京都左京労山/野村勝美、その他
< 記 録 > 野 村 勝 美
<山行日> 1998年2月28日(土)〜29日(日)
最近まともに天候に恵まれたことなく、すっかり日焼け止めなんてものは忘れてしまい、顔面(のみならず前腕
までも)大やけどです。
28−29で鹿島槍の荒沢ダイレクトルンゼに向かいました。アプローチの滝が出ている箇所があったり、また
何よりの大快晴で谷中の括れたところは側壁からの雪崩のタイミングを見ての通過でしたが本谷自体はすでにしっ
かりデブっていて落ち着いた状態になっていました。
肝心の大滝は、あまりに気温が高いため水でびしょ濡れ。かつ全体的に薄く、出だしは右の岩の部分を3Mほど
登ってから氷に移る。昨年の「経験」を活かし、1P目終了点はLAとボルトでしっかりしたBPを作る。岩が軟
らかいというのか、すぐに割れたり穴が中が広がったりで相当に苦労する。
2P目、濡れザクザクの部分を根気よく削ってピックの効く箇所を探す。スタートの5Mの垂直を越え、若干傾
斜が弱まった部分から氷柱の真下に到着。この脇に岩が露出しており、ここにプロを設置できれば昨年のような致
命的なことにはないだろうと思っていたポイントだ。
ルート自体はこの左の垂直の氷のカンテを越え、さらに左上して落ち口に続く多少傾斜が落ちる凹状を辿ること
になる(だろう)。ここでのプロ設置が困難を極めた。まず、冷水に漬かりきった手の感覚が全くない。揉んでいる
と血流が戻るにつれ痺れるように痛い。その間、上からは氷柱を伝って水が滝のように注ぎ、みるみる全身が濡れ
ていく。
手の痛みにうなりながら耐えているが、今度は全身に震えがきた。しかし、ここでプロを設置しないことには安
全が確保されない。岩はやはり脆く、ボルト穴は何度穿ってもまともにできない。そのうちにわずかなリスが走り、
それがKBをバッチリ受け入れた。
左の氷のカンテにスクリューを追加、1日目はそこまで。翌朝、ユマールで登り返し続きにかかる。水流は止ま
り、氷はましな状態だ。ただ、僅かにでも陽が当たり出すにつれ、上から細かい氷の結晶がパラパラ落下しだす。
夜中服を乾かしたり、また浅い眠りの中で夢うつつにそこから先のラインをイメージしたりしたのだが、、、垂
直のカンテを越え、落ち口の凹状を間近に見ると、そこはあまりに氷が薄く裏の岩が透けてみえる。それも、昨日
のあの腐った氷が、朝ゆえに結氷しているだけである。
あれが岩でなく草付であればまだ対処のしようもあろうが、これではどうしようもない。結局それで諦めがつい
た。KBとスクリュー&ビナ1を、またBPにはLAを残置して下降する。三度目の敗退!でも、氷の状態がよけ
れば何とかなりそうな手応えはあった。
この手のルートは、それがすべてと言うこともできようが。シャクなので、そこから天狗の鼻〜天狗尾根経由荒
沢の頭へ、さらに空身で北峰ピークをピストンして劔を仰ぎ、今度は東尾根から三の沢を下降した。ここは技術は
もちろん、それ以上に精神的に強くなければなかなか来れない場所だと思う(自分にとっては)。アプローチの状態
含め、年1回程度のチャンスだろうから、再度戻って来られるか?
ちょっと自信ないのが正直なところだが、今後も引き続きトライして行きたい。
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