荒川出会上流の氷瀑群、林道対岸の氷瀑(初登)

ARIアルパインクラブ/有持真人、藤原敦紀、大野敦子、横浜アルパインクラブ/遠井充子


<山行日> 1999年1月30日(土)〜31日(日) <記録> 有持真人



<メンバー>
 ARIアルパインクラブ/有持真人、藤原敦紀

※ リバーサイドフォール、シャワーフォールのみ、ARI/大野敦子、横浜アルパインクラブ/遠井充子が同行。

<日程>
 1999年1月30日(土)〜31日(日)

<場所>
 南アルプス/荒川出会上流の氷瀑群及び、林道対岸の氷瀑

<ルート名/グレード/スケール>

○ 酒乱の滝       VI− 40m/1P

○ 千枚田の滝      IV+ 50m/1P

○ オマケの滝      IV  50m/1P

○ リバーサイドフォール IV  20m/1P(右)
 (滝が3本並んでいる) IV+ 65m/2P(中央)
             IV+ 50m/1P(左)

○ シャワーフォール       35m/1P(林道対岸) 
             IV+(右)  
             V+ (中央)  
             VI−(左)

★ 写真集/ルート図  ★ 概念図
            
<記録>

1月30日(土)快晴

 先日<白龍ルンゼ>を初登した帰りに、奈良田近くに氷瀑を見つけたため、当初はこちらに行くは
ずであった。しかし、陽が当たるために氷結状態が悪くとても登る気にはならない。 

 しかたなく、未登の氷瀑を探索することになり広河原付近まで行ってみたが、めぼしい氷瀑はなか
ったため荒川出会まで戻り、今度は荒川の上流を探索することになった。

 3ルンゼを過ぎ林道を歩いていると、対岸に3本の氷瀑がかかっているのが見えた。一番手前は氷
結状態も良く(V)はありそうだ。ここが、翌日に登攀した<シャワーフォール>である。

 シャワーフォールのすぐ左側の氷瀑は、岩壁の途中からできており、下部はナメ滝で、上部にした
がって傾斜がきつくなっている。しかし、陽が当たるために上部からの落氷が多く、とても登る気に
はならない。翌日には上部が崩壊してしまった。

 その左に大きな堰堤があり、堰堤のすぐ手前に100m近い氷瀑がかかっているのが見える。

 ここは下部は傾斜の緩いナメ滝で、中間部が垂直、上部がカリフラワー状態でになっている。陽が
当たるし、上部の水量が多いために滝の落ち口までは繋がっていない。

 完全氷結すればおもしろそうだが、よほど冷え込んでつながらなければ上部まで抜けるのは難しい。
しかし、カリフラワーが登れれば、岩壁の途中の立木があるところまで滝の3分の2は登ることがで
きるだろう。だが、陽があたり出せば落氷がものすごい。

 林道の終点から堰堤上流にできている広い河原に降り立ち、さらに上流を目指して歩いていく。雪
原が綺麗だ。

 河原が狭くなった所を回り込むと、50mクラスの氷瀑が3本並んでいるのが見えた。これが<リ
バーサイドフォール>。

 右岸にある、鉄パイプで作られた作業道を更に進んでいくと、リバーサイドフォールの左側の樹林
の奥にチラリと氷瀑が見えた。<オマケの滝>

 更に少し上流に向かうと、右岸に氷柱がかかっている。<酒乱の滝>。

 <酒乱の滝>出会から垂直に近い鉄パイプのハシゴを登って少し行くと、対岸にまた氷瀑が見えた。
<千枚田の滝>。

 その上流も探索してみるが、もう氷瀑は見あたらなかった。まずは、氷柱から登攀する事にする。

<酒乱の滝> VI−/40m (有持、藤原)

 出会から80mほどは簡単なナメ滝になっている。今回は表面に雪が積もっていた。II〜III級程度
なのでザイルの必要はない。雪がなければ綺麗なナメになるだろう。

 垂壁の10mほど手前で準備をし、有持がリードで登攀開始。(III)を10mほど登り、垂壁の取
付へ。遠目にはそれほど傾斜がなさそうに見えたが、取付から見上げると完全に垂直で、90°が17
mほど続いている。

 氷質は堅くガラスの様な感じである。垂直部分を抜けると徐々に傾斜が落ちて最後は雪のかぶったナ
メ滝を登れば終了。30分で完登。

 ビレーは立木でできる。ザイルピッチで40m。グレードは(VI−)。

 下降は、立木から懸垂1回で取付へ降り立ち、下部のナメ滝はクライムダウンをした。立木での懸垂
下降も可能。

 この滝は、同行した酒好きの藤原からとって<酒乱の滝>と命名。

<千枚田の滝> IV+/50m (有持、藤原)

