュ だったが,さんざん神経をすり減らして,ふたりともまいってしまった.
これ以上行くと懸垂できなくなりそうなのでここで終了だい,とお互い, 言い訳して7ピッチの懸垂を行い,取りつきに到着. なんとか無事に 戻った事のほうがうれしくて,さっさと横尾に戻って,リターンマッチ の祝杯(?)をあげた.横尾に戻る途中,見上げた右岩壁の白いスジの スラブは美しく印象的だった.でもおそらく二度とこないだろうな.
(タイム)
取り付き(6:20)〜10P目終了(13:10)〜懸垂開始(13:20)〜取り付き(14:50)
〜横尾BC(16:50)
(アプローチ)
2ルンゼ押し出しに丸木がかかっていればそれが早い(昨年はかかっていたが, 今年はかかっていず足をびしょ濡れにして渡渉した,渡ってから30分弱でとりつき).
地道に横尾の本谷橋をわたり,左におれて対岸沿いにいきブッッシュ帯を つめてもよい.押し出しが見つかるがチョットみつけつらいかも,それに 藪漕ぎがすこしある(本谷橋から50分弱でとりつき).
(注意点)
全体的に岩は脆く,6,7,8Pは注意,また途中の草付きの処理も悪いので注意 簡単なところはピンはなく,また抜けているところも多いので ピトンはかなり持っていったほうがよい.
また重いが,チョック類も意外に役に立つので是非もっていくべきだと思う. 後続パーティの人から聞くと,ホールドが昨年からまたさらに落ちている そうです(よく2回もくるな..ぼくらもそうか).
(感想) フリー主体の好ルートという文句に惹かれていたが予想外の悪さに 閉口した.でも,このような悪さに対処するのがアルパインクライミング の面白さなのかもしれない.....実力不足を再認識しました.
右岩壁は東壁と比較して傾斜が緩く大きいのでフリールートとしての 素材はいいのだが,いかんせん岩質が悪い.ほんとに残念なBig Wallだと 思います.