日程 |
2002年8月10日(土) |
メンバー |
(G登攀クラブ)鈴木 |
記録 |
(G登攀クラブ)鈴木 |
写真 |
なし |
ルート図 |
なし |
<山 行 記 録>
G登攀クラブの鈴木です。先日、谷川に行ってきました。長文で恐縮
ですが、時間のある方はお付き合いいただけると幸いです。
2002年8月10日(土)
一ノ倉沢烏帽子奥壁 「南稜フランケ」 ソロ
鈴木啓紀(G登攀クラブ・22)
土合の駅から、指導センターに向かって一人夜道を歩いてゆくと、な
んとも言えないようなプレッシャーを感じてしまう。でも幸い僕は、クライ
ミングを前にしたこんなプレッシャーが、嫌いではない。
ひょんぐりの滝付近の雪渓の状態は最悪で、先行パーティに続いて
悪いスラブのトラバースをこなして雪渓に乗り移り、テールりリッジ側壁
の垂直のブッシュを登ってようやく、テールリッジの上に這い上げること
ができた(このとき、巨大な落石を落としてしまい、危うく後続のパーテ
ィを巻き込んでしまうところでした。事故にならなくて本当によかった)。
南稜フランケ取り付き着、9時。アプローチに予想外の時間がかかっ
てしまった。とっても暑い。しかし壁のコンディションはよさそうだ。
「マジで登るの? 止めたほうがいいんじゃん?」そんなことを考えな
がらロープをセットし、1p目を登りだす。でもよく考えたら、ソロのときは
僕はいつだってこんな感じだ。
登りだし9時15分。今回は9mm1本のグリグリソロ。グリグリに9mm
を使うことには確かに不安もあったが、今回のような絶対に落ちられな
いようなルートでは、落ちたときの確実性よりも、ロープの操作性を優先
させた方が、多分安全だろう(一応9mmでも止まることは、実験して確
かめていた)。
1p目は急傾斜のカンテを回り込み、フェースへ。上部はだいぶランナ
ウト。這い上がったビレー点には、根元までちゃんと入っていないリング
ボルトが3本。「落ちたら飛びそう、ってゆうかそれ以前に、ユマールして
も大丈夫なんだろうか?」
2p目はオリジナルルートどおり、左上する草付クラックを登り、右へト
ラバース。このピッチ、ルートファインディングが少々いやらしい。間違え
てビレー点手前で高く上がりすぎてしまい、残置支点(カラビナ付だ!)
で2m程のテンション下降。
左上した後右への水平トラバース、このピッチの下降とユマーリング
には悪戦苦闘。この1pに1時間20分かかってしまった。
さて核心の3p目。メインロープからのバックアップをかなり長めにセッ
ト。ハング下のフェースをバランシーな立ち込みで越え、すっきりとした
フェースに飛び出す。
「こんなところでは絶対に落ちない」という確信に導かれ、僕の意識は
クライミングだけに集中されてゆく。本当に集中できれば、恐怖は殺せ
る。ランナウトも支点のボロさも、関係ない。
残置は少ないが快適なカチフェース。本当に楽しいピッチだった。
4p目は大テラスからフェースを左上し、バンドに立ち込む。そしてその
バンドを左へトラバースし、残置のないカンテを直上。ここもクライミング
自体は快適、だが、残置は極めて少ない。
カンテから浅いバンド。しかしここから先のルートが分からない。目の
前には急峻なフェース。しかし残置はない。見た目グレードは10前半。
何よりロープの残りは10mを切った。フェースの上にビレー点は見えな
い。「ちきしょう! ビレー点がない!」ボルト、持ってくりゃ良かったか?
しかし、そこからなんとか左上はできそうだ。草付バンドを左へ。もうロ
ープがない、というところでボロいビレー点を発見できた。脇のフレーク
にカムをねじ込み、ホッとする。
このピッチ、3p目よりも厳しく感じた。
5p目は少しアンサウンドなカンテ。そしてちょっとした草付をこなすと、
見覚えのある南稜に抜けることができた。馬の背リッジ途中のビレー点
へ。
登攀終了、13時半。ただし、最終ピッチはフランケダイレクトに入り込
んでいたのかもしれない。
暑さと水切れのため、体は熱中症気味で、頭も体もフラフラだった。フ
ランケを抜けたことで集中が切れ、ぞっくりと消耗している自分に気が付
いた。
「ここでミスったら死ぬぞ」。自分に言い聞かせながら、懸垂7回で南稜
テラス。でもまだ先は長い。最後の核心、極悪の雪渓が残っているのだ。
ヨタヨタとテールリッジを下り、ひょんぐりの滝へ。
テールリッジ取り付きの少し下流にある支点から懸垂気味に雪渓を渡
り、うまい具合に対岸に渡ることができた。やれやれ。
最後の岩場と雪渓を下り切り、安全圏にたどり着いたとき初めて、感
情があふれてきた。空に向かって吼えていた。
出合着、16時半。それにしても、一ノ倉沢の水のおいしかったこと。
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