 まだ日没までには時間があるので、上流の<千枚田の滝>へと向かう。荒川を渡ると出会の手前に6
mほどのアイスボルダーができる氷瀑があり、少し遊んで行く。

 河原から少し登ると高さがバラバラの階段状の氷瀑が見えてくる。

 下部の左側は10mぐらいで(IV+)。右側は(III〜IV−)。

 上部は、高さ、グレードともバラバラの氷瀑が続いていた。この氷瀑は、幅が広いので、自分のレベ
ルに合わせてどこでも登れる。

 下部で少し遊んでから上部まで登る。今回はノーザイル登り、場所を選べば(II〜III)なので、下降
はクライムダウンをした。立木で懸垂下降も可能。中間部から段差がいっぱいあるので<千枚田の滝>
と命名。

 陽もくれてきたので林道横の氷瀑で練習していた、雨宮、大野、榎本、遠井と合流して、荒川出会の
テントまで戻る。夜は、大量の酒と肉3sのすき焼きで大宴会となった。

 廣川さんとお会いしたが八ヶ岳に移動するという事で、一緒に飲めなかったのが残念だった。

1月31日(日)快晴

<リバーサイドフォール> (有持、藤原、大野、遠井)

(右) IV  20m
(中間)IV+ 65m/2P
(左) IV+ 50m 
 
 この氷瀑は、水流のすぐ縁からかかっているナメ滝で、石つたいに徒渉してから取り付く事になる。

 中間の滝に藤原リードで登攀開始。下部は(III〜IV−)で、上部は幅が広くなっており正面の一番
傾斜のある所を登れば(IV+)その他は(III〜IV−)。

 途中でピッチを切れば、更に15mほどのナメ滝(III)を登る事もできるが、おもしろくはない。

 トップロープをセットして、大野、遠井が練習をする。

 右側は、ナメ滝。左側もナメ滝でライン取りによっては(IV+)になり、いずれも立木でトップロ
ープのセットは可能。下降は立木で懸垂下降1回で取付に戻れる。

 徒渉は、石の上に不安定に雪が着いている箇所もあるので、注意が必要である。藤原は片足、、遠井
は両足を膝まで沈してしまった。川のすぐそばにあるため、何も考えずに<リバーサイドフォール>と
命名。

<オマケの滝> IV/50m (有持、藤原)

 大野、遠井がトップロープで練習している間に左側にある氷瀑に向かう。

 対岸からは垂壁に見えたのだが、ルンゼをつめて行くと、段差のある氷が繋がっているだけでガッカ
リしてしまった(III〜IV)。ノーザイルで登り、下降は立木で懸垂下降をした。

 わざわざここだけを目指して登りに行く必要もないので<オマケの滝>と命名。

<シャワーフォール> IV+〜VI−/30m(有持、藤原、大野、遠井)

 最後に、林道の対岸にある氷瀑に行くことにした。堰堤の手前の傾斜の無い斜面を下り、荒川を渡る
とすぐに取付だ。下部はII〜IIIのナメ滝だが雪で埋まっていた。その上に立派な氷柱がかかっている。

 午後になってしまったため陽があたり、氷がだいぶ柔らかくなっている箇所もある。

 氷柱の左側は(VI−)、中間が(V+)、右が(IV+)となっている。藤原は今シーズンからア
イスを始めたばかりなので、練習として右側からリードしてもらう事にした。難なく登り、トップロー
プをセットし、後から合流した大野、遠井とともにアイスを楽しんだ。

 氷柱の左側は(VI−)だが、陽があたりシャワークライムになるし、氷の状態が悪く今回は登らな
かった。この氷瀑は、気温が高いとシャワークライムになるので<シャワーフォール>と命名。

 ここは、立木を使いトップロープを3本セットできるので、各グレードに1本ずつセットすれば十分
な練習ができる。<シャワーフォール>を登るなら、日の当たる前に朝一番で行った方が快適である。

 林道横の氷瀑で遊んでいた、雨宮、榎本と合流して下山。アイスづくしの楽しい週末が終わった。

<あとがき>

 いままでは、荒川出会にはマルチピッチのルートしかなく、トップロープをセットして十分に練習で
きる場所がなかった。

 今回の氷瀑群は、アイスの初心者から上級者まで十分に楽しめるエリアであり、アプローチも近くゲ
レンデとしては最適ではないかと思う。八ヶ岳の様に込み合う事も少ないので、思う存分アイスを堪能
できるだろう。

<仕様ギア>

 アイススクリュー   ×8
 ザイル(9mm×50m)×2

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