＜山　行　記　録＞

G登攀クラブの御山です。

　７月２１日〜２２日に、スイスアルプスのリンプフィッシュホルンに登ってきまし
た。今年のように山の状態が悪いときでも登ることができ、あまりハードな山ではな
いので、マッターホルンなどに行かれる前のトレーニングとして登られても良いと思
います。
　なお、リヒャルト・ゲーデケ著「アルプス4000m峰登山ガイド」ではヒュッテ
（Mountain hut Fluhalp)の連絡先が027-967-2551となっていますが、正しくは
027-967-2597です（最近出た改訂版でも直っていません）。
　ちょっと長くなりますが、山行報告いたします。

期日：２００４年８月２１日〜２２日
メンバー：御山洋一

７月２１日　晴れ
昨日アルパインセンターに行って聞いてみると、ツィナール・ロートホルンもタッ
シュホルンもダン・ブランシュも雪が多くて危険だという。残されたのは、リンプ
フィッシュホルン、リスカム、モンテローザくらいとのこと。いろいろ考えた結果、
リンプフィッシュホルンに登ることにした。
昨日の天気予報が大きくはずれ、良い天気となった。今日は山ヒュッテまでなので昼
頃出発した。ただ、明日の下見をしておきたいのでスネガーまではケーブルカーを利
用した。そこから徒歩でフルーアルプのヒュッテまでトレッキング。マッターホルン
は山頂を雲で隠してよく見えない。ヒュッテに着いてから明日のルートの確認のため
岩の迷路のようなところまで行く。所々、赤や白のマークが岩につけられているが、
ヘッドランプの明かりでも解るようにケルンを何カ所か積んでおいた。
　ヒュッテに戻り、明日の支度をする。部屋は２０人くらいのドミトリーで、ベッド
用の分厚いマットレスをベッドとして使用していた。一泊２食付きで６７フランと、
山岳会経営の小屋より少し高いが、シャワーなどの設備が完備していて、また食事が
おいしいので値段相応かなといった感じである。

７月２２日　曇りのち晴れ
　３：００起床。軽く朝食を済ませ、３：５０に出発。月が出ていないので辺りは
真っ暗。例の岩の迷路では、ケルンを頼りに歩く。何度か迷ったが、５時頃プフル
ヴェに到着。トレースもケルンもそのままP3314の岩峰に向かっている。ガイドブッ
クでは北にトラバースするはずだが、ルートが変わったのだろうか。ヘッドランプの
明かりが見えるので、とりあえず行ってみることにする。岩峰のピークにかなり近づ
いたところで１人が下ってくる。体調不良で登るのを断念したという。この先かなり
急な下り（後で解ったが断崖）があるのでトラバースした方がいいと言われる。仕方
ないのでトラバースルートを探しながら下る。もう６：００を回っている。
　下の方を見ると後続のフランス人２人が歩いているのが見える。彼らのいるところ
まで下り、６：３０にやっと氷河の端に到着する。そこでアイゼンを着け、P3314の
北側を水平にトラバースする。レングフルーヨッホを過ぎると、氷河に磨かれたなだ
らかな岩の台地となる。アイゼンを軋ませながらそこを通り過ぎると再び雪の尾根を
登る。前方から２人下ってくる。稲妻が見えたので下ると言う。見れば北の方の空は
真っ黒な雲で覆われている。しかし雲の動きを見ると、南のマッターホルンから流れ
て来ている。しかもマッターホルンは雲間の光を浴びて輝いている。たぶん大丈夫だ
ろうということで、さらに先に進む。
　雪がほとんど着いていない岩稜に８時頃到着。そこでアイゼンをはずす。踏み後が
不明瞭で何度か迷う。浮き石だらけの岩場を乗越して、９時過ぎにリンプフィッシュ
ザッテルに到着する。山頂から下ってきたパーティーが下山の準備をしている。
ヒュッテを先に出発した３人が山頂付近に見える。僕も準備をして雪の詰まったルン
ゼを登る。傾斜は４０度くらいで、あまり急ではない。途中ガイド付きパーティーと
すれ違う。ルンゼは上まで登ってしまわず、残置シュリンゲの見える辺りで左にトラ
バースする。その後ベラグラや薄い雪のかぶった岩場を登る。硬い氷の詰まったルン
ゼを登ると大きな岩で行く手を遮られる。この岩の右側のスラブを斜上するが、遙か
下に氷河が見えていて高度感満点だ。その先の岩のナイフエッジを通過すると十字架
のある頂上に１０：５０到着。畳１畳ほどの狭い頂上で写真を撮る。風が強い。寒い
ので１１：００下山開始する。先ほどのスラブはクライムダウンせず懸垂で下る。ベ
ラグラや雪の付いた岩場も懸垂。雪のルンゼをクライムダウンし、リンプフィッシュ
ザッテルに戻る。後から誰も登ってこないところを見ると、今日は僕を含めて４〜５
パーティーしか登頂していないようだ。
　広い雪原を下るが、気温が上がって雪が腐り、とても歩きにくい。アイゼンをはず
すと雪の下にある氷で滑りそうになる。P3314の下をトラバースしプフルヴェまで戻
ると、今朝よく見えなかったトレースが明瞭に続いている。ヒュッテには１３：４０
到着。荷物を整理して、ゆっくり景色を楽しみながらツェルマットに下った。