関西岩峰会/梁瀬俊之、槙野勝治、大津岳士会/梁瀬健一
<山行日> 1999年4月3日(土)〜5日(月) <記録> 梁瀬俊之
4月3日から4月5日にかけて鹿島槍ヶ岳の北壁主稜に行ってきました。天候がめまぐるしく変わるこの時期
に、うまく好天周期をつかんで登攀を成功させることが出来た事は我々にとって非常にラッキーでした。雪の量
は昨年のこの頃とは比較にならないほど多く北壁も荒沢奥壁も非常に真っ白でした。
<4月3日(土) 大谷原〜天狗尾根天狗ノ鼻 晴れ>
AM6時前位に大谷原を出発する。出発前に槙野氏が、車の中で寝ていたら足を寝違えて痛いからもし行けそう
になかったら2人だけで行ってくれ、などと言い出すものだから一時はどうなるかと思ったが歩いているうちに
直ったと言うのでとりあえずホッとする。大川沢を3回の渡渉ののち荒沢出合に着く。荒沢を200m位登った
所の左岸側に古いテープが木にかかっており、そこから尾根を上がる。尾根の取り付きは結構傾斜がきつい。
あとは尾根を上に向かって登るのみだが第一クーロアールが結構いやらしかったのでロープを出した。天狗ノ
鼻にはPM3時頃に着いた。大川沢の渡渉に時間を食い過ぎてしまったようだ。
<4月4日(日) 天狗ノ鼻〜北壁主稜〜荒沢ノ頭付近(ビバーク) 晴れ>
AM5時半に天狗ノ鼻を出発する。主稜へのアプローチは北壁基部をトラバースしていく方法にした。そのほう
が楽だし早いからだ。しかし、思っていたほど楽ではなかった。北壁基部のトラバースは傾斜がきつく少しでも
足を滑らしたらカクネ里まで一直線で、ただではすみそうになかった為、エラい神経を使った。
主稜の本来の取り付き点であるスノーコルより、十数メートル手前にある蝶型右稜のスノーコルで登攀準備を
しそこから直接主稜に取り付く。3ピッチで核心部の岩場にぶつかった。
そこは左側が完全な氷瀑になっていたのでトップの兄貴は、その氷瀑をアイスクライミングの要領で越えた。
あとは延々と急な雪面登りとなるが雪が中途半端にくさっていた為、全く気を許す事はできなかった。
結局、全行程をスタカットで行動したためエラい時間を食ってしまい(単に実力が無いだけだが…)終了点に
着いたと同時に真っ暗になってしまった。そのまま天狗ノ鼻までヘッドランプ行動で下降しようとも思ったが、
天狗尾根自体誰も登った事が無い、という不安があったので天狗尾根と東尾根の分岐点である荒沢ノ頭付近で縦
穴式雪洞を掘りビバークときめこんだ。
<4月5日(月) 荒沢ノ頭付近〜天狗ノ鼻〜大谷原 曇りのち晴れ>
メシは行動食の余りのみ、ガスはあるので暖はとれるが雪洞が小さすぎて窮屈で仕方が無い。ガスを消すと寒
くて寝られない。しかしそんなビバークも唯一利点がある。起きる、という動作をしなくてもよいということで
ある。
薄明るくなったと同時にツエルトから飛び出してAM5時半位に下降を開始する。前日とは打って変わって曇り
空だ。北壁が殆どガスで見えないし風も強い。前日の北壁トラバース地点までは、殆ど懸垂下降とスタカットの
連続で下降した。
AM10時半位になんとか天狗ノ鼻にたどり着くことが出来、とりあえずテントの中で小1時間ほどホッコリす
る。その頃までにはガスはすっかり晴れて北壁がその全容を我々に表わしていた。
あまりノンビリしていると大谷原まで明るいうちに帰れないので軽くお茶だけ飲んで急いでテントを撤収する。
12時過ぎに再び下降を開始しPM5時過ぎに大川沢に着いた。ここから3回程の渡渉があるのだがいちいち渡渉
の度にプラブーツやズボンを脱いだり履いたりしていては暗くなってしまうので、どうせ大谷原まではすぐそこ
だ、とそのまま川に突っ込んでいった。
お陰で、なんとか暗くなる前に大谷原に着くことは出来たがそのかわり膝下がズブズブになってしまった。
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