仙丈ヶ岳/尾勝谷本谷・奥南沢右俣〜中南沢

日程
2001年12月28日(金)〜2002年1月1日(土)
メンバー
(地球クラブ)山岡人志、(塩飽山の会)川井秀哉、(大阪ぽっぽ会)宮本俊浩
記録
(地球クラブ)山岡人志
写真
なし
ルート図
★ 尾勝谷本谷中南沢F1 (90 m) 全景
★ 尾勝谷本谷中南沢F1の1ピッチ目をリードする山岡
★ 尾勝谷本谷奥南沢右俣F2 (80 m)全景
★ 尾勝谷本谷奥南沢右俣をラッセルする宮本

<山 行 記 録>


みなさん、こんにちは
山岡@地球クラブ(兵庫労山)です。

年末年始の南アルプス・仙丈ヶ岳の北西面に位置する尾勝谷でのア
イスクライミングの報告です。
ラッセルに悩まされましたが、未知の谷に入り大滝を見つけて登る
ことができました。
尾勝谷は、仙丈ヶ岳の北西面にあり、伊那市から高遠町を経由して
長谷村の戸代方面から入山します。スーパー林道に向かう戸代大橋
の手前を河原におり、そこにある橋をわたって林道をたどります。
多少アプローチの悪い谷ですが、中級レベルのひとがゲレンデを抜
け出し、それなりに静かなしかも充実したクライミングが楽しめる
ところです。

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<山域>   南アルプス
<ルート>  仙丈ヶ岳・尾勝谷本谷・奥南沢右俣〜中南沢
<メンバー> 山岡人志(リーダー、地球クラブ・兵庫労山、43歳)
       川井秀哉(塩飽(しわく)山の会・香川労山、42歳)
       宮本俊浩(大阪ぽっぽ会・大阪労山、41歳)
<記録>   山岡人志
<行程>
2001〜2002年
12月28日(金)戸代大橋手前の尾勝谷出合い(24:00)
   29日(水)尾勝谷出合い (8:40)〜林道終点手前 (9:35)〜1620m
        中南沢出合い (14:00)〜1700m付近のテント場
        (14:30)         
   30日(木)1700mテント場 (6:00)〜右俣F1 (8:00)〜F3 (9:25)
        〜F5 (10:45)
        〜F8 (11:50)〜2525 m地点 (12:05)〜テント場
        (15:35)
   31日(金)1700mテント場 (6:20)〜中南沢F1 (9:00)〜F2終了
        (13:30)〜〜テント場 (16:15)
01月01日(土)1700mテント場 (7:05)〜林道終点 (10:15)〜
           尾勝谷出合い (10:50)

<概要>
 今年(2001年末〜2002年)は雪が多く、年末年始の山行場所の
選定に迷っていた。高層天気図のデータを見ると12月に入ってほ
ぼ4日周期で天気が変化しており、年末は好天が、年始には大き
な寒気団の襲来が予想された。南アルプスなら多少雪が多くとも
ましと考え、以前、尾勝谷本谷奥南沢の左俣を登った時に気にな
っていた、本谷奥南沢右俣、そして、夏冬とも資料のない本谷中
南沢に入ることにした。さらに計画では、塩沢への継続も考えた。
実際は、予想される悪天とラッセル疲れのために本谷の2本のク
ライミングのみで終わったが、誰にも会わない静かなクライミン
グを楽しむことができた。メンバーは、最近ずっと年末年始の山
行をともにしている川井秀哉(塩飽山の会)に、単独でのアイス
クライミングもやっている宮本俊浩(大阪ぽっぽ会)を加えて40
歳代前半の3人となった。
 尾勝谷本谷右俣は、20年以上昔、1978年末から79年の年始に
かけて石田広一氏(クラブアルピノ高嶺)と宮崎敦裕氏(同人稜
嵐)により冬期初登されているが、F1付近(我々のF2だと思われ
る)を大きくを巻いて登っている(山と渓谷490号p. 57 (1979年))。
彼らは1泊2日をかけて稜線に抜けている。その後の記録は見あた
らない。我々は、今回、すべての滝をフリーソロで直登 すること
ができた。中南沢にいたっては夏の記録も全く見あたらない未知
のルートであった。こちらでは高さ90 m級の大滝を発見して初登
することができた。

