槍ヶ岳/北鎌尾根

岐阜/酒井 俊之、その他


<山行日> 1999年10月8日(金)〜11日(月)<記録> 酒井俊之



 酒井@岐阜です。

 3連休を利用して北鎌尾根を歩いて来ましたので簡単に報告します。

CL:Y、記録:I、装備:S、気象:K、食料:酒井

<コースタイム>

10/ 8

 蘇原17:59==(JR)==23:21有明23:32==(タクシー)==0:20中房温泉(仮眠)

10/ 9

 中房温泉5:30――6:26第二ベンチ6:37――7:30富士見ベンチ7:42―― 8:03合戦小屋8:11――8:25三角点8:33――9:05燕山荘9:25―― 10:32標高2655m地点10:45――11:47大天井ヒュッテ12:20―― 13:12標高2295m地点――13:52標高2025m地点14:05―― 14:49貧乏沢出合15:00――15:22北鎌沢出合(幕営)

10/10

 北鎌沢出合5:38――6:32標高2135m地点6:45――7:31北鎌沢コル7:51―― 8:38標高2749mピーク8:51――9:22独標取付9:33――10:14独標10:37―― 11:22標高2880mピーク11:35――12:28標高2870mピーク12:41―― 13:25標高2980mピーク13:40――14:25北鎌平上部14:40―― 15:10槍ヶ岳15:24――15:45槍ヶ岳山荘――16:00テン場(幕営)

10/11

 槍ヶ岳山荘5:30――6:52大喰岳西尾根取付7:02――7:45槍平8:00―― 8:35滝谷出合8:43――9:35白出沢出合9:45――10:20穂高平避難小屋10:40―― 11:27新穂高温泉13:00==(バス)==14:35高山15:24==(JR)==18:25蘇原

<行動記録>

10月8日(金)晴れ

 仕事を終えて列車に飛び乗る。有明駅の近くにあるコンビニで朝飯を仕入れた後、 タクシーで中房温泉に入り仮眠。星がきれいだ。

10月9日(土)快晴

 夜も明け切らないうちから車やタクシーがやって来ては登山者を吐き出す。 さすがは連休の表銀座縦走路起点である。我々もさっさと朝食を済ませ出発。 いきなりの急登をまずは燕山荘を目指す。

 富士見ベンチで見た雲海が素晴らしい。まるで浜辺に打ち寄せる白波が 瞬時に氷結したかのようだ。そして純白の雲の海に浮かぶ端正な富士の 大きいこと。一瞬疲れを忘れさせられる。

 やっとこたどり着いた燕山荘で大休止。小屋から漏れ聞こえる管弦楽の調べに心が和む。 雲一つない青空の下に広がるアルプスの展望を存分に楽しみつつ「雲の平に入っている連中は 今ごろあの辺りを歩いているのかな?」と山岳部の別のパーティーを気にする余裕も出てきた。 大天井岳はその名の通りでかい山だ。巨大なピークを巻いて大天井ヒュッテのあるコルに 下りると、小屋の従業員がテーブルの上に干してあった布団を片づけ始めた。

(ちょっと悪いことをしたかな?)小屋では外壁にコールタールを塗っている最中で、 そろそろ冬ごもりの支度ってところか。ここで頼んだホットミルク500円が うまかった。こんなところでティーカップに注がれた温かいミルクを飲めるとは。  ちなみにミルクを持って来てくれたお姉さんもきれいでした。

貧乏沢の入口には立派な道標が立てられており迷うことはない。その道標に導かれて 踏み跡のような道を薮を掻き分け貧乏沢に入る。ザックに括り付けた銀マットが 薮に引っ掛かり歩き難い。貧乏沢は北鎌のアプローチとして最近よく利用されている ため随所に赤いテープがある。それでもところどころルートが不明確なところや 不安定なガレ場もあり、こんなところで怪我をしてもつまらないと慎重に下る。

 途中で先を譲った男女2人連れのパーティーは岩をガラガラといわせながら 視界から消えていった。(なかなか元気である。) 水がないことを想定して大天井ヒュッテで200円/リットルの水を2リットル 買ったのだが、貧乏沢には豊富な水が流れており少し損した気分。

 コルからちょうど2時間、いいかげん足がだるくなってきたところで 天井沢との出合に到着。早朝から稼いだ高度を2時間足らずで一気に消費 してしまったのは何とももったいないが、本日のゴールまであと少しだ。 出合から20分程登り天井沢の水が伏流となると、前方にテントが一張り 見えてきた。先刻、我々を追い越した2人連れだ。ようやく本日の目的地である 北鎌沢出合に到着。対岸の比較的平坦なところを整地して幕営すると秋の沢は 急速に冷え込んできた。この日、北鎌沢出合に幕営したのは我々を含め4パーティー。 そしてやや下流にたき火が一つ見えた。

