丸山東壁/塚田・小暮ルート、京都府立大ルート

日程
2002年8月13日(火)〜17日(土)
メンバー
(東京岳人倶楽部)平澤俊章、高畑伸之
記録
(東京岳人倶楽部)平澤俊章
写真
なし
ルート図
なし

<山 行 記 録>


東京岳人倶楽部の平澤です。
京都府立大ルートの記録がACMLのホームページにはなかったので、一応記録を出しま
す。
長文ですが、よろしかったらお読みください。

丸山東壁 塚田・小暮ルート 京都府立大ルート
平成14年8月13日〜17日  平澤俊章 高畑伸之 (東京岳人倶楽部)

13日 入山 内蔵助出会いの鉄塔下にBC

14日 塚田・小暮ルート
取り付き7:00 南東壁ルンゼコルまで15:40  奇数ピッチリード平澤
 1P
 一ルンゼの狭くなったところが取り付きだが、ビレーピンは見当たらなかった。上
を見上げると草の生えた逆くの字形の凹角が目印になる。脆く、ピンの少ないピッ
チ。
 2P
 逆くの字の右上する凹角上部から、左上する上昇バンド。「日本の岩場」のルート
図の2Pと3Pとを繋げて登る。
 3P 4P
 スラブのA1。このルート特有の、ただのねじが埋め込まれたようなボルトが連
続。ねじの頭にひっかけるだけのPIKAのリベットハンガーが前進には効果的で
あった。このルートのために開発された道具なのかと思ってしまう。ただ、3、4本
に一本はボルトやハーケンが現れ、ランニングに不安はない。3P目は、アブミの上
段に乗ってからのW+程度のフリーが混じり、アブミ回収に一汗かく。
 5P
 ハング下を左上。途中、一瞬ルートが消え失せたかと思ったが、左上のクラックに
生えている草をかき分けると、リングの付いたアングルが見つかり、そのラインをた
どる。途中、アングルが一本抜けている所は、マイクロキャメロットで越える。今に
も折れそうな、なんとも不安な枯れ木を足場にした所がビレーポイント。ここでコー
ラのペットボトル1.5Lを落っことすという惨事が発生。空中をそのまま基部まで落ち
ていき、一ルンゼにパーンという破裂音が鳴り響いた。
 6P
 ビレーポイントから、枯れ木を使ってハングの左側に出て、更にとんでもない垂直
の木登り、ふかふかの草付きを越え、緩傾斜帯の縁へ。
 7P
 ルート図ではT〜Uのスラブということだが、正面のちょっとした垂壁はピン三本
のA0。更に草付きとスラブを20メートルほどで立派なビレーポイント。
 8P
 南東壁ルンゼを目当てに、ザイルで確保して緩傾斜帯のブッシュのトラバース。あ
まりしっかりした踏み跡はなく、藪こぎ状態。
 9P
 南東壁ルンゼに入る。ルンゼ内のハングを避けるように左のカンテに出てのフ
リー。途中ちょうどいいレッジのある立派なビレーピントがあるが、それは通り過ぎ
て、更にスラブのフェースをたどる。ピンは少なく、X以上で10メートル程度はラ
ンアウトするが、岩は堅く快適。再び、草付きルンゼに戻ってビレーポイント。
 10P
 ルンゼ内の凹角の、ふかふかの悪い草付きで、南東壁ルンゼのコルへ。私は草付き
にトラウマがあるため、フォローでも怖くてしかたがなかった。ここは広く快適なテ
ラスなので、一息つける。
 ここから後は2ピッチだけだが、どうせA1と草付きフェースだろうし、時間も1
6:00近く、未知のルートの懸垂下降を考えると余裕を持って下降した方が得策と
判断。コルまでで終了とする。
 3〜5Pの人工、9Pのフリーが快適だったが、全体としては日本的でとてもワイ
ルドな印象のルートであった。5P目のキャメロット以外は、ハーケンの打ち足しな
どは特に必要なかった。リベットハンガーはワイヤー式のものを、ランニングの補助
としても使用できるので持参した方がよいと思う。

