Aフランケ/赤蜘蛛

日程
2000年7月29日(土)〜31日(月)
メンバー
(ARIアルパインクラブ)大野敦子、福島猛
記録
(ARIアルパインクラブ)大野敦子、福島猛
写真
なし
ルート図
なし

<山 行 記 録>


<記録> 大野敦子

<行動記録>
7/29 曇〜小雨〜曇
  4:50駒ヶ岳神社〜(11:30七丈の小屋で雨のため昼寝13:30)〜
 14:40八合目BC
7/30 晴〜曇〜小雨〜曇
  5:10BC〜6:00バンド(休憩・偵察等)〜7:30赤蜘蛛登攀開始〜
  13:40Aフランケの頭〜14:30(?)BC  
7/31 曇〜晴
  7:00 BC〜10:30駒ヶ岳神社(〜15:00深谷)

****
7/28
 21:30に深谷の自宅を出る。早速国道17号の工事渋滞の上、
佐久から先の国道141号は濃霧。眠い目をこすりこすりの夜
移動は全く以て辛かった。2時前に駒ヶ岳神社に着。福島号
を発見。待合せ時間まで仮眠する。

7/29
 予定通り3:30起床。食欲なしでもとりあえず朝食をとる。
4時に合流。4:15に出発する。自信をもって、車できた道を
引き返したのだが、道の分岐に来て間違えていることを知
る。結局車道を登り返すこととなった。本当に申し訳ない。

駒ヶ岳神社への道は駐車場奥にあった。5時頃に駒ヶ岳神社
着。ここから先、延々と緩やかな登りと時折もっと緩やか
な下りという樹林の道が続く。膝の具合が今一つな私には、
丁度良い傾斜だ。

福島氏はどうやら不調の模様。腰の具合はどうなのだろうと
気になって仕方ない。

ゆっくりペース+度々の大休止もあって、11:30に七丈ノ小屋
に到着。疲労はないがとにかく眠い。快適な小屋で惰眠を貪
る。小雨がぱらついてきていて、このままでは根が生えそう
な気配が漂う。どうにか振り切り、八合目へ向かう。睡眠で
突如元気回復の福島氏とは打って変わって、ここまで調子の
よかった私は急に身体が動かなくなった。

14:40頃に八合目に到着。早速テントを張り、通りすがりの
クライマーに、Aフランケの下降点を聞く。明瞭な踏み跡だ。
八合目の岩小屋を見学。これは快適にビバークができそうな
立派な岩小屋であった。

"明日、天気が悪かったら、取付きを見るだけにしよう"
やはり腰の調子が悪いのか、計画縮小の話しかあがらない。

夕方になって雲が切れはじめた。翌日の好天と福島氏の腰+
疲労の回復を祈りつつ就寝。

7/30

<アプローチ>
 八合目の岩小屋は、鳥居を過ぎてテント場になりそうな
広場を二つ過ぎた先にある左手の踏み跡を辿ってすぐの所
にある。

 岩小屋前の踏み跡は赤石沢を見て二手に別れている。A
フランケは左の踏み跡を下る。踏み跡は明瞭で要所要所に
赤や黄色のテープもあり、それ程迷うことがない。FIXロー
プは随所にあり、わざわざロープを出すこともなかった。
やや広いガレ場を下り、"あれ?踏み跡は?"と思った箇所
があったが、これは(下を見て)右手の岩沿いの草叢にうっ
すらと踏み分けた跡を見つけた。導かれるとしばらくFIX
を辿ることになる。FIX終了点で踏み跡は二手にわかれる。
そのままバンド状の踏み跡を辿ると草原に出る。ここから
先に進むと下部スラブ上のバンドだ。
もう一方は急下降で、遠望すると木にロープがひっかかっ
ている。多分懸垂しようとして落してしまったのではなか
ろうか?この踏み跡は岩小屋へのアプローチと思われる。

