日程 |
2003年5月3日(土)〜5日(月) |
メンバー |
(東京岳人倶楽部)平澤俊章、川上佳恵 |
記録 |
(東京岳人倶楽部)平澤俊章 |
写真 |
なし |
ルート図 |
なし |
<山 行 記 録>
東京岳人倶楽部の平澤です。
連休で丸山東壁左岩稜に行ってきました。長文ですが、報告させていただきます。
荷物を背負ったアルパインスタイルで北峰経由、内蔵助平へ下山することを計画し
ての山行でしたが、重荷のためかなりの時間がかかってしまいました。
また、最後の1Pでルートが判然とせず、時間切れもあって、同ルートを下降する
ことになりました。最後の部分の情報をお持ちの方は教えていただけたら幸いです。
上部は、「日本の岩場」と「日本のクラシックルート」ではライン取りが異なって
おり、我々は「クラシックルート」のトポに従っています。岩場は全く乾いた状態
で、全てラバーソールで登れました。
我々以外には岩場に人の気配はなく、夕方一ルンゼから落ちてきたブロック雪崩の
ものすごい轟音以外は、静かな岩場でした。
丸山東壁左岩稜
2003/5/3〜5 平澤俊章、川上佳恵(東京岳人倶楽部)
5/3
取り付き11:00 大バンドまで17:00
8:30のトロリーでダムへ。内蔵助出会いの鉄塔付近に不用品をデポし、左岩稜
取り付きへ上がる。
以下、奇数ピッチのリードは平澤。
1P 中央壁寄りの雪面から傾斜の緩いブッシュ帯に上がり、ラバーソールにはきか
え、取りつく。容易なブッシュから左上してテラスへ。ルート図の1、2P目途中ま
でを繋げて40Mほど登る。
2P 右上してからカンテの快適な人工を直上。ピンは上まで続いているのだが、途
中で左に簡単なフリーでトラバースして、テラスへ。ルート図の3P目。
3P 木登りをしてからスラブの人工に移り、それから草付きを直上。
4P 脆そうな小さなハングを左のブッシュ帯から越えて見はらしの良い広いテラス
へ出る。ここにはビバーク跡のロープが張ってあり、「広場」よりも快適そうだっ
た。
5P 傾斜の緩くなったブッシュ混じりの岩稜を容易に上がれる。「広場」まで。
6P やや傾斜の立ったスラブになるが、スラブの所々に生える灌木をホールドにフ
リーで、二人立てるテラスまで。
7P スラブの人工。
8P 右から被さってくるような凹角を左上し、大バンドへ。ここは立派な岩小屋が
ある。
ここまではルートに全く迷うことなく登ることができるが、このバンドからさまざ
まな派生ルートがあるようである。このバンドを左に5Mほどまわりこんだ所にある
凹角にもピンがあり、一度そこを試みる。凹角を抜けるハングした草つきがきつく、
さらにその上の草つきが剥げてしまい、ザックを背負ったまま頭から落ちてしまい、
そこは諦める。冬なら凍った草つきにアックスが効くところだろう。岩小屋のすぐ右
にあるハングした凹角にもピンがあったので、そこが「クラシックルート」に示され
たルートと判断し、今日はここまでとする。岩小屋にはわずかな水のしたたりがあ
り、二人で2Lしかあげていない我々には救いの水だった。岩小屋の中にはツェルト
を張り、快適なビバーク。
5/4
大バンド7:00 岩小屋から下降開始16:00 取り付き点18:30
9P 岩小屋入口すぐ手前の凹角を人工で上がる。出だしの1ポイントはかぶってお
り、重荷にはきつい。すぐ上に大きなテラスがあり、10Mほどで一端ピッチを切
る。
10P 左から被さるような脆い凹角を直上、出だしにA1、あとはフリー。チム
ニー状の所もそのまま上がって右上のテラスへ。昨日試みた大バンド左の凹角からも
草つき斜面を右上してくればここで合流できるようである。
11P スラブの人工。太さ3センチほどの今にも折れそうな涸れた枝にテープを巻
いただけの支点もあり、それはさすがに使うのをためらわれ、1ポイント飛ばして左
のハーケンまで思い切り体を伸ばす。また、その上のアングルも半分ほどしか入って
おらず、体重をかけるとしなる。この2ポイントは要注意であった。さらに草つきの
凹角を直上し、バンド状のテラスへ。
テラスからさらに左上にチムニーが見えるが、これが「日本の岩場」の最終ピッチ
のV+のチムニーではないかと思われるが、深い灌木に覆われており、湿った感じで
とてもとりつく気がしない。
12P バンドを10Mほど歩いて右トラバース、バンド右端の樹まで。
13P 3Mほど木登りをしてから1ポイント人工でスラブ壁に移る。さらに灌木帯
を直上。
14P 斜上する草つきバンドを容易に左上。
15P チムニー右の壁を人工で右上する。最後は垂れ下がった15センチほどの太
さの枝で二ポイントの人工。更に垂直の木登りで左上のテラスへ。重荷にはこたえる
ピッチである。