 下降 
1P 南東壁ルンゼのコルから、9P途中の支点まで。
2P 緩傾斜帯まで。
3P ザイルで確保して、緩傾斜帯のブッシュのトラバース。7P終了点のビレーポ
イントまで。
4P ザイル一本の懸垂で、6P終了点のビレーポイントまで。
5P ここから、動物ランド沿いに真下へと下降。45M程度で次の懸垂支点へ。
6P ハング下にも下降点があるということだが、上からは見えないので、その手前
の懸垂支点まで。
7P ハングを下降。ハング下にもすぐ支点はあるが、その先にも懸垂支点が見える
ので、そこまで降りる。
8P 一ルンゼの動物ランド取り付き付近に降り立つ。
9、10P 一ルンゼを下降。取り付きまで戻る。下降所要時間、約二時間。

15日 降ったり止んだりの雨で停滞。昨日緑ルートを登ったパーティーも撤収。
我々1パーティーのみの静かな山となる。睡眠と読書。夜半から雨はあがり、翌朝、
すっかり黒部は秋の空になっていた。

16日 京都府立大ルート
取り付き8:00 6P終了地点17:00  奇数ピッチリード高畑
 1P
 一ルンゼの途中、ケルンのある所から右へ入る踏み跡をたどると、中央壁緑ルート
取り付きへと出る。さらに踏み跡をたどり、スラブを登って展望台へあがった所に、
懸垂のできる立派なビレーポイントがある。ふと見ると、小さな仏様の像が置いてあ
る。いろいろお願いをしてから取り付く。左上するリスには、ところどころピトンス
カーがあるが、幅広で浅いものが多い。ソードオフアングルが有効とは聞いてはいた
が、我々は入手できなかったため、右脇のリスに薄いナイフブレードのタイオフ、ロ
ストアロー、バガブーを使用。後はカム、フックで抜けられる。途中、五ミリのステ
ンレスボルトを打ち込んだだけの支点も残置されており、ワイヤータイプのリベット
ハンガーを使用。
 2P
 ややかぶり気味の岩をクラックを使ってフリーで越えた後、左上ランペ入る。コー
ナー沿いのクラックをカムのみで上がっていける。マイクロキャメロットなどが有
効。20M程で立派なビレーポイントがある。見上げると、三段ほどに大きくハング
した前傾クラックもあるので、いったんここでピッチを切るが、ここは間違い。「日
本の岩場」のルート図の2P目を半分に切ったことになる。
 3P
 よく見ると、さらに左上する傾斜の落ちたスラブに残置されたボルト、その上にビ
レーポイントも見える。カムを使用して、フリーでスラブを上がる。途中傾斜の立っ
た所にバガブーを使用。
 4P
 前傾した幅広クラックに、残置フレンズがあり、それを使用して、カムの人工にフ
リーを交えて一段上のフレークへ。さらにカムをきめて上を覗き込んでみてもハーケ
ンやカムが使えそうな所もない。一段戻ってから、右側の大きなフレークを使ってフ
リーで右にトラバース。凹角に入ると、残置がある。凹角を直上すると、かぶり気味
の壁で一瞬ルートを見失うが、右の方のリスに残置ラープを発見、ここをたどれば良
いと判る。左側の壁を見てみるとそこにも新しいボルトにカラビナが残置されてい
る。きっとルートを見誤った退却の跡だろう。残置ラープの次に、下向きの脆そうな
穴にエイリアンを決め、一度テスティングはしたものの、いざ乗り込むと岩が欠けて
フォール。なんと残置ラープにつながったディジーチェーンにぶら下がっていた。カ
ムを諦めて、更に右上のピトンスカーにロストアロー、スカイフックを1ムーブで、
残置ハーケンへ。ここにも立派なビレーポイントがあった。フリーで垂壁を越えてス
ラブの縁の細いバンドに上がる。ここでまたルートがわからなくなるが、探すと右の
方に例の五ミリステンレスボルトが見える。数歩右にトラバースするとルートが見え
てきた。触るとぐらぐらする頼りないボルトに、これは、要は穴を開けてネジを打ち
込んだだけだよな、と思いながら、リベットハンガーでプロテクションをとった後、
カムをいくつか決めながらフリーで外傾テラスへ。このピッチは複雑なルート取りを
するため、Z状にザイルを伸ばすこととなり、ザイルの流れには要注意。核心部で
あったと感じている。
 5P
 カムで外傾テラス右のコーナーを直上、ハングで押さえられた所を回り込むように
抜ける。ハングからは昨日の雨の染み出しがしたたり落ちていた。ハングの出口から
フリーで草付きフェースへ抜ける。フェースに出た所で、スタンスに立ちこんでバガ
ブーを打ち込んでからアブミの回収。あとは、足の良く滑るふかふかの悪い草付きを
直上してブッシュテラスへ。
 6P
 根っこにランニングをとりながらブッシュ帯の垂直木登りと草付き。右岩稜のカン
テラインに飛び出す。右側には二ルンゼの緩傾斜スラブが広がり、懸垂支点も見え
る。ここからのエスケープも可能であろう。目の前の垂壁にボルト一本とハーケンが
残置されている。ここをフリーで越えるとあとは、W+程度のところどころ草付きの
まじったスラブ。途中、崩壊した部分があり、スタンスのありそうな左側を巻いてあ
がっていくと、なんと右下に残置ハーケンが見えるではないか。もはやランニングを
とることもできずに20M近くランアウトすることになる。下のブッシュに引っか
かっているのか、ザイルは異様に重く、自分の手でザイルをたぐりあげながらのスラ
ブ登攀で、ブッシュ帯に飛び込むまで、悪い汗をたっぷりとかいてしまった。ボルト
一本と潅木でビレー。
ここから上は、見あげるといかにも日本的なスラブとブッシュ。もうあとバルコニー
までの草付きフェース1ピッチだけなのだが、時間は既に17:00になっており、
ルートは実質終わっているものとも言えるので、下降の時間を考えてここで終了とす
る。

