チンネ/左稜線・源治郎尾根/T峰/成城大ルート

日程
2001年8月11(土)〜19日(日)
メンバー
(名古屋山岳会)堀場、J
記録
(名古屋山岳会)堀場
写真
なし
ルート図
なし

<山 行 記 録>


堀場@名古屋山岳会です。

8月11〜19日まで夏合宿として剣岳・真砂沢に入っていました。
入山日・登攀日初日といまいちの天候でしたが、
それ以降はよい天気が続き、こんがり焼けて帰ってきました。

新人主体のパーティーのため、たいしたルートには取り付けませんでしたが、
その中で源治郎尾根T峰成城大ルートとチンネ左稜線を報告したいと思います。

源治郎尾根T峰成城大ルート
2001年8月14日
メンバー 堀場、J
タイム BC4:30−源治郎尾根縦走路との分岐点8:00/8:15−上部
フェース基部8:45−取付10:20−ルート終了点14:20−主稜線(縦走
路)15:30/16:00−本峰18:00

 朝は薄明るくなってからの出発。今回の計画は成城大ルートを登り、本峰でビバー
ク。翌日、八ツ峰Y峰フェースの計画なのでビバークセットと水3Lが背中で揺れ
る。快調なペースで源治郎尾根取付へ。しかし、新人Jはまだ雪渓歩きに慣れていな
いのか体力不足なのかアイゼンをつけてもペースが上がらない。
 源治郎尾根は左の尾根ルートから登る。急登をジャングルジムのような潅木の枝や
根につかまりながら登る。新人Jは遅れがち。まだ岩場などで躊躇してしまうよう
だ。
 そんなこんなで縦走路との分岐に着いたのが8:00になってしまった。ここから
しばし上部フェースを観察するが、成城大ルートのラインがいまいち分からない。縦
走路から離れ、ブッシュをトラバースし中央バンドへ。後続パーティーも来ているよ
うだ。少し登ったところで、また壁を観察するがどうもルート図と合わない。ウワサ
どおり取付が分かりづらい。後続パーティーも同じく悩んでいる。話を聞くと彼らも
成城大ルートで、前々日もアプローチしてきたが間違ったラインを登ってしまって敗
退してしまい、再度の挑戦のようだ。1時間ほど悩んでいると別の後続パーティーに
追いつかれてしまう。そのパーティーは以前、成城大ルートを登ったことがあるらし
く「もっと左の方だ。」と教えてくれた。「何〜っ、もっと左!」そういえば先輩も
「思ったよりだいぶ左だ。」と教えてくれてたのに・・・。反省。
 結局、取付は中央バンドを左上していき、チムニー状を越え、さらに草付の斜面を
登ったところにある水の滴る洞穴状のテラスであった。(ルート図にチムニーの記号
を加えてくれれば分かりやすいのに!)
 早速、堀場リードで取り付く。(リードは全て堀場。グレードは堀場の体感グレー
ドです。)1P目はテラス左のV級程度の凹角だが浮石が多く注意が必要。2P目は
右へカンテを越え、凹角を登ると頭上に潅木が見える。その潅木を右から回り込み、
もう1つ上の枯れたような潅木のあるテラスへ。ここがハイ松テラスで名古屋大ルー
トとの分岐点だ。ちなみに2P目はV+級くらい。3P目(W級)はハイ松テラスか
らほぼ真上にあるコーナーを登る。登り始めて15mくらいのところにあるテラスで
はピッチを切らず、さらにコーナーを登り、左に見える凹角に走るきれいなクラック
を目指してトラバース。クラック手前でピッチを切る。(このビレイポイントは日本
の岩場(下)@白山書房の4P目の最初のトラバースの後に登るクラックの手前に当
たるのだと思う。ここまでピッチをのばしておくと、次の核心のパートを1Pで登る
ことができ、さらには安定したテラスがある。)続く4P目(X級・A0)はクラッ
クを使いながら5mほどフリーで登り、ボルト(ピトンだったかな?)に誘われるま
ま左へA0のトラバース。ダイレクトルートのラダーを通り過ぎ、カンテ状を越し、
凹角状を10mほど登ると左にテラスがある。このピッチ、ほぼ45mいっぱい使
い、重いザックを背負っての露出度の高いフリー、さらにはA0ながらほぼフリーで
登ったことで、かなりエキサイトしていた。素晴らしいピッチだと思った。5P目
(W−級)はテラスから右上しハイ松帯を抜け、名古屋大ルートと合流してルートは
終了となる。
 終了点から主稜線までは、左へトラバースしチムニーを登るのだが浮石が多く、
ロープの流れも悪くなってしまうため、スタカットやコンティニュアスでなくロープ
を解いてしまった方が安全かもしれない。
 主稜線に出てからは大休止をとり、本峰を目指す。T峰まではほどなく、U峰まで
も意外に近い。支点に無数にかかったスリングの中から状態のよいスリングを3本選
び30mのラッペルをし、本峰までザレた岩稜を急ぐ。本峰に30分遅れでJが到着
する。着くや否や水を「コクッ、コクッ、コクッ!」と小気味いい音を立てて飲んで
いる。そうとう疲れたのであろうか、その小気味いい音は止まらない。「ん?水の量
は大丈夫なの?」と聞くと、「もう、ないです。」の返事。これには、さすがに呆れ
てしまう。運良く後続パーティーが本峰で休憩していたので残った水をもらうことが
できた。彼らは熊ノ岩にBCを張っていて、これから戻るとのこと。(ありがとうご
ざいました。)
 今夜の寝床は本峰直下源治郎尾根側のテラス。満天の星空を仰ぎながらシュラフカ
バーの中で縮まり、朝を待つ。
 今回が初めての源治郎尾根T峰フェースであり、成城大ルート。取付でのロスが反
省材料。もっと岩を見る目を養わなければ。