[川井の感想]
 尾勝谷本谷奥南沢右俣:雪の降る中、ラッセルのつらさと新雪
雪崩の不安を感じつつも、次々と現れる適度な難度の滝の連続は、
適度に緊張感とおもしろみを感じさせてくれた。
 中南沢:本谷右俣よりラッセルと雪の沢の遡航の面倒さがあっ
たが、現れた滝の見事さは圧倒されるものがあった。技術的には
氷好きのひとにはこたえられない滝だろうと思われる。この他に
も、冬期の資料のない口南沢や崩落谷もあり、また遠目にもいく
つかの氷瀑を本谷周辺にのぞむことができた。アプローチはやや
悪く遠いが、それに見合うだけの良いエリアだと思う。

[宮本の感想]
 苦しいラッセルの末に発見した中南沢F1は、幅40-50m、高さ
90mの自分は日本では見たことも無い大屏風氷壁で、右側下部は
シャンデリア状、中段に6級クラス?の氷柱、上段は5級の垂壁2
段、左は4級の安定した氷壁といったバラエティーにとんだ氷瀑
大劇場である。山岡氏リードでF1を登攀開始。1ピッチ目4級+
45m、2ピッチ目宮本5級50m、あとはなめ状の3ピッチを30m。
F2は宮本リード、4級20mで初登完登。
 リーダー山岡によると谷が北向きであること標高、傾斜によっ
て氷瀑の有無が予測できるのだそうで、氏が机の上で地図とにら
めっこして得たアイディアがここに現実のものとなった。この瞬
間に同行できたのは光栄なことである。一時はこの沢には氷瀑な
んて無いのかもな〜?と山岡氏はテンション低く、ラッセルに終
始するのかと思われたこの日懸垂下降4ピッチにもなる中身濃い
登攀となり宮本は初登の味をかみしめて大満足。尾勝谷の渡渉と
流水に足を浸けるラッセルはこりごりだがまた来て6級氷柱を登
るのだろう。

[尾勝谷本谷奥南沢右俣と中南沢のクライミングデータ]
<尾勝谷本谷奥南沢右俣> 
グレード:ルートグレードIV(最難ピッチグレードIV+)
     F1~F8の高度差約400 m
     冬期第2登?(すべての滝を登ったのは初めて?)
     フリーソロ初登
ルート :F1 (20 m, III) 2055 m地点
     F2 (3-4段大滝80 m, IV~IV+) 2145 m地点
            F3 (2段15 m, II~ III) 2230 m地点
            F4 (なめ滝10 m, II) 2285 m地点
            F5 (20 m, IV) 2365 m地点
            F6 (10 m, IV-) 2395 m地点
            F7 (8 m, III) 2420 m地点
     F8 (5 m, II) 2465 m地点
     (標高はおおよその値)
下降  :往路を下山。F5及びF2は懸垂下降。他の滝はクライム
     ダウン。
ギア類 :アイスピトン8本程度あれば良いだろう。
            使用ロープは9 mm径, 50 mダブルで懸垂下降時のみ
     使用。往路を下降するときには、スリングがたくさん
     必要。また、残置してもかまわないアイスピトンも用
     意しておいたほうが無難。

<尾勝谷本谷中南沢>
グレード:ルートグレード IV+(最難ピッチグレードV)
     冬期初登
ルート :F1 (大滝90 m, 1ピッチ目IV+, 2ピッチ目V) 
     2070 m地点
     F2 (10 m, IV) 2170 m地点
下降  :往路を下山。F2終了点から3回の懸垂下降でF1取り付
     き。F1の1ピッチ目終了点の露岩にボルトを1本設置。
ギア類 :アイスピトン8-10本程度。使用ロープは9 mm径,
     50 mダブル

入山口 :尾勝谷本谷出合い(戸台大橋の手前)。橋を渡って、
     林道を上がって行き、林道終点から沢に入る。
時期  :雪の少ない年末〜1月の時期が良いと思われる。
     大量降雪のあとは雪崩の危険性が高いので注意。
地形図 :仙丈ヶ岳(国土地理院1/25000)

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