仙丈岳/尾勝谷支流/塩沢側壁ルンゼ

JECC/廣川健太郎、長谷川文、池学


<山行日> 1998年2月11日<記録> 廣川健太郎



南アルプス 仙丈岳 尾勝谷支流塩沢側壁ルンゼ

 平成10年2月11日、廣川健太郎、長谷川文(JECC)、
 池学(RCC神奈川)

 平成8年の正月に塩沢の右俣、左俣の大滝群を登った折、塩沢に
 入ってしばらくのゴルジュ帯右岸に切れ込むルンゼに見栄えのす
 る氷が懸かっているを見つけた。
 中間部に見えた氷はまずまず傾斜と大きさもありそうで、下から
 全容は見えなかったが、他にも、まだ氷が隠れていそうだった。

 11日の旗日、日帰りでいけそうな面白い所はないかと、旧知の
 池さんと相談し、このルンゼならばアプローチも近いのでちょう
 ど良いねと、行ってみることにした。
 未明、車でのアプローチ途中で落石を踏んでパンク。タイヤ交換
 に手間取ったりのアクシデントもあったが、尾勝谷、塩沢分岐上
 まで続く林道工事のため、ゲートが空いており、分岐の20分位
 下まで車で入ることができた。
 側壁ルンゼは塩沢に入って約1時間、ラッセルを続けると出合い。
 出だしから氷を見せ、右岸岩壁奥へと顕著に食い込んでいる。

 一の滝(出だしの滝)は岩溝状の中のベルグラ状。氷結が甘く、
 しっかりランナーが取れる状態ではない。V級位、用意をしてい
 る内に、池さんがするすると登ってしまい、結局ビレーせず。

 二の滝は、出合いから見える滝。見栄えがするが、実際に登って
 みると傾斜は60〜75度が続き、容易だった。しかし、この滝
 は陽があたり、氷が柔らかく、アイスピトンがしっかり効かない。
 今回は、長谷川が核心部をオールリードすると、張り切って登っ
 ていったが落ち口の5mが氷が付いておらず、スラブを登らされる。

 この上で、ナメ状の氷をいくつか登り、約100mゴルジュを詰
 めていくと、奥に25mの良く立った滝(三の滝)が現われた。
 三の滝は、日もあたらず、蒼みがかった、安定した氷質。中間15
 m程度がきっちり垂直で登り応えがある。
 長谷川は支点を取る際、数回テンションをかけたが、安定したフォ
 ームで登りきり、潅木でビレー。八ヶ岳の南沢大滝や大同心大滝な
 どのヴァーチカル入門よりも手応えあり、満足の行く内容だった。

 その上は、3〜4mのオマケの滝があり、ここを登って上部を探る
 が、谷は明るく開け緩傾斜となり、氷は期待できそうにないので、
 途中まででお終いとし、一〜三の滝をそれぞれ懸垂下降し、同ルー
 トを下降した。
 長谷川は池さんに登り方が安定していると誉められて、喜んでいた。

 この山行の詳細を忘れない内にと、ちょうど纏めてすぐ、池さんが
 初冬の北アに出かけたまま、帰って来ないという事態になってしま
 った。残念なことに、この側壁ルンゼが池さんと最後にザイルを組
 んだメモリアルルートとなってしまった。、



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