黄蓮谷/左俣 |
今回の当会の正月山行は、当初6〜7人で左股から奥壁への継続を予定していた。( 寺田は当初より左股のみで下山予定)しかしY2K問題で正月も出社や自宅待機の会員 が続出。結局2000年のスタートを飾る山行が、3名で左股のみといういささかさびし いものとなってしまった。
★ 写真集
12月29日(水)晴れ
会社の納会終了後、速効で帰宅。今年は注がれるままにちょっと飲みすぎたようだ 。家に帰ると、かみさんと息子が実家に帰るところだった。夕食を済ませ、荷物をク ルマに積み込む。19:30出発。行き付けのスタンドで燃料補給。20:00台東区の雑賀 宅。20:15西片と待ち合わせのお茶の水到着。西片が遅れて20:30現れた。
代官町から首都高に乗り、一路中央道を目指す。道もそれほど混んでなく、22:15 韮崎インター。20号線のコンビニで食料とアルコール補給。23:00竹宇駒ケ岳神社の 駐車場に到着した。すでにクライマーのクルマやテントでにぎわっていた。さっそく 後席をフルフラットにし、宴会モード。明日からの山行に思いをはせ、24:00シュラ フにくるまった。
12月30日(木)晴れ
6:00起床。のんびりと身支度を整え7:50出発。ザックが肩に食い込む。それにし ても異常に暖かい。刃渡りの下あたりから雪が現れてきた。12:00刃渡り。岩の上に はほとんど雪もなく難なく通過。13:40五合目小屋到着。登山客でにぎわっている。 雪が少なく飲料水を集めるのに苦労しそうだ。14:10五合目小屋出発。小屋の裏から 続く渓谷道を下る。昨年下った時は氷化した雪が乗っていてアイゼンをガリガリ言わ せて下ったのだが、今年は雪もなく快適に谷まで下りることができた。フィクスロー プが何個所かあり危険な部分も有るが、赤テープが整備されており迷うことはないだ ろう。
千丈の岩小屋付近はすでに先行パーティで満室だ。沢筋まで下り左岸の巻き道の樹 林帯の中に雪のない幕場を発見。今宵の宿はここ「千丈の滝上リバーサイドホテル」 とする。暖かく沢から水も汲めるので快適この上ない。15:15テント設営。19:00就寝。
12月31日(金)晴れ
5:00起床。身支度に手間取り6:50出発。すでに何パーティーかに先行されてしま った。最初の小滝は滝壷が凍っておらず、近づけない。7:00坊主の滝。よく凍って いてかなりの迫力だ。すでに何パーティか順番待ちをしている。
7:50西片のリードで登攀開始。滝の落ち口でピッチを切る。雑賀・寺田が同時にフ ォロー。アックスが心地よく決まる。西片を乗り越え2名同時にノープロでナメ滝を 登る。8:41滝上。さらにコンテでしばらく登り、15メートルII級の滝を越え9:00二股到 着。右股も左股もともに貧相で、上部で発達してるとは思えないほどだ。
ここでロープを結び直し雑賀のリードで3段50メートルの滝を越える。10:35チムニー滝 。50メートルII級と20メートルII級の2つの滝を越え、しばらく行くと目の前にルートの核心 、60メートルの大滝が現れた。
で、でかい!第一印象はそのでかさに圧倒された。落ち口は細く、裾が大きく広が っている。まるで純白に淡いブルーが入ったウェディングドレスの様だ。その美しさ と迫力に、期待と不安が入り交じる。後輩二人にこの滝をリードすると言った手前、 今更引くことは出来ない。しかもこの滝を登るために右手には今シーズン新調したコ ブラ(バイルタイプ)、左手はナジャ(アッズタイプ)足はランボー・ラピッドの米・ 仏・伊NATO軍セット?言い訳は出来ない。氷瀑を観察すると、向かって左は出だしか ら垂直だが氷結状態が悪く登れそうにない。一番右は斜度が無さ過ぎて、面白くなさ そうだ。先行パーティの痕跡に従い、中央右寄りの上部数メートルが垂直の部分にル ートをとることにする。さすがに全装背負っては辛いので、空身で登らせてもらう。
13:30寺田のリードで登攀開始。斜度がきつくなる部分に最初のスクリューをねじ 込む。2つめ3つめとふくらはぎがつらく、テンションが入る。核心部の下に4つめの ランニングを取り、ちょっと休憩後、意を決し登り出す。右手のコブラは一発で決ま るのだが、コブラと比較すると昨シーズンの盟友・ナジャが急にプアに感じるから不 思議なものだ。落ち着けという心とは裏腹に、左手は小指や薬指が当たるのもお構い 無しに、力任せに叩き付ける。途中でプロテクションを取る余裕などない。どのくら い時間がかかったのだろうか?目の前に集中し、両腕が辛くなってきたころ、斜度が 緩くなった。やった!核心を抜けた!