昨年は計画段階で散々脅かされたアプローチであったが、
迷うことなくBCから1時間もかからなかった。

草原は傾斜も緩く、安定している。
"ここでハーネスつけようか?"
取付きの偵察ではなく、登攀ということだ!腰も大丈夫
なのかもしれない・・・と、ホッとする。

ここで最後のトイレ休憩。一時間の運動でお腹もすいて
しまい、食事をとった。

雲の動きは早く、青空がどんどん広がる。もうワクワク
してならない。

FIXで下降しカンテを周り込むとバンドに踊り出た。ドド
ーンと広がる大きな壁に圧倒される。青空と白い雲、そし
て花崗岩の壁、、、それも他のパーティーの気配すらない
という独占感を存分に味わう。

すぐに取付きが目に付いた。ハーケン二つ。木元さんから
のアドバイス通りだ。(但し、今回はカラビナ2、環付1、
スリング1の立派な残置まであった。回収はしなかった。)
しかし、上部のV字ハングが見えず、確信が持てない。

さらに左手、左手と壁を偵察する。V字ハングに見える所
は随所にある。困ったものだ。

福島氏は更に左へと草付のバントをトラバースしてゆく。

 私は最初に周りこんだカンテが恐竜カンテと確信。白稜会
のラダーを見つけることでやっと先程のハーケン二つが赤
蜘蛛であると確信できた。

福島氏に連絡。取付きからV字ハングは見えないが、バンド
ぎりぎり後方に下がると見えるとのこと。

早速、登攀準備をする。

<赤蜘蛛登攀>
1P目 A1 25m 大野
 "ルートをみつけたから最初にリードしていいよ"との嬉し
 いお言葉。
 偶数ピッチの方がおもしろそうだが、奇数ピッチは恐竜
 カンテがあるし、フリーもV 40mというピッチがあるし・
 ・・まぁいいか、と取りつく。
 荷物が重いなぁと感じる。雲二以来、残置不信で思い切り
 が悪く、時間がかかってしまった気がする。

2P目 V  45m   福島
 快適なフリーのクラック。一番ステキなピッチです。
 F:"今、ロープは何メートル出てる?" O:"半分位"
 ロープはさらに延びていく。
 O:"あと10m!" 僅かに延びて解除のコール。
 早速フォローで登る。岩は硬くてクライミングの楽しさを
 満喫できるよいピッチだ。クラックはフットジャムがよく
 決まる。重荷もあってジャミングの足はとっても痛い(^^)。
 一息で登るにはやや辛く、途中でA0休憩をしてしまった。
 アルパインは体力であることを痛感。
 明瞭なビレイポイントを越してさらにロープは延びている。
 ここがきっと25m位だったようだ。さらにクラックのフリー
 が続く。
 要所にハーケンが打たれていたが、一箇所キャメ1番でラ
 ンナー。途中でピッチをきっていた。

3P目 A1 15m 大野
 福島氏にIVフリーの部分を食われてしまったようだ(^^)。
 そのままV字ハングに行ってしまおうかと思ったが、気持ち
 を押さえてルート図通りにピッチを切った。

4P目 IV A1  40m 福島
 連打の残置に導かれて、V字ハングの左手を抜ける。大バン
 ド手前で僅かにフリーが混じる快適なピッチ。
 
大バンドは安定しており、ここで食事休憩。背負ってきた水が
おいしい。
この頃から上昇気流でガスってきた。

5P目 V? (A1?) 40m 大野
 やっと面白そうなピッチがきた〜!はずであった。。。キャメ
 1番を決めて短いクラックのフリーの先、さらにクラックへ・
 ・・というのが正規ルートと思われるのだが、抜け口の木が邪
 魔に見え、残置に導かれ左手へまわる。体感III、、、すると目
 の前に明瞭なビレイポイントが現れる。まだ全然登っていない
 のに!
 恐竜カンテ側壁にあるクラックは見事なエイドラインで、これ
 が赤蜘蛛と確信できる。・・・が、40mのVはどこに?まだ半分
 もロープが延びていない。
 壁にある上部のあぶみビレイポイントへは25m位で届くような
 気がしてきた。(この読みが甘いのは岩が大きくて距離感がつ
 かめないため・・・と言い訳しておきます。。。)
 O:"この先、もうちょっと行ってもいい???"
 と了解を取り、エイドに突入。さてカムの人工・・・というと
 ころで"あと10m!"のコール。ビレイポイントはまだまだ先に
 ある上、元々フリーのピッチの積もりで登り始めたためカムを
 充分持っていなかった。さらに先に進むとカム切れでビレイポ
 イントが作れない。キャメJr2個と残置ハーケン1で泣く泣
 く途中でピッチを切って、あぶみビレイ。でも自分でセットし
 たカムであぶみビレイというのは初めてだ〜とちょっぴり嬉しい。
 (反省してます。。。)

