尾勝谷本谷/グランド・エンジェル、フェニックス(初登)
|
日程 |
2003年1月11日(土)〜13日(月) |
メンバー |
(ぶなの会)三浦大介、中島史博 |
記録 |
(ぶなの会)三浦大介 |
写真 |
★ グランド・エンジェル ★ フェニックス |
ルート図 |
なし |
<山 行 記 録>
有持さん、みなさんこんにちは。
ご無沙汰しています。
三浦大@ぶなの会です。
今年は寒いのですが積雪も多く、アイスクライミングも大変ですね。
以前、地球クラブの山岡さんらが行かれ、紹介された南ア尾勝谷本谷周辺の氷瀑登り
を昨年から行なってます。
最近、その周辺でなかなか立派な氷瀑を登ることができました。
アプローチはやや長く、やや悪く、ラッセルも結構大変ですが静かな谷で一度行かれ
てみても面白いかと思います。
山岡さんが見つけた中南沢の大滝と今回紹介する2つを登れれば結構満足することと
思います。
以下、記録になります。(長文失礼します)
2003/1/11〜13(晴れ)
メンバー: 三浦大介、中島史博(ぶなの会)
<グランド・エンジェルの登攀>
昨年に引き続いての尾勝谷通い。今回は昨年発見した未踏の氷瀑、フェニックスとグ
ランド・エンジェルをターゲットにしている。11月、12月の冷え込みからもう
凍っているのではないか、との読みであった。
9時半に駐車場を出発。例のごとく本谷の徒渉を繰り返して、ラッセルで進む。今
回は積雪が多い。6時間かかって15時半にようやくフェニックスの河原(中南沢手
前付近)に到着する。ここは水かとれて天場に最適である。本谷右岸のルンゼにある
フェニックスも午後の為か滴りが激しく、発達も悪い。場所は南西面で翳ったところ
にはあるが標高は1650mである。まだ登れる状況にはなく意気消沈!
翌日、もう一つの大物グランド・エンジェルに期待をかける。これは本谷三俣手
前、左岸のルンゼをつめた標高1850m地点の北面に位置する。ルンゼは雪崩の危
険があるので1本手前のルンゼから尾根を回り込んで登る。BCからラッセル2時間
半で9時半に取付きへ。果たしてグランドエンジェルの大氷柱はしっかりとつながっ
ていた。しかし氷質は悪そうだ。とりあえず下部の堆氷、スカート部を登る。1P、
15mで3級。洞窟に入り、氷柱の裏側にまわる。じっくりと状態を観察するが氷質
はツララの集合体で悪い。傾斜もかなり強く、垂直部が長く続いている。取付きにス
クリューを埋め、試登してみるが、最初は被り気味で表面の氷質はボロボロである。
しかもちょうど目線に古い亀裂が深く入っている。さあどうするか。登るとしたらか
なりリスキーな登攀になりそうだ。ピトンが決まるか?これがすべてだ。しかし毎度
の敗退ではつまらない。
中島にビレイを頼み、意を決して登り出す。出だしの3ムーブが核心だ。右の氷柱
にステミングして、フッキングのアックスを引き付ける。大胆なムーブで取り付きの
ハングをクリア。一本スクリューを打つ。効いている。「いける」。全神経をクライ
ミングに集中させる。氷質は悪いので、どこにアックスを決めるか、スタンスをどこ
にするか、これらをスムーズに組み立てるムーブを読まなければならない。スク
リューも効くところは限られる。表面のボロボロの氷を剥がして埋める。労力と忍耐
のいる作業である。フィフィのお世話にならざるを得ない。フッキングも多用する、
奮闘的なクライミングになった。25mほど登り、わずかではあるが傾斜が緩くなっ
てくる。ここで集中力を切らしたら終わりだ。さらに登るとようやく氷質が安定して
きた。最後に一本のロングスクリューを埋める。ここまで9本のスクリューを使っ
た。ナメを登りきると落ち口だ。しかしまだ、重要な仕事がある。安定したビレイ点を
さがさなくてはならない。ロープはもうあと5mしかないが氷が薄く、適当なビレイ
点がない。雪を払った右の岩の僅かなクラックにナイフブレードを一本打ち込む。さ
らに一本ロープを揚げ、それを利用して上部の潅木2つで支点を作る。ここでようや
