槍ヶ岳/硫黄尾根

京都山岳会/秋田、渡辺、窄山(さこやま)


< 記 録 >秋 田 誠


<山行日>     1997年4月27日(日)〜5月2日(金)

 当初、槍ヶ岳を越え常念岳まで縦走する計画でしたが、平均年齢52才のオッサンパーティーのため、働き
が悪く、千丈乗越から新穂高温泉へ下山しました。

4月27日(日)快晴

七倉 6:20 --- 湯俣 11:20

 前夜大阪発「急行ちくま」を利用、松本で「急行アルプス」に乗り継いで入山。久し振りの列車を利用し
ての入山だったが、車内は空いており非常に快適であった。当初、少なくとも秋田は、硫黄尾根下部まで登
り幕営するつもりであったが、他の2名に説得され、またあまりの天気の良さに(?)、湯俣で沈没という
ことになってしまった。

 11:30頃からビール、ウイスキーで入山祝いとなる。湯俣の河原には全く残雪はなかった。本日の入山パ
ーティーは、われわれ以外に硫黄尾尾根と北鎌尾根へ各1パーティーのみであった。

4月28日(月)曇りのち雨

湯俣発 5:15 --- 硫黄尾根取り付き5:40〜5:55--- 硫黄岳ジャンダルム6峰手前のコル(T.S)12:00

 水俣川の吊り橋までのトラバースは、残雪が全く無いため楽勝。硫黄尾根下部の木登り急登に一汗かくと、
1700メートル付近からようやく残雪を見た。しばらく樹林帯を登ると、尾根は痩せ硫黄岳ジャンダルムとな
った。P2下りで懸垂下降(10mと20mの2ピッチ)し、下りきったところからいったん千丈沢側の岩場をトラバー
スし、さらに湯俣川側のいやな脆い岩場をトラバース、雪田から不安定な岩のリッジをたどる。

 P2の下りでは、固定ロープが残置されていたが、強度は全くあてにならずちょっと引っ張るとすぐ切れて
しまった。6峰を眼前に見るコルで雨が降り出したので、本日の行動を中止し幕営した。3人用のテントを張
ると、尾根の幅一杯になってしまう程の狭いコルであったが、地面が露出しており暖かい夜を過ごす事が出
来た。水用の雪は、天上沢側にわずかに残っている雪渓から得ることが出来た。

4月29日(火)快晴

T.S発 6:40 --- 6峰 8:00〜8:15 ---小次郎沢のコル 8:50〜9:00 --- 硫黄岳 12:00〜12:15 
硫黄台地(T.S)13:00

 朝からアイゼン装着で出発。這い松のミックスした痩せた岩稜を下り、少し登りかえすと6峰のピークであ
った。6峰からは明瞭な踏み跡に沿って下るが、やがて踏み跡は這い松の中に吸収され、クラストした雪面の
下降となった。小次郎沢のコルは思いの外狭く、ここから硫黄岳へは不安定な雪のナイフリッジが延々と続
いていた。

 P6のピークからもそれと判る、赤茶けた脆いルンゼ状の岩場を45mロープを固定し登る。この上からは雪稜
となり、支稜を次々にトラバースして小広い硫黄岳の頂上に着いた。硫黄岳からは、うって変って平凡となっ
た雪稜を1時間程たどると、硫黄台地であった。この先は硫黄岳南峰まで幕営地は無く、また1パーティー先行
しているので、時間は早いが行動を打ち切り幕営する。硫黄台地は硫黄尾根で最も広々した所であり、視界の
悪い場合には注意を要する。

4月30日(水)雨

停滞

 動けない天気ではなかったが、ロートルかつ日数に余裕のあるわれわれは、お疲れ休みの停滞とした。

5月1日(木)快晴

T.S発 6:20 --- 雷鳥ルンゼ終了点 8:30--- 中山沢のコル(T.S) 16:20

 硫黄台地から雪稜を下ると、ルートは自然に雪のついた急峻なルンゼに導かれた。ルンゼを下り、湯
俣川側からトラバースして岩稜に戻ると、3mほどベルグラの張り付いた悪い岩場となった。さらに千丈
沢側の雪渓を巻いてリッジに戻ると、雷鳥ルンゼの懸垂下降点であった。脆いルンゼを落石に注意しな
がら20m懸垂下降すると、ようやく一息いれることの出来る這い松の生えた小さなコルとなった。

 このコルからしばらく脆い岩稜を下ると、ルートはガレを大きく下り、いよいよ核心部である赤岳ジ
ャンダルム群に入った。P3までは主に湯俣川側の雪渓をトラバースし、P4では悪い登りで1ケ所ロープ
を20m使用した。P4の下りでは、20mの懸垂下降を3回繰り返した。P6〜P8は脆い岩稜と雪のルンゼのミ
ックスで重荷のせいもあり非常に神経を遣った。

 P7の下降で20mの懸垂下降。P8では、45mの懸垂下降をして中山沢のコルにたどり着いた。

5月2日(金)快晴〜曇り

T.S発 6:20 --- 白樺台地10:25〜10:35--- 千丈乗越 14:25〜14:35 --- 槍平小屋15:50〜16:15
--- 穂高平小屋 19:30

 赤岳の登りでは、時折吹き渡る強風のため、しばしば身体のバランスを失いがちになった。白樺台地
で一息入れ、ようやくたどり着いた硫黄乗越は風が強く、これより先ヤッケを着用して歩いた。西鎌尾
根は所々夏道が露出していたが、概して雪道であり、疲れた重荷の身には、慎重な行動を要する部分も
あった。

 千丈乗越からは、飛騨沢を一気に下降した。飛騨沢はデブリもなく快適に下降出来た。槍平〜白出沢
間は各所で大きなデブリが出ており、赤旗などの標識が少ないので、夜間の下降時にはルートの選定に
注意が必要である。

 少なくとも林道の始まる白出沢出合まで明るいうちに下った方が良い。槍平小屋は無人で、下山のビ
ールを期待したわれわれの夢はくじかれた。

 硫黄尾根では脆い岩をうまく利用して、すばやく登るトリッキーな技術が要求される。また、食料・
装備の軽量化は必須であるが、ずぼらなわれわれは、一切軽量化を図らなかったので、重荷に大いに苦
労した。懸垂下降点には必ず支点があるが、スリングは古いものが多く、必ずチェックしなければなら
ない。

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