錫杖岳/前衛フェース/新ルート開拓
銀河鉄道

山岡人志、近藤義夫、白井良岳


< 記 録 > 山 岡 人 志


<山行日> 1998年7月18日(土)〜20日(日)
 やまおか@はりま山岳会です。  錫杖岳前衛フェースでエイド主体のルート開拓をしましたので報告をいたします。少し長めですので、興 味のある方は時間のあるときにお読み下さい。 山域・山:錫杖岳前衛フェース北沢側フランケ ルート名:「銀河鉄道」 ルート :「注文の多い料理店」の左。 上部の大きなハング状の岩を目指して。      1ピッチ目は岐阜登高会ルート?と重なる。      ブッシュの登高を入れて、全6ピッチ(実質5ピッチ)。      全体で約135m。 グレード:ルートグレード4級+ 〜5級、    最難ピッチグレードA2+, IV級+ 所要時間:8時間〜10時間 開拓日 :1998年7月18日(土)〜19日(日) メンバー:山岡人志(リーダー、39歳)「はりま山岳会」(兵庫労山)      近藤義夫(41歳)岩と雪の会「こぶし」(兵庫労山)      白井良岳(26歳)「相模勤労者山岳会」(神奈川労山) 報告者 :山岡人志 記録者 :近藤義夫  お昼過ぎから開拓できそうなルートはないかとP2~P4までを偵察。錫杖岳の経験者は約10年前にV字を登 った近藤だけであった。近藤もほとんど忘れていたので、みんなでトポと岩と見比べながらP2基部からP4 基部まで移動。その後左方カンテの取り付きに戻り、「注文の多い料理店」のほうのすっきりしたフェー スに行く。  下からしばらく眺めていたら、「注文の多い料理店」上部の左に大きなハング状の岩(以下、大ハング と呼ぶ)があり、そこにクラックが何本か見え、その下部もクラックを見つけることができた。なんとか 下からつなぐことができそうなので、そこを登ることにした。  18日は15時半から18時半まで2ピッチ開拓。残り4ピッチは19日朝8時から15時過ぎまでかかって完登。こ れは9月から上記開拓メンバー3人で行く予定の中国での登山のトレーニング山行であった。  ほとんど初めての岩場、偵察なし、グランドアップ方式によるエイド主体のルートの開拓となった。以下、 各ピッチの概要。時間はリードした者が要した時間。長さはおおよその値。 <<1ピッチ目 (30m、III~IV級A1)、30分>>  取り付きは、「注文の多い料理店」の取り付きのさらに上部。ピトンがクラック沿いに連打してあるハン グから壁に向かって右に6~7mの行った付近から適当に。全体として、上部大ハングから見て、少し右下から 大ハングを目指して左上方向に行く。  1ピッチ目は岐阜登高会ルート?と重なる。但し、小ハング下から数mネイリングし、そのあと4級程度の フリーで数m 登った後潅木のところでビレー。リードは山岡。終了点は、ボルト1本と残置のピトン。 <<2ピッチ目 (15m、A1)、1時間30分>>  上の大きなハング状の岩までクラック沿いにまっすぐ。大ハング下のテラスで終了。リードは近藤。終了 点は、大ハングの取り付きにボルト2本。 <<3ピッチ目 (15m、A2+) 、2時間>>  ハングは5mくらいききの悪いナイフブレード連打でまっすぐ登り、そこから右にトラバースして大ハング 右の凹角にはいり、フェースをちょっと登った潅木の下でピッチを切る。リードは白井。終了点はボルト2本。 <<4ピッチ目 (20m、A1) 、40分>>  左上のフェースにまっすぐ縦に入ったクラックを登り小テラス。さらに少し出っ張った巨大な岩のすぐ左 をナイフブレード連打で上につなげて3ピッチ目とした(この大岩については、注意のところを参照)。リー ドは山岡。終了点は、ボルト2本。 <<5ピッチ目 (25m、IV級+)、40分>>  4級程度のフェースを登り上部のブッシュ帯で終了。我々は、疲れていたのとギアが重かったので最初のと ころを一部人工とした。最終ピッチもどこかのルートと合流しているようで、壁のなかに古いピトンが1本 だけあった。ルートはフェースの中どこにでもとれる。  我々は、4, 5ピッチをつなげて50mロープで登ったが、4ピッチ目終了点で切ったほうがロープの流れが良 い。5ピッチ目の終了点はブッシュ帯の潅木・立木を利用して。ここにはボルトによる終了点は特に作らなか った。 k<<6ピッチ目 (30m、II級)、10分>>  ブッシュ帯を20mほど上にのばし、さらに岩の基部沿いに5m右上すると、「左方カンテ」の最終ピッチの 取り付きに到着。終了点は左方カンテの最終ピッチの取り付きと同じ。 <下降>  「左方カンテ」または「注文の多い料理店」を懸垂で下るのが無難。我々は、終了点整備のため開拓した ルートを下降したが、「左方カンテ」最終ピッチ前の終了点から、壁に向かって少し左寄りに下降し、50mロ ープダブルでぎりぎり4ピッチ目の終了点に着いた。4ピッチ目の終了点からやはり50mロープダブルで1ピッ チ目の終了点に着く。尚、3ピッチ目のハング取り付きに懸垂下降で戻るのは不可能。 <注意>  3ピッチ目が核心だが、5mほどの直上部分がピトンのききがあまく注意が必要。ここの最初の部分で落ちる と下の岩にたたきつけられる可能性がある。ちなみにこのピッチをクリーニングをしていた山岡は、トラバ ース前のピトンが突然抜けてぶら下がり大きく壁から引きはがされ、ユマールで戻るはに。  4ピッチ目は巨大な浮き石があるので、要注意。右隣の「注文の多い料理店」を登って懸垂下降しているパ ーティから、向こうから見るといまにも落ちそうな少し出っ張った巨大な岩があるので、それに足を乗せない ようにとの要望があった。我々は一応荷重はかけなかったが、本当に浮いているかどうかは定かでない。4ピ ッチ目クラック上の小テラスから見て、フェースの右にある四角の巨大な石。その出っ張った石の下をボルト 連打の古いルートが走っているのでわかると思う。ルートは、その石のすぐ左を直上する。  残置ピトンはクリーニングしきれなかった、3ピッチ目ハングのところにピトン1個。他は、終了点用のボ ルトのみ。我々も一部の浮石は落としたが、ルート上、浮石はまだあるので、下のビレーヤーや「注文の多い 料理店」を登っているひとに石を落とさないように注意。 <ルート名「銀河鉄道」の由来>  18日の夜、岩小舎のテント場から「天の川」がきれいに見えたのと、となりのルートの名前「注文の多い 料理店」(宮沢賢治)にちなんで。 <使用ギア類>  フレンズ1セット(2番まで)  カメロット1セット(2番まで、ジュニアを含む)  エイリアン(小)2セット  アングルピトン数本  ナイフブレード5本程度  ロストアロー5本程度  バガブー5本程度  ナッツ小を数個  ※ ナイフブレードのようなうすめのピトンと小さめのカム類が有効。終了点用ボルト7本 (HILTI, M10)、   Boschハンマードリル、予備バッテリー1個。ロープは50mダブルだと懸垂下降時に楽。

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