八ケ岳/旭岳東稜/敗退記録

日本登高研究会/伊藤、浅川、稲垣、恵川


< 記 録 >惠 川 佐 和 子


<山行日>     1997年4月12日(土)

 先週末八ヶ岳旭東稜へ行ってくるつもりが敗退となってしまいました。敗退記録を投稿するのは申し訳ないので
すが、積雪の状態等を参考にしていただければ幸いです。

4月11日

 夜行で清里へ向かう。到着は1時40分頃だったが、ステーションビバーグ者は
我々だけだった。

4月12日

清里/ゲート(5:40/6:00)ゲート/赤岳沢出合小屋(6:10/7:20)出合小屋/懸垂下降地点
(7:50/9:22)
 5:00起床 快晴 軽く朝食を済ませ美しの森へ向かう。ゲートまで車をいれることができた。 ザックを背負って出発。昨晩の天気予報で朝は放射冷却で冷え込むとの事 だったが予報通り、寒くなり温度計はマイナス3度だった。

 しかし、見上げると山々は黒い・・ 最後の堤防のあたりから雪が現れる。何回も飛び石伝いに渡るが石のうえにてらてらと氷が ついていて滑りそうで恐い。所々水が溜まっているところも氷がはっていた。

 地面の上も氷がはっていてまるでガラスの上を踏み抜いているような音がパリンパリンと響 き渡る。時折小鳥の声が澄んだ空にこだまする。

   出合小屋は古そうな感じはしたが、中に入ってみるとストーブがありきちんと整頓されてい た。しばし休息をとりスパッツ&アイゼンを付け出発。

 出合小屋をでるとしばらくは雪の上を川に沿って進む。上ノ権現沢出合いの手前に小さな指 導票があり「ツルネ」と書いてあった。出合にはおおきな岩にレリーフが埋め込まれていた。

 さらに先に進んで、左の急斜面を登る事にした。冷え込んでくれたおかげで雪がしまって歩きやすい。 樹林帯の中倒木をくぐり、またぎ、踏みつけどんどん登って行く。至る所に鹿のふん(だと思うが、 どんぐり状のまるいつぶが60〜70個位かたまって落ちている)がある。はじめはアイゼンで踏 まないように気をつけていたがそのうちどうでもよくなった。

 しばらく登るとぱっと視界が開け、 360度まわりが見渡せる高所に立った。ここから、狭い岩の間を降りる。岳人1月号に「ここはザイルを出した方がよい 」というところだ。しかし、雪はまったくないのでザイルは不要。ここから見る限りではいったん下降するまでは雪はなし。 登りかえして樹林帯〜岩場基部までは残雪あり。それ以上には雪は見られない。

諸般の事情により稲垣と私はここで敗退することにし、2人を見送る。もと来た道を下降 するが、どうしてもトレースをはずしてしまい何度も行きずまってしまった。途中で登って くる2人組みのパーティーとすれ違う。

 ようやく上ノ権現沢にたどりついたが登りはじめたところよりさらに上の方に下りてきてし まった。 そのまま川沿いに歩くと出合いにでた。出合いから3mほど通り過ぎたところで 右を見ると木に赤テープが3個所も貼ってあり、旭岳東稜の正しい登り口を知る。

 出合い小屋のストーブに火をいれるのに悪戦苦闘して、全身煙まみれになった。 ラーメン等を食して休息していると、ガチャガチャと音がする。 数時間前に見送った2人がもう戻ってきた。

 5段の宮の岩場基部まで行き、さあ登ろうと思って手をかけたとたんホールドがボロリと取 れた。これはいけないと思って2mずれ、大きな岩に手をかけ少し体重をかけたらがらがら と剥がれ落ちた。登攀は無理とあきらめ戻ってきたという。 と、いうわけで今回は誰も完登はできなかった。八ケ岳の岩の脆さをあらためて感じた。

やや、開きぎみの“ふきのとう”をいくつかつみながらゲートに到着すると、車がやって きて一人の男性が降りてきた。私たちに「イヌワシを見ませんでしたか?」と聞く。「地面 ばかり見ていたので気が付きませんでした」というと、「1月に八ケ岳でイヌワシを見たと いう情報を得たので、見晴らしのよい所で写真を撮ろうと思ってここまで来た。」見晴らし のいいところまでは相当歩かないと無理ですよ。というとあきらめて帰っていった。


★ エリア別山行記録へ戻る ★ INDEXへ戻る