北海道/利尻山/南稜

風来坊/大野、森、須藤、JECC/廣川、長谷川、幡谷


<山行日> 1999年4月29日(木)〜5月3日(月) <記録> 幡谷


  幡谷@です。北海道利尻山南稜に行ってきました。
  以下長いです。旅行記のようになってしまった。
  
  山名:  利尻富士
  ルート: 南稜
  日程:  4/29〜5/3日
  メンバー:大野CL(風来坊)さん・森(風来坊)さん・須藤(風来坊)さん・廣川
       (JECC)さん・長谷川(JECC)さん・幡谷。
       他5名スキー・ピークハント隊あり。

  29日(快晴)
     羽田空港より稚内空港へ向いレンタカーを借りフェリーにて利尻島へ向かう。
     フェリーから見る利尻島は噂通り、海にそびえ立つ富士山のようだが、所々黒
     々としているのがちょっと気になる。
     フェリーは穏やかな利尻水道を通り、利尻島鴛泊港へ。
     レンタカーにて食材調達や役場へ挨拶などしてから、BCである利尻北麓野営場
     にてテントを設営し、その後利尻富士温泉に浸かり、鴛泊の居酒屋になだれ込む。
     何故か居酒屋の刺身は旨く無かった。テントに戻り就寝。

  30日(曇)
     BCにて別隊と別れレンタカーにて鬼脇へ。
     郷土資料館の前を通り林道に入るが、途中の堰工事現場までしか除雪されておら
     ず、車をデポする事にする。

    5:10 車デポ地より歩き始める。林道から雪の詰まった広い沢をひたすら歩くと、
        強い風が吹き下ろしてきて心も騒ぎだす。
        徐々に迫ってくる山姿は鶏の鶏冠か、はたまた恐竜の背中のようで、中でも
        大槍やローソク岩が目立つ。
        ヤムナイ沢砂防ダムより東壁を観察しながら、左手の雪面に取り付き高度を
        稼いで行く。

    7:40 南稜稜線へ出て小休止。広い稜線にハイマツが盆栽のように密集地が点在し
        て、吹雪けばホワイトアウトするような場所である。

    9:30 1200m付近にて先行者2張分のテン場を発見。ガスが時折晴れて大槍が見え
        、眼下には海も。ハイマツの密生地を避けるように雪を拾いながら進む。
        稜線が細くなり、ハイマツを上に下にと、泥のリッジを縫うように行くと、
        仙法志稜が間近に近づいてくる。
      
  13:15 懸垂1回を交えながら、小ピークを幾つも越え仙法志稜を合わせてから雪面
        を登り大槍基部に着く。高度感も高まってきて核心部に突入している事が感
        じられて来る。振り返れば恐竜の背中のような、うねうねとしたリッジが見
        え、妙義山系を思わせる。東壁を登るパーティーが見える。

  15:30 何故かスキー兼用靴の文さんがトップでP2を華麗に登ると、先行パーティー
        に追いつく。ぐらぐらの80cm位の岩を落とし、ピッケルを振りながらP2
        の頭に出ると西側からの風が寒い。泥のリッジをちょっと進み懸垂下降点に
              でるが、この懸垂が気持ち悪く、えぐれた泥を抱えるように懸垂するが、途
              中少し振られ気味な懸垂で、なおかつ壁はぼろぼろでスタンスが崩れる。
              2ピッチ懸垂でP2〜P1のコルに着く。
        先行パーティー2張り、我々2張り計4張りで一杯のコルだが、西風が避けら
        れる今夜の宿となる。徐々に風が強くなり翌日が心配になってくる。
        敷島さんら別パーティーと携帯の留守伝にて連絡を取る。
        今までのトレースに雪がどっさり付いている様子をイメージし、雪が多い時
        と少ない時はなどと考えながら、うつらうつらしていると、時折、猛烈な風
        がテントを叩き目を覚ます。

