ARIアルパインクラブ/有持真人、清水国洋、登研/榎本文夫
< 記 録 > 有 持 真 人
<メンバー>
ARIアルパインクラブ/有持真人、清水国洋、登行研究会/榎本文夫
<日程>
1999年1月16日(土)
<場所>
南アルプス/野呂川支流(荒川出会と広河原の中間付近)
<ルート名>
白龍ルンゼ/大龍の滝・小龍の滝、日影ルンゼ(命名)
<グレード>
白龍ルンゼ/大龍の滝 F1/1p 30m IV
2p 35m V−
F2 40m V
(枝沢)小龍の滝 35m IV+〜V−
※ (V、V−)の箇所は、発達すれば(V+)にはなります。F2のバーチ カル部分がつながれば(VI)
ぐらいになる可能性があります。
日影ルンゼ/小滝が数個と最後に6m/(IV+〜V−)の滝
<所要時間>
白龍ルンゼ/出会〜F2終了点まで3〜4時間
★ 登攀写真一覧 ★ ルート図 ★ 概念図 (クリックすると表示されます)
<使用ギア>
・ アイススクリュー ×7本
・ ザイル(9mm×50m) ×2本
<アプローチ>
荒川出会から広河原に向かい、あるき沢橋をすぎると2つの連続したトンネルがあり、2つめのトンネルを出
てすぐに橋がかかっている。この橋の上流が<白龍ルンゼ>である。
大龍の滝、小龍の滝とも、橋からのアプローチは5分程度。
日影ルンゼは、大龍の滝/F2の終了点から左にトラバースすると、小ルンゼにでるので、その上流部にある。
<下降>
終了点から右にトラバースし、白龍ルンゼ左岸の急峻な尾根を下るか、一度、日影ルンゼにでて、沢沿いに下
り、行き詰まったら白龍ルンゼ左岸の尾根に出て尾根を下ると、林道に出る。時間は約30分程度。
<幕営>
出会には駐車スペースもあり、幕営も可能。水は本流からとれる。
<記録>
今回登攀した氷瀑は、年末年始山行で北岳バットレスに行った際に、偶然に発見したものである。
年末に入山した時には雪が全くなく、広河原から入山しようと広河原まで行った。しかし、30日から冬型気
圧配置が強まったため、広河原でも雪が降り出してきた。これでは、沢沿いをつめるのは無理なので、吊り尾根
の登山口まで引き返す事になった。
その帰り道で、今回の氷瀑を偶然に発見した。この時は、まだ発達が今一であったため、後日に改めて出直す
事にする。
年も明けると、大寒気団の接近により2週間近く冬型気圧配置が続き、冷え込む毎日が続いたため、そろそろ
大丈夫だろうと、1月の3連休で登りに行くことに決めた。
しかし、連休初日に低気圧の通過で南アルプスでも雪が降り、南アルプス林道でも10センチ程度の積雪にな
った。
1日遅らせて、連休2日目に登攀する事にし、野呂川へと向かう。
1月16日(土)快晴
出会(08:20)〜白龍ルンゼ/大龍の滝(08:25/08:30)〜終了点(11:40/11:45)〜日影ルンゼ(11:50/12:10)
〜出会(12:30)
アプローチも近いのでゆっくりと出発する。堰堤を越えてチョット行くと、<白龍ルンゼ/大龍の滝>の取付
に出る。
これだけのスケールがあれば、下から眺めるとなかなか迫力がある。見た目では2Pで終了点まで行けそうな
感じがする。
今回は、3人パーティということもあり、有持がオールトップで2人がフォローで登ることにした。
<白龍ルンゼ/大龍の滝>
・ F1(1P目)30m IV
F1の出だしは(IV級)程度で、快適に登っていく。しばらくするとバンドにでる。F2の取付までザイル
をのばそうと思ったが、見た目よりスケールが大きく、ザイルが足りない恐れがあるので、ここでピッチを切る
事にした。スクリュー2本でビレーポイントをセットし、2人を迎える。
・F1(2P目)35m V−
2P目の左側は垂直でV+はありそうだったが氷結状態が悪く、取り付く気にならなかったので、80〜85°
の右側から登る事にした。グレードはV−程度である。
今日は気温が高いせいもあり、このピッチは少し水っぽく、手袋がビショビショになってしまった。
