いまだにヒョングリの滝は雪渓の下で、テ−ルリッジまで雪渓通しで取付けるという お得な状況が、もう9月に入ったというのに続いていました。雪渓は完全に氷化、登 りは特に問題ないものの、懸垂で下ってきた場合には軽アイゼンが欲しい感じでした 。またテ−ルリッジは前日降った雨のために所々濡れており、若干悪い感じで、あま り歩きやすくはありませんでした。連日の寝不足のため南稜テラスに着く頃にはバテ バテになってしまい、この先大丈夫だろうかとふと不安になりましたが、岩の感触に 心はうきうきで!!!
南稜テラスでは4パ−ティ−が一緒になってしまったため(我々は3番目)、どうな ることかと思いましたが、幸いにも先行の2パ−ティ−は準備をした後本谷バンドへ 進んでゆき、結局南稜は先行パ−ティ−のいない快適な登攀となりました。ちなみに 後続は1パ−ティ−3人。
2ピッチ目のチムニ−でいい加減な入り方をしてしまってやり直した以外は特に問題 なく元気一杯で登ると、あっという間に中間の草付きに到着。全体的にやはり前日の 雨のせいか、しみ出しがあちこちであり、若干登り難いところがありましたが、ル− ト上が一面濡れているようなところはなく、また浮き石も全くと言って良い程無く、 あまりに順調すぎてほとんど記憶が無いほどです。草付きを越えた後の4ピッチ目も 、しみ出しで全体的に濡れていて若干登りにくかったものの、ここも問題なく通過し ます。
5ピッチ目でいよいよトップを交替。最初の残置ピトンが少々遠いのと、リッジのど ちら側でも登れそうなのに若干戸惑いましたが、右側通しで行き、途中二ヶ所ばかり ピッチが切れそうなところを、まだ大丈夫と見送ってしまいますが、これが大きな間 違いであったことに後で気が付くことになります。所々に巨大な浮き石があって神経 を使うものの、リッジ上の体が飛び出すような感覚と、リッジを離れて右側のクラッ ク状の入る時の足元が切れた感覚を楽しみながら登り、さてピッチを切ろうとしたら なんと(!!!)、ザイルがついてきません。全然コ−ルが聞こえなかったのですが、 どうもザイルが一杯になってしまっている模様。慌てて残置ピトンに手を伸ばすと、 辛うじて手が届く!!!かくして手持ちのヌンチャクでセルフビレ−を取って事無きを 得ましたが、大きな教訓になりました。
5ピッチ目を終わった後で聞いたところによると、どうも我が先輩は後続パ−ティ− と会話をしているうちについついザイルの残りの長さをチェックし忘れた由。お互い のどちょんぼでしたが、ザイルの長さの感覚、ビレ−中の神経集中、確実なコ−ルな どなど、色々と今後に課題を(あまりに初歩的ではありますが)残しました。体でお ぼえなければならない感覚なのだろうし、やはり数を登るしかないのかなあとも思う のと同時に、パ−トナ−との意志疎通の困難さを思い知った一日となりました。
ところで6ピッチ目は再びセカンドに戻りましたが、核心部が丁度濡れていて、先輩 はA0になってしまい、大きな溜め息がビレ−をしている僕のところまで聞こえてきま した。こっちはセカンドなので気楽なもので、写真などを撮ってもらいながら(もち ろんセルフビレ−をしていましたが)、時間をかけてフリ−で登り、かくして南稜登 攀は終了したのでありました。所要時間2時間、終了時間8時半。
時間があったので、懸垂で下りずに国境稜線へ抜けたのですが、元来やぶ漕ぎの好き ではない(だったら稜線へ抜けようとするなとお叱りの声が聞こえそうですが...) 僕は、途中で足がパンパンに張ってしまうという醜態を演じてしまいました。寝不足 は差引くとしても、かなり情けないものがありました。先輩いわく、「アルパインの 基本は足だよ」。そう言えば人工壁を登り始めてから、上半身のウェイトトレ−ニン グはやっていたものの、走りこみ等は全くおろそかになっていたことに気付き、これ も大きな教訓となりました。
以上初級者の南稜登攀記でした。