  1日(雨)
    相変わらず風は強く雨まで降り出す。西の水分を含んだ湿った潮風が木々の
    先端にアイスキャンディーの様に氷の固まりを作っている。
    P1の登りのルートが解らず、同じテン場のパーティーに聞くと目の前のルン
    ゼを登って行くが支点は少なく、天候が悪いので本日は停滞するとの事。
    しばらく葛藤があるが、停滞する事に決定になる。明日は天候回復の兆しが
    あるので、ありったけ喰って寝る。

  2日(快晴)
    夜中に外を覗くと海の向こうに町の明かりが見える。思わず煙草を吹かし、
    感無量。うつらうつらしているうちに出発の時間となる。
    ぼーっとしているうちに大野さんトップで登りだすが、ガレたルンゼに薄い
    氷が付いていて私の足元の調子は今一つ。
    ルンゼを登りP1ピークを越すと、バットレスが目前に現れるが眼下のコルに
    壊れたテントを発見!遭難か?と思いきや、先日ヘリで救助されたパーティ
    ーの残置だと判明する。それにしても狭いコルに、ヘリがよく近づけたもの
    だとパイロットの腕に感心する。

   8:00 バットレス基部着
    バットレスの登りは1ピッチ目にA1があり、未だ人工不得意な私は結構まご
    つき、おまけに同時登攀の為ザイルが交差し、すぐに現れた次のA1でさらに
    タイムをロスする。
    アイスキャンディーの付いた木の根元を掴み木登り状態のルンゼを登り、木
    登り状態の4ピッチを厳冬期の沢登りかと考えながら、バットレスを越えると
    南峰が間近に見える。

   14:15 南峰着
    祠を過ぎて南峰は右から回り込み、廣川さん・長谷川さん・大野さんが先行
    し1ピッチルンゼを登る手前にて後続パーティーが帰ろうかと言っていた。
    おいおい、、、。東稜パティーなどが加わり賑やかになってくる。
    ルンゼを登ると南峰頂上に飛び出した。間近に北方頂上にいる登山者が見え、
    核心部が終わった事を感じる。
   
   15:00 北峰着
    全員で記念撮影し眼下の長官小屋まで広い雪面を駆け下る。

   15:30 長官小屋着
    暑くてたまらないので雨具を脱ぐ。

   16:40 利尻北麓野営場着
    小屋を過ぎたあたりから一般登山道を外れ沢を尻セードで下る。海を眼下に
    尻セード初体験。イヤッホー、思わず声がでる。
    樹林帯をスキー用のテープに導かれながら、野営場に回して頂いた車に着い
    て全員で握手。
    今夜の宿、民宿ホテルニュー利尻にて目の前の海を見ながらガチャ分けし、
    宿の温泉に入り、夕食はと言えば、ウニとカニの嵐。ウニが皿から逃げ出そ
    うとする。全員無口。

  3日 帰省
    何故か釣り道具もバズーカにて東京から持ってきた私は、翌日早起きして島
    を一周するも風が強く、時期が早い為か海には魚影が無く釣果は無かった。
    川は堰堤が多く望みは絶たれる。沼にはコイが泳いでいた。
    朝飯を済ませフェリーの出発時間に追われるように離島。
    稚内にて温泉に浸かると、バットレス基部でお会いした後続パーティーに合う。
    寿司屋にてタコしゃぶを頂く。美味美味。
    またまた飛行機の時間に追われるように北海道を離れる。
    機内で数日間の山行を振り返りつつ、次期冬の為に更なる自己トレーニングの
    必要を実感すると共に、1日停滞したものの、天候とメンバーに恵まれた事に
    感謝の念が絶えない。いずれ厳冬期に違うルートにて取り付けるかな?などと
    考えているうちに、あっと言う間に見慣れた東京の景色が眼下に広がる。

  写真は近々風来坊HPにて公開予定です。最後まで読んで頂いた方、ありがとう
  ございました。
  (@^^)/~~~

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