烏帽子沢奥壁/大氷柱

日程
2002年2月20日(水)
メンバー
(ARIアルパインクラブ )有持真人、藤川勝人
記録
(ARIアルパインクラブ )有持真人、藤川勝人
写真
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ルート図
なし

<山 行 記 録>

有持です。

 19日〜20日は甲斐駒ヶ岳の予定でしたが、どうしても一度、大氷柱に行っておか
ないと気分がスッキリしないので、甲斐駒ヶ岳から急遽変更して大氷柱に行って来
ました。

 結果は、核心部の氷がなくなっており、中止して下山しました。

<日程>     2002年2月19日(火)〜20日(水)
<場所>     谷川岳/一ノ倉沢/烏帽子沢奥壁/大氷柱
<メンバー>  ARIアルパインクラブ/有持真人、藤川勝人
<記録>

2月19日(火) 猛吹雪

 天神平駐車場(14:00)〜一ノ倉沢出合小屋(16:30)

 早朝に藤川が迎えに来て、車で甲斐駒ヶ岳に向かっている途中で、やっぱり
大氷柱を見ておかないと気分がスッキリしないし、まだ氷りが残っているのか
と言うのも気になり、途中で引き返して、装備を詰め替えて谷川に向かう事に
なった。

 18日の午後から冬型が強まって日本海側には大雪注意報がでている。水上
でも一晩で60pの積雪があったようだ。谷川に近づくに従って吹雪きが強くな
ってくる。

 天神平駐車場付近では、駐車場の入口が分からないほどの猛吹雪となって
いた。天気図では20日は天候の回復が予想されるので、とにかく今日中に一ノ
倉沢出合小屋までは行っておかなければならない。

 目も開けていられないほどの吹雪の中、延々とラッセルをしノンストップ2時間
30分で出合小屋に到着。多いところで胸のラッセルとなった。

2月20日(水) 吹雪〜晴れ

 一ノ倉沢出合(04:30)〜大氷柱取付(08:30/0900)〜核心部下(11:20/12:00)〜
取付(12:15/12:40)〜一ノ倉沢出合(14:10/14:30)〜天神平駐車場(15:00)

 吹雪の中ヘッドランプで歩き出すが、前がほとんど見えないためにテールリ
ッジが分かりづらかった。出合から延々とラッセルが続く。テールリッジの登り
では頭のラッセルとなる。スノーシューを使っても烏帽子沢奥壁までノンストッ
プで4時間もかかってしまった。

 明るくなるにつれて雪はやんだが、今度は地吹雪がものすごい。取付で準備
をしていても雪上においたギア類が見る見る埋まっていく。

 準備をして、早速、登攀開始。見た目では大氷柱は見事に氷結しているよう
だ。おまけに、大氷柱の左側にもう一本の大氷柱ができているではないか。

 場所は、ダイレクトルート下部からYCCルートにかけて見事につながってい
る。この大氷柱はまだ未登だろう。最初は登ろうと言う話になったが、持参した
ボルトの数も少ないし、氷が薄ければビレーポイントも作れなくなってしまうた
めあきらめて、予定通り右側の大氷柱を登る事にした。

 胸のラッセルをして私が1P目に取り付く。氷結はしているが雪混じりの氷り
のためグサグサでスクリューはほとんど効かない。まあ、傾斜が緩いので大
丈夫だが・・・・。

 2Pは藤川がリードをする。正面に氷があったためこれを直上し、変形チム
ニーの下部までトラバースしたが結構悪かった。

 さあ、いよいよ大氷柱の核心部だが、見上げてみると、核心部の半分は氷が
なくなっているではないか。2パーティが登っているためベルグラがはがれて
しまったのだろうか??氷がなければどうしようもない。バイルのフッキング
で登ろうとしたが、フッキングエッジがほとんどないため途中で断念。

 右上の氷がある下にリングが飛んだボルトに2mほどのシュリンゲがタイ
オフになってかかっている。これを使って氷まで登れば何とかなるかもしれ
ない。このピッチの上部は氷結状態は良いのが分かっているし、ここさえ越え
れば完登できるのは確実だ。しかし、初登者が苦戦して登った核心部なのに、
氷りのない壁を残置シュリンゲを使って登っても本当に完登したことにはなら
ないのでは???と自問自答する。