ここのテラスから、右に2ピッチトラバースして中央壁緑ルートの終了点まで出ら
れるとルート図にはあるが、灌木帯でバンドは判然としない。灌木越しにのぞいてい
ると、向うの方の露岩の下にトラバースバンドらしいものがありそうな気もする。
16P ここから右上の深い灌木帯に入って直上していくが、ルートは全く判然とし
ない。リードしていた川上も「わからない」と叫んでいる。右側の凹角のブッシュ沿
いに上がっていくと、50Mほどで岩小屋前に飛び出す。岩小屋には生ビールの空き
樽が残っていた。
17P 岩小屋の前のバンドを左に歩いてトラバースし、上がれそうなところを探す
が、露岩帯が続いており、人が登ったような痕跡もない。そのまま20Mほど左に行
くと、東壁ルンゼ上部のガラガラの岩場に飛び出した。涸れた樹でビレー。
ここから上、一歩踏み出せば落石という不安定な岩場を右上すれば、再び灌木帯に
戻ってルート終了という所だろう。しかし、数歩歩いただけでいくつも岩が落ちてし
まう。あまりに不安定な岩に川上が「怖い」という。すでに時間も16:00近い。
上に抜ける時間も相当かかるだろうことを考え、ここから同ルート下降とする。東壁
ルンゼから16P目終了点の岩小屋前まで確保しながらクライムダウン。ともかく今
日中に水の取れるところまで戻らなければならない。
下降(左右は上に向かっての表記)
1P 岩小屋前の木にテープをセットし、深い灌木帯を40Mほどやや右下のブッ
シュの凹角沿いに下降。ブッシュでまわりの状況がわかりにくいが、さっき見た右側
のトラバースバンドらしい状況から、およそこのあたりという足場の良さそうなとこ
ろで一端ピッチを切る。ここから左下に15P目の終了点があるはずだと、確保して
もらいながらクライムダウン。10Mほどで15P目の終了点に出た。ここは全く見
通しが効かずにわかりずらい。
2P ここからは見晴らしがきくので、ルート沿いに安心して下れる。15Pと14
Pとをあわせて40M、斜め右下へ下降。
3P 真下に40Mで12P目のバンド右端まで。バンドを確保しながら左にトラ
バースして、11P目終了点へ。
4P 草つきからスラブへ、やや右下へ40M。10P終了点へ。
5P 真下に45Mで大バンドへ。
6P 岩小屋入口の下降点からやや右下に45M。途中、スラブの真ん中にかろうじ
て一人立てるボルト二本の下降点もあるが足場も悪く、スリングも古い。さらにその
下に二人立てるボルト三本の下降点(6P終了点)があるので、そこまで下りられ
る。
7P やや右下へ、「広場」を通り越し、岩稜沿いに5P目、6P目を下降し、45
Mでビバーク跡の下降点へ(4P目終了点)。ここから立派な下降用のスリングが
セットしてある。
8P 真下へ30Mで、3P終了点へ。
9P 岩稜沿い真下に40Mで、2P目途中のカンテの人工の出だしの下降点へ。
(ルート図の3P目出だし)
10P 岩稜沿い真下へ40Mで取り付きへ。
下降所要時間二時間半。
もうすぐで取り付きという頃に一ルンゼにものすごい轟音と共に大量の雪と岩が落
ちてきた。一ルンゼ上部のブロックでも落ちたのだろうか。石が左岩稜を飛び越え
て、中央壁側まで飛んできた。もし南東壁側にでもいたらと思うと恐ろしかった。
5/5
鉄塔付近で一泊し、下山。
まず、「日本の岩場」のルート図であるが、大バンドから上部は5PのV+のブッ
シュとなっているが、これだけではまったくわからないと感じた。「登山大系」の
ルート図も同様である。「日本のクラシックルート」のものを見なければルート全体
の概念も掴みかねるのではないだろうか。
「日本のクラシックルート」では「貴重な入門ルート」と紹介してあったが、木登
り、草つき、人工と、いわゆる岩登りとしての技術度は低いかもしれないが、上部の
ルートファインディングのむずかしさを含めて、「悪さ」はあると感じた。とにかく
我々は非常に時間をかけてしまった。
また、最上部の岩小屋から上はルートを見失って下降してしまったが、やはり東壁
ルンゼのがらがらの岩場をだましだまし右上して灌木帯に戻るしかないのだろうか。
とにかく最上部は人が登った痕跡を感じなかった。
平澤さん、こんにちは。
京都てつじん山の会の伊藤です。
丸山東壁左岩稜の最上部の岩小舎から先の状況について、
ここは、黒部ダムからもよく見えますが、近年崩壊が起こり
樹林帯が崩れて岩が露出してしまいました。
この状態になってから、私は登っていませんが、崩壊地を突破して
上に抜けることができると聞いています。
中央壁の各ルートや、南東壁OCCルートを登っても、北峰頂上へ
行くためには同じところを通らなければならないので、要注意です。
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