く緊張が解かれる。
中島にコールする。時間はかなりかかるかな、と思ったこのピッチを一時間足らず
でこなしてきた。顔をみせた中島に親指を立てる。完登だ。ピッチグレードで6級は
あろうか。上部にまだ何かありそうであったが時間が無いのでここから下降に移る。
懸垂は岩にボルトを一本埋め、先のハーケンと合わせて支点とし、50mロープ
いっぱいであった。
グランド・エンジェルは岩壁から垂れ下がる大氷柱。高さ正味55m、ザイルピッチ
1P=15m(3級、スカート部分)+2P=50m(6級、氷柱)巨大ツララの集合
体、垂直部35m、氷質非常に悪し。今まで経験した中で一番厳しいアイスクライミ
ングだった。
(クランド・エンジェル=ちょうど巨大な天使が飛ぶような形をしていることから)
(コースタイム:取付き10:30−12:001P、14:002P、中島15:3
0、ビレイポイントから懸垂16:30からBC17:30)
2/1,2
メンバー:三浦、中島
<フェニックスの登攀と上部ルンゼF4までの登攀>
今回のターゲットはフェニックスである。昨年2月に初めてその御大を拝んだとき
の感動は今でも忘れることは無い。切り立った大岩壁の真中から両側に幾重にも巨大
氷柱を従え、天に昇るがごとく一気に立ち上がるその様相はまさしく不死鳥(フェ
ニックス)と呼ぶにふさわしい迫力があった。
2/1晴れ
早朝に東京を発ち11時半に出合の駐車場を出発。1月の入谷以降2回の顕著な降雪
があり、さらに今週の月曜日にかなりの降雪があったと思われたが、積雪はそれほど
増えていないようだ。3週間前の我々のトレースが微かに残っており、これを利用し
てペースがあがる。どうやら月曜日の南岸低気圧の影響で南風が入り、標高の低いと
ころでは雨が降ったようだ。いたるところにデブリが出ている。
例のごとく徒渉を5、6回行い3ピッチで前回の天場まで。15:30到着。すぐに
フェニックスへ偵察に向かう。このルンゼからもデブリが出ていた。周辺にはなぎ倒
された大木も転がっている。後でわかったことだがこの雪崩はルンゼのかなり上部か
ら起きたものであった。見上げるフェニックスはあの威風堂々たるフェニックスに見
事に大成長をとげていた。多少水が垂れているが、登れない氷質ではない。「これは
いけるぞ!」明日の早朝からのクライミングではこの水滴も止むことだろう。
朝4:30起床。冷え込みは厳しい。温かいモチ入りラーメンで腹ごしらえし、期
待と恐ろしさを胸に6:30に出発。フェニックスの前に立つ。ラインは下部の大氷
柱をストレートに登って上部にある2本の氷柱の真中の洞窟でピッチを切り、さらに
右の氷柱をまわりこんで登り落ち口に達し、上の潅木で終了、という作戦だ。氷質が
気になるところだが、傾斜は前回のグランドエンジェルよりは僅かに緩い。あれは被
り気味であったが、こちらは素直な氷柱である。
7:30三浦リードで登攀を開始する。全体的にはツララの集合体であるが、適度
につながっておりアックスは比較的スムーズに打ち込める。氷質もそんなには悪くな
い。2本スクリューをとったところで完登を確信する。ポイントを見極め丁寧にアッ
クスを打ち込む。ベーシックなモンキーハングで快調に登る。洞窟手前で凹角に入る
が氷が薄く、デリケートな登攀を強いられた。ここを慎重にクリアして洞窟に入りこ
む。1p目が終わった。スクリュー7本の使用。(40m、6級―)
洞窟中にはなめらかな油氷の氷柱があった。スクリュー3本で完璧なビレイ点を完
成させる。フォローの中島は短時間で快適に登ってくる。
2P目、洞窟から氷柱の側面を直上し右の氷柱に回り込む、ここのムーブが難し
い。凄い高度感だ。氷柱に出てからは落ち口までの氷質が悪く、デリケートな登攀を
強いられる。落ち口を越えると傾斜が徐々に落ちナメ滝になる。がっちりとした潅木
にアックスを引っ掛けて歓喜の雄叫び。念願のフェニックスの登攀成功だ。スク
リュー6本使用。(20m、5級)フォローしてきた中島と握手。