10月10日(日)晴れ

 今日はいよいよ北鎌に挑む。例の2人連れは既にテントの撤収にかかっていた。 手早く朝飯を済ませ彼らに続く。出合を少し登ると水が現れ沢登りとなる。 水流はところどころ伏流となりながらも北鎌沢コルのやや下まで続いていた。 朝日を求めてひたすら上へ。1時間ほど歩いたところで1本取ると「カモシカだ!」 の声。指差す方を見ると沢から5mくらい離れた岩の上でカモシカ君がジッと こちらを見ているではないか。我々が近寄れないのが分かるのだろう。 カメラを構えても逃げる気配はない。結局、我々がそこを立ち去るまで 彼は我々の動きを観察していた。

 朝日に追いつき(追いつかれ)上に青空が広がってくると北鎌沢のコルだ。 コルにはメット2個とザイル入りのやや年季がかったサブザックにビニール袋に 入った赤いザイルが残置されている。噂には聞いていたが直に見ると気持ちのいい ものではない。

 浮き石だらけのガレガレの岩稜を行く我らの前にまず立ちはだかるのが独標だ。 どこを攻めるべきかしばし観察する。よくみると千丈沢側に小槍のように突き出した 岩峰の基部辺りに人影らしきものが2つ見える。あの2人連れか・・・。さすがに速い。 我々も千丈沢側に回り込んでピークを目指すが、メンバーには大きなザックを担いでの 岩登りに慣れない者もおり次第にペースが遅くなる。それでも一歩一歩高度を稼ぎ ついにピークに立った。しかし、足元から伸びる尾根はさらに遠方へと連なり、  その先端には城塞のような巨大な穂先が圧倒的な迫力でそびえ立っていた。

まだまだ先は長い。こんなときは焦ってもしょうがないと、独標の最高点らしき 岩によじ登ってパノラマを楽しむことにした。するとここにも妙な落とし物?が。 なんと登山靴を発見。持ち主は一体どうしたのだろう? 独標を越えても道なき道が続く。ガレガレのトラバースに行き詰まっては 引き返して新たな踏み跡を進む。

 ハング気味の岩を千丈沢側に回り込むとまたもや嫌らしいトラバース。 ルンゼを登ろうとするも落石を誘発しそうで恐い。ピークの鞍部に戻ると またもや後続パーティーに追いつかれた。コルの大岩には残置スリングがある。 ここから懸垂下降でザレザレの急斜面を下って大きく巻くか?

 ザイルを出しかけたが、偵察のためトップが立ちはだかる岩稜を直登したところ 行けるとの合図。ザイルをしまって直登。北鎌沢のコルからハーネスを装着したが この時ザイルを出しかけた以外は結局使わず終い。北鎌平まであと少しだ。 北鎌平はわずかにテント2張り分くらいのスペースが整地されている以外 大きな岩がゴロゴロしており「平」のイメージとは程遠い。トップは北鎌平と 気付かず通り過ぎてしまい、北鎌平のやや上部で最後の小休止となった。

穂先には既に先行パーティーが取り付いている。いつしか雲量が増え 穂先の上空を真っ白い雲が流れていく。下を見ると北鎌平で後続パーティーが 大休止している。

 最後の烏龍茶を飲み干してアタック開始。浮き石と落石に注意しながら じりじりと穂先に迫り、チムニー状の岩を攀じ登ると急に辺りが騒がしくなってきた。 見覚えのある祠。今年3度目の槍の穂先だ。「やった!」パーティーのメンバー達と 固い握手。「北鎌から来たのですか。」と他の登山者。 中房温泉から担ぎ上げたビールがうまい!

 登頂の興奮から覚めると急に寒くなってきた。時刻は既に15時を回っている というのにひっきりなしに登ってくる登山者の間を縫うように下山。槍ヶ岳山荘の前で 女性グループから拍手されてしまった。(照れるなぁ〜)

 テン場に下りるとほぼ満員。北鎌尾根縦走祝賀パーティーといきたいところだが、 離れ離れに2張り分のスペースを確保するのがやっとの状態。各々のテントで 晩飯を食べておとなしく寝ることにした。寝る前にトイレに立つと穂先で明かりが チラチラ動いている。こんな時間に行動するなんて・・・。

10月11日(月)晴れ

 東の空がオレンジ色に染まっている。テン場でご来光を仰いで新穂高温泉に下山。 飛騨乗越から飛騨沢を下る。数年前のこの時期に表銀座を縦走したIさんとK君に よると槍平の紅葉が素晴らしかったそうだが、今年は紅葉の「こ」の字もなく残念。 穂高平で白出のコルに別れを告げて昼前に新穂高温泉着。今年は紅葉がダメなのが 知れ渡っているのか予想に反してロープウェイは閑散としている。

 バス停の温泉で3日間の垢を落としさっぱりしたところで、 2階の食堂で乾杯!やはり下山後の温泉とビールは最高!! 腹も膨れ幸せな気分になったところで満員の濃飛バスで高山へ。 急行「たかやま」の客となり帰路へ着いた。

 晴れの特異日ということで素晴らしい天候そして仲間に恵まれ 念願のキタカマを縦走することができ大満足。じわじわと充実感が 湧き上がってくる。次回は湯俣から完全縦走といきたいところだ。


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