チンネ左稜線
2001年8月18日
メンバー 堀場、I
タイム 三ノ窓5:00−取付(スタート)5:50−終了点12:45−池ノ谷乗
越13:45/14:00−BC15:30

 前日、八ツ峰Y峰Cフェース剣稜会ルートを登り、そのまま八ツ峰上半部を縦走し
三ノ窓にてビバークした。
 取付へは三ノ窓前の雪渓をトラバースし、ザレた斜面を下り気味にトラバース。さ
らに、また雪渓に出てトラバースし、チンネ基部のガレた斜面に移りバンドをトラ
バースする。取付はそのバンドがテラスになっているところで、頭上は凹角になって
いる。
 ビレイポイント以外オールナチュラルプロテクションを目指し堀場リードで1P目
(V+級)に取り付く。(リードは4P目以外は全て堀場。グレードは堀場の体感グ
レードです。今回は50mロープを使用し、リンクできそうなピッチは全てリンクし
たので通常の区切り方と若干異なります。)寒さで固まっている体を解すようにゆっ
くり登る。凹角を抜けるとテラスになっている。テラスを左へトラバースし、浅い凹
角を登るとテラスに出るので、そこでピッチを切る。2P目(V+級)はフェースを
登り、通常の5P目に少し入ったバンド状テラスでピッチを切る。(このテラスは正
規のラインから離れているが残置ピトンのビレイポイントがある。通常の5P目はバ
ンド〜ルンゼとなっているが、バンドをトラバースせず直上した位置になる。)ビレ
イポイントでIをビレイしていると、三ノ窓から「あんばよ〜!(←名古屋山岳会の
コール。)」の声。なんと真砂沢のBCから今朝出発してきた北条=新村ルート〜g
チムニーc、dクラック隊であった。「早い!」3P目(W級)はそのバンド状テラ
スから10mほど直上するとピナクルの肩に出る。そしてピナクルを回り込みピナク
ルの裏のフェースを「ノーズのテキサスフレークを小さくした感じに似ているな。」
と思いながら登る。傾斜が緩くなったところでピッチを切る。次の4P目(T級)は
縦走路のようなほとんど平らなピッチで、Iにそのまま行ってもらう。5P目(V
級)はフェースでほぼいっぱいロープをのばし、カムでビレイポイントを作る。6P
目(V級)も引き続きフェースで、ピナクル群の手前でピッチを切り岩角と残置ピト
ンでビレイポイントとした。7P目(W級)はそのピナクル群で、ピナクルを登った
り降りたりでT5に着く。さて、いよいよ左稜線の核心。Iをビレイしている間、小
ハングを観察しナチュラルプロテクションの可能性を探る。小ハング周辺に数本だが
クラックがあり、何とか行けそうだ。そして8P目(W+級)を登り出す。小ハング
手前でエイリアンの赤と黄をセットし、小ハングを越す。そして越したところでキャ
メロットの#0.75をセットし、さらにかぶり気味のフェースは右手のホールドを
手探りで見つけ出し、「ふぉっ!」と体を引き付けガバをとる。少し登りエイリアン
の緑をセットし、一応、Iに向かってガッツポーズ。その後はフェースを登る。9P
目(V+級)もフェースの続き。10・11P目(V級)とリッジを登り、チンネの
頭へ。すると、先程の北条=新村ルート〜gチムニーc、dクラック隊がすでに到着
しており、チンネの頭のピナクルに立って写真を撮ってもらう。Iも続いて撮っても
らい、ビレイポイント以外オールナチュラルプロテクションでの完登。
 しばらく休憩し、2パーティーそろってBCへ。
 今回が初めての左稜線は渋滞もなく快晴の中、気持ちの良いクライミングが満喫で
きた。さすがに日本を代表するアルパインルートと言われるだけのことはあります。

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