上部ルンゼは雪崩れの通過跡でえぐられ、デブリも散乱している。つるべ式に中島
が偵察に行く。三浦が続くと10mほど3+程度のカリフラワー状の氷瀑F2がある。
三浦がスクリュー1本で抜ける。上にはまだ氷瀑がみえる。コンテで取付きまで進
む。時間がないのでここでロープを外し、各自フリーで登攀する。F3は3級、10
m。F4は4級、10m。登りきるともう上部に氷瀑はなさそうである。ここで登攀
を終了する。F4は下から向かって右の斜面を下り、F3はクライムダウンする。F
2は懸垂し、さらにもう一回の懸垂でフェニックス終了点の潅木まで行く。フェニッ
クスは45mの空中懸垂であった。
フェニックスはグランドエンジェルと同様に岩壁から垂れ下がる迫力ある大氷柱。高
さ正味45m、ザイルピッチ1P=40m(6級マイナス)+2P=20m(5級)巨
大ツララの集合体である。
(二日目:BC6:30〜フェニックス取付き7:00、30〜登攀10:20フェ
ニックス終了〜F412:00〜同下降取付き13:30〜テント14:00から駐
車場17:00)
三浦さん、みなさん、こんにちわ。
山岡@地球クラブ(兵庫労山)です。
At 7:25 PM +0900 03.2.4, Osuke wrote:
> 以前、地球クラブの山岡さんらが行かれ、紹介された南ア尾勝谷本谷周辺の氷瀑登り
> を昨年から行なってます。
> アプローチはやや長く、やや悪く、ラッセルも結構大変ですが静かな谷で一度行かれ
> てみても面白いかと思います。
三浦さんたちは、こちらの方に行っていたのですね。
フェニックスは中南沢付近の尾勝谷本谷右岸、グランドエンジェルは尾勝谷本谷三俣手
前、左岸のルンゼをつめた標高1850m地点ということのようですね。
グランドエンジェルは、アプローチの途中で、我々も遠目に確認していた大滝かもしれ
ません。たぶん、場所がいまいちわかりにくいので、簡単な地図があると、後から登る
ひとたちにも良いかと思います。
山岡さん、みなさん、
こんにちは。
三浦大@ぶなです。
昨日MLに流したフェニックスとグランドエンジェルの位置ですが、
> 山岡@地球クラブ(兵庫労山)です。
> フェニックスは中南沢付近の尾勝谷本谷右岸、グランドエンジェルは尾勝谷本谷三
俣手
> 前、左岸のルンゼをつめた標高1850m地点ということのようですね。
そうです、フェニックスは中南沢出合のやや手前で本谷の右岸(左に)樹林の影に青
白い大きい氷瀑が見え隠れするのでわかりやすいと思います。本谷から傾斜の緩いル
ンゼに入って15分くらいのところにあります。
エンジェルの方は中南沢出合を過ぎてさらに三俣(正確には二俣でしょうか。)方面
に谷沿いに進むと右手のやや高い位置にこれも青白いかなり大きな氷柱が見えてきま
すのでわかるはずです。そのルンゼをつめますと雪崩れやすいので一つ手前のルンゼ
から尾根を乗りこして取り付きまで行ったほうがよいでしょう。
両者ともなかなかのものです。だいたい大谷不動の氷瀑をイメージすればよいかと思
います。(残念ながら米子ほどは大きくありません)
> グランドエンジェルは、アプローチの途中で、我々も遠目に確認していた大滝かも
しれ
> ません。たぶん、場所がいまいちわかりにくいので、簡単な地図があると、後から
登る
> ひとたちにも良いかと思います。
たぶん確認されたそれと思います。
2泊3日なら中南沢大滝を入れて3本登れるはずですので、一度訪れても損はないと
思います。
但し3本ともアプローチがルンゼや沢なので、雪崩れには要注意です。
簡単な地図を書いてまた有持さんのHPに載せてもらうようにします。
PS
今年グリベルのウイングテックを1本ほど購入してみました。
最初は角度がきつすぎてよく氷を破壊しましたが、刃先の角度を少し緩くチューンし
たらよくなりました。
どなたか使われている方いらっしゃいますか?
コメントいただければ嬉しいです。
★ エリア別山行記録へ戻る ★ INDEXへ戻る