 シュリンゲにぶら下がり、上部の氷りにバイルが届いていたが・・・・・。

 他のクライマーはどう考えるか分からないが、私はこのピッチにはこだわり
を持って登りたいと思う。絶好の完登チャンスなのに、残念であるが今回はあ
きらめよう。登った後に自分自身で納得できるクライミングでなければ、後で
後悔するのは目に見えている。

 十分に時間に余裕もあったし天候も回復してきて地吹雪も収まったがここか
ら下降する事にした。

 懸垂1回で取付に降り立つ。

 もう今年はあのピッチに氷りが着く事はないだろう。まあ、来年があるさ!!

 来年も氷結するとは限らないが、完璧な完登ができるまで通うつもりだ。

 天候も完璧に回復して、素晴らしい一ノ倉沢の岩壁の景色に後ろ髪を引
かれながら下山した。

<ps>

 大氷柱をどうしても完登したい方は、残置シュリンゲを使えば上部の氷り
に届くので完登する事ができると思います。ただし、浅打のボルトにタイオフ
をしてあるので、いつボルトが抜けるかシュリンゲがはずれるかは運しだい
です。シュリンゲは新しいです。

 それから、左側の未登の大氷柱はダイレクトルートの3P目のあたりが、
かなり薄いベルグラのようです。

 どなたか腕に覚えのある方は是非、登ってみてください。



藤川です、ども。

久しぶりにやり場の無い悔しさにかられて
過ごしてます。
過ぎたこととはいえ、2月9日は私が仕事だった
ためにみすみす第2登を逃してしまった。
マサには悪い事をしたな・・
ま、何登でも登ればいいさ、とマサと二人で平静
を装っていたが、19日遂に二人とも自分を押さえる
ことが出来なくなって、よし行こうぜ、となった。
強い冬型だが、二人なら大丈夫だ。

指導センタから大ラッセル大会となった。
出合小屋の中にテントを張ったが、外は暴風雪だ。
明日のベストコンディションを願ってシュラフに入る。

一晩中風は止まず、風雪の中出発。
取付まで3時間をみていたが、さらに掛かった。
気合を入れて登攀開始。

1P目 5cm前後厚のグサグサのベルグラを引っ掛け
    を多用して登る。
    普通の氷と思って打ち込むと岩を叩く。
2P目 本来氷雪壁で変形チムニーの基部まで
    快適に登れるようだが、今回は岩が露出して
    おり試登したが厳しいので、左の未登?の
    氷柱下部を20mほどランナウトで登り、途中から
    変チ目指して右に20mトラバース。
    外傾した岩にピックの先が引っかかる所を
    さがし、アイゼンでスメアリングをしての結構
    きわどいピッチだった。
    長いビレーでマサは凍えて登ってきた。
    手指が凍傷寸前で、血が戻り出してから激痛に
    苦しんでいた。
3P目 最初の核心部。
    悲しいかな期待した氷が繋がっていない・・・
    おまけに残りの氷も気温が低いため激しくモロイ。
    軽くピックを刺すと簡単に岩からはがれ落ち、
    下の岩も手(ピック)掛かり無し。
    ビレー点(腐ったリングボルト2本)から10m
    上にタイオフの新しいスリングがぶらさがっており、
    それを使って登攀を続けるか悩む。
    藤川は何を使ってでもここさえ突破すれば、上まで
    抜けられるので行こうか、と目論んだが、マサの
    「初登者もここは氷を登っているし、全てダイレクト
    に登ってこそ価値がある」
    の言葉に思い直す。
    しかしそうは思いつつも、途中で引き返すことは
    二人とも悔しくてたまらず、地吹雪の中かなりの
    時間沈黙し自問自答していた。

皮肉にも取付に降りると青空が出てきた。
出合に着くまで、何度も何度も振り返ってはいろんな
ルートを観察した。
次はどこを登るかそれぞれ想像をしながら。。

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