日程 |
2004年12月30日(木)〜2005年1月3日(月) |
メンバー |
(遠峰山岳会)稲葉、藤井、中館、桜井 |
記録 |
(遠峰山岳会)稲葉 |
写真 |
なし |
ルート図 |
なし |
<山 行 記 録>
遠峰山岳会の稲葉です。
正月に南アに入った我々は元旦から天気に恵まれました。
★一昨年敗退した南山稜に登ってきました。
今回もル−トが良く分からず本当に南山稜だったのか分かりません。
記録ではもっと簡単と思って取り付いたのですが。
しかし他パ−ティ−は全くいなくて静かな登攀でした。
長文で失礼します。
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<日程> 2004年12月30日〜2005年1月3日
<場所> 南アルプス/甲斐駒ヶ岳・摩利支天南山稜
<メンバー> 遠峰山岳会/稲葉、藤井、中館、桜井 計4名
<行動>
29日;氏家⇒戸台駐車場
30日;戸台駐車場(8:00)〜丹渓山荘(10:00)〜北沢長衛小屋(14:00).
31日;C.S(7:30)〜仙水峠(8:40)〜ロックガ−デン〜岩小屋〜2300m地点
(18:00).
元旦;B.P(7:00)〜要(11:00)…5P目FIX(16:30)
2日;B.P(8:00)〜6P目(11:45)…登攀終了(15:00)〜摩利支天頂上(16
:00)〜北沢町営小屋(19:00)
3日;C.S(9:00)〜戸台駐車場(14:00)⇒さくらの湯⇒各自帰宅
<記録>稲葉記
12月29日
前日からの雪で氏家はすっかり雪国に変わっていた。交通情報では中央道は流れて
いるらしい。
大晦日にも南岸低気圧が通るとの予報が気がかりだ。町体で桜井さんと待ち合わせ
20:00に出発。
首都高はガラガラで難なく通過。岡谷J.Cを過ぎると雪が多くなりだす。伊那北I.Cか
ら通い慣れた道を通り戸台に向かう。
駐車場には20cmくらいの新雪が積もっていたが、その前は全く雪が無かったらし
くすぐ土がでる。
藤井カーの姿が見えなかったが多分たどり着けるだろうとシュラフに潜る。
12月30日 快晴 −5℃
7:00に起きる。実は6:00に起きたのだが、あまりの寒さに出発を遅らそうと考えが
よぎって計画的寝坊。
最近このパターンが多くなって来た。藤井はテントで寝ていた。昨夜より車が増え
次々とパーティーが出発して行く。
冷たい朝食を済ませゆっくり出発しながら今日は北沢峠かなと、またもや軟弱な考え
が浮かぶ。今日はただ黙々と歩けばいいが
明日からは藪の急登を攀じらないと…。南山稜へは酒無しとストイック山行に徹する
為、計画では仙水峠に不要なアイス道具
食料をデポ予定だった。しかし有難いことに北沢町営小屋の御主人がタダで預かって
くれるとのこと。とてもうれしかったので
やっぱり今日のテン場は北沢峠に決める。早速、持寄り鍋で宴会開始。明日は大荒れ
の予報だか静かな夜だった。
12月31日 小雪後暴風雪
4:00起床。出発するころになって小雪が降り始める。小屋に荷物を預け御主人に順
調なら元旦には降りてくることを話し出発する。
仙水小屋から風が出始める。想像よりずっと雪が無く29日はそれほど降らなかったら
しい。小休止の後、水晶沢に下る。
さらに下降し摩利支天沢を過ぎて小さなガレ場の有るところから南山稜に取付く。こ
れは正解でブッシュが無く快適に高度を稼げる。
前回は忠実に尾根の末端から登ったがブッシュが凄く大変だった。途中、石楠花の藪
が現れたが、それほど苦労せず尾根が
右に曲がり視界が広がる。ここからが岩も多くなりルート取りのセンスが試されるセ
クションだ。裏覚えで私が先頭で登るが
何も目印が無いので記憶が頼りだ。基本的に頭上を岩に押さえられたら左側を巻くこ