6P目 A1 25m 福島
 ピレイポイントの最上部のカムにあぶみで立ち込み、もう一手
 Jrを利かせると残置スリング。上部でもう1-2ポイントカムの
 人工が入る。福島氏はカムの人工&あぶみビレイは初めてだった
 とか。ここでパラパラと霧雨が降り出した。

7P目 IV A1 30m 大野
 いよいよ恐竜カンテ。クライマックス!とはいえ快適なA1。
 抜け口の数手がIVらしい。
 福島氏によると、ここのピッチの人工は、やや遠いとのこと。

8P目 III A1  35m  福島
 もう終ってしまうのだなぁと名残惜しかった。
 ビレイポイントから左に周りこみ、IIIの快適な岩を登ると、
 快適なA1。ラインから右に少し離れたところに新品同様のソウ
 ンスリングが草に引っかかっていた。トラバースして回収。

9P目 II〜III?  45m 大野
 ロープを外そうか迷ったが、重荷ということで、気をぬかず
 にそのままビレイしてもらうことにする。
 あてにした木が不安定だったりして、難しくはないが、ロー
 プがあると安心といったところであった。安定した樹林帯に
 入って解除。気分は登攀終了。簡単にギア分けをしてロープ
 をしまう。
 樹林の明瞭な踏み跡を辿ると岩小屋発見。ここには同士会の
 デポがあった。Aフランケの頭は樹林で覆われて視界なしの
 ようだ。

〜〜〜〜〜

 しばらく進むと見たことのある場所が・・・。朝通った踏み跡
 に合流したようだ。・・・ということは随分と登り返すことに
 なることがすぐにわかり、どーっと疲れがでる。
 登攀中には"この調子なら、このままBフランケ赤蜘蛛を登ろう
 かな・・・"
 登攀終了直後には、"まだ昼過ぎだから、Bフランケの偵察もし
 ようかな・・・"
 などと思っていたが、この登り返しでそのような気持ちは消えた。

 霧雨の中、テントに到着。同行のお礼を込めてしっかり握手。

 "これからどうする?"の問いかけの選択肢は、もはや濡れない
 ようにテントに入る・・・ことしか考えられなかった。
 福島氏は、偵察の打診をしたようであったが。。。
 もしかすると一日早い下山の打診だったのかもしれない。

 残り少ないお酒を味わいながら、登攀の満足感にひたる。
 今の私にとって、本当によいルートだった。

 明日は晴れたら甲斐駒のピークにでも行こうか・・・と考え
 つつ眠りにつく。
 
 20時頃に人の声。一般道を探している模様。さらに21時頃、
 どうやら先程の人達が道を間違えて戻ってきたようだ。

7/31
 4:30起床。ガスで視界が悪いのでピークハントは中止。
 のんびり食事。次第に南の空の雲がきれてくる。
 7:10に下山開始。20分で七丈ノ小屋。さらに20-30分で五合小屋。
 下りは歩いても早い。休憩をとりつつ、膝をいたわりながらのん
 びり下山で11時前には駐車場であった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

今年は、大きな壁・長いルートを登りたいと強く思っていた。
きちんとトレーニングをして、しつこく目標の計画に拘りたい
と思っていた。

今年1月に福島氏に打診。回答を得るのに3カ月。以降、トレ
ーニングを重ねる予定であったが、結局一回顔を合わせただけで、
当日を迎えることとなった。

私は3ピッチ目を過ぎたあたりから、色々な想いが込み上げて目
がうるんでしまっていた。寝る時も、帰路車中でも、甲斐駒を登
れたことが嬉しくて嬉しくてならなかった。帰宅して二日たった
今でも何も手につかないのである。
初めて見たこの巨大な岩場は、憧れるに値するすばらしいもので
あった。
にっこり笑顔で登攀できて、我々にとって易し過ぎず、難かし過
ぎずの手頃さだったAフランケ赤蜘蛛。
心がヒリヒリするような緊張感がなくとも、これ程迄に充実感が
味わえる山行ができるとは。
山の充実感はグレードでは測れないということを改めて思い知った。
そしてこういう山を重ねたいとも思った。