 使用ギア
マイクロキャメロット、エイリアン各1セット。キャメロット(3番は1個)2セッ
ト。ワイヤーリベットハンガー若干。ナイフブレード、バガブー、ロストアロー各数
枚。スカイフック。コカコーラペットボトル1.5L。

 今回は、カムを中心に使用できたので、ネイリングは、各ピッチ2〜3本で済ん
だ。初めてのAAであったが、5Pまでは日本離れした快適な岩で、自分の技術と判
断でルートを探しながら登ることのできる、大変面白いルートであった。AAの部分
は各ピッチリード一時間半弱。フォローもユマールは使用せず、ギアの回収をしなが
らそのまま登った。所々の残置も、ルートファインディングの助けとなり、AA入門
としては好適なルートだろう。

 下降
1P 6P終了点から右下に見える二ルンゼ緩傾斜スラブの懸垂支点へ。ここはザイ
ル一本でも懸垂可能だろう。
2P ここから、右岩稜沿いか、二ルンゼ沿いか、幅の広い場所なのでどちらの方角
にも降りられそうだが、下降ルートが見極められない。様子を見ながら降りると、結
局二ルンゼ側に懸垂支点を見つける。
3、4、5P 二ルンゼ沿いに下降して、基部に降り立つ。4P目はかなりかぶった
狭く深いチムニー内に降りることになり、かなり振られてザイルも引っかかりやす
い。下降所要時間、約一時間。
 ここから、右岩稜基部へとまわりこみ、末端から展望台に上がり、取り付きにデポ
しておいた荷物を回収。仏様の像にご挨拶をしてから、25Mの懸垂で中央壁基部の
踏み跡に降り立った時には、既に夕まぐれであった。

17日。樺の樹林帯を、爽やかな秋空を見上げながら、帰省ラッシュ前に下山。

★ エリア別山行記録へ戻る ★ INDEXへ戻る