大津/秋田、小倉、北川
< 記 録 > 秋 田 誠
<山行日> 1998年2月6日(金)〜11日(水)
2月6日(金)〜11日(水)に念願の南ア・仙丈岳岳沢〜甲斐駒黄蓮華谷左俣の予定で入山しました。
・・・が、生憎の悪天に捕まり、残念ながら岳沢F4手前で逃げ帰って来ました。
伊那北で乗ったタクシーの運転手によれば、1月15日以来大きな降雪はなかったとのことでしたが、入
山中に降雪に見舞われ下山に2日もかかってしまいました。休みに合わせ山に入る貧しいサラリーマンには、
仙丈岳は遠い頂きでした。また、来年をめざします。
2月7日(土)曇り
伊那北発(タクシー)7:40---丸山谷出合8:40〜8:50---三峰川T.S 15:50
丸山谷南沢を忠実に丸山乗越まで詰めた。谷には15日以降に入山した登山者のものと思われるトレール
が残っていた。丸山谷南沢には1カ所8m程の結氷の甘い氷瀑があり、左側から残置シュリンゲを利用して
乗越した。丸山乗越からの下降は、所どころ赤布があるものの、倒木を伝ったりするなど上部はヤブ漕ぎの
連続であった。
2月8日(日)小雪〜風雪
T.S発7:20---F3取付き10:30---F3落口左手の岩稜上T.S15:45
小雪が舞う中、踏み抜きに注意して岳沢をめざした。三峰川〜岳沢出合までの倒木帯には消耗させられた。
岳沢出合は広々しており、雪崩に対しても安全のようであった。出合いから1時間ほどは平凡な雪の谷歩き
が続く。正面に枝沢を見る頃、谷は右に緩やかに屈曲し傾斜も増してラッセルもややきつくなった。
F1は下半分が雪壁で、上部15mのみが氷瀑となっていた。それでも下まで落ちると結構な高さなので、
ロープを使用した。ダブル・アックスには快適な斜度であった。谷には所どころ側壁からデブリが出ていた。
谷の正面に30m程の下部がつながっていない大氷柱を眺めながら雪壁状のF2を通過し、さらに急な雪
の斜面を登ると、幅広のF3(50m)を迎えた。雪崩に注意して、滝の下の雪壁状を横断し、右手からト
ラバースぎみに登った。取り付きにはビレーの取れるブッシュがあり心強い。
F3のすぐ上には下部15mが直瀑となったF4が続いている。トップがF3を登りビレー点に到達した
直後、F4の上部からチリ雪崩が轟音とともに発生した。氷の上に次第に貯まった雪が自重に耐えきれず落
下したものらしかった。幸いF3落ち口には大きな岩があり、トップは本流から身を避けることが出来たの
で、墜落せずに済んだものだった。
もう少し取り付く時間が遅かったなら完全に直撃を受けたであろう。雪崩発生後しばらくは谷中が雪煙で
おおわれ、全く視界がきかない状態であった。次第に降雪が激しくなり、いつまた第2弾が来るかも知れず
危険を感じたので、とりあえず全員F3上に集まり、さらに右岸側に20mほど登った岳樺の木をめざした。
直径30cm近い岳樺が1本だけ狭い雪稜上に生えている比較的安全な場所であった。その後も大きなチ
リ雪崩は1時間半〜2時間毎に発生していた。これ以上行動出来ないので、周囲にビバーク地を捜したが、
雪崩に対して完全に安全な場所はなく、仕方なく先程の岳樺にビレーを取り、雪面を崩して小型テントを張
った。夜中も雪は舞い続け、数回の除雪を強いられた。また、テント上部の雪面が大きく崩れ、テントの半
分が埋没して一瞬緊張する場面もあった。
2月9日(月)小雪後晴れ
T.S 12:10---岳沢出合い17:45
昼まで雪が落ち着くのを待ち、F3を懸垂下降した。小指程のブッシュしかないので、仕方なく下降用に
ボルトを1本残置した。50mロープいっぱいで昨日の取り付き点まで下降した。幸い下降中に雪崩の発生
はなく全員F3下に降り立った時はさすがにほっとした。下りは腰までのラッセルで、この一晩に50cm
はつもったようだ。
2月10日(火)雪後晴れ
岳沢出合い7:10---岳沢乗越の稜線10:40---南沢1600m付近(T.S)
岳沢出合いから乗越下降点まではわずかな距離であったが、入山時のトレールは全く消え、倒木帯の通過
に1時間もかかってしまった。急な枝尾根を快調に飛ばして、岳沢乗越付近までは順調に辿り着いたものの、
視界不良で南沢への下降点がどうしても確認できず、稜線上をさんざんうろうろして、結局下降を始めたの
が17時頃になってしまった。入山時に下降地点に赤布を付けておかなかったことが大失敗だった。
2月11日(水)快晴
T.S 7:20---丸山谷北沢・南沢二俣11:45
3回の懸垂下降を交え南谷を下った。谷でのラッセルは腰までありなかなか行程がはかどらなかったが、
二俣で親切な地元のハンターに無線でタクシーを呼んでもらうことができて大いに助かった。
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