<記録> 福島猛 甲斐駒ヶ岳/赤石沢の大きな自然の中、Aフランケ/赤蜘蛛ルートの登攀を楽しみ ました。(^^) 花崗岩のクラック沿いの快適なフリー。緊張感のあるカムを使ったエイド。 現在の私にとって(多分大野さんにとっても)、簡単過ぎもせず、かといって難し 過ぎもせず、ちょうど歯ごたえのある素敵なルートでした。 ================================================================================ 7月29日(土)入山(黒戸尾根)[曇り時々晴れ時々雨] -------------------------------------------------------------------------------- 竹宇駒ヶ岳神社[04:50]〜七合目(七丈小屋)[12:30/13:30]〜八合目[14:40] -------------------------------------------------------------------------------- 私は何故か非常に調子が悪い。頭がくらくらする。昨晩あまり寝てない所為か、歩き ながら何度も寝てしまいそうになる。足が重い。腰が張って痛んでくる。腿やふくら はぎがつってくる。 久しぶりの重荷の所為だろうか。。。ヘルニアから復調しかけの腰には、こんな重荷は まだ無理だったのだろうか。。。くらーい気持ちになる。。。(;;)(;;)(;;) 私の足取りが遅いため大野さんには非常に迷惑をかける。私はへろへろの状態で、 かなり遅れて七丈小屋着。 気が付いたら眠っていた。小屋の人に起こされる。30分以上は熟睡してたようだ。 すごく頭がスッキリとしてた。体もなんだか軽くなったようだ。 ここから明日と明後日分の水を各自6リッター以上持ち上げる。 水は買わないといけないと思ってたのだが、七丈小屋の外の蛇口から水はじゃんじゃん 出ていて自由に取ることが出来た。また、水を運ぶためのペットボトルもここで自由に 借りることが可能だった。 水の補給をするとザックの重さは35KG以上になった(ように感じただけで実際の 重さはよく分からない。。。) 八合目に向かってとぼとぼと歩く。何故か七合目から八合目までは、たいして息が 荒らくなるでもなく普通に歩けた。どうやら調子が悪かったのは寝不足の所為だった みたいだ。 七合目から1時間足らずで八合目に到着。付近を偵察後、縦走路脇にテントを設営。 ================================================================================ 7月30日(日)Aフランケ/赤蜘蛛ルート登攀[晴れ時々曇りのち曇り時々小雨] -------------------------------------------------------------------------------- 八合目[05:10]〜Aフランケ取付[06:00]〜赤蜘蛛ルート登攀開始[07:30] 〜大テラス[09:30/10:00]〜登攀終了、Aフランケ頭の岩小屋直下[13:40] 〜八合目[14:30] -------------------------------------------------------------------------------- 朝4時過ぎに起床。腰が痛くて動けなかったらどうしようと心配していたが、張りや 違和感はあるものの大丈夫そうだ。 食事を済ませAフランケ取付へ。初めての場所であり、アプローチに多少の不安が あったが、フィックスロープやテープが沢山あり、迷うこと無くAフランケ取付の バンドへ。 赤蜘蛛ルートの取付の確定にしばし手間取る。 大野さんが取付を見つける。取付の前からはV字ハングが見えない。1段草付きを 下がるとV字ハングが見えた。私もここが赤蜘蛛ルートの取付だと確信。 <1P目、大野リード> 単調な人工。只のアブミの掛け変え。 <2P目、福島リード> 凹角内の綺麗な1本のクラック沿いのフリー。20mあたりに小テラスがあり、残置 支点、残置スリングがあったが、そこは飛ばして、次の小テラスまでザイルを40m強 伸ばす。