奥利根/刃物ヶ崎山東壁/第2尾根

浦和浪漫山岳会/菅井、石川、岩下


< 記 録 > 岩 下 誠


<山行日>     1998年4月4日日(土)〜5日(日)

 先週末に奥利根の刃物ヶ崎山東壁に行って来ました。天気も最高、状態も最高、ルートも楽しく、良い山行が
できました。ハモンの情報を寄せていただいた方々に感謝いたします。ちょっと長いので、暇なときにでも読ん
で下さい。

 3日夜に菅井、石川両氏と水上駅で合流。水上駅には、同じ刃物ヶ崎山にはいる上野さん@ブナの会パーティ
ーもいたが、朝から入るとのことで、挨拶もそこそこに先にタクシーにて須田貝ダムのゲートまでいく。

4月4日

 4日 夜は幾分霧がでていたが、朝になったら雲一つない上天気。そそくさと準備をし、5時半頃出発。矢木
沢ダムまで延々車道であるが、3人とも鼻息荒く、気合いたっぷりなのか1時間半ほどで矢木沢ダムに着。いら
ぬ荷物をデポし、ダムサイトの梯子から尾根に取り付く。はじめは藪っぽいが、だんだん開けてきて景色も良い。

 トップを行く石川、岩下もガンガンとばし、3ピッチで家の串東峰着。木々の間から目指す刃物ヶ崎東壁が黒
々とした姿を現した。金子さん@三峰山岳会の情報の通り東峰〜西峰間は雪庇が張り出していたが、なだらかな
のでまたもやガンガンとばす。

 家の串西峰から刃物ヶ崎山間の最低コルのまで、東壁を眺めつつ稜線漫歩。雪もそこそこ締まり、ドッピーカ
ンの天気でとにかく気分がよい。西峰から少し下ったところは真っ平らで、360度大パノラマ状態の最高の天
場であったが、先に進む。

 当初の計画通り、最低コル手前からハモン沢にのびる尾根(1尾根)を下る。地図上では上部は急で、下れる
かどうか心配であったが、樹林帯であったので一気に下ることにする。約1ピッチほど下ったところで3mほど
の岩峰があり、そこの基部で幕とした。ここの地点はちょうどハモン沢の二俣(2尾根末端)の上部である。

 刃物ヶ崎東壁が一望のもとに見渡せ、明日のルートである2尾根、隣の3尾根、4尾根、5尾根もばっちり観
察することができた。「この位置から東壁を見た人は誰もいないのではないか?」と菅井さんが言っていたが、
とにかく贅沢な景色であった。でもやっぱり奥利根なのであって、壁にブッシュが多いのは否めない。積雪期の
尾根ならともかく無雪期の壁はちょっとしんどそうだ(スラブなら大丈夫かな?)。

 夕方2度ほど雪崩の音を聞く。そんなに大きくはなさそうだが、やはり精神衛生上良くない。でも2回しか雪
崩がないとは、異常なほど状態はいいみたいだ。

4月5日

 5日、気合いを入れて、菅井さん時間(3時起床5時出発)で出発。幕営具等は天場にデポしていった。まず
ハモン沢に向かって、ブナの木の生えた斜面を一気に200mほど下る。晴れていたので放射冷却によるクラス
トを期待していたのだが、朝から異様に暖かく雪は腐ったままだった。ハモン沢は雪渓で埋まっており、楽に2
尾根末端に取りつけた。

 30分ぐらい針葉樹と石楠花の樹林帯を登ると、雪稜部が始まる。下部はそれほど傾斜もきつくなくだいたい
30度あるかないかぐらいだろうか?。雪質も良く、もぐっても膝上程度。雪庇は右側に張り出しているが、特
に問題となることはなかった。この日も天気はドッピーカンで、奥利根の山々を見ながらの快適な登行は最高に
いい気分だ。石川と岩下がトップを交代しつつ快調に登る。

 中間部はナイフエッジで傾斜30から40度ほど、雪も結構腐ってきて少々歩きづらい。時折両側すっぱり切
れ落ちているところが出てきたり、傾斜が60度ほどの雪壁があり、なかなか楽しめる。1カ所8mほどの岩峰
があり、ザイルをつけて右側の雪壁を登る(約20m)。

 上部に進むにつれて傾斜は急&ナイフエッジの連続となり、緊張させられる。前日、天場から観察した結果、
核心は最上部であろうという話であったが、やはりその通りであった。石川トップで不安定にザラメ雪ののった
リッジを50mいっぱいザイルをのばし、ブッシュを束ねてビレイ。続いて岩下がユマールをつけて登ったが、
非常に恐ろしく、不格好であるがリッジに馬乗りになってジリジリ進む。

 つづいて岩下にトップを交代。傾斜の落ちたリッジを15mほどすすみ、最上部岩峰基部につく。ここでピッ
チを切ろうと思ったが、頼りないブッシュとぼろぼろの岩しかない。仕方なく岩峰の左側の凹画状のルートをと
り、ビレイ点を探すが頼りになるものはほとんどない。えーいままよと登って行くが、ホールドにする岩の10
個に9個はグラグラし、結局半分ブッシュを騙し騙しつかみながら岩峰上へ登った(ザイル45m)。3級マイ
ナー程度のピッチであったが、とにかくいやらしかった。このピッチで登攀終了。心配していた雪庇もなく、そ
のまま2尾根の頭であった。登攀時間4時間半。

 ここから広々とした斜面を100mほど登ると刃物ヶ崎山山頂であった。3人で固い握手を交わし、しばし山
頂からの景色を楽しんだ。上州武尊から至仏山、国境稜線、遠くに小さく八海山、巻機山、朝日岳。これだけ眺
めのいい山なのに訪れる人がほとんどないとは、なんだかもったいない。

 下降ルートは東南稜をとった。雪がグサついてなかなかいやらしかったが、慎重に下る。1尾根上部に登攀具
等をデポして天場まで戻り、テントなど幕営具を回収の後、下山開始。緊張感が切れたからなのか、異常に重く
感じるザックを背負いつつ須田貝ダムまで下山した。以前から気になっていた場所であったので、記録未見のル
ートに自分たちのトレースが引けたことが大変うれしい。「次は3尾根でも登ろうか?」との菅井さんの提案に、
うなずいてしまう岩下であった。

<東壁の状況>

1尾根:ただの藪尾根、登る気にはならない。2,3,4,5尾根のアプローチ。
2尾根:下部1/5は樹林、中間部は快適な雪稜、上部はナイフと雪壁、最上部岩峰あり。
3尾根:傾斜は2尾根より少しある。下部に少し樹林。中間部雪稜と岩稜(少しだけ?)。上部雪稜。
4尾根:下部1/3は樹林。中〜上部は雪稜。そんなに難しいようには見えない。
5尾根:ブッシュ多し。そんなに難しいようには見えない。

 壁は3尾根、4尾根間のルンゼ2本が過去に登られているが、雪がついていてわからなかった。
 壁の上部は垂壁状であったがブッシュが多そう(赤茶けて見えたので)。5尾根の側壁がすっきりとしたスラ
ブとなっていた。
 壁という視点から見れば、岩はボロイし、藪も多いので、篤志家向きか?しかし、雪の解けた後のルンゼはお
もしろそうだ。

<概念図>

   刃物ヶ崎------------
     / ∫∫∫∫
      /  2 3 4 5
     /-----------1
       /
  家の串西峰

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