2P目も、見た目よりスケールがあり、ザイルピッチ約35mで、F2の取付下部まで登った。ビレーポイン
トは倒木でとることができる。
・F2 40m V(別名/小便小僧の滝)
F2下部まで登って、思わず笑ってしまうものが目に入った。それは、F2のちょうど中間部から、氷瀑の中
を流れている水流が吹き出して、まるで<小便小僧>の様に放水していた。
この滝は<小便小僧の滝>にしようとメンバーで笑いあった。
見上げるとF2も結構大きく、傾斜も強い。左側のバーチカルは、まだ発達中といったところで、また登攀対
象にはならない。
完全に氷結すれば、(V+〜VI)にはなり、かなり楽しめる様になると思われる。
右側は氷結状態は良好で、1P目の様に水っぽいということもなかった。<小便小僧>の放水の下をくぐり抜
け、F2に取り付いた。
グレードは(V)程度で、氷も硬く快適に登っていく。上部に行くに従って傾斜が緩くなってくる。
最後は、右側の肩のあたりから越えて登攀が終了した。ビレーは太い倒木でとる事ができる。
今回は、F2の右側を登ったが、2月下旬〜3月上旬であれば、左側も完全氷結して、40mの垂直(V+〜
VI)の登攀が楽しめる様になるだろう。
<日影ルンゼ> 小滝が数個と最後に6m/IV+〜V−程度の滝
白龍ルンゼ終了後、下降しようと左岸側にトラバースしていくと、小ルンゼがあり、上部には氷瀑が見えてい
る。スケールは大きくないがチョット寄り道をしていく事にする。
簡単な小滝を数個越えると、最後に6m程度の氷瀑がある。グレードはIV+〜V−程度である。慣れた人で
あればザイルは必要ない。
下降は、滝を巻いて降りることができる。小滝はクライムダウンする。この小滝は積雪があると埋まってしま
うだろう。
その後、白龍ルンゼ左岸の尾根を出会いまで下降した。約30分。
<小龍の滝> 35m IV〜V−
チョット小休止してから、小龍の滝へと向かう。アイスが久しぶりの清水は、疲れたらしく、有持、榎本の2
人で登ることにした。
日影隧道の出口から、チョット登るとすぐに取付である。林道から眺めると(V)はありそうに見えたが、取
付までいってみると以外と傾斜がないし、表面を水が流れている。
とりあえず、有持がリードで取り付いた。1段あがって短い垂直になるが、(V−)程度が5mほどで、後は
傾斜が落ちて、(IV〜IV+)程度である。
左側から回り込めば、(V−)は登らずに(IV)だけで登ることもできる。上部には、氷瀑らしきものはな
かったので、ここで終了とする。
終了点は立木でビレーし、下降は、立木で懸垂下降/1Pで取付に戻れる。
トップロープも可能なので、<小龍の滝>で足慣らしをしてから、<大龍の滝>へ行けば良いだろう。
<まとめ>
この一連の氷瀑は、林道のすぐ横にあり、車で入山できればアプローチは5分という近さで、荒川出会周辺の
氷瀑では一番アプローチが短い所にある。
これだけのスケールがあるので、中級〜上級者には格好のゲレンデになると思う。
今年は、荒川出会周辺の氷結状態が悪い様だったが、それに比べるとかなり氷結状態も良く快適に登攀する事
ができた。
適期は、1月中旬〜3月中旬だが、2月下旬〜3月上旬にかけていった方が、更に発達するので、今回登攀で
きなかったラインも上ることができ、更に高グレードを楽しむことができるだろう。しかし、積雪が多くなると
アプローチが大変だが・・・。
ルート名は、白い龍が昇る様に見えたところから、<白龍ルンゼ>と命名し、本流のF1、F2をまとめて<
大龍の滝>、F2は<小便小僧の滝>、右岸の支流の滝を<小龍の滝>とした。
となりの小ルンゼは、日影隧道からとって<日影ルンゼ>と命名した。
私が調べたところ、この氷瀑群の記録は見あたらなかったので初登と思われる。
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