とが多い。視界は良いのでロックガーデンが
だんだん近くなるのがわかる。樹木が無くなると強風に変わっていることに気がつき
遥か上の中央壁あたりは雪炎が荒れ狂っている。
ヤバイかもしれん…。岩小屋直下で初めてザイルを出す頃には目が開けられない程の
風になっていた。何とか岩小屋へ非難したものの
風は岩小屋内を猛烈に通り抜ける。テントのフライを4人で被るが飛ばされまいと必
死に押さえる。テルモスを飲んで心を落ち着かせる。
このまま一晩ここで耐えても翌日登る気力が無くなると判断し風の弱くなる所まで降
りることにした。ヘッドランプでの下降は登りより道を
迷わせ目印を付けずに来た事を悔やむ。2300mあたりでどうにか岩の間に4人寝れそ
うなスペースを見つけ今夜のテン場とした。
ポールは立てられないので天井を吊ったりと知恵を絞りマキシマムを張る。皆クタク
タで敗退の2文字が再び頭を過る。
思えばこのビバークが一番つらかった気がする。桜井さんの革靴が連日の酷使で爪先
が凍ってしまった。
テントシュ−ズも無いのでかなり辛そうだ。そんな中、藤井の「絶対登りましょう」
という言葉が唯一明日に繋ぎ止めていた。
1月1日 晴れ時々風雪
昨日の天気予報では西高東低の気圧配置を想定していたが、やはり見事な冬型で
木々は霧氷を付け摩利支天の頂上付近は
時折青空が現れる。風もそれほど強くなくピタッと止まるとポカポカ暖かいほどだ。
俄然ファイトが沸いてくる。皆も元気を取り戻し
再び登り返しだ。岩小屋手前のピッチを越えてテン場予定地を見る。ここから摩利支
天沢上部の要と呼ばれるルンゼに合流し
急な雪壁をラッセルするといよいよ南山稜末端の取付きにぶち当たる。正面はスラブ
状岩壁が立ちはだかり、右は前回敗退した。
今回は再度、左の小ルンゼから入り左上気味に上がってル−トを探す予定。ここから
藤井、稲葉リ−ドでピッチをのばす。
登攀開始は11:00を過ぎており今日中に抜けれるか微妙だ。
●1P ルンゼ〜ブッシュ V
前回より雪が締まっておらず出だしから藤井が苦労している。隠れた草付きを狙っ
てダブルアックス登攀で越える。
半分から上は左上気味にミックス壁となりブッシュを掴みながら岩に立ちこむ。途中
の太い潅木でビレイ。
すぐ右にトラバ−ス出来そうなバンドがあるがブッシュが貧弱なのでもう一つ上に見
えるバンドまで行くことにする。
●2P ブッシュ〜バンド V+
1P目同様左上するピッチ。ブッシュを繋げながら弱点をひろって行く。バンド手
前で残置ハ−ケンを見つける。
ここからの一歩が越えられず、散々悩んだ挙句、少し下りてスラブを左に水平トラバ
−スして回り込んでからバンド(長衛バンド?)に
上がった。しょっぱなから緊張したピッチだった。アイゼンの前爪を信じる。バンド
は広く太い潅木でビレイできる。
頭上からは綺麗な凹角がずっと続いている様子で夏なら快適そう。このピッチはトラ
バ−スしたのでFIXロ−プが振られユマ−ルする
後続が時間がかかった。しかし時折太陽が出てポカポカ陽気になると嬉しい。
●3P バンド V
しっかりしたブッシュがバンドに点在していて、それを踏み越えたり、ぶら下がっ
たりしながらトラバ−スしていく。
途中2個所ほど嫌らしい部分があった。崩壊したところを超えて潅木でビレイ。
●4P バンド U
続けてトラバ−スをする。見下ろすと位置的に要の真上にいることが分かる。思い
出してみると前回、右から回りこんで上部を見たら
ここら辺が見えていたような…。後続もトラバ−スに手間取って時間的にテン場を探
さないとヤバイ状況だった。なんとか直上できるところを
探すがどれも難しい。ザイル半分ほどで太い潅木を伝って左上気味に上がれそうな部