このピッチは途中数度ヌンチャクを掴んで休憩してしまった。(^^;;; <3P目、大野リード> 凹角の左の面のクラックに連打されたハーケンでの人工。そのままV字クラック直下へ。 <4P目、福島リード> V字ハングから大テラス。何ということもない簡単で快適なハング越え。 <5P目、大野リード> 大テラスから恐竜カンテ側壁のクラック沿いを途中まで。カムでビレーポイントを作り、 ハンギングビレーとなる。 <6P目、福島リード> さらに側壁をクラック沿いに恐竜カンテ直前のビレーポイントまで。カムは5P目の ビレーポイントで使っているために少ない。俺は落ちないんだと自分に言い聞かせながら アブミの1段目に立ち上がり、思いっ切り手を伸ばしてカムをセット。なんとかカムを 節約しようとする。ビレーポイントが近づくと、残置が増えてきて一安心。 <7P目、大野リード> A1で恐竜カンテを右に越える。大野さんは余裕を持って越えていった。私にはボルト の間隔が遠くて一苦労。 <8P目、福島リード> 途中に1個所ボルトラダーがあるが何ということもなくザイルを伸ばして草付きへ。 <9P目、大野リード> ノーザイルではちょっと嫌らしい草付き。いっぱいにザイルを伸ばしてAフランケの 頭の岩小屋のすぐ下まで。 胸一杯の充実感と満足感、そして心地好い疲労を感じつつ(なんでAフランケの頭 から縦走路までこんなに遠いんかと少し不満も抱きつつ)、大汗をかきながら八合目 の縦走路脇のテントへ。 ================================================================================ 7月31日(月)下山(黒戸尾根)[曇り時々小雨のち晴れ(昨夜半は一時風雨)] -------------------------------------------------------------------------------- 八合目[07:00]〜七合目(七丈小屋)[07:20]〜竹宇駒ヶ岳神社[10:30] -------------------------------------------------------------------------------- 朝4時半過ぎに起床。テントから出て様子を見る。1面のガス。黒っぽい雲も見える。 雨もパラパラ降っている。5時過ぎ、東の空は雲も少なく晴れ間も見えはじめてるが、 西の空は相変わらす雲が濃い。甲斐駒のピークはガスに隠れて見えない。ピークを ピストンしてから帰る予定であったが中止とする。 テントでのんびりとお茶を飲み、食事を済ます。またまたお茶を飲んだりしつつ、 だらだらする。 テントを片付け、7時過ぎに下山開始。 休憩をはさみつつゆっくりと黒戸尾根を下る。 ================================================================================ MEMORANDUMS ================================================================================ (注)以下のメモ中のルート図とは "日本の岩場" のルート図のことです。 <八合目の縦走路脇の岩小屋> 七合目から重荷で1時間ほどで石の鳥居がある。ここからは傾斜がゆるい尾根状だ。 鳥居から10〜20mほどでちょっとした広場。ここでテントを張ることができる。 広場を抜けて縦走路を5mかそこら行くと右手に5人用テントが十分張れるような とても整備されたカンジの空地がある。我々はここにテントを張った。 その地点の縦走路から左手斜め前方(赤石沢側)を見るとかすかに青白っぽいペンキ でマーキングされた大きな岩がある。それが八合目の縦走路脇の岩小屋。 この岩小屋は洞窟状でちょっと湿っぽいが快適そう。 尾根が岩頭中の急傾斜になるまで一般縦走路を行くと行き過ぎである。 <八合目から> 八合目の縦走路脇の岩小屋の目の前から踏み跡は右と左に2本ある。右の踏み跡が 奥壁の取付へ、左(左というよりむしろ岩小屋から真っ直ぐ下に向かうような感じ) の踏み跡はAフランケ/Bフランケの取付へ向かう。 