日程 |
2002年8月1日(木)〜12日(月) |
メンバー |
(G登攀クラブ)御山洋一 |
記録 |
(G登攀クラブ)御山洋一 |
写真 |
なし |
ルート図 |
なし |
<山 行 記 録>
G登攀クラブ 御山です。
8月1日からヨーロッパアルプスに12日間の旅程で行って来ました。氷河の状態が悪
く、しかも悪天候が続いたため、登れたのはモンテローザのデュッフェルスピッツェ
のみでした。ちょっと長い文章ですが、報告を送ります。
日程:8月1日〜12日
メンバー:御山 洋一(G登攀クラブ)
登った(登れなかった)山:グランドジョラス、デュッフェルスピッツェ
8月2日:曇り
長いフライトの後チューリッヒの空港へ。上空からはよい天気だったが、下に降り
ると霧。
7時40分の電車には間に合わず、空港にいても仕方がないので、とりあえず8時13
分発ジュネーブ方面行きのICに乗り込み、ローザンヌへ向かう。早めにマルチーニに
ついたものの、結局13時40分まで接続する電車はない。町中を散策したりして時間を
過ごした後、列車に乗り込む。
1年ぶりのシャモニー。早速フランス山岳会に入会。これで保険もバッチリ。あ
さってはいよいよジョラスだ!
8月3日:曇り時々雪
ミディーに行く。高度順化とトレーニングのためだ。7時過ぎにロープウェイに乗
り込み、一気にミディーへ。支度してからコルに降り、雪壁の登攀を繰り返す。タ
キュールまで往復しようと思ったが、何しろ天気が悪い。昼過ぎにコスミック小屋で
少し休憩した後、ミディーロープウェイ駅に向かうが、途中から霰、そして雷とな
る。体中から「キュィーン」と帯電している音が聞こえる。遠くで雷鳴。非常にやば
い。いつ落ちてもおかしくない状態。死にものぐるいでコルを駆け上がる。やっとミ
ディー駅のゲートに入る。ほっとしたのも束の間、岩のトンネルに取り付けられた手
すりに落雷。氷の洞窟内ではあるが、ここはまだ施設の外だ!「ミスター100ボル
ト」と近くにいたドイツ人にからかわれながらも、岩の中に逃げ込む。
キャンプ場に戻ってから、汚れた服を洗うため、ランドリーマシンを使おうとする
が、はじめに事務所でコインを買ってから使うものだとは知らず、「動かない」と騒
いでいた。あー、またアホを露呈してしまった。
8月4日:曇りのち雨
一晩中雨。昨日の予報では、今日は曇りで済むはずだった。とりあえずクールマイ
ユールに向かう。空行きが怪しい。パンとチョコレートを買い、プランパンシウに向
かう
バスはアナウンスなし。プランパンシウがどこかもわからず、それらしい場所を通
り過ぎた後でバスを降りて、少し戻ってから地図を見ながら登山口に向かう。うろう
ろしていると、近くの家の中から男性が出てきて、親切にもわざわざ登山口までつい
てきてくれた。
雨は降り続き、全くあがる様子もない。お花畑をすぎた後、滝下の川を渡渉し、岩
場を登る。登攀具をすべて持ってきたので荷が重い。鎖場あり、梯子ありで結構ばて
る。小屋は見えるがなかなか近づかない。綱引きロープを使ってかなり急な岩場を登
り、ようやく小屋に到着。今日の泊まり客は僕一人だけだ。小屋はとても静かで、ま
た小屋番の人は親切でなかなか居心地がいい。
このところの悪天候で、積雪が多いようだ。ルポゾアール岩稜の取り付きで雪がか
なりかぶっていて危険らしい。僕が小屋に来る前にいた2人組もこの雨で引き返した
そうだ。また、12人パーティーも途中まで行って断念したそうだ。とにかく危険な状
態であると、小屋の人から念を押された。今夜曇りや雨だったら、当然アタックをあ
きらめることにする。
8月5日:晴れ後曇り、夕方から雷雨
朝1時に起床。空は満天の星空。小屋の人が朝食を用意してくれる。「Good Luck」
とは言ってくれたが、相当心配そうだ。僕自身あまり無理をするつもりはなし、
ちょっとでも不安だったら引き返そうと思う。
2時に小屋をスタート。数多くのケルンに助けられて氷河に出る。問題はこの後
だ。クレバスが多く、しかもこの2日間降り続いた雪で表面が覆われてしまってい
る。慎重に進む。一カ所いつ崩れてもおかしくない、幅が70センチ、厚さ50センチほ
どのスノーブリッジがあった。クレバスの深さは深すぎてわからない。落ちたら絶対
這い上がれないだろう。いろいろ回り道を探すが、クレバスに阻まれ、結局このス
ノーブリッジを渡るしかないようだ。肝を冷やしながらスノーブリッジを慎重に渡
り、再び雪原へ。よく見るとあちらこちらにクレバスだらけ。ピッケルを刺しなが
ら、ルートを探るが、大丈夫と思っていた所にピッケルを刺すと、「ズボッと」何の
抵抗もなく刺さる。まさにヒドンクレバス帯の真ただ中だ。岩稜の取り付きは見える
が、小屋の人が話していた通り雪がかなり被っている。行ったり来たりしているうち
に、時間はどんどん過ぎていき、すでに5時を回ってしまった。これでは今日中の下