分があった。右手にもオ−バ−ハング下に平らな所が見つかった。
藤井にビレイ解除を告げてザイルを手繰ってからフリ−直上を試すが傾斜が強く踏ん
切りがつかない。幸い残置ハ−ケンが見つかり
ル−トである核心が持てた。ここは藤井を待ってビバ−クか登るか判断しよう。私も
かなり疲れていた為、心を落ち着かせる。
●5P ブッシュ〜凹状 W+
4人が揃ったのでダブルアックスでこの核心だけ越えて貰おうと藤井にリ−ドして
貰う。ほんの2mくらいだが草付きが細く厳しい。
「ゲロ吐きそうでした。」登り終えた藤井が話した感想。このピッチは下から見てい
て興奮した。上部の様子を聞くと
あまり芳しい回答が来ないので。今日はココまでとしビバ−クの覚悟をきめる。藤井
にFIX工作を頼んでから急いでテン場作り。
壁にハ−ケンを打ったり潅木から支点を取ったり、トイレ等で落ちない様にロ−プを
張り巡らせる。マキシマムもポ−ルが一本
入ったので昨日より快適な空間が出来た。「ビバ−クを如何に快適に出来るか」が疲
労回復のカギだと思った。
その夜は皆疲れているのに以外に明るく笑いも起こる一夜だった。桜井さんの足が
凍傷にならないか気にかかる。
1月2日 快晴 −15℃
3:00頃から猛烈な寒気で目が覚めてしまった。しかし、風も無くなり日が出てし
まえばこっちのものだ。
2ビバ−ク目ともなり疲れで出発時間が遅れる。しかし、ポカポカ陽気での登攀は気
が楽だ。太陽様、様である。
昨日の藤井の苦労したピッチはプル−ジック登攀で越える。手足もいい加減疲れてい
て温存しないと。しかし重荷には厳しいピッチだ。
上部は再びバンド状で太い潅木のビレイで藤井と交代。上を見ると頂上が近く感じ
る。最終ピッチになることを祈りリ−ドに向かう。
●6P バンド〜ブッシュ〜凹角 W・A0
直上は無理そうなので左に5m程トラバ−スしてから草付きを繋げて直上を試み
る。中間より上は左上気味に岩っぽい。
ブッシュにバイルを打ち込みながら登るがシングルアックスでは厳しく、一旦セルフ
を取って藤井にバイルとガチャを貰う。
中間部手前ブッシュの立ちこみで右手の枝が折れスリップ。凄いビビッた。リスを見
つけハ−ケンを打ちA0で強引に越える。
レッジで休憩し上部を見上げるが以外に傾斜が強い。右上は絶望的なので左のカンテ
終了点が抜け口と判断し左上する。
ホ−ルドはデカイので思い切って行けた。ブッシュより信頼できるので嬉しい。古い
リングハ−ケン横の残置でプロテクションをとる。
ここから上は草付き混じりでランナウトした。トラバ−スの一歩がとても怖く、かな
り逡巡したが祈る気持ちでダブルアックスを決める。
最後の出口手前でクロモリを打ってホッと胸を撫で下ろす。両手を伸ばし岩角を掴ん
で伸び上がると白いザレた稜線に出た。
久しぶり全力を出せたピッチだった。この瞬間の為に登っているんだ。好天時に取り
付けて幸いだった。
1.5時間もリ−ドに時間がかかり下の3人は待ちくたびれた様子。ザイルをFI
Xして後続を待つ。
ザイルをしまいT〜U級の登りを1時間頑張ると待ち焦がれた摩利支天峰頂上に着い
た。西日が美しく絶景を堪能する。
夏道はトレ−スがバッチリついていて安心した。トラバ−スをかけて夏道に合流し駒
津峰で日が暮れた。
北沢町営小屋に到着し4人でガッチリ握手。小屋に預けた美味しいものを回収し宴会
開始。今夜のテントは広く素晴らしい。
1月3日 快晴
ノンビリ下山となる。結局アイスは出来なかったが充実した山行だった。八方尾根
の小沢さん達は大雪で敗退したらしい。
高遠にてさくらの湯に入りソ−スカツ丼を頬張る。大盛りでも値段変わらずで美味し
かった。
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