縦走路脇の岩小屋からは一旦は左手にしばらく歩く。それからあとは下へ下へと 下っていく。そして途中からは若干、右へ右へと行くような感じだった(?)。 フィックスやテープの目印が豊富にある。明瞭な踏み跡は沢山あり、どれが本物か よく分からなくなる。フィックスやテープが50mも出てこない場合、たとえ踏み跡 が明瞭でも、道を間違えているかもしれない。 Aフランケ取付へのトラバースにはテープなどの目印は無い。しかし右手を見ると 草付きには明瞭な踏み跡がある。 我々の場合、テープなどの目印が無くなって、もっと下るのかどうなのかと思った ときに右手の草付きに明瞭な踏み跡を見つけることが出来た。 <Aフランケ基部の岩小屋> 我々は下部スラブの上部のAフランケ取付のところに直接向かった。それで下部 スラブ帯の下のAフランケ基部の岩小屋の様子や、基部からのアプローチの状況は 分からない。 <取付> 赤蜘蛛ルートの取付からはV字ハングが見えない。1段下がると見える。 3〜4mほど右隣りが白稜会ルートの取付点でハーケンかボルトが横並びに2本ある。 赤蜘蛛ルートの取付も同様にハーケンかボルトが横並びに2本。 我々が取り付いたときは赤蜘蛛ルートの取付には残置スリングが流動分散で綺麗に設置 してあり、管付のビナまで残置してあった。 また、白稜会ルートの取付点のすぐそばの岩の割れ目にはザイルが1本残置してあった。 <1P> 単調な人工で取り立てていうことは何もない。カムは不要。只のアブミの掛け変え。 <2P> ルート図では40mのジェードルとなってる。凹角内の綺麗な1本のクラック沿いを 登る。私は体を左に振ってレイバックで登る部分が多かった。私は苦手だがジャミング も決まりそうだ。 ボルト、ハーケン等の残置は結構あるので、A0なら何ということも無いつまらない ピッチになりそう。フリーなら赤蜘蛛ルートで最高に気持のいいピッチになる。 20m弱程登ったところで小テラスがあり、残置支点、残置スリングがある。ここで ピッチを切る方がベター。 (注)ここで、ピッチをきると、次の40mで、ルート図でいうところのV字ハング の下まで行ける。 さらにルート図通りに20m強(1P目の終りから40m程まで)進むと、ハッキリ しない小テラスがあり、ここにはクラックの右横に上下に1m位離れた残置支点に 適当な荷重の分散を考えてない古い残置スリング。 もしルート図通りにここでピッチを切るなら、クラックの左横にも残置の支点がある ので、残置のスリングは無視して、クラックの左右の2つの支点を使う。心配なら クラックにはキャメロットの0.75(多分0.75、ヒョッとしたら1かも)がガッチリと きまる。 私はこの40m(ルート図の2P目)で、1個所だけ、キャメロットの1(多分1だった と思う。もしかしたら0.75かも)でランニングを取った。 フリーの力次第で残置支点のみでも大丈夫だとも思し、もっとたくさんのカムが必要 かもとも思う。 このピッチのクラックのサイズはキャメロットの0.75から1程度。 <3P> 2P目までは、ずっと凹角内のクラックをフリーでぐんぐん登るが、ここからは凹角の 左の面のクラック(凹角内のクラックとは別のクラック)沿いを人工。支点はクラック にハーケンが豊富に残置してあり、カムは不要。 <4P> V字ハングから大テラス。何ということもない。カム不要。只、ザイルが屈曲するので、 ランニングを取りすぎないように。私はV字ハングはランニングは3個所だけにした。 またここではランニングは長めのスリングを使ってザイルが擦らないようにする。 大テラスはかなりでかい。大きな木が数本あるので、そこでビレー出来る。また、岩 にも綺麗なリングボルトがある。大テラスは前後の幅は2〜3m位。左右は10m以上 はある。 5P目のスタート地点は大テラスの右の方。我々はビレーせずに5P目のスタート地点 までてくてくと4〜5mほど歩いて移動。 <5P> ルート図では凹角から凹角となってる。どちらの凹角にも残置はない。どちらの凹角も 内部にクラックが走っている。 最初の凹角ではキャメロットの0.75か1でランニング。 大野さんは次の凹角は登らずに左手のカンテから行った。カンテには残置がありカムは 不要。 