4ルンゼ〜芝倉沢滑降

日程
2001年3月3日(土)
メンバー
(埼玉県庁アウトドアファミリー)伊藤孝徳
記録
(埼玉県庁アウトドアファミリー)伊藤孝徳
写真
なし
ルート図
なし

<山 行 記 録>


伊藤です。
3月3日に一ノ倉沢4ルンゼ〜芝倉沢滑降に
行って来ました。
当日の記録はさぞ多いのではと思いますが
4ルンゼの記録はあまり見かけないので
今後の参考にでもなればと思いお送りします。
(少し長くなってしまったので、適当にはしょってください。)
 
行 程:指導センター(4:00)〜(5:20)一ノ倉沢出合(5:40)〜
   4ルンゼ〜(13:00)一ノ倉岳(13:30)〜芝倉沢スキー滑降〜
   (14:30)湯桧曽川出合(15:00)〜(16:30)ロープウェイ駐車場
メンバー:伊藤(埼玉県庁アウトドアファミリー)
 

 届を出し4:00に出発。スキーを履くが、効率がかえって悪いことにすぐ
気が付き、スキーは担いでトレースをたどることにする。トレースはばっちりで
(先行の方には本当に感謝します)5:20ごろに一ノ倉出合に到着。
 すでに何パーティーかが一ノ倉沢をつめているようで、ヘッドランプの明かり
がいくつもゆらめいているのが見える。出合いで休憩中のパーティーや、幽ノ沢
に向かっているパーティーもいて、大盛況の状況に度肝を抜かれてしまう。出合で
トレースをはずすと膝上くらいまで潜る重たい雪。とりあえず4ルンゼ出合まで
行くことにする。白々と夜があけてきて国境稜線が見える。上の方に雲がかかって
いるが、予報だと午前中は晴れというのを信じることにし、スキーを履いて出発。
トレースの横をシール登行していくが、トレースをたどる先行パーティーと同じ
くらいのペースで、トレースの機動力(?)には脱帽してしまう。一ノ沢の先で
累々と重なるデブリ地帯に突入。ここでスキーははずし、抜けたところで再度スキーを
履いて登る。傾斜が増し、直登ができなくなったので斜登行を繰り返していく。
 すっかり夜が明けると稜線の雲もなくなり、青空が広がる。先行パーティーは
全てテールリッジに吸い込まれていく。二ノ沢をすぎたあたりでシールもきかなく
なってくる。坪足に切り替え直登していくが、かなりのラッセルできつい。
 滝沢の出合あたりでほぼ端から端までのクレバスにぶつかり、小休止。幅は1m
程度だが深さが結構あり怖い。スノーブリッジを探し、1歩目を何度か踏むと
穴が空いてクレバスの底が見えた。あわてて後ずさりし次のスノーブリッジへ。
こちらは何とか大丈夫そうなので、いざとなったら背負ったスキーがブリッジに
なることを祈りながらこれを渡る。
 4ルンゼ手前あたりは左岸に沿ってに登り、やがて4ルンゼへ。南面のため
がんがんに日が当たっている。祈るような気持ちでルンゼの中へ。一面同じ傾斜の
雪壁で、どこが滝だか全くわからなくなっている。少し進むと3ルンゼ出合。こちらは
すごい氷瀑。4ルンゼに比べ日陰になっている。
 4ルンゼはラッセルの深い雪壁で、技術的な面ではプレッシャーはないものの、
ともかく雪崩そうで怖い。小豆まめの様な雪粒がひっきりなしにぱらぱらと落ちてくる中、
ダガーポジションやダブルシャフトで高度を稼ぐ。ともかく急がなきゃと思うが
全くピッチがあがらない。ようやっとでF4と思われるあたりにたどり着くが、
このあたりが一番傾斜があり、部分的に氷化していてわずかだが
アイスクライミングとなる。F4上はトポのとおりカール状に開け、傾斜も落ち、
少しほっとするが先はまだまだ長そうでうんざりする。ともかく一歩一歩確実に
ステップを蹴りこみ、高度を稼いでいく。壁に遮られ、ルンゼが大きく右に曲がる
あたりに露岩があり、なぜか雪庇が張り出していてその下がテント2張り分くらいの
平らなスペースになっていたのでそこで休憩。薄雲がでてきているのか、日差しが
すりガラスを通したように弱まってきている。
 途中で水を全て飲んでしまい、のどが渇いて仕方がなかったところだったが、
雪庇からは滴が落ちていたのでこれ幸いにとビニールに受け止めてたまった水をすする。
食欲が全くないが、無理矢理チョコを口に入れ、再び登り始める。やがて傾斜が
強まり、これ以降一ノ倉尾根に出るまで傾斜はゆるまなかった。
 ルンゼは右に曲がったあと、再び直上しているが、ガスが出るとよくわからなかった
かもしれない感じで、はっきりとしたルンゼというよりは、沢の広い源頭部といった
趣になっている。小灌木が出てきたあたりで右の尾根に上がるとそこが一ノ倉尾根の
最上部で、クラストした雪面を一ノ倉岳のピークへ向かう。すっかりばてていて、
5,6歩進んでは休みながら歩いていく。このあたりはすでに傾斜もなく、広い雪面で
通常の尾根歩きのため気がゆるんだのか異様に疲れがでてきてなかなかピッチが
あがらなかったが、ひょっこりと問題もなく一ノ倉岳のピークの南端にたどり着いた。
 ピークを芝倉沢寄りまで少し歩き、ぱったりと座り込む。ともかく精神的な
プレッシャーが強かったせいか、しばらく呆然としたまま何もできなかった。
 下降は芝倉沢をスキー滑降。靴はローバーのスーパーピークで兼用靴のため、
滑りはあまり心配していなかったが、足が疲れでへたっていて何ともおぼつかない。
滑り出しは本来ピークの北端からすぐに沢に入るらしいが、いまいち踏ん切りが
つかず源頭部をまっすぐ横に滑りながら様子をうかがっていると、真ん中をすぎた
あたりで足下の1mくらい下の斜面を斜め下に亀裂が走り、あっという間に面発生の
表層雪崩が起きた。さすがにこれにはぞっとした。(ピークで国境稜線から頂上に来た
山スキーのパーティーとあったのだが、彼らが先に滑っていたら…。それに自分が
巻き込まれていた可能性も十分にあったと思う。)
 結局雪崩の滑り面を滑っていったが、足が踏ん張りがきかず一度転倒してしまったのには
本当に情けなくなってしまった。まあこれが実力なんでしょうか…。
 
 今年は、速攻が必要な「ルンゼ」のクライミングとアプローチ及び下降に機動力のある
「スキー」を組み合わせた、「ルンゼ&スキー」を1本、と思っていて、裏同心ルンゼや裏谷急沢の
ソロをしたりしながら機会をうかがっていたのですが、実際にやってみるとなかなかこのスタイルは
刺激的でおもしろいと思いました。
 ただ、「強靱な体力の坪足ラッセル&シリセード下降」とスキーの機動力とどちらが
有効かと訪ねられたら、答えは今回に関する限りは「?」です。(コースタイム参照…)
 まあ、個人的にはもう少しこのスタイルを実践してみようかな、と思っています。

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