仙丈ヶ岳/尾勝谷本谷・奥南沢右俣〜中南沢 |
★ 尾勝谷本谷中南沢F1 (90 m) 全景 ★ 尾勝谷本谷中南沢F1の1ピッチ目をリードする山岡 ★ 尾勝谷本谷奥南沢右俣F2 (80 m)全景 ★ 尾勝谷本谷奥南沢右俣をラッセルする宮本 |
みなさん、こんにちは 山岡@地球クラブ(兵庫労山)です。 年末年始の南アルプス・仙丈ヶ岳の北西面に位置する尾勝谷でのア イスクライミングの報告です。 ラッセルに悩まされましたが、未知の谷に入り大滝を見つけて登る ことができました。 尾勝谷は、仙丈ヶ岳の北西面にあり、伊那市から高遠町を経由して 長谷村の戸代方面から入山します。スーパー林道に向かう戸代大橋 の手前を河原におり、そこにある橋をわたって林道をたどります。 多少アプローチの悪い谷ですが、中級レベルのひとがゲレンデを抜 け出し、それなりに静かなしかも充実したクライミングが楽しめる ところです。 ************************************************** <山域> 南アルプス <ルート> 仙丈ヶ岳・尾勝谷本谷・奥南沢右俣〜中南沢 <メンバー> 山岡人志(リーダー、地球クラブ・兵庫労山、43歳) 川井秀哉(塩飽(しわく)山の会・香川労山、42歳) 宮本俊浩(大阪ぽっぽ会・大阪労山、41歳) <記録> 山岡人志 <行程> 2001〜2002年 12月28日(金)戸代大橋手前の尾勝谷出合い(24:00) 29日(水)尾勝谷出合い (8:40)〜林道終点手前 (9:35)〜1620m 中南沢出合い (14:00)〜1700m付近のテント場 (14:30) 30日(木)1700mテント場 (6:00)〜右俣F1 (8:00)〜F3 (9:25) 〜F5 (10:45) 〜F8 (11:50)〜2525 m地点 (12:05)〜テント場 (15:35) 31日(金)1700mテント場 (6:20)〜中南沢F1 (9:00)〜F2終了 (13:30)〜〜テント場 (16:15) 01月01日(土)1700mテント場 (7:05)〜林道終点 (10:15)〜 尾勝谷出合い (10:50) <概要> 今年(2001年末〜2002年)は雪が多く、年末年始の山行場所の 選定に迷っていた。高層天気図のデータを見ると12月に入ってほ ぼ4日周期で天気が変化しており、年末は好天が、年始には大き な寒気団の襲来が予想された。南アルプスなら多少雪が多くとも ましと考え、以前、尾勝谷本谷奥南沢の左俣を登った時に気にな っていた、本谷奥南沢右俣、そして、夏冬とも資料のない本谷中 南沢に入ることにした。さらに計画では、塩沢への継続も考えた。 実際は、予想される悪天とラッセル疲れのために本谷の2本のク ライミングのみで終わったが、誰にも会わない静かなクライミン グを楽しむことができた。メンバーは、最近ずっと年末年始の山 行をともにしている川井秀哉(塩飽山の会)に、単独でのアイス クライミングもやっている宮本俊浩(大阪ぽっぽ会)を加えて40 歳代前半の3人となった。 尾勝谷本谷右俣は、20年以上昔、1978年末から79年の年始に かけて石田広一氏(クラブアルピノ高嶺)と宮崎敦裕氏(同人稜 嵐)により冬期初登されているが、F1付近(我々のF2だと思われ る)を大きくを巻いて登っている(山と渓谷490号p. 57 (1979年))。 彼らは1泊2日をかけて稜線に抜けている。その後の記録は見あた らない。我々は、今回、すべての滝をフリーソロで直登 すること ができた。中南沢にいたっては夏の記録も全く見あたらない未知 のルートであった。こちらでは高さ90 m級の大滝を発見して初登 することができた。 [川井の感想] 尾勝谷本谷奥南沢右俣:雪の降る中、ラッセルのつらさと新雪 雪崩の不安を感じつつも、次々と現れる適度な難度の滝の連続は、 適度に緊張感とおもしろみを感じさせてくれた。 中南沢:本谷右俣よりラッセルと雪の沢の遡航の面倒さがあっ たが、現れた滝の見事さは圧倒されるものがあった。技術的には 氷好きのひとにはこたえられない滝だろうと思われる。この他に も、冬期の資料のない口南沢や崩落谷もあり、また遠目にもいく つかの氷瀑を本谷周辺にのぞむことができた。アプローチはやや 悪く遠いが、それに見合うだけの良いエリアだと思う。 [宮本の感想] 苦しいラッセルの末に発見した中南沢F1は、幅40-50m、高さ 90mの自分は日本では見たことも無い大屏風氷壁で、右側下部は シャンデリア状、中段に6級クラス?の氷柱、上段は5級の垂壁2 段、左は4級の安定した氷壁といったバラエティーにとんだ氷瀑 大劇場である。山岡氏リードでF1を登攀開始。1ピッチ目4級+ 45m、2ピッチ目宮本5級50m、あとはなめ状の3ピッチを30m。 F2は宮本リード、4級20mで初登完登。 リーダー山岡によると谷が北向きであること標高、傾斜によっ て氷瀑の有無が予測できるのだそうで、氏が机の上で地図とにら めっこして得たアイディアがここに現実のものとなった。この瞬 間に同行できたのは光栄なことである。一時はこの沢には氷瀑な んて無いのかもな〜?と山岡氏はテンション低く、ラッセルに終 始するのかと思われたこの日懸垂下降4ピッチにもなる中身濃い 登攀となり宮本は初登の味をかみしめて大満足。尾勝谷の渡渉と 流水に足を浸けるラッセルはこりごりだがまた来て6級氷柱を登 るのだろう。 [尾勝谷本谷奥南沢右俣と中南沢のクライミングデータ] <尾勝谷本谷奥南沢右俣> グレード:ルートグレードIV(最難ピッチグレードIV+) F1~F8の高度差約400 m 冬期第2登?(すべての滝を登ったのは初めて?) フリーソロ初登 ルート :F1 (20 m, III) 2055 m地点 F2 (3-4段大滝80 m, IV~IV+) 2145 m地点 F3 (2段15 m, II~ III) 2230 m地点 F4 (なめ滝10 m, II) 2285 m地点 F5 (20 m, IV) 2365 m地点 F6 (10 m, IV-) 2395 m地点 F7 (8 m, III) 2420 m地点 F8 (5 m, II) 2465 m地点 (標高はおおよその値) 下降 :往路を下山。F5及びF2は懸垂下降。他の滝はクライム ダウン。 ギア類 :アイスピトン8本程度あれば良いだろう。 使用ロープは9 mm径, 50 mダブルで懸垂下降時のみ 使用。往路を下降するときには、スリングがたくさん 必要。また、残置してもかまわないアイスピトンも用 意しておいたほうが無難。 <尾勝谷本谷中南沢> グレード:ルートグレード IV+(最難ピッチグレードV) 冬期初登 ルート :F1 (大滝90 m, 1ピッチ目IV+, 2ピッチ目V) 2070 m地点 F2 (10 m, IV) 2170 m地点 下降 :往路を下山。F2終了点から3回の懸垂下降でF1取り付 き。F1の1ピッチ目終了点の露岩にボルトを1本設置。 ギア類 :アイスピトン8-10本程度。使用ロープは9 mm径, 50 mダブル 入山口 :尾勝谷本谷出合い(戸台大橋の手前)。橋を渡って、 林道を上がって行き、林道終点から沢に入る。 時期 :雪の少ない年末〜1月の時期が良いと思われる。 大量降雪のあとは雪崩の危険性が高いので注意。 地形図 :仙丈ヶ岳(国土地理院1/25000)