もしここも凹角を行くなら、キャメロットの0.5か0.75が必要になりそう。 (注)ルート図では40mとなってるが、このピッチは20m程度。ザイルが半分 近く余った状態で、恐竜カンテ側壁のスタート地点につける。 <6P> 恐竜カンテへと側壁をクラック沿いに直上。 最初の10m程で、キャメロットの0.75(だったと思う)を1つ(か2つ???)。 結構残置はある。 次の15〜20mは残置が減ってくる。キャメロットの0.5とエイリアンの下から4番目 を一つずつ。 この中間部では、リングボルトのリングの溶接部が今にも切れそうなボルトがひとつ。 リングをあてにしないで3mmスリングをタイオフした。 後半の10m程は、また残置が増える。カムは使わなくとも大丈夫な気はしたが、 1個所エイリアンの下から3番目を使って楽をした(一段目に立たないで済んだ。) このクラックは下から見ると、全てキャメロットの0.75か0.5のように感じたが、実際は 少し少しではあるが、クラックの幅が上部に行くほど狭いようだ。 また、嫌だとは思いつつ結構古いお助け紐のような長い残置スリングも使った。これら の残置スリングが無ければ、もっと沢山のカムが必要になったと思う。 このピッチの終了点はクラックの右横1m位のところで、ボルトが3本打ってあり、 残置のスリングも沢山あって明瞭。新たにスリングで流動分散をやるなら、240cm か300cmの長さのスリングがいる。ロング1本とショート2本を連結して使った ような気が。。。(それかロング2本とショート1本だったかも)。しかし、ここの 残置はそんなに古くない。そのまま使っても良さそうではある。 <7P> 恐竜カンテを右に越える。まさにA1。 恐竜カンテを右に越えるまでに1個所非常にボルトの間隔が遠い。私だとアブミの1段 目に立ち上がって少し爪先だちでぎりぎり届く。 ここは大野さんのリードだが、大きな彼女にまかせて良かったと感じた 恐竜カンテを右に越えるまでは、ボルトの抜けたあとが無数にある。フリーなら11台 後半から12のホールドの少ない垂直のフェースと言った感じ。。。 湯河原幕岩の伊豆の踊り子のことを(まるで違うのだけれど)思い出した。 恐竜カンテを越えてからも若干ボルトの間隔は広め。 ボルトが新たに1本でも抜けると私には越えられない。ボルトを打つしかない。 リスのないフェースからカンテを越えて後またフェースだけにカムもハーケンも使え ない。残置のボルトが頼りだ。 ボルトの抜けたあとを利用するカムのようなものがあるらしい。それが使えたら非常に 楽になりそう。。。 <8P> 適当に簡単なところをしばし(10mか15m位かなあ?)登ると、右手に5.10台前半 のような感じの10mかそこらの岩場。ここをボルトラダーで何ということもなく登る。 あとは適当に多少草つきの中をがんがんザイルを伸ばす。 <9P> ルート図では2〜3級の草つきとなってるけどノーザイルで行くには嫌らしい。我々は ここでもザイルを使って登った。いっぱいにザイルを伸ばすとAフランケの頭の岩小屋 のすぐ下に出た。 <八合目に戻る> Aフランケの頭から八合目の縦走路までは思ってたよりもずっと遠い。40分以上 かかった。疲れてたから遅かっただけで、普通に行けば20〜30分程度かな(?) <ハーケン> 大きめのクラックと言うことで、ロストアローとアングルを各自2つずつ計8個持参 したが結局使わなかった。 ロストアローやアングルが使える場合はエイリアンの小さいのが使えるかもしれないし、 逆に小さいクラック用にバガブーやナイフブレードを持っていっても良かったかもしれ ない。 実際に、残置はいわゆる普通のハーケンが多く、ロストアローやアングルのような少し 大きなクラックに使うようなものは無かった。 <残置のハーケン> 残置のハーケン類はかなり深く入ってるものがある。 アブミの先のカラビナが入らない場合がある。私はそういうハーケンには3mmロープ を結わえて、それにアブミをかけた。 大野さんのアブミは先にフィフィがつけてあるので、そんなことをしなくても簡単に アブミをかけることが出来たようだった。

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