ロープの長さから、ここがビレイポイントだろう。カッティングで足場を作り、ス クリュー3本とアックス2本でアンカーをセットした。西片の記録によると50分かかっ たとのこと。
セカンドの雑賀を確保中、何と雑賀はロープ中央をピックでさしてしまい、ロープ 中心の白い部分がでてしまった。その部分を巻いてチョン掛けにしなんとか事無きを 得た。雑賀にはさらに上部の安全な部分まで9ミリシングルで行ってもらった。
ついで寺田のザックを荷揚げし(ロープが凍っていて、これが結構効いた)サード の西片を引き上げた。上部ナメ滝の終了点に3人が顔を揃えたのは16:30だった。
あたりはにわかに暗くなりだした。西片は七条小屋まで行ってビールと初日の出を 拝みたいと言ったが、風邪で体調の悪い雑賀と、2時間近くビレイ点にいて体中冷え てしまった寺田は幕営を提案。幕場を探す。大滝を巻いてきた後続の2人組みが、「 巻き道に岩小屋が有るので、一緒に張りませんか」と言ってくれた。有りがたいが狭 いので遠慮する。沢の中央だが大岩の陰にフラットなスペースが有った。雪も5センチほ どの厚さでクラストしているので、雪崩の心配はないだろう。ここを今宵の宿とする 。17:10テントを張り終える。ゆっくり晩飯の支度をし、今日一日の行動を振り返る 。1999年を締めくくるにふさわしい、充実したクライミングだった。21:19就寝。韮 崎の街明かりだろうか?下界の明かりがちかちかと美しい。夜半風が吹いた後、サー っとスノーシャワーが来た時、どきっとした。
1月1日(土)晴れ 5:30起床。昨日はほとんど風がなかったが、今日はちょっと風が強い。後続パーテ ィに昨日気遣ってくれたお礼と、新年の挨拶をしに行く。大阪から来た2人組みとの こと。8:00出発。最後の垂直の滝は、岩に薄く氷が張り付いているようだ。先行パ ーティの痕跡があったが、また予想外に時間がかかるのも問題なので、後続と一緒に 巻くことにする。あ〜また宿題が一つ増えてしまったな。2000年最初のダブルアック スが、巻きのナメ滝2〜3手というのは情けない。左岸の岩稜とブッシュ帯を抜け9 :00三俣。あたりは源頭の様相を呈してきた。ここから左俣にトラバース。踏み後を 頼りに、もなか状の沢筋を登り、うっすらと雪のかぶった這松帯をトラバース。稜線 はもう目の前だ。10:50西暦2000年新年のご来光を拝む。10:50八合目の稜線上にあ る鳥居の真下に飛び出した。
縦走者と言葉を交わし、ガチャの整理。11:40七条小屋。甲斐駒に来るたびお世話 になっている小屋の主人に新年の挨拶をすると、我々3人に缶ビールのお年玉。さら に小屋からもう一人出てきて、私のコブラを肴に新旧アイスギア談義になってしまっ た。後ろ髪を引かれる様に12:15出発。12:57五合目小屋着。アイゼンをはずし、ヤ ッケの上下を脱ぐ。ここまで下ると風もなく暑いぐらいだ。大休止後、13:30出発。 アルコールが入ったせいか?体調が良いので、風邪でバテ気味の雑賀を西片に任せ、 がんがん下る。10月に来たばかりの道なので、途中キャンディを一個口に入れるため 立ち止まった以外、ノンストップで下った。15:37竹宇駒ケ岳神社到着。西片と雑賀 を待つ間、初詣を済ます。初詣客に奇異な目で見られてしまった。
16:30荷物の整理が終わったところで、昨年も立ち寄った薮温泉に移動。その後2 0号と韮崎インター分岐の交差点にあるラーメン珍珍珍(さんちん)で夕食。18:58 韮崎インター、20:05八王子インター。八王子ICI前で西片をおろし、21:15雑賀宅。 自宅に戻ったのは21:45だった。
今回の反省点は、やはり何事にも時間がかかりすぎたということ。朝の支度を始め 、行動中の個々の動きも、もっとスピーディに行わなければ...。しかし暖冬で氷 結状況が懸念されていたが、1999年最後の日に大滝をのぼることが出来たので良しと しよう。