りは無理だし、例のスノーブリッジだって、日が当たったら落ちるかもしれない。結
局アタックを中止する。
6時30分に小屋に戻り、荷造りをする。例のスノーブリッジのことを話すと、「あ
れを渡ってしまったの?迂回するルートがあったはずだけど判らなかった?」と言わ
れた。今年は7月中は数パーティーが登頂できたが、8月はまだ誰も登っていないそう
だ。もう一日粘ろうかと思ったが、状態はあまり変わらないだろうとのことなので下
山を決意。来年再び来ることを約束する。下山中に下から登ってくる数パーティーと
出会う。
プランパンシウのバス停からバスに乗り、クールマイユールへ。タイミング良く
シャモニー行きのバスに接続できた。
8月6日:雨
夕べから雨。昨日登っていった人もさぞ残念だろう。9時過ぎの電車に乗り、一路
ツェルマットへ向かう。ブリークで1時間ほど町中見物をした後、ツェルマット行き
の列車に乗る。雨は降ったり止んだり。山の上はまた雪が降っているのだろう。情報
を得にアルパインセンターに向かう。やはりどこも雪が多いようだ。どうしようか迷
うが、だめ元でモンテローザ行きに決定する。
8月7日:雨後晴れ
朝までずっと降り続いていた雨も、8時頃から小康状態。とにかく行けるだけ行っ
てみようということで、登山列車に乗る。ローテンボーデンで降りる頃には小雪がち
らついていたが、すぐに降り止む。氷河を渡っている途中でマッターホルンが姿を現
す。やっとスイスに来たという気分になる。
モンテローザ小屋では夕食の時刻まで、ビールを飲んだり写真を撮ったりしてくつ
ろぐ。マッターホルンが勇姿を見せつけてくれる。リスカムやブライトホルンもすば
らしい。明日は天気がよいようだ。
小屋の夕食は豪勢なものだった。シャモニーでフランス山岳会に入った甲斐があっ
た。宿泊料が半額になるし、しかも保険の心配もしないで済むのだから。
8月8日:晴れ
1時45分に起床。出発の準備をしている間にどんどん時間が過ぎていく。慌ただし
く朝食を済ませ、2時40分に出発。
暗がりのルートファインディングは慣れが必要だ。ケルンが多い場所はいいが、そ
うでないところはついつい迷ってしまう。氷河手前では1枚岩のスラブにぶち当た
る。一緒にいたドイツ人もおっかなびっくり登る。氷河にたどり着き、アイゼンをつ
ける。
思ったほどクレバスの状態が悪くないようだ。といってトレースのないところを歩
くほどの勇気もない。マッターホルンが次第に赤味を帯びてくる。ザッテルに8時頃
に着く。ここからやせた尾根を行く。雪が岩の上にふわっと乗っただけなのでちょっ
と不安だが、技術的にはたいして難しくない。次第に下山する人の数が増え、すれ違
いながら登るのも大変になる。11時半頃に山頂に着く。高度感がすばらしい。足下を
流れる氷河に酔いしれながら、しばし周囲の景色を堪能する。
12時過ぎに下山開始。13時30分にザッテルのコルに到着。2時に小屋に戻り、今日
中にキャンプ場に行く計画はここで潰えた。明日はあまり天気が良くないようだし、
あわてて下山しても明日はどこにも行かれないだろうということで、氷河を楽しみな
がら下山。小屋に着いたのが3時半。これから支度をしてツェルマットに戻る気力も
体力もない。スーパーも閉まっているので食料も飲み物も買えない。ということで予
定通りもう一泊することにする。
8月9日:雨
モンテローザ小屋に1泊したおかげで、疲れはほとんどなくなった。エーデルワイ
スとの再会を果たし、何も映っていないリッフェルーゼにも足を運んだ。天気が良く
ないのでそのままツェルマットへ。途中マーモットの群れと遭遇する。
ツェルマットに戻り、登攀具を郵送。これで明日からは荷物が軽くなる。おみやげ
を漁りに町中を練り歩く。
8月10日:雨
結局朝になっても雨。山は見えない。
今日はルツェルンに向かう。ルツェルン駅に到着し、予約していた宿に向かうがな
かなか見つからない。電話して聞くと、さっき迷ってうろうろしていたあたりにある
らしい。もう一度同じ場所に行くと、買い物袋をぶら下げたバックパッカーらしいお
兄さんがやってきて案内してくれた。今日は街のフェスティバルで湖上祭があるそう
で、夜中に花火が上がるらしい。見てみたいが、この雨の中、外に出て行くのも考え
物だ。
早速、博物館見物に街に出かける。時間がないので、ライオンの像と氷河公園に絞
る。湖の畔には出店がたくさん並んでいた。これで晴れていれば、祭り好きの自分と
しては申し分ないのだが。
8月11日:雨
最後の日まで雨だ。お世話になった宿のおばさんに挨拶し、駅に向かう。あっとい
う間の10日間だったけど、ほとんど曇りか雨。一日中晴れたのは1日のみ。せめてモ
ンテローザを登頂できたことだけでも良しとしなければ。
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