8000メートル峰無酸素登頂の日本人最高齢記録を更新/近藤和美

 日本勤労者山岳連盟を率いて57歳の今夏、パキスタンのナンガパルバット(8125メー トル)に登頂した。8000メートル峰の無酸素登頂で日本人最高齢記録を7年ぶり3歳更 新した。

 これで8000メートル峰5座を極めた。昨春の世界最高峰チョモランマ(8848メートル )以外は酸素ボンベを使わなかった。「チョモランマも酸素を使わない予定だったが 、隊の成功を優先した」

 無酸素にこだわる理由は明快だ。「酸素を吸えば八千メートル峰が六千メートル峰レ ベルになり、登頂しても喜びは半減。吸い終わったボンベを放置する隊が多く、環境 破壊につながる」。来夏、世界第二の高峰K2(8611メートル)は無酸素で挑戦する。

 ヒマラヤ登山家としては遅咲きといえる。七千メートルは42歳で初登頂。初の八千メ ートル峰登頂は50歳だった。

 名古屋市出身。17歳で上京し、会社の先輩に誘われて行った奥多摩や丹沢へのハイキ ングが山との出会い。「19歳で、秩父の1000メートル峰に後輩と二人で登り、苦労し て山頂に立った達成感に『自分は山が好きなんだ』と確信した」

 1976年、17年間勤めた会社を辞めた。山岳雑誌編集者を経て、87年、登山ガイドとし て独立。中高年の登山ブームが追い風となった。毎年、日本勤労者山岳連盟の会員を 募ってヒマラヤへ。7000メートル以上の高峰には17座登った。昨年日本ヒマラヤ協会 がまとめたトータル獲得標高で首位に立った。

 八千メートルでは空気中の酸素は三分の一に減る。高度に強い体質に加え、豊富な経 験から「高所順応のスペシャリストになった」と自負する。

 だが危険は高度だけではない。92年の八千メートル峰登山で雪崩に流されて、一時意 識不明になったこともある。「行きやすくなったとは言え、ヒマラヤはヒマラヤ。背 伸びすれば危ない」

 妻圭子さんは山仲間で良き理解者。「足を向けて寝られない」(10月16日 朝日新聞  朝刊)

 ACHP編集部


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