谷川岳/一ノ倉沢/衝立岩/新ルート開拓
September Rain

ARIアルパインクラブ/有持、原、青木、藤原


< 記 録 > 有 持 真 人


<山行日> 1998年7月26日(日)、9月20日(日)
<場  所> 谷川岳/一ノ倉沢/衝立岩 <ルート名> September Rain <グレード> 5級下/AA1+/5.10d/6P125m <所用時間> 7〜9時間(ダイレクトカンテに継続の場合は+2時間)  <開拓者>7月26日 1〜3P(ARI/有持、青木、藤原)      9月20日 3〜6P(ARI/有持、原)  ★ 記録写真 ★ ルート図 7月26日(日)有持、青木、藤原  車で夜中に一ノ倉沢に到着。04:00を出発予定にして仮眠をする。出会に着いたときには星が見えてい たのに、目が覚めると土砂降りの雨。  <こりゃ〜だめだ。>とふて寝を決め込んだ。天気予報では<こんな雨になるとは言っていなかったぞ。>  06:30頃には雨も上がり、衝立岩が見えてきた。ほとんどのパーティがあきらめているようだが、登れ るところまで行ってみる事にし、とりあえず出発する。いつものことだが開拓セットは重い。  ヒョングリの滝が出ているので、巻き道コースから雪渓に降り立った。しかしシュルントが開いているため、 逆層の変な場所からテールリッジを登る羽目になってしまう。  今回の開拓の予定ラインは、ミヤマの下部を2P登り、ダイレクトカンテの取り付きから、ミヤマ3P目の 左側のフェースをフリーで直上し、ダイレクトカンテ又は大ハング周辺をネイリングで登る予定である。  とりあえず、準備をして衝立スラブをミヤマルートの取り付きへと向かう。 1P IV+ 40m   出だしから岩を10mぐらい登ってからは、草付きが多く濡れていて以外と悪い。 2p IV 20m  ビレーポイントから直上して、草付き登りをするとダイレクトカンテ取り付きのすぐ右側に出た。ダイレク トカンテに何パーティか集中してきた時の混雑を考え、ここにペツルアンカー2本を打ちビレーポイントとし た。 3P 5.10d 20m     つぎのピッチは、真上に見えるフェースをフリーで登る予定だ。  ランニング用のアンカーをセットするために、ダイレクトカンテの1P目を登り、ミヤマの3P目の終了点 まで登る。  そこから更に左にトラバースして、予定ラインの真上にペツルアンカー2本をセットしてビレーポイントを 作成した。その後、取付まで懸垂下降する。  このラインは、ミヤマルート3P目の左側になる。かなり昔に打ち込まれたと思われる腐ったリングボルト ラダーがある。しかし、どうみても墜落に耐えられる代物ではない。腐ったものはペツルアンカーに打ち変え ることにした。ラインを決めて、ランニングのアンカーをセットしていく。  とにかく、このあたりの岩は固い。ドリリングには、新品のハンマードリル、バッテリー、キリを使用した が、バッテリー1個で穴を2箇所開けるのが精一杯であった。  取り付きからアンカーを4本セットして、5本目をドリリング途中でバッテリーがつきてしまい。今日はこ こで終了となってしまった。  ライン取りは、ビレーポイントから直上して左にトラバースし更に直上、そして少し右上気味に登ってビレ ーポイントまで。登攀距離は、約20m。45mザイルで丁度トップロープがセットできる。 4P 10m III  3P目終了点から右へトラバースし、ダイレクトカンテ又はミヤマのビレーポイントまで。 9月20日(日)有持、原 5P AA1+ 20m  とりあえず3P目のアンカーセットは後回しにして、5P目のネイリングから始める事にする。  ダイレクトカンテの2P目を3mほど登るとダイレクトカンテは右トラバースになるが、2本目のハーケ ンから左上にネイリングをしていく。  途中、浮いた岩が何カ所かあり、落としながら前進をする。ラープ、ナイフブレード、ロストアロー、ア ングル、エイリアン、キャメロットなど各種を使用する。ハーケンの効きは比較的良い。  小ハングをキャメロットで越えてしばらく登ると、ピトンも尽きてきたのでリングボルト2本とアングル 1本でビレーポイントを作成する。  このビレーポイントは、ダイレクトカンテの2P目を2/3程度登った左側になる。  フォールバックを荷揚げして、原がフォローで回収をする。ラープを回収中にワイヤーが切れてしまい、 結局回収不可能になってしまったのが悔やまれる。 6P AA1 15m  ビレーポイントから真上にあるリスが無くなるまでネイリングしていくとダイレクトカンテに途中から 合流する。ダイレクトカンテ2P目終了点のピナクルテラスまで登る。  ここから上部は、右側壁にあるクラックをネイリングする予定であったが、ここからクラックに行くた めには、ボルトを連打しなければならないため、エイドの前進用にボルトは打ちたく無かったので、ここ で終了とする事にした。  下降して3P目のアンカーのセットに取りかかる。  前回は、岩が硬くてアンカーのセットにはかなり時間がかかったが、その上部は更に岩が硬く、バッテ リーパック1個でもアンカー1本をセットすることができなかった。  とりあえずアンカー2本をセットしたが、ハンマードリルのモーターが焼け付きそうな感じがしたので、 核心部の上部にリングボルト1本を打った以外は、見た目が丈夫そうな残置ボルトをそのまま使う事にし た。  ライン取りは、ビレーポイントから直上しペツル1本、さらに登り残置ハーケン1本にランナーを取っ たところで左へトラバース。そして小凹角をレイバック気味に越え右上して行く。この辺りが核心である。 ピッチグレードは5.10dぐらいだろうか。  ルート名は、6月〜7月まで雨に降られてなかなか開拓に行くことができず、おまけに2回目の開拓ま でに雨のため、一ノ倉沢出会で3回も敗退する羽目になったので<September Rain>と命名した。  このルートは、衝立岩にしては岩が比較的硬く、快適なフリーとネイリングを楽しむことができ敗退も 簡単でなので、ネイリングをはじめたばかりのクライマーのトレーニングとして登ってほしい。  気軽に取り付く事ができるが、オーバータイムの様に残置ハーケンだらけにならないことを祈るのみで ある。 <下降>  5P目終了点(ピナクルテラス)から40mの懸垂下降で3P目の終了点まで、更に2Pの懸垂でルー ト取り付きの衝立スラブまで下降する事ができる。  衝立スラブの下降は以外と気を使うので、アンザイレンテラス経由で中央稜の基部まで戻った方が安全 である。  又は、終了点のピナクルテラスからそのままダイレクトカンテを2P登れば、北稜にでるので、北稜を 懸垂下降する事になる。 <使用ギア>  ラープ、ナイフブレード、ロストアロー、アングル、エイリアン、ストッパーキャメロット#2、リン グボルト、ペツルハンガー、ハンマードリル ※ ビレーポイント及び、3P目のフリーのピッチのランニング支点以外に、前進用のボルトは一切  使用していない。

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